(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図1は本発明の自動分析装置の一実施形態の試薬容器蓋開閉装置近傍の斜視図、
図2はこれを撹拌混合位置で切断した断面図である。
【0012】
図1及び
図2に示した自動分析装置は、臨床検査における生化学分析や免疫分析等の化学分析を自動で実行するものである。ここでは、試料の分析に磁性粒子試薬を用いる自動分析装置を例に挙げて説明するが、試薬の種類等に特に限定はない。
【0013】
この自動分析装置は、試料の分析に使用する試薬を収容した3つ一組の試薬容器116−118を複数組搭載可能な試薬ディスク(容器搬送装置)120と、この試薬ディスク120上の分注撹拌位置113にある試薬容器116−118の蓋101を開閉する試薬容器蓋開閉装置121とを備えている。
【0014】
試薬容器116−118は、試薬ディスク120上に放射状に配置される。試薬ディスク120には、外周ディスク110と内周ディスク111が備えられていて、外周ディスク110のみが鉛直軸周りに水平回転する。内周ディスク111は固定されていて、当面は使用する予定のない試薬容器116−118をストックしておくストック位置112と、試薬の分注及び撹拌を行う上記の分注撹拌位置113とを備えている。分注撹拌位置113には、
図1に丸で囲ったように外周ディスク110上の径方向に隣接する位置も含まれる。この分注撹拌位置113では、試薬容器内外周移動手段(図示せず)により、分析処理のために試薬容器116−118を内周ディスク111及び外周ディスク110間で移動させることができる。試薬ディスク120には、外周ディスク110及び内周ディスク111を跨ぐようにしてフレーム114が架設されていて、このフレーム114に試薬容器蓋開閉装置121が固定され分注撹拌位置113の上方に配設されている。
【0015】
この自動分析装置で分析処理を行う場合、例えば試薬容器116に磁性粒子試薬、試薬容器117,118に異なる試薬A,Bをそれぞれ収容し三種類の試薬を1セットとしたとき、まず、試薬A,Bの少なくとも一方を検体(試料)に混合して一定時間加温して反応を進行させる。その後、磁性粒子試薬と必要に応じて試薬A,Bのいずれかを混合しさらに一定時間加温して反応を進行させる。自動分析装置では、こうして生成された反応液を後段の分析手段(図示せず)によって分析する。但し、分析項目によって、各試薬の混合順序や加温時間が変わる場合、また、必要に応じて検体の希釈や分析前の洗浄処理等を実行する場合もある。
【0016】
また、試薬をそれぞれ分注、撹拌する試薬吸引用プローブ108(
図3参照)及び試薬撹拌棒109(同)は、外周及び内周ディスク110,111上の各コンテナ100の目的の試薬容器116−118に同時にアクセス可能である。分注撹拌位置113の外周ディスク110側は、この位置にある試薬容器116−118のうちの目的の容器に試薬吸引用プローブ108をアクセスして試薬を分注する位置であり、分注撹拌位置113の内周ディスク111側は、この位置にある試薬容器116の磁性粒子試薬を試薬撹拌棒109で撹拌する位置である。この時、内周ディスク側111の試薬容器116内の磁性粒子を試薬撹拌棒109で撹拌している間に、外周ディスク側110において、試薬容器116−118のうち、分析項目に応じて任意の1ボトルもしくは複数ボトル内の試薬を試薬吸引用プローブ108で吸引・分注することが可能である。分注撹拌位置113では基本的に次のサイクルで使用する試薬を撹拌する。つまり、現在の分析サイクルから次の分析サイクルに移行する際、磁性試薬の撹拌処理が終了したコンテナ100を試薬容器内外周移動手段(図示せず)によって内周ディスク111上から外周ディスク110上に移動させ、次の分析サイクルで撹拌済みの磁性粒子試薬が分注される。但し、例えば緊急処理の場合や分析項目によっては、内周ディスク111上の試薬容器116−118から試薬を分注する場合もある。この時には、内周ディスク側111の試薬容器116内の磁性粒子を試薬撹拌棒109で撹拌している間に、内周ディスク側111の試薬容器117−118のうち、分析項目に応じて任意の1ボトルもしくは2ボトル内の試薬を試薬吸引用プローブ108で吸引・分注することが可能である。また、内周ディスク側111の試薬容器116内の磁性粒子を試薬撹拌棒109で撹拌していない場合には、内周ディスク側111の試薬容器116−118のうち、分析項目に応じて、任意の1ボトルもしくは複数ボトル内の試薬を試薬吸引用プローブ108で吸引・分注することが可能である。試薬吸引用プローブ108および試薬撹拌棒109の試薬容器116−118へのアクセスに関しては、試薬蓋開閉装置121によって、アクセス直前に必要な試薬容器のみの蓋を開け、アクセス終了直後に開けていた蓋を閉めることができる。試薬蓋開閉装置121の詳細な動作に関しては後述する。
