特許第5724767号(P5724767)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5724767スピーカ用外磁型磁気回路ユニット及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5724767
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】スピーカ用外磁型磁気回路ユニット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 9/02 20060101AFI20150507BHJP
   H04R 31/00 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   H04R9/02 102A
   H04R31/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-190814(P2011-190814)
(22)【出願日】2011年9月1日
(65)【公開番号】特開2013-55415(P2013-55415A)
(43)【公開日】2013年3月21日
【審査請求日】2013年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100096677
【弁理士】
【氏名又は名称】伊賀 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(74)【代理人】
【識別番号】100150898
【弁理士】
【氏名又は名称】祐成 篤哉
(72)【発明者】
【氏名】坪井 義博
(72)【発明者】
【氏名】松田 秀樹
【審査官】 中野 浩昌
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第01022929(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0050581(US,A1)
【文献】 実開平05−031497(JP,U)
【文献】 実開昭60−057297(JP,U)
【文献】 特表2005−536140(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0165246(US,A1)
【文献】 特開昭62−149298(JP,A)
【文献】 特開2008−099106(JP,A)
【文献】 特開2011−151716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 9/02
H04R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング状のボトムプレートの中央部にセンターポールが形成されてなるヨークと、
上記センターポールを囲むリング状のマグネット部と、
上記センターポールを囲むリング状で、上記マグネット部が上記ボトムプレートとの間に挟持され固定され、上記センターポールの上端側外周面と間に磁気ギャップ部を形成する中央開口部周面を有するトッププレートとを備え、
上記リング状のマグネット部は、一体に形成された樹脂部品で内周側及び外周側が覆われ、上記トッププレートと上記ヨークと上記樹脂部品により囲まれた空間に希土類マグネット材料を充填することにより射出成形されたリング状マグネットからなり、上記樹脂部品が酸化物系マグネット材料を含有する樹脂材料で構成されたスピーカ用外磁型磁気回路ユニット。
【請求項2】
上記樹脂部品が射出成形で形成されることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ用外磁型磁気回路ユニット。
【請求項3】
上記樹脂部品は、上記リング状マグネットの内外周に配置される樹脂部を1つ以上のリムを介して連結してなることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のスピーカ用外磁型磁気回路ユニット。
【請求項4】
リング状のボトムプレートの中央部にセンターポールが形成されてなるヨークと、上記センターポールを囲むリング状のマグネット部と、上記センターポールを囲むリング状で、上記マグネット部が上記ボトムプレートとの間に挟持され固定され、上記センターポールの上端側外周面と間に磁気ギャップ部を形成する中央開口部周面を有するトッププレートとを備え、上記リング状のマグネット部は、希土類マグネット材料で構成され、一体に形成された樹脂部品で内周側及び外周側が覆われたリング状マグネットからなり、上記樹脂部品が酸化物系マグネット材料を含有する樹脂材料で構成されたスピーカ用外磁型磁気回路ユニットの製造方法であって、
上記スピーカ用外磁型磁気回路ユニットを構成するヨーク、樹脂部品およびトッププレートを射出成形金型にセットし、
