特許第5723971号(P5723971)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5723971
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】複合銅箔及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 7/06 20060101AFI20150507BHJP
   C25D 1/04 20060101ALI20150507BHJP
   C25D 5/12 20060101ALI20150507BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20150507BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20150507BHJP
   B32B 15/01 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   C25D7/06 A
   C25D1/04 311
   C25D5/12
   C23C28/00 C
   H05K1/09 A
   B32B15/01 H
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-507239(P2013-507239)
(86)(22)【出願日】2012年2月10日
(86)【国際出願番号】JP2012053103
(87)【国際公開番号】WO2012132573
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2013年7月18日
(31)【優先権主張番号】特願2011-66859(P2011-66859)
(32)【優先日】2011年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX日鉱日石金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100093296
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 勇
(72)【発明者】
【氏名】山西 敬亮
(72)【発明者】
【氏名】神永 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】福地 亮
【審査官】 向井 佑
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/028004(WO,A1)
【文献】 特開2005−260250(JP,A)
【文献】 特開2007−186797(JP,A)
【文献】 特開2004−169181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 7/06
C25D 5/12
H05K 1/09
B32B 15/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが10〜150μmの圧延銅箔又は電解銅箔の両面又は片面に、厚さ0.5〜3μmのニッケル層、厚さ0.1〜5μmの薄銅層(C)及び厚銅層(D)を備えた複合銅箔で、前記厚銅層(D)の板厚精度が±5%未満で、前記ニッケル層と前記薄銅層(C)との間の剥離強度が0.5kg/cm以上であることを特徴とする複合銅箔。
【請求項2】
銅層(D)の厚さが5μm以上であることを特徴とする請求項に記載の複合銅箔。
【請求項3】
前記薄銅層(C)及び/又は厚銅層(D)の上に、Cr含有量が10〜50μg/dm2である防錆層を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合銅箔。
【請求項4】
厚さが10〜150μmの圧延銅箔又は電解銅箔(A)の両面又は片面に、厚さ0.5〜3μmのニッケル層(B)を電気めっきにより形成し、該(B)層のめっき直後に、連続して薄銅層(C)を電気めっきにより形成し、さらにこの(C)層の上に、非連続工程において板厚精度が±5%未満の厚銅層(D)を電気めっきにより形成することを特徴とする複合銅箔の製造方法。
【請求項5】
厚さが10〜150μmの圧延銅箔又は電解銅箔(A)の両面又は片面に、厚さ0.5〜3μmのニッケル層(B)を電気めっきにより形成し、該(B)層のめっき直後に、連続して厚さ0.1〜5μmの薄銅層(C)を電気めっきにより形成し、さらにこの薄銅層(C)の上に、非連続工程において5μm以上で板厚精度が±5%未満の厚銅層(D)を電気めっきにより形成することを特徴とする複合銅箔の製造方法。
