(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明者等は、磁気ブラシによって感光体表面を傷つけることなく、現像領域へのトナー供給量を増加できないか鋭意検討を重ねた結果、数個のフェライト球形粒子が結合した結合粒子を、キャリア芯材中に所定の個数割合含有させればよいことを見出し、本発明を成すに至った。すなわち、本発明に係るフェライト粒子からなるキャリア芯材は、球形粒子が2個〜5個の結合した結合粒子が5個数%〜20個数%含まれ、前記結合粒子は、粒径の最も大きい母粒子と、前記母粒子よりも粒径の小さい1個〜4個の子粒子とが結合した粒子であり、前記子粒子の少なくとも1つの子粒子の粒径は、前記母粒子の粒径の1/2よりも大きいことを特徴とする。なお、キャリア芯材は、フェライト粒子からなる
粉体であり、ここでは、本発明にかかる結合粒子以外のフェライト粒子を通常粒子とする。
【0020】
母粒子と子粒子とが結合した、球形から大きく外れた異形な結合粒子がキャリア芯材中に所定の個数割合で含まれていると、通常の球形粒子と結合粒子との間にトナーが取り込まれる空間が生じ得る。そして、通常の球形粒子と結合粒子との間の空間に取り込まれたトナーは、現像ローラの回転によって現像領域に搬送されると共に、前記空間に取り込まれていたトナーが磁気ブラシの表面に現れ現像に寄与する。加えて、従来の不等多角形状や塊状のキャリアと異なって、本発明で使用する結合粒子は、球形粒子同士が結合した粒子であるため角部がない。このため、感光体表面を磁気ブラシで摺擦しても粒子の角部で感光体表面が傷つくことはない。また、少なくとも1つの子粒子の粒径が母粒子の粒径に対して1/2より大きいため、トナーが取り込まれ得る通常の球形粒子と結合粒子との間の空間及び結合粒子同士の空間が大きい。これにより、より多くのトナーが現像領域に搬送され、「現像メモリー」の発生が効果的に抑制されるようになる。
【0021】
本発明で使用する結合粒子において、母粒子と子粒子の組成は、同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0022】
このような結合粒子は、例えば、後述するキャリア芯材の製造工程において、焼成温度での保持時間を長くしたり、焼成後の解粒操作を調整することにより得ることができる。この方法によれば、キャリア芯材中の結合粒子の含有割合を容易に調整することでき
る。
【0023】
キャリア芯材における結合粒子の含有割合は5個数%〜20個数%である。結合粒子の含有割合が5個数%未満であると、現像領域へのトナー供給量が不十分となることがある一方、結合粒子の含有割合が20個数%を超えると、キャリア芯材の流動性が悪くなりすぎて磁気ブラシ内でのキャリアの循環移動が十分に行われず、画像形成速度が速くなった場合に十分な画像濃度が得られない。より好ましい結合粒子の含有割合は10個数%〜20個数%の範囲である。
【0024】
本発明のキャリア芯材における前記結合粒子以外の通常粒子の表面の最大山谷深さRzは1.5μm以上であるのが好ましい。通常粒子表面の最大山谷深さRzが1.5μm以上であると、通常粒子同士の間に形成される空間も大きくなり、より多くのトナーがこの空間に取り込まれて現像領域へのトナー搬送量が増え、「現像メモリー」などの画像不具合が一層抑制される。粒子表面の最大山谷深さRzの好ましい上限値は2.5μmであり、より好ましくは2.0μmである。
【0025】
本発明のキャリア芯材の体積平均粒径としては、25μm以上50μm未満の範囲が好ましく、より好ましくは30μm以上40μm以下の範囲である。
【0026】
本発明のキャリア芯材を構成するフェライト粒子の組成に特に限定はなく、組成式M
XFe
3−XO
4(但し、Mは、Mg,Mn,Ca,Ti,Sr,Cu,Zn,Niからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素、0≦X≦1)で表されるものが例示される。これらの中でも、一般式(MnO)x(MgO)y(Fe
2O
3)zで表され、x,y,zがそれぞれ45mol%〜55mol%,0〜20mol%,30mol%〜50mol%であり、MnO及び/又はMgOの一部をSrOで0.15mol%〜1.0mol%置換したものが好ましい。
【0027】
本発明のキャリア芯材の製造方法に特に限定はないが、以下に説明する製造方法が好適である。
【0028】
まず、Fe成分原料、M成分原料を秤量する。なお、MはMg、Mn、Ca、Ti、Cu、Sr、Zn、Ni等の2価の価数をとり得る金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素である。Fe成分原料としては、Fe
2O
3等が好適に使用される。M成分原料としては、MnであればMnCO
3、Mn
3O
