特許第5723397号(P5723397)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5723397
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20150507BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20150507BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20150507BHJP
   C23C 16/511 20060101ALI20150507BHJP
   H05H 1/00 20060101ALI20150507BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   H01L21/302 101D
   H01L21/302 103
   H01L21/205
   H01L21/31 C
   C23C16/511
   H05H1/00 A
   H05H1/46 B
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-28902(P2013-28902)
(22)【出願日】2013年2月18日
(62)【分割の表示】特願2007-88407(P2007-88407)の分割
【原出願日】2007年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-118398(P2013-118398A)
(43)【公開日】2013年6月13日
【審査請求日】2013年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086564
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 聖孝
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 征英
【審査官】 宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−502556(JP,A)
【文献】 特開2006−210929(JP,A)
【文献】 再公表特許第99/049705(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空排気可能な処理容器内に被処理基板を収容し、前記処理容器内に処理ガスとマイクロ波のパワーを供給して前記処理ガスのプラズマを生成し、前記基板に所望のプラズマ処理を施すプラズマ処理装置であって、
前記マイクロ波を出力するマイクロ波発生器と
前記マイクロ波発生器より出力された前記マイクロ波をTEモードで伝送する導波管と、前記処理容器の天井に設けられるマイクロ波導入用の誘電体板の上方で垂直に延びる同軸の内部導体と外部導体とを有し、前記マイクロ波をTEMモードで伝送する同軸管と、前記導波管と前記同軸管とを結合する導波管−同軸管変換器とを有するマイクロ波伝送線路と
前記誘電体板の上で前記同軸管の終端に結合され、前記マイクロ波伝送線路より伝送されてきた前記マイクロ波を前記処理容器内に向けて放射するアンテナと
を有し、
前記マイクロ波伝送線路の同軸管の内部導体を中空管に構成するとともに、前記誘電体板に前記中空管の管路と連通する貫通孔を設け、
前記中空管の管路および前記誘電体板の貫通孔をレーザ光路に用いて前記処理容器内のプロセスまたはプロセス条件の状態をモニタリングするモニタ部を備える、プラズマ処理装置。
【請求項2】
真空排気可能な処理容器内に被処理基板を収容し、前記処理容器内に処理ガスとマイクロ波のパワーを供給して前記処理ガスのプラズマを生成し、前記基板に所望のプラズマ処理を施すプラズマ処理装置であって、
前記マイクロ波を出力するマイクロ波発生器と
前記マイクロ波発生器より出力された前記マイクロ波をTEモードで伝送する導波管と、前記処理容器の天井に設けられるマイクロ波導入用の誘電体板の上方で垂直に延びる同軸の内部導体と外部導体とを有し、前記マイクロ波をTEMモードで伝送する同軸管と、前記導波管と前記同軸管とを結合する導波管−同軸管変換器とを有するマイクロ波伝送線路と
前記誘電体板の上で前記同軸管の終端に結合され、前記マイクロ波伝送線路より伝送されてきた前記マイクロ波を前記処理容器内に向けて放射するアンテナと
を有し、
