(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ネマチック相の上限温度が70℃以上であり、波長589nmにおける光学異方性(25℃で測定)が0.07以上であり、そして周波数1kHzにおける誘電率異方性(25℃で測定)が2以上である、請求項1から7のいずれか1項に記載の液晶組成物。
液晶表示素子の動作モードが、TNモード、ECBモード、OCBモード、IPSモード、FFSモード、またはFPAモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である、請求項9に記載の液晶表示素子。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。「液晶組成物」および「液晶表示素子」の用語をそれぞれ「組成物」および「素子」と略すことがある。「液晶表示素子」は液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。「液晶性化合物」は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物、および液晶相を有しないがネマチック相の温度範囲、粘度、誘電率異方性のような特性を調節する目的で組成物に混合される化合物の総称である。この化合物は、1,4−シクロヘキシレンや1,4−フェニレンのような六員環を有し、その分子構造は棒状(rod like)である。「重合性化合物」は、組成物中に重合体を生成させる目的で添加される化合物である。
【0013】
液晶組成物は、複数の液晶性化合物を混合することによって調製される。液晶性化合物の割合(含有量)は、この液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)で表される。この組成物に、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤のような添加物が必要に応じて添加される。添加物の割合(添加量)は、液晶性化合物の割合と同様に、液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)で表される。重量百万分率(ppm)が用いられることもある。重合開始剤および重合禁止剤の割合は、例外的に重合性化合物の重量に基づいて表される。
【0014】
「ネマチック相の上限温度」を「上限温度」と略すことがある。「ネマチック相の下限温度」を「下限温度」と略すことがある。「比抵抗が大きい」は、組成物が初期段階において室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな比抵抗を有し、そして長時間使用したあと室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな比抵抗を有することを意味する。「電圧保持率が大きい」は、素子が初期段階において室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を有し、そして長時間使用したあと室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を有することを意味する。
【0015】
「少なくとも1つの‘A’は、‘B’で置き換えられてもよい」の表現は、‘A’の数は任意であることを意味する。‘A’の数が1つのとき、‘A’の位置は任意であり、‘A’の数が2つ以上のときも、それらの位置は制限なく選択できる。このルールは、「少なくとも1つの‘A’が、‘B’で置き換えられた」の表現にも適用される。
【0016】
成分化合物の化学式において、炭化水素部分の水素や炭素は省略形で作図される一般的な手法を用いたが、基を表している式(1)においては、結合手とメチルの区別を明確にするために、「CH
3」の表記をした。
【0017】
成分化合物の化学式において、末端基R
2の記号を複数の化合物に用いた。これらの化合物において、任意の2つのR
2が表す2つの基は同一であってもよく、または異なってもよい。例えば、化合物(2−1)のR
2がエチルであり、化合物(2−2)のR
2がエチルであるケースがある。化合物(2−1)のR
2がエチルであり、化合物(2−2)のR
2がプロピルであるケースもある。このルールは、R
1、X
1、Y
1などの記号にも適用される。式(2)において、aが2のとき、2つの環Aが存在する。この化合物において、2つの環Aが表す2つの環は、同一であってもよく、または異なってもよい。このルールは、aが2より大きいとき、任意の2つの環Aにも適用される。このルールは、Z
3、環Bなどにも適用される。
【0018】
2−フルオロ−1,4−フェニレンは、下記の2つの二価基を意味する。化学式において、フッ素は左向き(L)であってもよいし、右向き(R)であってもよい。このルールは、テトラヒドロピラン−2,5−ジイルのような、非対称な環の二価基にも適用される。
【0020】
項1. 添加物として式(1)で表される一価基を有する化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および第一成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、正の誘電率異方性を有し、そしてネマチック相を有する液晶組成物。
式(1)および式(2)において、R
1は、水素または炭素数1から15のアルキルであり;R
2は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルであり;環Aは、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;Z
1は、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシであり;X
1およびX
2は独立して、水素またはフッ素であり;Y
1はフッ素、塩素、少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から12のアルコキシであり;aは、1、2、3、または4である。
【0021】
項2. 添加物として式(1−1)および式(1−2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1に記載の液晶組成物。
式(1−1)および式(1−2)において、R
1、R
3、R
4、およびR
5は独立して、水素または炭素数1から15のアルキルであり;Z
2は炭素数1から20のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH
2−は、−O−で置き換えられてもよい。
【0022】
項3. 液晶組成物の重量に基づいて、式(1)で表される化合物の割合が0.005重量%から1重量%の範囲である、項1または2に記載の液晶組成物。
【0023】
項4. 第一成分として式(2−1)から式(2−27)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から3のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(2−1)から式(2−27)において、R
2は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルである。
【0024】
