【実施例】
【0083】
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何らの制限を受けるものではない。
【0084】
なお、以下の実施例において、一液型熱硬化性組成物の焼付け、耐溶剤性の測定、金属複核錯体の同定は以下に示すとおり実施した。
【0085】
<一液型熱硬化性組成物の焼付け>
一液型熱硬化性組成物をポリプロピレン板に塗布し、50℃のオーブンで30分間予備乾燥した後、所定の温度のオーブンに入れ30分間焼付けを行った。
【0086】
<耐溶剤性の測定>
上記した焼付けを行った塗膜をポリプロピレン板から剥離し、メチルエチルケトンに12時間浸漬した。メチルエチルケトン浸漬後の塗膜の重量残存率より以下のとおりゲル分率を求め、耐溶剤性を評価した。
【0087】
ゲル分率(%)=浸漬後の塗膜の重量/浸漬前の塗膜の重量×100。
【0088】
<金属複核錯体の同定>
1H NMRにより確認した。測定は、バリアン テクノロジーズ ジャパン リミテッド社製 gemini200(200MHz)を用い、重クロロホルム(CDCl
3)溶媒中で行った。ピークの表記には次の略号を用いた。s=singlet、d=doublet、t=triplet、st=septet、m=multiplet。なお、以下に示す各製造例に記載の数字(ケミカルシフト)はδ(ppm)で表記している。
【0089】
製造例1.
(金属複核錯体の調製)
非特許文献2[Journal of Materials Chemistry 14巻、3150−3157頁(2004年)]の記載に従い、金属複核錯体を調製した。すなわち、窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内に還流冷却管を取り付け、容器内を窒素雰囲気にした。次いで、容器内に、アルミニウムトリスイソプロポキシド2.77g、亜鉛ビスアセチルアセトナート一水和物1.86g、及び脱水したトルエン50.0mLを仕込み、130℃で30分間還流させて反応させた。その後、室温に冷却し、激しく攪拌しながら酢酸0.435g、及びアセチルアセトン0.680gを加えた。そして、容器内を50℃にし減圧にして溶媒を除去し、Al−Zn複核錯体1を4.50g得た(分子式:ZnAl
2(C
5H
7O
2)
3(C
3H
7O)
4(CH
3COO)、
1H NMR:5.48(s,3H,C
5H
7O
2)、4.02(st,4H,C
3H
7O)、1.99(s,3H,CH
3COO)、1.98〜1.84(m,18H,C
5H
7O
2)、1.30〜0.92(m,24H,C
3H
7O))。
【0090】
製造例2.
(金属複核錯体の調製)
非特許文献3[Dalton Transactions 544−550頁(2003年)]の記載に従い金属複核錯体を調製した。すなわち、窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内に還流冷却管を取り付け、容器内を窒素雰囲気にした。次いで、容器内に、アルミニウムトリスイソプロポキシド1.48g、亜鉛ビスアセチルアセトナート一水和物2.01g、及び脱水したトルエン30.0mLを仕込み、130℃で30分間還流させて反応させた。その後、容器内を50℃にし減圧にして溶媒を除去し、Al−Zn複核錯体2を2.80g得た(分子式:Zn
2Al
2(C
5H
7O
2)
4(C
3H
7O)
6、
1H NMR:5.47(s,4H,C
5H
7O
2)、4.21(st,2H,C
3H
7O)、3.92(st,4H,C
3H
7O)、1.99〜1.85(m,24H,C
5H
7O
2)、1.30〜1.04(m,36H,C
3H
7O))。
【0091】
製造例3.
(金属複核錯体の調製)
溶媒をトルエンから酢酸エチルに変更した以外は製造例2と同様の方法により金属複核錯体を調製した。すなわち、窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内に還流冷却管を取り付け、容器内を窒素雰囲気にした。次いで、容器内に、アルミニウムトリスイソプロポキシド1.48g、亜鉛ビスアセチルアセトナート一水和物2.01g、及び脱水した酢酸エチル30.0mLを仕込み、100℃で120分間還流させて反応させた。その後、容器内を50℃にし減圧にして溶媒を除去し、Al−Zn複核錯体3を2.80g得た(分子式:Zn
2Al
2(C
5H
7O
2)
4(C
2H
5O)
5(C
3H
7O)、
1H NMR:5.38(s,4H,C
5H
7O
2)、4.02(st,1H,C
3H
7O)、3.80〜3.22(m,10H,C
2H
5O)、1.99〜1.82(m,24H,C
5H
7O
2)、1.28〜0.90(m,15H,C
2H
5O、m,6H,C
3H
7O))。
【0092】
製造例4.