上記トッププレートに形成されているゲート穴を介して上記トッププレート、ヨーク、樹脂部品で囲まれた空間内に希土類マグネット材料を充填してリング状マグネットを射出成形により形成することにより、上記トッププレート、ヨーク、樹脂部品及びリング状マグネットを一体化した外磁型磁気回路ユニットを製造することを特徴とするスピーカ用外磁型磁気回路ユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカ用外磁型磁気回路ユニットとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マグネットを用いたスピーカには内磁型スピーカと外磁型スピーカに大別される。いずれのスピーカもボイスコイルが配置される磁気ギャップを有する磁気回路と、ボイスコイルに通電することにより生じる電磁気力により駆動する振動体およびそれらを指示するフレームを基本構成とする(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
外磁型スピーカは、ボイスコイルが挿入される磁気ギャップの外周側に、マグネットが配置されたもので、その構造の一例を図8の縦断面図に示すように、外磁型スピーカ210は、フレーム110により支持された振動ユニット120と、外磁型磁気回路ユニット130とからなる。
【0004】
振動ユニット120は、ボイスコイルボビン121と、ボイスコイルボビン121の外周に設けられたボイスコイル122と、ボイスコイルボビン121を振動可能となるように支持するダンパ123と、ボイスコイルボビン121上部に取り付けられた振動板124と、振動板124の外周縁に取り付けられたエッジ部125と、振動板124央部に取り付けられたセンターキャップ126を備えている。そして、この振動ユニット120は、上記ダンパ123の外周縁がフレーム110に取り付けられているとともに、上記エッジ部125の外周縁がフレーム110に取り付けられ、上記ボイスコイルボビン121とともに振動板124が振動可能に上記フレーム110に支持されている。
【0005】
外磁型磁気回路ユニット130は、ヨーク131と、リング状のマグネット132と、リング状のトッププレート133を備える。
【0006】
上記ヨーク131は、ボトムプレート134の中央部にセンターポール135が形成されてなる。また、上記リング状のマグネット132は、上記センターポール135と同心円状で上記ボトムプレート134とトッププレート133により挟持され固定されている。上記センターポール135の上端側外周面と上記トッププレート133の中央開口部周面との間が磁気ギャップ部136となっている。
【0007】
そして、この外磁型磁気回路ユニット130は、上記トッププレート133の上部が上記フレーム110に固定され、上記トッププレート133に支持された上記振動ユニット120のボイスコイル122が上記磁気ギャップ部136内に配置されている。
【0008】
また、内磁型スピーカは、ボイスコイルが挿入される磁気ギャップの内周側に、マグネットが配置されたもので、その構造の一例を図9の縦断面図に示すように、内磁型スピーカ220は、フレーム110により支持された振動ユニット120と、内磁型磁気回路ユニット230とからなる。
【0009】
内磁型磁気回路ユニット230は、内部に空間部を有するヨーク231に円柱形(または円筒形)のマグネット232が収納されている。このヨーク231は、上端面がフレーム110に固定されると共に、中央部に開口部が形成されている。この開口部には、マグネット232の上端に取付固定されたプレート233が位置している。また、開口部には、振動ユニット120のボイスコイル122が挿通しており、該ボイスコイル122の下端側がプレート233を内包するように位置している。なお、上記フレーム110には、外磁型スピーカと同様な構造の振動ユニット120が取り付けられている。
【0010】
ところで、外磁型スピーカ、内磁型スピーカのどちらであっても、ボイスコイルに流れる電流が同じ場合、磁界の大きい磁気ギャップを有する磁気回路構成ほどスピーカ出力は大きくなる。
【0011】
マグネットが磁気ギャップの外周側に配置された外磁型スピーカでは、マグネットの内側にボイスコイルが配置されるためボイスコイルの大きさによるマグネットの大きさの制限は生じないので、マグネットを大きくして磁気ギャップの磁界を大きくすることができる。従来、マグネットの面積を大きくとることのできる外磁型スピーカの磁気回路には、磁化が低いが安価なフェライト磁石が用いられていた。
【0012】
これに対し、マグネットが磁気ギャップの内周側に配置された内磁型スピーカでは、マグネットの外周側を取り巻くボイスコイルの大きさでマグネットの面積が制限されるため、磁気ギャップの磁界の大きさに限界が生じる。従来、内磁型スピーカでは、アルニコ磁石や希土類磁石すなわちSm−Co系磁石またネオジム系磁石(すなわちNd−Fe−B系磁石)のような強力な磁力を有するマグネットを用いて大きな磁界の磁気ギャップを生成し、コンパクトで高出力なスピーカを実現していた。
