特許第5726431号(P5726431)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5726431
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】標的検出装置及び標的検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20150514BHJP
   G01N 21/05 20060101ALI20150514BHJP
   G01N 21/15 20060101ALI20150514BHJP
   G01N 21/59 20060101ALI20150514BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20150514BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   G01N35/08 A
   G01N21/05
   G01N21/15
   G01N21/59 Z
   G01N33/543 525C
   G01N33/543 593
   G01N37/00 101
【請求項の数】11
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2010-83999(P2010-83999)
(22)【出願日】2010年3月31日
(65)【公開番号】特開2011-215023(P2011-215023A)
(43)【公開日】2011年10月27日
【審査請求日】2013年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(74)【代理人】
【識別番号】100136858
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 浩
(72)【発明者】
【氏名】寺門 真吾
(72)【発明者】
【氏名】伊達 安基
(72)【発明者】
【氏名】大村 直也
(72)【発明者】
【氏名】松本 伯夫
【審査官】 遠藤 孝徳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−215013(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/016617(WO,A1)
【文献】 特表2002−507280(JP,A)
【文献】 特開2009−276135(JP,A)
【文献】 特表2003−515167(JP,A)
【文献】 特開2009−162643(JP,A)
【文献】 特開2005−257597(JP,A)
【文献】 特開2006−98129(JP,A)
【文献】 再公表特許第2006/123459(JP,A1)
【文献】 特表2001−502793(JP,A)
【文献】 特許第4419019(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 − 37/00
G01N 21/00 − 21/61
B01J 19/00 − 19/32
G01N 1/00 − 1/44
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定用部材の収容領域に、被測定試料である標的を捕捉する標的捕捉体を担持させた基材粒子を収容する収容工程と、
前記標的を被測定試料流路に流し、前記標的に前記収容領域を通過させ前記標的捕捉体が前記標的を捕捉する捕捉工程と、
前記標的を検出する検出工程とを含む標的検出方法であって、
前記測定用部材が、前記被測定試料を透過した光の量を測定するのに使用され、
前記被測定試料を流す前記被測定試料流路と、
前記被測定試料流路に形成され、前記基材粒子を収容する収容領域と、
前記収容領域に連通され、前記基材粒子を前記収容領域に流す基材粒子供給流路と、
前記基材粒子を前記基材粒子供給流路から前記収容領域に流す供給口と、を有し、
前記供給口を通じて、前記基材粒子が、前記基材粒子供給流路と前記収容領域とを往来し、
前記収容領域における、前記被測定試料の流れ方向に直交する方向の断面の短手方向の長さが、前記基材粒子が前記収容領域に単層で配置可能な長さであり、
前記収容工程において使用する前記基材粒子の数が、前記収容領域収容される前記基材粒子の数の2.0倍以上4.0倍以下であることを特徴とする標的検出方法。
【請求項2】
収容工程が、通液手段により被測定試料流路に測定時の被測定試料の流れ方向と順方向の流れを生じさせ、かつ、流量調節手段により、測定時の前記被測定試料の流れ方向において収容領域よりも上流側の前記被測定試料流路の流量を、測定時の前記被測定試料の流れ方向において前記収容領域よりも下流側の前記被測定試料流路の流量よりも少なくすることにより、基材粒子を基材粒子供給流路から前記収容領域に移動させ、前記収容領域に前記基材粒子を収容する工程である請求項1に記載の標的検出方法。
【請求項3】
通液手段により被測定試料流路に測定時の被測定試料の流れ方向と逆方向の流れを生じさせ、かつ、流量調節手段により、測定時の前記被測定試料の流れ方向において収容領域よりも上流側の前記被測定試料流路の流量を、測定時の被測定試料の流れ方向において前記収容領域よりも下流側の前記被測定試料流路の流量よりも少なくすることにより、基材粒子を前記収容領域から基材粒子供給流路に移動させ、前記収容領域から前記基材粒子を除去する除去工程を含む請求項1から2のいずれかに記載の標的検出方法。
【請求項4】
標的及び標的捕捉体のいずれかが抗原、他方が抗体である請求項1から3のいずれかに記載の標的検出方法。
【請求項5】
収容領域が、前記収容領域以外の被測定試料流路への基材粒子の流出を防ぐ流出防止手段により画成される請求項1から4のいずれかに記載の標的検出方法。
【請求項6】
収容領域における、被測定試料の流れ方向と、被測定試料の流れ方向に直交する方向の断面の長手方向とから形成される面の面積(D)と、前記収容領域に収容された全ての基材粒子の表面積の合計面積(d)との比(d/D)が、3.14以上3.63以下である請求項1から5のいずれかに記載の標的検出方法。
【請求項7】
収容領域における、被測定試料の流れ方向に直交する方向の断面の短手方向の長さが、基材粒子の体積平均粒子径の1.0倍以上2.0倍未満の長さである請求項1から6のいずれかに記載の標的検出方法。
【請求項8】
基材粒子が、球形であり、基材粒子を基材粒子供給流路から収容領域に流す供給口の面積が、前記基材粒子の半球断面の面積の4/π倍から20/π倍である請求項1から7のいずれかに記載の標的検出方法。
【請求項9】
供給口が、収容領域における、測定時の被測定試料の流れ方向における上流側の端部に配置されている請求項1から8のいずれかに記載の標的検出方法。
【請求項10】
測定時の被測定試料の流れ方向において収容領域よりも下流側の被測定試料流路に、前記被測定試料流路に流れを生じさせる通液手段を有し、
測定時の被測定試料の流れ方向において収容領域よりも上流側の被測定試料流路に、前記被測定試料流路の流量を調節する流量調節手段を有する請求項1から9のいずれかに記載の標的検出方法。
【請求項11】
被測定試料を透過した光の量を測定するのに使用され、
前記被測定試料を流す被測定試料流路と、
前記被測定試料流路に形成され、基材粒子を収容する収容領域と、
前記収容領域に連通され、前記基材粒子を前記収容領域に流す基材粒子供給流路と、
前記基材粒子を前記基材粒子供給流路から前記収容領域に流す供給口と、を有し、
前記供給口を通じて、前記基材粒子が、前記基材粒子供給流路と前記収容領域とを往来し、
前記収容領域における、前記被測定試料の流れ方向に直交する方向の断面の短手方向の長さが、前記基材粒子が前記収容領域に単層で配置可能な長さである測定用部材と、
前記被測定試料である標的を捕捉する標的捕捉体を担持させた前記基材粒子が収容された収容領域に光を照射する発光手段と、
前記発光手段から前記収容領域に照射された光のうち、前記収容領域を透過する透過光を受光し、受光した透過光の光量を測定する受光手段と、を有し、
前記収容領域において使用する前記基材粒子の数が、前記収容領域収容される前記基材粒子の数の2.0倍以上4.0倍以下であることを特徴とする標的検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イムノアッセイに好適に使用できる小型の測定用部材、並びにそれを用いた標的検出装置及び標的検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ダイオキシン類、ポリ塩化ビフェニル類(PCB類)などの有機系有害物質、及び鉛、カドミウム、クロムなどの重金属類による環境汚染問題が深刻化している。例えば、これらの化学物質は、大気中、水中、及び土壌中に微量に含まれ、農産物等を通じて生物濃縮され、人体へ影響を及ぼすことが懸念されている。そのため、微量な化学物質を測定する方法が必要とされている。
【0003】
微量な化学物質の測定方法のうち、簡易な測定方法として、抗原抗体反応を利用した免疫学的測定法(イムノアッセイ)が提案されている。イムノアッセイには、ELISA法やイムノクロマトグラフィなどがある。
しかしながら、前記ELISA法、及び前記イムノクロマトグラフィでは、被測定物の検出に特殊な機器を必要とする場合があった。また、液相の抗原と固相の擬似抗原との間で競合反応が起こるため、十分な検出感度が得られないという問題があった。また、前記ELISA法では、カドミウムの検出においては、抗原抗体反応に1時間〜2時間を要し、2次抗原を用いる場合には、更にそれ以上の時間を要するという問題があった。また、前記イムノクロマトグラフィでは、サンプルをスポットしてからサンプルがテストラインに達するまでに30分間〜1時間を要するという問題があった。
【0004】
そこで、迅速かつ簡易に測定可能な測定方法として、粒子などの媒体が収容された測定用セルを用いた透過光量測定方法によるイムノアッセイが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この提案は、少ない被測定試料であっても感度が良く測定を行なうことができる。また、小型の装置で測定を行うことができる。
しかし、この提案では、測定セルの蓋がメッシュやスポンジであったため、粒子の収容状態が不均一になる場合や、測定毎に収容数が変わる場合があった。また、測定用セルから測定試料が漏れ出たり、測定用セルに気泡が混入する恐れがあった。更に、前記ELISA法よりも短時間で測定できるものの、粒子の測量や収容が手作業のため手間がかかるという問題があった。
