特許第5725832号(P5725832)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5725832化学的機械的研磨法およびそれに用いられるスラリー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5725832
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】化学的機械的研磨法およびそれに用いられるスラリー
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20150507BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20150507BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   H01L21/304 622D
   B24B37/00 H
   C09K3/14 550Z
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2010-280633(P2010-280633)
(22)【出願日】2010年12月16日
(65)【公開番号】特開2012-129406(P2012-129406A)
(43)【公開日】2012年7月5日
【審査請求日】2013年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100122688
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100117743
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 美由紀
(72)【発明者】
【氏名】竹越 穣
(72)【発明者】
【氏名】加藤 充
【審査官】 石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−056199(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/058277(WO,A1)
【文献】 特表2006−511511(JP,A)
【文献】 特開2011−103410(JP,A)
【文献】 特開2012−079879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/463
B24B 3/00 − 3/60
B24B 21/00 −39/06
C09K 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体(a)、研磨砥粒(b)および水(c)を含有し、
重合体(a)が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリンおよび2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンからなる群より選ばれる少なくとも一つである環状オリゴ糖および/またはその誘導体(a−1)の構造単位、並びにクエン酸、コハク酸、グルタル酸、酒石酸、リンゴ酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)からなる群より選ばれる少なくとも一つである化合物(a−2)の構造単位を含むことを特徴とする、
化学的機械的研磨用スラリー。
【請求項2】
重合体(a)が、環状オリゴ糖および/またはその誘導体(a−1)100質量部に対して、化合物(a−2)10〜1,000質量部を反応させて得られたものである、請求項1に記載の化学的機械的研磨用スラリー。
【請求項3】
重合体(a)の重量平均分子量が、1,900〜500,000である請求項1または2に記載の化学的機械的研磨用スラリー。
【請求項4】
重合体(a)の含有量が、スラリー全量中、0.01〜10.0質量%である請求項1〜3のいずれか一項に記載の化学的機械的研磨用スラリー。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載の化学的機械的研磨用スラリーを用いる化学的機械的研磨法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造に好適に使用することができる化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing、以下「CMP」と略称することがある)用スラリーおよび該スラリーを用いる化学的機械的研磨法に関する。本発明のCMP用スラリーは、特にシャロー・トレンチ分離(Shallow Trench Isolation)領域を形成する工程において好適に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
半導体回路の高性能化は、回路を構成するトランジスタ、抵抗、配線等の微細化による高密度化によって、およびこれと同時に高速応答化によって達成された。加えて、配線の積層化により、さらなる高密度化および高集積化が可能となった。これらを可能とした半導体装置の製造技術として、シャロー・トレンチ分離、メタルプラグ、ダマシンプロセスなどが挙げられる。シャロー・トレンチ分離は、素子分離の1種であり、このシャロー・トレンチ分離領域を形成する工程などに欠かす事のできない技術がCMPである。シャロー・トレンチ分離領域などの微細なパターンは、フォトリソグラフィによって形成されるが、微細化が進むにつれ、フォトリソグラフィに用いる投影レンズの焦点深度が浅くなり、ウエハの凹凸をそれ以内に収めなければならないため、要求される平坦性が高くなる。CMPで加工面を平坦化することによって、ナノオーダーレベルで平坦な面が得られ、三次元配線、すなわち積層化による高性能化が可能となる。
【0003】
シャロー・トレンチ分離領域を形成する工程においては、基板上に成膜された余分な絶縁膜(酸化ケイ素など)を除くためにCMPが使用され、研磨を停止させる目的で前記絶縁膜の下にストッパ膜が用いられる。ストッパ膜には、一般的には窒化ケイ素などが使用され、前記絶縁膜(酸化ケイ素など)とストッパ膜(窒化ケイ素など)との研磨速度比を大きくすることで、研磨終了ポイントを設定することが容易になる。
【0004】
従来、CMP用スラリー中の砥粒の安定性向上などを図るため、様々な添加剤をCMP用スラリーに加えることが知られている例えば、特許文献1では、ポリアクリル酸などの水溶性有機化合物と酸化セリウムとを含有する半導体装置研磨用研磨材組成物が記載されている。また、特許文献2では、酸化セリウムスラリーに、高分子分散剤として、ポリアクリル酸アンモニウム塩またはポリアクリル酸アミン塩を混合することが記載されている。
【0005】
また、特許文献3では、カルボン酸ポリマー、砥粒、ポリビニルピロリドン、カチオン化合物、両性イオン化合物および水を含む、研磨用の水性組成物が記載されている。
【0006】
また、特許文献4では、水溶性高分子(ポリアクリル酸など)と、β−シクロデキストリンと、コロイダルシリカと、水とを含有するCMP用スラリーが記載されている。さらに、特許文献5では、酸(カルボキシ基を有する有機酸など)および包接化合物(シクロデキストリンなど)を含む研磨液が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3672493号公報
【特許文献2】特許第3649279号公報