【0013】
内磁型、外磁型のいずれの磁気回路構成とするかはスピーカが使用される用途や条件により適時選択される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−99106号公報
【特許文献2】特開2011−151716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、外磁型スピーカの磁気ギャップ部磁界を大きくする手段には前記のようにマグネットを大きくする以外に磁気回路のギャップを小さくする方法、磁力の大きな希土類マグネットを用いる方法がある。
【0016】
従来、外磁型スピーカの磁気回路を構成するトッププレート、ボトムプレート、マグネットは接着剤を用いて固定されることが殆どであるが、マグネットの加工精度、それぞれの部品の接着精度から磁気ギャップ部の大きさはボイスコイルの駆動で必要とされる以上の大きさとなり、磁気ギャップ部の磁界を小さくする妨げとなる。特にフェライト焼結マグネットや希土類焼結マグネットを用いる場合は加工精度が±0.1程度で接着精度と併せると本来の必要ギャップ+0.1〜0.3程度を要する。
【0017】
外磁型スピーカにおいて希土類マグネットを用いた場合は、スピーカの外周面にマグネットが露出するため周囲の環境によっては発錆を生じ、スピーカの能力低下や不具合の原因となる。
【0018】
これらの課題解決には、磁気ギャップ部の精度を上げるための磁気回路構成および希土類マグネットを用いても発錆を生じ難い磁気回路構成が要求される。
【0019】
そこで、本発明の目的は、上述の如き従来の問題点に鑑み、希土類マグネットを用いても発錆を生じ難く、しかも、高精度かつ高磁界の磁気ギャップ部を有するスピーカ用外磁型磁気回路ユニットとその製造方法を提供することにある。
【0020】
本発明の他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下に説明される実施の形態の説明から一層明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、スピーカ用外磁型磁気回路ユニットであって、リング状のボトムプレートの中央部にセンターポールが形成されてなるヨークと、上記センターポールを囲むリング状のマグネット部と、上記センターポールを囲むリング状で、上記マグネット部が上記ボトムプレートとの間に挟持され固定され、上記センターポールの上端側外周面と間に磁気ギャップ部を形成する中央開口部周面を有するトッププレートとを備え、上記リング状のマグネット部は、一体に形成された樹脂部品で内周側及び外周側が覆われ、上記トッププレートと上記ヨークと上記樹脂部品により囲まれた空間に希土類マグネット材料を充填することにより射出成形されたリング状マグネットからなり、上記樹脂部品が酸化物系マグネット材料を含有する樹脂材料で構成されていることを特徴とする。
【0022】
本発明に係るスピーカ用外磁型磁気回路ユニットは、上記樹脂部品が射出成形で形成されるものとすることができる。
【0023】
また、本発明に係るスピーカ用外磁型磁気回路ユニットにおいて、上記樹脂部品は、上記リング状マグネットの内外周に配置される樹脂部を1つ以上のリムを介して連結してなるものとすることができる。
【0024】
本発明は、リング状のボトムプレートの中央部にセンターポールが形成されてなるヨークと、上記センターポールを囲むリング状のマグネット部と、上記センターポールを囲むリング状で、上記マグネット部が上記ボトムプレートとの間に挟持され固定され、上記センターポールの上端側外周面と間に磁気ギャップ部を形成する中央開口部周面を有するトッププレートとを備え、上記リング状のマグネット部は、希土類マグネット材料で構成され、一体に形成された樹脂部品で内周側及び外周側が覆われたリング状マグネットからなり、上記樹脂部品が酸化物系マグネット材料を含有する樹脂材料で構成されたスピーカ用外磁型磁気回路ユニットの製造方法であって、上記スピーカ用外磁型磁気回路ユニットを構成するヨーク、樹脂部品およびトッププレートを射出成形金型にセットし、上記トッププレートに形成されているゲート穴を介して上記トッププレート、ヨーク、樹脂部品で囲まれた空間内に希土類マグネット材料を充填してリング状マグネットを射出成形により形成することにより、上記トッププレート、ヨーク、樹脂部品及びリング状マグネットを一体化したスピーカ用外磁型磁気回路ユニットを製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るスピーカ用外磁型磁気回路ユニットでは、希土類マグネット材料で構成されたリング状マグネットの少なくとも外周側を樹脂部品で覆った構造のリング状のマグネット部を備えるので、当該スピーカ用外磁型磁気回路ユニットの外周面に希土類マグネット材料で構成された上記リング状マグネットが露出することがなく、上記リング状マグネットの発錆を軽減でき、また、上記樹脂部品を酸化物系マグネット材料で構成することにより、磁気ギャップ部の磁界をより大きくすることができ、高価な希土類マグネット材料の使用量を抑え、しかも、必要な磁気特性を得ることができる。