【0017】
なお、試薬ディスク120の外周は試薬保冷庫115で覆われていて、試薬容器116−118内の試薬を保冷できるようになっている。また、
図1及び
図2では図示していないが、試薬ディスク120、試薬容器蓋開閉装置121及び試薬保冷庫115を含む上記全ての構成要素を上から覆うカバーが設けられていて、断熱による保冷効率向上、ホコリやゴミの侵入の防止等が図られている。
【0018】
図3は本発明の試薬容器蓋開閉装置の全体構成を示す斜視図、
図4は正面図(試薬ディスク120の回転方向から見た図)である。
【0019】
試薬容器蓋開閉装置121は、フレーム114に固定されたユニットベース107と、このユニットベース107に連結したフック基部104と、このフック基部104をユニットベース107に対して試
薬容器116−118の蓋101の開閉方向に平行移動させる蓋開閉用駆動装置(フック基部駆動装置)106と、フック基部104に設けた複数のフック102とを備えている。特に図示していないが、フック基部104には、各フック102をフック基部104に対して個別に揺動させ、各試
薬容器116−118の蓋101に対して対応するフックを係脱させる複数のフック用駆動装置が備えられている。
【0020】
ここで、一組の試薬容器116−118は1つのコンテナ100にセットされており、それぞれに異なる試薬を入れることで、一つのコンテナ100に3種類の試薬が保持される。本実施形態において、分注撹拌位置113には、試薬容器116−118が試薬ディスク120の径方向に2セット並ぶ。試薬容器116−118は、分注撹拌位置113では設置位置で動かないように固定されるものとするが、多少のガタは許容されることとする。
【0021】
なお、本実施形態では3つで1セットの試薬容器116−118を分注撹拌位置113に二組並べて配置しているが、試薬ディスク120の大きさに応じて組数が増減する場合があり、分注撹拌位置113には試薬容器116−118が一組しか配置できない構成となる場合、或いは三組以上配置できる構成となる場合もある。また、1つのコンテナ100に3つの試薬容器116−118が搭載される場合を例に挙げて説明したが、試薬ディスク120やコンテナ100によっては、コンテナ100にセットされる試薬容器が2本になることも4本以上になることもあり得る。また、複数の試薬容器が1つのコンテナ100で1セットを構成する場合に限らず、他の試薬容器と組になっていない単体の試薬容器が個別に分注撹拌位置113にセットされる構成となる場合もある。
【0022】
ユニットベース107は先のフレーム114に対してボルト等で固定されていて、試薬ディスク120に対して固定した位置関係にある。本実施形態では、このユニットベース107上に蓋開閉用駆動装置106がブラケット等を適宜介して固定されている。蓋開閉用駆動装置106には、モータやシリンダ等の各種駆動装置が適用可能であるが、本実施形態ではパルスモータを使用している。
【0023】
フック基部104は、2本のアーム105で構成した平行リンクで蓋開閉用駆動装置106に連結されており、駆動装置106の動作によってアーム105が回動すると試薬容器116−118の蓋101の開閉方向に平行移動する(
図7に蓋101の開方向が点線矢印で、フック基部104の移動方向が実線矢印で示されている)。本実施形態の場合、蓋101の開閉動作は円弧運動であるため、フック基部104も円弧軌跡を描いて平行移動する。
【0024】
フック102は、試薬容器116−118の蓋101を引っ掛けるための鉤爪状の部品であり、分注撹拌位置113に並び得る試薬容器116−118の数量に合わせて試薬ディスク120の径方向に沿ってフック基部104の下部に6個設けられている。勿論、フック102の数量は分注撹拌位置113に並び得る試薬容器116−118の数量によって設計変更され得る。フック102はフック用軸103を介してフック基部104内の対応のフック用駆動装置(図示せず)の出力軸に連結されていて、フック用駆動装置の動作によってフック用軸103を中心に下向きの係合位置と横向きの脱離位置との間で回動変位する。フック用駆動装置には、モータやシリンダ等の各種駆動装置が適用可能であるが、本実施形態ではパルスモータを使用している。