【特許文献3】特開2007−273973号公報
【特許文献4】特開2009−158810号公報
【特許文献5】特開2009−302255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
シャロー・トレンチ分離領域は、一般に、以下のような工程を経て形成される。
図1図5は、半導体装置の製造プロセスでのシャロー・トレンチ分離領域の形成工程を段階的に示した模式断面図である。なお、図1〜5は、基板(ウエハ)1中に1個の半導体装置の部分が形成されることを示しているが、実際には、1枚の基板に対してシャロー・トレンチ分離領域を有する半導体装置が複数作製され、ダイシングによって、個々の半導体装置(チップ)に分離される。また、図中の各部の寸法は、理解を容易にするために設定したもので、各部と各部との間の寸法比は、実際のものとは必ずしも一致しない。
【0009】
まず基板1表面の酸化絶縁膜2(酸化ケイ素など)上に、ストッパ膜3が積層される。次いで、酸化絶縁膜2およびストッパ膜3が積層された基板1に、フォトリソグラフィによりレジスト膜(不図示)を積層し、エッチングした後、レジスト膜を除去することによって、溝4(エッチング部分)が形成される(図1)。この溝4を埋めるように、CVDなどによって絶縁膜5(酸化ケイ素など)が積層される(図2)。この絶縁膜5が積層された基板1のCMPによる研磨では、ストッパ膜3と絶縁膜5とを平坦に研磨して、平坦なシャロー・トレンチ分離領域6を形成することが理想的である(図3)。
【0010】
しかし、ストッパ膜3の部分と溝4の部分とでは高さに違いがあるため(図1)、CVDなどでは、初期段差D1を有する絶縁膜5が形成される(図2)。そのため、その後のCMPによる研磨では、ストッパ膜3と絶縁膜5との間に段差D2(図4)が形成されるという問題があった。
【0011】
さらに、基板はうねりを有しているため、実際上、基板全域において均一に研磨することは困難である。そのため、基板上の全てのストッパ膜3が完全に露出するまで研磨を行なうと、早い段階でストッパ膜3が露出した部分では、溝4内に充填されている絶縁膜5がさらに研磨されてしまうという問題(過剰研磨)が生ずる。この過剰研磨の部分では、段差がさらに大きくなってしまう(図5)。図5中のD3は、過剰研磨による段差の増加量である。
【0012】
特許文献1〜3に記載された組成物等は、ストッパ膜3と絶縁膜5との間の段差D2を小さくするという点において、必ずしも満足できるものではなかった。また、特許文献4および5には、ストッパ膜3と絶縁膜5との間の段差D2を小さくするという点について記載も示唆もなく、本発明者らが確認したところ、特許文献4および5のCMP用スラリー等では、この段差D2を小さくすることはできなかった。
【0013】
従って、本発明は、被研磨膜を平坦化する性能(以下、「平坦化性能」と略称することがある)に優れるCMP用スラリー(特に、シャロー・トレンチ分離領域を形成する工程において、ストッパ膜と絶縁膜との間の段差を極めて小さくすることができ、さらには過剰研磨による段差の増加も抑制できるCMP用スラリー)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明者らは、特定組成のCMP用スラリーが平坦化性能に優れ、これを用いれば、ストッパ膜と絶縁膜との間の段差を極めて小さくすることができることを見出し、本発明を完成した。本発明は以下の通りである。
【0015】
[1] 重合体(a)、研磨砥粒(b)および水(c)を含有し、
重合体(a)が、環状オリゴ糖および/またはその誘導体(a−1)の構造単位、並びに水酸基と反応性のある官能基を2個以上有する化合物(a−2)の構造単位を含むことを特徴とする、
化学的機械的研磨用スラリー。
[2] 重合体(a)が、環状オリゴ糖および/またはその誘導体(a−1)100質量部に対して、化合物(a−2)10〜1,000質量部を反応させて得られたものである、上記[1]に記載の化学的機械的研磨用スラリー。
[3] 重合体(a)の重量平均分子量が、1,900〜500,000である上記[1]または[2]に記載の化学的機械的研磨用スラリー。
[4] 重合体(a)の含有量が、スラリー全量中、0.01〜10.0質量%である上記[1]〜[3]のいずれか一つに記載の化学的機械的研磨用スラリー。
[5] 環状オリゴ糖および/またはその誘導体(a−1)が、シクロデキストリンである上記[1]〜[4]のいずれか一つに記載の化学的機械的研磨用スラリー。
[6] シクロデキストリンが、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリンおよび2−ヒドロキシブロピル−β−シクロデキストリンからなる群より選ばれる少なくとも一つである上記[5]に記載の化学的機械的研磨用スラリー。
[7] 化合物(a−2)の分子量が、50〜10,000である上記[1]〜[6]のいずれか一つに記載の化学的機械的研磨用スラリー。
[8] 化合物(a−2)が、多価カルボン酸である上記[7]に記載の化学的機械的研磨用スラリー。
[9] 化合物(a−2)が、クエン酸、イソクエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、酒石酸、リンゴ酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、オキサロ酢酸、グルタミン酸、オキサロコハク酸、オキソグルタル酸、アスパラギン酸、ジグリコール酸、シトラマル酸、ヘミメリト酸、トリメリト酸、トリメシン酸、プレーニト酸、メロファン酸、ピロメリト酸、ベンゼンペンタカルボン酸、メリト酸、アコニット酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノ二酢酸(IDA)、トランス−1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸(cyDTA)、O,O’−ビス(2−アミノフェニル)エチレングリコール−N,N,N’,N’−四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、グリコールエーテルジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸(GEDTA)、ニトリロトリス(メチルホスホン酸)、ヒドロキシイミノ二酢酸(HIDA)、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン四酢酸、1,3−プロパンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸(PDTA)およびブタンテトラカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも一つである上記[8]に記載の化学的機械的研磨用スラリー。
[10] 上記[1]〜[9]のいずれか一つに記載の化学的機械的研磨用スラリーを用いる化学的機械的研磨法。
【発明の効果】
【0016】
本発明のCMP用スラリーを用いれば、ストッパ膜と絶縁膜との間の段差を極めて小さくすることができる。そのため、本発明のCMP用スラリーは、シャロー・トレンチ分離領域を形成する工程に特に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】エッチングによって溝を形成した基板の模式断面図である。
図2】CVDによって絶縁膜を積層した基板の模式断面図である。