また、前記測定セルは、粒子が多層で収容されるようになっているため、収容状態が不均一になる場合や、測定毎に収容数が変わる場合があることにより、測定信号が変化し、測定誤差が大きくなる、検出の再現性に劣るという問題があった。また、検出感度が低いという問題があった。
【0005】
そこで、測定誤差や手作業による労力の低減を目的して、マイクロチップをイムノアッセイのリアクターに用い、該マイクロチップにビーズ担体を配置する技術が提案されている。例えば、ビーズ担体を導入するための導入口と、該導入口に連通する少なくとも1の収容エリアとを備えたビーズ担体収容式マイクロチップにおいて、前記収容エリアの上流側の内壁に突起構造を有し、下流側にビーズ担体の粒子径より狭い流路幅の排出口を有するビーズ担体収容式マイクロチップの技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、前記技術は、マイクロチップの下流側の排出口の流路幅をビーズ担体の粒子径より狭くしていることにより、収容エリア内の液体が下流側への流れにくいため測定に時間を有し、ビーズ担体を収容する際にビーズ担体が導入口から収容エリア外に押し戻され、収容状態が不均一になることや、測定毎に収容数が変わり、測定誤差が生じるという問題があった。また、収容ビーズの流れが悪くなり、収容に時間がかかるという問題があった。
また、前記技術は、ビーズが多層で収容されるようになっているため、収容状態が不均一になる場合や、測定毎に収容数が変わる場合があることにより、測定信号が変化し、測定誤差が大きくなる、検出の再現性に劣るという問題があった。また、検出感度が低いという問題があった。
【0006】
他の技術として、ビーズのような充填材料を小型化レベルで交換することのできるオンチップ充填反応床設計による装置及び方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。この提案では、ビーズ担体を充填する主要通路と担体を導入するための流路とを設け、担体を充填するために、担体を物理的に留めるための堰により収容領域を設けている。
しかしながら、前記収容領域は、ビーズが多層に収容されるようになっているため、収容状態が不均一になる場合や、測定毎に収容数が変わる場合があることにより、測定信号が変化し、測定誤差が大きくなる、検出の再現性に劣るという問題があった。また、検出感度が低いという問題があった。
【0007】
したがって、手作業による粒子の測量及び収容の手間を省き、気泡の混入及び試料の漏れを防ぎ、かつ短時間で測定誤差が少なく、検出の再現性が良く、感度が高い測定をすることができる測定用部材、標的検出装置及び標的検出方法が求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−215013号公報
【特許文献2】特開2005−257597号公報
【特許文献3】特表2003−515167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、手作業による粒子の測量及び収容の手間を省き、気泡の混入及び試料の漏れを防ぎ、かつ短時間で測定誤差が少なく、検出の再現性が良く、感度が高い測定をすることができる測定用部材、標的検出装置及び標的検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 被測定試料を透過した光の量を測定するのに使用される測定用部材であって、
前記被測定試料を流す被測定試料流路と、
前記被測定試料流路に形成され、基材粒子を収容する収容領域と、
前記収容領域に連通され、前記基材粒子を前記収容領域に流す基材粒子供給流路とを有し、
前記収容領域における、前記被測定試料の流れ方向に直交する方向の断面の短手方向の長さが、前記基材粒子が前記収容領域に単層で配置可能な長さであることを特徴とする測定用部材である。
該<1>の測定用部材においては、前記基材粒子が前記収容領域と前記基材粒子供給流路との間を往来することにより、前記基材粒子を前記収容領域に手作業で収容する手間が省かれ、かつ、手作業を要しないために気泡の混入や試料の漏れが効果的に抑制される。また、前記収容領域における、前記被測定試料の流れ方向に直交する方向の断面の短手方向の長さが、前記基材粒子が前記収容領域に単層で配置可能な長さであることにより、前記基材粒子供給流路から流された前記基材粒子は、前記収容領域に均一に収容され、かつ、測定毎の収容数のむらが少なくなる。
<2> 収容領域が、前記収容領域以外の被測定試料流路への基材粒子の流出を防ぐ流出防止手段により画成される前記<1>に記載の測定用部材である。
該<2>の測定用部材においては、前記収容領域が、前記流出防止手段により画成されていることにより、前記収容領域から前記収容領域以外の前記被測定試料流路への前記基材粒子の流出が防止される。
<3> 収容領域における、被測定試料の流れ方向と、被測定試料の流れ方向に直交する方向の断面の長手方向とから形成される面の面積(D)と、前記収容領域に収容された全ての基材粒子の表面積の合計面積(d)との比(d/D)が、3.14以上3.63以下である前記<1>から<2>のいずれかに記載の測定用部材である。
該<3>の測定用部材においては、収容領域における、被測定試料の流れ方向と、被測定試料の流れ方向に直交する方向の断面の長手方向とから形成される面の面積(D)と、前記収容領域に収容された全ての基材粒子の表面積の合計面積(d)との比(d/D)が特定範囲であることにより、高い感度で測定される。
<4> 収容領域における、被測定試料の流れ方向に直交する方向の断面の短手方向の長さが、基材粒子の体積平均粒子径の1.0倍以上2.0倍未満の長さである前記<1>から<3>のいずれかに記載の測定用部材である。
該<4>の測定用部材においては、前記収容領域における、前記被測定試料の流れ方向に直交する断面の短手方向の長さが、前記基材粒子の体積平均粒子径の1.0倍以上2.0倍未満の長さであることにより、前記基材粒子は前記収容領域に、より均一に収容され、かつ、測定毎の収容数のむらがより少なくなる。
<5> 基材粒子が、球形であり、基材粒子を基材粒子供給流路から収容領域に流す供給口の面積が、前記基材粒子の半球断面の面積の4/π倍から20/π倍である前記<1>から<4>のいずれかに記載の測定用部材である。
該<5>の測定用部材においては、前記基材粒子が、球形であり、前記基材粒子を前記基材粒子供給流路から前記収容領域に流す前記供給口の面積が、前記基材粒子の半球断面の面積の4/π倍から20/π倍であることにより、前記供給口を適当な数の前記基材粒子が通過することになり、測定毎の収容数のむらがより少なくなり、かつ、測定時の前記被測定試料流路から前記基材粒子供給流路への前記被測定試料の流れ込みが効果的に抑制される。
<6> 供給口が、収容領域における、測定時の被測定試料の流れ方向における上流側の端部に配置されている前記<5>に記載の測定用部材である。
該<6>の測定用部材においては、前記供給口が、前記収容領域における、測定時の前記被測定試料の流れ方向における上流側の端部に配置されていることにより、測定後に、前記収容領域から前記基材粒子供給流路に前記基材粒子を排出する作業が、迅速かつ完全に行われる。
<7> 測定時の被測定試料の流れ方向において収容領域よりも下流側の被測定試料流路に、前記被測定試料流路に流れを生じさせる通液手段を有し、
測定時の被測定試料の流れ方向において収容領域よりも上流側の被測定試料流路に、前記被測定試料流路の流量を調節する流量調節手段を有する前記<1>から<6>のいずれかに記載の測定用部材である。
該<7>の測定用部材においては、前記通液手段により前記被測定試料流路に流れを生じさせ、かつ、前記流量調節手段により、測定時の前記被測定試料の流れ方向において前記収容領域よりも上流側の前記被測定試料流路の流量を、測定時の前記被測定試料の流れ方向において前記収容領域よりも下流側の前記被測定試料流路の流量よりも少なくすることにより、前記収容領域と前記基材粒子供給流路との間の流れが円滑になり、前記収容領域における前記基材粒子の収容及び除去が自動かつ迅速に行われる。
<8> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の測定用部材と、
被測定試料である標的を捕捉する標的捕捉体を担持させた基材粒子が収容された収容領域に光を照射する発光手段と、
前記発光手段から前記収容領域に照射された光のうち、前記収容領域を透過する透過光を受光し、受光した透過光の光量を測定する受光手段とを有することを特徴とする標的検出装置である。
該<8>の標的検出装置においては、前記測定用部材を用いることにより、前記基材粒子が前記収容領域に単層で配置されることで、多層で配置した場合と比較して、前記基材粒子の収容状態が均一になることから、測定毎の透過光量の変動が非常に少なくなり、測定誤差が少なく、検出の再現性が良く標的が検出される。また、前記基材粒子が前記収容領域に単層で配置されることで、多層で配置した場合と比較して、透過光量が多く、高い感度で標的が検出される。
<9> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の測定用部材の収容領域に、被測定試料である標的を捕捉する標的捕捉体を担持させた基材粒子を収容する収容工程と、
前記標的を被測定試料流路に流し、前記標的に前記収容領域を通過させ標的捕捉体が標的を捕捉する捕捉工程と、
前記標的を検出する検出工程とを含むことを特徴とする標的検出方法である。
該<9>の標的検出方法においては、前記測定用部材を用いることにより、前記収容領域に前記基材粒子が単層で配置されることで、多層で配置した場合と比較して、前記基材粒子の収容状態が均一になることから、測定毎の透過光量の変動が非常に少なくなり、測定誤差が少なく、検出の再現性が良く標的が検出される。また、前記基材粒子が前記収容領域に単層で配置されることで、多層で配置した場合と比較して、透過光量が多く、高い感度で標的が検出される。
<10> 収容工程が、通液手段により被測定試料流路に測定時の被測定試料の流れ方向と順方向の流れを生じさせ、かつ、流量調節手段により、測定時の前記被測定試料の流れ方向において収容領域よりも上流側の前記被測定試料流路の流量を、測定時の前記被測定試料の流れ方向において前記収容領域よりも下流側の前記被測定試料流路の流量よりも少なくすることにより、基材粒子を基材粒子供給流路から前記収容領域に移動させ、前記収容領域に前記基材粒子を収容する工程である前記<9>に記載の標的検出方法である。