【0026】
また、本発明では、これら部品を射出成形で形成することで高精度かつ高磁界の磁気回路ユニットを提供できる。
【0027】
すなわち、本発明に係るスピーカ用外磁型磁気回路ユニットでは、上記樹脂部品及びリング状マグネットの一方もしくは両方が射出成形で形成され、さらに、上記樹脂部品は、上記リング状マグネットの内外周に配置される樹脂部が1つ以上のリムを介して連結された構成となっていることで、当該スピーカ用外磁型磁気回路ユニットの磁気ギャップを高精度に形成できる。
【0028】
さらに、本発明によれば、上記スピーカ用外磁型磁気回路ユニットを構成するヨーク、樹脂部品およびトッププレートを射出成形金型にセットし、上記トッププレートに形成されているゲート穴を介して上記トッププレート、ヨーク、樹脂部品で囲まれた空間内に希土類マグネット材料を充填してリング状マグネットを射出成形により形成することにより、上記トッププレート、ヨーク、樹脂部品及びリング状マグネットを一体化した上記スピーカ用外磁型磁気回路ユニットを製造することができる。
【0029】
したがって、本発明によれば、希土類マグネットを用いても発錆を生じ難く、しかも、高精度かつ高磁界の磁気ギャップ部を有するスピーカ用外磁型磁気回路ユニットとその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明を適用した外磁型スピーカの縦断面図である。
図2】上記外磁型スピーカに備えられたスピーカ用外磁型磁気回路ユニットの分解斜視図である。
図3】上記スピーカ用外磁型磁気回路ユニットを構成する樹脂部品の製造方法の一例を模式的に示す図である。
図4】上記スピーカ用外磁型磁気回路ユニットを構成するヨークの製造方法の一例を模式的に示す図である。
図5】上記スピーカ用外磁型磁気回路ユニットを構成するトッププレートの製造方法の一例を模式的に示す図である。
図6】上記スピーカ用外磁型磁気回路ユニットの製造方法の一例を模式的に示す図である。
図7】上記スピーカ用外磁型磁気回路ユニットの構造の各種比較例を模式的に示す縦断面図である。
図8】一般的な内磁型スピーカの構造を示す縦断面図である。
図9】一般的な外磁型スピーカの構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
本発明は、例えば図1及び図2に示すような構造の外磁型スピーカ100に適用される。
【0033】
この外磁型スピーカ100は、フレーム10により支持された振動ユニット20と、スピーカ用外磁型磁気回路ユニット30とからなる。
【0034】
図1は、この外磁型スピーカ100の縦断面図であり、図2は、この外磁型スピーカ100に備えられたスピーカ用外磁型磁気回路ユニット30の分解斜視図である。
【0035】
振動ユニット20は、ボイスコイルボビン21と、ボイスコイルボビン21の外周に設けられたボイスコイル22と、ボイスコイルボビン21を振動可能となるように支持するダンパ23と、ボイスコイルボビン21上部に取り付けられた振動板24と、振動板24の外周縁に取り付けられたエッジ部25と、振動板24中央部に取り付けられたセンターキャップ26を備えている。そして、この振動ユニット20は、上記ダンパ23の外周縁がフレーム10に取り付けられているとともに、上記エッジ部25の外周縁がフレーム10に取り付けられ、上記ボイスコイルボビン21とともに振動板24が振動可能に上記フレーム10に支持されている。
【0036】
スピーカ用外磁型磁気回路ユニット30は、ヨーク31と、リング状のマグネット部32と、リング状のトッププレート33を備える。
【0037】
上記ヨーク31は、リング状のボトムプレート34の中央部にセンターポール35が形成されてなる。また、上記リング状のマグネット部32は、上記センターポール35と同心円状で上記リング状のボトムプレート34とトッププレート33により挟持され固定されている。上記センターポール35の上端側外周面と上記トッププレート33の中央開口部周面との間が磁気ギャップ部36となっている。
【0038】
そして、このスピーカ用外磁型磁気回路ユニット30は、上記トッププレート33の上部が上記フレーム10に固定され、上記トッププレート33に支持された上記振動ユニット20のボイスコイル22が上記磁気ギャップ部36内に配置されている。
【0039】
