(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の有機EL素子は、陽極と陰極の間に、少なくとも正孔輸送層、発光層を含む複数の層からなる有機層が挟持されている。そして、正孔輸送層側の発光層に隣接してEB層を有し、EB層からみて正孔輸送層は陽極側に配置される。発光層は燐光発光材料を含有し、EB層は上記一般式(1)で表されるインドロカルバゾール化合物を含有する。
【0031】
一般式(1)で表されるインドロカルバゾール化合物のいくつかは上記特許文献等で知られているが、その使用形態が異なる。しかし、正孔輸送性材料として知られているインドロカルバゾール化合物であれば、それを有利に使用できる。
【0032】
本発明で使用するインドロカルバゾール化合物は、一般式(1)において、Zはn価の炭素数6〜50の芳香族炭化水素基、炭素数3〜50の芳香族複素環基を表し、nは1〜6の整数を表す。Yは式(1a)で表わされるインドロカルバゾール骨格を有する基を表す。これらの芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基は置換基を有しても、有しなくてもよい。
【0033】
置換基を有しない芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基の好ましい具体例としては、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、インドール、カルバゾール、ナフタレン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、ナフチリジン、又はこれら芳香環が複数連結された芳香族化合物からn個の水素を除いて生じるn価の基が挙げられ、より好ましくは、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、インドール、カルバゾール、ナフタレン、又はこれら芳香環が複数連結された芳香族化合物から水素を除いて生じるn価の基が挙げられる。なお、芳香環が複数連結された芳香族化合物から生じる基である場合、連結される数は2〜10が好ましく、より好ましくは2〜7である。その場合、Yとの連結位置は限定されず、末端の環であっても中央部の環であってもよい。
【0034】
ここで、芳香環が複数連結された芳香族化合物から生じる基は、2価の基の場合、例えば、下記式で表わされる。
(Ar
1〜Ar
6は無置換の単環又は縮合環の芳香環)
【0035】
上記芳香環が複数連結された芳香族化合物から水素を除いて生じる基の具体例としては、例えばビフェニル、ターフェニル、ビピリジン、ビピリミジン、ビトリアジン、ターピリジン、ビストリアジルベンゼン、ジカルバゾリルベンゼン、カルバゾリルビフェニル、ジカルバゾリルビフェニル、フェニルターフェニル、カルバゾリルターフェニル、ビナフタレン、フェニルピリジン、フェニルカルバゾール、ジフェニルカルバゾール、ジフェニルピリジン、フェニルピリミジン、ジフェニルピリミジン、フェニルトリアジン、ジフェニルトリアジン、フェニルナフタレン、ジフェニルナフタレン等から水素を除いて生じるn価の基が挙げられる。
【0036】
上記芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が置換基を有する場合、好ましい置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、アセチル基、炭素数6〜24のジアリールアミノ基がある。より好ましくは、メチル基又はジフェニルアミノ基である。なお、芳香環が複数連結された芳香族化合物から生じる基も同様に置換基を有することができる。
【0037】
上記芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が置換基を有する場合、置換基の総数は1〜10である。好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜4である。また、上記芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が2つ以上の置換基を有する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。また、上記芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基の炭素数の計算において、置換基を有する場合、その置換基の炭素数を含む。
【0038】
一般式(1)において、nは1〜6の整数であるが、1〜4であることが好ましく、より好ましくは1〜3である。
【0039】
一般式(1)において、Yは式(1a)で表され、式(1a)中の環Aは式(1b)で表される。式(1b)において、Xはメチン又は窒素である。R
3は水素、炭素数1〜10のアルキル基族炭化水素基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、炭素数3〜11の芳香族複素環基、又はXを含む六員環と縮合する基を表す。R
3がXを含む六員環に縮合する基である場合、縮合し形成された縮合環からXを含む六員環を除いた環として、ピロール環、フラン環、チオフェン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ベンゼン環、ナフタレン環等であることができる。これらの環は置換基を有しても良く、好ましくは、置換基を有してもよいインドール環であり、その場合Xを含む6員環を含めるとカルバゾール環を形成することがよい。R
3がXを含む六員環と縮合する場合は、R