該<10>の標的検出方法においては、前記通液手段により前記被測定試料流路に測定時の前記被測定試料の流れ方向と順方向の流れを生じさせ、かつ、前記流量調節手段により前記被測定試料流路の流量を調節することにより、前記収容領域と前記基材粒子供給流路との間の流れが円滑になり、前記収容領域に前記基材粒子が自動かつ迅速に収容される。
<11> 通液手段により被測定試料流路に測定時の被測定試料の流れ方向と逆方向の流れを生じさせ、かつ、流量調節手段により、測定時の前記被測定試料の流れ方向において収容領域よりも上流側の前記被測定試料流路の流量を、測定時の被測定試料の流れ方向において前記収容領域よりも下流側の前記被測定試料流路の流量よりも少なくすることにより、基材粒子を前記収容領域から基材粒子供給流路に移動させ、前記収容領域から前記基材粒子を除去する除去工程を含む前記<9>から<10>のいずれかに記載の標的検出方法である。
該<11>の標的検出方法においては、前記通液手段により前記被測定試料流路に測定時の前記被測定試料の流れ方向と逆方向の流れを生じさせ、かつ、前記流量調節手段により前記被測定試料流路の流量を調節することにより、前記収容領域と前記基材粒子供給流路との間の流れが円滑になり、前記収容領域に前記基材粒子が自動かつ迅速に除去される。
<12> 標的及び標的捕捉体のいずれかが抗原、他方が抗体である前記<9>から<11>のいずれかに記載の標的検出方法である。
該<12>の標的検出方法においては、前記測定用部材を用いることにより、短時間で測定誤差が少なく、検出の再現性が良く、高い感度のイムノアッセイが行われる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決することができ、手作業による粒子の測量及び収容の手間を省き、気泡の混入及び試料の漏れを防ぎ、かつ短時間で測定誤差が少なく、検出の再現性が良く、感度が高い測定をすることができる測定用部材、標的検出装置及び標的検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の測定用部材の一例を模式的に示した斜視図である。
図2図2は、本発明の測定用部材の一例を模式的に示した上方向から見た断面図である。
図3A図3Aは、本発明の測定用部材の収容領域に基材粒子が収容されている状態を模式的に示した上方向から見た断面図である。
図3B図3Bは、本発明の測定用部材の収容領域に基材粒子が収容されている状態を模式的に示した側面から見た断面図である。
図4A図4Aは、本発明の測定用部材の収容領域に基材粒子を収容する収容工程の一例であって、収容工程を始めた直後の様子を模式的に示した上方向から見た断面図である。
図4B図4Bは、本発明の測定用部材の収容領域に基材粒子を収容する収容工程の一例であって、収容工程が終了した様子を模式的に示した上方向から見た断面図である。
図5A図5Aは、本発明の測定用部材の収容領域から基材粒子を除去する除去工程の一例であって、除去工程を始めた直後の様子を模式的に示した上方向から見た断面図である。
図5B図5Bは、本発明の測定用部材の収容領域から基材粒子を除去する除去工程の一例であって、除去工程がほぼ終了した様子を模式的に示した上方向から見た断面図である。
図6A図6Aは、実施例1により作製した本発明の測定用部材を模式的に示した上方向から見た断面図である。
図6B図6Bは、実施例1により作製した本発明の測定用部材を模式的に示した側面から見た断面図である。
図7図7は、収容領域に基材粒子を収容している途中の写真である。
図8図8は、本発明の測定用部材の流路の流れを確認した実験の写真である。
図9図9は、実施例2において測定したカドミウム濃度と標準化吸光度の関係を示す図である。
図10図10は、実施例2において測定したカドミウム濃度の変動係数を示す図である。
図11図11は、実施例2及び比較例1において測定したかカドミウム濃度の変動係数を示す図である。
図12図12は、比較例1において測定したカドミウム濃度の変動係数を示す図である。
図13図13は、比較例2において測定したPCB濃度の変動係数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(測定用部材)
本発明の測定用部材は、被測定試料を透過した光の量を測定するのに使用される測定用部材であって、被測定試料流路と、収容領域と、基材粒子供給流路とを少なくとも有し、必要に応じて、その他の部を有する。
【0014】
<被測定試料流路>
前記被測定試料流路は、被測定試料を流す流路である。
【0015】
前記被測定試料流路の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記被測定試料の流れ方向に直交する方向の断面の形状が、円形状、楕円状、矩形状などが挙げられる。これらの中でも、矩形状の断面形状が、フォトリソグラフィなどにより容易に作製できる点で好ましい。
【0016】
前記被測定試料流路の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記形状が矩形状の断面形状の場合、該断面形状の長手方向の長さとしては、0.1mm〜15.0mmが好ましく、0.25mm〜9.0mmがより好ましく、0.75mm〜4.5mmが特に好ましい。前記断面形状の長手方向の長さが、0.1mm未満であると、前記収容領域への前記被測定試料の流れが悪くなることがあり、15.0mmを超えると、前記収容領域への前記被測定試料の流れが不安定になることがある。前記断面形状の長手方向の長さが前記特に好ましい範囲内であると、前記収容領域への前記被測定試料の流れがより安定になる点で有利である。
また、前記断面形状の短手方向の長さとしては、0.05mm〜1.00mmが好ましく、0.08mm〜0.50mmがより好ましく、0.10mm〜0.30mmが特に好ましい。前記断面形状の短手方向の長さが、0.05mm未満であると、前記収容領域への前記被測定試料の流れが悪くなることがあり、1.00mmを超えると、前記収容領域への前記被測定試料の流れが不安定になることがある。前記断面形状の短手方向の長さが、前記特に好ましい範囲内であると、前記収容領域への前記被測定試料の流れがより安定になる点で有利である。
【0017】
前記被測定試料流路の前記被測定試料の流れ方向の長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、10mm〜50mmが好ましく、20mm〜40mmがより好ましい。前記被測定試料の流れ方向の長さが、10mm未満であると、通液手段などが設置しにくいことがあり、50mmを超えると、前記測定用部材を製造する際の鋳型などの作製工程が煩雑になることがある。前記被測定試料の流れ方向の長さが、前記より好ましい範囲内であると、通液手段などの設置が容易になり、かつ前記測定用部材の製造が容易になる点で有利である。
【0018】
前記被測定試料流路に流す前記被測定試料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビタミン様物質などの低分子量の有用物質であってもよく、環境汚染物質などの低分子量の有害物質であってもよい。具体的には、PCB類、ダイオキシン、天然あるいは環境ホルモン、農薬、カドミウム等の重金属(キレート複合体を含む)などが挙げられる。これら被測定試料は、透過光測定において検出感度を高めるために必要に応じて発色処理がされていてもよい。また、本発明の測定用部材を抗原抗体反応に用いる場合には、前記被測定試料は抗体であってもよく、また、前記抗体は標識されていてもよい。
【0019】
<収容領域>
前記収容領域は、前記被測定試料流路に形成され、基材粒子を収容する領域である。前記収容領域を前記被測定試料流路に形成することで、計量を必要とせずに一定量の前記基材粒子を前記収容領域に収容することができる。
【0020】
前記収容領域の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記被測定試料の流れ方向に直交する方向の断面の形状が、円形状、楕円状、矩形状などが挙げられる。これらの中でも、前記断面の形状が矩形状であることが、一様な流れ(層流)を形成しうる点で好ましい。なお、前記矩形状において、短辺及び長辺は必ずしも直線である必要はなく、本発明の効果を損なわない限り、湾曲していてもよい。
【0021】
前記収容領域における、前記被測定試料の流れ方向に直交する方向の断面の短手方向の長さは、前記基材粒子が前記収容領域に単層で配置可能な長さである。前記長さにすることにより、前記基材粒子供給流路から流された前記基材粒子は、前記収容領域に均一に収容され、かつ、測定毎の収容数のむらが少なくなる。
【0022】
ここで、単層とは、前記基材粒子の体積平均粒子径をRとした場合に、前記基材粒子が形成する層の厚みが2R未満となることをいう。
【0023】
体積平均粒子径とは、50%体積平均粒子径をいい、例えば、粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社、コールター Multisizer)により測定することができる。
【0024】
前記収容領域における、前記被測定試料の流れ方向に直交する方向の断面の短手方向の長さとしては、前記基材粒子が前記収容領域に単層で配置可能な長さであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記基材粒子の体積平均粒子径の1.0倍以上2.0倍未満が好ましく、1.0倍以上1.5倍未満がより好ましく、1.1倍以上1.3倍未満が特に好ましい。前記長さが、1.0倍未満であると、前記収容領域に前記基材粒子を収容できなくなり、2.0倍以上であると、前記収容領域へ前記基材粒子を単層で収容することが困難になることがある。前記長さが前記特に好ましい範囲内であると、測定に際して充分量の前記基材粒子をより均一に収容でき、かつ、測定毎の収容数のむらがより少なくできる点で有利である。
【0025】
前記収容領域における、前記被測定試料の流れ方向に直交する方向の断面の長手方向の長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1mm〜9.0mmが好ましく、0.25mm〜6.0mmがより好ましく、0.75mm〜4.5mmが特に好ましい。前記長さが、0.1mm未満であると、前記基材粒子の収容数が少なくなり、前記被測定試料中の捕捉対象を捕捉することが困難になることがあり、9.0mmを超えると、前記被測定試料中の捕捉対象が、前記収容領域の一部で捕捉され、前記収容領域全体に均一に捕捉されないことがある。前記長さが前記特に好ましい範囲内であると、前記被測定試料中の捕捉対象を前記収容領域内で均一に捕捉できる点で有利である。
【0026】
