特許第5726493号(P5726493)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5726493
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】溝付き麺
(51)【国際特許分類】
   A23L 1/16 20060101AFI20150514BHJP
【FI】
   A23L1/16 B
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-266058(P2010-266058)
(22)【出願日】2010年11月30日
(65)【公開番号】特開2012-115173(P2012-115173A)
(43)【公開日】2012年6月21日
【審査請求日】2013年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】日清フーズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000113539
【氏名又は名称】マ・マーマカロニ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔
(74)【代理人】
【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子
(72)【発明者】
【氏名】木村 竜介
(72)【発明者】
【氏名】朝比奈 健太
(72)【発明者】
【氏名】鍛治尾 房樹
(72)【発明者】
【氏名】大場 由貴
【審査官】 藤井 美穂
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−211337(JP,A)
【文献】 特開2009−055896(JP,A)
【文献】 特開2009−055870(JP,A)
【文献】 特開2010−233515(JP,A)
【文献】 特開2011−004701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 1/16 − 1/162
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
麺線方向に沿って複数の溝が形成されると共に麺線の横断面がほぼ円形の主外形を有する溝付き麺において、
麺線の横断面は、中心部に位置し且つ麺線の直径に対して26〜41%の直径を有するほぼ円形の芯領域と、前記複数の溝がそれぞれ前記芯領域を中心として前記芯領域の外周部から麺線の表面まで渦巻き状に湾曲して延在する断面形状を有することにより前記芯領域の外周部に形成され且つ互いに同一の回転方向を向いた複数の鉤形状部とを備え、
各鉤形状部は、前記芯領域からほぼ麺線の径方向に延びる脚部と、前記脚部の先端からほぼ麺線の周方向に延びる羽根部とを有し、
前記脚部は、麺線の直径に対して18〜30%の幅を有し、
前記複数の溝は、麺線の横断面において、それぞれ、前記芯領域の外周部の接線方向に延びるように最深部の側面が前記芯領域の外周部に接すると共に前記芯領域の外周部から麺線の表面に向かうにしたがって次第に大きくなる溝幅を有し、
前記羽根部の外周部は、前記脚部に接続される基端部から先端部まで円弧状に延びると共に先端部側よりも基端部側の方が麺線の中心に向かって入り込み、前記羽根部の外周部の先端部側は、麺線の主外形を示す円に接しているが、前記羽根部の外周部の基端部側は、麺線の主外形を示す円より所定の距離だけ内側に位置していることを特徴とする溝付き麺。
【請求項2】
麺線の横断面において、前記鉤形状部の前記羽根部の先端部は、所定の曲率で湾曲している請求項1に記載の溝付き麺。
【請求項3】
前記複数の溝は、互いにほぼ均等な間隔で配置された2〜4本のうちいずれかの本数の溝からなる請求項1または2に記載の溝付き麺。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、溝付き麺に係り、特に、麺線方向に沿って複数の溝が形成されると共に麺線の横断面がほぼ円形の主外形を有する溝付き麺に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、茹で時間の短縮を目的として、麺線方向に沿って切込みまたは溝を付した麺が提案されている。例えば、特許文献1には、ほぼ円形断面の麺線の中心部にまで至らない深さの4本の楔形溝が形成された麺、および、ほぼ円形断面の麺線の中心部にまで到達する深さの1本の楔形溝または矩形溝が形成された麺が開示されている。