前記マイクロ波伝送線路の同軸管の内部導体を中空管に構成し、
前記誘電体板に前記中空管の下端開口と連通する貫通孔を設け、
前記処理容器の上部天板中心付近の温度を測定するために、前記中空管の中を通る温度測定系ラインと、この温度測定系ラインの先端に取り付けられる温度センサとを有するモニタ部を備える、プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマプロセスにマイクロ波を利用するマイクロ波プラズマ処理装置に係り、特に電磁波結合によって処理容器内のプラズマにマイクロ波電力を供給する方式のプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや液晶ディスプレイ等を製造するためのプラズマプロセスにおいては、真空の処理容器内で処理ガスを放電または電離させるために、高周波(RF)やマイクロ波が使用される。RF放電方式は、処理容器内に一対の電極を適当なギャップを隔てて平行に配置し、一方の電極を接地して他方の電極にコンデンサを介して高周波を印加する容量結合形が主流になっている。しかしながら、RF放電方式は、低圧下で高密度のプラズマを生成するのが難しいうえ、電子温度が高いために基板表面の素子にダメージを与えやすいなどの問題を有している。その点、マイクロ波放電方式は、低圧下で電子温度の低い高密度のプラズマを生成できるという利点があり、平板状のマイクロ波導入窓構造を採ることにより、広い圧力範囲で大口径プラズマを効率的に生成できるうえ、磁場を必要としないためプラズマ処理装置の簡略化をはかれるという長所を有している(たとえば、特許文献1の図1(A)、図2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2005/045913
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような平板状マイクロ波導入窓を用いる従来のマイクロ波プラズマ処理装置は、処理容器内に処理ガスを導入する方法として、基板保持台(サセプタ)と対向する天井面の誘電体窓をシャワープレートに構成して、このシャワープレートに均一な分布で形成されている多数のガス吐出口から処理ガスを垂直下方に流し込む第1の方式か、あるいは処理容器の側壁に1つまたは複数のガス吐出口を設け、それら容器側壁のガス吐出口から処理ガスをプラズマ生成空間の中心部に向けて水平に流し込む第2の方式のいずれかを採用している。
【0005】
上記第1の方式は、基板保持台の上方に均一な密度分布でプラズマを形成するのに有利である反面、シャワープレートがマイクロ波(電磁波)の通り道であるため、プラズマ密度の減少を招いて非効率であるうえ、エッチングレートの均一性低下の原因となり、さらにはコンタミネーションの原因になる等の問題がある。他方、上記第2の方式は、容器側壁のガス吐出口がマイクロ波の通り道から外れているため異常放電を起こすことがない代わりに、基板保持台の上方で処理ガスを半径方向で一様に拡散させるのが難しく、プラズマ密度分布が不均一になりやすいという問題がある。特に、枚葉式のプラズマ処理装置は、基板保持台と容器壁との間の環状空間が容器底の排気口に通じる排気路になっているので、この排気路の上方を横断して導入される処理ガスは排気流の影響を受けて不均一な流れになりやすい。
【0006】
本発明の目的は、マイクロ波プラズマの生成と同時にプラズマプロセスのモニタリングを簡易な構成で効率的に行えるようにしたプラズマ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1のプラズマ処理装置は、真空排気可能な処理容器内に被処理基板を収容し、前記処理容器内に処理ガスとマイクロ波のパワーを供給して前記処理ガスのプラズマを生成し、前記基板に所望のプラズマ処理を施すプラズマ処理装置であって、前記マイクロ波を出力するマイクロ波発生器と前記マイクロ波発生器より出力された前記マイクロ波をTEモードで伝送する導波管と、前記処理容器の天井に設けられるマイクロ波導入用の誘電体板の上方で垂直に延びる同軸の内部導体と外部導体とを有し、前記マイクロ波をTEMモードで伝送する同軸管と、前記導波管と前記同軸管とを結合する導波管−同軸管変換器とを有するマイクロ波伝送線路と前記誘電体板の上で前記同軸管の終端に結合され、前記マイクロ波伝送線路より伝送されてきた前記マイクロ波を前記処理容器内に向けて放射するアンテナとを有し、前記マイクロ波伝送線路の同軸管の内部導体を中空管に構成するとともに、前記誘電体板に前記中空管の管路と連通する貫通孔を設け、前記中空管の管路および前記誘電体板の貫通孔をレーザ光路に用いて前記処理容器内のプロセスまたはプロセス条件の状態をモニタリングするモニタ部を備える。