前記収容領域の、前記被測定試料の流れ方向の長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1mm〜18.0mmが好ましく、0.2mm〜12.0mmがより好ましく、0.75mm〜9.0mmが特に好ましい。前記収容領域の、前記被測定試料の流れ方向の長さが、0.1mm未満であると、前記基材粒子の収容数が少なくなり、前記被測定試料中の捕捉対象を捕捉することが困難になることがあり、18.0mmを超えると、測定に必要な数を大きく超える数の前記基材粒子を収容してしまうことがある。前記長さが前記特に好ましい範囲内であると、収容された適切な数の粒子を用い、前記被測定試料中の捕捉対象を前記収容領域内で均一に捕捉できる点で有利である。
【0027】
−基材粒子−
前記収容領域に収容される前記基材粒子としては、その形状、構造、大きさ、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光が透過可能な粒子であってもよく、光を乱反射させる粒子であってもよい。
【0028】
前記基材粒子の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、直方体、球形などが挙げられる。これらの中でも、球形であることが、前記基材粒子をより均一に収容でき、かつ、測定毎の収容数の収容数のむらがより少なくできる点で有利である。なお、前記球形は、真球状であってもよく、非真球状であってもよい。
【0029】
前記基材粒子の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、体積平均粒子径が10μm〜300μmが好ましく、25μm〜200μmがより好ましく、50μm〜150μmが特に好ましい。前記基材粒子の体積平均粒子径が、10μm未満であると、フォトリソグラフィ工程を用いた前記測定用部材の作製が困難になることがあり、300μmを超えると、フォトリソグラフィ工程を用いた前記測定用部材の作製が煩雑になること、並びに測定誤差の増大及び検出の再現性の低下がおこることがある。前記基材粒子の体積平均粒子径が、前記特に好ましい範囲内であると、前記測定用部材の作製が簡便である点、並びに測定誤差が少なくなる点及び検出の再現性が向上する点で有利である。
【0030】
前記基材粒子の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリメタクリル酸メチルを含む樹脂、ポリスチレン、ガラス、アルギン酸カルシウム、ポリエチレングリコール、アガロース、セルロースなどが挙げられる。これらの中でも、ポリメタクリル酸メチルを含む樹脂、ガラスなどが、透明性に優れる点、並びに粒子表面の化学的及び物理的修飾が容易な点で好ましい。
また、前記基材粒子は、標的を捕捉する標的捕捉体などが担持されていてもよい。
【0031】
前記収容領域における、前記被測定試料の流れ方向と、前記被測定試料の流れ方向に直交する方向の断面の長手方向とから形成される面の面積(D)と、前記収容領域に収容された全ての前記基材粒子の表面積の合計面積(d)との比(d/D)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3.14以上3.63以下が好ましく、3.30以上3.63以下がより好ましく、3.50以上3.63以下が特に好ましい。前記比(d/D)が、3.14未満であると、前記収容領域への前記基材粒子の収容が十分でなくなり、前記基材粒子間に隙間ができやすく、測定中に前記基材粒子が動くことで測定の精度が低下することがあり、3.63を超えると、単層での前記基材粒子の収容が行われない。前記比(d/D)が、前記特に好ましい範囲内であると、精度の高い測定が可能となる点で有利である。
【0032】
<基材粒子供給流路>
前記基材粒子供給流路は、供給口により前記収容領域に連通され、前記基材粒子を前記収容領域に流す流路である。前記基材粒子供給流路から前記収容領域に前記基材粒子を流し、収容させることにより、手作業を必要とせずに簡便に前記基材粒子を前記収容領域に収容させることができる。
また、測定終了後には、前記収容領域に収容された前記基材粒子を、前記基材粒子供給流路に戻すことにより、前記測定用部材は繰り返しの使用が可能となる。
【0033】
前記基材粒子供給流路の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記基材粒子の流れ方向に直交する方向の断面の形状が、円形状、楕円状、矩形状などが挙げられる。これらの中でも、前記矩形状の断面形状が、フォトリソグラフィなどにより容易に作製できる点で好ましい。
【0034】
前記基材粒子供給流路の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記形状が矩形状の断面形状の場合、該断面形状の長手方向の長さとしては、1.0mm〜10.0mmが好ましく、1.0mm〜5.0mmがより好ましく、1.0mm〜3.0mmが特に好ましい。前記断面形状の長手方向の長さが1.0mm未満であると、前記基材粒子供給流路に溜まる過剰な前記基材粒子の数が少なくなることから、前記基材粒子供給流路に溜まった前記基材粒子によって測定時に前記被測定試料が前記基材粒子供給流路に流れ込むのを抑える効果が低くなることがあり、10.0mmを超えると、必要以上の前記基材粒子を準備しなければならないことがある。前記断面形状の長手方向の長さが前記特に好ましい範囲内であると、過剰な数の前記基材粒子により前記供給口を塞ぎ、測定時に前記被測定試料が前記基材粒子供給流路に流れ込むのを抑制するのを、少ない数の前記基材粒子で行うことができる点で有利である。
また、前記断面形状の短手方向の長さとしては、0.05mm〜1.00mmが好ましく、0.08mm〜0.50mmがより好ましく、0.10mm〜0.30mmが特に好ましい。
【0035】
−供給口−
前記供給口は、前記基材粒子を前記基材粒子供給流路から前記収容領域に流すための開口である。前記供給口を通じて、前記基材粒子は、前記基材粒子供給流路と前記収容領域とを往来する。
【0036】
前記供給口の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円形状、楕円状、矩形状などが挙げられる。これらの中でも、前記矩形状が、前記基材粒子が効率よく前記供給口を通過できる点で好ましい。
【0037】
前記供給口の面積としては、前記基材粒子が通過することができる大きさであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記供給口の面積は、基材粒子の断面積(基材粒子が球形のときは、半球断面の面積)の4/π倍から20/π倍が好ましく、5/π倍から18/π倍がより好ましく、6/π倍から19/π倍が特に好ましい。前記供給口の面積が、4/π倍未満であると、前記基材粒子の大きさのばらつきによっては、前記供給口を通らない前記基材粒子があり、20/π倍を超えると、測定時に前記被測定試料が前記被測定試料流路から前記基材粒子供給へ流れ出ることがある。前記供給口の面積が、前記特に好ましい範囲内であると、測定毎の収容数のむらが少なくできる点、測定時に前記被測定試料が前記基材粒子供給流路に流れ込むのを効果的に抑制できる点で有利である。
なお、前記半球断面の面積は、π(R/2)(Rは、前記基材粒子の体積平均粒子径)により計算される面積である。
【0038】
前記供給口の配置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記収容領域における、測定時の前記被測定試料の流れ方向の上流側の端部に配置されていることが、前記基材粒子を前記収容領域から前記基材粒子供給流路に戻す際に、迅速に戻すことができ、かつ排出が不完全になりにくい点で有利である。
【0039】
<その他の部>
前記その他の部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、流出防止手段、通液手段、流量調節手段、貯留部などが挙げられる。
【0040】
−流出防止手段−
前記流出防止手段としては、前記収容領域以外の前記被測定試料流路への前記基材粒子の流出を防止できるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記収容領域の、前記被測定試料の流れ方向の両端部に設けた、格子、複数の突起、流路幅を横断する突起などが挙げられる。なお、前記流出防止手段は、前記被測定試料の流れを遮ることなく、前記基材粒子の流出を防止する。
【0041】
前記流路幅を横断する突起の高さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記流路幅を横断する突起により狭くなった、前記収容領域の前記被測定試料の流れ方向に直交する断面の短手方向の長さが、前記基材粒子の体積平均粒子径の0.1倍〜1.0倍になる前記流路幅を横断する突起の高さが好ましく、0.2倍〜0.8倍がより好ましく、0.4倍〜0.6倍が特に好ましい。前記流路幅を横断する突起により狭くなった、前記収容領域の前記被測定試料の流れ方向に直交する断面の短手方向の長さが、前記基材粒子の体積平均粒子径の0.1倍未満であると、前記被測定試料の通液に高い負荷がかかってしまうこと、及び前記被測定試料流路からの流れが大きく乱され、また突起により流れが不十分な領域が生まれ、前記収容領域の前記基材粒子に対して均一に前記被測定試料が接触しない恐れがあり、1.0倍を超えると、前記基材粒子が被測定試料流路に流出してしまうことがある。前記流路幅を横断する突起により狭くなった、前記収容領域の前記被測定試料の流れ方向に直交する断面の短手方向の長さが、前記特に好ましい範囲内であると、前記被測定試料の通液での負荷を小さくしつつ、前記基材粒子の流出を防止できる点で有利である。
【0042】
−通液手段−
前記通液手段としては、前記被測定試料流路に流れを生じさせる手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポンプ、シリンジなどが挙げられる。
【0043】
前記通液手段の設置位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、測定時の前記被測定試料の流れ方向において前記収容領域よりも下流側の前記被測定試料流路(以下「下流側被測定試料流路」と略すことがある。)に設置することが挙げられる。
【0044】
例えば、前記通液手段を、前記下流側被測定試料流路に設置した場合、前記通液手段を作動させることで、前記通液手段により前記被測定試料流路に測定時の前記被測定試料の流れ方向と順方向の流れを生じさせ、前記基材粒子を前記基材粒子供給流路から前記収容領域に移動させ、前記収容領域に前記基材粒子を収容することができる。