4等が使用でき、MgであればMgO、Mg(OH)
2、MgCO
3が好適に使用できる。また、Ca成分原料としては、CaO、Ca(OH)
2、CaCO
3等から選択される少なくとも1種の化合物が好適に使用される。Sr成分原料としては、SrCO
3、Sr(NO
3)
2などが好適に使用される。
【0029】
次いで、原料を分散媒中に投入しスラリーを作製する。本発明で使用する分散媒としては水が好適である。分散媒には、前記仮焼成原料の他、必要によりバインダー、分散剤等を配合してもよい。バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコールが好適に使用できる。バインダーの配合量としてはスラリー中の濃度が0.5質量%〜2質量%程度とするのが好ましい。また、分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸アンモニウム等が好適に使用できる。分散剤の配合量としてはスラリー中の濃度が0.5質量%〜2質量%程度とするのが好ましい。その他、潤滑剤や焼結促進剤等を配合してもよい。スラリーの固形分濃度は50質量%〜90質量%の範囲が望ましい。より好ましくは60質量%〜80質量%である。60質量%以上であれば、造粒品中に粒子内細孔が少なく、焼成時の焼結不足を防ぐことができる
【0030】
なお、秤量した原料を混合し仮焼成し解粒した後、分散媒に投入しスラリーを作製してもよい。仮焼成の温度としては750℃〜900℃の範囲が好ましい。750℃以上であれば、仮焼による一部フェライト化が進み、焼成時のガス発生量が少なく、固体間反応が十分に進むため、好ましい。一方、900℃以下であれば、仮焼による焼結が弱く、後のスラリー粉砕工程で原料を十分に粉砕できるので好ましい。また、仮焼成時の雰囲気としては大気雰囲気が好ましい。
【0031】
次に、以上のようにして作製されたスラリーを湿式粉砕する。例えば、ボールミルや振動ミルを用いて所定時間湿式粉砕する。粉砕後の原材料の平均粒径は5μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以下である。振動ミルやボールミルには、所定粒径のメディアを内在させるのがよい。メディアの材質としては、鉄系のクロム鋼や酸化物系のジルコニア、チタニア、アルミナなどが挙げられる。粉砕工程の形態としては連続式及び回分式のいずれであってもよい。粉砕物の粒径は、粉砕時間や回転速度、使用するメディアの材質・粒径などによって調整される。
【0032】
そして、粉砕されたスラリーを噴霧乾燥させて造粒する。具体的には、スプレードライヤーなどの噴霧乾燥機にスラリーを導入し、雰囲気中へ噴霧することによって球状に造粒する。噴霧乾燥時の雰囲気温度は100℃〜300℃の範囲が好ましい。これにより、粒径10μm〜75μmの球状の造粒物が得られる。次いで、得られた造粒物を振動ふるいを用いて分級し所定の粒径範囲の造粒物を作製する。
【0033】
次に、前記の造粒物を所定温度に加熱した炉に投入して、フェライト粒子を合成するための一般的な手法で焼成することにより、フェライト粒子を生成させる。焼成温度としては1100℃〜1300℃の範囲が好ましい。焼成温度が1100℃以下であると、相変態が起こりにくくなるとともに焼結も進みにくくなる。また、焼成温度が1300℃を超えると、過剰焼結による過大グレインの発生がするおそれがある。結合粒子の含有割合は、焼成温度での保持時間によっても調整することができ、通常、保持時間を長くすると結合粒子の含有割合は増える。保持時間としては6時間以上が好ましく、8時間以上がより好ましい。前記焼成温度に至るまでの昇温速度としては250℃/h〜500℃/hの範囲が好ましい。焼成工程における酸素濃度は0.05%〜5%の範囲に制御するのが好ましい。
【0034】
このようにして得られた焼成物を解粒する。具体的には、例えば、ハンマーミル等によって焼成物を解粒する。解粒工程の形態としては連続式及び回分式のいずれであってもよい。この解粒処理によっても、結合粒子の含有割合を調整することができる。すなわち、焼成物に与える衝撃力を強く、長くするほど、結合粒子の結合が解消され結合粒子の含有割合は減少する。
【0035】
解粒処理後、必要により、粒径を所定範囲に揃えるため分級を行ってもよい。分級方法としては、風力分級や篩分級など従来公知の方法を用いることができる。また、風力分級機で1次分級した後、振動篩や超音波篩で粒径を所定範囲に揃えるようにしてもよい。さらに、分級工程後に、磁場選鉱機によって非磁性粒子を除去するようにしてもよい。フェライト粒子の粒径としては25μm以上50μm未満が好ましい。
【0036】