【0008】
上記の装置構成においては、マイクロ波発生器より出力されたマイクロ波が導波管−同軸管変換器までは導波管の中をTEモードで伝播し、導波管−同軸管変換器から処理容器の誘電体板上のアンテナまでは同軸管の中をTEMモードで伝播して、アンテナから処理容器内の処理空間に導入されることにより、このマイクロ波のパワーにより処理ガスのガス粒子が電離して、プラズマが生成され、このプラズマの下で被処理基板に所望のプラズマ処理が施される。そして、処理容器内でプラズマ処理が行われている最中に、モニタ部が同軸管の内部導体である中空管と誘電体板の貫通孔とをレーザ光路に用いて処理容器内のプロセスまたはプロセス条件の状態をモニタリングする。
【0009】
本発明の第2のプラズマ処理装置は、真空排気可能な処理容器内に被処理基板を収容し、前記処理容器内に処理ガスとマイクロ波のパワーを供給して前記処理ガスのプラズマを生成し、前記基板に所望のプラズマ処理を施すプラズマ処理装置であって、前記マイクロ波を出力するマイクロ波発生器と前記マイクロ波発生器より出力された前記マイクロ波をTEモードで伝送する導波管と、前記処理容器の天井に設けられるマイクロ波導入用の誘電体板の上方で垂直に延びる同軸の内部導体と外部導体とを有し、前記マイクロ波をTEMモードで伝送する同軸管と、前記導波管と前記同軸管とを結合する導波管−同軸管変換器とを有するマイクロ波伝送線路と前記誘電体板の上で前記同軸管の終端に結合され、前記マイクロ波伝送線路より伝送されてきた前記マイクロ波を前記処理容器内に向けて放射するアンテナとを有し、前記マイクロ波伝送線路の同軸管の内部導体を中空管に構成し、前記誘電体板に前記中空管の下端開口と連通する貫通孔を設け、前記処理容器の上部天板中心付近の温度を測定するために、前記中空管の中を通る温度測定系ラインと、この温度測定系ラインの先端に取り付けられる温度センサとを有するモニタ部を備える。
上記の装置構成においては、マイクロ波発生器より出力されたマイクロ波が導波管−同軸管変換器までは導波管の中をTEモードで伝播し、導波管−同軸管変換器から処理容器の誘電体板上のアンテナまでは同軸管の中をTEMモードで伝播して、アンテナから処理容器内の処理空間に導入されることにより、このマイクロ波のパワーにより処理ガスのガス粒子が電離して、プラズマが生成され、このプラズマの下で被処理基板に所望のプラズマ処理が施される。そして、処理容器内でプラズマ処理が行われている最中に、モニタ部が同軸管の内部導体である中空管の中を通り抜ける温度測定系ラインの先端に取り付けられる温度センサを通じて、処理容器の上部天板中心付近の温度を測定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のプラズマ処理装置は、上記のような構成および作用により、マイクロ波プラズマの生成と同時にプラズマプロセスのモニタリングを簡易な構成で効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一構成例におけるマイクロ波プラズマ処理装置の全体構成を示す図である。
図2図1のマイクロ波プラズマ処理装置における要部の構成を示す縦断面図である。
図3図1のマイクロ波プラズマ処理装置で用いられるアンテナのスロットパターン構造を示す平面図である。
図4】本発明の別の構成例におけるマイクロ波プラズマ処理装置の全体構成を示す図である。
図5】本発明の一実施形態におけるマイクロ波プラズマ処理装置の全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
【0013】
図1に、本発明の一構成例におけるマイクロ波プラズマエッチング装置の全体構成を示す。このマイクロ波プラズマエッチング装置は、磁場を必要としない平板状SWP型プラズマ処理装置として構成されており、たとえばアルミニウムまたはステンレス鋼等の金属製の円筒型真空チャンバ(処理容器)10を有している。チャンバ10は保安接地されている。
【0014】
先ず、このマイクロ波プラズマエッチング装置においてプラズマ生成に関係しない各部の構成を説明する。
【0015】
