特許第5725260号(P5725260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5725260
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】液晶光変調素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/141 20060101AFI20150507BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   G02F1/141
   G02F1/1337 510
【請求項の数】7
【全頁数】51
(21)【出願番号】特願2014-520035(P2014-520035)
(86)(22)【出願日】2013年6月5日
(86)【国際出願番号】JP2013065623
(87)【国際公開番号】WO2013183684
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2014年12月2日
(31)【優先権主張番号】特願2012-129010(P2012-129010)
(32)【優先日】2012年6月6日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100146879
【弁理士】
【氏名又は名称】三國 修
(72)【発明者】
【氏名】藤沢 宣
(72)【発明者】
【氏名】初阪 一輝
(72)【発明者】
【氏名】丸山 和則
(72)【発明者】
【氏名】西山 伊佐
【審査官】 弓指 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−066717(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0039597(US,A1)
【文献】 特開2005−258463(JP,A)
【文献】 特表2002−530720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/141
G02F 1/1337
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光面が互いに直交する二枚の偏光板;
前記偏光板の間に配置された、少なくとも一方が透明であり、互いの間に液晶組成物層を挟持した、第一の基板及び第二の基板;並びに
少なくとも一方の基板が透明であり、前記第一の基板又は第二の基板の少なくとも一方の基板面に略平行な電界を発生させる一対の電極構造;
を有する液晶光変調素子であって、
前記第一の基板又は第二の基板の少なくとも一方は、垂直配向膜を有し、液晶分子のCダイレクターを一定の方向へ揃える配向機能を具備し;
前記一定の方向は、前記一対の電極構造により発生する電界方向に対して方位角35〜55°の方向であり;
前記液晶組成物層は、キラルスメクチックC相を有する強誘電性の液晶組成物、又はアキラルスメクチックC相を有する負の誘電異方性の液晶組成物が挟持され;
前記液晶組成物層が前記第一の基板と前記第二の基板に接する部分で液晶分子のCダイレクターが前記配向機能により前記一定の方向に揃い、前記第一の基板と第二の基板の間で液晶分子のCダイレクターが平行であり、前記略平行な電界方向に対して方位角35〜55°の方向に液晶分子のCダイレクターを揃え、前記電極構造により発生した電界で前記液晶組成物層の複屈折率を変えることにより透過する光の透過率を変調する;
液晶光変調素子。
【請求項2】
電界で飽和しているリターデーションの範囲が225nmから330nmの間である請求項1に記載の液晶光変調素子。
【請求項3】
前記液晶組成物層が、電界無印加時において、キラルスメクチックC相又はアキラルスメクチックC相の螺旋軸が略解けた状態であり、且つ、キラルスメクチックC相又はアキラルスメクチックC相のレイヤー構造が基板面に対して平行であり、液晶分子のCダイレクターが前記一定の方向に向いている、請求項1又は2に記載の液晶光変調素子。
【請求項4】
前記液晶組成物がキラルスメクチックC相を有する強誘電性液晶組成物であり、該強誘電性液晶組成物の相系列が少なくとも高温側から等方相、キラルネマチック相、スメクチックA相、キラルスメクチックC相、又は前記相系列が少なくとも高温側から等方相、キラルネマチック相、キラルスメクチックC相である、請求項1から3のいずれか一項に記載の液晶光変調素子。
【請求項5】
前記液晶組成物がキラルスメクチックC相を有する強誘電性液晶組成物であり、該強誘電性液晶組成物の相系列において、降温時にキラルネマチック相からスメクチックA相又はキラルスメクチックC相へ相転移する温度である、キラルネマチック相の下限温度より2℃高い温度で、キラルネマチック相の螺旋ピッチが50μm以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の液晶光変調素子。
【請求項6】
前記液晶組成物がアキラルスメクチックC相を有する負の誘電異方性の液晶組成物であり、該アキラルスメクチックC相の相系列が少なくとも高温側から等方相、ネマチック相、スメクチックA相、スメクチックC相、又は前記相系列が少なくとも高温側から等方相、ネマチック相、スメクチックC相である、請求項1から3のいずれか一項に記載の液晶光変調素子。
【請求項7】
光学位相補償フィルムを具備する請求項1から6のいずれか一項に記載の液晶光変調素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶組成物を用いた液晶光変調素子に関する。
【背景技術】
【0002】
強誘電性液晶(FLC:Ferroelectric Liquid Crystal)は、自発分極を有して強誘電性を示す液晶のことであるが、分子長軸方向に垂直な方向に永久双極子モーメントを有する液晶がスメクチック相を示すと層構造が形成され、この層内の分子長軸が傾くキラルスメクチックC(以下、SmC*と省略する)相となるときに、永久双極子モーメントが全体で平均化しても打ち消されず、自発分極が発生して強誘電性を示すことが知られている。これに電圧を印加すると永久双極子モーメントは電界方向に揃うようになり、同時に分子全体が揃う。強誘電性液晶としては、SmC*相のものがディスプレイの用途に広く用いられている。強誘電性液晶は、1975年にR.B.Meyerらが分子設計し合成を行なったp-decyloxybenzylidene p’-amino 2-methylbutyl cinnamate(DOBAMBC)等のスメクチック液晶自体に光学活性(キラリティー)を付与するものであるが、光学活性化合物はそれ自体が液晶性を示さない(液晶化合物でない)ものでも光学活性化合物を添加することでSmC相を発現することができ、この場合、キラルでないスメクチックC(以下、SmCと省略する)相を示す母体液晶が一般に使用される。
SmC相は、層構造を有するスメクチック相の中でも、液晶分子の配向方向がレイヤーノーマル(層法線)に対して一定の傾き(チルト)を有する。また、層平面に対して傾く角度(方位角)は層ごとに少しずつずれることにより、分子配向に螺旋構造を生じる。
【0003】
強誘電性液晶はネマチック液晶を用いた表示素子と比較して十倍以上の高速応答性が得られる特徴を有し、最初にディスプレイ用途へ考案したのは、クラーク(Clark)及びラガウォール(Lagerwall)による表面安定化強誘電性液晶(SSFLC:Surface-stabilized FLC)である。これ以降、活発に検討がなされるようになっている。
【0004】
SSFLCでは、平行配向処理が施された基板を用いてレイヤーノーマルがセルの基板面と平行になるように液晶を配向し(ホモジニアス配向)、かつ液晶層の厚さを薄くすることにより、螺旋が解けるようになり、液晶分子が基板面に傾斜した配向をとりにくくなり、方位角の取り得る範囲が2通りに抑制され、表面安定化の作用により配向のメモリー性(双安定性)が発現してメモリー性を有する黒と白の二値表示のディスプレイが得られ、高速応答性を有しているが、二値表示であるため階調表示を得ることが困難で問題があった。更に、昇温した液晶を基板間に挟持した後、降温して液晶がSmC相となると、チルトが生じて層間隔が減少することにより層平面が「く」の字状に折れ曲がるシェブロン構造が現われ、ジグザグ欠陥が生じやすく高コントラスト化が難しく、ディスプレイへ応用するため配向に関する検討が盛んに行われた(非特許文献1参照)。
【0005】
双安定性に起因する階調表示の困難性を解決するために、方位角の取り得る範囲を抑制しない方式として、ねじれ螺旋(あるいは変形螺旋)強誘電性液晶(DHFLC:Distorted (or Deformed) Helix FLC)も知られている(非特許文献2参照)。この方式においては、FLCの螺旋ピッチを十分に短くし、基板間の液晶層の厚みよりも小さくする。この方式によれば、電圧無印加時には螺旋軸方向に軸を有する1軸性の複屈折を有するが、電圧印加時には液晶配向の螺旋配列から徐々に外れて複屈折を変化させるため、連続的な階調表示が得られる。しかし、非特許文献2記載のDHFLCはレイヤー層が基板面に対して垂直、すなわち、レイヤーノーマル方向が基板面に対して略水平であるため、表示素子の視野角の点で問題を有していた。
【0006】
また、強誘電性液晶表示素子の視野角を改善する方法として、ネマチック液晶ディスプレイで開発された技術を強誘電性液晶へ応用した例が挙げられる。ネマチック液晶を用いた場合、垂直配向方式は、基板に対して垂直な方向の電界を用いるが液晶分子の垂直配向を利用して視野角の改善を図った方式である。また、IPS(インプレインスイッチング)は、水平配向した液晶分子を基板に対して水平方向の横電界を用いて液晶分子をスイッチングさせることで視野角の改善を図った方法である。これらの垂直配向とIPSを組み合わせることにより、例えば、非特許文献3,4には、垂直配向させたDHFLCに対し、下側の基板に一対の櫛歯電極からなるインプレイン電極を配置して横電界を印加する液晶表示素子が報告されている。非特許文献5には、垂直配向させたDHFLCに横電界を印加した状態で、種々の方向から読出し(readout)のためのレーザ光を入射(light incidence)することによる光変調器が報告されている。しかしながら、強誘電性液晶を用いて、ネマチック液晶で開発されているVAモード並の高コントラストを得るためには垂直配向に於けるSmC特有のシュリーレンテクスチャーやフォーカルコニック配向欠陥を無くす必要がある。そのためには、螺旋ピッチを400nm以下のショートピッチの強誘電性液晶を垂直配向させる方法があるが、この場合、キラルドーパントの濃度が高いことに起因して、融点が高くなりSmC相の温度範囲が狭くなることから液晶表示素子の動作温度範囲が制限される問題があった。又、ショートピッチの螺旋を解くために高い電界強度が必要になるので液晶素子の駆動電圧が高くなるという問題もあった。更に、融点を低くするためには組成物の成分数が多くなるため、当該強誘電性液晶表示素子の効率的な生産を阻害し、経済的観点からも実用化の障害となっていた。又、SSFLCDに於いては外圧などによる素子に変形で配向が一旦乱れると復帰させることが難しくセル構造の工夫や高分子安定化等が考案されているが、大型化には至っていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Chenhui Wang and Philip J. Bos、“5.4: A Defect Free Bistable C1 SSFLC Display”、SID 02 Digest、2002年、p.34−36
【非特許文献2】J Funfschilling and M. Schadt、“Fast responding and highlymultiplexible distorted helix ferroelectric liquid-crystal displays”、J. Appl.Phys.、1989年10月、第66巻、第8号、p.3877−3882
【非特許文献3】Ju Hyun Lee, Doo Hwan You, Jae Hong Park, Sin Doo Lee, and Chang Jae Yu、“Wide-Viewing Display Configuration of Helix-Deformed Ferroelectric Liquid Crystals”、Journal of Information display、2000年12月、第1巻、第1号、p.20−24
【非特許文献4】John W. McMurdy, James N. Eakin, and Gregory P. Crawford、“P-127: Vertically Aligned Deformed Helix Ferroelectric Liquid Crystal Configuration for Reflective Display Device”、SID 06 Digest、2006年、p.677−680
【非特許文献5】A. Parfenov、“Deformation of ferroelectric short-pitch helical liquid crystal by transverse electric field: Application for diffraction-based light modulator”、Applied Physics Letters、1998年12月、第73巻、第24号、p.3489−3491
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ホメオトロピック配向の液晶組成物を用いた液晶光変調素子において、より低い駆動電圧で、応答速度の高速化が可能な液晶光変調素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記問題を解決するため、ホメオトロピック配向させた液晶のCダイレクターを一定の方向へ揃えることについて検討を行った。その結果、電界無印加時において螺旋が略解けた状態となりCダイレクターが一定方向へ揃い一軸配向になるようにすると、従来は螺旋を解くために必要とされた高い電界強度が不要になり、低電圧駆動が可能になることを見いだし、本願発明の完成に至った。
本発明は、偏光面が互いに直交する二枚の偏光板;
前記偏光板の間に配置された、少なくとも一方が透明であり、互いの間に液晶組成物層を挟持した、第一の基板及び第二の基板;並びに
少なくとも一方の基板が透明であり、前記第一の基板又は第二の基板の少なくとも一方の基板面に略平行な電界を発生させる一対の電極構造;
を有する液晶光変調素子であって、
前記第一の基板又は第二の基板の少なくとも一方は、垂直配向膜を有し、液晶分子のCダイレクターを一定の方向へ揃える配向機能を具備し;
前記一定の方向は、前記一対の電極構造により発生する電界方向に対して方位角35〜55°の方向であり;
前記液晶組成物層は、キラルスメクチックC相を有する強誘電性の液晶組成物、又はアキラルスメクチックC相を有する負の誘電異方性の液晶組成物が挟持され;
前記液晶組成物層が前記第一の基板と前記第二の基板に接する部分で液晶分子のCダイレクターが前記配向機能により前記一定の方向に揃い、前記第一の基板と第二の基板の間で液晶分子のCダイレクターが平行であり、前記略平行な電界方向に対して方位角35〜55°の方向に液晶分子のCダイレクターを揃え、前記電極構造により発生した電界で前記液晶組成物層の複屈折率を変えることにより透過する光の透過率を変調する;
