特許第5723483号(P5723483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5723483
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/8234 20060101AFI20150507BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20150507BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20150507BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   H01L27/08 102C
   H01L29/78 301H
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-503449(P2014-503449)
(86)(22)【出願日】2013年2月20日
(86)【国際出願番号】JP2013000954
(87)【国際公開番号】WO2013132766
(87)【国際公開日】20130912
【審査請求日】2014年5月14日
(31)【優先権主張番号】特願2012-52123(P2012-52123)
(32)【優先日】2012年3月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】香月 将吾
(72)【発明者】
【氏名】坂本 敏郎
【審査官】 宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−237325(JP,A)
【文献】 特開2007−200976(JP,A)
【文献】 特開2010−027823(JP,A)
【文献】 特開2001−244345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/8234
H01L 21/336
H01L 27/088
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の第1の領域に第1のMOSトランジスタを有し、前記半導体基板の第2の領域に第2のMOSトランジスタを有する半導体装置の製造方法であって、
前記半導体基板に熱酸化を施して、前記第1の領域と前記第2の領域とにそれぞれ第1のゲート酸化膜を形成する工程と、
前記第1のゲート酸化膜上に保護膜を形成する工程と、
前記保護膜と前記第1のゲート酸化膜とを介して、前記第1の領域と前記第2の領域とにそれぞれフッ素を注入する工程と、
前記フッ素が注入された後で、前記第2の領域の前記第1のゲート酸化膜上から前記保護膜を除去する工程と、
前記第2の領域から前記第1のゲート酸化膜を除去する工程と、
前記第1の領域に前記第1のゲート酸化膜が残され、且つ前記第2の領域から前記第1のゲート酸化膜が除去された状態で、前記半導体基板に熱酸化を施して、前記第2の領域に前記第1のゲート酸化膜とは膜厚又は膜種が異なる第2のゲート酸化膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2の領域から前記第1のゲート酸化膜を除去する工程と、前記第2の領域に前記第2のゲート酸化膜を形成する工程との間に、
前記第1の領域の前記第1のゲート酸化膜上から前記保護膜を除去する工程、をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記半導体基板はシリコン基板であり、
前記第1のゲート酸化膜を形成する工程では、前記第1のゲート酸化膜としてシリコン酸化膜を形成し、
前記保護膜を形成する工程では、前記保護膜として、低圧CVD法でシリコン酸化膜を形成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン基板に形成したMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor;以下、MOSトランジスタという。)において、ゲート酸化膜/シリコン基板界面の状態は、MOSトランジスタの特性を左右するため重要である。ゲート酸化膜/シリコン基板界面にキャリアトラップが存在すると、それに起因して移動度の低下や1/fノイズ増大等の不具合が発生する。従って、できるだけキャリアトラップの少ないゲート酸化膜/シリコン基板界面を形成することが求められる。
【0003】