また、前記通液手段により、前記被測定試料流路に測定時の前記被測定試料の流れ方向と逆方向の流れを生じさせ、前記収容領域に収容された前記基材粒子を前記収容領域から前記基材粒子供給流路に移動させ、前記収容領域から前記基材粒子を除去することができる。
【0045】
−流量調節手段−
前記流量調節手段としては、前記被測定試料流路の流量を調節することができる手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記被測定試料流路の側壁にゴムなどの伸縮性膜を設置し、該伸縮性膜を伸ばして流路を狭くして流量を調節する手段などが挙げられる。前記伸縮性膜を伸ばす方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポンプを利用した空気圧、水圧などにより伸ばすことができる。
【0046】
前記流量調節手段の設置位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記測定時の前記被測定試料の流れ方向において前記収容領域よりも上流側の前記被測定試料流路(以下「上流側被測定試料流路」と略すことがある。)に設置することが好ましい。
例えば、測定前に前記基材粒子を前記収容領域に収容する場合には、前記上流側被測定試料流路に前記流量調節手段を設置するとともに、前記下流側被測定試料流路に前記通液手段を設置して、前記通液手段により測定時の前記被測定試料の流れ方向と順方向の流れを生じさせ、かつ、前記流量調節手段により、前記上流側被測定試料流路の流量を、前記下流側被測定試料流路の流量よりも少なくすることにより、前記基材粒子供給流路から前記収容領域への流れが多くなり、収容を自動かつ迅速に行うことができる。
また、測定後に前記基材粒子から前記収容領域を除去する場合には、前記上流側被測定試料流路に前記流量調節手段を設置するとともに、前記下流側被測定試料流路に前記通液手段を設置して、前記通液手段により測定時の前記被測定試料の流れ方向と逆方向の流れを生じさせ、かつ、前記流量調節手段により前記上流側被測定試料流路の流量を、前記下流側被測定試料流路の流量よりも少なくすることにより、前記収容領域から前記基材粒子供給流路への流れが多くなり、除去を自動かつ迅速に行うことができる。
【0047】
−貯留部−
前記貯留部としては、前記被測定試料及び前記基材粒子のいずれかを貯留しておくことができるものであれば、その材質、形状、大きさ、構造などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記貯留部の設置位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記基材粒子供給流路の端部、前記上流側被測定試料流路の端部などが挙げられる。
【0048】
<測定用部材の製造方法>
−測定用部材の材料−
前記測定用部材の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紫外又は可視光感光性高分子、PDMS(ポリジメチルシロキサン)に代表される透明シリコンエラストマー、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、COP(シクロオレフィンポリマー)等の熱可塑性樹脂、ガラス、金属、石英などが挙げられる。
前記PDMSは、シリコンエラストマーの一種である。透明性が極めて高く、光学的特性に優れており、広い波長領域、特に、可視光領域での吸収が極めて小さく、蛍光検出に適している。また、フォトリソグラフィ、鋳型法を用いることによりナノからミクロンオーダーの任意の微細構造を有する微細加工が容易である。更に、前記PDMS自体が、ガラス及びアクリル樹脂等のプラスチックに対する良好な吸着性及び剥離性を有しており、微細加工が施された前記PDMS部材にこれら素材からなる基板を貼り付けることにより、マイクロ流路やチャンバーを容易に形成することが可能である。
【0049】
前記測定用部材の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記材料を1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、前記材料を2種以上併用する場合、例えば、前記収容領域が光を透過させる材料で形成されていれば、その他の流路などは、光透過性のない材料で形成されていてもよい。
【0050】
−製造方法−
前記測定用部材の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フォトリソグラフィ、電子ビームリソグラフィ等の電離放射線リソグラフィ、AFMリソグラフィ、物理的エッチング、化学的エッチング等により、前記被測定試料流路、前記収容領域、前記基材粒子供給流路等を形成する方法、微細加工用ドリル、ブロード等を用いて機械的切削加工により前記被測定試料流路、前記収容領域、前記基材粒子供給流路等を形成する方法などが挙げられる。また、前記フォトリソグラフィなどにより作製した所望の形状の流路などと反転する凸部構造を有する鋳型を用いて、転写することにより、間接的に流路などを形成することも可能である。
【0051】
ここで、図1は、本発明の測定用部材の一例を模式的に示した斜視図である。図1の測定用部材1は、被測定試料流路(上流側被測定試料流路2a及び下流側被測定試料流路2b)と、収容領域3と、基材粒子供給流路4と、前記収容領域3に設けられた供給口5と、流出防止手段6とを有する。前記収容領域3に設けられた前記供給口5は、矩形状であり、前記収容領域3における、測定時の前記被測定試料の流れ方向の上流側の端部に配置されている。
【0052】
図2は、本発明の測定用部材の一例を模式的に示した上方向から見た断面図である。図2の測定用部材1は、被測定試料流路(上流側被測定試料流路2a及び下流側被測定試料流路2b)と、収容領域3と、基材粒子供給流路4と、前記収容領域3に設けられた供給口5と、流出防止手段6と、通液手段7と、伸縮膜8a及びポンプ8bを有する流量調節手段8と、貯留部9と、貯留部10とを有している。前記通液手段7は、前記被測定試料流路の流量及び流れ方向を自由に調節することができる。また、前記流量調節手段8は、前記ポンプ8bによる圧力により伸縮膜8aが伸縮することにより、前記上流側被測定試料流路2aの流路を狭くするなどし、流量を調節する。
【0053】
図3Aは、本発明の測定用部材の収容領域に基材粒子が収容されている状態を模式的に示した上方向から見た断面図であり、図3Bは、本発明の測定用部材の収容領域に基材粒子が収容されている状態を模式的に示した側面から見た断面図である。図3A及び図3Bの測定用流路1の収容領域3には、基材粒子11が単層に配置されかつ均一に収容されている。図3A及び図3Bに示す流出防止手段6は、流路幅を横断する突起であり、前記基材粒子11が前記収容領域3以外の被測定試料流路に流出することを防止している。
【0054】
図4A及び図4Bは、本発明の測定用部材の収容領域に基材粒子を収容する収容工程の一例を示した図である。図4Aは、収容工程を始めた直後の様子を示している。収容工程では、まず、通液手段7を作動させ、測定時の被測定試料の流れ方向と順方向の流れを生じさせる(図4Aの矢印の向き)。また、流量調節手段8の伸縮膜8aにより、上流側被測定試料流路2aを狭くする。これらにより、下流側被測定試料流路2b及び基材粒子供給流路4の流量は、前記上流側被測定試料流路2aの流量より多くなる。このことにより、前記基材粒子供給流路4から収容領域3への流れが大きくなり、貯留部9に貯留されていた基材粒子11は前記基材粒子供給流路4を流れて前記収容領域3に入っていく。なお、図4A及び図4Bの矢印X、Y、Zは、流れ方向及び流量を示したものである。矢印X、Y、Zの矢印の向きは、流れ方向を示しており、矢印の太さは、流量の多さを示している。そして、収容工程が終了したときには、図4Bに示すように、前記収容領域3に、前記基材粒子11が単層に配置されかつ均一に収容される。
【0055】
図5A及び図5Bは、本発明の測定用部材の収容領域から基材粒子を除去する除去工程の一例を示した図である。図4Aは、除去工程を始めた直後の様子を示している。除去工程では、まず、通液手段7を作動させ、測定時の被測定試料の流れ方向と逆方向の流れを生じさせる(図5Aの矢印の向き)。また、流量調節手段8の伸縮膜8aにより、上流側被測定試料流路2aを塞ぐ。これらにより、収容領域3から基材粒子供給流路4への流れが大きくなり、前記収容領域3に収容されていた基材粒子11は前記基材粒子供給流路4に流れていく。なお、図5A及び図5Bの矢印X、Yは、流れ方向及び流量を示したものである。矢印X、Yの矢印の向きは、流れ方向を示しており、矢印の太さは、流量の多さを示している。そして、収容工程が終了するころには、図5Bに示すように、前記収容領域3からは、前記基材粒子11が除去される。
【0056】
(標的検出装置)
本発明の標的検出装置は、前記測定用部材と、発光手段と、受光手段とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の手段を有する。
【0057】
<発光手段>
前記発光手段としては、少なくとも光源を備え、前記被測定試料である標的を捕捉する標的捕捉体を担持させた前記基材粒子が収容された前記収容領域に光を照射する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記光源としては、例えば、レーザ、発光ダイオード、ハロゲンランプ、タングステンランプなどが挙げられる。また、前記発光手段は、前記光源を1つ有していてもよく、2つ以上有していてもよい。
【0058】
前記発光手段から発光される光としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、複色光、一の単色光、二以上の単色光が挙げられる。これらの中でも、一の単色光であることが好ましい。そのため、前記発光手段から発光される光が複色光又は二以上の単色光である場合には、前記発光手段は、前記複色光又は二以上の単色光のうちから、一の単色光のみを選択でき、かつ、その選択する単色光を変更することが可能な、単色光選択発光部を備えることが好ましい。
前記単色光選択発光部によれば、前記発光手段から発光された複色光又は二以上の単色光を、一の単色光として前記収容領域に照射することができ、更にその単色光を他の単色光に変更することにより、例えば、前記収容領域内の前記基材粒子に付着した二以上の発色物質の透過光量を測定することができる。
【0059】
−基材粒子−