3がXを含む6員環に置換する位置の隣接位の炭素が置換可能な水素を有する場合であり、カルバゾール環となる場合は、更にXがメチンである場合に限られる。
【0040】
式(1a)において、環Bは式(1c)で表される。式(1c)において、Arは炭素数6〜50の芳香族炭化水素基、炭素数3〜50の芳香族複素環基を表す。これらの芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基は置換基を有しても、有しなくてもよい。これらの芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基の好ましい例は、1価の基であることを除き上記Zを構成する芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基と同様である。また、式(1c)におけるNとArの置換位置は限定されない。
【0041】
置換基を有しない芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基の好ましい具体例としてはベンゼン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、インドール、カルバゾール、ナフタレン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、ナフチリジンより生じる1価の基が挙げられ、より好ましくは、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、インドール、カルバゾール又はナフタレンより生じる1価の基が挙げられる。また、これら芳香環が複数連結された芳香族化合物より生じる1価の基も好ましく挙げられ、例えばビフェニル、ターフェニル、ビピリジン、ビピリミジン、ビトリアジン、ターピリジン、ビストリアジルベンゼン、ジカルバゾリルベンゼン、カルバゾリルビフェニル、ジカルバゾリルビフェニル、フェニルターフェニル、カルバゾイルターフェニル、ビナフタレン、フェニルピリジン、フェニルカルバゾール、ジフェニルカルバゾール、ジフェニルピリジン、フェニルピリミジン、ジフェニルピリミジン、フェニルトリアジン、ジフェニルトリアジン、フェニルナフタレン、ジフェニルナフタレン等より生じる1価の基が挙げられる。また、置換基を有する場合、好ましい置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、アセチル基又は炭素数6〜24のジアリールアミノ基である。より好ましくは、メチル基又はジフェニルアミノ基である。
【0042】
式(1a)において、R
1、R
2はそれぞれ独立して水素、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜11の芳香族複素環基を表す。好ましくは水素、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、ピリジル基、ピリミジル基、トリアジル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ビピリミリジル基又はカルバゾリル基であり、より好ましくは水素、フェニル基又はカルバゾリル基である。
【0043】
なお、上記R
1、R
2及びR
3が、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜11の芳香族複素環基である場合、それぞれ好ましい基は共通する。
【0044】
上記一般式(1)で表されるインドロカルバゾール化合物としては、一般式(2)で表されるインドロカルバゾール化合物が好ましいものとしてある。
【0045】
一般式(2)において、環Bは隣接環と縮合する式(1c)で表される複素環を示す。この環B又は式(1c)は、一般式(1)の環B又は式(1c)と同じ意味を有する。また、Z、Ar、R
1、R
2は一般式(1)のZ、Ar、R
1、R
2と同じ意味を有する。R
3は水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、又は炭素数3〜11の芳香族複素環基を表す。ここで、上記芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基は、縮環構造でないことが好ましい。nは1又は2の整数を表す。
【0046】
上記一般式(2)で表されるインドロカルバゾール化合物としては、一般式(3)〜(6)のいずれかで表されるインドロカルバゾール化合物が好ましいものとしてある。
【0047】
一般式(3)〜(6)において、Z、Ar、R
1、R
2、R
3及びnは一般式(2)のそれらと同じ意味を有する。
【0048】
一般式(1)〜(6)で表されるインドロカルバゾール化合物は、公知の手法を用いて合成することができる。
【0049】
例えば、一般式(3)で表されるインドロカルバゾール化合物のインドロカルバゾール骨格は、Synlett,2005,No.1,p42−48に示される合成例を参考にして以下の反応式により合成することができる。
【0051】
また、一般式(4)及び(5)で表されるインドロカルバゾール骨格は、The Journal of Organic Chemistry,2007,72(15)5886 ならびに、Tetrahedron,1999,55,p2371に示される合成例を参考にして以下の反応式により合成することができる。
【0053】
更に、一般式(6)で表されるインドロカルバゾール骨格は、Archiv der Pharmazie (Weinheim, Germany),1987,320(3),p280−2に示される合成例を参考にして以下の反応式により合成することができる。