この外磁型スピーカ100に備えられたスピーカ用外磁型磁気回路ユニット30における上記リング状のマグネット部32は、少なくとも外周側が樹脂部品37で覆われたリング状マグネット38からなり、上記樹脂部品37が酸化物系マグネット材料を含有する樹脂材料で構成され、また、上記リング状マグネット38がNd(ネオジウム),Sm(サマリウム)のいずれかを含む希土類マグネット材料で構成されている。
【0040】
上記スピーカ用外磁型磁気回路ユニット30は、図2の分解斜視図に示すように、このスピーカ用外磁型磁気回路ユニット30における樹脂部品37は、リング状マグネット38の外周側を覆う樹脂部37Aと内周側を覆う樹脂部37Bがリム37Cを介して接続された構造となっている。
【0041】
この樹脂部品37は、内径側と外径側をそれぞれ異なるパーツで構成しても良いが、例えば図3に示すにように、射出成形器40により一体の形成することで部品点数の削減や組立精度の向上を図ることができる。
【0042】
また、上記スピーカ用外磁型磁気回路ユニット30のヨーク31及びトッププレート33は、その製造方法の一例を図4及び図5に模式的に示すように、それぞれ磁気材料31A,33Aをプレス加工することにより形成される。
【0043】
そして、このスピーカ用外磁型磁気回路ユニット30における上記リング状のマグネット部32は、上記樹脂部品37及びリング状マグネット38の一方もしくは両方が射出成形で形成されており、この例では、上記樹脂部品37は予め射出成形で形成され、上記リング状マグネット38が上記スピーカ用外磁型磁気回路ユニット30の製造時に射出成形で形成されている。
【0044】
ここで、上記スピーカ用外磁型磁気回路ユニット30の製造方法の一例を図6に模式的に示す。
【0045】
すなわち、このスピーカ用外磁型磁気回路ユニット30を製造する際には、図6の(A)に示すように、先ず、第1工程において、スピーカ用外磁型磁気回路ユニット30を構成するヨーク31、トッププレート33及び樹脂部品37が、磁気ギャップ部36を確保するようにスペーサ36Aを挿入した状態で射出成形金型50にセットされる。
【0046】
上記トッププレート33にはリング状マグネット38を射出成形するためのゲート穴331が設けられており、図6の(B)に示すように、次の第2工程において、トッププレート33のゲート穴331を介して上記ヨーク31、トッププレート33及び樹脂部品37で囲まれた空間内にNd(ネオジウム),Sm(サマリウム)のいずれかを含む希土類マグネット材料を充填することによりリング状マグネット38が射出成形により形成される。
【0047】
そして、このようにして上記ヨーク31、トッププレート33及び樹脂部品37で囲まれた空間内に希土類マグネット材料を充填してリング状マグネット38を射出成形により形成することによって、上記ヨーク31、トッププレート33、樹脂部品37及びリング状マグネット38が一体化され、図6の(C)に示すように、次の第3工程において、射出成形金型50から取り外され、スペーサ36Aを取り除くことにより、上記センターポール35の上端側外周面と上記トッププレート33の中央開口部周面との間の所定距離の間隙により形成される磁気ギャップ部36を有するスピーカ用外磁型磁気回路ユニット30が製造される。
【0048】
ここで、樹脂部品37は、リング状マグネット38の射出時の温度に耐え得るものであればナイロン(ポリアミド系繊維)、PPS(ポリフェニレンスルファイド)、PP(ポリプロピレン)など一般的な樹脂でも良いが、樹脂と磁性紛を混成したマグネット材とすることで樹脂のみを用いた場合に比べて磁気ギャップ部の磁界を大きくすることができる。
【0049】
樹脂部品37に用いるマグネット材は、例えばフェライト系射出成形マグネット材料が好ましく、さらには、異方性フェライト系射出成形マグネット材料を用いることで磁気ギャップ部36の磁界をより大きくすることができる。
【0050】
なお、この例のスピーカ用外磁型磁気回路ユニット30では、上記樹脂部品37を予め射出成形で形成しておき、上記スピーカ用外磁型磁気回路ユニット30の製造時に上記リング状マグネット38を射出成形で形成するようにしたが、上記スピーカ用外磁型磁気回路ユニット30の製造時に上記樹脂部品37を射出成形で形成するようにしてもよい。また、上記樹脂部品37及びリング状マグネット38の一方は射出成形以外の方法で形成するようにしてもよい。例えば樹脂部品37の作成方法には、例えば切削加工による方法もあるが、生産性、コスト、作りやすさなどを考えると射出成形による方法が適している。
【0051】
このスピーカ用外磁型磁気回路ユニット30では、希土類マグネット材料で構成されたリング状マグネット38の少なくとも外周側を樹脂部品37で覆った構造のリング状のマグネット部32を備えるので、リング状マグネット38の発錆を軽減できる。また、上記樹脂部品37を酸化物系マグネット材料で構成することにより、磁気ギャップ部36の磁界をより大きくすることができる。さらに、射出成形でこれら部品を作成することで高精度かつ高磁界の磁気回路ユニット30を提供できる。