キャリアトラップの代表的なものとして界面準位がある。界面準位とは、半導体の表面において禁制帯中に発生する準位であり、結晶原子の未結合手(即ち、ダングリングボンド)に起因して発生するものである。そのため、界面準位を低減するためには、ダングリングボンドを終端することが必要となる。
【0004】
ダングリングボンドを終端する方法としては、結合手を1つしか持たない水素やフッ素などをダングリングボンドに結合させる方法が一般的である。特許文献1には、ゲート電極となるポリシリコン膜中にフッ素をイオン注入し、後の熱処理によって、フッ素をゲート酸化膜中と、ゲート酸化膜/シリコン基板界面とに導入する方法が記載されている。また、別の方法として、特許文献2には、ゲート酸化膜を形成する前にイオン注入によってシリコン基板中にフッ素を打ち込み、ゲート酸化膜を形成する時の熱処理によって、フッ素をゲート酸化膜/シリコン基板界面とゲート酸化膜中とに導入する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−281692号公報
【特許文献2】特開2010−27823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の方法では、ゲート酸化膜の膜厚が5[nm]以下程度と薄い場合、ゲート電極(ポリシリコン膜)に注入されたフッ素が、ゲート電極に既に導入されているボロンなどの他の不純物を巻き込みながらゲート酸化膜中に拡散し、ゲート酸化膜から、ゲート酸化膜/シリコン基板界面へと拡散する。このため、ゲート電極中に存在するフッ素以外の元素も、シリコン基板側に染み出す現象が起こる。それによって、MOSトランジスタの閾値電圧の変動や閾値電圧のばらつき増大など、種々の不具合を生じる可能性がある。
【0007】
また、特許文献2の方法では、シリコン基板にフッ素を打ち込むため、ゲート電極からの不純物の染み出しを防止することはできる。しかしながら、ゲート酸化膜の膜厚が異なる2種類のMOSトランジスタにおいては、ゲート酸化膜/シリコン基板界面へ導入されるフッ素の量が2つのMOSトランジスタ間で大きく異なってしまうという課題があった。この課題について、図8(a)〜図12(b)を参照しながら説明する。
【0008】
図8(a)〜図12(b)は、従来例に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図と、この断面図の第1、第2の領域におけるフッ素の深さ方向の濃度プロファイルを示す図である。図8図12の各図(b)は、本発明者がシミュレーションを実際に行って得たデータであり、その横軸はシリコン基板の表面からの深さ[μm]を示し、その縦軸はフッ素濃度[cm−3]を示す。
【0009】
図8(a)では、シリコン基板101にSTI(Shallow Trench Isolation)層103を形成して、第1のMOSトランジスタが形成される領域(以下、第1の領域)と、第2のMOSトランジスタが形成される領域(以下、第2の領域)とを素子分離する。次に、シリコン基板101中にフッ素(F)をイオン注入する。このイオン注入の条件は、例えば、注入エネルギーが30keV程度、ドーズ量が5e14[cm−2]程度である。第1の領域と第2の領域とに対して、フッ素は同一の条件で同時に注入される。このため、図8(b)に示すように、第1の領域と第2の領域との間で、フッ素の濃度プロファイルはほぼ同一の形となる。
【0010】
次に、図9(a)に示すように、シリコン基板101の表面を熱酸化して、第1の領域と第2の領域とにそれぞれ第1のゲート酸化膜111を形成する。この時、シリコン基板101に注入されていたフッ素は、第1のゲート酸化膜111/シリコン基板101界面と、第1のゲート酸化膜111の膜中とに取り込まれる。図9(b)に示すように、シリコン基板101中のフッ素は、第1の領域、第2の領域の各々において、第1のゲート酸化膜111中及び第1のゲート酸化膜111/シリコン基板101界面付近に偏析する。
【0011】
次に、図10(a)に示すように、第1の領域を覆い、第2の領域の上方を開口する形状のレジストパターン115をシリコン基板101上に形成する。そして、このレジストパターン115をマスクに用いて、第1のゲート酸化膜111をウェットエッチングする。これにより、第2の領域から第1のゲート酸化膜111が除去され、第2の領域の表面が露出した状態となる。第2の領域では、フッ素を取り込んでいた第1のゲート酸化膜111が除去されるため、図10(b)に示すように、シリコン基板101の表面付近におけるフッ素濃度は著しく低下する。
【0012】