項5. 液晶組成物の重量に基づいて、第一成分の割合が10重量%から90重量%の範囲である、項1から4のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0025】
項6. 第二成分として式(3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から5のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(3)において、R
6およびR
7は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Bおよび環Cは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;Z
3は、単結合、エチレンまたはカルボニルオキシであり;bは、1、2または3である。
【0026】
項7. 第二成分として式(3−1)から式(3−13)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から6のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(3−1)から式(3−13)において、R
6およびR
7は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
【0027】
項8. 液晶組成物の重量に基づいて、第二成分の割合が10重量%から90重量%の範囲である、項6または7に記載の液晶組成物。
【0028】
項9. ネマチック相の上限温度が70℃以上であり、波長589nmにおける光学異方性(25℃で測定)が0.07以上であり、そして周波数1kHzにおける誘電率異方性(25℃で測定)が2以上である、項1から8のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0029】
項10. 項1から9のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
【0030】
項11. 液晶表示素子の動作モードが、TNモード、ECBモード、OCBモード、IPSモード、FFSモード、またはFPAモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である、項10に記載の液晶表示素子。
【0031】
項12. 項1から9のいずれか1項に記載の液晶組成物の液晶表示素子における使用。
【0032】
本発明は、次の項も含む。(a)光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤などの添加物の少なくとも1つをさらに含有する上記の組成物。(b)上記の組成物を含有するAM素子。(c)重合性化合物を含有する上記の組成物、およびこの組成物を含有する高分子支持配向(PSA)型のAM素子。(d)上記の組成物を含有し、この組成物中の重合性化合物が重合されている、高分子支持配向(PSA)型のAM素子。(e)上記の組成物を含有し、そしてPC、TN、STN、ECB、OCB、IPS、VA、FFS、またはFPAのモードを有する素子。(f)上記の組成物を含有する透過型の素子。(g)上記の組成物を、ネマチック相を有する組成物としての使用。(h)上記の組成物に光学活性化合物を添加することによって光学活性な組成物としての使用。
【0033】
本発明の組成物を次の順で説明する。第一に、組成物における成分化合物の構成を説明する。第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物に及ぼす主要な効果を説明する。第三に、組成物における成分の組み合わせ、成分の好ましい割合およびその根拠を説明する。第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。第五に、好ましい成分化合物を示す。第六に、組成物に添加してもよい添加物を説明する。第七に、成分化合物の合成法を説明する。最後に、組成物の用途を説明する。
【0034】
第一に、組成物における成分化合物の構成を説明する。本発明の組成物は組成物Aと組成物Bに分類される。組成物Aは、化合物(1)、化合物(2)および化合物(3)から選択された化合物の他に、その他の液晶性化合物、添加物などをさらに含有してもよい。「その他の液晶性化合物」は、化合物(2)および化合物(3)とは異なる液晶性化合物である。このような化合物は、特性をさらに調整する目的で組成物に混合される。添加物は、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤などである。
【0035】
組成物Bは、実質的に化合物(1)、化合物(2)および化合物(3)から選択された化合物のみからなる。「実質的に」は、組成物が添加物を含有してもよいが、その他の液晶性化合物を含有しないことを意味する。組成物Bは組成物Aに比較して成分の数が少ない。コストを下げるという観点から、組成物Bは組成物Aよりも好ましい。その他の液晶性化合物を混合することによって特性をさらに調整できるという観点から、組成物Aは組成物Bよりも好ましい。
【0036】
第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果を説明する。成分化合物の主要な特性を本発明の効果に基づいて表2にまとめる。表2の記号において、Lは大きいまたは高い、Mは中程度の、Sは小さいまたは低い、を意味する。記号L、M、Sは、成分化合物のあいだの定性的な比較に基づいた分類であり、0(ゼロ)は、値がほぼゼロであることを意味する。
【0038】
成分化合物を組成物に混合したとき、成分化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果は次のとおりである。成分化合物は、紫外線照射によって分解されることがある。この分解によって不純物が増える。化合物(1)は不純物の生成を抑制する。化合物(1)は、上限温度、光学異方性、および誘電率異方性の特性には差を与えない。第一成分である化合物(2)は誘電率異方性を上げ、そして下限温度を下げる。第二成分である化合物(3)は上限温度を上げる、または粘度を下げる。
【0039】
第三に、組成物における成分の組み合わせ、成分化合物の好ましい割合およびその根拠を説明する。組成物における成分の好ましい組み合わせは、化合物(1)+第一成分、化合物(1)+第二成分、および化合物(1)+第一成分+第二成分である。さらに好ましい組み合わせは、化合物(1)+第一成分+第二成分である。
【0040】
化合物(1)の好ましい割合は、不純物の生成を抑制するために約0.005重量%以上であり、下限温度を下げるために約1重量%以下である。さらに好ましい割合は約0.01重量%から約0.5重量%の範囲である。特に好ましい割合は約0.03重量%から約0.3重量%の範囲である。
【0041】
第一成分の好ましい割合は、誘電率異方性を上げるために約10重量%以上であり、下限温度を下げるために約90重量%以下である。さらに好ましい割合は約20重量%から約80重量%の範囲である。特に好ましい割合は約30重量%から約70重量%の範囲である。
【0042】
第二成分の好ましい割合は、上限温度を上げるために、または粘度を下げるために約10重量%以上であり、誘電率異方性を上げるために約90重量%以下である。さらに好ましい割合は約20重量%から約80重量%の範囲である。特に好ましい割合は約30重量%から約70重量%の範囲である。
【0043】