図3】理想的なCMPによって絶縁膜を研磨した基板の模式断面図である。
図4】実際上のCMPによって絶縁膜を研磨した基板の模式断面図である。
図5】過剰研磨した基板の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明におけるCMP用スラリーは、特定の重合体(a)、研磨砥粒(b)および水(c)を含有する。本発明のCMP用スラリーは、重合体(a)と研磨砥粒(b)とを併用することで、被研磨膜の凸部を選択的に研磨することが可能であり、その結果、ストッパ膜3と絶縁膜5との段差D2(図4)を低減することができる。
【0019】
本発明のCMP用スラリーを用いることによって、ストッパ膜3と絶縁膜5との段差D2を低減できる理由は定かではないが、環状オリゴ糖および/またはその誘導体(a−1)の構造単位並びに構造単位(a−2)を含む重合体(a)が重要な働きを有すると推定される。詳しくは、この重合体(a)が被研磨面に適度に吸着することによって、被研磨面の均一化が達成されると推定される。さらに、CMPスラリー中にこの重合体(a)が存在することによって、研磨砥粒の凝集が抑制され、その結果、スクラッチ傷等の発生が抑制されると推定される。但し、本発明は、このような推定メカニズムに限定されない。
【0020】
以下、本発明で用いる重合体(a)、研磨砥粒(b)および水(c)について順に説明する。なお、本発明のCMP用スラリー中の重合体(a)および研磨砥粒(b)、並びにその他の任意成分は、それぞれ、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
重合体(a)は、環状オリゴ糖および/またはその誘導体(a−1)の構造単位、並びに水酸基と反応性のある官能基を2個以上有する化合物(a−2)の構造単位を含む。以下では、まず環状オリゴ糖および/またはその誘導体(a−1)を説明し、次いで化合物(a−2)を説明する。
【0022】
オリゴ糖および/またはその誘導体(a−1)は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。ここで「オリゴ糖」とは、単糖類が、結合位置を問わずに、2個以上20個以下で結合した化合物をいう。
【0023】
単糖類は、D−体、L−体のいずれでもよい。単糖類としては、アロース、タロース、グロース、グルコース、アルトロース、マンノース、ガラクトース、イドース、ラムノース、エリトロース、トレオース、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース等が挙げられる。
【0024】
環状オリゴ糖としては、例えば、シクロデキストリン、シクロマンニン、シクロアワオドリン、イソサイクロマルトペンタオース、イソサイクロマルトヘキサオース、環状ニゲロシルニゲロース、環状ニゲロシルトリサッカライドなどが挙げられる。工業的な入手容易性および水溶性の観点から、シクロデキストリンが好ましく、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンおよびγ−シクロデキストリンがより好ましい。
【0025】
環状オリゴ糖の誘導体の誘導体としては、例えば、環状オリゴ糖の有するヒドロキシ基の水素原子が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル等の炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基で置換されたアルコキシ化誘導体が挙げられる。このアルコキシ化誘導体のアルキル基は、さらに、ヒドロキシ基を有していてもよい。ヒドロキシ基を有するアルキル基としては、例えば、2−ヒドロキシエチル基および2−ヒドロキシプロピル基などが挙げられる。
【0026】
また、環状オリゴ糖の誘導体の誘導体としては、例えば、環状オリゴ糖の有するヒドロキシ基と、カルボン酸(例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸等のモノカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸、酒石酸、クエン酸、イソクエン酸等のヒドロキシカルボン酸)のカルボキシ基とが反応して得られるエステル化誘導体が挙げられる。
【0027】
環状オリゴ糖および/またはその誘導体(a−1)は、好ましくはシクロデキストリンであり、より好ましくはα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリンおよび2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンからなる群より選ばれる少なくとも一つである。
【0028】
化合物(a−2)は、水酸基と反応性のある官能基を2個以上有する。化合物(a−2)は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。化合物(a−2)が有する官能基としては、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基(イソシアナト基ともいう)などが挙げられる。これらの官能基の中でも、化合物(a−2)の取扱の容易さおよび適度な反応性の観点から、カルボキシ基が好ましい。
【0029】
化合物(a−2)の分子量は50〜10,000の範囲にあることが好ましい。化合物(a−2)の分子量が50より小さいと、鎖長が短すぎ、得られる重合体(a)が適切な形態を取ることができない場合がある。一方、化合物(a−2)の分子量が10,000より大きいと、重合体(a)中に占める環状オリゴ糖および/またはその誘導体(a−1)構造単位の割合が小さくなり過ぎて、絶縁膜とストッパ膜との段差および過剰研磨時の段差増加が充分に低減されない場合がある。重合体(a)の適切な形態、絶縁膜とストッパ膜との段差抑制、および過剰研磨時の段差増加の抑制の観点から、化合物(a−2)の分子量は75〜9,000の範囲にあることがより好ましく、90〜8,000の範囲にあることがさらに好ましい。なお、化合物(a−2)が、1000以上の分子量を有する重合体である場合、化合物(a−2)の分子量とは、重量平均分子量を意味する。この重量平均分子量は、GPC装置(Waters社製「150C」)にGPCカラム(東ソー株式会社製「GMPWXL」)を接続し、200mMリン酸塩水溶液を移動相として用いて測定し、ポリエチレングリコール標準を用いて換算した値である。
【0030】
化合物(a−2)としては、例えば、
(i)エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等の水酸基含有化合物;