(金属複核錯体の調製)
原料のAl/Znモル比を1.0から0.8に変更した以外は、製造例3と同様の方法により金属複核錯体を調製した。すなわち、窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内に還流冷却管を取り付け、容器内を窒素雰囲気にした。次いで、容器内に、アルミニウムトリスイソプロポキシド1.17g、亜鉛ビスアセチルアセトナート一水和物2.01g、及び脱水した酢酸エチル30.0mLを仕込み、100℃で120分間還流させて反応させた。その後、容器内を50℃にし減圧にして溶媒を除去し、Al−Zn複核錯体4を2.60g得た(分子式:Zn
5Al
4(C
5H
7O
2)
20(C
2H
5O)
11(C
3H
7O)、
1H NMR:5.38(s,20H,C
5H
7O
2)、4.02(st,1H,C
3H
7O)、3.80〜3.36(m,22H,C
2H
5O)、1.99〜1.80(m,120H,C
5H
7O
2)、1.30〜0.88(m,33H,C
2H
5O、m,6H,C
3H
7O))。
【0093】
製造例5.
(金属複核錯体の調製)
原料のAl/Znモル比を1.0から1.5に変更した以外は、製造例3と同様の方法により金属複核錯体を調製した。すなわち、窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内に還流冷却管を取り付け、容器内を窒素雰囲気にした。次いで、容器内に、アルミニウムトリスイソプロポキシド2.19g、亜鉛ビスアセチルアセトナート一水和物2.01g、及び脱水した酢酸エチル30.0mLを仕込み、100℃で120分間還流させて反応させた。その後、容器内を50℃にし減圧にして溶媒を除去し、Al−Zn複核錯体5を3.44g得た(分子式:Zn
2Al
3(C
5H
7O
2)
4(C
2H
5O)
8(C
3H
7O)、
1H NMR:5.38(s,4H,C
5H
7O
2)、4.02(st,1H,C
3H
7O)、3.80〜3.36(m,16H,C
2H
5O)、1.99〜1.80(m,24H,C
5H
7O
2)、1.30〜0.88(m,24H,C
2H
5O、m,6H,C
3H
7O))。
【0094】
製造例6.
(金属複核錯体の調製)
原料のAl/Znモル比を1.0から2.0に変更した以外は、製造例3と同様の方法により金属複核錯体を調製した。すなわち、窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内に還流冷却管を取り付け、容器内を窒素雰囲気にした。次いで、容器内に、アルミニウムトリスイソプロポキシド2.92g、亜鉛ビスアセチルアセトナート一水和物2.01g、及び脱水した酢酸エチル30.0mLを仕込み、100℃で120分間還流させて反応させた。その後、容器内を50℃にし減圧にして溶媒を除去し、Al−Zn複核錯体6を4.04g得た(分子式:Zn
2Al
4(C
5H
7O
2)
4(C
2H
5O)
11(C
3H
7O)、
1H NMR:5.36(s,4H,C
5H
7O
2)、4.02(st,1H,C
3H
7O)、3.90〜3.30(m,22H,C
2H
5O)、1.99〜1.75(m,24H,C
5H
7O
2)、1.35〜0.80(m,33H,C
2H
5O、m,6H,C
3H
7O))。
【0095】
製造例7.
(金属複核錯体の調製)
原料のAl/Znモル比を1.0から3.0に変更した以外は、製造例3と同様の方法により金属複核錯体を調製した。すなわち、窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内に還流冷却管を取り付け、容器内を窒素雰囲気にした。次いで、容器内に、アルミニウムトリスイソプロポキシド4.37g、亜鉛ビスアセチルアセトナート一水和物2.01g、及び脱水した酢酸エチル30.0mLを仕込み、100℃で120分間還流させて反応させた。その後、容器内を50℃にし減圧にして溶媒を除去し、Al−Zn複核錯体7を5.23g得た(分子式:Zn
2Al
6(C
5H
7O
2)
4(C
2H
5O)
16(C
3H
7O)
2、
1H NMR:5.36(s,4H,C
5H
7O
2)、4.02(st,2H,C
3H
7O)、4.00〜3.30(m,32H,C
2H
5O)、1.99〜1.75(m,24H,C
5H
7O
2)、1.35〜0.80(m,48H,C
2H
5O、m,12H,C
3H
7O))。
【0096】
製造例8.