第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。化合物(1)、化合物(1−1)および化合物(1−2)において、R
1、R
3、R
4、およびR
5は独立して、水素または炭素数1から15のアルキルである。好ましいR
1、R
3、R
4、またはR
5は、水素またはメチルである。さらに好ましいR
1、R
3、R
4、またはR
5は、水素である。
【0044】
Z
2は、炭素数1から20のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH
2−は、−O−で置き換えられてもよい。好ましいハロゲンはフッ素または塩素である。好ましいZ
2は、1つまたは2つの−CH
2−が−O−で置き換えられてもよい炭素数1から20のアルキレンである。さらに好ましいZ
2は、炭素数4から16のアルキレンである。
【0045】
化合物(2)および化合物(3)において、R
2は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルである。好ましいR
2は、紫外線または熱に対する安定性を上げるために、炭素数1から12のアルキルである。R
6およびR
7は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。好ましいR
6またはR
7は、紫外線または熱に対する安定性などを上げるために炭素数1から12のアルキルであり、下限温度を下げるために、または粘度を下げるために炭素数2から12のアルケニルである。
【0046】
好ましいアルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、またはオクチルである。さらに好ましいアルキルは、粘度を下げるためにエチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘプチルである。
【0047】
好ましいアルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、またはヘプチルオキシである。粘度を下げるために、さらに好ましいアルコキシは、メトキシまたはエトキシである。
【0048】
好ましいアルケニルは、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、または5−ヘキセニルである。さらに好ましいアルケニルは、粘度を下げるためにビニル、1−プロペニル、3−ブテニル、または3−ペンテニルである。これらのアルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。粘度を下げるためなどから1−プロペニル、1−ブテニル、1−ペンテニル、1−ヘキセニル、3−ペンテニル、3−ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはトランスが好ましい。2−ブテニル、2−ペンテニル、2−ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはシスが好ましい。これらのアルケニルにおいては、分岐よりも直鎖のアルケニルが好ましい。
【0049】
少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられたアルケニルの好ましい例は、2,2−ジフルオロビニル、3,3−ジフルオロ−2−プロペニル、4,4−ジフルオロ−3−ブテニル、5,5−ジフルオロ−4−ペンテニル、または6,6−ジフルオロ−5−ヘキセニルである。さらに好ましい例は、粘度を下げるために2,2−ジフルオロビニルまたは4,4−ジフルオロ−3−ブテニルである。
【0050】
環Aは、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルである。好ましい環Aは光学異方性を上げるために、1,4−フェニレンまたは2−フルオロ−1,4−フェニレンである。環Bおよび環Cは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンである。好ましい環Bまたは環Cは、粘度を下げるために1,4−シクロへキシレンであり、または光学異方性を上げるために1,4−フェニレンである。1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置は、上限温度を上げるためにシスよりもトランスが好ましい。テトラヒドロピラン−2,5−ジイルは、
【0051】
Z
1は、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシである。好ましいZ
1は、粘度を下げるために単結合であり、誘電率異方性を上げるためにジフルオロメチレンオキシである。Z
3は、単結合、エチレンまたはカルボニルオキシである。好ましいZ
3は、粘度を下げるために単結合である。
【0052】
X
1およびX
2は独立して、水素またはフッ素である。好ましいX
1またはX
2は、誘電率異方性を上げるためにフッ素である。
【0053】
Y
1はフッ素、塩素、少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から12のアルコキシである。好ましいハロゲンはフッ素または塩素である。好ましいY
1は、フッ素、塩素、トリフルオロメチル、またはトリフルオロメトキシである。さらに好ましいY
1は、下限温度を下げるためにフッ素である。
【0054】
aは、1、2、3、または4である。好ましいaは、上限温度を上げるために3である。bは、1、2または3である。好ましいbは、粘度を下げるために1であり、上限温度を上げるために3である。
【0055】
第五に、好ましい成分化合物を示す。好ましい化合物(1)は、上記の化合物(1−1)または化合物(1−2)である。これらの化合物において、化合物(1)の少なくとも2つが、化合物(1−1)および化合物(1−2)の組み合わせであることが好ましい。
【0056】
好ましい化合物(2)は、上記の化合物(2−1)から化合物(2−27)である。これらの化合物において、第一成分の少なくとも1つが、化合物(2−5)、化合物(2−11)、化合物(2−12)、化合物(2−13)、化合物(2−15)、化合物(2−16)、化合物(2−20)、化合物(2−23)、または化合物(2−25)であることが好ましい。第一成分の少なくとも2つが、化合物(2−12)および化合物(2−23)、化合物(2−13)および化合物(2−16)、化合物(2−15)および化合物(2−16)、化合物(2−16)および化合物(2−25)、化合物(2−20)および化合物(2−25)、または化合物(2−23)および化合物(2−25)の組み合わせであることが好ましい。
【0057】
好ましい化合物(3)は、上記の化合物(3−1)から化合物(3−13)である。これらの化合物において、第二成分の少なくとも1つが、化合物(3−1)、化合物(3−3)、化合物(3−5)、化合物(3−6)、化合物(3−8)、化合物(3−9)、または化合物(3−13)であることが好ましい。第二成分の少なくとも2つが、化合物(3−1)および化合物(3−5)、化合物(3−3)および化合物(3−5)、化合物(3−1)および化合物(3−6)、化合物(3−3)および化合物(3−6)、化合物(3−1)および化合物(3−8)、または化合物(3−3)および化合物(3−8)の組み合わせであることが好ましい。
【0058】