【0025】
なお、ここで言う「係合位置」とは、フック102が下向きの姿勢になり、試薬容器116−118の蓋101にフック102が掛かり得る位置を言う。反対に「脱離位置」とは、フック102が横向きの姿勢になり、蓋101から外れる、又は蓋101に掛からない位置を言う。
【0026】
次に上記構成の試薬容器蓋開閉装置121の動作を説明する。
【0027】
本実施形態の試薬容器蓋開閉装置121は、概略すれば、6つの試薬容器116−118のうち開閉したいものの蓋101に対応のフック102を選択的に係合させ、その状態でフック基部104を開方向又は閉方向に変位させることによってフック102に係合した蓋101のみを開閉する。例えば、特定の試薬容器(ここでは内周ディスク111上の試薬容器117とする)の蓋101を開ける場合、フック基部104が下位置(閉方向に下がった位置)にある状態で対応のフック102を係合位置に下ろし、開閉用駆動装置106を駆動してフック基部104を上位置(開方向に上がった位置)に変位させ、当該フック102を掛けた試薬容器117の蓋101のみを引き上げる。反対に試薬容器117の蓋101を閉める場合、対応のフック102を係合位置に下ろした状態で開閉用駆動装置106を駆動し、フック基部104を上位置から閉方向に変位させ、当該フック102で試薬容器117の蓋101を押し下げる。すなわち、試薬容器117の蓋101を開けて次の動作で閉めるときは、開動作後の姿勢からそのままフック基部104を閉方向に変位させて下位置に移行させれば良い。
【0028】
続いて
図4−
図8に蓋開閉のシーケンスを具体的に示す。
図4−
図8においては、太い実線矢印はフック基部104の動作、細い点線矢印は各フック102の動作、点線矢印は試薬容器116−118の各蓋101の動作をそれぞれ表している。また、
図4−
図8では、説明の便宜上、左のフック102及び蓋101について左から順に添え字a−fを付けて説明する。
【0029】
まず、
図4はフック基部104が基準位置にある状態を示しており、試薬容器116−118の蓋101a−101fはいずれも閉じていて、フック基部104は上位置で静止し、フック102a−102fは鉛直下向きの姿勢を採っている。
【0030】
図5はフック102a−102fを試薬容器116−118の蓋101a−101fへ引っ掛ける直前の状態を表しており、先に
図4に示した状態から、アーム105の動作によりフック基部104を上位置から下位置へ移動させるとともに、対応する蓋101a−101fと接触しないようにフック102a−102fを図中時計回りに所定角度だけ回動変位させている。
【0031】
図6はフック102a−102fを試薬容器116−118の蓋101a−101fへ引っ掛けた状態を表しており、先に
図5で示した状態から、フック102a−102fを係合位置に変位させて対応の試薬容器116−118の蓋101a−101fへ引っ掛けている。
【0032】
図7は各試薬容器116−118の蓋101a−101fを開ける様子を表しており、
図6の状態から蓋開閉用駆動装置106を駆動し、フック基部104を開方向に変位させて上位置に移行させている。
【0033】
図8は各試薬容器116−118の蓋101a−101fを閉じる様子を表しており、
図7の状態から蓋開閉用駆動装置106を駆動し、フック基部104を閉方向に変位させて下位置に移行させている。この際には、フック基部104を
図6に示したよりも若干下側へ移動させ、フック102a−102fの根元部分で蓋101a−101fを下方向へ押すことで、試薬容器116−118の蓋101a−101fを確実に閉める。
【0034】
図8の状態から
図4の状態に戻るには、まずフック102a−102fを脱離方向へ変位させて
図5の状態とし、その後フック基部104を開方向に変位させて上位置に移行させるとともに、フック102a−102fを係合方向に変位させて鉛直下向きの姿勢に戻す。
【0035】
なお、
図4−