(ii)クエン酸、イソクエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、酒石酸、リンゴ酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、オキサロ酢酸、グルタミン酸、オキサロコハク酸、オキソグルタル酸、アスパラギン酸、ジグリコール酸、シトラマル酸、ヘミメリト酸、トリメリト酸、トリメシン酸、プレーニト酸、メロファン酸、ピロメリト酸、ベンゼンペンタカルボン酸、メリト酸、アコニット酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノ二酢酸(IDA)、トランス−1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸(cyDTA)、O,O’−ビス(2−アミノフェニル)エチレングリコール−N,N,N’,N’−四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、グリコールエーテルジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸(GEDTA)、ニトリロトリス(メチルホスホン酸)、ヒドロキシイミノ二酢酸(HIDA)、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン四酢酸、1,3−プロパンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸(PDTA)およびブタンテトラカルボン酸等の多価カルボン酸およびこれらの塩;
(iii)メチレンビスフェニルジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等のイソシアネート類;
が挙げられる。
【0031】
絶縁膜とストッパ膜との段差および過剰研磨時の段差増加の両方を充分に抑制するために、化合物(a−2)は、
(i)好ましくは、多価カルボン酸およびイソシアネート類からなる群より選ばれる少なくとも一つであり、
(ii)より好ましくは、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、酒石酸、リンゴ酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)からなる群より選ばれる少なくとも一つであり、
(iii)さらに好ましくは、クエン酸、コハク酸、グルタル酸、酒石酸、リンゴ酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)からなる群より選ばれる少なくとも一つであり、
(iv)特に好ましくは、クエン酸、コハク酸、グルタル酸、酒石酸、リンゴ酸およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)からなる群より選ばれる少なくとも一つである。
【0032】
重合体(a)の製造方法としては、特に限定はないが、例えば、
(i)環状オリゴ糖および/またはその誘導体(a−1)と化合物(a−2)とを含む有機溶媒中に触媒を添加し、系外に水分を除去しながら、それらを加熱する方法、
(ii)環状オリゴ糖および/またはその誘導体(a−1)と化合物(a−2)とを水中に溶解させ、そこに酸触媒を添加した後、乾固させながら、それらを重合する方法、
(iii)カルボジイミド等の縮合剤を用いて、環状オリゴ糖および/またはその誘導体(a−1)と化合物(a−2)とを反応させる方法
等が挙げられる。
【0033】
上記のようにして製造した重合体(a)に、さらに精製処理を施しても良い。精製処理としては、例えば、環状オリゴ糖および/またはその誘導体(a−1)並びに化合物(a−2)のいずれの分子量よりも分画分子量が大きく、且つ重合体(a)の重量平均分子量よりも分画分子量が小さい透析膜を用いた透析処理が挙げられる。
【0034】
重合体(a)は、環状オリゴ糖および/またはその誘導体(a−1)100質量部に対して、化合物(a−2)10〜1,000質量部を反応させて製造することが好ましい。化合物(a−2)量が10質量部より小さいと、重合体(a)中に未反応の環状オリゴ糖および/またはその誘導体(a−1)が多量に含まれることになる。未反応物を多量に含む重合体(a)を使用すると、過剰研磨の抑制効果が減少する。一方、化合物(a−2)量が1,000質量部を超えると、重合体(a)が固化して水に不溶となる。過剰研磨の抑制効果および重合体(a)の水溶性の観点から、化合物(a−2)量は、環状オリゴ糖および/またはその誘導体(a−1)100質量部に対して、20〜900質量部の範囲にあることがより好ましく、30〜800質量部の範囲がさらに好ましい。
【0035】
重合体(a)の重量平均分子量は、1,900〜500,000の範囲にあることが好ましい。重合体(a)の重量平均分子量が1,900未満であると、絶縁膜とストッパ膜との段差が解消されない上、過剰研磨時の段差増加が大きくなりすぎる場合がある。一方、重合体(a)の重量平均分子量が500,000より大きい場合には、研磨速度および研磨均一性が低下する傾向にある。段差抑制、並びに研磨速度および研磨均一性の維持の観点から、重合体(a)の重量平均分子量は、1,900〜200,000の範囲にあることがより好ましく、2,000〜100,000の範囲にあることがさらに好ましい。なお、この重量平均分子量は、GPC装置(Waters社製「150C」)にGPCカラム(東ソー株式会社製「GMPWXL」)を接続し、200mMリン酸塩水溶液を移動相として用いて測定し、ポリエチレングリコール標準を用いて換算した値である。
【0036】
重合体(a)の含有量は、スラリー全量中、0.01〜10.0質量%の範囲にあることが好ましい。重合体(a)の含有量が0.01質量%未満であると、絶縁膜とストッパ膜との段差を充分に解消できない場合があり、また、過剰研磨時の段差増加が大きくなりすぎる場合がある。一方、重合体(a)の含有量が10.0質量%を超える場合には、CMP用スラリー中の研磨砥粒(b)が凝集する傾向にある。絶縁膜とストッパ膜との段差および過剰研磨時の段差増加の抑制、並びにスラリー中の研磨砥粒(b)の凝集を抑制する観点から、重合体(a)の含有量は、スラリー全量中、0.02〜5.0質量%の範囲にあることがより好ましく、0.03〜3.0質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
【0037】
重合体(a)は、25℃における水への溶解度が0.1g/L以上であることが望ましい。この溶解度が0.1g/L未満である場合には、絶縁膜とストッパ膜との段差および過剰研磨時の段差増加を充分に抑制することができない場合がある。絶縁膜とストッパ膜との段差および過剰研磨時の段差増加を良好に抑制するという観点から、重合体(a)の25℃における水への溶解度は0.5g/L以上であることが好ましく、1.0g/L以上であることがより好ましい。
【0038】
水溶性を制御するために、
(i)環状オリゴ糖および/またはその誘導体(a−1)の構造単位並びに化合物(a−2)の構造単位を有する前記重合体と、ポリエチレングリコールとを共重合して得られる共重合体、または
(ii)環状オリゴ糖および/またはその誘導体(a−1)の構造単位並びに化合物(a−2)の構造単位を有する前記重合体と、水酸基と反応性のある官能基を両末端に有する変性ポリエチレングリコールとを共重合して得られる共重合体
を、重合体(a)として使用することもできる。前記のポリエチレングリコールおよび変性ポリエチレングリコールの分子量ないし重量平均分子量は、好ましくは100〜10,000である。
【0039】
次に、研磨砥粒(b)について説明する。研磨砥粒(b)の平均粒径は、0.5〜1,000nmの範囲にあることが好ましい。研磨砥粒(b)の平均粒径が0.5nm未満であると、研磨速度が低下する場合がある。一方、研磨砥粒(b)の平均粒径が1,000nm大きいと、研磨傷が発生する傾向にある。研磨速度および研磨傷抑制の観点から、研磨砥粒(b)の平均粒径は、1〜700nmの範囲にあることがより好ましく、5〜500nmの範囲にあることがさら好ましい。
【0040】