前記基材粒子は、前記被測定試料である前記標的を捕捉する前記標的捕捉体が担持されている。
【0060】
−−標的−−
前記標的としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、抗体、抗原、アレルゲン、酵素、酵素基質、補酵素、酵素阻害剤、ホスト化合物、ホルモン、ホルモンレセプター、タンパク質、細胞、細胞破砕物、核物質、ウイルス、代謝産物、神経伝達物質、ハプテン、薬物、核酸、カドミウム等の重金属、金属錯体、微生物、寄生虫、細菌、ビオチン、アビジン、レクチン、糖、生理活性物質、生理活性物質受容体、PCB等の環境化学物質、化学種又はこれらの誘導体、などが挙げられる。これらは、検出方法に応じて、標識がされていてもよい。
【0061】
−−標的捕捉体−−
前記標的捕捉体としては、前記被測定試料である前記標的を捕捉することができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記標的がそれぞれ、前記酵素である場合には、例えば該酵素の補酵素であり、前記補酵素である場合には、例えば、該補酵素を補酵素とする酵素であり、前記ホスト化合物である場合には、例えば、該ホスト化合物のゲスト化合物(包接される成分)であり、前記抗体である場合には、例えば、該抗体の抗原としてのタンパク質、カドミウム等の重金属、PCB等の環境化学物質、などであり、前記タンパク質である場合には、例えば、該タンパク質を抗原とする抗体であり、前記核酸である場合には、例えば、該核酸と相補的な核酸、チューブリン、キチン、などであり、前記ホルモンレセプターである場合には、例えば、該ホルモンレセプターに受容されるホルモンであり、前記レクチンである場合には、例えば、該レクチンに受容させる糖であり、前記生理活性物質受容体である場合には、例えば、該生理活性物質受容体に受容される生理活性物質などから形成されるものが挙げられる。
【0062】
−−担持−−
前記基材粒子に前記標的捕捉体を担持させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、物理吸着、化学吸着などが挙げられる。これらは、例えば、水素結合、分子間力(ファン・デル・ワールス力)、配位結合、イオン結合、共有結合などが挙げられる。
【0063】
<受光手段>
前記受光手段としては、前記発光手段から前記収容領域に照射された光のうち、前記収容領域を透過した透過光を受光し、受光した光量を測定可能なものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0064】
<その他の手段>
前記その他の手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、測定手段、相対吸光度計算手段、固定手段などが挙げられる。
−測定手段−
前記測定手段としては、前記受光手段により受光した光量を、電気信号の信号強度として計測可能な手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記受光手段と接続されることにより、前記受光手段により受光した光量を、電気信号の信号強度として変換し、出力する手段が挙げられる。
【0065】
−相対吸光度計算手段−
前記相対吸光度計算手段としては、前記受光手段で測定された透過光の光量について、基準となる光量から相対吸光度を計算する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記収容領域に光を照射し、前記基材粒子を収容した前記収容領域に前記被測定試料を供給した前記収容領域の透過光と、前記被測定試料を含まない基準試料を供給した前記収容領域の透過光とから相対吸光度を計算する相対吸光度計算手段が挙げられる。
【0066】
−固定手段−
前記固定手段は、前記測定用部材を固定する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記測定用部材の一部を挟持部材により挟持して固定する手段が挙げられる。前記固定手段を用いることで、前記収容領域が動かなくなり、前記収容領域に確実に光を照射することができる。
【0067】
(標的検出方法)
本発明の標的検出方法は、収容工程と、捕捉工程と、検出工程とを少なくとも含み、必要に応じて、その他の工程を含む。
【0068】
<収容工程>
前記収容工程としては、前記被測定試料である前記標的を捕捉する前記標的捕捉体を担持させた基材粒子を前記収容領域に収容する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記通液手段を前記下流側被測定試料流路に有し、かつ、前記流量調節手段を前記上流側被測定試料流路に有した状態で、前記通液手段により前記被測定試料流路に測定時の前記被測定試料の流れ方向と順方向の流れを生じさせ、かつ、前記流量調節手段により前記上流側被測定試料流路の流量を、前記下流側被測定試料流路の流量よりも少なくすることにより、前記収容領域に前記基材粒子を収容する工程が、前記基材粒子供給流路から前記収容領域に流れる流量を、前記上流側被測定試料流路から前記収容領域に流れる流量よりも多くし、収容を自動かつ迅速に行うことができる点で好ましい。
【0069】
前記収容工程において使用する前記基材粒子の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記収容領域収容される前記基材粒子の数の2.0倍以上が好ましく、2.0倍以上10倍以下がより好ましく、2.0倍以上4.0倍以下が特に好ましい。前記収容工程において使用する前記基材粒子の数が、前記収容領域収容される前記基材粒子の数の2.0倍未満であると、前記基材粒子供給流路に溜まる過剰な前記基材粒子の数が少なくなることから、前記基材粒子供給流路に溜まった前記基材粒子によって測定時に前記被測定試料が前記基材粒子供給流路に流れ込むのを抑える効果が低くなることがある。前記収容工程において使用する前記基材粒子の数が、前記特に好ましい範囲内であると、過剰な数の前記基材粒子が前記供給口を塞ぎ、かつ前記基材粒子供給流路の流れ抵抗が大きくなり、測定時に前記被測定試料が前記基材粒子供給流路に流れ込むのを効果的に抑制できる点で有利である。
【0070】
<捕捉工程>
前記捕捉工程としては、前記標的を前記被測定試料流路に流し、前記標的に前記収容領域を通過させ前記標的捕捉体が前記標的を捕捉する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記標的捕捉体が前記標的を捕捉する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、物理吸着、化学吸着などが挙げられる。これらは、例えば、水素結合、分子間力(ファン・デル・ワールス力)、配位結合、イオン結合、共有結合などが挙げられる。
【0071】
<検出工程>
前記検出工程としては、前記標的を検出する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記収容領域に光を照射し、照射された光のうち、前記収容領域を透過した透過光を受光し、受光した透過光の光量を測定して標的を検出する工程が挙げられる。この場合、前記収容領域における、前記被測定試料の流れ方向に直交する方向の断面の短手方向の長さ方向と平行な方向に光を照射することが、感度が高い測定ができる点、及び検出の再現性が良い点で好ましい。
【0072】
<その他の工程>
前記その他の工程としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、除去工程などが挙げられる。
【0073】
−除去工程−
前記除去工程としては、前記収容領域に収容された前記基材粒子を前記収容領域から除去し、前記基材粒子供給流路に戻す工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記通液手段を前記下流側被測定試料流路に有し、かつ、前記流量調節手段を前記上流側被測定試料流路に有した状態で、前記通液手段により前記被測定試料流路に測定時の前記被測定試料の流れ方向と逆方向の流れを生じさせ、かつ、前記流量調節手段により前記上流側被測定試料流路の流量を、前記下流側被測定試料流路の流量よりも少なくすることにより、前記基材粒子を前記収容領域に除去する工程が、前記収容領域から前記基材粒子供給流路への流量を、前記収容領域から前記上流側被測定試料流路への流量よりも多くし、除去を自動かつ迅速に行うことができる点で好ましい。
【0074】
本発明の標的検出方法の適用例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、標的及び標的捕捉体のいずれかが抗原、他方が抗体である抗原抗体反応を利用したイムノアッセイが好ましい。
【実施例】
【0075】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全ての本発明の技術的範囲に包含される。
【0076】
(実施例1)
<測定用部材の作製>
PDMSを用いた公知のフォトリソグラフィ工程により、図6A及び図6Bに示す本発明の測定用部材を製造した。具体的には、シリコン基板にフィルム状レジスト(化薬マイクロケム(株)、SU−8フィルム)を積層し、各層ごとに露光した。露光後の基板を現像し表面処理した後、これを鋳型としてPDMSプレポリマー(主剤:硬化剤=10:1(質量比))を塗布し、オーブンで熱硬化(80℃、2時間)させた。硬化したPDMSを鋳型から剥離し、洗浄した後、酸素プラズマ処理してスライドガラス(28mm×76mm)と接合し、測定用部材を作成した。
【0077】
作製した測定用部材1の被測定試料流路(上流側被測定試料流路2a及び下流側被測定試料流路2b)の、被測定試料の流れ方向に直交する方向の断面の形状は略矩形状であり、該略矩形状の長手方向の長さ(W1)は2.0mm、短手方向の長さ(H1)は0.125mmであった。また、収容領域3の被測定試料の流れ方向に直交する方向の断面の形状は略矩形状であり、該略矩形状の長手方向の長さ(W2)は2.0mm、短手方向の長さ(H2)は0.125mm、収容領域3の被測定試料の流れ方向の長さ(L1)は2.0mmであった。収容領域3の被測定試料の流れ方向の長さ(L1)と、前記略矩形状の長手方向の長さ(W2)により形成される面の面積(D)は、4.0mmであった。また、供給口5の形状は略矩形状であり、長手方向の長さ(W3)は0.5mm、短手方向の長さ(H3)は0.125mmであった。また、流出防止手段6は流路幅を横断する突起からなり、高さ(h1)は、0.050mmであった。
【0078】
<収容領域への基材粒子の収容>