図8では6つの試薬容器116−118の蓋101a−101fを同時に開閉するシーケンスを表したが、勿論、本実施形態によれば、フック基部104を変位させる際のフック102a−102fの状態を個別に変更することで、試薬容器116−118の蓋101a−101fを選択的に開閉することができる。例えば、内周ディスク111側(
図4−
図11中左側)のコンテナ100上の試薬容器117のみを開閉する場合、先のシーケンスで
図5から
図6の状態に移行する際に、フック102a,102c−102fは
図5の姿勢を保ったまま試薬容器117に対応するフック102bのみを
図6のように鉛直方向に変位させれば、
図7の動作に移行した際に蓋101bのみが開く。この蓋101bを閉じる際には、そのまま
図8の動作を実行すれば、フック102a,102c−102fは傾斜していて対応の蓋101a,101c−101fに干渉しない状態にあり、係合位置にあるフック102bで蓋101bを閉じることができる。
【0036】
また、本実施形態では、試薬容器116−118の蓋101a−101fを開けた際には、開放された試薬容器に試薬吸引用プローブ108或いは試薬撹拌棒109がアクセスする。例えば、1セットの試薬容器116−118のうちの試薬容器116に沈殿し易い磁性粒子を含んだ溶液を入れた場合、均一な溶液を分注できるようにするために試薬撹拌棒109によって試薬容器116内の当該溶液を撹拌する必要がある。この撹拌には比較的長時間が必要で、試薬撹拌棒109は試薬吸引用プローブ108よりも長く試薬容器にアクセスする必要がある。つまり、溶液の違いにより試薬容器116と試薬容器117,118とでアクセス時間に差異が生じるところ、例えば試薬容器116に試薬撹拌棒109を、試薬容器117に試薬吸引用プローブ108を同時にアクセスしても、撹拌の途中で吸引が終わってしまう。したがって、試薬容器116の試薬の撹拌の途中でも、試薬を吸引し終えた試薬容器117の蓋101bは極力早く閉めて試薬の蒸発や劣化を抑えたい。1つ(又は複数の)試薬容器内の溶液の攪拌と、他の1つ(又は複数の)試薬容器内の溶液の吸引を同時に、しかし、独立に行う場合、作業工程の流れを最適にすることができ、また、試料の処理能力を増加させることができる。なぜなら、異なる試薬容器内の溶液に実行される所要時間の異なる作業(例えば攪拌や吸引)を同時に且つ互いに独立に実行することができるからである。
【0037】
このような場面でも、本実施形態の試薬容器蓋開閉装置121は対応可能である。
【0038】
例えば、特定の試薬容器の蓋(例えば蓋101a)が開いた状態を維持したまま他の試薬容器の蓋(蓋101b−101f)を閉める場合、
図9に示したように、フック102b−102fを係合位置にした状態で、開閉用駆動装置106を駆動してフック基部104を閉方向に移動させつつ、フック102aが蓋101aから外れないようにフック102aを脱離方向に変位させる。これにより、一番左の試薬容器116の蓋101aを開けた状態のまま、他の試薬容器の蓋101b−101fを閉めることができる。つまり、試薬容器116内の磁性粒子を試薬撹拌棒109が撹拌している間、試薬容器116の蓋101aを開けたままで、試薬吸引用プローブ108による試薬の吸引・分注が終了した他の試薬容器の蓋を閉じることができる。その際には蓋101aを開けたままにしておくために、フック102aは水平程度まで動く。
【0039】
その後、開けたままの蓋101aを閉める際には、
図10に示したように、まず、フック基部104を僅かに上昇させ、蓋101b−101fを押さえたフック102b−102fを脱離方向に回動変位させて蓋101b−101fから外す。次に
図11に示したように、フック基部104の上位置に変位させるのに同期させて各フック102a−102bを係合位置に下げ、先に
図4に示した基準位置の姿勢で蓋101aのみをフック102aで保持した状態とする。最後に、
図12に示したように、フック基部104を下位置に変異させるのに同期させて対応の蓋101b−101fが閉じた状態にあるフック102b−102fを脱離方向に所定角度だけ回動変位させ、フック102aで蓋101aを押さえて閉める。その後、基準位置に戻す場合には、
図5の状態を経由して
図4の状態に復帰させることができる。
【0040】
次に、自動分析装置の分析処理の中での試薬
容器蓋開閉装置121の動作について説明する。
【0041】
特に図示していないが、本実施形態の自動分析装置には、試料の分析依頼情報を基に試