研磨砥粒(b)の平均粒径は、例えば、以下のようにして算出することができる。25℃およびピンホール径50μmの条件で、且つ溶媒条件:25℃の水の屈折率=1.33、粘度=0.89cP、および比誘電率=78.3の設定で、粒径測定装置(大塚電子株式会社製「ELSZ−2」)を用いて動的光散乱法により研磨砥粒(b)を2回測定し、それぞれキュムラント解析により研磨砥粒(b)の平均粒径と粒径分布を求め、二つの平均粒径の値をさらに平均することによって、研磨砥粒(b)の平均粒径を算出することができる。
【0041】
研磨砥粒(b)としては、例えば、有機化合物、高分子化合物、無機化合物、有機−無機複合材料を用いることができる。これらは、それぞれ、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記有機化合物および高分子化合物としては、例えば、フラーレン誘導体;およびポリスチレン粒子、ポリエチレン粒子、ポリアクリル酸粒子、ポリメタクリル酸粒子、ポリアクリルアミド粒子、ポリメタクリルアミド粒子などの不飽和二重結合を有する単量体を単独あるいは複数組み合わせて重合した高分子化合物粒子;などが挙げられる。
【0043】
前記無機化合物としては、フラーレン、ナノダイヤモンド、ケイ素、ゲルマニウム、無機酸化物(例えば、酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム)、金属、金属化合物(例えば、金属、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物、金属硫酸化物、金属硝酸化物、金属フッ化物、金属臭素化物、金属窒化物、金属ヨウ化物)が挙げられる。前記金属および金属化合物の金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、亜鉛、カドニウム、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、コバルト、ロジウム、鉄、マンガン、クロム、モリブデン、タングステン、バナジウム、ニオブ、タンタル、チタン、セリウム、ランタン、イットリウム、イリジウム、ジルコニウム、スズ等が挙げられる。
【0044】
前記有機−無機複合材料としては、例えば、無機化合物粒子に有機化合物を被覆したもの、有機化合物粒子に無機化合物を被覆したもの、有機化合物粒子中に無機化合物粒子を分散したもの、有機シロキサン化合物等が挙げられる。
【0045】
研磨砥粒(b)としては、無機化合物が好ましく、無機酸化物および金属酸化物がより好ましい。研磨速度および研磨傷の低減の観点から、酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化マグネシウムおよび酸化マンガンがさらに好ましい。これらは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。高い研磨速度を達成でき、且つ窒化ケイ素(ストッパ膜)よりも酸化ケイ素(絶縁膜)を選択的に研磨するためには、酸化セリウムが特に好ましい。
【0046】
研磨砥粒(b)の含有量は、スラリー全量中、0.01〜30質量%の範囲にあることが好ましい。この含有量が0.01質量%未満であると、研磨速度が低下し、一方、30質量%を超えると、研磨砥粒(b)が凝集し易くなる。研磨速度および凝集抑制の観点から、研磨砥粒(b)の含有量は、スラリー全量中、0.05〜25質量%の範囲にあることがより好ましく、0.1〜15質量%の範囲にあることがさら好ましい。
【0047】
本発明のCMP用スラリーは、研磨砥粒(b)の分散安定性を向上させるために、本発明の効果を阻害しない範囲で公知の分散剤を含有することができる。
【0048】
前記分散剤としては、例えば、水溶性アニオン性分散剤、水溶性ノニオン性分散剤、水溶性カチオン性分散剤、水溶性両性分散剤等が挙げられ、水溶性アニオン性分散剤としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリスルホン酸および/またはその塩等が挙げられる。水溶性ノニオン性分散剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、N−置換ポリアクリルアミド、N,N−置換ポリアクリルアミド等が挙げられる。水溶性カチオン性分散剤としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン等が挙げられる。水溶性両性分散剤としては、不飽和二重結合を有するカチオン性単量体およびアニオン性単量体を共重合した重合体等が挙げられる。
【0049】
本発明のCMP用スラリーは、本発明の効果を阻害しない範囲で、アニオン性高分子化合物、ノニオン性高分子化合物、カチオン性高分子化合物、両性高分子化合物、多糖類を含有してもよい。前記アニオン性高分子化合物としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレンスルホン酸およびポリスルホン酸の塩等が挙げられる。前記ノニオン性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、N−置換ポリアクリルアミド、N,N−置換ポリアクリルアミド、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等が挙げられる。前記カチオン性高分子化合物としては、ポリエチレンイミンおよびポリアリルアミンの塩等が挙げられる。前記両性高分子化合物としては、カチオン性およびアニオン性の不飽和二重結合を有する単量体を共重合してなる共重合体等が挙げられる。前記多糖類としては、例えば、デキストラン、グリコーゲン、アミロース、アミロペクチン、ヘパリン、アガロース等が挙げられる。
【0050】
本発明のCMP用スラリーは、本発明を阻害しない範囲で分子量10〜1,000の低分子化合物を含有してもよい。前記低分子化合物としては、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピペラジン、イミダゾール、ブチルアミン、ジブチルアミン、イソプロピルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン等のアミン類;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール等のアルコール類;蟻酸、酢酸、酪酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸、サリチル酸、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボン酸類;グリシン、アラニン、フェニルアラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、ヒスチジン等のアミノ酸類;ジオキサン、ジメチルエーテル、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン類;過酸化水素、過硫酸アンモニウム等の酸化剤;ベンゾトリアゾール、チアベンダゾール等の錯形成剤などが挙げられる。
【0051】