第六に、組成物に添加してもよい添加物を説明する。このような添加物は、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤などである。液晶のらせん構造を誘起してねじれ角を与える目的で光学活性化合物が組成物に添加される。このような化合物の例は、化合物(4−1)から化合物(4−5)である。光学活性化合物の好ましい割合は約5重量%以下である。さらに好ましい割合は約0.01重量%から約2重量%の範囲である。
【0060】
大気中での加熱による比抵抗の低下を防止するために、または素子を長時間使用したあと、室温だけではなく上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を維持するために、酸化防止剤が組成物に添加される。酸化防止剤の好ましい例は、nが1から9の整数である化合物(5)などである。
【0061】
化合物(5)において、好ましいnは、1、3、5、7、または9である。さらに好ましいnは1または7である。nが1である化合物(5)は、揮発性が大きいので、大気中での加熱による比抵抗の低下を防止するときに有効である。nが7である化合物(5)は、揮発性が小さいので、素子を長時間使用したあと、室温だけではなく上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を維持するのに有効である。酸化防止剤の好ましい割合は、その効果を得るために約50ppm以上であり、上限温度を下げないように、または下限温度を上げないように約600ppm以下である。さらに好ましい割合は、約100ppmから約300ppmの範囲である。
【0062】
紫外線吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、トリアゾール誘導体などである。立体障害のあるアミンのような光安定剤もまた好ましい。これらの吸収剤や安定剤における好ましい割合は、その効果を得るために約50ppm以上であり、上限温度を下げないように、または下限温度を上げないために約10000ppm以下である。さらに好ましい割合は約100ppmから約10000ppmの範囲である。
【0063】
GH(guest host)モードの素子に適合させるために、アゾ系色素、アントラキノン系色素などのような二色性色素(dichroic dye)が組成物に添加される。色素の好ましい割合は、約0.01重量%から約10重量%の範囲である。泡立ちを防ぐために、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどの消泡剤が組成物に添加される。消泡剤の好ましい割合は、その効果を得るために約1ppm以上であり、表示不良を防ぐために約1000ppm以下である。さらに好ましい割合は、約1ppmから約500ppmの範囲である。
【0064】
高分子支持配向(PSA)型の素子に適合させるために重合性化合物が組成物に添加される。重合性化合物の好ましい例はアクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、ビニルオキシ化合物、プロペニルエーテル、エポキシ化合物(オキシラン、オキセタン)、ビニルケトンなどの重合可能な基を有する化合物である。さらに好ましい例は、アクリレートまたはメタクリレートの誘導体である。このような化合物の例は、化合物(6−1)から化合物(6−9)である。重合性化合物の好ましい割合は、その効果を得るために、約0.05重量%以上であり、表示不良を防ぐために約10重量%以下である。さらに好ましい割合は、約0.1重量%から約2重量%の範囲である。
【0066】
式(6−1)から式(6−9)において、R
8、R
9、R
10、およびR
11は独立して、アクリロイルオキシ(−OCO−CH=CH
2)またはメタクリロイルオキシ(−OCO−C(CH
3)=CH
2)であり、R
12およびR
13は独立して、水素、ハロゲン、または炭素数1から10のアルキルであり;Z
4、Z
5、Z
6、およびZ
7は独立して、単結合または炭素数1から12のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく;c、dおよびeは独立して、0、1または2である。化合物(6−1)において、六角形を横切る垂直な線は、六員環上の任意の水素がフッ素によって置き換えられてもよいことを表わす。cなどの添え字は、置き換えられているフッ素の数を示す。このルールは、化合物(6−2)などにも適用される。化合物(6−1)において、cとdとの和は1以上であり、化合物(6−4)において、cとdとeとの和は1以上である。好ましいハロゲンはフッ素または塩素である。
【0067】
重合性化合物は紫外線照射により重合する。光重合開始剤などの開始剤の存在下で重合させてもよい。重合のための適切な条件、開始剤の適切なタイプ、および適切な量は、当業者には既知であり、文献に記載されている。例えば光開始剤であるIrgacure651(登録商標;BASF)、Irgacure184(登録商標;BASF)、またはDarocure1173(登録商標;BASF)がラジカル重合に対して適切である。光重合開始剤の好ましい割合は、重合性化合物の重量に基づいて約0.1重量%から約5重量%の範囲である。さらに好ましい割合は、約1重量%から約3重量%の範囲である。
【0068】
重合性化合物を保管するとき、重合を防止するために重合禁止剤を添加してもよい。重合性化合物は、通常は重合禁止剤を除去しないまま組成物に添加される。重合禁止剤の例は、ヒドロキノン、メチルヒドロキノンのようなヒドロキノン誘導体、4-tert-ブチルカテコール、4-メトキシフェノ−ル、フェノチアジンなどである。
【0069】
第七に、成分化合物の合成法を説明する。これらの化合物は既知の方法によって合成できる。合成法を例示する。R
1およびR
3が水素であり、Z
2が−(CH
2)
8−である化合物(1−1)は市販されている。化合物(2−3)および化合物(2−8)は、特開平2−233626号公報に記載された方法で合成する。化合物(3−1)は、特開昭59−176221号公報に記載された方法で合成する。化合物(3−13)は、特開平2−237949号公報に記載された方法で合成する。式(5)のnが1である化合物は、アルドリッチ(Sigma-Aldrich Corporation)から入手できる。nが7である化合物(5)などは、米国特許3660505号明細書に記載された方法によって合成する。
【0070】
合成法を記載しなかった化合物は、オーガニック・シンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などの成書に記載された方法によって合成できる。組成物は、このようにして得た化合物から公知の方法によって調製される。例えば、成分化合物を混合し、そして加熱によって互いに溶解させる。
【0071】
最後に、組成物の用途を説明する。本発明の組成物は主として、約−10℃以下の下限温度、約70℃以上の上限温度、そして約0.07から約0.20の範囲の光学異方性を有する。この組成物を含有する素子は大きな電圧保持率を有する。この組成物はAM素子に適する。この組成物は透過型のAM素子に特に適する。成分化合物の割合を制御することによって、またはその他の液晶性化合物を混合することによって、約0.08から約0.25の範囲の光学異方性を有する組成物、さらには約0.10から約0.30の範囲の光学異方性を有する組成物を調製してもよい。この組成物は、ネマチック相を有する組成物としての使用、光学活性化合物を添加することによって光学活性な組成物としての使用が可能である。