【請求項6】
前記薄銅層(C)及び/又は厚銅層(D)の上に、Cr含有量が10〜50μg/dm2である防錆層を形成することを特徴とする請求項4又は5に記載の複合銅箔の製造方法。
【請求項7】
前記薄銅層(C)の上に、予めCr含有量が10〜50μg/dm2である防錆層を形成し、その後、厚銅層(D)を形成することを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の複合銅箔の製造方法。
【請求項8】
前記厚銅層(D)の上に、Cr含有量が10〜50μg/dm2である防錆層を形成することを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の複合銅箔の製造方法。
【請求項9】
前記薄銅層(C)を、ドラム型電極を用いて電気めっきにより形成することを特徴とする請求項4〜8のいずれか一項記載の複合銅箔の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチングにより電子回路の形成に適した複合銅箔とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子・電気機器に印刷回路用銅箔が広く使用されているが、この印刷回路用銅箔は、一般に合成樹脂ボードやフイルム等の基材に接着剤を介して、あるいは接着剤を用いずに高温高圧下で接着して銅張積層板を製造し、その後、目的とする回路を形成するためにレジスト塗布及び露光工程により回路を印刷し、さらに銅箔の不要部分を除去するエッチング処理を経て、また、さらに各種の素子が半田付けされてエレクトロデバイス用の印刷回路が形成されている。
【0003】
近年、印刷配線板は、配線密度が高くなり、電子部品の接続端子の間隔が小さくなっている。必然的に、銅張り積層板の銅箔の厚さを薄くすることが要求されている。また、積層板の多層構造化も時代の流れとして、銅箔には厚銅箔/バリア層/薄銅箔のような複合銅箔が要求されてきている。このような構造を有する銅張り積層板を製作する場合の出発材料となる銅箔が重要な機能を備える必要があることは言うまでもない。
【0004】
厚銅箔/ニッケル層/薄銅箔との3層構造を有する銅箔としては、ベース(担持体)の材料として厚手の圧延銅箔又は電解銅箔を使用し、その上に薄いニッケル被膜を形成、さらにその上に薄い銅層を形成する。このような構成を有する複合銅箔としては、担持体付き銅箔が知られている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献5参照)。
【0005】
担持体付き銅箔は、薄い銅層がエッチングにより回路を形成する基本材料とするため、最終的には、圧延銅箔又は電解銅箔のベースとなる銅層はエッチングにより除去され、ニッケル層も除去される。そして薄い銅層側に電子回路を形成される。この場合の圧延銅箔又は電解銅箔のベースとなる銅層は回路構成用の薄い銅箔の取扱を助ける役割をするもので、ニッケル層は中間層の役割を果たすものであるため、回路形成時に除去される。
【0006】
したがって、これらの目的を有する厚銅箔/ニッケル層/薄銅箔との3層構造である複合銅箔には、ニッケル層と薄い銅箔との間の密着性は、とり扱い中に剥離したりしなければ良いレベルでよく、あまり重要ではない。
一方、銅層とニッケル層との密着性に着目した文献もある。特許文献6では、このため、ニッケル層と接触する銅層の表面粗さを特定の条件として、耐剥離性を向上させるという提案がなされている。
【0007】
ニッケル層の上にはわずかでも酸化膜が形成されるために、その上に銅をめっきした場合に、ニッケル層とその上に形成された銅層との密着性は、表面を粗くしても、この酸化膜が原因で剥離しやすさを大きくは向上しない。
さらに、ニッケル層の上に薄く密着性向上層として、例えば銅層を形成し、その銅層と厚手の銅箔とを圧接する提案がなされている(特許文献4参照)。
【0008】
この他、ニッケルを中間に挟んだ銅の圧延によるクラッド材(特許文献7、特許文献8参照)が提案されている。しかしながら、めっき工程と圧延工程の異種工程が組み合わさる場合には、製造コストが大きくなり、また、このような機械的な方法では、均一な厚みでかつ出来るだけ薄い銅の積層構造を得ることが難しいという問題がある。
【0009】
また、圧延することで、圧延ロールと接する銅箔表面は滑らかになるため、樹脂との密着が必要な場合には粗化処理を施すことが必要となる。