【0003】
ところが、麺線の中心部にまで至らない楔形溝を形成したのでは、溝なしの麺よりは茹で時間を短縮することができるものの、溝が浅いために調理時に熱が麺の内部に伝わりにくく、茹で時間の大幅な短縮を図ることができなかった。また、麺線の中心部にまで到達する楔形溝または矩形溝が形成された麺は、溝なしの麺に対して茹で時間を最大1/2程度に短縮することが可能であるが、その反面、麺線の中心部が早く茹で上がるために、例えばスパゲティにおいて要求されている「中心に芯の残る良好な食感(アルデンテ)」を得ることが困難であった。
【0004】
これに対して、特許文献2には、円形断面の麺線の直径に対し20〜30%の深さのほぼ矩形状の4本の溝を均等な間隔で形成することにより、中心に芯の残る食感を得ようとする早茹でスパゲティが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−6172号公報
【特許文献2】特開2001−17104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に例示された溝は、麺線の横断面において、深さ0.45mmに対して開口幅0.3mm、底部の幅0.4mmを有するものであり、このような幅広の矩形溝では、茹で上がった際に溝が十分に塞がれずに残ってしまい、溝なしの麺とは異なる食感になるおそれがある。
また、特許文献2で採用されている溝は、麺線の直径に対し20〜30%の深さしか有しないほぼ矩形の断面形状を呈しており、1本の溝の表面積は、特許文献1に記載された麺線の中心部にまで到達する楔形溝または矩形溝に比べて小さなものである。このため、特許文献2のスパゲティでは、4本の矩形溝を形成しても、溝なしの麺に対して茹で時間をほぼ1/2に短縮するに留まっている。
【0007】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、茹で時間を溝なしの麺よりも大幅に短縮すると共に茹で上がった後に優れた食感を得ることができる溝付き麺を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る溝付き麺は、麺線方向に沿って複数の溝が形成されると共に麺線の横断面がほぼ円形の主外形を有する溝付き麺において、麺線の横断面は、中心部に位置し且つ麺線の直径に対して26〜41%の直径を有するほぼ円形の芯領域と、複数の溝がそれぞれ芯領域を中心として芯領域の外周部から麺線の表面まで渦巻き状に湾曲して延在する断面形状を有することにより芯領域の外周部に形成され且つ互いに同一の回転方向を向いた複数の鉤形状部とを備え、各鉤形状部は、芯領域からほぼ麺線の径方向に延びる脚部と、脚部の先端からほぼ麺線の周方向に延びる羽根部とを有し、脚部は、麺線の直径に対して18〜30%の幅を有し、複数の溝は、麺線の横断面において、それぞれ、芯領域の外周部の接線方向に延びるように最深部の側面が芯領域の外周部に接すると共に芯領域の外周部から麺線の表面に向かうにしたがって次第に大きくなる溝幅を有し、羽根部の外周部は、脚部に接続される基端部から先端部まで円弧状に延びると共に先端部側よりも基端部側の方が麺線の中心に向かって入り込み、羽根部の外周部の先端部側は、麺線の主外形を示す円に接しているが、羽根部の外周部の基端部側は、麺線の主外形を示す円より所定の距離だけ内側に位置しているものである。
【0009】
麺線の横断面において、鉤形状部の前記羽根部の先端部は、所定の曲率で湾曲していることが好ましい。