【0052】
ここで、希土類マグネット材料で構成されたリング状マグネット38の外周面のみを酸化物系マグネット材料で構成した樹脂部品37で覆うようにしたスピーカ用外磁型磁気回路ユニット30について、図7の(A)〜(F)に示す各種構造のサンプルS1〜S6を作成して、それらの磁気特性などを測定したところ表1に示すような結果が得られた。
【0053】
図7の(A)に示すサンプルS1は、リング状マグネット132の外周面を樹脂部品で覆わない従来構造のスピーカ用外磁型磁気回路ユニット130である。
【0054】
図7の(B)に示すサンプルS2は、上記従来構造のスピーカ用外磁型磁気回路ユニット130におけるリング状マグネット132の外周面を1mm削って樹脂部品のスペースを確保した形状のリング状マグネット38を備えるスピーカ用外磁型磁気回路ユニット130Aである。
【0055】
図7の(C)に示すサンプルS3は、サンプルS2のスピーカ用外磁型磁気回路ユニット136Aにおけるリング状マグネット38の外周面を酸化物系マグネット材料で構成した厚さ1mmの樹脂部品37で覆った構造のスピーカ用外磁型磁気回路ユニット30Aである。
【0056】
図7の(D)に示すサンプルS4は、サンプルS3のスピーカ用外磁型磁気回路ユニット30Aにおけるトッププレート33の外周面も削って、リング状マグネット38の外周面とともにトッププレート33の外周面も樹脂部品37で覆った構造のスピーカ用外磁型磁気回路ユニット30Bである。
【0057】
図7の(E)に示すサンプルS5のスピーカ用外磁型磁気回路ユニット30Cは、サンプルS4のスピーカ用外磁型磁気回路ユニット30Bにおける樹脂部品37の厚さを3mmにしたものである。
【0058】
図7の(F)に示すサンプルS6のスピーカ用外磁型磁気回路ユニット30Dは、サンプルS4のスピーカ用外磁型磁気回路ユニット30Bにおける樹脂部品37の厚さを2mmにしたものである。表1の希土類マグネット材料はいずれも住友金属鉱山株式会社製希土類射出成形用ボンド磁石材料(Wellmax-S5B-18M)を用いた。当該材料は最大磁気エネルギー積(BH)maxが140kJ/m3(18MGOe)の高特性を有する材料で、これ以外の希土類射出成形用ボンド磁石材料も適用できるが前記材料よりは特性が劣るため同形状の場合は磁力1、磁力2は低下する。
【0059】
【表1】
【0060】
表1に示すように、図7の(B)に示すサンプルS2、すなわち、サンプルS1の従来構造のスピーカ用外磁型磁気回路ユニット130におけるリング状マグネット132の外周面を削って、樹脂部品のスペースを確保した構造のスピーカ用外磁型磁気回路ユニット130Aでは、リング状マグネットの外周面を削ったことにより、従来構造のスピーカ用外磁型磁気回路ユニット130よりも、磁気ギャップ部136に発生する磁力は弱くなってしまう。図7の(C)〜(F)に示すサンプルS3〜S6のように、上記サンプルS2のスピーカ用外磁型磁気回路ユニット130Aにおけるリング状マグネット38の外周面を樹脂部品37で覆った構造のスピーカ用外磁型磁気回路ユニット30A,30B,300Cでは、上記サンプルS2のスピーカ用外磁型磁気回路ユニット130Aよりも、磁気ギャップ部36に発生する磁力を高めるとともに、漏れ磁束を小さくすることができる。上記樹脂部品37は、残留磁束密度が2.0kG、保磁力1.6kOe、比重3の酸化物系マグネット材料で構成した。
【0061】
したがって、上述の如き構成のスピーカ用外磁型磁気回路ユニット30では、希土類マグネット材料で構成されたリング状マグネット38の少なくとも外周側を樹脂部品37で覆った構造のリング状のマグネット部32を備えることにより、当該スピーカ用外磁型磁気回路ユニット30の外周面に上記リング状マグネット32が露出することがないので、上記リング状マグネット38の発錆を軽減でき、また、上記樹脂部品37を酸化物系マグネット材料で構成することにより、磁気ギャップ部36に発生する磁力を高めるとともに、漏れ磁束を小さくすることができ、高価な希土類マグネット材料の使用量を抑え、しかも、必要な磁気特性を得ることができる。さらに、射出成形でこれら部品を作成することで高精度かつ高磁界のスピーカ用外磁型磁気回路ユニット30を提供できる。
【符号の説明】
【0062】
10 フレーム、20 振動ユニット、21 ボイスコイルボビン、22 ボイスコイル、23 ダンパ、24 振動板、25 エッジ部、26 センターキャップ、30,30A、30B,30C,30D スピーカ用外磁型磁気回路ユニット、31 ヨーク、32 マグネット部、33 トッププレート、34 ボトムプレート、35 センターポール、36 磁気ギャップ部、37 樹脂部品、37A,37B 樹脂部、37C リム、38 リング状マグネット、100 外磁型スピーカ
図1
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図9