液晶光変調素子を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液晶光変調素子によれば、垂直配向膜表面にラビング配向処理等によるプレチルト角を付与するとSmC相又はSmC*相のCダイレクターがラビング方向へ揃い、その結果、電界無印加時においても螺旋が略解けた状態となり、より低い駆動電圧で、応答高速性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】本発明の液晶表示素子のOFF時の例を示す模式図である。
図1B】本発明の液晶表示素子のON時の例を示す模式図である。
図2】セル厚dに対して透過率が最大になるΔnとの関係を示すグラフである。
図3A】OFF時の、平面からみた屈折率分布を示す模式図である。
図3B】ON時の、平面からみた屈折率分布を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、好適な実施の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1A及び図1Bに、本発明の液晶表示素子の一例を示す。図1AはOFF時、図1BはON時を示す。
図示例の液晶表示素子は、ガラス板11,21等の透明基材に配向膜12,22を具備した一対の基板10,20を備え、これら第一の基板10と第二の基板20間の液晶組成物層31に、キラルスメクチックC相を有する強誘電性の液晶組成物又はアキラルスメクチックC相を有する負の誘電異方性の液晶組成物を挟持した構造のセルを有する。基板10,20及び液晶組成物層31は、偏光面が互いに直交する(すなわち、クロスニコルとされた)二枚の偏光板(図示せず)の間に、配置されている。
【0013】
キラルスメクチックC相(以下、「スメクチックC相」と称する。)又はアキラルスメクチックC相(以下、「スメクチックC相」と称する。)を有する液晶組成物の分子長軸は螺旋を巻いていて、垂直配向膜を有する基板上では、スメクチックC相の場合、螺旋軸は基板面に対して垂直な方向にある。また、この螺旋ピッチに依存して、所定の波長を中心とした選択反射が誘起される。この選択反射の中心波長は、組成物の平均屈折率nとSmCに於ける螺旋ピッチPとの積、n・Pで表すことができ、その中心波長は、カイラルドーパントの組成物の屈折率の他に、その種類と添加量に依存している。本発明の液晶表示素子に於いては、略螺旋が解けていることが好ましく、螺旋があったとしても赤外線帯以上が好ましく、セル厚以上の選択反射であることが好ましく、例えば3000nmから500000nmの選択反射であることが望ましい。これにより螺旋の巻く力が弱くなり螺旋を解くのに必要であった強い電界強度が不要になり、低電圧駆動が可能になる。又、螺旋ピッチはセル厚の8倍以上であれば略解けるようになりより好ましい。略螺旋が解けるとCダイレクターが一定の方向へ揃うようになり一軸配向が得られる。Cダイレクターを一定方向へ揃える配向手段は、ネマチック液晶相に於いて垂直配向膜を用いて一定の方向へプレチルト角を付与するような性質の配向処理を垂直配向のSmC相に施すもので、この配向処理をしない場合はCダイレクターの向きは任意になり、熱の揺らぎに起因した振動で可視光を散乱させて偏光顕微鏡で見るとシュリーレンテクスチャーが観察されるようになる。これを表示素子にすると僅かに白濁が見え高コントラスト化を難しくしている。しかし、例えば、垂直配向膜にラビング処理を施し液晶分子のダイレクターが基板面に対して一定の方向へ傾くプレチルト角を付与させるとCダイレクターがラビング方向へ揃いシュリーレンテクスチャーが消えCダイレクターが略一定方向へ揃うことにより一軸配向が得られるため暗視野になることが大きな特徴である。
なお、ネマチック液晶相に於いて垂直配向膜を用いて一定の方向へプレチルト角を付与するような性質の配向処理とは、ポリイミド等の垂直配向膜を用いて、その表面にラビング処理を施すものであって、VAモードのネマチック液晶セルに適応すると、垂直配向の液晶分子長軸にプレチルト角を付与する性質のもので、スイッチングの際に液晶分子長軸の傾く方位方向をラビング処理方向で既定するものであるが、このような性質の配向膜を垂直配向のSmC相又はSmC相に適用するとCダイレクターがラビング方向へ揃えられることが特長で、こういった性質の配向膜ではあれば良い。配向膜の種類としては、垂直配向を示すポリイミド配向膜や、ネマチック液晶に対してプレチルト角を付与できる垂直配向用光配向膜等を用いることができる。又、プレチルト角を付与した光配向膜を用いることもできる。プレチルト角の大きさは、垂直配向のSmC相又はSmC相に於けるシュリーレンテクスチャーを解消してラビング配向方向へCダイレクターを揃えられるものであれば良い。
【0014】
第一の基板10及び第二の基板20は垂直配向膜12,22を有しており、これら垂直配向膜12,22の少なくとも一方には一定の方向13(図1AのTop of view参照)へプレチルト角を付与可能な配向処理が施されている。これにより、電界を印加しないOFF時には、強誘電性液晶組成物層31が、前記配向処理が施された垂直配向膜12,22に接する部分で、液晶分子32のCダイレクターを一定の方向13へ配向させることができ、SmC相又はSmC相のCダイレクターが配向処理方向へ揃うため、シュリーレンテクスチャーの出現を解消することが可能で、一軸配向が得られ、13の方向へ二枚の偏光板の何れか一方の偏光軸へ合わせることにより黒が得られる。電圧で液晶分子を動かす手段としては基板面に対して横電界を発生できる電極24(IPS電極)を用いることによりON状態を示し表示が得られる。
一定の方向へプレチルト角を付与可能な配向処理を、両方の垂直配向膜12,22に施すときは、第1の垂直配向膜12に配向処理を施す方向13と、第2の垂直配向膜22に配向処理を施す方向23とが異なってもよいが、両基板の配向処理を施す方向を同じ方向とすると、両方の基板間の液晶組成物31全体で一定の方向13にCダイレクターを揃えやすくなるので好ましい。又、垂直配向膜12,22の何れかのみにプレチルト角を付与可能な配向処理を施しても良い。
スメクチックC相の場合、螺旋は巻かないが、上述の配向処理によりCダイレクターが一定方向へ揃い一軸配向性を示す。セル厚を増すと一軸配向性が乱れる場合があるが、この場合は螺旋を巻かない程度にキラルドーパントを微小に添加すれば良く、添加したキラル分子の作用で基板面のCダイレクターに対する配向規制力がセル内部へ伝播して一軸配向性が向上してコントラスト向上に有効になり好ましい。
【0015】
第一の基板10又は第二の基板20の少なくとも一方の基板面には、略平行な電界を発生させる一対の電極構造24,24を有し、電極構造24,24により発生した電界で負の誘電異方性を有するスメクチックC相の液晶組成物層31、又は液晶分子32の垂直方向へ永久双極子を持ち自発分極を誘起する強誘電性を示し略螺旋が解けている液晶組成物31を図1BのTop of viewに於ける液晶分子32の14の方向へ揃うようにすると複屈折率が変わり、透過する光の透過率を電圧に比例して変調する。14の方向をクロスニコルの何れかの偏光軸に対して斜め略45°にするとON時の透過率を最大にすることが可能になりより好ましい。図示例では、OFF時には液晶分子32のCダイレクターが配向処理方向13の方向へ揃い、第一の基板10と第二の基板20に接する部分で液晶分子32のCダイレクターが前記配向機能により一定の方向に揃い、第一の基板10と第二の基板20の間で液晶分子32のCダイレクターが平行となるが(図1AのTop of View参照)、このときの液晶分子32のCダイレクターの方向を偏光板の偏光軸の方向とすることにより、クロスニコルとされた二枚の偏光板のうち一方の偏光板から入射した光が他方の偏光板を透過できないため、上述したように暗視野(黒表示)となる。電極構造24,24としては、例えば櫛型電極(IPS電極)やFring Field Switching(FFS)電極が挙げられる。又、基板10及び基板20の両面に電極構造24、24を設置することもできる。
【0016】
基板面上に配置された櫛型電極(IPS電極)を介して、横電界を徐々に増加させて印加すると螺旋が解けたまま、横電界に対して垂直方向へ液晶分子長軸が揃うようになり透過率が増加していく。この時のリターデーション(Δnd、Δn:複屈折率、d:セル厚)の変化は、ネマチック液晶に於けるECBモードに類似している。そのため、透過率を最大にするには、リターデーションがλ/2に一致させる必要がある。λは透過光の波長(代表値)を表す。一般に視感度が一番大きい波長である550nm付近をλとして用いられている。
なおリターデーション(Δnd)のセルを通過したときの出射光強度Iは、(式1)で表わされる。
【0017】
【数1】
【0018】
式1において、Iは入射光強度を表わす。透過率は、I/Iの比により表される。
式1より、Δnd=π/2のとき、透過率が最大になることが分かる。(式1)からΔnを求めるため、(式2)のように変形することができる。
【0019】
【数2】
【0020】
理想的には、入射光強度I=1に対して出射光強度Iが1にすれば良く、それに必要な条件は、リターデーション(Δndの積)がλ/2=275nmに等しくなるようにすれば良い。
図2のグラフはセル厚dに対して透過率が最大になるΔnとの関係を示す。従って、用いる強誘電性液晶材料のΔnに合わせてセル厚を調整すれば550nm付近に光を略損失なく透過させることができる。又、フルカラー表示にする場合は、色バランスを考慮する必要があるのでリターデーションの波長分散特性や、用いられるカラーフィルターやバックライトのスペクトルに合わせてλ/2の波長を調整しても良い。
尚、本発明に於ける液晶のΔnは、電圧を印加しないで基板の配向処理により螺旋を解いた場合に求められる分子長軸方向の屈折率n、分子短軸方向の屈折率n、及びチルト角θを用いた場合で、本液晶素子の電圧―透過率特性に有効なΔnを言う(式3)。図2の実効Δnは、式3で表わされるΔnである。
【0021】
【数3】
【0022】
電圧がOFF時であっては、Cダイレクターが少なくとも一方の偏光軸に揃っていれば良く、Cダイレクターが揃う度合いで黒さが決まるので一軸配向性を高くできるようにCダイレクターの配向機能を配向膜材料や配向処理の方法、配向処理条件を調整して最適化を図ることが好ましい。
【0023】
液晶組成物層31が第一の基板10と第二の基板20に接する部分で液晶分子32のCダイレクターが配向機能により一定の方向に揃い、第一の基板10と第二の基板20の間で液晶分子32のCダイレクターが平行であり、略平行な電界方向に対して方位角35〜55°の方向に液晶分子32のCダイレクターを略揃え、電極構造24,24により発生した電界で液晶組成物層31の複屈折率を変えることにより透過する光の透過率を変調することができる。上記方位角は40〜50°が好ましく、42〜48°がより好ましく、45°が最も好ましい。
電圧印加時に明視野を得るためには、ラビング処理等の基板の配向処理による配向方向が、一対の電極構造24,24により発生する電界方向に対して方位角45°の方向であることが好ましい。
電界無印加時に暗視野を得るためには、前記液晶組成物層が、キラルスメクチックC相又はアキラルスメクチックC相の螺旋軸が略解けた状態であり、且つ、キラルスメクチックC相又はアキラルスメクチックC相のレイヤー構造が基板面に対して平行であり、液晶分子のCダイレクターが前記一定の方向に向いている液晶光変調素子であって、ラビング処理等の基板の配向処理による配向方向が偏光方向に±1°以内で一致することが好ましく、±0.5°以内で一致することがより好ましく、0°が最も好ましい。
【0024】
一方、電圧印加時のリターデーションは、印加電圧に依存して変化する。図3A及び図3Bに平面から見たIPS電極24の間の屈折率の大きさの分布を示す。上述したように電圧無印加時は電界方向に対して方位角35〜55°の方向の楕円状の屈折率分布33を描くが、電圧を印加するとスメクチックC相の場合は、液晶分子に負の誘電異方性を持たせることで液晶分子の長軸が電界方向に対して垂直方向へ揃うとするので楕円状の屈折率分布34を描く。又、スメクチックC相は電極の横電界の作用で分子長軸に垂直な永久双極子が揃い同時に分子長軸が楕円長軸方向へ揃うようになり電界方向に略垂直な楕円状の屈折率分布34を描く。更に、電圧を増加させていくとIPS電極に沿って両者とも楕円の長径が大きくなりΔnが増し楕円率が増加する。この状態に直交する偏光板の何れかの偏光軸を楕円長軸に対して45°の方向へ配置すると出射光を一番高く取り出すことができるようになる。但し、上述したように電界で飽和したリターデーションをλ/2の値に調整すると出射光が大きくなり好ましい。可視領域全体の透過率を大きくすることが表示の明るさや色バランスには重要なことから、表示素子の色調により275nm付近であれば良く、225nm〜330nmにすることが好ましい。従って、セル厚は、電圧印加時の最大となるリターデーションを使用する強誘電性液晶組成物のΔnで除算した値で決まり、2μm〜15μmの範囲が好ましい。
本発明に用いる液晶の選択反射の範囲では、外圧などによる素子に変形で配向は乱れても螺旋の巻く力で元の配向状態へ戻ることができ高い信頼性を得られることが大きな特徴である。
【0025】
液晶を配向欠陥無く基板間に充填するためには、従来の真空注入法、液晶滴下注入法(One Drop Fill)、及びフレキソ印刷法で行うことができ、少なくとも、等方相、又はネマチック相に加熱してネマチック相から除冷してスメクチック相へ相転移させることが好ましく、該強誘電性液晶組成物の相系列が少なくとも高温側から等方相、キラルネマチック相、スメクチックA相、キラルスメクチックC相(ISO−N−SmA−SmC)、又は前記相系列が少なくとも高温側から等方相、キラルネマチック相、キラルスメクチックC相(ISO−N−SmC)であることが好ましい。この場合、ネマチック相より高温側にブルー相(BP)等の他の相を発現してもよく、等方性液体−ブルー相−キラルネマチック相−スメクチックA相−キラルスメクチックC相、等方性液体−ブルー相−キラルネマチック相−キラルスメクチックC相などの相系列を例示することができる。また、等方性液体−キラルスメクチックC相(ISO−SmC)の相系列を発現する液晶も採用可能である。
液晶化合物のチルト角を大きくする観点からは、相系列にスメクチックA相が存在しないことが好ましく、その具体例としては、INC(ISO−N−SmC)又はIC(ISO−SmC)が挙げられる。
該強誘電性液晶組成物の相系列において、降温時にキラルネマチック相からスメクチックA相又はキラルスメクチックC相へ相転移する温度であるキラルネマチック相の下限温度より2℃高い温度で、キラルネマチック相の螺旋ピッチが少なくとも50μm以上であることが好ましい。これにより、液晶がキラルネマチック相であるときに、螺旋ピッチがセル厚(ギャップ)より十分に長くなるため、キラルネマチック相が螺旋構造をとることがなく、スメクチック相へ転移する手前で配向欠陥の無い良好なホメオトロピック配向が得られるようになり、より均一な配向を得ることができる。キラルネマチック相の螺旋ピッチを解いてスメクチック相へ転移させるためには、その温度幅を少なくとも10℃以上が好ましい。温度幅が狭いと螺旋が解けずスメクチック相へ転移する場合があるため、配向欠陥の原因になる。又、キラルネマチック相の螺旋を解く方法として、逆巻きの螺旋を示すピッチキャンセラーを添加して螺旋を調整することもできる。