薬容器蓋開閉装置121の開閉用駆動装置106及びフック用駆動装置を制御し、試薬の分注及び撹拌の各実行時に対応の試薬容器の蓋101を開けるとともに、各実行終了時に対応の試薬容器の蓋101を閉める制御装置が備えられている。
【0042】
図13はこの制御装置による自動分析装置の分析処理中の試薬
容器蓋開閉装置121の動作制御の一例を表したフローチャートである。
図13において、一重線で囲った枠は試薬ディスク120、試薬吸引用プローブ108、又は試薬撹拌棒109の動作を表し、二重線で囲った枠は試
薬容器蓋開閉装置121の動作を表している。
【0043】
(ステップS101)
このステップでは、まず、外周ディスク110を回転させ、1サイクル後に分注する予定の磁性粒子試薬を入れた試薬容器116を搭載したコンテナ100を外周ディスク110上の分注撹拌位置113に移動させる。この時点では、内周ディスク111上の分注撹拌位置113にコンテナ100は設置されていない。なお、
図13に関する以下の説明において、便宜上、このステップS101で外周ディスク110上の分注撹拌位置113に設置したコンテナ100を「コンテナ(N+1)」と記載する。
【0044】
(ステップS102)
このステップでは、外周ディスク110上の分注撹拌位置113にあるコンテナ(N+1)を試薬容器内外周移動手段(図示せず)によって内周ディスク111上の分注撹拌位置113に移動させる。
【0045】
(ステップS103)
このステップでは、外周ディスク110を回転させ、当サイクルで分注する予定の磁性粒子試薬を入れた試薬容器116を搭載したコンテナ100を外周ディスク110上の分注撹拌位置113に移動させる。便宜上、このステップS103で外周ディスク110上の分注撹拌位置113に設置したコンテナ100を以下「コンテナ(N1)」と記載する。コンテナ(N1)上の試薬容器116の磁性粒子試薬は前の分析サイクルで撹拌処理されたものである。
【0046】
(ステップS104)
このステップでは、内周ディスク111に設置されたコンテナ(N+1)上の試薬容器116の蓋101a、及び外周ディスク110に設置されたコンテナ(N1)上の試薬容器116−118の蓋101d−101fの少なくとも1つ(目的の試薬容器の蓋)を、試薬
容器蓋開閉装置121を制御して同時に開ける。一度に分注する試薬は1種又は2種であり、このステップS104では、コンテナ(N1)上の試薬容器116−118のうち1つ又は2つが開放される。
【0047】
(ステップS105)
このステップでは、次サイクルで分注に供されるまで磁性粒子試薬が沈殿しないように、コンテナ(N+1)上の試薬容器116に試薬撹拌棒109をアクセスさせ、できるだけ長時間磁性粒子試薬を撹拌する。
【0048】
(ステップS106)
このステップは、ステップS105と同時又は僅かに前後して開始され、1又は2の試薬吸引用プローブ108をコンテナ(N1)上の目的の試薬容器にアクセスさせ、分注処理を実行する。
【0049】
(ステップS107)
このステップでは、試薬吸引用プローブ108による分注が完了したコンテナ(N1)上の試薬容器の蓋を閉める。この時点では、コンテナ(N+1)側の撹拌処理が継続しているため、コンテナ(N+1)上の試薬容器116の蓋101aを開けた状態のままコンテナ(N1)側のみ試薬容器の蓋を閉める。
【0050】
(ステップS108)
このステップでは、外周ディスク110を回転させ、当サイクルで分注する予定の試薬A又は/及びBを入れた試薬容器117,118を搭載したコンテナ100を外周ディスク110上の分注撹拌位置113に移動させる。このとき、コンテナ(N2)が分注撹拌位置113に設置されるのと同時に、コンテナ(N1)が分注撹拌位置から移動する。便宜上、このステップS108で外周ディスク110上の分注撹拌位置113に設置したコンテナ100を以下「コンテナ(N2)」と記載する。
【0051】
(ステップS109)
このステップでは、内周ディスク111に設置されたコンテナ(N+1)上の試薬容器116の蓋101aを開けたまま、外周ディスク110に設置されたコンテナ(N2)上の試薬容器117,118の蓋101e及び/又は101f(目的の試薬容器の蓋)を、試薬
容器蓋開閉装置121を制御して開ける。
【0052】
(ステップS110)