本発明のCMP用スラリーは、例えば、重合体(a)および研磨砥粒(b)を含有する1液式のCMP用スラリーとして保存してもよく、また、重合体(a)の水溶液と研磨砥粒(b)を含有するスラリーとを分けて保存する2液式のCMP用スラリーとして保存してもよい。2液式のCMP用スラリーを用いる場合、重合体(a)の水溶液と研磨砥粒(b)を含有するスラリーとの配合を任意に変更することで、スラリーの平坦化性能および研磨速度の微調整が可能となる。2液式のCMP用スラリーを用いる研磨方法としては、例えば、(i)重合体(a)の水溶液と、研磨砥粒(b)を含有するスラリーとを別々の配管で送液し、供給配管出口の直前でこれらの配管を合流させて、配管内でこれらを混合した後、本発明のCMP用スラリーを研磨パッド上に供給する方法;および(ii)重合体(a)の水溶液と研磨砥粒(b)を含有するスラリーとを、研磨直前に混合して、本発明のCMP用スラリーを研磨パッド上に供給する方法する方法;等が挙げられる。これらのように、重合体(a)の水溶液と研磨砥粒(b)を含有するスラリーとを配管内でまたは研磨直前に混合する場合、必要に応じて脱イオン水を混合して、本発明のCMP用スラリーの研磨特性を調整することもできる。
【0052】
本発明のCMP用スラリーのpHは3.0〜12.5の範囲にあることが好ましい。前記pHが3.0未満であると、研磨速度が低下することがあり、前記pHが12.5を超えると、被研磨膜の平坦性が低下する傾向にある。研磨速度および被研磨膜の平坦性の観点から、前記pHは3.3〜12.0の範囲にあることがより好ましく、3.5〜11.7の範囲にあることがさらに好ましい。
【0053】
CMP用スラリーのpHは、pHメータを用いて測定することができる。詳しくは、後述の実施例に記載の方法でpHを測定することができる。
【0054】
本発明のCMP用スラリーのpHを調整するために、pH調整剤(酸または塩基)を用いてもよい。pH調整剤として塩基を使用する場合、半導体装置製造での金属汚染を防止するために、塩基は有機アミンまたはアンモニア水であることが好ましい。
【0055】
本発明のCMP用スラリーは、水(c)を含有する。水(c)はCMP用スラリーの分散媒であり、半導体装置製造での汚染を防止するために、脱イオン水が好ましく、蒸留水がより好ましく、超純水がさらに好ましい。水(c)の含有量は、CMP用スラリーから必須成分(重合体(a)および研磨砥粒(b))および任意成分(例えば分散剤)の含有量を除いた残余の量である。
【0056】
本発明のCMP用スラリーは、各種半導体装置、MEMS等の製造プロセス等に用いることができる。例えば、所定の配線を有する配線板に形成された酸化ケイ素膜、ガラス等の絶縁膜;ポリシリコン、Al、Cu、Ti、TiN、W、Ta、TaN等を主として含有する膜;フォトマスク・レンズ・プリズム等の光学ガラス;ITO等の無機導電膜;ガラスおよび結晶質材料で構成される光集積回路・光スイッチング素子・光導波路;光ファイバーの端面;シンチレータ等の光学用単結晶;固体レーザ単結晶;青色レーザLED用サファイヤ基板;SiC、GaP、GaAs等の半導体単結晶;磁気ディスク用ガラス基板;磁気ヘッド等;メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂;を研磨することができる。特に、本発明のCMP用スラリーを、シャロー・トレンチ分離領域を形成する工程でのCMPに用いることが好ましい。
【0057】
本発明は、CMP法も提供する。本発明のCMP法は、上述した本発明のCMP用スラリーを用いることを特徴とする。本発明のCMP法は、シャロー・トレンチ分離領域を形成する工程で用いられることが好ましい。
【0058】
研磨定盤上に固定した研磨パッドに、被研磨膜を形成した基板を押し当て、基板と研磨パッドとの間に本発明のCMP用スラリーを供給しながら、基板と研磨パッドとを相対的に動かして、基板上の被研磨膜を研磨するCMP法が、本発明の一態様として挙げられる。以下、例示のために、ストッパ膜3(窒化ケイ素など)上に絶縁膜5(酸化ケイ素など)が積層された基板(図2)を用いて、本発明の一態様を説明する。
【0059】
本発明のCMP法では、一般的な研磨装置を使用することができる。一般的な研磨装置は、通常、研磨パッドと、研磨パッドを固定するための研磨定盤と、研磨定盤を回転させるためのモータと、モータの回転数を調整するコントローラと、基板を保持するホルダーとを有する。研磨パッドは、例えば、両面テープ等を用いて研磨定盤に固定される。
【0060】
研磨パッドとしては、特に制限はなく、例えば、一般的な合成樹脂、不織布、織布、人工皮革などを使用することができる。
【0061】
前記合成樹脂としては、例えば熱硬化性ポリウレタン樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂などの架橋ゴム、ポリアクリル樹脂、ポリメタクリル樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂等が挙げられる。前記合成樹脂は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。さらに前記合成樹脂を、添加剤などと組み合わせて使用することができる。耐磨耗性の観点から、ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0062】
前記合成樹脂は発泡構造であってもよい。発泡構造の合成樹脂の製造方法としては、例えば、(1)微小中空体を合成樹脂中に分散させる方法;(2)1種または2種以上の水溶性高分子化合物を合成樹脂中に分散させた後、前記水溶性高分子化合物を溶出させる方法;(3)超臨界発泡を用いる方法;(4)高分子化合物微粒子を焼結し、連通孔構造を形成させる方法;が挙げられる。
【0063】
前記研磨パッドは、研磨パッド内に砥粒を内包していてもよい。
【0064】
前記研磨パッドには、CMP用スラリーが溜まるような穴加工および/または溝加工が施されていることが好ましい。特に制限するものではないが、溝構造としては、格子状、放射状、螺旋状、同心円状などの構造を挙げることができる。前記溝構造および穴構造の種類は、一つだけでもよく、二つ以上であってもよい。また、前記研磨パッドは、単層構造でもよく、クッション層などを有する積層構造でもよい。
【0065】
コンディショナーを用いて、前記研磨パッドの表面粗さを、被研磨膜の研磨に好適な範囲に調整してもよい。前記コンディショナーとしては、例えば、ダイアモンド粒子をニッケル電着等により担体表面に固定したものなどが挙げられる。前記表面粗さの調整法としては、前記コンディショナーを研磨装置に取り付け、前記研磨パッド上に前記コンディショナーを押し付ける方法などが挙げられる。
【0066】
研磨条件としては、特に制限はない。但し、効率的に研磨するために、研磨定盤および基板それぞれの回転速度は300rpm以下が好ましく、基板にかける圧力は、研磨後に傷が発生させないために150kPa以下が好ましい。研磨している間、研磨パッドには、CMP用スラリーをポンプ等で連続的に供給することが好ましい。この供給量に制限はないが、研磨層の表面が常にCMP用スラリーで覆われていることが好ましい。
【0067】
研磨終了後の基板は、流水で良く洗浄した後、スピンドライヤ等を用いて乾燥させることが好ましい。このように、本発明のCMP用スラリーで研磨することによって、ストッパ膜3と絶縁膜5との間の段差D2が抑制された平坦なシャロー・トレンチ分離領域6を形成することができ、基板全面にわたって平滑な面を得ることができる。この基板の上に、さらに、タングステン配線、銅配線などが形成される。このような工程を繰り返すことにより、積層構造の半導体装置を製造することができる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0069】
(1)重合体の重量平均分子量の測定