チャンバ10内の下部中央には、被処理基板としてたとえば半導体ウエハWを載置する円板状のサセプタ12が高周波電極を兼ねる基板保持台として水平に配置されている。このサセプタ12は、たとえばアルミニウムからなり、チャンバ10の底から垂直上方に延びる絶縁性の筒状支持部14に支持されている。
【0016】
筒状支持部14の外周に沿ってチャンバ10の底から垂直上方に延びる導電性の筒状支持部16とチャンバ10の内壁との間に環状の排気路18が形成され、この排気路18の上部または入口に環状のバッフル板20が取り付けられるとともに、底部に排気ポート22が設けられている。チャンバ10内のガスの流れをサセプタ12上の半導体ウエハWに対して軸対象に均一にするためには、排気ポート20を円周方向に等間隔で複数設ける構成が好ましい。各排気ポート20には排気管24を介して排気装置26が接続されている。排気装置26は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、チャンバ10内のプラズマ処理空間を所望の真空度まで減圧することができる。チャンバ10の側壁の外には、半導体ウエハWの搬入出口を開閉するゲートバルブ28が取り付けられている。
【0017】
サセプタ12には、RFバイアス用の高周波電源30がマッチングユニット32および給電棒34を介して電気的に接続されている。この高周波電源30は、半導体ウエハWに引き込むイオンのエネルギーを制御するのに適した比較的低い周波数たとえば13.56MHzの高周波を所定のパワーで出力する。マッチングユニット32は、高周波電源30側のインピーダンスと負荷(主に電極、プラズマ、チャンバ)側のインピーダンスとの間で整合をとるための整合器を収容しており、この整合器の中に自己バイアス生成用のブロッキングコンデンサが含まれている。
【0018】
サセプタ12の上面には、半導体ウエハWを静電吸着力で保持するための静電チャック36が設けられ、静電チャック36の半径方向外側に半導体ウエハWの周囲を環状に囲むフォーカスリング38が設けられる。静電チャック36は導電膜からなる電極36aを一対の絶縁膜36b,36cの間に挟み込んだものであり、電極36aには直流電源40がスイッチ42を介して電気的に接続されている。直流電源40より印加される直流電圧により、クーロン力で半導体ウエハWを静電チャック36上に吸着保持することができる。
【0019】
サセプタ12の内部には、たとえば円周方向に延びる環状の冷媒室44が設けられている。この冷媒室44には、チラーユニット(図示せず)より配管46,48を介して所定温度の冷媒たとえば冷却水が循環供給される。冷媒の温度によって静電チャック36上の半導体ウエハWの処理温度を制御できる。さらに、伝熱ガス供給部(図示せず)からの伝熱ガスたとえばHeガスが、ガス供給管50を介して静電チャック36の上面と半導体ウエハWの裏面との間に供給される。また、半導体ウエハWのローディング/アンローディングのためにサセプタ12を垂直方向に貫通して上下移動可能なリフトピンおよびその昇降機構(図示せず)等も設けられている。
【0020】
次に、このマイクロ波プラズマエッチング装置においてプラズマ生成に関係する各部の構成を説明する。
【0021】
チャンバ10のサセプタ12と対向する天井面には、マイクロ波導入用の誘電体板として円形の石英板52が気密に取り付けられている。この石英板52の上面には平板型のスロットアンテナとして同心円状に分布する多数のスロットを有する円板形のラジアルラインスロットアンテナ54が設置されている。このラジアルラインスロットアンテナ54は、たとえば石英等の誘電体からなる遅延板56を介してマイクロ波伝送線路58に電磁的に結合されている。
【0022】
マイクロ波伝送線路58は、マイクロ波発生器60より出力されるマイクロ波をアンテナ54まで伝送する線路であり、導波管62と導波管−同軸管変換器64と同軸管66とを有している。導波管62は、たとえば方形導波管であり、TEモードを伝送モードとしてマイクロ波発生器60からのマイクロ波をチャンバ10に向けて導波管−同軸管変換器64まで伝送する。
【0023】
導波管−同軸管変換器64は、方形導波管62と同軸管66とを結合し、方形導波管62の伝送モードを同軸管66の伝送モードに変換するものであり、大出力のマイクロ波パワーを伝送する場合に電界集中を防止するために、同軸管66の内部導体68の上端部68aを図示のような逆テーパ状に太くする構成(いわゆるドアノブ形の構成)を採るのが好ましい。
【0024】