このステップでは、ステップS106と同様に、1又は2の試薬吸引用プローブ108をコンテナ(N2)上の目的の試薬容器にアクセスさせ、分注処理を実行する。この試薬吸引用プローブ108によるコンテナ(N2)の分注が完了するのと同時又は僅かに前後してステップS105の撹拌処理が終了する。
【0053】
(ステップS111)
このステップでは、内周ディスク111に設置されたコンテナ(N+1)上の試薬容器116の蓋101a、及び外周ディスク110に設置されたコンテナ(N2)上の試薬容器の蓋101e及び/又は101fを、試薬
容器蓋開閉装置121を制御して同時に閉める。
【0054】
(ステップS112)
このステップでは、当サイクルで磁性粒子試薬を撹拌したコンテナ(N+1)を、試薬容器内外周移動手段(図示せず)によって外周ディスク110上の分注撹拌位置113に移動させる。
【0055】
以上のサイクルを繰り返し実行することで、一連の分析処理が進行していく。
【0056】
なお、
図13で説明したフローにおいて、コンテナ(N1)とコンテナ(N2)の分注の順序が入れ替わる場合もある。この場合、コンテナ(N1)とコンテナ(N2)が入れ替わるだけで手順に違いは生じない。
【0057】
本実施形態によれば、以上説明したように複数のフック102a−102fをフック基部104に設けて各試薬容器116−118の蓋101a−101fにフック102a−102fを個別に係脱できるようになし、フック基部104を単一の蓋開閉用駆動装置106で蓋101a−101fの開閉方向に変位させることによって、フック102a−102fの係脱のパターンによって各試薬容器116−118の蓋101a−101fを任意に開閉することができる。
【0058】
したがって、目的の試薬容器の蓋を開けるために、開ける必要のない他の試薬容器の蓋を開けずに済む。また、例えば撹拌処理と分注処理を並行して実行するときのように一方の処理が早く終了した場合には、他方の処理の終了を待たずに処理の終了したものから順に蓋を閉めることができる。このように、本実施形態によれば、試薬容器の無駄な開放時間を短縮することができる。
【0059】
ここで、例えば試薬容器116−118の各蓋101a−101fに個々に対応するモータを設け、これらモータの出力軸を各蓋101a−101fの軸に対し係脱できる構成とした場合、個々のモータを制御することで蓋101a−101fを選択的に開閉することができ得る。しかしながら、蓋101a−101fの開閉には相応のトルクを要し、それだけのトルクを有するモータを多数用意するのは好ましくない。また、蓋101a−101fの軸にモータの出力軸を係脱するには、試薬容器116−118の側方に蓋開閉装置を設置する必要があるところ、試薬ディスクにそのようなスペースを確保することは困難である。
【0060】
それに対し、本実施形態によれば、フック102a−102fで上方から蓋101a−101fに引っ掛け、フック基部104の昇降運動によって蓋101a−101fを開閉する機構であるため、設置スペースの問題がクリアできる。また、蓋101a−101fの開閉には1つの蓋開閉用駆動装置106を用いており、フック用駆動装置についてはフック102a−102fを回動変位させる程度の小さなもので足りるので、十分なトルクを有するモータを多数設ける必要もない。
【0061】
また、本実施形態によれば、蓋開閉用駆動装置106の駆動量(回転角)を調整(設定値を変更)することで、試薬容器116−118の蓋101a−101fを閉める際の蓋101a−101fの押し下げ量が調整可能である。こうしてフック基部104の押下量を調整することによって蓋101a−101fを閉じる力を加減することができ、
図14−
図22に示したように、試薬容器116−118の蓋101a−101fを強く閉めずに軽く閉めることができる。
図14−
図22は、
図4−
図12に対応しており、蓋101a−101fを軽く閉める場合でも、
図4−
図22で説明したのと同様の動作を実行することができる。蓋101a−101fを軽く閉める動作は、蓋開閉用駆動装置106の回転角の設定が異なるのみでシーケンス自体は
図4−
図12で説明したのと同じである。
【0062】
図14−
図22のように試薬容器116−118の蓋101a−101fを軽く閉めることができることにより、
図4−
図12で説明した動作に比べて蓋101a−101fを開閉する所要動力が小さくて足り、また蓋開閉用駆動装置106の回転角が小さくなることによりフック基部104の昇降動作の所要時間が短縮されるメリットがある。