【0072】
この組成物はAM素子への使用が可能である。さらにPM素子への使用も可能である。この組成物は、PC、TN、STN、ECB、OCB、IPS、FFS、VA、FPAなどのモードを有するAM素子およびPM素子への使用が可能である。TN、OCB、IPSモードまたはFFSモードを有するAM素子への使用は特に好ましい。IPSモードまたはFFSモードを有するAM素子において、電圧が無印加のとき、液晶分子の配列がガラス基板に対して並行であってもよく、または垂直であってもよい。これらの素子が反射型、透過型または半透過型であってもよい。透過型の素子への使用は好ましい。非結晶シリコン−TFT素子または多結晶シリコン−TFT素子への使用も可能である。この組成物をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)型の素子や、組成物中に三次元の網目状高分子を形成させたPD(polymer dispersed)型の素子にも使用できる。
【実施例】
【0073】
実施例により本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例によっては制限されない。本発明は、実施例1の組成物と実施例2の組成物との混合物を含む。本発明は、実施例の組成物の少なくとも2つを混合した混合物をも含む。合成した化合物は、NMR分析などの方法により同定した。化合物および組成物の特性は、下記に記載した方法により測定した。
【0074】
NMR分析:測定には、ブルカーバイオスピン社製のDRX−500を用いた。
1H−NMRの測定では、試料をCDCl
3などの重水素化溶媒に溶解させ、測定は、室温で、500MHz、積算回数16回の条件で行った。テトラメチルシランを内部標準として用いた。
19F−NMRの測定では、CFCl
3を内部標準として用い、積算回数24回で行った。核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、quinはクインテット、sexはセクステット、mはマルチプレット、brはブロードであることを意味する。
【0075】
ガスクロマト分析:測定には島津製作所製のGC−14B型ガスクロマトグラフを用いた。キャリアーガスはヘリウム(2mL/分)である。試料気化室を280℃に、検出器(FID)を300℃に設定した。成分化合物の分離には、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm;固定液相はジメチルポリシロキサン;無極性)を用いた。このカラムは、200℃で2分間保持したあと、5℃/分の割合で280℃まで昇温した。試料はアセトン溶液(0.1重量%)に調製したあと、その1μLを試料気化室に注入した。記録計は島津製作所製のC−R5A型Chromatopac、またはその同等品である。得られたガスクロマトグラムは、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積を示した。
【0076】
試料を希釈するための溶媒は、クロロホルム、ヘキサンなどを用いてもよい。成分化合物を分離するために、次のキャピラリカラムを用いてもよい。Agilent Technologies Inc.製のHP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Restek Corporation製のRtx−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、SGE International Pty. Ltd製のBP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)。化合物ピークの重なりを防ぐ目的で島津製作所製のキャピラリカラムCBP1−M50−025(長さ50m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用いてもよい。
【0077】
組成物に含有される液晶性化合物の割合は、次のような方法で算出してよい。液晶性化合物の混合物をガスクロマトグラフ(FID)で検出する。ガスクロマトグラムにおけるピークの面積比は液晶性化合物の割合(重量比)に相当する。上に記載したキャピラリカラムを用いたときは、各々の液晶性化合物の補正係数を1とみなしてよい。したがって、液晶性化合物の割合(重量%)は、ピークの面積比から算出することができる。
【0078】
測定試料:組成物の特性を測定するときは、組成物をそのまま試料として用いた。化合物の特性を測定するときは、この化合物(15重量%)を母液晶(85重量%)に混合することによって測定用の試料を調製した。測定によって得られた値から外挿法によって化合物の特性値を算出した。(外挿値)={(試料の測定値)−0.85×(母液晶の測定値)}/0.15。この割合でスメクチック相(または結晶)が25℃で析出するときは、化合物と母液晶の割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更した。この外挿法によって化合物に関する上限温度、光学異方性、粘度、および誘電率異方性の値を求めた。
【0079】
下記の母液晶を用いた。成分化合物の割合は重量%で示した。
【0080】
測定方法:特性の測定は下記の方法で行った。これらの多くは、社団法人電子情報技術産業協会(Japan Electronics and Information Technology Industries Association;以下JEITAという)で審議制定されるJEITA規格(JEITA・ED−2521B)に記載された方法、またはこれを修飾した方法であった。測定に用いたTN素子には、薄膜トランジスター(TFT)を取り付けなかった。
【0081】
(1)ネマチック相の上限温度(NI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
【0082】
(2)ネマチック相の下限温度(T
C;℃):ネマチック相を有する試料をガラス瓶に入れ、0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、T
Cを<−20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0083】
(3)粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s):測定には東京計器株式会社製のE型回転粘度計を用いた。
【0084】
(4)粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s):測定は、M. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995)に記載された方法に従った。ツイスト角が0°であり、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5μmであるTN素子に試料を入れた。この素子に16Vから19.5Vの範囲で0.5V毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文中の40頁記載の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算で必要な誘電率異方性の値は、この回転粘度を測定した素子を用い、下に記載した方法で求めた。
【0085】