次に、図11(a)に示すように、レジストパターンを除去する。図10(b)及び図11(b)を比較して分かるように、レジストパターンを除去しても、フッ素の濃度プロファイルは変化しない。そして、図12(a)に示すように、シリコン基板101の表面を再び熱酸化して、第2の領域に第2のゲート酸化膜121を形成する。このとき、シリコン基板101中のフッ素は、第2のゲート酸化膜121/シリコン基板101界面と、第2のゲート酸化膜121中とに取り込まれる。その結果、図12(b)に示すように、第2の領域において、フッ素は第2のゲート酸化膜121中及び第2のゲート酸化膜121/シリコン基板101界面付近に偏析する。
【0013】
ここで、図12(b)に示すように、従来例では、第1の領域の第1のゲート酸化膜111/シリコン基板101界面(以下、第1の界面)付近におけるフッ素濃度よりも、第2の領域の第2のゲート酸化膜121/シリコン基板101界面(以下、第2の界面)におけるフッ素濃度の方が低くなってしまう。その理由は、シリコン基板101に注入されたフッ素は、その多くが熱酸化の工程(図9(a)参照)で第1のゲート酸化膜111中に導入されるからである。このフッ素を多く含む第1のゲート酸化膜111は、後の工程(図10(a)参照)で、第2の領域から除去されてしまう。
【0014】
このため、第2の領域に第2のゲート酸化膜121を形成する時には、シリコン基板101に残留しているフッ素の量は既に少なくなっており、シリコン基板101から、第2の界面に拡散するフッ素の量は少ない。それゆえ、第2の界面付近におけるフッ素濃度は、第1の界面付近におけるフッ素濃度よりも低くなる。第2の界面におけるフッ素濃度が低いと、第2の界面のダングリングボンドを十分に終端できない可能性がある。
【0015】
そこで、この発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、ゲート酸化膜の膜厚又は膜種が異なる2種類のMOSトランジスタの各々において、ゲート電極からゲート酸化膜/半導体基板界面に不純物が導入されることを防ぐと共に、当該界面においてフッ素を高濃度に保つことを可能とした半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板の第1の領域に第1のMOSトランジスタを有し、前記半導体基板の第2の領域に第2のMOSトランジスタを有する半導体装置の製造方法であって、前記半導体基板に熱酸化を施して、前記第1の領域と前記第2の領域とにそれぞれ第1のゲート酸化膜を形成する工程と、前記第1のゲート酸化膜上に保護膜を形成する工程と、前記保護膜と前記第1のゲート酸化膜とを介して、前記第1の領域と前記第2の領域とにそれぞれフッ素を注入する工程と、前記フッ素が注入された後で、前記第2の領域の前記第1のゲート酸化膜上から前記保護膜を除去する工程と、前記第2の領域から前記第1のゲート酸化膜を除去する工程と、前記第1の領域に前記第1のゲート酸化膜が残され、且つ前記第2の領域から前記第1のゲート酸化膜が除去された状態で、前記半導体基板に熱酸化を施して、前記第2の領域に前記第1のゲート酸化膜とは膜厚又は膜種が異なる第2のゲート酸化膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0017】
このような製造方法であれば、ゲート電極を介することなく、半導体基板にフッ素を直接注入する。このため、ゲート電極に含まれる不純物(即ち、ドナー元素或いはアクセプター元素)がフッ素と共にゲート酸化膜中を拡散して、ゲート酸化膜/半導体基板界面に導入されることを防ぐことができ、当該界面にフッ素のみを導入することが容易となる。これにより、MOSトランジスタの閾値電圧の変動等を防ぐことができる。
【0018】
また、上記のフッ素を注入する工程は、第1のゲート酸化膜を形成する工程(図2(a)参照)と、第2のゲート酸化膜を形成する工程(図7(a)参照)との間で行う。これにより、半導体基板に注入されたフッ素は、第1のゲート酸化膜を形成する時の熱ではなく、第2のゲート酸化膜を形成する時の熱によって拡散する。このため、第1の領域の第1のゲート酸化膜/半導体基板界面(即ち、第1の界面)におけるフッ素濃度を高く保つと共に、第2の領域の第2のゲート酸化膜/半導体基板界面(即ち、第2の界面)におけるフッ素濃度も高く保つことができる。これにより、第1の界面と第2の界面の各々において、ダングリングボンドを十分に終端することができ、界面準位を低減することが可能となる。なお、本発明の「半導体基板」としては、例えば、後述するシリコン基板1が該当する。「保護膜」としては、例えば、後述するCVD酸化膜13が該当する。
【0019】