(金属複核錯体の調製)
原料のAl/Znモル比を1.0から3.5に変更した以外は、製造例3と同様の方法により金属複核錯体を調製した。すなわち、窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内に還流冷却管を取り付け、容器内を窒素雰囲気にした。次いで、容器内に、アルミニウムトリスイソプロポキシド5.10g、亜鉛ビスアセチルアセトナート一水和物2.01g、及び脱水した酢酸エチル30.0mLを仕込み、100℃で120分間還流させて反応させた。その後、容器内を50℃にし減圧にして溶媒を除去し、Al−Zn複核錯体8を5.83g得た(分子式:Zn
2Al
7(C
5H
7O
2)
4(C
2H
5O)
19(C
3H
7O)
2、
1H NMR:5.35(s,4H,C
5H
7O
2)、4.02(st,2H,C
3H
7O)、4.00〜3.28(m,38H,C
2H
5O)、1.99〜1.75(m,24H,C
5H
7O
2)、1.35〜0.78(m,57H,C
2H
5O、m,12H,C
3H
7O))。
【0097】
製造例9.
(金属複核錯体の調製)
非特許文献3[Dalton Transactions 544−550頁(2003年)]の記載に従い金属複核錯体を調製した。すなわち、窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内に還流冷却管を取り付け、容器内を窒素雰囲気にした。次いで、容器内に、アルミニウムトリスイソプロポキシド2.38g、コバルトビスアセチルアセトナート1.47g、及び脱水したトルエン25.0mLを仕込み、130℃で10分間還流させて反応させた。その後、冷蔵庫内で4℃、2時間冷却した。アセチルアセトン1.17gを攪拌しながら加えた後、容器内を50℃にし減圧にして溶媒を除去し、Al−Co複核錯体を3.21g得た(分子式:CoAl
2(C
5H
7O
2)
4(C
3H
7O)
4)、
1H NMR:5.48(s,4H,C
5H
7O
2)、4.02(st,4H,C
3H
7O)、2.00〜1.90(m,24H,C
5H
7O
2)、1.26〜1.02(m,24H,C
3H
7O))。
【0098】
製造例10.
(亜鉛ビスヘプタンジオネート一水和物の調製)
ビーカーに水酸化ナトリウム0.622g、水7.50mL、及び3,5−ヘプタンジオン2.00gを入れ、均一な黄色の透明溶液になるまで攪拌した。別のビーカーにおいて、硫酸亜鉛七水和物2.27gを水7.50mLに溶解させ、これに前記の黄色の透明溶液を滴下した。その後、これを室温で1時間攪拌し、生じた淡黄色沈殿をろ過し、300mLの水で洗浄した。50℃で2時間乾燥し、淡黄色粉末の亜鉛ビスヘプタンジオネート一水和物1.74gを得た。
【0099】
(金属複核錯体の調製)
アセチルアセトンを3,5−ヘプタンジオンに変更した以外は製造例1と同様の方法により金属複核錯体を調製した。すなわち、窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内に還流冷却管を取り付け、容器内を窒素雰囲気にした。次いで、容器内に、アルミニウムトリスイソプロポキシド1.17g、亜鉛ビスヘプタンジオネート一水和物0.917g、及び脱水したトルエン25.0mLを仕込み、130℃で30分間還流させて反応させた。その後、室温に冷却し、激しく攪拌しながら酢酸0.189g、及び3,5−ヘプタンジオン0.379gを加えた。そして、容器内を50℃にし減圧にして溶媒を除去し、Al−Zn複核錯体9を0.87g得た(分子式:ZnAl
2(C
7H
11O
2)
3(C
3H
7O)
4(CH
3COO)、
1H NMR:5.46(s,3H,C
7H
11O
2)、4.02(st,4H,C
3H
7O)、2.26〜2.01(m,12H,C
7H
11O
2)、2.03(s,3H,CH
3COO)、1.28〜0.92(m,42H,C
7H
11O
2,C
3H
7O))。
【0100】
製造例11.
