【課題を解決するための手段】
【0020】
一実施形態において、本発明の対象である前記拮抗薬は、FGF−R4受容体のD2−D3ドメインに結合する。有利な一実施形態において、本発明の対象である前記拮抗薬は、FGF−R4受容体のD2ドメインに結合する。更により有利な一実施形態において、前記拮抗薬は、配列番号70の配列に結合する。
【0021】
有利には、FGF−R4受容体特異的拮抗薬は、FGF−R4受容体に対して、Biacore法によって決定される10
−8M未満、5×10
−9M未満、2×10
−9M未満又は1×10
−9M未満のK
Dを有する。
【0022】
有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬は、ヒトFGF−R4及びマウスFGF−R4の両方に対して活性である。
【0023】
別の有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬は、ヒトFGF−R4、マウスFGF−R4及びラットFGF−R4に対して同時に活性である。
【0024】
有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体は、配列番号9、10、11、12、13、14、73、74、75、78、79、80、83、84、85、88、89、90、93、94、95、98、99、100、103、104、105、108、109若しくは110と同一の配列を有する少なくとも1つのCDR、又は配列番号9、10、11、12、13、14、73、74、75、78、79、80、83、84、85、88、89、90、93、94、95、98、99、100、103、104、105、108、109若しくは110の配列と比較して1若しくは2つのアミノ酸だけ配列が異なる少なくとも1つのCDRを含むが、前記抗体は、その結合特異性を保持する。
【0025】
特に有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体は、配列番号9、10、11、12、13、14、73、74、75、78、79、80、83、84、85、88、89、90、93、94、95、98、99、100、103、104、105、108、109若しくは110の配列のCDR、又は上述した配列とそれぞれ比較して1若しくは2つのアミノ酸だけ配列が異なるCDRを含むが、これは、前記抗体のFGF−R4受容体結合特異性を改変しない。
【0026】
有利な一実施形態において、本発明の抗体は、少なくとも1つの重鎖及び少なくとも1つの軽鎖を含み、前記重鎖は、配列番号9、10及び11、又は73、74及び75、83、84及び85、又は93、94及び95、又は103、104及び105から構成される群から選択されるアミノ酸配列を有する3つのCDR配列を含み、前記軽鎖は、配列番号12、13及び14、又は78、79及び80、又は88、89及び90、又は98、99及び100、又は108、109及び110から構成される群から選択されるアミノ酸配列を有する3つのCDR配列を含む。
【0027】
有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体の重鎖可変領域は、配列番号6、77、87、97又は107の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%の同一性を有する配列を含む。
【0028】
有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体の軽鎖可変領域は、配列番号8、72、82、92又は102の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%の同一性を有する配列を含む。
【0029】
また、本発明の対象は、配列番号5、76、86、96又は106の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる可変領域を含む重鎖を含むFGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体でもある。
【0030】
また、本発明の対象は、配列番号7、71、81、91又は101の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる可変領域を含む軽鎖を含むFGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体でもある。
【0031】
また、本発明の対象は、配列番号6、77、87、97又は107のポリペプチド配列の可変領域を含む重鎖を含むFGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体でもある。
【0032】
また、本発明の対象は、配列番号8、72、82、92又は102のポリペプチド配列の可変領域を含む軽鎖を含むFGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体でもある。
【0033】
また、本発明の対象は、配列番号5及び7、又は71及び76、又は81及び86、又は91及び96、又は101及び106のヌクレオチド配列によってコードされる配列を含むFGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体でもある。
【0034】
また、本発明の対象は、配列番号6及び8、又は72及び77、又は82及び87、又は92及び97、又は102及び107のポリペプチド配列を含むFGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体でもある。
【0035】
有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体は、配列番号2及び/又は配列番号4、又は配列番号72及び/又は配列番号77、又は配列番号82及び/又は配列番号87、又は配列番号92及び/又は配列番号97、又は配列番号102及び/又は配列番号107と少なくとも80%、90%、95%又は99%同一である配列を含む。
【0036】