【0055】
前述の反応式で得られる各インドロカルバゾールを、対応するハロゲン置換芳香族化合物等とカップリング反応させることで、インドロカルバゾール骨格中に存在する2つの窒素に置換する水素が芳香族基に置換され、一般式(1)〜(6)で表される本発明のインドロカルバゾール化合物を合成することができる。
【0056】
以下に、一般式(1)〜(6)で表されるインドロカルバゾール化合物の好ましい具体例を示すが、本発明で使用されるインドロカルバゾール化合物はこれらに限定するものではない。
【0072】
本発明の有機EL素子は、陽極と陰極の間に、正孔輸送層と発光層を含む有機層を挟持してなり、発光層に燐光発光材料を含有し、正孔輸送層と発光層の間に、発光層と隣接して、一般式(1)で表されるインドロカルバゾール化合物を含有するEB層を有する。
【0073】
ここで、一般式(1)で表されるインドロカルバゾール化合物に含まれる一部の化合物は正孔輸送層の正孔輸送性材料や発光層のホスト材料に使用されることが知られているが、本発明においては、正孔輸送層と発光層の間に上記EB層を設ける。そして、EB層とは別に設けられる正孔輸送層に使用される材料はEB層に使用されるインドロカルバゾール化合物のHOMOエネルギーより大きいHOMOエネルギーを有する正孔輸送性材料が使用され、インドロカルバゾール化合物以外の正孔輸送性材料が好ましく使用される。
【0074】
EB層の隣接層の一つは発光層であり、他の一つは正孔輸送層又は正孔輸送性材料を含む層であることが好ましい。ここで、EB層と陽極の間に配置された正孔輸送性材料を含む層は正孔輸送層としても機能するので、本明細書ではこの層も正孔輸送層という。したがって、正孔輸送層は1層であっても、2層以上であってもよい。
【0075】
EB層に含有されるインドロカルバゾール化合物のLUMOエネルギーは、隣接する発光層に含まれる化合物のLUMOエネルギーよりも大きいことが好ましい。隣接する発光層が複数の化合物を含む場合は、その主成分となる化合物より大きいことが好ましい。インドロカルバゾール化合物のLUMOエネルギーは、発光層に含まれる化合物(主成分)のLUMOエネルギーより、0.1eV以上、好ましくは0.3eV以上、さらに好ましくは0.5eV以上大きいことがよい。
【0076】
インドロカルバゾール化合物のLUMOエネルギーは好ましくは−1.2eV以上であり、より好ましくは−1.0eV以上、最も好ましくは−0.9eV以上である。
【0077】
また、正孔輸送層に含有される正孔輸送性材料のHOMOエネルギーが、上記一般式(1)で表されるインドロカルバゾール化合物のHOMOエネルギーよりも大きいことが好ましい。また、特に限定されるものではないが、陽極又は正孔注入層に隣接する正孔輸送材料のHOMOエネルギーが、−4.8eV以上であることが好ましい。
【0078】
本発明の有機EL素子の好ましい形態としては、発光層が少なくとも一つの燐光発光材料と、少なくとも一つの電子輸送性ホスト材料を含有するものである。この場合、発光層中を流れる電子はEBLに効率的に阻止され、正孔輸送層への電子の漏れが低減する。これにより、発光層中での正孔と電子の再結合確率が向上し、燐光発光材料の発光効率が向上する。
【0079】
より好ましい有機EL素子の形態としては、上記に加えて、陰極と発光層の間に電子輸送層を有する。電子輸送層に用いられる材料の好ましい電子移動速度としては1×10
−7cm
2/V・s以上であり、更に好ましくは、1×10
−6cm
2/V・s以上、最も好ましくは1×10
−5cm
2/V・s以上である。
【0080】
なお、本明細書でいうLUMOエネルギー及びHOMOエネルギーの値は、米国Gaussian社製の分子軌道計算用ソフトウェアであるGaussian03を用いて求めた値であり、B3LYP/6−31G*レベルの構造最適化計算により算出した値と定義する。
【0081】
また、本明細書で言う電子移動速度の値は、Time Of Fright (TOF)法にて測定した電場E
1/2=500(V/cm)
1/2の時の値とする。
【0082】
次に、本発明の有機EL素子の構造について、図面を参照しながら説明するが、本発明の有機EL素子の構造は何ら図示のものに限定されるものではない。
【0083】
図1は本発明に用いられる一般的な有機EL素子の構造例を模式的に示す断面図であり、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5はEB層、6は発光層、7は電子輸送層、8は陰極を各々表わす。本発明の有機EL素子では、必須の層として、陽極、正孔輸送層、EB層、発光層及び陰極を有する。有利には、陽極、正孔輸送層、EB層、発光層、電子輸送層及び陰極を有する。
【0084】
また、本発明の有機EL素子は必須の層以外の層に、電子輸送層、電子注入層、正孔阻止層を有することもできる。更に、正孔輸送層は正孔注入機能を有した正孔注入輸送層でもよく、電子輸送層は電子注入機能を有した電子注入輸送層でもよい。
【0085】
なお、本発明の有機EL素子は、
図1とは逆の構造、すなわち、基板1上に陰極8、電子輸送層7、発光層6、EB層5、正孔輸送層4、陽極2の順に積層することも可能であり、この場合も、必要により層を追加したり、省略したりすることが可能である。
【0086】
以下に、各部材及び各層について説明する。
【0087】
−基板−
本発明の有機EL素子は、基板に支持されていることが好ましい。この基板については、特に制限はなく、従来から有機EL素子に慣用されているものであればよく、例えば、ガラス、透明プラスチック、石英などからなるものを用いることができる。