【0026】
電圧無印加時の配向状態は、VAモードのSmC相又はSmC相であるがCダイレクターの動きがネマチック液晶を用いたIPSモードの表示素子に類似しているためIPSモードに用いられる位相補償板を用いれば良く、必要に応じてAプレート、一軸延伸等のネガCプレートや二軸延伸のZプレート等の光学補償フィルムを用いてコントラストの向上や、視野角向上の目的に用いることができる。
【0027】
液晶表示素子の光源は、特に限定されるものではないが、低消費電力であることからLEDが好ましい。さらに消費電力を抑制するため、点滅制御(暗い領域の光量を下げたり消灯したりする技術)や、マルチフィールド駆動技術(駆動周波数を、動画を表示する場合と静止画を表示する場合とで区別する技術)、屋内と屋外あるいは夜間と昼間で光量のモード切り替えを行う技術、液晶表示素子のメモリー性を利用して駆動を一時停止する技術等を用いることが好ましい。また、反射型表示素子では、機器に光源を備えなくとも外部の照明(日光や室内光など)を利用できるため、好ましい。
液晶表示素子は、フィールドシーケンシャル方式等の時間分割、偏光方式、視差バリア方式、インテグラルイメージング方式等のスペース分割、分光方式やアナグリフ等の波長分割、FPSモード等により、3D表示を行うことも可能である。
低電圧駆動のため、一対の基板の両方に、一対の画素電極と共通電極を有する構成とすることもできる。低電圧で駆動するため、一対の基板の両方にIPS(In-Plane Switching)電極を設けたり、セル内部に突起した電極を持ち、セル内部での電界強度分布が低下しにくい素子であるConfined geometry(Lee,S.-D., 2009, IDW ’09-Proceeding of the 16th International Display Workshots 1, pp.111-112)を利用したり、一対の基板の両方にFFS(Fringe-Field Switching)電極を設けたりすることができる。
【0028】
コントラストの向上に関しては、点滅制御(暗い領域の光量を下げたり消灯したりする技術)や、開口率が50%以上である素子、高配向性の配向膜やアンチグレア膜を用いたり、フィールドシーケンシャル方式(カラーフィルターを用いずにRGB3色のLEDを、人間の目の時間的分解能以下の短時間で順次点灯させ、色を認識させるカラー化方式)を用いることが好ましい。
【0029】
高速応答性のためには、オーバードライブ機能(階調を表現する際の電圧を、立ち上がり時に高く、立ち下がり時は低くする)を用いたり、負の誘電異方性をもつスメクチック液晶と自発分極を示すスメクチック液晶を併用することが好ましい。
タッチパネルの表面を覆うフィルムは、汚れによる表示品質の低下を抑制するため、撥水・撥油性、防汚性、耐指紋性を有することが好ましい。少なくとも押圧側の電極基板は、プラスチック基板や薄膜ガラス基板等のフレキシブル基板を使用することが好ましい。
電極としては、グラフェン(炭素の単原子層からなるシート)や有機半導体を用いることが好ましい。
【0030】
液晶セルの2枚の基板はガラス、プラスチックの如き柔軟性をもつ透明な材料を用いることができ、一方はシリコン等の不透明な材料でも良い。透明電極層を有する透明基板は、例えば、ガラス板等の透明基板上にインジウムスズオキシド(ITO)をスパッタリングすることにより得ることができる。
カラーフィルターは、例えば、顔料分散法、印刷法、電着法、又は、染色法等によって作成することができる。顔料分散法によるカラーフィルターの作成方法を一例に説明すると、カラーフィルター用の硬化性着色組成物を、該透明基板上に塗布し、パターニング処理を施し、そして加熱又は光照射により硬化させる。この工程を、赤、緑、青の3色についてそれぞれ行うことで、カラーフィルター用の画素部を作成することができる。その他、該基板上に、有機半導体や無機半導体、又は酸化物半導体を用いた薄膜トランジスター(TFT)、薄膜ダイオード、金属絶縁体金属比抵抗素子等の能動素子を設けた画素電極を設置してもよい。
【0031】
信頼性向上やTFT駆動を目的に、強誘電性液晶組成物は不純物等を除去したり、又は比抵抗値を更に高くしたりする目的で、シリカ、アルミナ等による精製処理を施しても良い。液晶組成物の比抵抗値としては、TFTで駆動するためには、1011Ω・cm以上が好ましく、1012Ω・cm以上がより好ましく、1013Ω・cm以上がより好ましい。また、液晶組成物中に不純物として存在するカチオンの影響を防止する方法として、ポダンド、コロナンド、又はクリプタンド等のカチオン包接化合物を添加することもできる。又、TFT駆動では、画像情報を一定時間間隔で書き込み電極間に電荷をその間保持して画像を表示しているが、スイッチングさせると自発分極による分極反転電流の影響で電極間に保持されて電荷が減少するため補助容量を画素に接続することが好ましく、用いる液晶の自発分極に適した補助容量を接続することができる。
【0032】
低温環境下でも液晶表示素子の性能を維持できるようにするため、強誘電性液晶組成物が低温保存安定性を有することが好ましい。液晶組成物の低温保存安定性は、0℃以下、24時間以上の環境でSmCを維持することが好ましく、より好ましくは−20℃以下、500時間以上、さらに好ましくは−30℃以下、700時間以上の環境でSmCを維持することが好ましい。
【0033】
<強誘電性液晶組成物>
本発明で用いられる強誘電性液晶組成物は、ホスト液晶(母体液晶)にキラル化合物(ドーパント)を含むことができ、さらに、高分子安定化を実現するためのモノマー(重合性化合物)を任意に加えることができる。
このような強誘電性液晶組成物を用いることで、配向の安定化や、中間階調に於ける応答速度を向上させることができる。液晶が配向膜等で配向させた状態を配向欠陥無く固定化させるためには、モノマーを添加しない場合と同様に、少なくとも、ネマチック相から除冷してスメクチック相へ相転移させることが好ましく、用いる液晶セルの基板面が平坦であることがより好ましい。また、ネマチック相やスメクチック相等の液晶相中で該モノマーを網目状、又は分散した状態に重合させる必要がある。更に、相分離構造形成を避けるためには、モノマーの含有量を少なくして、液晶が配向している状態で液晶分子間に網目状高分子が形成できるよう該高分子前駆体含有量や該前駆体の組成を調整することが好ましく、さらに、光重合の場合は、UV露光時間、UV露光強度、及び温度を調整して網目状の高分子を形成させて液晶配向欠陥が無いようにすることが好ましい。
【0034】
<液晶性化合物>
ホストとなる液晶性化合物としては、下記の一般式
【0035】
【化1】
【0036】
(式中、Rは各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基中の、1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−SO−、−SO−O−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はCN基で置き換えられていてもよく、
Zは各々独立に−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−N(R)−、−N(R)−CO−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−O−SO−、−SO−O−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−又は単結合を表し、−CO−N(R)−又は−N(R)−CO−におけるRは水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表し、
Aは各々独立にフェニレン基、シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、ナフタレンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基から選択される環式基を表し、前記フェニレン基、ナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つ以上の−CH=基が窒素原子で置き換えられてもよく、前記シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つの隣接していない−CH−基が、−O−及び/又は−S−で置き換えられてもよく、前記環式基の1つ又はそれ以上の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、CN基、NO基、あるいは、1つ又は2つ以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置き換えられてもよい、炭素原子数1〜7の有するアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基又はアルコキシカルボニル基で置き換えられていてもよく、
nは1、2、3、4又は5である。)で表される液晶性化合物が好ましい。
【0037】
また、下記の一般式
【0038】
【化2】
【0039】
(式中、Rは各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基中の、1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−SO−、−SO−O−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はCN基で置き換えられていてもよく、
Zは各々独立に−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−N(R)−、−N(R)−CO−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−O−SO−、−SO−O−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−又は単結合を表し、−CO−N(R)−又は−N(R)−CO−におけるRは水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表し、
Yは各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上の水素原子は各々独立にハロゲン原子又は炭素原子数1〜9のアルキル基で置換されていてもよく、
Xは各々独立にハロゲン原子、シアノ基、メチル基、メトキシ基、−CF、又は−OCFを表し、
nは各々独立に0〜4の整数を表し、
、n、n及びnは、各々独立に0又は1を表すが、n+n+n+n=1〜4であり、
Cycloは各々独立に炭素原子数3〜10のシクロアルカンを表し、任意に二重結合を有していてもよい。)で表される液晶性化合物(LC−I)〜(LC−III)が好ましい。
【0040】
ここで、Cycloはシクロヘキサン(シクロへキシレン基)であることが好ましく、例えば下記一般式
【0041】
【化3】
【0042】
(式中、Rは各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基中の、1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−SO−、−SO−O−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はCN基で置き換えられていてもよく、
Zは各々独立に−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−N(R)−、−N(R)−CO−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−O−SO−、−SO−O−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−又は単結合を表し、−CO−N(R)−又は−N(R)−CO−におけるRは水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表し、
Yは各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上の水素原子は各々独立にハロゲン原子又は炭素原子数1〜9のアルキル基で置換されていてもよく、
Xは各々独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、メチル基、メトキシ基、CF基、又はOCF基を表し、
nは各々独立に0〜4の整数を表し、
、n、n及びnは、各々独立に0又は1を表すが、n+n+n+n=1〜4である。)で表される液晶性化合物(LC−I′)〜(LC−III′)が好ましい。
【0043】
液晶性を発現するためには、環に対して1,4−置換であることが好ましい。すなわち該液晶性化合物に含まれる環式2価基が1,4−シクロへキシレン基、1,4−フェニレン基、2,5−ピリミジンジイル基などであることが好ましい。
例えば下記一般式
【0044】
【化4】
【0045】
(式中、R11及びR12は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又はフッ素原子を表すが、R11とR12が同時にフッ素原子となることはなく、該アルキル基中の、1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、又はCN基で置き換えられていてもよく、
11〜X22は各々独立に水素原子、フッ素原子、CF基、又はOCF基を表し、
11〜L14は各々独立に単結合、−O−、−S−、−CO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CHCH−、−CH=CH−、又は−C≡C−を表し、
Yは各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上の水素原子は各々独立にハロゲン原子又は炭素原子数1〜9のアルキル基で置換されていてもよく、
、b、c、dは各々独立に0又は1の整数を表すが、a+b+c+dは1、2又は3であり、aが0の場合はdは0であり、aが1の場合はcは0であり、cが1の場合はaは0であり、b=c=1の場合はa=d=0であり、
Cycloは各々独立に炭素原子数3〜10のシクロアルカンを表し、任意に二重結合を有していてもよい。)で表される液晶性化合物(LC−Ia)〜(LC−IIIa)が好ましい。
また、下記一般式
【0046】
【化5】
【0047】
(式中、R11及びR12は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又はフッ素原子を表すが、R11とR12が同時にフッ素原子となることはなく、該アルキル基中の、1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、又はCN基で置き換えられていてもよく、