基材粒子として体積平均粒子径103μmのポリメタクリル酸メチル製の粒子(以下、「PMMAビーズ」と略すことがある。)を用いた。用いた前記PMMAビーズは、ガンツパールGM−100S−A(ガンツ化成株式会社製)を、2種の異なる孔径の篩い(孔径106μm、及び100μm)を用いて篩い分けして、100μm〜106μmの粒度分布にしたものである。作製した測定用部材1の貯留部9に、水に懸濁させた前記PMMAビーズを入れた。使用した前記PMMAビーズの数は、収容領域3に収容できる前記PMMAビーズの数の4.0倍とした。
続いて、通液手段7(シリンジポンプ、商品名;KDS-120、Kd scientific社製))を作動させ、送液速度を400μL/分とし、被測定試料流路に測定時の被測定試料の流れ方向と順方向の流れを生じさせた。続いて、上流側被測定試料流路2aに設置した流量調節手段8(伸縮膜8a(素材;PDMS)及びポンプ8b(シリンジポンプ、商品名;KDS-120、Kd scientific社製))を用い、前記ポンプ8bの加圧により前記伸縮膜8aを伸ばして前記上流側被測定試料流路2aの流路を狭くすることにより、前記上流側被測定試料流路2aの流量を下流側被測定試料流路2bの流量よりも少なくした。この際、流路には水を通液させた。
上記操作により、基材粒子供給流路4から収容領域3への流れが生じ、前記収容領域3へ前記PMMAビーズが流れていき、前記収容領域3に前記PMMAビーズが収容された。図7に、前記PMMAビーズが前記収容領域3に収容されている途中の写真を示す。図3A及び図3Bに示す模式図と同様に、前記PMMAビーズは、前記収容領域3に単層に配置され、かつ均一に収容された。前記PMMAビーズを前記貯留部9に入れてから収容までにかかった作業時間は1分であった。
なお、前記収容領域3に収容された前記PMMAビーズの表面積の合計面積(d)は、14.4mmであり、前記被測定試料の流れ方向に直交する方向の断面の長手方向とから形成される面の面積(D)と、前記収容領域に収容された全ての前記基材粒子の表面積の合計面積(d)との比(d/D)は3.60であった。
【0079】
<流路の流れの確認>
前記収容領域3に前記PMMAビーズを収容した状態のまま、貯留部10にメチレンブルー1重量%水溶液を入れた。
続いて、前記ポンプ8bによる前記伸縮膜8aへの加圧を止めることで、前記上流側被測定試料流路2aと前記下流側被測定試料流路2bの流量を同量にしてから、被測定試料流路にメチレンブルー溶液を送液速度400μL/分で流した。流し始めてから0.5分経過後の流路の写真を図8示す。メチレンブルー(図8では黒色)が、前記収容領域3から前記基材粒子供給流路4へほとんど流れ込んでいないことを確認した。これは、供給口5の適度な大きさ、過剰な前記PMMAビーズが前記供給口5を塞いだこと、及び前記基材粒子供給流路4に溜まった過剰な前記PMMAビーズが前記基材粒子供給流路4の流れ抵抗を大きくしたことによると考えられる。
【0080】
<収容領域からの基材粒子の除去>
続いて、流量調節手段8の操作は保持した状態で、通液手段7を作動させ、送液速度を400μL/分とし、測定時の被測定試料の流れ方向と逆方向に流れを生じさせた。この際、流路には水を通液させた。すると、前記収容領域3の前記PMMAビーズは迅速に前記収容領域3から除去され、基材粒子供給流路4へと移動した。前記通液手段7により流れを生じさせてから全ての前記PMMAビーズが前記基材粒子供給流路4に流れる時間は、1分であった。
【0081】
(実施例2)
<カドミウム濃度の測定>
実施例1で作製した測定用部材を用いて、抗原抗体反応によるカドミウムの濃度の測定を行った。
−基材粒子への擬似抗原の担持(担持粒子Aの作製)−
基材粒子として前記PMMAビーズを用いた。前記PMMAビーズに擬似抗原の担持を行った。前記PMMAビーズへの擬似抗原の担持は、以下の方法により行った。
まず、0.4gの前記PMMAビーズを900μLのPBS(リン酸緩衝生理食塩水)に懸濁し懸濁液を得た。続いて、該懸濁液に100μLの10%BSA(ウシ血清アルブミン)(シグマアルドリッチ社製)を添加して2時間撹拌し後に、前記懸濁液を100mMホウ酸緩衝液(pH9.8)で4回洗浄した。次に、前記懸濁液に800μLの100mMホウ酸緩衝液(pH9.8)と165μLの1mg/mLイソチオシアネートブチルベンジル−EDTA(ホウ酸緩衝液に溶解)を添加して2時間撹拌した後に、前記懸濁液を50mM MES緩衝液(pH6.5)で4回洗浄した。洗浄後、CdCl水溶液を最終濃度2mMになるように添加し、15分間撹拌した後に50mM MES緩衝液(pH6.5)で4回洗浄した。上記操作により、擬似抗原を担持したPMMAビーズ(以下「担持粒子A」と略すことがある。)を作製した。担持粒子Aの体積平均粒子径は103μmであった。
【0082】
−被測定試料溶液の調製−
−−金コロイド標識抗体液の調製−−
被測定試料には、カドミウム−EDTAに特異的に結合するモノクローナル抗体として、ハイブリドーマNx2C3株(独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに平成16年2月26日付けで受託番号FERM P−19703として寄託されている)により産生されるモノクローナル抗体(以下、「Nx2C3抗体」という)を用いた。
定法に従って直径10nmから20nmの金コロイド粒子を調製し、定法に従ってNx2C3抗体を金コロイド標識し、金コロイド標識抗体液を調製した。
【0083】
−−被測定試料溶液の調製−−
前記金コロイド標識抗体液、カドミウム−EDTA、50mM Tris 緩衝液(PH7.5)を混合し、カドミウム濃度の異なる被測定試料溶液を調製した。調製した被測定試料溶液のカドミウムの濃度は、0.01ppb、0.02ppb、0.1ppb、0.6ppb、1ppb、2ppb、6ppb、11ppb、22ppb、55ppb、112ppb、225ppb、1,124ppb、であった。また、カドミウム−EDTAを加えないブランクの被測定試料溶液も作製した。なお、これら溶液の抗体濃度は0.02ppbとした。
【0084】
−標的検出装置の準備−
非特許文献(イムノアッセイによる絶縁油中のポリ塩化ビフェニルのスクリーニング/大村直也;Thomas R.Glass;佐々木和裕)に記載の携帯型の透過光量測定器(柴田科学社製、Imny)を、前記測定用部材が設置できるよう改造して用いた。光源には、金コロイドの吸収波長である530nmのLEDを用いた。照射された光は前記Nx2C3抗体を標識する金コロイドに吸収され、透過光は、検出セル背面に設置されたフォトダイオードによって光電変換されて電気信号(電圧V)として計測される。
前記透過光量測定器の発光手段から照射される光の光路上に、実施例1で作製した測定用部材を設置した。なお、発光手段から照射される光が収容領域3を透過し、かつ収容領域3における、被測定試料の流れ方向に直交する方向の断面の短手方向の長さ方向と平行な方向に光が照射されるように設置を行った。
【0085】
−収容領域への担持粒子Aの収容−
前記透過光量測定器へ設置した前記測定用部材の貯留部9に、MES緩衝液に懸濁させた前記担持粒子Aを入れた。使用した前記担持粒子Aの数は、収容領域3に収容できる前記担持粒子Aの数の4.0倍とした。
続いて、通液手段7を作動させ、送液速度を400μL/分とし、被測定試料流路に測定時の被測定試料の流れ方向と順方向の流れを生じさせた。続いて、上流側被測定試料流路2aに設置した流量調節手段8(伸縮膜8a及びポンプ8b)を用い、前記ポンプ8bの加圧により前記伸縮膜8aを伸ばして前記上流側被測定試料流路2aの流路を狭くすることにより、前記上流側被測定試料流路2aの流量を下流側被測定試料流路2bの流量よりも少なくした。
上記操作により、基材粒子供給流路4から前記収容領域3への流れが生じ、前記収容領域3へ前記担持粒子Aが流れていき、前記収容領域3に前記担持粒子Aが収容された。前記担持粒子Aを前記貯留部9に入れてから収容までにかかった作業時間は1分であった。なお、気泡の混入は見られなかった。
なお、前記収容領域3に収容された前記担持粒子Aの表面積の合計面積(d)は、14.4mmであった。
【0086】
−ネガティブコントロールの測定−
前記担持粒子Aが収容された前記収容領域3へ、前記透過光量測定器により光を照射し、透過光量を測定した。このときの信号値をネガティブコントロールとした。
【0087】
−カドミウム濃度測定−
貯留部10へ前記被測定試料溶液を流し込み、前記上流側被測定試料流路2aを経由して前記収容領域3へ通液した。通液は、前記通液手段7により行った。送液速度は400μL/分とし、前記被測定試料溶液の送液量は2mLとした。
2mLの前記被測定試料溶液を前記収容領域3に通液した後、前記収容領域3にPBS−BSA緩衝液1mLを送液速度400μL/分で通液し、前記収容領域3及び被測定試料流路に残った、前記担持粒子Aの抗原と反応しなかった前記被測定試料を除去した。そして、1mLを通液し終わったときの透過光量を測定した。このときの信号値をポジティブコントロールとした。なお、通液中に試料液が漏れ出ることはなかった。
【0088】
前記「標的検出装置の準備」から前記「カドミウム濃度測定」までの一連の測定を、ブランク(カドミウム濃度0nM)及び各種カドミウム濃度の被測定試料溶液について、各3回行った。被測定試料溶液に含まれるカドミウム濃度が高いほど信号値は高く、カドミウム濃度が低いほど信号値は低くなった。
【0089】
−測定結果の解析−
前記一連の測定におけるポジティブコントロール(P)とネガティブコントロール(N)とから、その測定における吸光度L(L=log10(N/P))を求めた。
そして、カドミウム濃度が0ppbの被測定試料溶液による測定結果の吸光度(L)を基準(1.0)として、各カドミウム濃度の被測定試料溶液による測定結果の吸光度を標準化(L/L)した。そして、L/Lを標準化吸光度とした。
標準化吸光度とカドミウム濃度との関係を図9に示す。
【0090】
また、各カドミウム濃度における測定結果の測定誤差及び検出の再現性を評価するため、各カドミウム濃度における3回の測定結果の変動係数(%)を計算した。変動係数の計算式は、「変動係数(%)=100×(標準化吸光度の標準偏差)/(標準化吸光度の平均値)」である。変動係数を図10及び図11に示す。変動係数の平均値は2%であり、測定誤差が非常に少なく、検出の再現性は非常に良好であった。
【0091】
(比較例1)
<カドミウム濃度の測定>
比較実験として、特許文献3(特開2006−215013号公報)の実験例3に記載の測定用セルを用いて、抗原抗体反応によるカドミウム濃度の測定を行った。
【0092】
−測定用セル−