下記実施例1〜23および比較例3で得られた重合体の重量平均分子量(ポリエチレングリコール標準による換算値)を、GPC装置(Waters製「150C」)にGPCカラム(東ソー株式会社製「GMPWXL」)を接続し、200mMリン酸塩水溶液を移動相として用いて、測定した。測定結果を表1〜4に示す。なお、表1〜4では重量平均分子量を「Mw」と記載する。
【0070】
(2)CMP用スラリーのpH測定
標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液:pH4.00(25℃)、中性リン酸塩pH緩衝液:pH7.00(25℃)、ホウ酸塩pH緩衝液:pH9.00(25℃))を用いて、pHメータ(株式会社堀場製作所製「pHメータ F22」)を3点較正した。下記実施例および比較例で得られたCMP用スラリーに較正したpHメータの電極を入れて、2分間以上経過してpH値が安定した後に、その値を測定した。測定結果を表1〜4に示す。
【0071】
(3)絶縁膜の研磨試験
試験基板としてSKW製パターンウエハ「SKW3−2」を用いた。前記ウエハは、図2に示すように、酸化絶縁膜2(酸化ケイ素)、ストッパ膜3(窒化ケイ素)、溝4、絶縁膜5(酸化ケイ素)が形成されたものである(酸化絶縁膜2の厚さ:10nm、ストッパ膜3の厚さ:150nm、ストッパ膜3の幅:100μm、溝4の深さ(ストッパ膜3の表面から溝4の底部までの距離):500nm、溝4の幅:100μm、絶縁膜5の平均厚さ:600nm)。研磨装置(MAT社製「BC−15」)の基板保持部に前記ウエハを固定した。一方、研磨定盤にはΦ380mmの研磨パッド(ニッタ・ハース社製「IC1400」同心円溝)を両面テープで貼り付けた。コンディショナー(アライドマテリアル社製、直径19.0cm)を用い、圧力3.48kPa、定盤回転数100rpm、コンディショナー回転数140rpmで同方向に回転させ、純水を定量送液ポンプ(東京理科器械株式会社製「RP−1000」)にて毎分150mLで供給しながら60分間、研磨パッドのコンディショニングを行った。前記研磨パッド上に、下記実施例および比較例で得られたCMP用スラリーを、毎分120mLで供給しながら、前記ウエハを研磨した(研磨定盤の回転速度100rpm、ウエハの回転速度99rpm、ウエハへの荷重23.4kPa)。ストッパ膜3(窒化ケイ素)上の絶縁膜5(酸化ケイ素)が消失し、ストッパ膜3が露出した時点をジャスト研磨として研磨を終了し、ウエハを蒸留水で洗浄し、乾燥した。また、ジャスト研磨後のストッパ膜3と絶縁膜5との間の段差D2(図4)は、表面粗さ測定機を用いて測定した。詳しくは、表面粗さ測定機(株式会社ミツトヨ製小形表面粗さ測定機「SJ−400」)を用い、標準スタイラス、測定レンジ:80μm、JIS2001、GAUSSフィルタ、カットオフ値λc:2.5mm、カットオフ値λs:8.0μmの設定でジャスト研磨後のウエハを測定し、断面曲線から段差D2を算出した。測定結果を表1〜4に示す。
【0072】
下記実施例および比較例で得られたCMP用スラリーを用いて、ジャスト研磨後のウエハを図5に示すように過剰研磨して、段差増加量D3を測定した。詳しくは、研磨開始からジャスト研磨までの研磨時間の15%に相当する時間だけ、ジャスト研磨後のウエハをさらに研磨し、段差D2の場合と同様にして段差増加量D3(図5)を算出した。測定結果を表1〜4に示す。
【0073】
実施例1
(重合体(a)の合成)
環状オリゴ糖および/またはその誘導体(a−1)としてα−シクロデキストリン(日本食品加工株式会社製)50g、および化合物(a−2)としてエチレンジアミン四酢酸(同仁化学研究所製)50gを用いて、重合体(a)を合成した。詳しくは、これらを1L合成フラスコ中で0.5Lの蒸留水に溶解させ、その中に硫酸(和光純薬株式会社製)0.5gを加えた。反応系を80℃に昇温し、水を除去し、乾固させて、α−シクロデキストリンおよびエチレンジアミン四酢酸に由来する構造単位を含む重合体(a)を得た。
【0074】
(CMP用スラリーの調製)
研磨砥粒(b)として酸化セリウム砥粒(昭和電工株式会社製研磨剤「GPL−C1010」、スラリー中の酸化セリウム砥粒含有量:10質量%、酸化セリウム砥粒の平均粒径:200nm)50g、前記重合体(a)4g、および蒸留水(c)を1Lメスシリンダー中で混合し、マグネチックスターラーで撹拌しながら、塩酸(和光純薬工業株式会社製)を加えてpHを5.0とした後、蒸留水を加えてCMP用スラリー全量を1,000gとして、重合体(a)の含有量が0.4質量%であり、研磨砥粒(b)の含有量が0.5質量%であるCMP用スラリーを得た。
【0075】
実施例2
pHを5.5としたこと以外は実施例1と同様にして、CMP用スラリーを調製した。
【0076】
実施例3
pHを4.5としたこと以外は実施例1と同様にして、CMP用スラリーを調製した。
【0077】
実施例4
実施例1で得られた重合体(a)1gを使用して、CMP用スラリー中の重合体(a)の含有量を0.1質量%としたこと以外は実施例1と同様にして、CMP用スラリーを調製した。
【0078】
実施例5
実施例1で得られた重合体(a)15gを使用して、CMP用スラリー中の重合体(a)の含有量を1.5質量%としたこと以外は実施例1と同様にして、CMP用スラリーを調製した。
【0079】
実施例6
エチレンジアミン四酢酸5gを使用して重合体(a)を合成したこと以外は実施例1と同様にして、CMP用スラリーを調製した。
【0080】
実施例7
α−シクロデキストリン5gを使用して重合体(a)を合成したこと以外は実施例1と同様にして、CMP用スラリーを調製した。
【0081】
実施例8
実施例1で得られた重合体(a)を、分画分子量600〜1,000の透析膜(スペクトラム・ラボラトリーズ社製)を用いて精製し、精製した重合体(a)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、CMP用スラリーを調製した。
【0082】
実施例9
環状オリゴ糖および/またはその誘導体(a−1)としてβ−シクロデキストリン(和光純薬工業株式会社製)50gを使用して重合体(a)を合成したこと以外は実施例1と同様にして、CMP用スラリーを調製した。
【0083】
実施例10
環状オリゴ糖および/またはその誘導体(a−1)としてγ−シクロデキストリン(和光純薬工業株式会社製)50gを使用して重合体(a)を合成したこと以外は実施例1と同様にして、CMP用スラリーを調製した。
【0084】
実施例11
環状オリゴ糖および/またはその誘導体(a−1)としてメチル−β−シクロデキストリン(和光純薬工業株式会社製)50gを使用して重合体(a)を合成したこと以外は実施例1と同様にして、CMP用スラリーを調製した。
【0085】
実施例12
環状オリゴ糖および/またはその誘導体(a−1)として2−ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン(和光純薬工業株式会社製)50gを使用して重合体(a)を合成したこと以外は実施例1と同様にして、CMP用スラリーを調製した。
【0086】
実施例13
環状オリゴ糖および/またはその誘導体(a−1)として2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(日本食品加工株式会社製)50gを使用して重合体(a)を合成したこと以外は実施例1と同様にして、CMP用スラリーを調製した。
【0087】
実施例14