いずれにしても、今日、印刷配線板の配線密度が高くなり、電子部品の接続端子の間隔を小さくすることが要求され、さらにこれらを低コストで作製するという課題を解決することは、現在のところ無いと考えられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭58−108785号公報
【特許文献2】特許第3680321号公報
【特許文献3】特許第3543348号公報
【特許文献4】特開2005−72425号公報
【特許文献5】特許第4191977号公報
【特許文献6】特開平8−181432号公報
【特許文献7】国際公開WO00−05934号公報
【特許文献8】特許第4195162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、銅/ニッケル/銅からなる複合銅箔の製造に際し、ニッケルと銅、または銅と銅の層間における接合強度を向上させ、さらには銅層の板厚精度が優れた、エッチングによる電子回路の形成に適した複合銅箔とその製造方法を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、銅とニッケルめっきの工程を工夫することにより、従来の複合銅箔の弱点であるニッケルと銅の接合強度不足を改善することにより、従来の問題を解決できるとの知見を得た。さらに板厚精度の優れた銅層を形成できることの知見を得た。
【0013】
本発明はこの知見に基づいて、
(1)厚さが10〜150μmの圧延銅箔又は電解銅箔の両面又は片面に、厚さ0.5〜3μmのニッケル層、厚さ5.1μm以上の銅層からなる複合銅箔で、前記銅層の板厚精度が±5%未満で、剥離強度が0.5kg/cm以上であることを特徴とする複合銅箔、を提供する。
【0014】
また、本発明は、
(2)前記銅層が、薄銅層(C)と厚銅層(D)の2層からなることを特徴とする上記(1)に記載の複合銅箔、を提供する。
【0015】
また、本発明は、
(3)薄銅層(C)の厚さ0.1〜5μm、さらに厚銅層(D)の厚さが5μm以上であることを特徴とする銅/ニッケル/薄銅/厚銅からなる上記2に記載の複合銅箔、を提供する。
【0016】
また、本発明は、
(4)前記薄銅層(C)及び/又は厚銅層(D)の上に、Cr含有量が10〜50μg/dmである防錆層を備えることを特徴とする上記2又は3記載の複合銅箔、を提供する。
【0017】
また、本発明は、
(5)厚さが10〜150μmの圧延銅箔又は電解銅箔(A)の両面又は片面に、厚さ0.5〜3μmのニッケル層(B)を電気めっきにより形成し、該ニッケル層(B)のめっき直後に、連続して薄銅層(C)を電気めっきにより形成し、さらにこの薄銅層(C)の上に、非連続工程において厚銅層(D)を電気めっきにより形成することを特徴とする複合銅箔の製造方法、を提供する。
【0018】
また、本発明は、
(6)厚さが10〜150μmの圧延銅箔又は電解銅箔(A)の両面又は片面に、厚さ0.5〜3μmのニッケル層(B)を電気めっきにより形成し、該ニッケル層(B)のめっき直後に、連続して厚さ0.1〜5μmの薄銅層(C)を電気めっきにより形成し、さらにこの薄銅層(C)の上に、非連続工程において5μm以上の厚銅層(D)を電気めっきにより形成することを特徴とする複合銅箔の製造方法、を提供する。
【0019】
また、本発明は、
(7)前記薄銅層(C)及び/又は厚銅層(D)の上に、Cr含有量が10〜50μg/dmである防錆層を形成することを特徴とする上記(5)又は(6)記載の複合銅箔の製造方法、を提供する。
【0020】
また、本発明は、
(8)前記薄銅層(C)の上に、予めCr含有量が10〜50μg/dmである防錆層を形成し、その後厚銅層(D)を形成することを特徴とする上記(5)〜(7)のいずれか一項に記載の複合銅箔の製造方法、を提供する。
【0021】
また、本発明は、
(9)前記厚銅層(D)層の上に、Cr含有量が10〜50μg/dmである防錆層を形成することを特徴とする上記(5)〜(7)のいずれか一項に記載の複合銅箔の製造方法、を提供する。
【0022】
また、本発明は、
(10)前記薄厚銅層(D)を、ドラム型電極を用いて電気めっきにより形成することを特徴とする上記(5)〜(9)のいずれか一項記載の複合銅箔の製造方法、を提供する。