【0088】
−陽極−
有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO
2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In
2O
3−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。更に膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0089】
−陰極−
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al
2O
3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al
2O
3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極又は陰極のいずれか一方が、透明又は半透明である。
【0090】
また、陽極の説明で挙げた導電性透明材料を陰極に用いることで、透明又は半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
【0091】
−発光層−
発光層は燐光発光層であり、燐光発光材料とホスト材料を含む。発光層における燐光発光材料としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金から選ばれる少なくとも一つの金属を含む有機金属錯体を含有するものがよい。かかる有機金属錯体は、前記特許文献等で公知であり、これらが選択されて使用可能である。
【0092】
好ましい燐光発光材料としては、Ir等の貴金属元素を中心金属として有するIr(ppy)3等の錯体類、Ir(bt)2・acac3等の錯体類、PtOEt3等の錯体類が挙げられる。これらの錯体類の具体例を以下に示すが、下記の化合物に限定されない。
【0095】
前記燐光発光材料が発光層中に含有される量は、1〜20重量%、好ましくは5〜10重量%の範囲にあることがよい。
【0096】
発光層におけるホスト材料は、多数の特許文献等により知られているので、それらから選択することができる。ホスト材料の具体例としては、特に限定されるものではないが、インドール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリジン系化合物、ポルフィリン系化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾール誘導体の金属錯体に代表される各種金属錯体、ポリシラン系化合物、ポリ(N-ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等が挙げられる。上記ホスト材料は、発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高いガラス転移温度を有する化合物であることが好ましい。本明細書で言うホスト材料とは、有機EL素子駆動中に燐光発光しない材料と定義する。
【0097】
一般的に、ホスト材料は、正孔と電子の両電荷の輸送能を有するが、特に、正孔輸送性能に優れた材料を正孔輸送性ホスト材料、また電子輸送能に優れた材料を電子輸送性ホスト材料と呼ぶ。
【0098】
本発明の有機EL素子においては、電子輸送性ホスト材料を用いることが好ましい。本明細書で言う電子輸送性ホスト材料とは、電子移動度が正孔移動速度より大きいホスト材料、又は電子移動速度が1×10
−7cm
2/V・s以上であるホスト材料と定義する。特に、電子輸送性ホスト材料は電子移動速度が1×10
−6cm
2/V・s以上であることが好ましい。
【0099】
具体的な電子輸送性ホスト材料としてはカルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール誘導体、ピラゾール、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体等が挙げられる。
【0100】
−注入層−
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、正孔注入層と電子注入層があり、陽極と発光層又は正孔輸送層の間、及び陰極と発光層又は電子輸送層との間に存在させてもよい。注入層は必要に応じて設けることができる。
【0101】
−阻止層−
阻止層は、発光層中に存在する電荷(電子若しくは正孔)及び/又は励起子の発光層外への拡散を阻止することができる。電子阻止層は、発光層及び正孔輸送層の間に配置されることができ、電子が正孔輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。同様に、正孔阻止層は発光層及び電子輸送層の間に配置されることができ、正孔が電子輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。阻止層はまた、励起子が発光層の外側に拡散することを阻止するために用いることができる。すなわち電子阻止層、正孔阻止層はそれぞれ励起子阻止層としての機能も兼ね備えることができる。本明細書でいうEB層は、一つの層で電子阻止層及び/又は励起子阻止層の機能を有する層を含む意味で使用される。
【0102】
−正孔阻止層−
正孔阻止層は電子を輸送しつつ、正孔が電子輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。正孔阻止層の材料としては、アルミニウム金属錯体、スチリル誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ボロン誘導体等が挙げられる。