同軸管66は、導波管−同軸管変換器64からチャンバ10の上面中心部まで垂直下方に延びて、その同軸線路の終端または下端が遅延板56を介してアンテナ54に結合されている。同軸管66の外部導体70は方形導波管62と一体形成された円筒体からなり、マイクロ波は内部導体68と外部導体70の間の空間をTEMモードで伝播する。
【0025】
マイクロ波発生器60より出力されたマイクロ波は、上記のような導波管62、導波管−同軸管変換器64および同軸管66からなるマイクロ波伝送線路58を伝播して、遅延板56を通ってアンテナ54に給電される。そして、遅延板56で半径方向に広げられたマイクロ波はアンテナの各スロットからチャンバ10内に向けて放射され、石英板52の表面に沿って伝播する表面波から放射されるマイクロ波電力によって付近のガスが電離して、プラズマが生成されるようになっている。
【0026】
遅延板56の上には、アンテナ後面板72がチャンバ10の上面を覆うように設けられている。このアンテナ後面板72は、たとえばアルミニウムからなり、石英板52で発生する熱を吸収(放熱)する冷却ジャケットを兼ねており、内部に形成されている流路74にはチラーユニット(図示せず)より配管76,78を介して所定温度の冷媒たとえば冷却水が循環供給されるようになっている。
【0027】
このマイクロ波プラズマエッチング装置においては、図2に明示するように、同軸管66の内部導体68に、その中を貫通する中空のガス流路80が設けられている。そして、このガス流路80の上端開口80aには処理ガス供給源82に通じる第1ガス供給管84が接続されており、石英板52の中心部には同軸管66のガス流路80の下端開口80bと連続または連通する上部中心ガス吐出口86が形成されている。かかる構成の第1処理ガス導入部88において、処理ガス供給源82より送出された処理ガスは、第1ガス供給管84および同軸管66のガス流路80を通って上部中心ガス吐出口86から真下のサセプタ12に向けて吐出され、サセプタ12を囲む環状の排気路18側へ引かれるようにして軸対象に半径方向外側へ拡散するようになっている。なお、第1ガス供給管84の途中には、MFC(マス・フロー・コントローラ)90および開閉弁92が設けられている。
【0028】
このマイクロ波プラズマエッチング装置は、チャンバ10内に処理ガスを導入するために、上記第1処理ガス導入部88とは別系統の第2処理ガス導入部94も備えている。この第2処理ガス導入部94は、石英板52より幾らか低い位置でチャンバ10の側壁の中に環状に形成されたバッファ室96と、円周方向に等間隔でバッファ室96からプラズマ生成空間に臨む多数の側部ガス吐出孔98と、処理ガス供給源82からバッファ室96まで延びるガス供給管100とを有している。ガス供給管100の途中にはMFC102および開閉弁104が設けられている。
【0029】
この第2処理ガス導入部94において、処理ガス供給源82より送出された処理ガスは、第2ガス供給管100を通ってチャンバ10側壁内のバッファ室96に導入され、バッファ室96内で周回方向の圧力を均一化してから各側部ガス吐出口98よりチャンバ10の中心に向かって略水平に吐出され、プラズマ処理空間へ拡散する。その際、各側部ガス吐出口98より吐出された処理ガスは、環状排気路18の上方を横切る際に排気口22側へ引かれるため半導体ウエハW上に均一に供給され難い面がある。この実施形態では、上記のように第1処理ガス導入部88の上部中心ガス吐出口86より導入される処理ガスが中心部から軸対象に放射状に拡散するので、第2処理ガス導入部88より導入される処理ガスの不安定または不定な拡散を補い、半導体ウエハWの直上で生成されるプラズマの密度を均一化させることができる。
【0030】
なお、第1処理ガス導入部88および第2処理ガス導入部94よりチャンバ10内にそれぞれ導入する処理ガスは、通常は同種のガスでよいが、別種類のガスであってもよく、各MFC90,102を通じて各々独立した流量で、あるいは任意の流量比で導入し、半径方向におけるガス密度ひいてはプラズマ密度の均一性を向上させることができる。
【0031】
図2に、このマイクロ波プラズマエッチング装置における導波管−同軸管変換器64および同軸管66の詳細な構成を示す。同軸管66の内部導体68は、たとえばアルミニウムからなり、その内部に中心軸に沿って貫通孔のガス流路80が形成されるとともに、ガス流路80と平行して冷媒流路106も形成されている。冷媒流路106は、垂直隔壁(図示せず)を介して往路106aと復路106bに分かれており、逆テーパ部68aの上端に図示しないチラーユニットに通じる配管108,110が接続されている。供給配管108より冷媒流路106に導入された冷媒たとえば冷却水は、冷媒流路106において往路106aを垂直下方に流れて同軸管66の下端部に行き着き、そこから折り返して復路106bを垂直上方に流れて排出配管110に抜け出るようになっている。