数の溝は、互いにほぼ均等な間隔で配置された2〜4本のうちいずれかの本数の溝とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、麺線の横断面が、麺線の直径に対して26〜41%の直径を有するほぼ円形の芯領域と、芯領域の外周部に形成された複数の鉤形状部とを備え、各鉤形状部の脚部が麺線の直径に対して18〜30%の幅を有すると共に羽根部の外周部が先端部側よりも脚部に接続される基端部側の方が麺線の中心に向かって入り込んでいるので、茹で時間を溝なしの麺よりも大幅に短縮することができると共に茹で上がった後に中心に芯の残る優れた食感を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の実施の形態1に係る溝付き麺を示す部分斜視図である。
図2】実施の形態1に係る溝付き麺を示す横断面図である。
図3】実施の形態1に係る溝付き麺の鉤形状部を示す横断面図である。
図4】実施の形態2に係る溝付き麺を示す横断面図である。
図5】実施の形態3に係る溝付き麺を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に示す好適な実施の形態に基づいて、この発明を詳細に説明する。
実施の形態1
図1に、この発明の実施の形態1に係る溝付き麺10を示す。麺10は、図中Lで示される麺線方向に延伸したスパゲティの乾麺からなっている。麺10の外周部には、麺線方向Lに沿って3本の溝12が形成されている。
【0013】
図2に示されるように、麺線は、その横断面において、ほぼ円形の主外形を有する。すなわち、3本の溝12がないものと仮定した場合に、麺10は、ほぼ円Cを描くような断面形状を有している。さらに、麺線の横断面の中心部には、ほぼ円形の芯領域14が確保されている。この芯領域14は、溝12が存在しない中実の領域である。
それぞれの溝12は、芯領域14を中心として芯領域14の外周部から麺線の表面まで渦巻き状に湾曲して延在する断面形状を有している。それぞれの溝12は、芯領域14の外周の接線方向に延びるように溝12の最深部の側面12aが芯領域14の外周に接しており、芯領域14の外周部から麺線の表面に向かうにしたがって次第に大きくなるような溝幅を有している。
【0014】
3本の溝12は、互いに同一の回転方向に湾曲する同一の断面形状を有し、麺10の周方向に沿って均等な間隔で配置されている。
このような溝12の存在により、麺線の横断面には、互いに同一の回転方向を向いた3つの鉤形状部16が、芯領域14の外周部に形成されている。
【0015】
図3に斜線が付された部分が1つの鉤形状部16を示している。鉤形状部16は、芯領域14からほぼ麺線の径方向に延びる脚部18と、脚部18の先端からほぼ麺線の周方向に延びる羽根部20とを有している。脚部18と羽根部20は、互いに円滑に接続され、一体となって鉤形状を呈している。羽根部20の外周部22は、脚部18に接続されている羽根部20の基端部24から羽根部20の先端部26まで円弧状に延びており、先端部26側よりも基端部24側の方が麺線の中心に向かって入り込んでいる。このため、図3に示されるように、外周部22の先端部26側は、麺線の主外形を示す円Cに接しているが、外周部22の基端部24側は、円Cより距離Gだけ内側に位置している。
また、羽根部20の先端部26は、尖っておらず、所定の曲率で湾曲した丸み形状を有している。
【0016】
ほぼ円形の芯領域14の直径D2は、麺線の直径D1、すなわち麺線の主外形を示す円Cの直径、に対して26〜41%の値に設定され、各鉤形状部16の脚部18の幅Wは、麺線の直径D1に対して18〜30%の値に設定されている。
なお、麺10のサイズは特に限定されるものではないが、例えば、麺線の直径D1を1.8〜2.8mm、麺線の長さを250mmあるいは165mmとすることができる。
このような溝付き麺10は、図2に示した麺線の断面形状に対応する形状の貫通孔が形成されたダイスを用いて麺材料を押出成形した後、乾燥させることにより製造することができる。
【0017】
調理の際に麺10を高温の湯の中に投入して茹でると、麺線の外周面を通して水分と熱が麺線の内部へ浸透するが、このとき、3本の溝12の中にも高温の湯が入り込み、麺線の外周面だけでなく、3本の溝12の内壁部分からも水分と熱が麺線の内部へ浸透する。上述したように、それぞれの溝12は、麺線の横断面において、芯領域14の外周部から麺線の表面まで湾曲して延在しているので、大きな表面積を有している。このため、水分と熱が効率よく迅速に麺線の内部に吸収される。