環Aは各々1〜4つの水素原子がフッ素原子、CF基、OCF基、又はCN基、あるいはこれらの複数の基で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基、又は、1,4−シクロヘキシレン基を表し、
環Bは1〜4つの水素原子がフッ素原子、CF基、OCF基、又はCN基、あるいはこれらの複数の基で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基を表し、
環Cは1〜4つの水素原子がフッ素原子、CF基、OCF基、又はCN基、あるいはこれらの複数の基で置き換えられてもよい1,4−シクロヘキシレン基を表し、
Lは各々独立に単結合、−O−、−S−、−CO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CHCH−、−CH=CH−、又は−C≡C−を表し、
Yは各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上の水素原子は各々独立にハロゲン原子又は炭素原子数1〜9のアルキル基で置換されていてもよく、
は0、1、又は2を表し、b、及びcは0、1、又は2の整数を表し、a、b及びcの合計は1、2または3を表す。)で表される液晶性化合物(LC−IV)、
【0048】
【化6】
【0049】
(式中、R21及びR22は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又はフッ素原子を表すが、R21とR22が同時にフッ素原子となることはなく、該アルキル基中の、1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、又はCN基で置き換えられていてもよく、
21〜X27は各々独立に水素原子、フッ素原子、CF基、又はOCF基を表し、
21〜L24は各々独立に単結合、−O−、−S−、−CO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CHCH−、−CH=CH−、又は−C≡C−を表し、
、b、c及びdは各々独立に0又は1の整数を表すが、a+b+c+dは1、2又は3であり、aが0の場合はdは0であり、aが1の場合はcは0であり、b=c=1の場合はa=d=0である。)で表される液晶性化合物(LC−V)が好ましい。
【0050】
フェニルピリミジン系化合物のうち、強誘電性の発現に必要な傾いたスメクチック相を得るため、あるいは、分子の傾き角を大きくするため、もしくは融点を低下させるためには分子の環の部分に置換基として、少なくとも1つ以上のフッ素原子、CF基、あるいはOCF基が導入されることが好ましい。置換基としては形状の小さなフッ素を導入することが、液晶相を安定に保ち、また、高速応答性も保持する面で好ましい。置換基の数は1〜3が好ましい。
粘度が低く高速応答するため、環をつなぐ連結基(−Z−Y−Z−、又は−Y−L−Y−)としては、単結合、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CH=CH−、又は、−C≡C−からなるより選択されることが好ましく、特に、単結合であることが好ましい。分子の局部的な分極を抑制しスイッチング挙動への悪影響を少なくする面でも単結合が好ましい。一方、層構造の安定性を保つための材料としては粘度が高い方が好ましく、その場合には、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−からなるより選択されることが好ましく用いられ、特に、−CO−O−、−O−CO−が好ましく用いられる。
一方、融点を低下させる効果を大きくするという点では、側鎖(R、R11、R12、R21、R22)の一方または両方に水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、イソプロピル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルオキシカルボニルオキシ基を用いることが好ましい。
【0051】
Δnを大きくするのに適していて、安定な強誘電性液晶相を示し、かつ、粘度が低く高速応答に適した化合物としては、下記一般式
【0052】
【化7】
【0053】
(式中、R21及びR22は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、水素原子、又はフッ素原子を表し、
該アルキル基中の、1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−SO−、−SO−O−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はCN基で置き換えられていてもよく、
21〜X24は各々独立に水素原子、ハロゲン、シアノ基、メチル基、メトキシ基、CF基、又はOCF基を表し、
環Aはフェニレン基またはシクロヘキシレン基を示し、
Lは各々独立に単結合、−O−、−S−、−CO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CHCH−、−CH=CH−、又は−C≡C−を表し、
は0、1、又は2を表し、b、及びcは0、1、又は2の整数を表し、a+b+cの合計は1又は2を表し、a=1のときc=0であり、c=1のときa=0である)で表される液晶性化合物(LC−VI)が好ましい。
【0054】
上記一般式(LC−I)〜(LC−VI)におけるYは、好ましくは、各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜7のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であり、
より好ましくは、各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜5のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であり、
より好ましくは、各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜3のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)である。
【0055】
TFT駆動に適していて、安定な強誘電性液晶相を示し、かつ、粘度が低く高速応答に適した化合物としては、下記一般式
【0056】
【化8】
【0057】
(式中、eは0又は1を示し、
21〜X26は各々独立に水素原子、又はフッ素原子基を表すが、eが0のときX21〜X24の少なくとも1つはフッ素原子で、eが1のときX21〜X26の少なくとも1つはフッ素原子であり、
21及びR22は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表し、該アルキル基中の、1つの−CH−基が−O−で置き換えられてもよく、
25は単結合、−CHO−、又は−OCH−を表し、
環Aはフェニレン基またはシクロヘキシレン基を表す。)で表される液晶性化合物(LC−VII)が特に好ましい。
【0058】
本発明の強誘電性液晶組成物に用いられる液晶性化合物は、上記の(LC−0)、(LC−I)〜(LC−III)、(LC−IV)、(LC−V)、(LC−VI)、(LC−VII)等のいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせで用いてもよい。
【0059】
<アキラルスメクチックC相を有する液晶組成物>
本発明で用いられるアキラルスメクチックC相を有する液晶組成物は、負の誘電異方性を示すことが好ましく、負の誘電異方性化合物が100%であっても良く、負の誘電異方性化合物と非極性の誘電異方性を示さない化合物との組成物であっても良い。アキラルのホスト液晶(母体液晶)を用いる場合は、任意に後述のキラル化合物をラセミ体(キラリティーをキャンセルした状態)を含むことができ、さらに、高分子安定化を実現するためのモノマー(重合性化合物)を任意に加えることができる。これは、一軸配向性を高める場合と、負の誘電異方性と自発分極の両方を利用して液晶を電界応答させる場合に用いる。
負の誘電異方性を用いて液晶を駆動させる場合は、添加するキラル化合物は、一軸配向を損なわない程度の自発分極を発現しないキラリティーのみを有する化合物を用いることが好ましい。自発分極の分極反転の力で液晶を駆動させる場合は、ホスト液晶に必ずしも負の誘電異方性が無くても良く、強誘電性を示すキラル化合物をホスト液晶に添加することが好ましい。又、負の誘電異方性と分極反転の力を併用して液晶を駆動させることもでき、負の誘電異方性を有するホスト液晶に強誘電性を発現させるキラル化合物を添加して使用することも好ましい。但し、上述の液晶組成物は、ラセミ体で螺旋が略解けていることが望ましい。このようなSmC相又はSmC*相を示す液晶組成物は、印加電圧に対して垂直に配向するので本発明の液晶素子に用いることができる。
図1A及び図1Bに示すように、液晶分子が基板面に対して略垂直に配向した状態で、基板面に略平行な電界を印加することにより、液晶分子が基板面に対して略垂直に配向した状態のまま、高速なゴールドストーンモードにより、C−ダイレクターを回転させ、光の透過率を変調することができる。本発明において、アキラルスメクチックC相とは、スメクチックC相を示す液晶組成物がキラル化合物をまったく含まない場合や、キラル化合物を含んでいてもラセミ体である場合に限られず、キラル化合物の添加量が少なく、あるいは、略キャンセルされていて、強誘電性を示さない程度にエナンチオマー過剰率(ee)が小さい場合も包含されるものとする。
液晶が配向膜等で配向させた状態を配向欠陥無く固定化させるためには、モノマーを添加しない場合と同様に、少なくとも、ネマチック相から除冷してスメクチック相へ相転移させることが好ましく、用いる液晶セルの基板面が平坦であることがより好ましい。また、ネマチック相やスメクチック相等の液晶相中で該モノマーを網目状、又は分散した状態に重合させる必要がある。更に、相分離構造形成を避けるためには、モノマーの含有量を少なくして、液晶が配向している状態で液晶分子間に網目状高分子が形成できるよう該高分子前駆体含有量や該前駆体の組成を調整することが好ましく、さらに、光重合の場合は、UV露光時間、UV露光強度、及び温度を調整して網目状の高分子を形成させて液晶配向欠陥が無いようにすることが好ましい。
【0060】
<キラル化合物>
本発明の強誘電性液晶組成物に含まれるキラル化合物としては、不斉原子をもつ化合物、軸不斉をもつ化合物、面不斉をもつ化合物、アトロプ異性体のいずれでもよく、該キラル化合物は重合性基を有するものでも、重合性基を有しないものでもよい。
不斉原子をもつ化合物において、不斉原子は不斉炭素原子であると立体反転が起こりにくく好ましいが、ヘテロ原子が不斉原子となっていてもよい。不斉原子は鎖状構造の一部に導入されていても、環状構造の一部に導入されていてもよい。
【0061】
該強誘電性液晶組成物が、不斉原子をもつ化合物として、一般式(IV)
【0062】
【化9】
【0063】
(式(IV)中、R及びRは各々独立に炭素原子数1〜30の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上の隣接していない−CH−基が−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−O−SO−、−SO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよく、重合性基をもっていてもよく、前記アルキル基が縮合又はスピロ環式系を含むものでもよく、前記アルキル基が1つ又は2つ以上のヘテロ原子を含むことができる1つ又は2つ以上の芳香族又は脂肪族の環を含むものでもよく、またこれらの環はアルキル基、アルコキシ基、ハロゲンで任意に置換されていてもよく、
及びRのうちいずれか一方又は両方が不斉原子をもつ基であり、
Zは各々独立に−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−N(R)−、−N(R)−CO−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−又は単結合を表し、−CO−N(R)−又は−N(R)−CO−におけるRは水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表し、
及びAは各々独立にフェニレン基、シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、ナフタレンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基から選択される環式基を表し、前記フェニレン基、ナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つ以上の−CH=基が窒素原子で置き換えられてもよく、前記シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つの隣接していない−CH−基が、−O−及び/又は−S−で置き換えられてもよく、前記環式基の1つ又はそれ以上の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、CN基、NO基、あるいは、1つ又は2つ以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置き換えられてもよい、炭素原子数1〜7の有するアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基又はアルコキシカルボニル基で置き換えられていてもよく、
mは1、2、3、4又は5である。)で表される光学活性化合物が好ましい。
【0064】
上記一般式(IV)においてR及びRの両方がキラルな基である、ジキラル化合物がより好ましい。ジキラル化合物の具体例として、下記一般式(IV−a1)から(IV−a11)で表される化合物が挙げられる。
【0065】
【化10】
【0066】
【化11】
【0067】
【化12】
【0068】
一般式(IV−a1)から(IV−a11)において、Rは、各々独立に炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上の隣接していない−CH−基が−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−O−SO−、−SO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよく、重合性基をもっていてもよい。重合性基としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。
また、X及びXは、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、シアノ基、フェニル基(該フェニル基の1つ又は2つ以上の任意の水素原子はハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、メチル基、メトキシ基、−CF、−OCFで置換されていてもよい。)、メチル基、メトキシ基、−CF、又は−OCFであることが好ましい。ただし、一般式(IV−a3)及び(IV−a8)において、*を付した位置が不斉原子となるためには、XはXと異なる基が選択される。