また、上記の半導体装置の製造方法において、前記第1のゲート酸化膜を形成した後に低圧CVD法にてシリコン酸化膜を保護膜として形成する工程を含む。このような製造方法であれば、フッ素をイオン注入する際に発生する第1のゲート酸化膜のダメージを防ぐことができる。
【0020】
また、上記の半導体装置の製造方法において、前記第2の領域から前記第1のゲート酸化膜を除去する工程と、前記第2の領域に前記第2のゲート酸化膜を形成する工程との間に、前記第1の領域の前記第1のゲート酸化膜上から前記保護膜を除去する工程、をさらに含むことを特徴とする。このような製造方法であれば、第2のゲート酸化膜を形成する時には、第1のゲート酸化膜上には保護膜は存在しない。
【0021】
また、上記の半導体装置の製造方法において、前記半導体基板はシリコン基板であり、前記第1のゲート酸化膜を形成する工程では、前記第1のゲート酸化膜としてシリコン酸化膜を形成し、前記保護膜を形成する工程では、前記保護膜として、低圧CVD法でシリコン酸化膜を形成することを特徴とする。このような製造方法であれば、第1のゲート酸化膜は熱酸化で形成されたシリコン酸化膜(即ち、熱酸化膜)であり、保護膜は低圧CVD法で形成されたシリコン酸化膜(即ち、CVD酸化膜)である。フッ化水素酸(即ち、フッ酸)よるエッチングレートは、熱酸化膜よりもCVD酸化膜の方が十分に大きい。このため、第1のゲート酸化膜に対して、保護膜を選択性高くエッチングして除去することができる。保護膜を除去する際に、第1の領域の第1のゲート酸化膜が膜減りすることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によれば、ゲート酸化膜の膜厚又は膜種が異なる2種類のMOSトランジスタの各々において、ゲート電極からゲート酸化膜/半導体基板界面に不純物が導入されることを防ぐと共に、当該界面においてフッ素を高濃度に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図(その1)。
図2】実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図(その2)。
図3】実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図(その3)。
図4】実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図(その4)。
図5】実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図(その5)。
図6】実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図(その6)。
図7】実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図(その7)。
図8】従来例に係る半導体装置の製造方法を説明するための図(その1)。
図9】従来例に係る半導体装置の製造方法を説明するための図(その2)。
図10】従来例に係る半導体装置の製造方法を説明するための図(その3)。
図11】従来例に係る半導体装置の製造方法を説明するための図(その4)。
図12】従来例に係る半導体装置の製造方法を説明するための図(その5)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明による実施形態を、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する各図において、同一の構成を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
(1)製造方法
図1(a)〜図7(b)は、本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図と、この断面図の第1、第2の領域におけるフッ素の深さ方向の濃度プロファイルを示す図である。図1図7の各図(b)は、本発明者がシミュレーションを実際に行って得たデータであり、その横軸はシリコン基板1の表面からの深さ[μm]を示し、その縦軸はフッ素濃度[cm−3]を示す。
【0025】