【0032】
図2に示すように、アンテナ54は、その中心部に同軸管66の内部導体68を通す開口54aを有しており、スロット板が内部導体68の周り(半径方向外側)に延在している。内部導体68のガス流路80と同軸上で連続する石英板52の上部中心ガス吐出口86は、アンテナ54より放射される電磁波(マイクロ波)の通り道から外れており、異常放電は起こらないようになっている。なお、半径方向の限定された範囲内で上部中心ガス吐出口86を複数の吐出口に分岐または分割することも可能である。
【0033】
図3に、このマイクロ波プラズマエッチング装置におけるラジアルラインスロットアンテナ54のスロットパターン構造を示す。図示のように、アンテナ54のスロット板には同心円状に多数のスロットが形成されている。より詳細には、互いに向きが直交する2種類のスロット54b,54cが交互に同心円状に配列され、半径方向では遅延板56で伝送されてくるマイクロ波の波長に応じた間隔で配置されている。このスロットパターン構造においては、マイクロ波は2つの直交する偏波成分を含む円偏波の略平面波となってスロット板から放射される。このタイプのスロットアンテナは、スロット板の略全面からマイクロ波を均一に放射するのに優れており、均一で安定なプラズマの生成に適している。
【0034】
このマイクロ波プラズマエッチング装置においては、上述した各部たとえば排気装置26、高周波電源30、直流電源40のスイッチ42、マイクロ波発生器60、各処理ガス導入部88,94、各チラーユニット(図示せず)、伝熱ガス供給部(図示せず)等の個々の動作および装置全体の動作が、たとえばマイクロコンピュータからなる制御部(図示せず)によって制御される。
【0035】
このマイクロ波プラズマエッチング装置において、エッチングを行なうには、先ずゲートバルブ28を開状態にして加工対象の半導体ウエハWをチャンバ10内に搬入して、静電チャック36の上に載置する。そして、第1および第2処理ガス導入部88,94よりエッチングガス(一般に混合ガス)を所定の流量および流量比でチャンバ10内に導入し、排気装置26によりチャンバ10内の圧力を設定値に減圧する。さらに、高周波電源30をオンにして所定のパワーで高周波を出力させ、この高周波を整合器34および給電棒34を介してサセプタ12に印加する。また、スイッチ42をオンにして直流電源44より直流電圧を静電チャック36の電極36aに印加して、静電チャック36の静電吸着力により半導体ウエハWを静電チャック36上に固定する。そして、マイクロ波発生器60をオンにし、マイクロ波発生器60より出力されるマイクロ波をマイクロ波伝送線路58を介してアンテナ54に給電し、アンテナ54から放射されるマイクロ波を石英板52を介してチャンバ10内に導入する。
【0036】
第1処理ガス導入部88の上部中心ガス吐出口86および第2処理ガス導入部94の側部ガス吐出口98よりチャンバ10内に導入されたエッチングガスは石英板52の下で拡散し、石英板52の下面(プラズマと対向する面)に沿って伝播する表面波から放射されるマイクロ波電力によってガス粒子が電離し、表面励起のプラズマが生成される。こうして、石英板52の下で生成されたプラズマは下方に拡散し、半導体ウエハWの主面の被加工膜に対してプラズマ中のラジカルによる等方性エッチングおよびイオン照射による垂直エッチングが行われる。
【0037】
このマイクロ波プラズマエッチング装置においては、高密度プラズマを表面波励起で生成するので、半導体ウエハW付近の電子温度はたとえば0.7〜1.5eV程度と非常に低く、これによってイオン照射のエネルギーを抑制し、被加工膜に対するダメージを防ぐことができる。また、ラジアルラインスロットアンテナ54を使用してマイクロ波電力を大面積で均一にチャンバ10内に注入するので、ウエハの大口径化にも容易に対応することができる。そして、マイクロ波伝送線路58の最終区間を構成する同軸管66の内部導体68に貫通孔のガス流路80を設け、このガス流路80を通してチャンバ天井(石英板52)中心部のガス吐出口86からチャンバ10内に処理ガスを導入するので、プラズマ密度の均一性の向上、ひいてはエッチング加工の面内均一性の向上をはかれると同時に、アンテナ性能への悪影響はなく、異常放電を起こすおそれもない。