(金属複核錯体の調製)
窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内に還流冷却管を取り付け、容器内を窒素雰囲気にした。次いで、容器内に、アルミニウムトリスイソプロポキシド2.61g、亜鉛ビスアセチルアセトナート一水和物2.24g、及び脱水したプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート12.0mLを仕込み、130℃で300分間還流させて反応させた。その後、容器内を50℃にし減圧にして30分間溶媒を濃縮し、Al−Zn複核錯体10のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を7.80g得た。
【0101】
得られた溶液を0.50gアルミニウムカップに採取し、100℃で60分間乾燥させてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを除去すると、残留分の重量は0.28gであった。これより、得られた溶液の固形分濃度は56重量%であった。Al−Zn複核錯体10の分子式は、Zn
2Al
3(C
5H
7O
2)
4(CH
3OC
3H
6O)
7(
1H NMR:5.38(s,4H,C
5H
7O
2)、4.06(m,7H,CH
3OC
3H
6O)、3.50〜3.20(m,35H,CH
3OC
3H
6O)、2.00〜1.80(m,24H,C
5H
7O
2)、1.24〜1.05(m,21H,CH
3OC
3H
6O))であった。
【0102】
実施例1.
(複核錯体の溶媒への溶解度測定)
製造例1で得られたAl−Zn複核錯体1の、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート又はメチルエチルケトンへの溶解度を測定した。結果を表1に示す。
【0103】
【表1】
実施例2〜実施例11.
実施例1と同様の方法により、製造例2〜製造例11で得られた金属複核錯体の、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート又はメチルエチルケトンへの溶解度を測定した。結果を表1、及び表2に併せて示す。
【0104】
【表2】
比較例1〜比較例6.
(複核錯体原料の溶媒への溶解度測定)
実施例1と同様の方法により、製造例1〜製造例5、及び製造例8〜製造例11で使用した金属複核錯体の原料である金属化合物の、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート又はメチルエチルケトンへの溶解度を測定した。結果を表3、及び表4に併せて示す。
【0105】
【表3】
【0106】
【表4】
表1〜表4から明らかなとおり、金属複核錯体の原料の金属化合物は溶媒にほとんど溶解せず、本発明の金属複核錯体は、金属複核の錯体を形成したことで高い溶媒度を獲得したことが理解される。
【0107】
製造例12.
(非水性ポリオールの調製)
窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内にポリテトラメチレングリコール(PTG−2000SN、保土谷化学工業社製、数平均分子量1993)500gを仕込み、130℃で1時間減圧乾燥した。反応器内温度を下げ反応器内を窒素雰囲気にした後、攪拌羽根、及び還流冷却管を取り付けた。次いで、反応器内に、ネオペンチルグリコール13.1g、ヘキサメチレンジイソシアネート79.3g、及びメチルエチルケトン149gを加え、80℃で3時間反応させた。その後、反応器内にメチルエチルケトン106gを加え、80℃で3時間反応を継続し、イソシアネート残留量が1.06重量%に達したところで室温に冷却し反応を停止した。その後、攪拌しながら、反応器内にアセトン341g、及びジエタノールアミン22.6gを加え、非水性ポリオールを得た。得られた非水性ポリオールは固形分濃度50重量%、固形分に対する水酸基価35.0mgKOH/gであった。
【0108】
製造例13.
(非水性ブロックイソシアネートの調製)
窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコに攪拌羽根を取り付け、当該容器内を窒素雰囲気にした後、容器内にコロネートHX(日本ポリウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体、NCO 21.3重量%)50.2g、及び脱水したメチルエチルケトン114gを仕込み、40℃で5分間攪拌した。その後、容器に滴下ロートを取り付け、40℃に保ったまま、容器内にメチルエチルケトンオキシム22.2gを1時間掛けて滴下した。その後、容器に還流冷却管を取り付け、70℃で1時間反応させ、イソシアネートが検出されなくなったところで室温に冷却し反応を停止し、非水性ブロックイソシアネートを得た。得られた非水性ブロックイソシアネートは固形分濃度40重量%、有効NCO 1.36mmol/gであった。
【0109】
ここで、有効NCOとは、ブロックイソシアネートを加熱してブロック剤が解離することにより反応可能となるイソシアネート基(NCO)の量を意味する。すなわち、有効NCOが1.36mmol/gであるとは、ブロックイソシアネート1g中に、1.36mmolのイソシアネート基が潜在的に含まれる(ブロック剤が解離することにより再生される)ことを意味する。
【0110】
製造例14.