図1(a)では、まず始めに、シリコン基板1を容易する。シリコン基板1は、例えばベアウエーハである。次に、シリコン基板1にフィールド酸化膜3を形成して、第1のMOSトランジスタが形成される領域(以下、第1の領域)と、第2のMOSトランジスタが形成される領域(以下、第2の領域)とを素子分離する。この実施形態では、フィールド酸化膜3として、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)層を形成する。或いは、図示しないが、フィールド酸化膜3としてLOCOS(local oxidation of silicon)層を形成してもよい。LOCOS層は、LOCOS法で形成されるシリコン酸化膜のことである。本実施形態において、フィールド酸化膜3は、素子分離層として機能するのであればその形態は問わない。
【0026】
次に図示しないが、ウェル拡散層を形成するために、又はMOSトランジスタの閾値電圧を調節するために、シリコン基板1に不純物を1回乃至複数回イオン注入する。目的に応じて、ドナー元素或いはアクセプター元素をシリコン基板1にイオン注入する。
【0027】
次に、図2(a)に示すように、シリコン基板1の表面を熱酸化して、第1の領域と第2の領域とにそれぞれ第1のゲート酸化膜11を形成する。第1のゲート酸化膜11は例えばシリコン酸化膜であり、その膜厚は例えば7[nm]程度である。
【0028】
次に、図3(a)に示すように、低圧CVD(chemical vapor deposition)法により、シリコン基板1上にシリコン酸化膜を堆積する。ここで、低圧CVD法の「低圧」とは、成膜処理を行う反応室内の圧力が低圧であることを意味する。低圧の範囲は、例えば10〜100[Pa]である。低圧CVD法で堆積されたシリコン酸化膜(以下、CVD酸化膜)13によって、第1の領域の第1のゲート酸化膜11と、第2の領域の第1のゲート酸化膜11はそれぞれ覆われる。CVD酸化膜13の厚さは、例えば5〜15[nm]程度である。なお、図1(b)、図2(b)、図3(b)に示すように、この実施形態では、シリコン基板1を用意してからCVD酸化膜13を形成するまでの間、シリコン基板1にはフッ素を注入していない。
【0029】
次に、図4(a)に示すように、CVD酸化膜13及び第1のゲート酸化膜11を介して、シリコン基板1中にフッ素(F)をイオン注入する。このイオン注入の条件は、例えば、注入エネルギーが30keV程度、ドーズ量が5e14[cm−2]程度である。これにより、図4(b)に示すように、第1の領域と第2の領域とにそれぞれ、フッ素の濃度プロファイルが形成される。なお、この実施形態において、フッ素は、シリコン基板1の第1の領域と第2の領域とに同一の条件で同時に注入される。このため、フッ素の濃度プロファイルは、第1の領域と第2の領域との間でほぼ同一の形となる。
【0030】
次に、図5(a)に示すように、第1の領域を覆い、第2の領域の上方を開口する形状のレジストパターン15をCVD酸化膜13上に形成する。そして、このレジストパターン15をマスクに用いて、CVD酸化膜13と第1のゲート酸化膜11とをウェットエッチングして除去する。このウェットエッチングは、例えばフッ酸などを用いて行う。これにより、第1の領域には第1のゲート酸化膜11とCVD酸化膜13とが残される一方で、第2の領域からはCVD酸化膜13と第1のゲート酸化膜11とが除去され、第2の領域の表面が露出した状態となる。
【0031】
なお、図5(a)に示す工程では、第1のゲート酸化膜11とレジストパターン15との間にCVD酸化膜13が介在している。このため、第1のゲート酸化膜11が、レジストパターン15に含まれている有機物で汚染されることを防ぐことができる。また、フッ素は、シリコン基板1中に注入されている。このため、図4(b)及び図5(b)を比較して分かるように、第2の領域から第1のゲート酸化膜11を除去しても、フッ素の濃度プロファイルは変化しない。
【0032】
次に、図6(a)に示すように、レジストパターンを除去する。そして、第1の領域の第1のゲート酸化膜11上に残されていたCVD酸化膜をウェットエッチングして除去する。このウェットエッチングは、例えばフッ酸などを用いて行う。これにより、第1の領域では、第1のゲート酸化膜11が露出した状態となる。
【0033】
なお、第1のゲート酸化膜11は熱酸化で形成されたシリコン酸化膜(即ち、熱酸化膜)である。フッ酸よるエッチングレートは、熱酸化膜よりもCVD酸化膜の方が大きい。このため、図6(a)に示す工程では、第1のゲート酸化膜11に対して、CVD酸化膜13を選択性高くエッチングして除去することができる。これにより、第1のゲート酸化膜11の膜減りすることを抑制することができる。なお、図5(b)及び図6(b)を比較して分かるように、第1の領域からCVD酸化膜13を除去しても、フッ素の濃度プロファイルは変化しない。
【0034】