その後、必要に応じて、分級後のフェライト粒子を酸化性雰囲気中で加熱して、粒子表面に酸化被膜を形成してフェライト粒子の高抵抗化を図ってもよい(高抵抗化処理)。酸化性雰囲気としては大気雰囲気又は酸素と窒素の混合雰囲気のいずれでもよい。また、加熱温度は、200℃〜800℃の範囲が好ましく、250℃〜600℃の範囲がさらに好ましい。加熱時間は0.5時間〜5時間の範囲が好ましい。
【0037】
以上のようにして作製したフェライト粒子を本発明のキャリア芯材として用いる。そして、所望の帯電性等を得るために、キャリア芯材の外周を樹脂で被覆して電子写真現像用キャリアとする。
【0038】
キャリア芯材の表面を被覆する樹脂としては、従来公知のものが使用でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリ塩化ビニリデン、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ポリスチレン、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、並びにポリ塩化ビニル系やポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エストラマー、フッ素シリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0039】
キャリア芯材の表面を樹脂で被覆するには、樹脂の溶液又は分散液をキャリア芯材に施せばよい。塗布溶液用の溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類溶媒;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒などの1種又は2種以上を用いることができる。塗布溶液中の樹脂成分濃度は、一般に0.001質量%〜30質量%、特に0.001質量%〜2質量%の範囲内にあるのがよい。
【0040】
キャリア芯材への樹脂の被覆方法としては、例えばスプレードライ法や流動床法あるいは流動床を用いたスプレードライ法、浸漬法等を用いることができる。これらの中でも、少ない樹脂量で効率的に塗布できる点で流動床法が特に好ましい。樹脂被覆量は、例えば流動床法の場合には吹き付ける樹脂溶液量や吹き付け時間によって調整することができる。
【0041】
キャリアの粒子径は、一般に、体積平均粒子径で25μm以上50μm未満の範囲、特に30μm以上40μm以下の範囲が好ましい。
【0042】
本発明に係る電子写真用現像剤は、以上のようにして作製したキャリアとトナーとを混合してなる。キャリアとトナーとの混合比に特に限定はなく、使用する現像装置の現像条件などから適宜決定すればよい。一般に現像剤中のトナー濃度は1質量%〜15質量%の範囲が好ましい。トナー濃度が1質量%未満の場合、画像濃度が薄くなりすぎ、他方トナー濃度が15質量%を超える場合、現像装置内でトナー飛散が発生し機内汚れや転写紙などの背景部分にトナーが付着する不具合が生じるおそれがあるからである。より好ましいトナー濃度は3質量%〜10質量%の範囲である。
【0043】
トナーとしては、重合法、粉砕分級法、溶融造粒法、スプレー造粒法など従来公知の方法で製造したものが使用できる。具体的には、熱可塑性樹脂を主成分とする結着樹脂中に、着色剤、離型剤、帯電制御剤等を含有させたものが好適に使用できる。
【0044】
トナーの粒径は、一般に、コールターカウンターによる体積平均粒径で5μm〜15μmの範囲が好ましく、7μm〜12μmの範囲がより好ましい。
【0045】
トナー表面には、必要により、改質剤を添加してもよい。改質剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0046】
キャリアとトナーとの混合は、従来公知の混合装置を用いることができる。例えばヘンシェルミキサー、V型混合機、タンブラーミキサー、ハイブリタイザー等を用いることができる。
【0047】
本発明の現像剤を用いた現像方法に特に限定はないが、磁気ブラシ現像法が好適である。
図10に、磁気ブラシ現像を行う現像装置の一例を示す概説図を示す。
図10に示す現像装置は、複数の磁極を内蔵した回転自在の現像ローラ3と、現像部へ搬送される現像ローラ3上の現像剤量を規制する規制ブレード6と、水平方向に平行に配置され、互いに逆向きに現像剤を撹拌搬送する2本のスクリュー1,2と、2本のスクリュー1,2の間に形成され、両スクリューの両端部において、一方のスクリューから他方のスクリューに現像剤の移動を可能とし、両端部以外での現像剤の移動を防ぐ仕切板4とを備える。
【0048】
2本のスクリュー1,2は、螺旋状の羽根13,23が同じ傾斜角で軸部11,21に形成されたものであって、不図示の駆動機構によって同方向に回転し、現像剤を互いに逆方向に搬送する。そして、スクリュー1,2の両端部において一方のスクリューから他方のスクリューに現像剤が移動する。これによりトナーとキャリアからなる現像剤は装置内を常に循環し撹拌されることになる。