(5)光学異方性(屈折率異方性;Δn;25℃で測定):測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率n‖は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率n⊥は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性の値は、Δn=n‖−n⊥、の式から計算した。
【0086】
(6)誘電率異方性(Δε;25℃で測定):2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、そしてツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(10V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0087】
(7)しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が0.45/Δn(μm)であり、ツイスト角が80度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のTN素子に試料を入れた。この素子に印加する電圧(32Hz、矩形波)は0Vから10Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧−透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が90%になったときの電圧で表した。
【0088】
(8)電圧保持率(VHR−a;25℃で測定;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmであった。この素子は試料を入れたあと紫外線で硬化する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(1Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で166.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積であった。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率で表した。
【0089】
(9)電圧保持率(VHR−b;60℃で測定;%):25℃の代わりに、60℃で測定した以外は、上記と同じ手順で電圧保持率を測定した。得られた値をVHR−bで表した。
【0090】
(10)電圧保持率(VHR−c;60℃で測定;%):紫外線を照射したあと、電圧保持率を測定し、紫外線に対する安定性を評価した。測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そしてセルギャップは5μmであった。この素子に試料を注入し、光を167分間照射した。光源はブラックライト(ピーク波長369nm)であり、素子と光源の間隔は5mmであった。VHR−cの測定では、166.7ミリ秒のあいだ、減衰する電圧を測定した。大きなVHR−cを有する組成物は紫外線に対して大きな安定性を有する。
【0091】
(11)電圧保持率(VHR−d;60℃で測定;%):試料を注入したTN素子を150℃の恒温槽内で2時間加熱したあと、電圧保持率を測定し、熱に対する安定性を評価した。VHR−dの測定では、166.7ミリ秒のあいだ減衰する電圧を測定した。大きなVHR−4を有する組成物は熱に対して大きな安定性を有する。
【0092】
(12)応答時間(τ;25℃で測定;ms):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。ローパス・フィルター(Low-pass filter)は5kHzに設定した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5.0μmであり、ツイスト角が80度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のTN素子に試料を入れた。この素子に矩形波(60Hz、5V、0.5秒)を印加した。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%であるとみなした。立ち上がり時間(τr:rise time;ミリ秒)は、透過率が90%から10%に変化するのに要した時間である。立ち下がり時間(τf:fall time;ミリ秒)は透過率10%から90%に変化するのに要した時間である。応答時間は、このようにして求めた立ち上がり時間と立ち下がり時間との和で表した。
【0093】
(13)弾性定数(K;25℃で測定;pN):測定には横河・ヒューレットパッカード株式会社製のHP4284A型LCRメータを用いた。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmである水平配向素子に試料を入れた。この素子に0ボルトから20ボルト電荷を印加し、静電容量および印加電圧を測定した。測定した静電容量(C)と印加電圧(V)の値を「液晶デバイスハンドブック」(日刊工業新聞社)、75頁にある式(2.98)、式(2.101)を用いてフィッティングし、式(2.99)からK11およびK33の値を得た。次に同171頁にある式(3.18)に、先ほど求めたK11およびK33の値を用いてK22を算出した。弾性定数は、このようにして求めたK11、K22、およびK33の平均値で表した。
【0094】
(14)比抵抗(ρ;25℃で測定;Ωcm):電極を備えた容器に試料1.0mLを注入した。この容器に直流電圧(10V)を印加し、10秒後の直流電流を測定した。比抵抗は次の式から算出した。(比抵抗)={(電圧)×(容器の電気容量)}/{(直流電流)×(真空の誘電率)}。
【0095】
(15)らせんピッチ(P;室温で測定;μm):らせんピッチはくさび法にて測定した。「液晶便覧」、196頁(2000年発行、丸善)を参照。試料をくさび形セルに注入し、室温で2時間静置した後、ディスクリネーションラインの間隔(d2−d1)を偏光顕微鏡(ニコン(株)、商品名MM40/60シリーズ)によって観察した。らせんピッチ(P)は、くさびセルの角度をθと表した次の式から算出した。P=2×(d2−d1)×tanθ。
【0096】
実施例における化合物は、下記の表3の定義に基づいて記号により表した。表3において、1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。記号の後にあるかっこ内の番号は化合物の番号に対応する。(−)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)である。最後に、組成物の特性値をまとめた。
【0097】
【0098】
[実施例1]
3−HHXB(F,F)−F (2−5) 13%
2−HHBB(F,F)−F (2−17) 4%
3−HHBB(F,F)−F (2−17) 5%
4−HHBB(F,F)−F (2−17) 4%
5−HHBB(F,F)−F (2−17) 4%
4−GB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (2−23) 7%
3−BB(F)B(F,F)XB(F)−F (2−24) 4%
3−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (2−25) 3%