また、nは0〜20の整数である。
一般式(IV−a4)及び(IV−a9)におけるRは、水素原子又はメチル基が好ましい。
一般式(IV−a5)及び(IV−a10)におけるQは、メチレン基、イソプロピリデン基、シクロヘキシリデン基などの二価の炭化水素基が挙げられる。
一般式(IV−a11)におけるkは、0〜5の整数である。
【0069】
より好ましい例示として、R=C,C13,C17などの炭素原子数4〜8の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基が挙げられる。また、XとしてはCHが好ましい。
【0070】
一般式(IV)及び(IV−a1)〜(IV−a11)における部分構造式、−A−(Z−A−は、より好ましくは、下記一般式(IV−b)
【0071】
【化13】
【0072】
(式中、環A、B、Cは、各々独立にフェニレン基、シクロヘキシレン基又はナフタレンジイル基であり、これらの基においてベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の任意の水素原子はハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、メチル基、メトキシ基、−CF、−OCFで置換されていてもよく、ベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の炭素原子は、窒素原子に置換されていてもよい。Zの定義は式(IV)におけるのと同じである。)であり、さらに好ましくは、下記(IV−b1)〜(IV−b6)
【0073】
【化14】
【0074】
(ただし、これらの式においてベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の任意の水素原子はハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、メチル基、メトキシ基、−CF、−OCFで置換されていてもよく、ベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の炭素原子は、窒素原子に置換されていてもよい。Zの定義は式(IV)におけるのと同じである。)が挙げられる。液晶の温度範囲を広げ、融点を低下させるという面では、ピリジン環、ピリミジン環等の複素環を有する化合物を使うことが良いが、その場合には化合物の持つ分極性が比較的大きく、ベンゼン環やシクロヘキサン環等の炭化水素環である場合には、化合物の持つ分極性が低い。このため、キラル化合物の分極性に応じて、適切な含有量を選択することが好ましい。
【0075】
また、本発明の強誘電性液晶組成物に用いられるキラル化合物としては、軸不斉を有する化合物又はアトロプ異性体を用いることもできる。
軸不斉とは、下記に示すアレン誘導体や、
【0076】
【化15】
【0077】
下記に示すビフェニル誘導体など、
【0078】
【化16】
【0079】
結合軸の回転が妨げられている化合物中、軸の一端側で置換基X及びYが互いに異なり、軸のもう一端側でも置換基X及びYが互いに異なることで発現する。なお、ビフェニル誘導体など、結合軸の回転が立体障害などの影響によって妨げられる場合をアトロプ異性という。
【0080】
本発明の強誘電性液晶組成物に用いられる軸不斉をもつ化合物としては、例えば、下記一般式(IV−c1)及び(IV−c2)
【0081】
【化17】
【0082】
で表される化合物が挙げられる。式(IV−c1)及び(IV−c2)中、X61とY61、X62とY62は、それぞれ、いずれか少なくとも一方が存在し、X61、X62、Y61、Y62は、各々独立にCH、C=O、O、N、S、P、B、Siのいずれかを表す。また、N、P、B、Siである場合は、所要の原子価を満足するように、アルキル基、アルコキシ基、アシル基等の置換基と結合されていてもよい。
61及びE62は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アリル基、ベンジル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルエーテル基、アルキルエステル基、アルキルケトン基、複素環基又はこれらの誘導体のいずれかを表す。
【0083】
また、式(IV−c1)において、R61及びR62は、各々独立に、アルキル基、アルコキシル基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基、シクロペンチル基、又はシクロヘキシル基を表し、
63、R64、R65、R66、R67及びR68は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、又はジアルキルアミノ基を示し、
63、R64及びR65のうちの2つが、置換基を有していてもよいメチレン鎖又は置換基を有していてもよい、モノ又はポリメチレンジオキシ基を形成していてもよく、
66、R67及びR68のうちの2つが、置換基を有していてもよいメチレン鎖又は置換基を有していてもよい、モノ又はポリメチレンジオキシ基を形成していてもよい。
ただし、R65とR66が共に水素原子の場合は除く。
【0084】
また、本発明の強誘電性液晶組成物に用いられるキラル化合物としては、面不斉を有する化合物を用いることもできる。面不斉を有する化合物としては、例えば下記(IV−c3)に示すヘリセン(Helicene)誘導体
【0085】
【化18】
【0086】
(式中、X61とY61、X62とY62は、それぞれ、いずれか少なくとも一方が存在し、X61、X62、Y61、Y62は、各々独立にCH、C=O、O、N、S、P、B、Siのいずれかを表す。また、N、P、B、Siである場合は、所要の原子価を満足するように、アルキル基、アルコキシ基、アシル基等の置換基と結合されていてもよい。
61及びE62は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アリル基、ベンジル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルエーテル基、アルキルエステル基、アルキルケトン基、複素環基又はこれらの誘導体のいずれかを表す。)
【0087】
が挙げられる。このようなヘリセン誘導体においては、前後に重なり合う環の前後関係が自由に変換することができないため、環が右向きの螺旋構造をとる場合と左向きの螺旋構造をとる場合とが区別され、キラリティーを発現する。
【0088】
液晶組成物に含まれるキラル化合物としては、螺旋構造のピッチが小さくなるように、ねじり力(Helical Twisting Power)が大きい化合物が好ましい。ねじり力が大きい化合物は所望のピッチを得るために必要な添加量が少なくできるので、駆動電圧の上昇を抑えられ、好ましい。この観点から、好ましいキラル化合物として、不斉原子を有する化合物である、(IV−d1)〜(IV−d3)
【0089】
【化19】
【0090】
や、軸不斉を有する化合物である、(IV−d4)〜(IV−d5)
【0091】
【化20】
【0092】
が挙げられる。式(IV−d1)〜(IV−d5)中、R71及びR72は各々独立に、水素、ハロゲン、シアノ(CN)基、イソシアネート(NCO)基、イソチオシナネート(NCS)基又は炭素数1〜20のアルキル基を表すが、このアルキル基中の任意の1つ又は2つ以上の−CH−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、又は−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、
71及びA72は各々独立に、芳香族性あるいは非芳香族性の3ないし8員環、又は、炭素原子数9以上の縮合環を表すが、これらの環の任意の水素がハロゲン、炭素原子数1〜3のアルキル基又はハロアルキル基で置き換えられてもよく、環の1つ又は2つ以上の−CH−は−O−、−S−、又は−NH−で置き換えられてもよく、環の1つ又は2つ以上の−CH=は−N=で置き換えられてもよく、
71及びZ72は各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜8のアルキレン基を表すが、任意の−CH−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CSO−、−OCS−、−N=N−、−CH=N−、−N=CH−、−N(O)=N−、−N=N(O)−、−CH=CH−、−CF=CF−、又は−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
71及びX72は各々独立に単結合、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、又は−CHCH−を表し、m71及びm72は各々独立に1〜4の整数を表す。ただし、式(IV−d5)におけるm71及びm72のいずれか一方は0でもよい。
式(IV−d2)中、Ar71及びAr72は各々独立にフェニル基又はナフチル基を表し、これらの基においてベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の任意の水素原子はハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、メチル基、メトキシ基、−CF、−OCFで置換されていてもよい。
【0093】
本発明の強誘電性液晶組成物においては、メソゲンを有するキラル化合物を用いることもできる。このようなキラル化合物として、例えば
【0094】
【化21】
【0095】
が挙げられる。式(IV−e1)〜(IV−e3)中、
81、R82、R83及びY81は、各々独立に炭素原子数1〜30の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上の隣接していない−CH−基が−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−O−SO−、−SO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよく、重合性基をもっていてもよく、前記アルキル基が縮合又はスピロ環式系を含むものでもよく、前記アルキル基が1つ又は2つ以上のヘテロ原子を含むことができる1つ又は2つ以上の芳香族又は脂肪族の環を含むものでもよく、またこれらの環はアルキル基、アルコキシ基、ハロゲンで任意に置換されていてもよく、
81、Z82、Z83、Z84及びZ85は各々独立に炭素原子数が1〜40個であるアルキレン基を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上のCH基が−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−S−CO−、−CO−S−、−CH=CH−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CF=CF−、−CF−又は−C≡C−により置き換えられていてもよく、
81、X82及びX83は、各々独立に−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CO−NH−、−NH−CO−、−CHCH−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CF=CF−、−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−C≡C−、又は単結合を表し、
81、A82及びA83は各々独立にフェニレン基、シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、ナフタレンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基から選択される環式基を表し、前記フェニレン基、ナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つ以上の−CH=基が窒素原子で置き換えられてもよく、前記シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つの隣接していない−CH−基が、−O−及び/又は−S−で置き換えられてもよく、前記環式基の1つ又はそれ以上の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、CN基、NO基、あるいは、1つ又は2つ以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置き換えられてもよい、炭素原子数1〜7の有するアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基又はアルコキシカルボニル基で置き換えられていてもよく、
81、m82、m83はそれぞれ0又は1であり、m81+m82+m83は1、2又は3である。
CH*81及びCH*82は各々独立にキラルな2価の基を表し、CH*83はキラルな3価の基を表す。
【0096】
ここで、CH*81及びCH*82に用いられるキラルな2価の基としては、不斉原子を有する次の2価基
【0097】
【化22】
【0098】
【化23】
【0099】
や、軸不斉を有する次の2価基
【0100】
【化24】
【0101】
が好ましい。ただし、CH*81及びCH*82に用いられるこれらの2価基において、ベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の任意の水素原子はハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、メチル基、メトキシ基、−CF、−OCFで置換されていてもよく、ベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の炭素原子は、窒素原子に置換されていてもよい。
CH*83に用いられるキラルな3価の基としては、CH*81及びCH*82に用いられるキラルな2価基の任意の位置に、−X83(Z8383)m8383が結合できることにより3価の基となればよい。
【0102】
さらに好ましくは、キラルな2価基としてイソソルビド骨格を有する、次の化合物が挙げられる。
【0103】
【化25】
【0104】
式中、R91及びR92は各々独立に炭素原子数1〜30の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上の隣接していない−CH−基が−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−O−SO−、−SO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はCN基で置き換えられていてもよく、重合性基をもっていてもよく、前記アルキル基が縮合又はスピロ環式系を含むものでもよく、前記アルキル基が1つ又は2つ以上のヘテロ原子を含むことができる1つ又は2つ以上の芳香族又は脂肪族の環を含むものでもよく、またこれらの環はアルキル基、アルコキシ基、ハロゲンで任意に置換されていてもよく、