【0103】
−電子阻止層−
電子阻止層は正孔を輸送しつつ、電子が正孔輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔が再結合する確率を向上させることができる。
【0104】
電子阻止層の材料としては、一般式(1)で表されるインドロカルバゾール化合物を用いることが好ましい。
【0105】
−励起子阻止層−
励起子阻止層とは、発光層内で正孔と電子が再結合することにより生じた励起子が電荷輸送層に拡散することを阻止するための層であり、本層の挿入により励起子を効率的に発光層内に閉じ込めることが可能となり、素子の発光効率を向上させることができる。励起子阻止層は発光層に隣接して陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。すなわち、励起子阻止層を陽極側に有する場合、正孔輸送層と発光層の間に、発光層に隣接して該層を挿入することができ、陰極側に挿入する場合、発光層と陰極との間に、発光層に隣接して該層を挿入することができる。また、陽極と、発光層の陽極側に隣接する励起子阻止層との間には、正孔注入層や電子阻止層などを有することができ、陰極と、発光層の陰極側に隣接する励起子阻止層との間には、電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層などを有することができる。
【0106】
本発明に係るEB層は、電子阻止層及び/又は励起子阻止層として機能するので、発光層と陽極の間にはEB層に加えて電子阻止層及び励起子阻止層を設けないことが有利である。なお、発光層と陰極の間には必要により設けることができる。EB層の膜厚は好ましくは3〜100nmであり、より好ましくは5〜30nmである。
【0107】
励起子阻止層の材料としては、一般式(1)で表されるインドロカルバゾール化合物を用いることが好ましく、該誘導体は陽極側の励起子阻止層として用いられることがより好ましいが、他の公知の励起子阻止材料であってもよい。
【0108】
使用できる公知の励起子阻止層用材料としては例えば、1,3−ジカルバゾリルベンゼン(mCP)や、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラトアルミニウム(III)(BAlq)が挙げられる。
【0109】
−正孔輸送層−
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、正孔輸送層は単層又は複数層設けることができる。正孔輸送層はEB層と陽極の間に設けられ、正孔輸送材料を含有する。正孔輸送層は、陽極又は正孔注入層に隣接することが好ましい。
【0110】
正孔輸送材料としては、正孔の輸送機能を有するものであり、注入機能を兼ねても良い。正孔輸送材料としては有機物、無機物のいずれであってもよい。使用できる公知の正孔輸送材料としては例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物を用いることが好ましく、芳香族第3級アミン化合物を用いることがより好ましい。
【0111】
EB層に含有されるインドロカルバゾール化合物も正孔輸送材料の1種であるが、この化合物を含有する層を正孔輸送層とは別に発光層側に配置することにより、EB層として機能する。
【0112】
2層以上の正孔輸送層を使用した有機EL素子は知られているが、インドロカルバゾール化合物を本発明の有機EL素子におけるEB層のような位置に配置して使用した例は知られていない。そして、上記EB層を設けることにより、これまでにない顕著な効果を示す。この優れた効果を示すEB層は、大きいLUMOエネルギーによる優れた電子阻止効果、適度なHOMOエネルギーと正孔輸送能力が、電子や励起子が発光層から漏れることを防ぎ、安定で良好な素子特性を与えるものと思われる。正孔輸送材料が多数知られている状況であっても、このような良好な素子特性を与えるEB層用の化合物は知られておらず、本発明者らが初めて見出したものである。なお、上記インドロカルバゾール化合物を、通常の正孔輸送層に含有させた場合で、正孔輸送層が単層であると、HOMOエネルギーが合わず、駆動電圧が高電圧化したり、短寿命傾向となる。
【0113】
−電子輸送層−
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、電子輸送層は単層又は複数層設けることができる。
【0114】
電子輸送材料としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。使用できる電子輸送層としては例えば、Alq3に代表されるアルミニウム錯体類、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。また、含リン誘導体や含ケイ素誘体は高い電子移動速度を有しており、好ましい電子輸送材料である。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0115】
−EB層−
EB層は、電子阻止層、励起子阻止層又は両者の機能を有する層であり、一般式(1)で表されるインドロカルバゾール化合物を含有する。
【0116】
本発明の有機EL素子は、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれであってもよい。本発明の有機EL素子は、発光層と隣接して、正孔輸送層と燐光発光層の間にEB層を設けることにより、発光層から正孔輸送層への電子及び/又は励起子の漏れを阻止することが可能となり、従来の素子よりも発光効率が高くかつ駆動安定性においても大きく改善された素子が得られる。