化合物(a−2)としてコハク酸(和光純薬工業株式会社製)50gを使用して重合体(a)を合成したこと以外は実施例1と同様にして、CMP用スラリーを調製した。
【0088】
実施例15
化合物(a−2)としてグルタル酸(和光純薬工業株式会社製)50gを使用して重合体(a)を合成したこと以外は実施例1と同様にして、CMP用スラリーを調製した。
【0089】
実施例16
化合物(a−2)として酒石酸(和光純薬工業株式会社製)50gを使用して重合体(a)を合成したこと以外は実施例1と同様にして、CMP用スラリーを調製した。
【0090】
実施例17
化合物(a−2)としてリンゴ酸(和光純薬工業株式会社製)50gを使用して重合体(a)を合成したこと以外は実施例1と同様にして、CMP用スラリーを調製した。
【0091】
実施例18
化合物(a−2)としてクエン酸(和光純薬工業株式会社製)50gを使用して重合体(a)を合成したこと以外は実施例1と同様にして、CMP用スラリーを調製した。
【0092】
実施例19
化合物(a−2)としてクエン酸(和光純薬工業株式会社製)5gを使用して重合体(a)を合成したこと以外は実施例1と同様にして、CMP用スラリーを調製した。
【0093】
実施例20
環状オリゴ糖および/またはその誘導体(a−1)としてα−シクロデキストリン5g、および化合物(a−2)としてクエン酸(和光純薬工業株式会社製)50gを使用して重合体(a)を合成したこと以外は実施例1と同様にして、CMP用スラリーを調製した。
【0094】
実施例21
(重合体(a)の合成)
環状オリゴ糖および/またはその誘導体(a−1)としてα−シクロデキストリン(和光純薬工業株式会社製)50g、およびジメチルスルホキシド(和光純薬工業株式会社製)250gを1L合成フラスコに投入した。窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら反応系を90℃に昇温した後、化合物(a−2)としてのクエン酸(和光純薬工業株式会社製)50gおよびジメチルスルホキシド250gの混合物を、1時間かけて滴下した。クエン酸の滴下終了後に90℃で24時間撹拌してから冷却し、次いで4,500gのアセトンを加え、重合体(a)を沈殿させ、沈殿物をメンブレンフィルター(孔径3μm、アドバンテック社製)で濾過して、α−シクロデキストリンおよびクエン酸に由来する構造単位を含む重合体(a)を得た。
【0095】
(CMP用スラリーの調製)
上記のようにして得られた重合体(a)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、CMP用スラリーを調製した。
【0096】
実施例22
(重合体(a)の合成)
窒素ガス雰囲気下で、環状オリゴ糖および/またはその誘導体(a−1)としてα−シクロデキストリン(和光純薬工業株式会社製)50g、およびジメチルスルホキシド(和光純薬工業株式会社製)500gを1L合成フラスコに投入した。さらに、エステル化反応の縮合剤としてジイソプロピルカルボジイミド39gを加え、25℃で4時間撹拌した。次いで、ジメチルスルホキシド500gに溶解したクエン酸(和光純薬工業株式会社製)50gを、化合物(a−2)として、1時間かけて滴下した。クエン酸の滴下終了後に25℃で24時間撹拌してから、4,500gのアセトンを加え、重合体(a)を沈殿させ、沈殿物をメンブレンフィルター(孔径3μm、アドバンテック社製)で濾過して、α−シクロデキストリンおよびクエン酸に由来する構造単位を含む重合体(a)を得た。
【0097】
(CMP用スラリーの調製)
上記のようにして得られた重合体(a)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、CMP用スラリーを調製した。
【0098】
実施例23
(重合体(a)の合成)
窒素ガス雰囲気下で、環状オリゴ糖および/またはその誘導体(a−1)としてα−シクロデキストリン(和光純薬工業株式会社製)50g、およびジメチルスルホキシド(和光純薬工業株式会社製)500gを1L合成フラスコに投入した。70℃に加熱しながら、ジメチルスルホキシド500gに溶解したヘキサメチレンジイソシアネート(和光純薬工業株式会社製)8.6gを、化合物(a−2)として、1時間かけて滴下した。ヘキサメチレンジイソシアネートの滴下終了後に25℃で4時間撹拌してから、4,500gのアセトンを加え、重合体を沈殿させ、沈殿物をメンブレンフィルター(孔径3μm、アドバンテック社製)で濾過して、α−シクロデキストリンおよびヘキサメチレンジイソシアネートに由来する構造単位を含む重合体(a)を得た。
【0099】
(CMP用スラリーの調製)
上記のようにして得られた重合体(a)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、CMP用スラリーを調製した。
【0100】
比較例1
重合体(a)の代わりにα−シクロデキストリン(和光純薬工業株式会社製)5g、研磨砥粒(b)として酸化セリウム砥粒(昭和電工株式会社製研磨剤「GPL−C1010」、スラリー中の酸化セリウム砥粒含有量:10質量%)50g、および蒸留水(c)を1Lメスシリンダー中で混合し、マグネチックスターラーで撹拌しながら、塩酸(和光純薬工業株式会社製)を加えてpHを5.0とした後、蒸留水を加えてCMP用スラリー全量を1,000gとして、α−シクロデキストリンの含有量が0.4質量%であり、研磨砥粒(b)の含有量が0.5質量%であるCMP用スラリーを得た。
【0101】
比較例2
重合体(a)の代わりにエチレンジアミン四酢酸(和光純薬工業株式会社製)5g、研磨砥粒(b)として酸化セリウム砥粒(昭和電工株式会社製研磨剤「GPL−C1010」、スラリー中の酸化セリウム砥粒含有量:10質量%)50g、および蒸留水(c)を1Lメスシリンダー中で混合し、マグネチックスターラーで撹拌しながら、塩酸(和光純薬工業株式会社製)を加えてpHを5.0とした後、蒸留水を加えてCMP用スラリー全量を1,000gとして、エチレンジアミン四酢酸の含有量が0.4質量%であり、研磨砥粒(b)の含有量が0.5質量%であるCMP用スラリーを得た。
【0102】
比較例3
(重合体の合成)
環状オリゴ糖および/またはその誘導体(a−1)の代わりにグルコース(和光純薬工業株式会社製)50g、および化合物(a−2)としてエチレンジアミン四酢酸(同仁化学研究所製)50gを用いて、重合体を合成した。詳しくは、これらを1L合成フラスコ中で0.5Lの蒸留水に溶解させ、その中に硫酸(和光純薬株式会社製)0.5gを加えた。反応系を80℃に昇温し、水を除去し、乾固させて、グルコースおよびエチレンジアミン四酢酸に由来する構造単位を含む重合体を得た。
【0103】
(CMP用スラリーの調製)
重合体(a)の代わりに上記のようにして得られた重合体を使用したこと以外は実施例1と同様にして、CMP用スラリーを調製した。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
【表3】
【0107】
【表4】
【0108】
表1〜4に示す上記実施例および比較例の結果から明らかなように、本発明のCMP用スラリーを用いれば、ジャスト研磨後の段差および過剰研磨後の段差増加量を抑制しながら、効率的に研磨することができる。
【符号の説明】
【0109】
1 基板
2 酸化絶縁膜(酸化ケイ素など)
3 ストッパ膜(窒化ケイ素など)
4 溝(エッチング部分)
5 絶縁膜(酸化ケイ素など)
6 シャロー・トレンチ分離領域
D1 初期段差
D2 段差
D3 段差増加量
図1
図2
図3
図4
図5