(水性ブロックイソシアネートの調製)
窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコに攪拌羽根、及び還流冷却管を取り付け、当該容器内を窒素雰囲気にした。次いで、容器内にコロネートHX(日本ポリウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体、NCO 21.3重量%)49.0g、及びポリエチレングリコールモノメチルエーテル(Aldrich社製、平均分子量550)13.7gを仕込み、80℃で9時間反応させた。その後、容器内にメチルエチルケトンオキシム18.6g、及びメチルエチルケトン20.0gを加え、80℃で3時間反応させ、イソシアネートが検出されなくなったところで室温に冷却し反応を停止した。
【0111】
得られた組成物100gに水150gを攪拌しながら徐々に添加し、水性ブロックイソシアネートを水中に乳化分散した。得られた乳化分散液からエバポレーターにて残留するメチルエチルケトンを除去した。得られた水性ブロックイソシアネートは固形分濃度39重量%、有効NCO 1.19mmol/gの安定な分散液であった。
【0112】
実施例12.
(非水性一液型熱硬化性組成物における金属複核錯体の触媒活性評価)
表5に示す組成で、製造例12で得られた非水性ポリオール、製造例13で得られた非水性ブロックイソシアネート、及びメチルエチルケトンを混合した後、製造例1で得られたAl−Zn複核錯体1の5重量%アセトン溶液を攪拌しながら添加し、金属複核錯体を含有する非水性一液型熱硬化性組成物を得た。
【0113】
得られた非水性一液型熱硬化性組成物を110℃、120℃、130℃で焼付けた後、耐溶剤性の測定を行った結果を表5に示す。
【0114】
【表5】
実施例13〜実施例20.
表5、及び表6に示す組成で、実施例12と同様の方法により、金属複核錯体を含有する非水性一液型熱硬化性組成物を得た。
【0115】
得られた非水性一液型熱硬化性組成物を110℃、120℃、及び130℃で焼付けた後、耐溶剤性の測定を行った結果を表5、及び表6に併せて示す。
【0116】
【表6】
比較例7.
(非水性一液型熱硬化性組成物における触媒無添加の硬化性評価)
表7に示す組成で、製造例12で得られた非水性ポリオール、製造例13で得られた非水性ブロックイソシアネート、及びメチルエチルケトンを混合し、触媒を含有しない非水性一液型熱硬化性組成物を得た。
【0117】
得られた非水性一液型熱硬化性組成物を110℃、120℃、及び130℃で焼付けた後、耐溶剤性の測定を行った結果を表7に示す。
【0118】
【表7】
表5〜表7から明らかなとおり、比較例7の130℃のゲル分率と実施例12、13、及び19の110℃のゲル分率は同程度であり、Al−Zn複核錯体1、2、及び8の添加によりブロック剤の解離温度が約20℃低下したことがわかる。
【0119】
また、実施例14、及び15の120℃のゲル分率は比較例7の130℃のゲル分率を大きく上回っており、Al−Zn複核錯体3、及び4の添加によりブロック剤の解離温度が10℃以上低下したことがわかる。
【0120】
さらに、実施例16〜18、及び20の110℃のゲル分率は比較例7の130℃のゲル分率を大きく上回っており、Al−Zn複核錯体5〜8、10の添加によりブロック剤解離温度が20℃以上低下したことがわかる。
【0121】
比較例8.
(非水性一液型熱硬化性組成物における公知触媒の硬化性評価)
表7に示す組成で、製造例12で得られた非水性ポリオール、製造例13で得られた非水性ブロックイソシアネート、及びメチルエチルケトンを混合した後、公知触媒であるジブチル錫ジラウレートの5重量%アセトン溶液を攪拌しながら添加し、公知触媒を含有する非水性一液型熱硬化性組成物を得た。
【0122】
得られた非水性一液型熱硬化性組成物を110℃、120℃、及び130℃で焼付けた後、耐溶剤性の測定を行った。組成及び結果を表7に併せて示す。
【0123】
表5〜表7から明らかなとおり、比較例8に比べ、実施例12〜20の方が各温度においてゲル分率が高かった。これより、Al−Zn複核錯体1〜8、10はジブチル錫ジラウレートより優れたブロック剤低温解離活性を持つことがわかる。
【0124】
実施例21.
(非水性一液型熱硬化性組成物における金属複核錯体以外に金属化合物を含む系の硬化性評価)
表6に示す組成で、製造例12で得られた非水性ポリオール、製造例13で得られた非水性ブロックイソシアネート、及びメチルエチルケトンを混合した後、製造例2で得られたAl−Zn複核錯体2の5重量%アセトン溶液、及びアルミニウムトリスアセチルアセトネートの5重量%アセトン溶液を攪拌しながら添加し、金属複核錯体以外に金属化合物を含有する非水性一液型熱硬化性組成物を得た。
【0125】
得られた非水性一液型熱硬化性組成物を110℃、120℃、及び130℃で焼付けた後、
耐溶剤性の測定を行った。組成及び結果を表6に併せて示す。
【0126】
実施例22〜実施例25.