【0049】
一方、現像ローラ3は、表面に数μmの凹凸を付けた金属製の筒状体の内部に、磁極発生手段として、現像磁極N
1、搬送磁極S
1、剥離磁極N
2、汲み上げ磁極N
3、ブレード磁極S
2の5つの磁極を順に配置した固定磁石を有してなる。現像ローラ3が矢印方向に回転すると、汲み上げ磁極N
3の磁力によって、スクリュー1から現像ローラ3へ現像剤が汲み上げられる。現像ローラ3の表面に担持された現像剤は、規制ブレード6により層規制された後、現像領域へ搬送される。
【0050】
現像領域では、直流電圧に交流電圧を重畳したバイアス電圧が転写電圧電源8から現像ローラ3に印加される。バイアス電圧の直流電圧成分は、感光体ドラム5表面の背景部電位と画像部電位との間の電位とされる。また、背景部電位と画像部電位とは、バイアス電圧の最大値と最小値との間の電位とされる。バイアス電圧のピーク間電圧は0.5〜5kVの範囲が好ましく、周波数は1〜10kHzの範囲が好ましい。またバイアス電圧の波形は矩形波、サイン波、三角波などいずれであってもよい。これによって、現像領域においてトナー及びキャリアが振動し、トナーが感光体ドラム5上の静電潜像に付着して現像がなされる。
【0051】
その後現像ローラ3上の現像剤は、搬送磁極S
1によって装置内部に搬送され、剥離電極N
2によって現像ローラ3から剥離して、スクリュー1,2によって装置内を再び循環搬送され、現像に供していない現像剤と混合撹拌される。そして汲み上げ極N
3によって、新たに現像剤がスクリュー1から現像ローラ3へ供給される。
【0052】
なお、
図10に示した実施形態では現像ローラ3に内蔵された磁極は5つであったが、現像剤の現像領域での移動量を一層大きくしたり、汲み上げ性等を一層向上させるために、磁極を8極や10極、12極と増やしてももちろん構わない。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
【0054】
実施例1
Fe
2O
3(平均粒径:0.6μm)7.985kg、Mn
3O
4(平均粒径:0.9μm)3.814kg、SrCO
3(平均粒径:0.6μm)0.112kgを純水5.58kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を30g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm〜75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から粒径50μmを超える粗粒は篩を用いて除去した。
この造粒物を、電気炉に投入し1170℃まで4.5時間かけて昇温した。その後、1170℃で10時間保持することにより焼成を行った。その後8時間かけて室温まで冷却した。この間、電気炉内の酸素濃度は15000ppmとなるよう、酸素と窒素とを混合したガスを炉内に供給した。
得られた焼成物をハンマーミル(三庄インダストリー社製「ハンマークラッシャーNH−34S」,スクリーン目開き:0.3mm)で1回解粒した後、パルベライザー(DOWAテクノエンジ社製)でさらに2回解粒し、平均粒径34.0μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、物性、最大山谷深さRz、結合粒子の直径比、結合粒子割合、現像剤特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。また、
図1に、実施例1のキャリア芯材のSEM写真を示す。
【0055】
実施例2
実施例1において焼成温度1170℃での保持時間を8時間とし、パルベライザーによる解粒処理を1回とした以外は、実施例1と同様にして平均粒径35.0μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、物性、最大山谷深さRz、結合粒子の直径比、結合粒子割合、現像剤特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。また、
図2に、実施例2のキャリア芯材のSEM写真を示す。
【0056】
実施例3
実施例1において焼成温度1170℃での保持時間を8時間とし、パルベライザーによる解粒処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして平均粒径34.9μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、物性、最大山谷深さRz、結合粒子の直径比、結合粒子割合、現像剤特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。また、
図3に、実施例3のキャリア芯材のSEM写真を示す。
【0057】
比較例1