【実施例】
【0117】
以下、本発明を実施例によって更に詳しく説明するが、本発明は勿論、これらの実施例に限定されるものではなく、その要旨を越えない限りにおいて、種々の形態で実施することが可能である。
【0118】
以下に本発明化合物の合成例を示す。なお、化合物番号は、上記化学式に付した番号に対応する。
【0119】
合成例1
化合物1−1の合成
【0120】
窒素雰囲気下、インドール20.0 g (0.17 mol)の脱水ジエチルエーテル300 ml溶液を室温で撹拌しながら、濃硫酸211.7 g (2.16 mol)に濃塩酸112.0 g (1.10 mol)を1時間かけて滴下し発生させた塩化水素ガスを吹き込んだ。反応溶液を室温で15時間撹拌した後に、酢酸エチル121.0 gと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液303.2 gを加えた。水層を酢酸エチル(2 × 100 ml)で抽出した後に、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100 ml)と蒸留水(2 × 100 ml)で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、硫酸マグネシウムをろ別し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をトルエン150 mlに溶解し、パラジウム/活性炭2.5 gを加えた後に、111℃で加熱還流しながら3時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却した後に、パラジウム/活性炭をろ別し、溶媒を減圧留去した。再結晶により精製を行い、白色結晶として中間体A 14.7 g(収率37%)を得た。
【0121】
【0122】
窒素雰囲気下、中間体A 14.1 g (0.061 mol)、N,N -ジメチルアミノアセトアルデヒドジエチルアセタール11.4 g (0.071 mol)と酢酸110.0 gを118℃で加熱還流しながら8時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却した後に、析出した結晶をろ取し、酢酸(30ml)で洗浄した。得られた結晶をリスラリー精製し、白色結晶として中間体B 10.4 g (収率67%)を得た。
【0123】
【0124】
窒素雰囲気下、中間体B 10.0 g (0.039 mol)、ヨードベンゼン79.6 g (0.39 mol)、銅12.4 g (0.20 mol)、炭酸カリウム16.2 g (0.12 mol)とテトラグリム200 mlを190℃で加熱しながら72時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却し、無機物をろ別した後に、この溶液に蒸留水(200 ml)を撹拌しながら加え、析出した結晶をろ取した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、白色固体として化合物1−1 10.0 g (収率65%)を得た。融点176℃、APCI-TOFMS, m/z 409 [M+H]
+ 、
1H-NMR測定結果(測定溶媒:THF-d8)を
図2に示す。
【0125】
合成例2
化合物2−1の合成
【0126】
窒素雰囲気下、1,2-シクロヘキサンジオン33.3 g (0.30 mol)、フェニルヒドラジン塩酸塩86.0 g (0.60 mol)とエタノール1000 mlを室温で撹拌しながら、濃硫酸3.0 g (0.031 mol)を5分かけて滴下した後に、65℃で加熱しながら4時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却した後に、析出した結晶をろ取し、エタノール(2 × 500 ml)を用いて洗浄を行い、紫茶色結晶80.0 gを得た。この結晶72.0 g (0.26 mol)、トリフルオロ酢酸72.0 gと酢酸720.0 gを100℃で加熱しながら15時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却した後に、析出した結晶をろ取し、酢酸(200 ml)で洗浄した。リスラリー精製を行い、白色結晶として中間体C 30.0 g (収率45%)を得た。
【0127】
【0128】
窒素雰囲気下、中間体C 10.0 g (0.039 mol)、ヨードベンゼン79.6 g(0.39 mol)、銅12.4 g (0.20 mol)、炭酸カリウム2 1.6 g (0.16 mol)とテトラグリム200 mlを190℃で加熱しながら120時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却し、無機物をろ別した後に、この溶液に蒸留水(200 ml)を撹拌しながら加え、析出した結晶をろ取した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、白色固体として化合物2−1 9.6 g (収率60%)を得た。融点263℃、APCI-TOFMS, m/z 409 [M+H]
+ 、
1H-NMR測定結果(測定溶媒:THF-d8)を
図3に示す。
【0129】
合成例3
化合物3−1の合成
【0130】