4−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (2−25) 8%
5−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (2−25) 6%
3−HH−V (3−1) 30%
4−HH−V1 (3−1) 5%
7−HB−1 (3−2) 3%
3−HHB−O1 (3−5) 4%
誘電率異方性が正である上記の組成物を調製し、特性を測定した。NI=107.2℃;Tc<−20℃;Δn=0.113;Δε=11.0;Vth=1.48V;η=16.0mPa・s;γ1=101.3mPa・s.この組成物をガスクロマトグラフ分析したところ、不純物の含有量は0.08GC%であった。
この組成物に化合物(1−1−1)を0.1重量%の割合で添加した試料を調製し、260mW/cm
2の紫外線を600秒間照射した。紫外線の照射には、HOYA CANDEO OPTRONICS株式会社製のEXECURE4000−D型水銀キセノンランプを用いた。この試料の不純物の含有量は1.8GC%であった。
【0099】
[比較例1]
実施例1における化合物(1−1−1)を添加する前の組成物に、実施例1と同じ条件で紫外線を照射し、ガスクロマト分析を行った。このときの不純物の含有量は2.6GC%であった。
【0100】
[実施例2]
3−HHXB(F,F)−F (2−5) 9%
4−GHB(F,F)−F (2−7) 5%
2−HHBB(F,F)−F (2−17) 4%
3−HHBB(F,F)−F (2−17) 6%
4−HHBB(F,F)−F (2−17) 5%
4−GB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (2−23) 7%
4−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (2−25) 9%
5−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (2−25) 7%
3−HHB−CL (2) 3%
3−HH−V (3−1) 29%
3−HH−VFF (3−1) 4%
3−HB−O2 (3−2) 3%
3−HHB−3 (3−5) 3%
5−HBB−2 (3−6) 3%
3−HBBH−1O1 (−) 3%
誘電率異方性が正である上記の組成物を調製し、特性を測定した。NI=109.4℃;Tc<−20℃;Δn=0.112;Δε=10.4;Vth=1.59V;η=15.5mPa・s;γ1=102.6mPa・s.この組成物をガスクロマトグラフ分析したところ、不純物の含有量は0.07GC%であった。
この組成物に化合物(1−2−1)を0.1重量%の割合で添加した試料を調製し、実施例1と同じ条件で紫外線を照射し、ガスクロマト分析を行った。このときの不純物の含有量は1.6GC%であった。
【0101】
[実施例3]
3−HHXB(F,F)−F (2−5) 11%
3−HGB(F,F)−F (2−6) 3%
4−GHB(F,F)−F (2−7) 10%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F (2−16) 9%
2−HHBB(F,F)−F (2−17) 4%
3−HHBB(F,F)−F (2−17) 5%
4−HHBB(F,F)−F (2−17) 5%
5−HHBB(F,F)−F (2−17) 5%
4−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (2−25) 9%
5−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (2−25) 3%
3−HH−V (3−1) 20%
3−HH−V1 (3−1) 5%
3−HHB−1 (3−5) 8%
3−HBB−2 (3−6) 3%
誘電率異方性が正である上記の組成物を調製し、特性を測定した。NI=106.8℃;Tc<−20℃;Δn=0.109;Δε=11.3;Vth=1.50V;η=20.1mPa・s;γ1=125.2mPa・s.この組成物をガスクロマトグラフ分析したところ、不純物の含有量は0.09GC%であった。
この組成物に化合物(1−1−1)を0.05重量%の割合で添加した試料を調製し、実施例1と同じ条件で紫外線を照射し、ガスクロマト分析を行った。このときの不純物の含有量は1.7GC%であった。
【0102】
[実施例4]
3−HHB(F,F)−F (2−3) 3%
3−HHXB(F,F)−F (2−5) 13%
3−HB(F)B(F,F)−F (2−9) 5%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F (2−16) 16%
3−HHBB(F,F)−F (2−17) 3%
4−GBB(F)B(F,F)−F (2−19) 3%
3−HBBXB(F,F)−F (2−20) 8%
3−HBB(F,F)XB(F,F)−F (2−21) 6%
3−HH−V (3−1) 24%
3−HH−V1 (3−1) 7%
V2−BB−1 (3−3) 3%
3−HHEH−3 (3−4) 3%
1−BB(F)B−2V (3−8) 3%
5−HBB(F)B−2 (3−13) 3%
誘電率異方性が正である上記の組成物を調製し、特性を測定した。NI=85.0℃;Tc<−20℃;Δn=0.109;Δε=8.5;Vth=1.45V;η=17.0mPa・s;γ1=85.6mPa・s.この組成物をガスクロマトグラフ分析したところ、不純物の含有量は0.07GC%であった。
この組成物に化合物(1−2−1)を0.05重量%の割合で添加した試料を調製し、実施例1と同じ条件で紫外線を照射し、ガスクロマト分析を行った。このときの不純物の含有量は1.5GC%であった。
【0103】
[実施例5]
3−HB−CL (2−1) 6%
5−HXB(F,F)−F (2−2) 5%
3−HHB(F,F)−F (2−3) 10%
3−HHEB(F,F)−F (2−4) 9%
3−HHXB(F,F)−F (2−5) 19%
2−HBEB(F,F)−F (2−10) 3%
3−HBEB(F,F)−F (2−10) 3%
3−BBXB(F,F)−F (2−15) 3%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F (2−16) 7%
3−dhBB(F,F)XB(F,F)−F (2−22) 4%
3−BB(F)B(F,F)XB(F)B(F,F)−F
(2−27) 3%
3−HH−V (3−1) 7%
3−HH−V1 (3−1) 10%
5−HH−V (3−1) 7%
3−HHEBH−3 (3−9) 4%
誘電率異方性が正である上記の組成物を調製し、特性を測定した。NI=78.8℃;Tc<−20℃;Δn=0.085;Δε=10.0;Vth=1.09V;η=16.8mPa・s;γ1=82.2mPa・s.この組成物をガスクロマトグラフ分析したところ、不純物の含有量は0.08GC%であった。
この組成物に化合物(1−2−2)を0.04重量%の割合で添加した試料を調製し、実施例1と同じ条件で紫外線を照射し、ガスクロマト分析を行った。このときの不純物の含有量は1.7GC%であった。
【0104】
[実施例6]
3−GB(F,F)XB(F,F)−F (2−12) 4%
3−BB(F)B(F,F)−CF3 (2−14) 3%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F (2−16) 16%