原料として、Fe
2O
3(平均粒径:0.6μm)7.985kg、Mn
3O
4(平均粒径:0.9μm)3.120gを用い、焼成温度1170℃での保持時間を3時間とし、ハンマーミル(スクリーン目開き:1.5mm)で1回解粒した後、パルベライザーによる解粒処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして平均粒径34.8μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、物性、最大山谷深さRz、結合粒子の直径比、結合粒子割合、現像剤特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。また、
図4に、比較例1のキャリア芯材のSEM写真を示す。
【0058】
比較例2
原料として、Fe
2O
3(平均粒径:0.6μm)7.985kg、Mn
3O
4(平均粒径:0.9μm)3.814g、SrCO
3(平均粒径:0.6μm)0.073kgを用い、焼成温度1170℃での保持時間を3時間とし、ハンマーミル(スクリーン目開き:1.5mm)で1回解粒した後、パルベライザーによる解粒処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして平均粒径32.7μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、物性、最大山谷深さRz、結合粒子の直径比、結合粒子割合、現像剤特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。また、
図5に、比較例2のキャリア芯材のSEM写真を示す。
【0059】
実施例4
Fe
2O
3(平均粒径:0.6μm)7.985kg、MgO(平均粒径:0.8μm)0.183kg、Mn
3O
4(平均粒径:0.9μm)2.773kg、SrCO
3(平均粒径:0.6μm)0.013kgを純水5.58kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を30g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm〜75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から粒径50μmを超える粗粒は篩を用いて除去した。
この造粒物を、電気炉に投入し1300℃まで4.5時間かけて昇温した。その後、1300℃で6時間保持することにより焼成を行った。その後8時間かけて室温まで冷却した。この間、電気炉内の酸素濃度は15000ppmとなるよう、酸素と窒素とを混合したガスを炉内に供給した。
得られた焼成物をハンマーミル(スクリーン目開き:0.3mm)で1回解粒した後、パルベライザーで1回解粒し、平均粒径33.5μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、物性、最大山谷深さRz、結合粒子の直径比、結合粒子割合、現像剤特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。また、
図6に、実施例4のキャリア芯材のSEM写真を示す。
【0060】
実施例5
原料として、Fe
2O
3(平均粒径:0.6μm)7.985kg、MgO(平均粒径:0.8μm)0.403kg、Mn
3O
4(平均粒径:0.9μm)3.051kg、SrCO
3(平均粒径:0.6μm)0.097kgを用い、焼成温度1300℃での保持時間を8時間とし、パルベライザーによる解粒処理を行わなかった以外は、実施例4と同様にして平均粒径36.5μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、物性、最大山谷深さRz、結合粒子の直径比、結合粒子割合、現像剤特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。また、
図7に、実施例5のキャリア芯材のSEM写真を示す。
【0061】
実施例6
原料として、Fe
2O
3(平均粒径:0.6μm)7.985kg、MgO(平均粒径:0.8μm)0.605kg、Mn
3O
4(平均粒径:0.9μm)2.669kg、SrCO
3(平均粒径:0.6μm)0.067kgを用い、焼成温度1300℃での保持時間を8時間とした以外は、実施例4と同様にして平均粒径36.3μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、物性、最大山谷深さRz、結合粒子の直径比、結合粒子割合、現像剤特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。また、
図8に、実施例6のキャリア芯材のSEM写真を示す。