なお、本発明では、薄い銅層上に、薄い銅層に比較してやや厚めの銅層を形成することが特徴であるが、この2層を区別するため、薄い銅層を、「薄銅層(C)」、薄銅層(C)に比較してやや厚めの銅層を「厚銅層(D)」と表現する。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、銅/ニッケル/銅からなる複合銅箔の製造に際し、ニッケルと銅との接合強度を向上させることのでき、エッチングにより電子回路の形成に適した複合銅箔とその製造方法を得ることができるという著しい効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】銅/ニッケル/銅からなる複合銅箔を製造する場合に使用する九十九折(つづらおり)式の電気めっき装置の例を示す図である。
図2】薄い銅層(C)に比較して、やや厚めの銅層(D)を形成する場合に使用するドラム型電極を用いた装置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の銅/ニッケル/銅からなる複合銅箔を製造するには、図1に示すような九十九折(つづらおり)式の電気めっき装置を用いることができる。出発材料となる銅箔としては、厚さが10〜150μmの圧延銅箔又は電解銅箔(A)を使用する。この箔(A)の両面又は片面に、電気ニッケルめっきを施す。
【0026】
図1において、図1の左側からめっき層に入り、右に移行して所定厚さのニッケルめっき層、すなわち厚さ0.5〜3μmのニッケル層(B)を形成する。この場合、ニッケル層の下限値である0.5μm未満では、ピンホールが発生し易くなり、また上限値である3μmを超えると、最終的にニッケル層を剥離又は溶解する際の負担が大きくなり、生産効率が悪くなるからである。
【0027】
図1に示すように、このニッケル層(B)のめっき直後に、連続して厚さ0.1〜5μmの薄銅層(C)を電気めっきにより形成する。この薄い銅層をまず、形成するのが特徴であるが、この薄銅層が重要な機能を有する。
この薄銅層(C)は、先のニッケル層(B)の酸化を抑制し、密着性を良好にする大きな役割を担うからである。この銅層自体は、耐酸化性に富む。この効果を生むための必要最低限の厚さは、0.1μmである。薄銅層(C)の厚さが5μmを超えると表面凹凸が大きくなり、膜厚の均一性が低下するため、上記の数値の膜厚とすることが最適である。
【0028】
前記薄銅層(C)上に、さらにCr含有量が10〜50μg/dmである防錆層を形成することができる。これは、一般にクロム層若しくはクロメート層と言われているものである。
図1では、この防錆層を形成する工程も図示しているが、この工程は必須ではない。しかし、銅めっき層の若干の酸化を抑制すること、又は腐食性物質の付着を予防する意味では効果がある。したがって、この防錆工程は、好ましい形態である。
Cr含有量が10μg/dm未満では、防錆層の制御が難しくなるので、これ以上とする。また、Cr含有量が50μg/dmを超えると、効果が飽和し、工程増による負荷が大きくなるので、上限値を前記の通りとするのが望ましい。
【0029】
これらの工程を過ぎた銅箔は、表面の酸化は殆ど起こらない。その後、厚銅層(D)を形成する。すなわち、前記(A)、(B)、(C)の上に、非連続工程において5μm以上の厚銅層(D)を電気めっきにより形成する。すなわち、薄銅層(C)と厚銅層(D)は、いずれも銅層ではあるが、それぞれ独立しためっき銅層となる。
これを図2に示す。この図2に示す工程は、ドラム型電極を用い、この電極の周囲に銅箔を周回させて、電気めっきを行うもので、前記九十九折式の銅めっき方法に比べて厚さの精度は極めて高い。具体的には、図2では1回のめっきを実施しているが、この工程に制限されることはなく、1回又は2回以上とすることが可能である。
【0030】
厚銅層(D)は、エッチングにより電子回路を形成する銅部分であるため、その厚みの制御が重要であり、具体的には、板厚精度は±5%未満であることが望ましい。(なお、本明細書における「板厚精度」は、特に記載する場合には、「±」を意味する。)そのため、薄銅層(C)に対して5μm以上形成する必要がある。上限は限定されるものではないが、電子回路を形成する層であることから20μm以下が望ましい。
【0031】
なお、本発明では、厚銅層(D)の厚み精度が重要であるが、ニッケル層(B)と薄銅層(C)は薄いためばらつきへの影響度は小さく、圧延銅箔又は電解銅箔(A)は、圧延銅箔または電解銅箔して製品化されており、その板厚精度は5%未満であるため、圧延銅箔又は電解銅箔(A)、ニッケル層(B)、薄銅層(C)、厚銅層(D)の合計の板厚を複合銅箔として、複合銅箔の板厚精度は5%未満が確保されれば、厚銅層(D)の板厚精度は±5%未満であるとして評価した。
【0032】