【0038】
加えて、このマイクロ波プラズマエッチング装置は、無磁場でマイクロ波プラズマを生成するので、チャンバ10の周りに永久磁石や電子コイル等の磁界形成機構を設ける必要がなく、簡易な装置構成となっている。もっとも、本発明は、図4に示すように、電子サイクロトロン共鳴(ECR:Electron Cyclotron Resonance)を利用するプラズマ処理装置にも適用可能である。
【0039】
図4のECRプラズマ処理装置は、チャンバ10の周囲に永久磁石または電子コイルからなる磁界形成機構112を設け、この磁界形成機構112によりチャンバ10内のプラズマ生成空間に外部磁場を印加し、プラズマ生成空間内のある場所でマイクロ波の周波数が電子サイクロトロン周波数に等しくなるような磁界(2.45GHzの場合は875ガウス)を形成し、高密度のプラズマを生成することができる。
【0040】
なお、図4に示すように、チャンバ10の上部天板中心から処理ガスを導入する第1処理ガス導入部88のみを設け、チャンバ側壁から処理ガスを導入する第2処理ガス導入部94(図1)を省くことも可能である。
【0041】
さらに、本発明の一実施形態として、図5に示すように、同軸管66の内部導体68の中に形成される中空部をガス流路に代えて、モニタリング用の光学測定ラインに利用することも可能である。たとえば、プラズマエッチングの終点検出を行う場合は、同軸管内部導体68の中空部の中に光ファイバプローブ(図示せず)を挿入して、チャンバ10の上部天板中心の位置でプラズマからの発光を採光し、モニタ部114で分光して特定の反応種に起因する発光スペクトルの増減からエッチング終点を検出することができる。また、同軸管内部導体68の中空部をレーザ光路に用いて、半導体ウエハW上の反射防止膜やレジスト膜等の膜厚測定を行うことも可能である。さらには、先端に熱電対等を取り付けた温度センサのラインを同軸管内部導体68の中空部に通してチャンバ10内の上部天板中心付近の温度を測定することも可能である。
【0042】
本発明においては、同軸管66の内部導体68の中空部の構成または機能については他にも種々の変形が可能である。たとえば、図示省略するが、同軸管の内部導体68の中空部をたとえば2重管等の複数管構造に形成し、各管を独立したライン(ガス供給系ライン、測定系ライン)に用いることもできる。チャンバ10内に処理ガスを導入するために、第1および第2処理ガス導入部88,94とは別系統の第3の処理ガス導入部を内部導体68の中に設けることも可能である。
【0043】
また、上記した実施形態における各部の構成や機能も種々変形可能である。たとえば、ラジアルスロットラインアンテナ54に代えて他の形式のスロットアンテナを用いることも可能であり、特に大口径のプラズマを必要としない場合はアンテナを用いないマイクロ波注入方式も可能である。マイクロ波伝送線路58においても、マイクロ波発生器60と方形導波管62との間に他の伝送線路を挿入したり、方形導波管62をたとえば円形導波管に代えたり、導波管−同軸管変換器64においてインピーダンス変換部64aをドアノブ形に代えてリッジガイド形に構成することも可能である。さらには、導波管−同軸管変換器を用いずに円形導波管の終端をチャンバに電磁的に結合する構成も可能である。
【0044】
本発明は、上記実施形態におけるマイクロ波プラズマエッチング装置に限定されるものではなく、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)、プラズマ酸化、プラズマ窒化、スパッタリング等の処理装置にも適用可能である。また、本発明における被処理基板は半導体ウエハに限るものではなく、フラットパネルディスプレイ用の各種基板や、フォトマスク、CD基板、プリント基板等も可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 チャンバ
12 サセプタ(基板保持台)
26 排気装置
30 高周波電源
52 石英板(誘電体窓)
54 ラジアルラインスロットアンテナ
58 マイクロ波伝送線路
60 マイクロ波発生器
62 導波管
64 導波管−同軸管変換器
66 同軸管
68 内部導体
70 外部導体
82 処理ガス供給源
84 第1ガス供給管
86 上部中央ガス吐出孔
88 第1処理ガス導入部
94 第2処理ガス導入部
98 側部ガス吐出孔
100 第2ガス供給管
112 磁界形成部
114 モニタ部
図1
図2
図3
図4
図5