窒素雰囲気下、3,3 ’-メチレンジインドール50.69 g (0.21 mol)、オルトギ酸トリエチル30.55 g (0.21 mol)とメタノール640 gを室温で撹拌しながら、濃硫酸5.0 g (0.052 mol)を3分かけて滴下した後に、65℃で加熱還流しながら1時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却した後に、析出した結晶をろ取し、メタノールにて洗浄し、赤茶色結晶として中間体D 36.81 g (収率70%)を得た。
【0131】
【0132】
窒素雰囲気下、中間体D 10.0 g (0.039 mol)、ヨードベンゼン39.8 g (0.20 mol)、銅12.4 g (0.20 mol)、炭酸カリウム21.6 g (0.16 mol)とテトラグリム200 mlを190℃で加熱しながら、72時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却し、無機物をろ別した後に、この溶液に蒸留水(200 ml)を撹拌しながら加え、析出した結晶をろ取した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、白色固体として化合物3−1 11.9 g (収率75%)を得た。融点309℃、APCI-TOFMS, m/z 409 [M+H]
+ 、
1H -NMR測定結果(測定溶媒:THF-d8)を
図4に示す。
【0133】
以下に、実施例中の有機EL素子で使用した各材料を示す。
【0134】
Time Of Fright (TOF)法にて測定した2,6−ジ(4−カルバゾリルフェニル)ピリジン(DCZP)及びAlq3の電子移動速度を次に示す。なお、DCZPはホスト材料として、Alq3は電子輸送材料として使用される。
以下に示す数値は、電場E
1/2=500(V/cm)
1/2の時の値を示す。
DCZP:3×10
−6cm
2/V・s
Alq3:1×10
−6cm
2/V・s
【0135】
Gaussian03を用い、いくつかの化合物について、B3LYP/6−31G*レベルの構造最適化計算により算出したLUMOエネルギーを表1に示す。
【0136】
【表1】
【0137】
Gaussian03を用い、いくつかの化合物について、B3LYP/6−31G*レベルの構造最適化計算により算出したHOMOエネルギーを表2に示す。
【0138】
【表2】
【0139】
実施例1
膜厚150nmのITOからなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度4.0×10
-4 Paで積層させた。まず、ITO上に正孔注入層としてCuPcを25nmの厚さに形成し、次に孔輸送層としてNPBを30nmの厚さに形成した。次に、正孔輸送層上に、EB層として化合物1−1を10nmの厚さに形成した。次に発光層としてDCZPとIr(PPy)
3とを異なる蒸着源から、共蒸着し、40nmの厚さに形成した。この時、Ir(PPy)
3の濃度は6.0wt%であった。次に、電子輸送層としてAlq3を20nmの厚さに形成した。更に、電子輸送層上に、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を0.5nmの厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、電極としてアルミニウム(Al)を170nmの厚さに形成し、有機EL素子を作成した。
【0140】
得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、表3のような発光特性を有することが確認された。表1において、輝度、電圧及び発光効率は、2.5mA/cm
2での駆動時の値を示し、また、輝度半減時間は、20mA/cm
2の一定電流駆動で評価し、この結果を初期輝度1000cd/m
2の場合に換算した値を示す。素子発光スペクトルの極大波長は517nmであり、Ir(PPy)
3からの発光が得られていることがわかった。
【0141】
実施例2
実施例1において、EB層として化合物2−1以外を用いた以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作成した。素子発光スペクトルの極大波長は517nmであり、Ir(PPy)
3からの発光が得られていることがわかった。得られた発光特性を表1に示す。
【0142】
実施例3
実施例1において、EB層として化合物3−1以外を用いた以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作成した。素子発光スペクトルの極大波長は517nmであり、Ir(PPy)
3からの発光が得られていることがわかった。得られた発光特性を表1に示す。
【0143】
実施例4
実施例1において、EB層として化合物1−7以外を用いた以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作成した。
【0144】
実施例5
実施例1において、EB層として化合物2−12以外を用いた以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作成した。
【0145】
実施例6
実施例1において、EB層として化合物6−2以外を用いた以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作成した。
【0146】
比較例1
実施例1において、正孔輸送層としてのNPBの膜厚を40nmとし、電子阻止層を使用しない以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作成した。
【0147】
比較例2