【0062】
比較例3
Fe
2O
3(平均粒径:0.6μm)7.985kg、MgO(平均粒径:0.8μm)0.605kg、Mn
3O
4(平均粒径:0.9μm)2.669kgを純水5.58kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を30g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm〜75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から粒径50μmを超える粗粒は篩を用いて除去した。
この造粒物を、電気炉に投入し1200℃まで4.5時間かけて昇温した。その後、1200℃で3時間保持することにより焼成を行った。その後8時間かけて室温まで冷却した。この間、電気炉内の酸素濃度は15000ppmとなるよう、酸素と窒素とを混合したガスを炉内に供給した。
得られた焼成物をハンマーミル(スクリーン目開き:1.5mm)で1回解粒し、平均粒径33.6μmのキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の組成、物性、最大山谷深さRz、結合粒子の直径比、結合粒子割合、現像剤特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。また、
図9に、比較例3のキャリア芯材のSEM写真を示す。
【0063】
(組成分析)
(Feの分析)
鉄元素を含むキャリア芯材を秤量し、塩酸と硝酸の混酸水に溶解させた。この溶液を蒸発乾固させた後、硫酸水を添加して再溶解し過剰な塩酸と硝酸とを揮発させる。この溶液に固体Alを添加して液中のFe
3+を全てFe
2+に還元する。続いて、この溶液中のFe
2+イオンの量を過マンガン酸カリウム溶液で電位差滴定することにより定量分析し、Fe(Fe
2+)の滴定量を求めた。
(Mnの分析)
キャリア芯材のMn含有量は、JIS G1311−1987記載のフェロマンガン分析方法(電位差滴定法)に準拠して定量分析を行った。本願発明に記載したキャリア芯材のMn含有量は、このフェロマンガン分析方法(電位差滴定法)で定量分析し得られたMn量である。
(Mgの分析)
キャリア芯材のMg含有量は、以下の方法で分析を行った。本願発明に係るキャリア芯材を酸溶液中で溶解し、ICPにて定量分析を行った。本願発明に記載したキャリア芯材のMg含有量は、このICPによる定量分析で得られたMg量である。
(Srの分析)
キャリア芯材のSr含有量は、Mgの分析同様にICPによる定量分析で行った。
【0064】
(結合粒子の含有率及び粒径)
キャリア芯材の形状を走査電子顕微鏡(日本電子社製:JSM−6510LA)を用いて倍率250倍で撮影した。撮影した画像より任意の400粒子を選択し、その中で結合粒子の数をカウントし、上記400粒子中に含まれる結合粒子の個数割合を結合粒子含有率とした。
なお、結合粒子は、粒径の最も大きい母粒子と、前記母粒子よりも粒径の小さい1個〜4個の子粒子とが結合した粒子であり、前記子粒子の少なくとも1つの子粒子の粒径は、前記母粒子の粒径の1/2よりも大きいものとした。そして、結合粒子では母粒子と子粒子とが結合部分を共有した形態で存在しているので、母粒子及び子粒子の粒径は、キャリア芯材の形状を走査電子顕微鏡(日本電子社製:JSM−6510LA)を用いて倍率250倍で撮影した画像において、結合粒子の結合部分を除いた領域から粒子を球形近似することによりそれぞれ算出した。
【0065】
(見掛密度)
キャリア芯材の見掛け密度はJIS Z 2504に準拠して測定した。
【0066】
(流動度)
キャリア芯材の流動度はJIS Z 2502に準拠して測定した。
【0067】
(平均粒径)
キャリア芯材の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(日機装社製「マイクロトラックModel9320-X100」)を用いて測定した。
【0068】
(磁気特性)
室温専用振動試料型磁力計(VSM)(東英工業社製「VSM−P7」)を用いて、外部磁場を0〜79.58×10
4A/m(10000エルステッド)の範囲で1サイクル連続的に印加して、飽和磁化、残留磁化、保磁力及び79.58×10
3A/m(1000エルステッド)の磁場における磁化σ
1k(Am
2/kg)をそれぞれ測定した。
【0069】
(最大山谷深さRz)
超深度カラー3D形状測定顕微鏡(「VK−X100」株式会社キーエンス製)を用い、100倍対物レンズで表面を観察して求めた。具体的には、まず、表面の平坦な粘着テープにフェライト粒子を固定し、100倍対物レンズで測定視野を決定した後、オートフォーカス機能を用いて焦点を粘着テープ面に調整した。フェライト粒子を固定した平坦な粘着テープ面に対し、垂直方向(Z方向)からレーザー光線を照射し、面のX方向Y方向に走査した。また、表面からの反射光の強度が最大となった時のレンズの高さ位置をつなぎ合わせることでZ方向のデータを取得した。これらX、YおよびZ方向の位置データをつなぎ合わせフェライト粒子表面の3次元形状を得た。なお、フェライト粒子表面の3次元形状の取り込みにはオート撮影機能を用いた。