前記測定用セルは、ポリスチレン素材で構成されており、セル内の大きさが内径2mm×高さ5.5mmの筒状のセルであった。前記測定用セルは、使用する基材粒子の大きさに比べ、セルの内径が大きいため、基材粒子は、セル内において、多層、即ち、立体的に配置される。
【0093】
−担持粒子−
基材粒子として、前記実施例2で作製した担持粒子Aを使用した。
【0094】
−被測定試料溶液−
前記実施例2の被測定試料溶液の調製において、カドミウム濃度を、0ppb、0.05ppb、0.5ppb、5ppb、50ppbとした以外は、前記実施例2の被測定試料溶液の調製方法と同様にして、被測定試料溶液を調製した。
【0095】
−測定用セルへの担持粒子Aの収容−
前記測定用セルに担持粒子Aを手で収容し、続いて、前記担持粒子Aが漏れ出ないように、開口に綿状ポリプロピレンを詰め込んだ。収容に要した作業時間は3分であった。
【0096】
−ネガティブコントロールの測定−
実施例2で用いた透過光量測定器を使用し、前記測定用セルを光路上に配置した。
続いて、PBS−BSA緩衝液1mLを前記測定用セルに通液した。通液中に前記測定用セルに光を照射し、透過光量を測定した。このときの信号値をネガティブコントロールとした。なお、前記測定用セルには、気泡がわずかに見られた。
【0097】
−カドミウム濃度測定−
続いて、被測定試料溶液を前記測定用セルに通液した。送液速度は0.2mL/分とし、被測定試料溶液の送液量は2mLとした。
2mLの被測定試料溶液を前記測定用セルに通液した後、PBS−BSA緩衝液1mLを更に通液し、前記測定用セルに残った、反応しなかった被測定試料を除去した。そして、2mLを通液し終わったときの透過光量を測定した。このときの信号値をポジティブコントロールとした。
【0098】
前記「測定用セルへの担持粒子Aの収容」から前記「カドミウム濃度測定」までの一連の測定を、各種カドミウム濃度の被測定試料溶液について、各3回行った。被測定試料溶液に含まれるカドミウム濃度が高いほど信号値は高く、カドミウム濃度が低いほど信号値は低くなった。
【0099】
−測定結果の解析−
前記一連の測定におけるポジティブコントロール(P)とネガティブコントロール(N)とから、その測定における吸光度L(L=log10(N/P))を求めた。
そして、カドミウム濃度が0ppbの被測定試料溶液による測定結果の吸光度(L)を基準(1.0)として、各カドミウム濃度の被測定試料溶液による測定結果の吸光度を標準化(L/L)した。そして、L/Lを標準化吸光度とした。
【0100】
また、各カドミウム濃度における測定結果の測定誤差及び検出の再現性を評価するため、各カドミウム濃度における3回の測定結果の変動係数(%)を計算した。変動係数の計算式は、「変動係数(%)=100×(標準化吸光度の標準偏差)/(標準化吸光度の平均値)」である。変動係数を図11及び図12に示す。変動係数の平均値は7%であった。
【0101】
(比較例2)
<PCB濃度の測定>
比較実験として、特許文献3(特開2006−215013号公報)の実験例2に記載の測定用セルを用いて、抗原抗体反応によるPCB濃度の測定を行った。
【0102】
−測定用セル−
前記測定用セルは、ポリスチレン素材で構成されており、セル内の大きさが内径2mm×高さ5.5mmの筒状のセルであった。前記測定用セルは、使用する基材粒子の大きさに比べ、セルの内径が大きいため、基材粒子は、セル内において、多層、即ち、立体的に配置される。
【0103】
−基材粒子への擬似抗原の担持(担持粒子Aの作製)−
基材粒子として前記PMMAビーズを用いた。前記PMMAビーズに擬似抗原の担持を行った。前記PMMAビーズへの擬似抗原の担持は、以下の方法により行った。
まず、ジクロロフェノール誘導体とBSA(牛血清アルブミン)との複合体(抗原複合体:下記化合物X)0.1gを1mLのジメチルスルホキシドに溶解し、その溶液をメタノールにより100倍に希釈した(溶液A)。一方、BSA(牛血清アルブミン)(商品名;アルブミンウシ血清由来(A−9647)、シグマアルドリッチ社製)0.1gを10mLの蒸留水に溶解して10%のBSA蒸留水溶液とした(溶液B)。そして、溶液A1.6mL、溶液B1.0mL及び蒸留水7.4mLを混合して、この10mL混合液Cを一晩(4時間以上)撹拌した。次に、0.4gの前記PMMAビーズを0.1mLの混合液Cと0.9mLのPBS(リン酸緩衝生理食塩水)に加えて2時間撹拌し、更に溶液Bを0.1mL加えて2時間撹拌した。これにより、擬似抗原を担持したPMMAビーズ(以下「担持粒子B」と略すことがある。)を作製した。
【化1】
ただし、前記化合物X中、「Protein」はBSAを表す。
【0104】
−被測定試料溶液の調製−
試験管に被測定試料であるPCB(KC600、商品名;カネクロール KC−600、GLサイエンス社製)、pH7.5のPBS−BSA緩衝液、1次抗体(マウス抗PCB抗体)(商品名;RDI−PCBabm−35、Fitzgerald Industries International, Inc.社製)、及び2次抗体(金コロイド標識ヤギ抗マウス抗体)(商品名;AffiniPure Goat Anti−Mouse IgG(H+L)(no.155−005−003)、Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc.社製)を順次混ぜ合わせ、それぞれ免疫反応させた。1次抗体濃度は、500pMとし、2次抗体濃度は、6nMとした。そして、5種類のPCB濃度(0ppb、0.5ppb、2ppb、5ppb及び10ppb)の被測定試料溶液を調製した。
【0105】
−測定用セルへの担持粒子Bの収容−
前記測定用セルに担持粒子Bを手作業により収容した。続いて、前記担持粒子Bが漏れないように、開口に綿状ポリプロピレンを詰め込んだ。収容に要した作業時間は3分であった。
【0106】
−ネガティブコントロールの測定−
実施例2で用いた透過光量測定器を使用し、前記測定用セルを光路上に配置した。
続いて、PBS−BSA緩衝液(PBS溶液に1g/Lの割合でBSAを溶解し、0.1g/Lの割合でアジ化ナトリウムを溶解した溶液)1mLを前記測定用セルに通液した。通液中に前記測定用セルに光を照射し、透過光量を測定した。このときの信号値をネガティブコントロールとした。なお、前記測定用セルには、気泡がわずかに見られた。
【0107】
−PCB濃度測定−
続いて、被測定試料溶液を前記測定用セルに通液した。送液速度は0.2mL/分とし、被測定試料溶液の送液量は2mLとした。
2mLの被測定試料溶液を前記測定用セルに通液した後、PBS−BSA緩衝液1mLを更に通液し、前記測定用セルに残った、反応しなかった被測定試料を除去した。そして、2mLを通液し終わったときの透過光量を測定した。このときの信号値をポジティブコントロールとした。
【0108】
前記「測定用セルへの担持粒子Bの収容」から前記「PCB濃度測定」までの一連の測定を、各種PCB濃度の被測定試料溶液について、各3回行った。被測定試料溶液に含まれるPCB濃度が高いほど信号値は高く、PCB濃度が低いほど信号値は低くなった。
【0109】
−測定結果の解析−
前記一連の測定におけるポジティブコントロール(P)とネガティブコントロール(N)とから、その測定における吸光度L(L=log10(N/P))を求めた。
そして、PCB濃度が0ppbの被測定試料溶液による測定結果の吸光度(L)を基準(1.0)として、各PCB濃度の被測定試料溶液による測定結果の吸光度を標準化(L/L)した。そして、L/Lを標準化吸光度とした。
【0110】
また、各PCB濃度における測定結果の測定誤差及び検出の再現性を評価するため、各PCB濃度における3回の測定結果の変動係数(%)を計算した。変動係数の計算式は、「変動係数(%)=100×(標準化吸光度の標準偏差)/(標準化吸光度の平均値)」、である。変動係数を図13に示す。変動係数の平均値は6%であった。
【0111】
本発明の測定用部材を使用した標的検出方法は、基材粒子の収容開始から透過光量の測定終了まで、10分以内で行うことができた。これは、比較例1及び比較例2の測定用セルを用いた場合、従来の機器分析、ELISA、並びにイムノクロマト法と比較して非常に短時間であった。
【0112】
測定時に気泡が混入すると、水と気泡(空気)との光の透過性の違いにより、測定誤差が生じやすい。そして、通常、基材粒子を測定セルに収容する際には、気泡が混入しやすい。一方、本発明の標的検出方法においては、基材粒子を液体と混合し気泡を排除してから、本発明の測定用部材に収容することが可能なため、気泡の混入を防止できる。
【0113】
本発明の測定用部材においては、被測定試料溶液が漏れ出ることはなかった。一方、比較例1の測定用セルにおいては、気泡の混入を少なくするために、測定用セルを流路に配置する際、被測定試料溶液を通液しながら配置を行うため、被測定試料溶液が漏れることを防ぐことは難しい。そして、漏れ出た被測定試料溶液は、受光手段や発光手段に付着し測定誤差を生じさせる。
【0114】
図9の結果から、本発明の測定用部材を使用した標的検出方法では、カドミウム濃度1ppb〜20ppbにおいて測定誤差がほとんどなく、検出の再現性が良く、更に検出感度が高い定量的な検出が可能であることが示された。この検出範囲は、0.001mg/kg〜0.02mg/kgに相当し、農林水産省が示す食品中のカドミウム基準値であるコーデックスの基準値(平成18年4月現在の基準値)に十分に対応可能であった。
【0115】
図10に示すように、実施例2の測定における各カドミウム濃度の変動係数(測定毎のばらつき)は極めて小さかった。また図11に示すように、比較例1の測定における変動係数と比べて、非常に優れていることが確認できる。これは、基材粒子が収容領域内に単層で規則正しく配列したことに起因する。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の測定用部材は、手作業による粒子の測量及び収容の手間を省き、気泡の混入及び試料の漏れを防ぎ、かつ短時間で測定誤差が少なく、検出の再現性が良く、測定感度が高い測定をすることができることから、簡便かつ迅速な測定用部材としてイムノアッセイなどに好適に使用できる。
【符号の説明】
【0117】
1 測定用部材
2a 被測定試料流路(上流側被測定試料流路)
2b 被測定試料流路(下流側被測定試料流路)
3 収容領域
4 基材粒子供給流路
5 供給口
6 流出防止手段
7 通液手段(ポンプ)
8 流量調節手段
8a 伸縮膜
8b ポンプ
9 貯留部
10 貯留部
11 基材粒子
図10
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図11
図12
図13