【0018】
ただし、麺線の横断面の中心部には芯領域14が存在しており、それぞれの溝12は芯領域14の内部にまで至っていないため、芯領域14には水分と熱が浸透しにくい構造となっている。したがって、芯領域14以外の麺線部分が適度に茹で上がった時点で、芯領域14にわずかに芯が残ることとなる。
このような3本の溝12と芯領域14の存在により、極めて短時間に茹で上がる一方、中心に芯の残る良好な食感(アルデンテ)を得ることが可能となる。例えば電子レンジによる短時間での調理でも、優れた食感を得ることができる。
【0019】
また、麺10は、高温の湯の中で茹でることにより、吸水して膨張し、3本の溝12が塞がる。このとき、各鉤形状部16の羽根部20の外周部22は、先端部26側よりも基端部24側の方が麺線の中心に向かって入り込んでいるため、各鉤形状部16の羽根部20の先端部26と、隣接する鉤形状部16の羽根部20の基端部24とがほぼ同位置で繋がり、ほぼ円形の断面形状となる。さらに、それぞれの溝12は、芯領域14の外周部から麺線の表面に向かうにしたがって溝幅が次第に大きくなる、すなわち、麺線の表面に位置する開口端から最深部に向かうにしたがって溝幅が次第に小さくなるように形成されているので、麺10を茹でた際に、溝12は容易に閉じられる。このため、溝なしの麺と同様の外観および舌触りが得られることとなる。
【0020】
ここで、麺線の直径D1に対する芯領域14の直径D2の比率D2/D1を種々変化させた溝付き麺を製造し、それぞれ麺の強度と茹で時間を3分として茹で上げた麺の食感を測定したところ、以下の表1のような結果が得られた。
【0021】
【表1】
【0022】
麺の強度は、比率D2/D1が小さいほど弱く割れやすくなり、比率D2/D1が大きいほど強くなる。また、麺の食感は、比率D2/D1が小さいほど柔らかく、比率D2/D1が大きいほど硬いものとなる。そして、比率D2/D1が26〜41%のときに、麺の強度は適度に強く割れにくく、麺の食感はアルデンテ状で良好となり、麺の強度と食感のバランスが優れることがわかった。
このため、芯領域14の直径D2は、麺線の直径D1に対して26〜41%の値に設定されている。
【0023】
また、麺線の直径D1に対する各鉤形状部16の脚部18の幅Wの比率W/D1を種々変化させた溝付き麺を製造し、それぞれ麺の強度と茹で時間を3分として茹で上げた麺の食感を測定したところ、以下の表2のような結果が得られた。
【0024】
【表2】
【0025】
麺線の直径D1に対する芯領域14の直径D2の比率D2/D1を変化させた場合と同様に、麺の強度は、比率W/D1が小さいほど弱く割れやすくなり、比率W/D1が大きいほど強くなる。また、麺の食感は、比率W/D1が小さいほど柔らかく、比率W/D1が大きいほど硬いものとなる。そして、比率W/D1が18〜30%のときに、麺の強度は適度に強く割れにくく、麺の食感はアルデンテ状で良好となり、麺の強度と食感のバランスが優れることがわかった。
このため、各鉤形状部16の脚部18の幅Wは、麺線の直径D1に対して18〜30%の値に設定されている。
【0026】
さらに、各鉤形状部16の羽根部20の先端部26の曲率半径を種々変化させた溝付き麺を製造し、それぞれダイスから麺材料を押し出す際に羽根部20の先端部26に不規則な欠陥、いわゆるササクレが発生するか否かと、茹で時間を3分として茹で上げた麺の互いに隣接する鉤形状部16の羽根部20の基端部24と先端部26との繋ぎ目を観察したところ、以下の表3のような結果が得られた。
【0027】
【表3】
【0028】
羽根部20の先端部26の曲率半径が小さいほど、麺の繋ぎ目はなくなるが、ササクレが発生しやすくなり、逆に、曲率半径が大きいほど、ササクレは発生しなくなるが、麺の繋ぎ目が目立ってくる。そして、曲率半径が0.07〜0.14mmのときに、ササクレが発生せず、麺の繋ぎ目も肉眼で認識できないほどになることがわかった。
このため、各鉤形状部16の羽根部20の先端部26は、0.07〜0.14mmの曲率半径で湾曲していることが好ましい。
【0029】