91及びZ92は各々独立に−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−N(R)−、−N(R)−CO−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−又は単結合を表し、−CO−N(R)−又は−N(R)−CO−におけるRは水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す。
【0105】
<重合性化合物>
本発明の強誘電性液晶組成物は、重合性化合物を添加して、高分子安定化液晶組成物とすることもできる。
【0106】
<重合性化合物(I)>
本発明の強誘電性液晶組成物に用いられる重合性化合物(I)は、一般式(I−a)
【0107】
【化26】
【0108】
(式(I−a)中、
は水素原子又はメチル基を表し、
は単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、
及びAはそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1から18のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にハロゲン原子又は炭素原子数1から17のアルキル基で置換されていても良い。)を表し、
及びAはそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1から10のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にハロゲン原子又は炭素原子数1から9のアルキル基で置換されていても良い。)を表し、
kは1から40を表し、
及びZは、単結合、−CO−、−COO−又は−OCO−を表し、B、B及びBは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1から10の直鎖もしくは分岐のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個もしくは2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い)、又は一般式(I−b)
【0109】
【化27】
【0110】
(式(I−b)中、Aは水素原子又はメチル基を表し、
は単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)で表される基を表す。ただし、2k+1個あるB、B及びBのうち前記一般式(I−b)で表される基となるものの個数は0〜3個である。)で表される重合性化合物が好ましい。また、該重合性化合物の重合物のガラス転移温度が−100℃から25℃であることが好ましい。
【0111】
なお、本願発明において、「アルキレン基」とは、特に断りのない場合、脂肪族直鎖炭化水素の両端の炭素原子から水素原子各1個を除いた二価の基「−(CH−」(ただしnは1以上の整数)を意味するものとし、その水素原子からハロゲン原子もしくはアルキル基への置換、又はメチレン基から酸素原子、−CO−、−COO−もしくは−OCO−への置換がある場合は、その旨を特に断るものとする。また、「アルキレン鎖長」とは、「アルキレン基」の一般式「−(CH−」におけるnをいうものとする。
【0112】
非液晶性モノマー(I)は、一般式(I−a)で表されるものの中で複数、主鎖長やアルキル側鎖長の異なるものを含有させても良い。
【0113】
一般式(I−a)で表される重合性化合物(I)の好ましい構造として、下記一般式(I−c)
【0114】
【化28】
【0115】
(式(I−c)中、A11及びA19はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、A12及びA18はそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、
13及びA16はそれぞれ独立して炭素原子数2から20の直鎖アルキル基(該直鎖アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)を表し、
14及びA17はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1から10のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にハロゲン原子又は炭素原子数1から9のアルキル基で置換されていても良い。)を表し、
15は炭素原子数9から16のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する少なくとも1個以上5個以下のメチレン基において、該メチレン基中の水素原子の一つはそれぞれ独立に炭素原子数1から10の直鎖又は分岐のアルキル基で置換されている。該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)を表す。)で表される化合物、一般式(I−d)
【0116】
【化29】
【0117】
(式(I−d)中、A21及びA22はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、aは、6〜22の整数を表す。)で表される化合物、一般式(I−e)
【0118】
【化30】
【0119】
(式(I−e)中、A31及びA32はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、b及びcはそれぞれ独立して1〜10の整数を表し、dは1〜10の整数を表し、eは0〜6の整数を表す。)で表される化合物、及び一般式(I−f)
【0120】
【化31】
【0121】
(式(I−f)中、A41及びA42はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、m,n,p及びqはそれぞれ独立して1〜10の整数を表す。)で表される化合物からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中でも、式(I−c)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0122】
一般式(I−c)で表される重合性化合物の好ましい構造として、A11及びA19はいずれも水素原子であることが好ましい。これらの置換基A11,A19がメチル基である化合物においても本願発明の効果は発現するが、水素原子である化合物は重合速度がより速くなる点で有利である。
【0123】
12及びA18はそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1〜3のアルキレン基であることが好ましい。二つの重合性官能基間距離は、A12及びA18とA15とで独立的にそれぞれ炭素数の長さを変えて調整することができる。一般式(I−c)で表される化合物の特徴は、重合性官能基間の距離(架橋点間の距離)が長いことであるが、この距離があまりに長いと重合速度が極端に遅くなって相分離に悪い影響が出てくるため、重合性官能基間距離には上限がある。一方、A13及びA16の二つの側鎖間距離も主鎖の運動性に影響がある。すなわちA13及びA16の間の距離が短いと側鎖A13及びA16がお互いに干渉するようになり、運動性の低下をきたす。従って、一般式(I−c)で表される化合物において重合性官能基間距離はA12、A18、及びA15の和で決まるが、このうちA12とA18を長くするよりはA15を長くした方が好ましい。
【0124】
一方、側鎖であるA13,A14,A16,A17においては、これらの側鎖の長さが次のような態様を有することが好ましい。
【0125】
一般式(I−c)において、A13とA14は主鎖の同じ炭素原子に結合しているが、これらの長さが異なるとき、長いほうの側鎖をA13と呼ぶものとする(A13の長さとA14の長さが等しい場合は、いずれが一方をA13とする)。同様に、A16の長さとA17の長さが異なるとき、長いほうの側鎖をA16と呼ぶものとする(A16の長さとA17の長さが等しい場合は、いずれが一方をA16とする)。
【0126】
このようなA13及びA16は、本願においてはそれぞれ独立して炭素原子数2から20の直鎖アルキル基(該直鎖アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)とされているが、
好ましくは、それぞれ独立して炭素原子数2から18の直鎖アルキル基(該直鎖アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であり、
より好ましくは、それぞれ独立して炭素原子数3から15の直鎖アルキル基(該直鎖アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)である。
【0127】
側鎖は主鎖に比べて運動性が高いので、これが存在することは低温での高分子鎖の運動性向上に寄与するが、前述したように二つの側鎖間で空間的な干渉が起こる状況では逆に運動性が低下する。このような側鎖間での空間的な干渉を防ぐためには側鎖間距離を長くすること、及び、側鎖長を必要な範囲内で短くすることが有効である。
【0128】
さらにA14及びA17については、本願においてはそれぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1から10のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にハロゲン原子又は炭素原子数1から9のアルキル基で置換されていても良い。)とされているが、
好ましくは、それぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1から7のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であり、
より好ましくは、それぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1から5のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であり、
さらに好ましくは、それぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1から3のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)である。
【0129】
このA14及びA17についても、その長さが長すぎることは側鎖間の空間的な干渉を誘起するため好ましくない。この一方でA14及びA17が短い長さを持ったアルキル鎖である場合、高い運動性を持った側鎖になり得ること、及び隣接する主鎖同士の接近を阻害する働きを有することが考えられ、高分子主鎖間の干渉を防ぐ作用があり主鎖の運動性を高めているものと考えられ、アンカリングエネルギーが低温で増加して行くことを抑制することができ、高分子安定化液晶表示素子の低温域における表示特性を改善する上で有効である。
【0130】
二つの側鎖間に位置するA15は、側鎖間距離を変える意味からも、架橋点間距離を広げてガラス転移温度を下げる意味からも、長い方が好ましい。しかしながらA15が長すぎる場合は一般式(I−c)で表される化合物の分子量が大きくなりすぎ液晶組成物との相溶性が低下してくること、及び重合速度が遅くなりすぎて相分離に悪影響が出ること等の理由から自ずとその長さには上限が設定される。
【0131】
よって、本願発明においてA15は、炭素原子数9から16のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する少なくとも1個以上5個以下のメチレン基において、該メチレン基中の水素原子の一つはそれぞれ独立に炭素原子数1から10の直鎖又は分岐のアルキル基で置換されている。該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であることが好ましい。
【0132】
すなわち、本願発明においてA15のアルキレン鎖長は炭素原子数9から16であることが好ましい。A15は構造上の特徴として、アルキレン基中の水素原子が炭素原子数1から10のアルキル基で置換された構造を有する。アルキル基の置換数は1個以上5個以下であるが、1個から3個が好ましく、2個又は3個置換されていることがより好ましい。置換するアルキル基の炭素原子数は、1個から5個が好ましく、1個から3個がより好ましい。
【0133】
一般式(I−a)で表される化合物は、Tetrahedron Letters,Vol.30,pp4985、Tetrahedron Letters,Vol.23,No6,pp681−684、及び、Journal of Polymer Science:PartA:Polymer Chemistry,Vol.34,pp217−225等の公知の方法で合成することができる。
【0134】
例えば、一般式(I−c)において、A14及びA17が水素である化合物は、エポキシ基を複数有する化合物と、エポキシ基と反応し得る活性水素を有するアクリル酸やメタクリル酸等の重合性化合物とを反応させ、水酸基を有する重合性化合物を合成し、次に、飽和脂肪酸と反応させることにより得ることができる。
更に、複数のエポキシ基を有する化合物と飽和脂肪酸とを反応させ、水酸基を有する化合物を合成し、次に水酸基と反応し得る基を有するアクリル酸塩化物等の重合性化合物とを反応させることにより得ることができる。
【0135】
またラジカル重合性化合物が、例えば、一般式(I−c)のA14及びA17がアルキル基であり、A12及びA18が炭素原子数1であるメチレン基である場合は、オキセタン基を複数有する化合物と、オキセタン基と反応し得る脂肪酸塩化物や脂肪酸とを反応させ、更に、アクリル酸などの活性水素を有する重合性化合物とを反応させる方法や、オキセタン基を一つ有する化合物と、オキセタン基と反応し得る多価の脂肪酸塩化物や脂肪酸とを反応させ、更に、アクリル酸などの活性水素を有する重合性化合物とを反応させる方法等により得ることができる。
【0136】
また、一般式(I−c)のA12及びA18が炭素原子数3であるアルキレン基(プロピレン基;−CHCHCH−)の場合は、オキセタン基の代わりにフラン基を複数有する化合物を用いることにより得ることができる。更に、一般式(I−c)のA12及びA18が炭素原子数4であるアルキレン基(ブチレン基;−CHCHCHCH−)の場合は、オキセタン基の代わりにピラン基を複数有する化合物を用いることにより得ることができる。
【0137】
<重合性液晶化合物(III)>
本発明の高分子安定化液晶組成物に用いられる重合性液晶化合物(III)は、下記一般式(III−a)
【0138】
【化32】
【0139】
(式(III−a)中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、C及びCはそれぞれ独立して1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、シクロヘキセン−1,4−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基又はインダン−2,5−ジイル基(これらの基のうち1,4−フェニレン基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基及びインダン−2,5−ジイル基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、
及びZはそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、
は、単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CHCHO−、−OCHCH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CHCHOCO−、−COOCHCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−を表し、
は、0、1又は2を表す。ただし、nが2を表す場合、複数あるC及びZは同じであっても異なっていても良い。)、
【0140】
一般式(III−b)
【0141】
【化33】
【0142】
(式(III−b)中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、Cは1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、シクロヘキセン−1,4−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基又はインダン−2,5−ジイル基(これらの基のうち1,4−フェニレン基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基及びインダン−2,5−ジイル基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、
はベンゼン−1,2,4−トリイル基、ベンゼン−1,3,4−トリイル基、ベンゼン−1,3,5−トリイル基、シクロヘキサン−1,2,4−トリイル基、シクロヘキサン−1,3,4−トリイル基又はシクロヘキサン−1,3,5−トリイル基を表し、
及びZはそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、
は、単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CHCHO−、−OCHCH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CHCHOCO−、−COOCHCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−を表し、
は、0、1又は2を表す。ただし、nが2を表す場合、複数あるC及びZは同じであっても異なっていても良い。)、
【0143】
及び一般式(III−c)
【0144】
【化34】
【0145】
(式(III−c)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、6員環T、T及びTはそれぞれ独立的に、
【0146】
【化35】
【0147】
のいずれか(ただしmは1から4の整数を表す。)を表し、
は0又は1の整数を表し、
、Y及びYはそれぞれ独立して単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−(CH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CH=CHCHCH−又は−CHCHCH=CH−を表し、Yは単結合、−O−、−COO−、又は−OCO−を表し、
は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1から20のアルキル基、炭素原子数1から20のアルケニル基、炭素原子数1から20のアルコキシ基、又は炭素原子数1から20の炭化水素基を表す。)からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性化合物(III)である。
【0148】
より具体的には、一般式(III−d)及び(III−e)
【0149】
【化36】
【0150】
(式(III−d)及び(III−e)中、mは、0又は1を表し、Y11及びY12はそれぞれ独立して単結合、−O−、−COO−又は−OCO−を表し、
13及びY14はそれぞれ独立して−COO−又は−OCO−を表し、Y15及びY16はそれぞれ独立して−COO−又は−OCO−を表し、r及びsはそれぞれ独立して2〜14の整数を表す。式中に存在する1,4−フェニレン基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)のいずれかで表される化合物を用いると、機械的強度や耐熱性に優れた光学異方体が得られるので好ましい。
【0151】
一般式(III−a)で表される化合物の具体例を以下の(III−1)から(III−10)に挙げることができる。
【0152】
【化37】
【0153】
(式中、j及びkはそれぞれ独立的に2〜14の整数を表す。)
【0154】
また、一般式(III−d)及び(III−e)のいずれかで表される化合物の具体例を以下の(III−11)から(III−20)に挙げることができる。
【0155】
【化38】
【0156】
(式中、j及びkはそれぞれ独立的に2〜14の整数を表す。)
【0157】
<カイラル性を示す光重合性モノマー>
光重合性モノマー(重合性化合物)としては、上述のようなアキラルな物質に限らず、カイラルな物質を用いてもよい。カイラル性を示す光重合性モノマーとしては、例えば、下記の一般式(III−x)からなる重合性化合物を用いることができる。
【0158】
【化39】
【0159】
上記式(III−x)において、Xは水素原子又はメチル基を表す。また、nは0又は1の整数を表す。また、6員環T,T,Tは、1,4−フェニレン基、trans−1,4−シクロヘキシレン基等の6員環構造を有する置換基を表す。ただし、6員環T,T,Tは、これらの置換基にのみ限定されるものではなく、下記構造
【0160】
【化40】
【0161】
を有する置換基のうち、何れか一種の置換基を有していればよく、互いに同じであっても異なっていても構わない。なお、上記置換基において、mは1〜4の整数を示す。
【0162】
また、式(III−x)におけるY及びYは、それぞれ独立的に、炭素原子数が1〜10である直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基であり、この基中に存在する1個のCH基又は隣接していない2個のCH基は、−O−、−S−、−CO−O−又は−O−CO−により置き換えられていてもよく、単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−(CH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CH=CHCHCH−、又は−CHCHCH=CH−を含んでいてもよい。また、不斉炭素原子を含んでいてもよく、含まなくても良い。すなわち、Y及びYは、上記したいずれかの構造を有していれば、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
また、Y及びYは、単結合、−O−、−OCO−、−COO−を表す。
は、不斉炭素原子を持ちかつ分枝鎖構造を含む炭素原子数3〜20のアルキレン基を表す。
は、炭素原子数1〜20のアルキレン基を表し、不斉炭素原子を含んでいてもよく、含まなくても良い。
【0163】
<強誘電性液晶組成物>
良好な配向を得る目的では、キラルネマチック相のピッチをなるべく長くすることが好ましく、その目的のためには、ピッチをキャンセルする添加剤であるピッチキャンセラーとして、ピッチの掌性が異なる複数のキラル化合物を組み合わせ用いて、ピッチをキャンセルすることにより長くするのがよい。その場合は、自発分極がキャンセルしないように同一の符号をもつものを選ぶか、あるいは、自発分極の符号が逆であっても、自発分極の大きなものと、小さなものの組み合わせで、差し引き十分な自発分極が得られるようにすることが好ましい。また、このようなピッチキャンセルを行わなくても十分良い配向が得られるようなキラル化合物を選ぶことも好ましい。
【0164】
本発明の強誘電性液晶組成物が重合性化合物を含有する場合の重合方法としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等を用いることが可能であるが、ラジカル重合により重合することが好ましい。
【0165】
ラジカル重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤を用いることができるが、光重合開始剤が好ましい。具体的には以下の化合物が好ましい。
ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン系;
【0166】
ベンゾイン、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系;
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系;
ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル系;
ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4,4′−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;
2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系;
ミヒラーケトン、4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系;
10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が好ましい。この中でも、ベンジルジメチルケタールが最も好ましい。
【0167】
本発明においては、重合性液晶化合物(III)のほかに多官能液晶性モノマーを添加することもできる。この多官能液晶性モノマーとしては、重合性官能基として、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、エポキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、エチニル基、メルカプト基、マレイミド基、ClCH=CHCONH−、CH=CCl−、CHCl=CH−、RCH=CHCOO−(ここでRは塩素、フッ素、又は炭素原子数1〜18の炭化水素基を表す)が挙げられるが、これらの中でもアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ基、メルカプト基、ビニルオキシ基が好ましく、メタクリロイルオキシ基又はアクリロイルオキシ基が特に好ましく、アクリロイルオキシ基が最も好ましい。
【0168】
多官能液晶性モノマーの分子構造としては、2つ以上の環構造を有することを特徴とする液晶骨格、重合性官能基、さらに液晶骨格と重合性官能基を連結する柔軟性基を少なくとも2つ有するものが好ましく、3つの柔軟性基を有するものがさらに好ましい。柔軟性基としては、−(CH−(ここでnは整数を表す)で表されるようなアルキレンスペーサー基や−(Si(CH−O)−(ここでnは整数を表す)で表されるようなシロキサンスペーサー基を挙げることができ、この中ではアルキレンスペーサー基が好ましい。これらの柔軟性基と液晶骨格、もしくは重合性官能基との結合部分には、−O−、−COO−、−CO−のような結合が介在していても良い。
【0169】
液晶組成物の配向を補助する(配向補助剤)等の目的として、有機粒子、無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子等のナノ粒子を添加することもできる。有機粒子としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリヒドロキシアクリレート、ジビニルベンゼン等のポリマー粒子が挙げられる。無機粒子としては、チタン酸バリウム(BaTiO)、SiO、TiO、Al等の酸化物や、Au、Ag、Cu、Pd等の金属が挙げられる。有機粒子や無機粒子は、表面を他の材料でコーティングしたハイブリッド粒子であってもよく、無機粒子の表面を有機材料でコーティングした有機無機ハイブリッド粒子であってもよい。無機粒子の表面に付与する有機物が液晶性を示すと、周囲の液晶分子が配向しやすくなり、好ましい。
【0170】
その他、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、非反応性のオリゴマーや無機充填剤、有機充填剤、重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤、可塑剤、シランカップリング剤等を適宜添加しても良い。また、ディスコティック液晶などの二軸性化合物や、イオン及び極性化合物のトラップ材料等を含有するものとすることもできる。
二枚の偏光板がある場合は、各偏光板の偏光軸を調整して視野角やコントラストが良好になるように調整することもできる。
【0171】
<配向膜>
液晶を挟持する基板面には、配向膜を設けることができる。配向膜としては、一般的なポリイミド等の配向膜や光配向膜が使用できる。
配向膜としては、垂直配向性を有する配向膜が好ましい。
垂直配向性を有するポリイミド系の配向膜が好ましく、具体的にはアルキル長鎖もしくは脂環基が置換した酸無水物、アルキル長鎖もしくは脂環基が置換したジアミンを酸二無水物と反応させて得られるポリアミック酸、又は該ポリアミック酸を脱水開環して得られるポリイミドが挙げられる。このような嵩高い基を有するポリイミド、ポリアミド又はポリアミック酸からなる液晶配向剤を基板上で膜形成することにより、垂直配向性を有する液晶配向膜を製造することができる。
【0172】
酸無水物としては、例えば次の一般式(VII−a1)〜(VII−a3)で表される化合物が挙げられる。また、ジアミンとしては、例えば次の一般式(VII−b1)〜(VII−b3)で表される化合物が挙げられる。
【0173】
【化41】
【0174】
【化42】
【0175】
式(VII−a1)〜(VII−a3)及び(VII−b1)〜(VII−b3)中、R101、R102、R103及びR104は各々独立に炭素原子数1〜30の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上の隣接していない−CH−基が−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−O−SO−、−SO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよく、
101、Z102、Z105及びZ104は各々独立に−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−又は単結合を表し、