【0063】
もっとも、蓋101a−101fを軽く閉めた状態では、試薬容器116−118の気密性が十分に確保されず、この状態が長時間継続すると僅かずつながら内部の試薬の蒸発・劣化が進行する恐れがある。したがって、試薬容器蓋開閉装置121の
図14−
図22に示した使い方は、例えば次のような場面で有用である。
【0064】
例えば、自動分析装置では一般に、分析項目、分析順序、分析試料数等の情報が分析開始前に入力されるため、試薬容器毎の使用時期や使用回数等のスケジュールの情報が事前に分かる。したがって、自動分析装置に備えられた制御装置(図示せず)は、分析開始後、試薬容器蓋開閉装置121を制御してある試薬容器の蓋101を開けたら、事前に入力された分析の依頼情報を基に当該試薬容器のスケジュールを参照し、その後の使用機会がまだ残されている場合には使用後に当該試薬容器の蓋101を軽く閉めておき、その後の使用機会がない場合には使用を終えた時点で当該試薬容器の蓋101を完全に閉める。また、当該試薬容器を使用する次回以降の機会が訪れたときには、一連のスケジュール情報によって当該試薬容器の蓋101が前回使用後に軽く閉めたままの状態であることが認識されるため、制御装置は、蓋が軽く閉まった状態であることを判断し、蓋開閉用駆動装置106の動作量を自動的に切り換えることができる。このような構成とすることにより、一連の分析スケジュールの中で、各試薬容器につき最初の使用機会を終えてから最後の使用機会を終えるまでの間は蓋を軽く閉めるに止め、各々最後の使用機会を終えた時点で完全に蓋101を閉じることができる。したがって、運転中の蓋開閉時間の短縮による処理効率の向上や所要動力の低減を図りつつも、自動分析装置の運転終了時には自動的に全試薬容器の蓋101が完全に閉じた状態とすることができ、例えば、その後一晩もしくは数日放置しても試薬の蒸発や劣化が抑えられる。
【0065】
なお、以上においては、試薬容器116−118の蓋101a−101fの開閉方向が、試薬ディスク120の中心軸を含む平面内で試薬ディスク120の内周側を支点に回動する構成であったため、試薬容器蓋開閉装置121のフック基部104の動作方向もこれに対応する構成となったが、分注撹拌位置113における試薬容器116−118の蓋101a−101fの軸の姿勢が変更されればフック基部104の動作方向もそれに応じて変更する必要がある。フック基部104の動作方向は、蓋101a−101fの動作方向に対応していれば、特に限定されない。フック102a−102fの回動方向や姿勢についても、蓋101a−101fの構成(例えば引っ掛け部分の構成)や軸の姿勢によって適宜設計変更可能である。
【0066】
また、上記自動分析装置では、数十セットの試薬容器116−118を試薬保冷庫115に搭載し、試薬容器116−118の蓋101を開閉する位置、試薬吸引用プローブ108や試薬撹拌棒109がアクセスする位置へ試薬容器116−118を移動させて、各処理を実行することが想定される。しかし、試薬容器116−118を動かさずに、試薬容器蓋開閉装置121、試薬吸引用プローブ108、及び試薬撹拌棒109を移動させる(この場合、移動先が分注撹拌位置113になる)構成とする場合もあり、この場合にも本発明は適用可能である。前記内容は、例えばストック位置112に対して適用することが可能であり、あるいは、試薬吸引用プローブ108、試薬撹拌棒109、および試薬容器蓋開閉装置121を、ストック位置112の付近へ別途設置することで、ストック位置112に設置されている試薬容器100に対しても、試薬容器の蓋開閉、試薬の吸引・分注、磁性粒子の撹拌が可能となり、試薬容器100を保管しておくだけでなく分析にも利用できる。このような拡張は、特に動かすと劣化しやすいような敏感な試薬に対して有効である。また前記のような拡張ができない場合でも、できるだけ試薬容器の移動を少なくするために、ストック位置112の一部を敏感な試薬を含む試薬容器の保管位置として設定し、その試薬容器を使って分析するときのみ、外周ディスク110および分注撹拌位置113へ移動させ分析処理を実施した後すぐに、ストック位置112へ戻して保管しておくことも可能である。
上記記載は実施例についてなされたが、本発明はそれに限らず、本発明の精神と添付の請求の範囲の範囲内で種々の変更および修正をすることができることは当業者に明らかである。