以上、上記のように、ニッケル層(B)の上に、薄銅層(C)の上に、薄銅層(C)と違えて、板厚精度の高い電解めっき方法を用いることで厚みを制御した厚銅層(D)を形成することになり、さらに、ニッケル層(B)、薄銅層(C)、厚銅層(D)間では、剥離は全く見られない複合銅箔となる。これが、本願発明の大きな特徴である。
【0033】
前記(D)層の上に、さらに防錆層を形成することもできる。これは任意であり、好ましい条件ではあるが、必須ではない。なお、防錆層の形成条件は、上記と同様である。この場合、パターンエッチング液に対するエッチング速度の相異が生ずる可能性はあるが、この量を適宜選択することにより、厚銅層(D)の表面の酸化を、さらに抑制できるので、安定した回路幅のパターンの形成が可能となる。
【0034】
下記に代表的かつ好適なめっき条件の例を示す。
(銅めっき(九十九折式))
銅:10〜50g/l
硫酸:50〜100g/l
温度:40〜60℃
電流密度:1〜5A/dm2
【0035】
(銅めっき(ドラム式))
Cu: 90g/L
SO:80g/L
Cl: 60ppm
液温: 55〜57℃
添加剤:ビス(3−スルフォプロピル)ジスルファイド2ナトリウム(RASCHIG社製 CPS) 50ppm
添加剤:ジベンジルアミン変性物 50ppm
【0036】
(ニッケルめっき)
硫酸ニッケル:250〜300g/L
塩化ニッケル:35〜45g/L
酢酸ニッケル:10〜20g/L
クエン酸三ナトリウム:15〜30g/L
光沢剤:サッカリン、ブチンジオールなど
ドデシル硫酸ナトリウム:30〜100ppm
pH:4〜6
浴温:50〜70°C
【0037】
(クロメート処理の条件)
浸漬クロメート処理
Cr(NaCr或いはCrO):0.1〜5g/リットル
pH :2〜13
温度 :常温〜60℃
時間 :5〜30秒
【0038】
(アルカリエッチングの条件)
NHOH:6モル/リットル
NHCl:5モル/リットル
CuCl:2モル/リットル
液温:50℃
【0039】
(ニッケルおよびクロムの付着量分析方法)
サンプルを濃度30%の硝酸にて少なくともニッケル層が溶けるまで溶解させ、ビーカー中の溶解液を適宜稀釈し、原子吸光分析によりニッケルおよびクロムの定量分析を行う。
【0040】
上記複合銅箔を用いて銅張り積層板を作製し、この銅張り積層板を用いた回路形成に際しては、厚銅層(D)上に回路形成用のレジストパターンを形成し、さらにエッチング液を用いて、前記レジストパターンが付された部分以外の前記厚銅層(D)および薄銅層(C)の積層部の不必要部分をニッケル層(B)表面まで除去する。あるいは樹脂側にビアを形成したりして、多層回路を形成する。
【0041】
一方、圧延銅箔または電解銅箔(A)側では(A)上にバンプ形成用のレジストパターンを形成し、エッチングによりレジストパターン部以外の(A)の不要部分をニッケル層(B)表面まで除去する。その後、必要に応じて(B)の不要部を除去する。このレジストパターンの形成から不要な銅箔の除去は、一般的に行われている手法なので、多くを説明する必要はないので省略する。
【0042】
なお、本発明は、圧延銅箔または電解銅箔(A)、ニッケル層(B)、薄銅層(C)、厚銅層(D)間では、剥離は全く見られないことから、(A)はバンプ形成層、(D)+(C)は回路形成層の同時の活用が可能であることが特徴であるが、(D)表面に樹脂層を形成した後に、(A)、場合によっては(B)を除去し、(C)も含んで(D)に回路を形成する従来の用途として用いてもよい。
【0043】
また、特許文献7,8のような密着性を向上させるための圧接加工を行っていないため、(D)表面は(D)形成の際の電着粒がそのまま活用でき、粗化処理を施すことなく、樹脂との密着性に優れている。なお、粗化処理を施してもよい。
【0044】
銅箔を使用する場合、電解銅箔の粗化面(M面)又は光沢面(S面)にも同様に適用できるが、エッチングされる面は、通常光沢面側あるいは光沢面と同等以上に平滑な銅箔のM面を使用する。圧延銅箔を使用する場合は、高純度圧延銅箔又は強度を向上させた圧延合金銅箔を使用することもできる。本件発明はこれらの銅箔の全てを包含する。
また、本願発明の実施に際しては、本願発明に矛盾しない限り、上記に述べた公知の技術は全て利用できるものである。
【実施例】
【0045】
次に、本発明の実施例及び比較例について説明する。なお、本実施例は理解を容易にするための例であり、下記の例に制限されるものではない。すなわち、本発明は、本明細書に記載する技術思想の範囲内で、下記に示す実施例以外の態様あるいは変形を全て包含するものである。