101及びA102は各々独立にフェニレン基、シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、ナフタレンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基から選択される環式基を表し、前記フェニレン基、ナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つ以上の−CH=基が窒素原子で置き換えられてもよく、前記シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つの隣接していない−CH−基が、−O−及び/又は−S−で置き換えられてもよく、前記環式基の1つ又はそれ以上の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、CN基、NO基、あるいは、1つ又は2つ以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置き換えられてもよい、炭素原子数1〜7の有するアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基又はアルコキシカルボニル基で置き換えられていてもよく、
101及びn102は各々独立に0又は1を表し、n103は0〜5の整数を表す。
また、一般式(VII−a2)〜(VII−a3)及び(VII−b2)〜(VII−b3)において、ステロイド骨格の−CH−基が、−O−及び/又は−S−で置き換えられてもよく、ステロイド骨格が任意の位置に1つ又は2つ以上の不飽和結合(C=C)を有していてもよい。
【0176】
電界を横方向に印加する横電界型液晶表示素子においては、配向膜の好ましい態様として、式(VII−c1)及び(VII−c2)で表される構造を有するポリアミック酸又はポリイミドを液晶配向剤として用いたものであると、優れた残像特性を有し、電界無印加時の暗状態における光線透過率が低減される点で好ましい。
【0177】
【化43】
【0178】
式(VII−c1)中、R121は各々独立に炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、R122は各々独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基又はカルボキシル基を表し、
121は1〜10の整数を表し、n122は各々独立に0〜4の整数を表し、「*」は結合手であることを表す。
式(VII−c2)中、R123は各々独立に炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、R124は各々独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基又はカルボキシル基を表し、
123は0〜5の整数を表し、n124は0〜4の整数を表し、n125は0〜3の整数を表し、「*」は結合手であることを表す。
【0179】
分子内の少なくとも一部に式(VII−c1)で表される構造と式(VII−c2)で表される構造をともに有するポリアミック酸は、例えば式(VII−c1)で表される構造を有するテトラカルボン酸二無水物と式(VII−c2)で表される構造を有するテトラカルボン酸二無水物を、ジアミンとを反応させるか、あるいは式(VII−c1)で表される構造を有するジアミンと式(VII−c2)で表される構造を有するジアミンをテトラカルボン酸二無水物と反応させることにより得ることができる。
(VII−c1)又は式(VII−c2)で表される構造を有するテトラカルボン酸二無水物としては、具体的には、「*」で表される結合手を有する両末端のベンゼン環が、各々無水フタル酸基である化合物が挙げられる。
(VII−c1)又は式(VII−c2)で表される構造を有するジアミンとしては、具体的には、「*」で表される結合手を有する両末端のベンゼン環が、各々アニリン基である化合物が挙げられる。
【0180】
また、光配向膜としては、アゾベンゼン、スチルベン、α−ヒドラゾノ−β−ケトエステル、クマリン等の構造を有し、光異性化を用いる光配向膜;アゾベンゼン、スチルベン、ベンジリデンフタルジイミド、シンナモイルの構造を有し、光幾何異性化を用いる光配向膜;スピロピラン、スピロオキサジン等の構造を有し、光開閉環反応を用いる光配向膜;シンナモイル、カルコン、クマリン、ジフェニルアセチレン等の構造を有し、光二量化を用いる光配向膜;可溶性ポリイミド、シクロブタン型ポリイミド等の構造を有し、光照射による光分解を用いる光配向膜;ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とジアミノジフェニルエーテル(BPDA/DPE)を反応させて得られるポリイミドに光照射してなる光配向膜などが挙げられる。
【0181】
光配向膜は、光配向性基を有する化合物を含有する塗膜に異方性を有する光を照射して、光配向性基を配列させ、光配向状態を固定化することにより、製造することができる。
光配向性基を有する化合物が重合性基を有する場合は、液晶配向能を付与する光照射処理の後に重合を行うことが好ましい。重合方法は光重合、熱重合のいずれでも良い。光重合の場合は、光配向剤に光重合開始剤を添加し、光照射処理後に、例えば異なる波長の光を照射することで光重合反応を行う。一方、熱重合の場合は光配向剤に熱重合開始剤を添加し、光照射処理後に加熱することで熱重合反応を行う。
光配向膜において光配向状態を固定化するためには、光架橋性高分子を用いてもよい。
光架橋性高分子光配向膜としては、下記(VIII−a)及び(VIII−b)に記載する化合物が挙げられる。
【0182】
【化44】
【0183】
(式中、R201及びR202は各々独立に炭素原子数1〜30の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上の隣接していない−CH−基が−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−O−SO−、−SO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよく、重合性基をもっていてもよく、前記アルキル基が縮合又はスピロ環式系を含むものでもよく、前記アルキル基が1つ又は2つ以上のヘテロ原子を含むことができる1つ又は2つ以上の芳香族又は脂肪族の環を含むものでもよく、またこれらの環はアルキル基、アルコキシ基、ハロゲンで任意に置換されていてもよく、
201及びZ202は各々独立に−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−N(R)−、−N(R)−CO−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−又は単結合を表し、−CO−N(R)−又は−N(R)−CO−におけるRは水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表し、
201及びA202は各々独立にフェニレン基、シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、ナフタレンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基から選択される環式基を表し、前記フェニレン基、ナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つ以上の−CH=基が窒素原子で置き換えられてもよく、前記シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つの隣接していない−CH−基が、−O−及び/又は−S−で置き換えられてもよく、前記環式基の1つ又はそれ以上の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、CN基、NO基、あるいは、1つ又は2つ以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置き換えられてもよい、炭素原子数1〜7の有するアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基又はアルコキシカルボニル基で置き換えられていてもよく、
201及びn202は各々独立に1〜3の整数を表し、
201及びP202は各々独立に、シンナモイル、クマリン、ベンジリデンフタルジイミド、カルコン、アゾベンゼン、スチルベン等の光配向性基を表し、P201は1価基、P202は2価基である。
【0184】
より好ましい化合物として、シンナモイル基を有する式(VIII−c)、クマリン基を有する式(VIII−d)、ベンジリデンフタルジイミド基を有する式(VIII−e)の化合物が挙げられる。
【0185】
【化45】
【0186】
式(VIII−c)、(VIII−d)、及び(VIII−e)中、R201、R202、A201、A202、Z201、Z202、n201及びn202の定義は式(VIII−a)及び(VIII−b)におけるのと同じであり、
203、R204、R205、R206及びR207は各々独立にハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、メチル基、メトキシ基、−CF、−OCF、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、アミノ基、又はヒドロキシ基を表し、
203は0〜4の整数を表し、n204は0〜3の整数を表し、n205は0〜1の整数を表し、n206は0〜4の整数を表し、n207は0〜5の整数を表す。
【実施例】
【0187】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また、特に断りのない場合、「%」は「質量%」を意味する。
実施例中に示される液晶表示素子の電圧−透過率特性の略号及び意味は以下に示す通りである。
10:電圧無印加時の液晶表示素子の光透過率(T)を0%とし、印加電圧を増加させていき光透過率が増加して飽和してほとんど変化しなくなった時の光透過率(T100)を100%とした時、(T100−T)×0.1+Tで定義される光透過率に達するのに必要な印加電圧値。
90:電圧無印加時の液晶表示素子の光透過率(T)を0%とし、印加電圧を増加させていき光透過率がほとんど変化しなくなった時の光透過率(T100)を100%とした時、(T100−T)×0.9+Tで定義される光透過率に達するのに必要な印加電圧値。
電圧−透過率測定は、二枚のクロスニコルの偏光板の間にセルを置き、櫛型電極の長軸が偏光板の偏光軸に対して45°になるように配置して、周波数60Hzの矩形波で、0〜50Vo−p電圧を印加して透過光量の変化を測定した。
【0188】
<実施例1>
垂直配向膜(JSR社製ポリイミド垂直配向膜JALS2096)を有する基板を2枚用意し、垂直配向膜のラビング処理を、平行配向処理と同様のアンチパラレルラビングにより、第1の基板側と第2の基板側とで反対方向となるようにラビングし、櫛型電極(ITO透明電極、電極間距離:12.5μm、電極幅:20μm)を配置した。2枚の基板を、セル厚(ギャップ)5.5μmとなるように対向させ、加熱による毛細管現象を利用して、下記に示す強誘電性液晶組成物LC−1を注入し、注入後は液晶セルを封止して、実施例1の液晶表示素子を製造した。
【0189】
【化46】
【0190】
強誘電性液晶組成物LC−1は、ISO−N−SmA−SmCの相系列であり、その相転移温度は、ISO−N間が85.5℃、N−SmA間が76.4℃、SmA−SmC間が60.3℃である。また、NからSmCへの転移温度より2℃高い温度(87.5℃)でのキラルネマチック液晶の螺旋ピッチは148μmである。
実施例1では、櫛型電極間の光が抜ける面積を開効率とすると0.385である。リターデーションを大塚電子社製のREST−100を用いて回転検光子法でリターデーションを測定した。
電界ON時のリターデーション:275nm、OFF時のリターデーション:193nm、SmC相の螺旋ピッチ16.4μmであった。
偏光顕微鏡で観察したところ、ラビング配向の方向が偏光方向に一致すると完全な暗視野になるが、電界印加によりC−ダイレクターを回転させると明視野になり、斜め45度で一番明るくなった。つまり液晶が一軸配向になっていることが判明した。
V−T特性を測定したところ、最小透過率Tは1.5%(偏光方向)、最大透過率T100は18%(45°)、電圧V10は6.5V、電圧V90は35.4Vであった。
実施例1は、電圧OFF時でも螺旋構造が解けていて、透過率が透過する光の偏光方向に依存するため、電界ON時の電界方向に対して方位角45°となる一定の方向に液晶分子を配向することにより、OFF時に完全な暗視野が維持され、ON−OFFにより高コントラストが実現できた。
【0191】
<実施例2>
強誘電性液晶組成物LC−1に代えて、下記に示すアキラルスメクチックC液晶組成物LC−2を用いて、実施例1と同様な方法でセルを作製した。
【0192】
【化47】
【0193】
アキラルスメクチックC液晶組成物LC−2は、ISO−N−SmA−SmCの相系列であり、室温でSmC相は安定である。その相転移温度は、ISO−N間が131.9℃、N−SmA間が110.3℃、SmA−SmC間が64.2℃である。キラル化合物は含有していないのでN相、及びSmC相の螺旋は巻いていない。
偏光顕微鏡で観察したところ、櫛型電極の横電界方向に対して斜め45°方向にラビング配向処理が施しており、この方向が偏光方向に一致すると暗視野になる。横電界印加によりC−ダイレクターが直交する偏光板の斜め45度の電界方向に揃うと一番明るくなった。つまりC−ダイレクターがインプレーンスイッチング動作していることが判明した。
V−T特性を測定したところ、最小透過率Tは0.6%(偏光方向)、最大透過率T100は11%(45°)、電圧V10は7.3V、電圧V90は17Vであった。
実施例2は、電圧OFF時でも螺旋構造が解けていて、透過率が透過する光の偏光方向に依存するため、電界ON時の電界方向に対して方位角45°となる一定の方向に液晶分子を配向することにより、OFF時に暗視野が維持され、スメクチックC相に於ける負の誘電異方性を利用したON−OFFスイッチ動作を確認した。
【0194】
<比較例1>
強誘電性液晶組成物LC−1に代えて、下記に示す強誘電性液晶組成物LC−3を用いて、実施例1と同様な方法でセルを作製した。
【0195】
【化48】
【0196】
強誘電性液晶組成物LC−3は、ISO−N−SmA−SmCの相系列であり、その相転移温度は、ISO−N間が91℃、N−SmA間が71℃、SmA−SmC間が65.4℃である。また、SmC相の螺旋ピッチを選択反射で評価した。選択反射は、480nmである。
偏光顕微鏡で観察したところ、ラビング配向の方向が偏光方向に一致すると完全な暗視野になるが、電界印加によりC−ダイレクターを回転させると明視野になり、斜め45度で一番明るくなった。つまり液晶が一軸配向になっていることが判明した。
V−T特性を測定したところ、最小透過率Tは0.3%(偏光方向)、最大透過率T100は7%(45°)、電圧V10は24V、電圧V90は48Vであり駆動電圧が高い。
【符号の説明】
【0197】
10,20…基板、11,21…透明基材、12,22…垂直配向膜、13…プレチルトの配向方向、14…電圧印加時のCダイレクターの方向、24…電極構造、31…液晶組成物層、32…液晶分子、33…電極構造に対して45°の方向の屈折率分布、34…電極構造と平行な屈折率分布。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B