次に、図7(a)に示すように、シリコン基板1の表面を再び熱酸化して、第2の領域に第2のゲート酸化膜21を形成する。第2のゲート酸化膜21は例えばシリコン酸化膜であり、その膜厚は例えば3[nm]程度である。ここで、本実施形態では、第2のゲート酸化膜21を形成する際の熱により、第1の領域と第2の領域とに注入されていたフッ素が同時に拡散する。そして、第1の領域に注入されていたフッ素の一部が、第1のゲート酸化膜11/シリコン基板1界面と、第1のゲート酸化膜11中とに取り込まれる。また、第2の領域に注入されていたフッ素の一部が、第2のゲート酸化膜21/シリコン基板1界面と、第2のゲート酸化膜21中とに取り込まれる。
【0035】
このように、第1の領域と第2の領域とにそれぞれ注入されていたフッ素は、第1のゲート酸化膜11を形成する時の熱ではなく、第2のゲート酸化膜を形成する時の熱によって拡散する。このため、図7(b)に示すように、第2のゲート酸化膜21を形成した後も、第2のゲート酸化膜21中のフッ素濃度を高く保つことができる。
また、この第2のゲート酸化膜21を形成する時には、第1のゲート酸化膜11上にはCVD酸化膜13(図5(a)参照)は存在しない。
【0036】
なお、第2のゲート酸化膜21を形成する時には、第1のゲート酸化膜11の表面が露出している。このため、例えば、第2のゲート酸化膜21を形成する時の熱酸化の条件(例えば、温度、時間)等によっては、第1のゲート酸化膜11/シリコン基板1界面で熱酸化が進行する場合もある。その場合は、図示しないが、第1のゲート酸化膜11は厚膜化する。
【0037】
次に、図示しないが、ゲート電極となるポリシリコン膜を、シリコン基板1の全面に堆積させる。ポリシリコン膜の膜厚は、例えば250[nm]程度である。以降は、一般的な半導体製造プロセスを用いて、ゲート電極の形成工程、ソース/ドレイン領域の形成工程、配線及び層間絶縁膜の形成工程を行う。これらの工程を経ることで、シリコン基板1の第1の領域に第1のゲート酸化膜11を有する第1のMOSトランジスタが完成すると共に、シリコン基板1の第2の領域に第2のゲート酸化膜21を有する第2のMOSトランジスタが完成する。
【0038】
(2)実施形態の効果
本発明の実施形態によれば、ゲート電極を介することなく、シリコン基板1にフッ素を直接注入する。このため、ゲート電極に含まれる不純物(即ち、ドナー元素或いはアクセプター元素)が、フッ素と共にゲート酸化膜中を拡散して、ゲート酸化膜/シリコン基板界面に導入されることを防ぐことができる。ゲート酸化膜/シリコン基板界面に、フッ素のみを導入することが容易となる。これにより、第1、第2のMOSトランジスタの閾値電圧の変動等を防ぐことができる。
【0039】
また、上記のフッ素を注入する工程は、第1のゲート酸化膜11を形成する工程(図2(a)参照)と、第2のゲート酸化膜21を形成する工程(図7(a)参照)との間で行う。これにより、シリコン基板1に注入されたフッ素は、第1のゲート酸化膜11を形成する時の熱ではなく、第2のゲート酸化膜21を形成する時の熱によって拡散する。このため、第1の領域の第1のゲート酸化膜11/シリコン基板1界面(即ち、第1の界面)におけるフッ素濃度を高く保つと共に、第2の領域の第2のゲート酸化膜21/シリコン基板1界面(即ち、第2の界面)におけるフッ素濃度も高く保つことができる。これにより、第1の界面と第2の界面の各々において、ダングリングボンドを十分に終端することができ、界面準位を低減することが可能となる。
【0040】
(3)その他
なお、上記の実施形態では、第1のゲート酸化膜11と第2のゲート酸化膜21とがそれぞれシリコン酸化膜(SiO)である場合について説明した。しかしながら、本発明において、第1のゲート酸化膜11と第2のゲート酸化膜21は、必ずしもシリコン酸化膜に限定されるものではない。第1のゲート酸化膜11と第2のゲート酸化膜21は、例えばシリコン酸化窒化膜(SiON)であってもよい。また、第1のゲート酸化膜11の膜種と第2のゲート酸化膜21の膜種は、同一種類に限定されるものでもない。例えば、第1のゲート酸化膜11はシリコン酸化膜であり、第2のゲート酸化膜21はシリコン酸化窒化膜であってもよい。このような場合も、上記の実施形態と同様の効果を奏する。
【0041】
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【符号の説明】
【0042】
1 シリコン基板
3 フィールド酸化膜
11 第1のゲート酸化膜
13 CVD酸化膜
15 レジストパターン
21 第2のゲート酸化膜
図1
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