【0046】
(実施例1)
ベース箔として、70μm厚の電解銅箔(A)を用いた。この電解銅箔を、図1に示すめっき装置を使用し、上記めっき条件を使用して0.7μmのニッケルめっき(B)を施した。次に、このニッケルめっき層(B)上に、連続して0.2μmの中間電気銅めっき層(C)を形成した。
さらに、図2に示す装置(ドラム型電極)を用いて、10μmの電気銅めっき層を形成した。これにより、銅/ニッケル/薄銅/厚銅からなる複合銅箔を製造した。
【0047】
薄銅/厚銅からなる銅層の厚みの測定は以下のように行った。薄銅/厚銅からなる銅層の反対面(ベース箔側)をFR−4樹脂へプレスし、マスキングする。そのサンプルをアルカリエッチングにて薄銅/厚銅からなる銅層が溶けるまで溶解させ、溶解前後の重量変化から単位面積当たりの銅の重量厚みを測定する。更に、銅の比重8.93g/(m・μm)で割り返せば厚み(μm)を算出することができる。
【0048】
精度良く厚みを求めるためには、20cm以上の面積に対して測定することが望ましい。測定は10カ所の板厚を求め、平均値を算出し、ばらつきは、(最大値―平均値)/平均値×100か(平均値―最小値)/平均値×100のいずれか大きい方とした。評価は、5%未満を「○」、5%以上10%未満を「△」、10%以上を「×」とした。
【0049】
密着性については、極薄銅箔側に150℃以上で基材に積層し、剥離強度を測定した。剥離が可能で剥離強度が0.5kg/cm未満で剥離した場合には「×」とした。剥離しない或いは剥離強度が0.5kg/cm以上の場合には、「○」とした。
以上の結果、板厚制度は5%未満と良好であり、また、剥離強度が0.5kg/cm以上で密着性は良好であった。この結果を、同様に表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
(実施例2)
ベース箔として、12μm厚の圧延銅箔(A)を用いた。この圧延銅箔を、図1に示すめっき装置を使用し、上記めっき条件を使用して0.6μmのニッケルめっき(B)を施した。次に、このニッケルめっき層(B)上に、連続して0.1μmの中間電気銅めっき層(C)を形成した。
さらに、図2に示す装置(ドラム型電極)を用いて、5μmの電気銅めっき層を形成した。これにより、銅/ニッケル/薄銅/厚銅からなる複合銅箔を製造した。他の試験条件は、実施例1と同様である。
【0052】
以上の結果、板厚制度は5%未満と良好であり、また、剥離強度が0.5kg/cm以上で密着性は良好であった。この結果を、同様に表1に示す。
【0053】
(実施例3)
ベース箔として、18μm厚の圧延銅箔(A)を用いた。この圧延銅箔を、図1に示すめっき装置を使用し、上記めっき条件を使用して1μmのニッケルめっき(B)を施した。次に、このニッケルめっき層(B)上に、連続して2μmの中間電気銅めっき層(C)を形成した。
さらに、図2に示す装置(ドラム型電極)を用いて、10μmの電気銅めっき層を形成した。これにより、銅/ニッケル/薄銅/厚銅からなる複合銅箔を製造した。他の試験条件は、実施例1と同様である。
【0054】
以上の結果、板厚制度は5%未満と良好であり、また、剥離強度が0.5kg/cm以上で密着性は良好であった。この結果を、同様に表1に示す。
【0055】
(実施例4)
ベース箔として、35μm厚の圧延銅箔(A)を用いた。この圧延銅箔を、図1に示すめっき装置を使用し、上記めっき条件を使用して3μmのニッケルめっき(B)を施した。次に、このニッケルめっき層(B)上に、連続して4μmの中間電気銅めっき層(C)を形成した。
さらに、上記浸漬条件を用いてクロメート処理をした後、図2に示す装置(ドラム型電極)を用いて、20μmの電気銅めっき層を形成した。なお、銅めっき層(C)と電気めっき層(D)の間のCr量は、15μg/dmであった。これにより、銅/ニッケル/薄銅/防錆層/厚銅からなる複合銅箔を製造した。他の試験条件は、実施例1と同様である。
【0056】
以上の結果、板厚制度は5%未満と良好であり、また、剥離強度が0.5kg/cm以上で密着性は良好であった。この結果を、同様に表1に示す。
【0057】
(実施例5)
ベース箔として、18μm厚の圧延銅箔(A)を用いた。この圧延銅箔を、図1に示すめっき装置を使用し、上記めっき条件を使用して1μmのニッケルめっき(B)を施した。次に、このニッケルめっき層(B)上に、連続して2μmの中間電気銅めっき層(C)を形成した。