(金属複核錯体含有水性一液型熱硬化性組成物の調製)
窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内にポリテトラメチレングリコール(PTG−2000SN、保土谷化学工業社製、数平均分子量1993)500gを仕込み、130℃で1時間減圧乾燥した。反応器内温度を下げ、反応器内を窒素雰囲気にした後、反応器に攪拌羽根、還流冷却管を取り付けた。次いで、反応器内にジメチロールプロピオン酸16.9g、ヘキサメチレンジイソシアネート79.3g、及びメチルエチルケトン149gを加え、80℃で3時間反応させた。その後、メチルエチルケトン106gを加え、80℃で3時間反応を継続し、イソシアネート残留量が1.10重量%に達したところで室温に冷却し反応を停止した。攪拌しながら、反応器内にアセトン341g、及びジエタノールアミン23.5gを加え、OH末端プレポリマー溶液を得た。
【0127】
表8に示した組成で、IRGANOX1010(ヒンダードフェノール系酸化防止剤、チバ・ジャパン社製)、トリエチルアミン、及び触媒溶液を、得られたOH末端プレポリマー溶液に攪拌しながら添加し、その後攪拌しながら水を徐々に添加することで水中に乳化分散した。得られた乳化分散液よりエバポレーターにて残留するメチルエチルケトン、アセトンを除去した。得られた水性ポリオールは固形分濃度30重量%、固形分に対する水酸基価35.0mgKOH/gの安定な分散液であった。
【0128】
その後、表8に示した組成で製造例14で得られた水性ブロックイソシアネートを添加、混合し、金属複核錯体を含有する水性一液型熱硬化性組成物を得た。得られた水性一液型熱硬化性組成物は固形分濃度31重量%の安定な分散液であった。
【0129】
(水性一液型熱硬化性組成物における金属複核錯体の触媒活性評価)
上記で得られた水性一液型熱硬化性組成物を120℃、及び130℃で焼付けた後、耐溶剤性の測定を行った。組成及び結果を表8に併せて示す。
【0130】
【表8】
比較例9.
(水性一液型熱硬化性組成物における触媒無添加の硬化性評価)
表8に示した組成で、実施例22と同様の方法により、触媒を含有しない水性一液型熱硬化性組成物を得た。得られた水性一液型熱硬化性組成物は固形分濃度31重量%の安定な分散液であった。
【0131】
得られた水性一液型熱硬化性組成物を120℃、及び130℃で焼付けた後、耐溶剤性の測定を行った。組成及び結果を表8に併せて示す。
【0132】
表8から明らかなとおり、比較例9に比べ、実施例22〜25の方が各温度においてゲル分率が高かった。これより、金属複核錯体の添加によりブロック剤解離温度が低下したことがわかる。
【0133】
比較例10〜比較例12.
(水性一液型熱硬化性組成物における公知触媒の触媒活性評価)
表9に示した組成で、実施例22と同様の方法により、公知触媒を含有する水性一液型熱硬化性組成物を得た。得られた水性一液型熱硬化性組成物は固形分濃度31重量%の安定な分散液であった。
【0134】
得られた水性一液型熱硬化性組成物を120℃、及び130℃で焼付けた後、耐溶剤性の測定を行った。組成及び結果を表9に示す。
【0135】
【表9】
表8、表9から明らかなとおり、比較例10〜12に比べ、実施例22〜25の方が120℃においてゲル分率が高かった。これより、金属複核錯体は公知触媒より優れたブロック剤低温解離活性を持つことがわかる。
【0136】
比較例13〜比較例14.
(水性一液型熱硬化性組成物における複核錯体構成金属化合物の触媒活性評価)
表9に示した組成で、実施例22と同様の方法により、Al−Zn複核錯体の構成金属であるAl化合物又はZn化合物を含有する水性一液型熱硬化性組成物を得た。得られた水性一液型熱硬化性組成物は固形分濃度31重量%の安定な分散液であった。
【0137】
得られた水性一液型熱硬化性組成物を120℃、130℃で焼付けた後、耐溶剤性の測定を行った結果を表9に併せて示す。
【0138】
表8、及び表9から明らかなとおり、比較例13〜14に比べ、実施例22〜25の方が各温度においてゲル分率が高かった。これらの結果より、本発明の金属複核錯体は、その構成金属の化合物よりブロック剤低温解離活性が高く、複核錯体にしたことで高い活性が得られたことがわかる。