なお、図2に示した溝12は、その横断面において、湾曲形状の内縁部と外縁部の双方が共に湾曲していたが、これに限るものではなく、内縁部と外縁部のうち、一方のみが湾曲し、他方が直線状に形成された溝であってもよい。
また、図2に示される溝12の最深部は、丸みを有していたが、これに限るものではなく、尖った形状としてもよい。
【0030】
実施の形態2
図4に、実施の形態2に係る溝付き麺30の横断面を示す。図2に示した実施の形態1の溝付き麺10は3本の溝12を有していたが、この実施の形態2の溝付き麺30は、麺線方向に沿って形成された2本の溝32を有している。
実施の形態1の溝付き麺10と同様に、麺線は、その横断面において、ほぼ円形の主外形を有し、麺線の中心部にほぼ円形の芯領域34が確保されている。2本の溝32は、麺30の周方向に沿って均等な間隔で配置、すなわち、互いに対向して配置され、それぞれ芯領域34を中心として芯領域34の外周部から麺線の表面まで渦巻き状に湾曲して延在する断面形状を有し、芯領域34の外周部から麺線の表面に向かうにしたがって次第に大きくなる溝幅を有している。
【0031】
このような2本の溝32の存在により、麺線の横断面に、互いに同一の回転方向を向いた2つの鉤形状部36が、芯領域34の外周部に形成されている。上述した実施の形態1と同様に、各鉤形状部36の羽根部の円弧状の外周部は、先端部側よりも基端部側の方が麺線の中心に向かって入り込んでおり、芯領域34の直径は、麺線の直径、すなわち麺線の主外形を示す円Cの直径、に対して26〜41%の値に設定され、各鉤形状部36の脚部の幅は、麺線の直径に対して18〜30%の値に設定されている。
このような溝付き麺30でも、適度に強く割れにくい強度を有し、短時間に茹で上がって2本の溝32がそれぞれ閉じられ、溝なしの麺と同様の外観が得られると共にアルデンテ状の良好な食感が得られる。
【0032】
実施の形態3
図5に、実施の形態3に係る溝付き麺40の横断面を示す。この溝付き麺40は、麺線方向に沿って形成された4本の溝42を有している。
麺線は、その横断面において、ほぼ円形の主外形を有し、麺線の中心部にほぼ円形の芯領域44が確保されている。4本の溝42は、麺40の周方向に沿って均等な間隔で配置され、それぞれ芯領域44を中心として芯領域44の外周部から麺線の表面まで渦巻き状に湾曲して延在する断面形状を有し、芯領域44の外周部から麺線の表面に向かうにしたがって次第に大きくなる溝幅を有している。
【0033】
このような4本の溝42の存在により、麺線の横断面に、互いに同一の回転方向を向いた4つの鉤形状部46が、芯領域44の外周部に形成されている。上述した実施の形態1および2と同様に、各鉤形状部46の羽根部の円弧状の外周部は、先端部側よりも基端部側の方が麺線の中心に向かって入り込んでおり、芯領域44の直径は、麺線の直径、すなわち麺線の主外形を示す円Cの直径、に対して26〜41%の値に設定され、各鉤形状部46の脚部の幅は、麺線の直径に対して18〜30%の値に設定されている。
このような溝付き麺40でも、適度に強く割れにくい強度を有し、短時間に茹で上がって4本の溝42がそれぞれ閉じられ、溝なしの麺と同様の外観が得られると共にアルデンテ状の良好な食感が得られる。
【0034】
この発明は、スパゲティ等のパスタの他、そば、うどん、ラーメン等の各種の麺に適用することができる。
また、この発明は、乾麺の他、生麺、茹麺、蒸麺、即席麺等、各種の形態の麺に適用することが可能である。ただし、乾麺は、生麺等に比して茹で時間が長いため、この発明の適用による茹で時間短縮の効果が高い。なお、乾麺の製造においては、乾燥したときに上述したこの発明の溝付き麺となるように生麺を成形し、その後、生麺を調湿乾燥し、冷却して、製品とすればよい。
なお、押出成形により麺を製造する場合には、ダイスの貫通孔の形状を麺線の横断面の形状に対応するものとすることにより、製麺と溝形成を同時に行うことができるので、この発明の適用が容易となる。
【符号の説明】
【0035】
10,30,40 溝付き麺、12,32,42 溝、12a 側面、14,34,44 芯領域、16,36,46 鉤形状部、18 脚部、20 羽根部、22 外周部、24 基端部、26 先端部、D1 麺線の直径、D2 芯領域の直径、W 脚部の幅。
図1
図2
図3
図4
図5