さらに、上記浸漬条件を用いてクロメート処理をした後、図2に示す装置(ドラム型電極)を用いて、10μmの電気銅めっき層を形成した。なお、銅めっき層(C)と電気めっき層(D)の間のCr量は、45μg/dmであった。これにより、銅/ニッケル/薄銅/防錆層/厚銅からなる複合銅箔を製造した。他の試験条件は、実施例1と同様である。
【0058】
以上の結果、板厚制度は5%未満と良好であり、また、剥離強度が0.5kg/cm以上で密着性は良好であった。この結果を、同様に表1に示す。
【0059】
(実施例6)
ベース箔として、18μm厚の電解銅箔(A)を用いた。この圧延銅箔を、図1に示すめっき装置を使用し、上記めっき条件を使用して1μmのニッケルめっき(B)を施した。次に、このニッケルめっき層(B)上に、連続して2μmの中間電気銅めっき層(C)を形成した。
さらに、図2に示す装置(ドラム型電極)を用いて、10μmの電気銅めっき層(D)を形成した後、上記浸漬条件を用いてクロメート処理をした。なお、電気めっき層(D)上のCr量は、30μg/dmであった。これにより、銅/ニッケル/薄銅/厚銅/防錆層からなる複合銅箔を製造した。他の試験条件は、実施例1と同様である。
【0060】
以上の結果、板厚制度は5%未満と良好であり、また、剥離強度が0.5kg/cm以上で密着性は良好であった。この結果を、同様に表1に示す
【0061】
(比較例1)
ベース箔として、70μm厚の電解銅箔(A)を用いた。この電解銅箔を、図1に示すめっき装置を使用し、上記めっき条件を使用して1μmのニッケルめっき(B)を施した。この(B)上に、図2に示す装置(ドラム型電極)を用いて、10μmの電気銅めっき層を形成した。これにより、銅/ニッケル/厚銅からなる複合銅箔を製造した。他の試験条件は、実施例1と同様である。
【0062】
以上の結果、板厚制度は5%未満と良好であったが、剥離強度が0.5kg/cm未満で密着性は不十分であった。この結果を、同様に表1に示す
【0063】
(比較例2)
ベース箔として、70μm厚の圧延銅箔(A)を用いた。この圧延銅箔を、図1に示すめっき装置を使用し、上記めっき条件を使用して3μmのニッケルめっき(B)を施した。次に、このニッケルめっき層(B)上に、連続して0.01μmの中間電気銅めっき層(C)を形成した。
さらに、この層(C)上に、図2に示す装置(ドラム型電極)を用いて、10μmの電気銅めっき層を形成した。これにより、銅/ニッケル薄銅/薄銅/厚銅からなる複合銅箔を製造した。他の試験条件は、実施例1と同様である。
【0064】
以上の結果、板厚制度は5%未満と良好であり、また、剥離強度が0.5kg/cm未満で密着性が不十分であった。これは、中間電気銅めっき層(C)の厚さが不十分であったことが原因と考えられる。この結果を、同様に表1に示す。
【0065】
(比較例3)
ベース箔として、12μm厚の電解銅箔(A)を用いた。この電解銅箔を、図1に示すめっき装置を使用し、上記めっき条件を使用して1μmのニッケルめっき(B)を施した。次に、このニッケルめっき層(B)上に、連続して20μmの電気銅めっき層(C)を形成した。10μmの電気銅めっき層を形成した。これにより、銅/ニッケル/厚銅からなる複合銅箔を製造した。他の試験条件は、実施例1と同様である。
【0066】
以上の結果、工程中、ニッケル層と銅層との間での剥離は全く認められなかったが、板厚制度は10%以上となった。これは、板厚精度の悪い図1のめっき装置で厚めっきをおこなったことが原因と考えられる。この結果を、同様に表1に示す。
【0067】
(比較例4)
ベース箔として、12μm厚の圧延銅箔(A)を用いた。この圧延銅箔を、図1に示すめっき装置を使用し、上記めっき条件を使用して0.7μmのニッケルめっき(B)を施した。次に、このニッケルめっき層(B)上に、連続して6μmの中間電気銅めっき層(C)を形成した。さらに、図2に示す装置(ドラム型電極)を用いて、10μmの電気銅めっき層を形成した。これにより、銅/ニッケル/薄銅/厚銅からなる複合銅箔を製造した。他の試験条件は、実施例1と同様である
【0068】
以上の結果、剥離強度が0.5kg/cm以上で密着性は良好であったが、板厚精度は5%以上10%未満となった。これは、板厚精度の悪い薄銅層を厚くなった分板厚精度が悪くなったと考えられる。この結果を、同様に表1に示す。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、銅/ニッケル/銅からなる複合銅箔の製造に際し、ニッケルと銅との接合強度を向上させることのでき、エッチングにより電子回路の形成に適した複合銅箔とその製造方法を得ることができるという著しい効果を有する。
図1
図2