各パラメータの測定には、粒子粗さ検査ソフトウェア(三谷商事製)を用いて行った。まず、前処理として、得られたフェライト粒子表面の3次元形状の粒子認識と形状選別を行った。粒子認識は以下の方法で行った。撮影によって得られた3次元形状のうち、Z方向の最大値を100%、最小値を0%として最大値から最小値までの間を100等分する。この100〜35%にあたる領域を抽出し、独立した領域の輪郭を粒子輪郭として認識した。次に形状選別で粗大、微小、会合などの粒子を除外した。この形状選別を行うことで以降に行う極率補正時の誤差を小さくすることができる。具体的には面積相当径28μm以下、38μm以上、針状比1.15以上に該当する粒子を除外した。ここで針状比とは粒子の最大長/対角幅の比から算出したパラメータであり、対角幅とは最大長に平行な2本の直線で粒子を挟んだときの2直線の最短距離を表す。
つぎに表面の3次元形状から解析に用いる部分の取り出しを行った。まず上記の方法で認識した粒子輪郭から求められる重心を中心として15.0μmの正方形を描く。描いた正方形の中に21本の平行線を引き、その線分上にあたる粗さ曲線を21本分取り出した。
【0070】
フェライト粒子は略球形状であるため、取り出した粗さ曲線は、バックグラウンドとして一定の曲率を持っている。このため、バックグラウンドの補正として、最適な二次曲線をフィッティングし、粗さ曲線から差し引く補正を行った。この場合、ローパスフィルタを1.5μmの強度で適用し、カットオフ値λを80μmとした。
【0071】
最大山谷深さRzは、粗さ曲線の中で最も高い山の高さと最も深い谷の深さの和として求めた。以上説明した最大高さRzの測定は、JIS B0601(2001年度版)に準拠して行われるものである。最大高さRzの算出には、各パラメータの平均値として、30粒子の平均値を用いることとした。
【0072】
(画像メモリー)
得られたキャリア芯材の表面を樹脂で被覆してキャリアを作製した。具体的には、シリコーン樹脂450重量部と、(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン9重量部とを、溶媒としてのトルエン450重量部に溶解してコート溶液を作製した。このコート溶液を、流動床型コーティング装置を用いてキャリア芯材50000重量部に塗布し、温度300℃の電気炉で加熱してキャリアを得た。以下、全ての実施例、比較例についても同様にしてキャリアを得た。
【0073】
得られたキャリアと平均粒径5.0μm程度のトナーとを、ポットミルを用いて所定時間混合し、二成分系の電子写真現像剤を得た。この場合、キャリアとトナーとをトナーの重量/(トナーおよびキャリアの重量)=5/100となるように調整した。以下、全ての実施例、比較例についても同様にして現像剤を得た。得られた現像剤を、
図10に示す構造の現像装置(現像スリーブの周速度Vs:406mm/sec,感光体ドラムの周速度Vp:205mm/sec,感光体ドラム−現像スリーブ間距離:0.3mm)に投入し、感光体ドラムの長手方向にベタ画像部と非画像部とが隣り合い、その後は広い面積の中間調が続く画像を初期と20万枚画像形成後に取得し、現像ローラ2周目の現像ローラ1周目のベタ画像が現像された領域とそうでない領域との画像濃度を反射濃度計(東京電色社製の型番TC−6D)を用いて測定し、その差を求め下記基準で評価した。結果を表2に合わせて示す。
「◎」:0.003未満
「○」:0.003以上0.006未満
「△」:0.006以上0.020未満
「×」:0.020以上
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
表2から明らかなように、本発明で規定する結合粒子の含有割合を満たす実施例1〜6のキャリア芯材を用いた現像剤では、「現像メモリー」の発生は抑制されていた。
【0077】
これに対して、結合粒子の含有割合が4.2個数%以下の比較例1〜3のキャリア芯材を用いた現像剤では、「現像メモリー」の発生が見られた。
【解決手段】フェライト粒子であって、球形粒子が2個〜5個の結合した結合粒子が5個数%〜20個数%含まれ、前記結合粒子は、粒径の最も大きい母粒子と、前記母粒子よりも粒径の小さい1個〜4個の子粒子とが結合した粒子であり、前記子粒子の少なくとも1つの子粒子の粒径は、前記母粒子の粒径の1/2よりも大きいことを特徴とする。ここで、前記結合粒子以外の通常粒子の表面の最大山谷深さRzが1.5μm以上であるのが好ましい。