実施例1において、正孔輸送層として化合物1−1を用い、その膜厚を40nmとし、EB層を使用しない以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作成した
【0148】
比較例3
実施例1において、EB層としてmCPを用いた以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作成した。
【0149】
実施例1〜6及び比較例1〜3で得られた有機EL素子の素子発光スペクトルの極大波長は、いずれも517nmであり、Ir(PPy)
3からの発光が得られていることがわかった。発光特性を表3に示す。
【0150】
【表3】
【0151】
表3より、EB層を使用しない比較例1に対して、特定のインドロカルバゾール誘導体をEB層に用いた実施例1、2、3、4、5及び6においては、輝度の向上ならびに駆動電圧の低下が観られており、発光効率が向上することが判る。更に、駆動寿命特性が大幅に改善される。一方、mCPをEB層に用いた比較例3では、輝度の向上は観られるものの駆動電圧が上昇し、また駆動寿命が低下しており、インドロカルバゾール誘導体の優位性が判る。インドロカルバゾール誘導体を正孔輸送層として使用した比較例2においては、輝度は向上しているものの駆動電圧が上昇し、また寿命特性の改善は観られず、このことからインドロカルバゾール誘導体のEB層としての使用が有効であることがわかる。これらの結果より、上記インドロカルバゾール誘導体をEB層に用いることにより、高効率で、良好な寿命特性を示す有機EL燐光素子を実現することが明らかである。
【0152】
実施例7
膜厚150nmのITOからなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度4.0×10
-4 Paで積層させた。まず、ITO上に正孔注入層としてCuPcを25nmの厚さに形成し、次に孔輸送層としてNPBを45nmの厚さに形成した。次に、正孔輸送層上に、EB層として化合物1−1を10nmの厚さに形成した。次に発光層としてDCZPとIr(piq)
2acacとを異なる蒸着源から、共蒸着し、40nmの厚さに形成した。この時、Ir(piq)
2acacの濃度は4.5wt%であった。次に、電子輸送層としてAlq3を37.5nmの厚さに形成した。更に、電子輸送層上に、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を0.5nmの厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、電極としてアルミニウム(Al)を170nmの厚さに形成し、有機EL素子を作成した。
【0153】
得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、表4のような発光特性を有することが確認された。表4において、輝度、電圧及び発光効率は、2.5mA/cm
2の電流駆動時の値を示し、また、輝度半減時間は、20mA/cm
2の一定電流駆動で評価し、この結果を初期輝度1000cd/m
2の場合に換算した値を示す。素子発光スペクトルの極大波長は620nmであり、Ir(piq)
2acacからの発光が得られていることがわかった。
【0154】
実施例8
実施例7において、EB層として化合物1−40以外を用いた以外は実施例7と同様にして有機EL素子を作成した。
【0155】
実施例9
実施例7において、EB層として化合物2−12以外を用いた以外は実施例7と同様にして有機EL素子を作成した。
【0156】
実施例10
実施例7において、EB層として化合物6−2以外を用いた以外は実施例7と同様にして有機EL素子を作成した。
【0157】
比較例4
実施例4において、正孔輸送層としてのNPBの膜厚を55nmとし、EB層を使用しない以外は、実施例4と同様にして有機EL素子を作成した。
【0158】
実施例7〜10及び比較例4で得られた有機EL素子の素子発光スペクトルの極大波長は、いずれも620nmであり、Ir(piq)
2acacからの発光が得られていることがわかった。得られた発光特性を表4に示す。
【0159】
【表4】
【0160】
表4より、EB層を使用しない比較例4に対して、特定のインドロカルバゾール誘導体をEB層に用いた実施例7、8、9および10においては、発光効率と駆動寿命が大幅に向上していることが判る。
【0161】
本発明で用いられるインドロカルバゾール化合物は、良好な正孔輸送特性を示し、且つ大きいLUMOエネルギー有する。そのため、これを含有するEB層を燐光発光層と隣接して正孔輸送層と燐光発光層の間に設けることにより、陽極から発光層への正孔の輸送が効果的に行われると同時に、発光層から正孔輸送層への電子や励起子の漏れを阻止することが可能となり、その結果、素子の発光効率向上とともに、駆動寿命を改善が可能となる。すなわち、本発明におけるEB層は、電子阻止層及び/又は励起子阻止層としての機能を有しており、このEB層が有機EL素子の初期特性ならびに駆動寿命を大幅に改善する。
加えて、該インドロカルバゾール化合物は良好な薄膜安定性と熱安定性を有することを見出し、これを含むEB層を有する有機EL素子が、優れた駆動安定性を示す耐久性の高い有機EL素子であることを明らかにした。
本発明の有機EL素子は、発光特性、駆動寿命ならびに耐久性において、実用上満足できるレベルにあり、フラットパネルディスプレイ(携帯電話表示素子、車載表示素子、OAコンピュータ表示素子やテレビ等)、面発光体としての特徴を生かした光源(照明、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板や標識灯等への応用において、その技術的価値は大きいものである。