3−HHB(F)B(F,F)−F (2−18) 4%
3−HBBXB(F,F)−F (2−20) 10%
4−GB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (2−23) 4%
5−GB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (2−23) 4%
4−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (2−25) 7%
3−HH−V (3−1) 25%
3−HH−O1 (3−1) 3%
1−BB−3 (3−3) 3%
V−HHB−1 (3−5) 11%
5−B(F)BB−2 (3−7) 3%
2−BB(F)B−3 (3−8) 3%
誘電率異方性が正である上記の組成物を調製し、特性を測定した。NI=73.9℃;Tc<−20℃;Δn=0.120;Δε=12.4;Vth=1.24V;η=17.5mPa・s;γ1=92.4mPa・s.この組成物をガスクロマトグラフ分析したところ、不純物の含有量は0.06GC%であった。
この組成物に化合物(1−1−2)を0.07重量%の割合で添加した試料を調製し、実施例1と同じ条件で紫外線を照射し、ガスクロマト分析を行った。このときの不純物の含有量は1.4GC%であった。
【0105】
[実施例7]
3−HBB(F,F)−F (2−8) 4%
3−GB(F)B(F,F)−F (2−11) 3%
3−BB(F)B(F,F)−F (2−13) 6%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F (2−16) 18%
3−HBBXB(F,F)−F (2−20) 3%
3−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (2−25) 3%
4−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (2−25) 7%
4−BB(F,F)XB(F)B(F,F)−F (2−26) 3%
3−HH−V (3−1) 29%
V−HHB−1 (3−5) 11%
2−BB(F)B−2V (3−8) 4%
3−HB(F)HH−5 (3−10) 3%
5−HBBH−3 (3−11) 3%
3−HB(F)BH−3 (3−12) 3%
誘電率異方性が正である上記の組成物を調製し、特性を測定した。NI=80.6℃;Tc<−30℃;Δn=0.124;Δε=9.9;Vth=1.54V;η=20.6mPa・s;γ1=75.1mPa・s.この組成物をガスクロマトグラフ分析したところ、不純物の含有量は0.09GC%であった。
この組成物に化合物(1−1−1)を0.03重量%の割合で添加した試料を調製し、実施例1と同じ条件で紫外線を照射し、ガスクロマト分析を行った。このときの不純物の含有量は1.9GC%であった。
【0106】
[実施例8]
3−HHXB(F,F)−F (2−5) 10%
4−GHB(F,F)−F (2−7) 10%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F (2−16) 6%
2−HHBB(F,F)−F (2−17) 4%
3−HHBB(F,F)−F (2−17) 6%
4−HHBB(F,F)−F (2−17) 5%
5−HHBB(F,F)−F (2−17) 5%
3−GBB(F)B(F,F)−F (2−19) 3%
4−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (2−25) 8%
5−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (2−25) 3%
3−HH−V (3−1) 19%
2−HH−3 (3−1) 4%
3−HH−4 (3−1) 3%
V2−BB−1 (3−3) 6%
3−HHB−1 (3−5) 5%
5−HBB(F)B−3 (3−13) 3%
誘電率異方性が正である上記の組成物を調製し、特性を測定した。NI=107.1℃;Tc<−20℃;Δn=0.115;Δε=10.6;Vth=1.55V;η=19.2mPa・s;γ1=118.7mPa・s.この組成物をガスクロマトグラフ分析したところ、不純物の含有量は0.10GC%であった。
この組成物に化合物(1−1−1)を0.03重量%、化合物(1−2−1)を0.03重量%の割合で添加した試料を調製し、実施例1と同じ条件で紫外線を照射し、ガスクロマト分析を行った。このときの不純物の含有量は1.8GC%であった。
【0107】
[実施例9]
3−GB(F,F)XB(F,F)−F (2−12) 8%
3−GBB(F)B(F,F)−F (2−19) 3%
4−GBB(F)B(F,F)−F (2−19) 3%
3−HBBXB(F,F)−F (2−20) 3%
4−GB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (2−23) 5%
5−GB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (2−23) 5%
4−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (2−25) 7%
5−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (2−25) 5%
3−HHXB(F,F)−CF3 (2) 12%
3−HH−V (3−1) 22%
3−HH−V1 (3−1) 10%
3−HH−2V1 (3−1) 9%
V2−HHB−1 (3−5) 8%
誘電率異方性が正である上記の組成物を調製し、特性を測定した。NI=89.7℃;Tc<−20℃;Δn=0.102;Δε=13.7;Vth=1.35V;η=20.6mPa・s;γ1=126.5mPa・s.この組成物をガスクロマトグラフ分析したところ、不純物の含有量は0.11GC%であった。
この組成物に化合物(1−1−1)を0.1重量%の割合で添加した試料を調製し、実施例1と同じ条件で紫外線を照射し、ガスクロマト分析を行った。このときの不純物の含有量は1.8GC%であった。
【0108】
実施例1から実施例9の組成物は、比較例1の組成物と比べて紫外線照射による不純物の生成量(前後の含有量の差)が少ないので、紫外線に対する高い安定性を有する。よって、本発明による液晶組成物は優れた特性を有すると結論できる。
ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、正に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性、大きな弾性定数などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する、または少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物を提供する。短い応答時間、大きな電圧保持率、低いしきい値電圧、大きなコントラスト比、長い寿命などを有するAM素子を提供する。
不純物の生成を抑制することが可能な添加物、および第一成分として大きな誘電率異方性を有する特定の化合物を含有し、第二成分として高い上限温度または小さな粘度を有する特定の化合物を含有してもよく、そしてネマチック相を有する液晶組成物、およびこの組成物を含有する液晶表示素子である。