特に有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体は、配列番号1の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%同一のヌクレオチド配列によってコードされる重鎖を含む。
【0037】
また、本発明の対象は、配列番号2の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%同一のポリペプチド配列の重鎖を含むFGF−R4受容体拮抗薬抗体でもある。
【0038】
また、本発明の対象は、配列番号3の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%同一のヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖を含むFGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体でもある。
【0039】
また、本発明の対象は、配列番号4の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%同一のポリペプチド配列の軽鎖を含むFGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体でもある。
【0040】
また、本発明の対象は、配列番号1及び3のヌクレオチド配列によってコードされる配列を含むFGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体でもある。
【0041】
更により有利な一実施形態において、FGF−R4特異的拮抗薬抗体は、配列番号2の配列を含む重鎖、及び配列番号4の配列を含む軽鎖を含む。
【0042】
配列番号2の配列の重鎖及び配列番号4の軽配列から構成される抗体は、残りの本出願において40−12と呼ばれる。
【0043】
本発明の一実施形態において、FGF−R4特異的抗体は、ヒトFGF−R4、マウスFGF−R4及びラットFGF−R4に対して同時に活性である。
【0044】
有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬は、AKT/p38細胞経路の阻害を誘導する。
【0045】
有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬は、Erk1/2細胞経路の阻害を誘導する。
【0046】
有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬は、FGF−R4制御細胞シグナル伝達経路の阻害を誘導する。
【0047】
別の有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬は、腫瘍細胞の増殖の阻害を誘導する。
【0048】
更に別の有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬は、血管形成の阻害を誘導する。
【0049】
別の特に有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬は、他のFGF受容体に対するその親和性よりも10倍大きなFGF−R4に対する親和性を有する。
【0050】
特に有利な一実施形態において、本発明による抗体は、FGF−R4受容体特異的ヒト化拮抗薬抗体である。
【0051】
一実施形態において、FGF−R4受容体特異的ヒト化拮抗薬抗体は、可変領域が配列番号29の配列又は配列番号31の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%同一のヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖を含む。
【0052】
別の一実施形態において、FGF−R4受容体特異的ヒト化拮抗薬抗体は、可変領域が配列番号30の配列又は配列番号32の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%同一である軽鎖を含む。
【0053】
別の一実施形態において、FGF−R4受容体特異的ヒト化拮抗薬抗体は、可変領域が配列番号29のヌクレオチド配列又は配列番号31の配列と同一の配列によってコードされる軽鎖を含む。
【0054】
また、本発明の対象は、可変領域が配列番号33の配列、配列番号35の配列、又は配列番号37の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%同一の配列によってコードされる重鎖を含むFGF−R4受容体特異的ヒト化拮抗薬抗体でもある。
【0055】
また、本発明の対象は、可変領域が配列番号34の配列、配列番号36の配列、又は配列番号38の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%同一である重鎖を含むFGF−R4受容体特異的ヒト化拮抗薬抗体でもある。
【0056】
また、本発明の対象は、配列番号33及び/又は配列番号35及び/又は配列番号37のヌクレオチド配列によってコードされる重鎖を含むFGF−R4受容体特異的ヒト化拮抗薬抗体でもある。
【0057】
また、本発明の対象は、配列番号30又は32の配列のヒト化配列が配列番号34、36又は38の配列のヒト化配列と組み合わせて使用されるFGF−R4受容体特異的ヒト化拮抗薬抗体でもある。
【0058】
別の一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体は、配列番号73、74、75、78、79及び80の配列のCDR、又は上述した配列とそれぞれ比較して1又は2つのアミノ酸だけ配列が異なるCDRを含むが、これは、前記抗体のFGF−R4受容体結合特異性を改変しない。
【0059】
別の一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体は、配列番号83、84、85、88、89及び90の配列のCDR、又は上述した配列とそれぞれ比較して1又は2つのアミノ酸だけ配列が異なるCDRを含むが、これは、前記抗体のFGF−R4受容体結合特異性を改変しない。
【0060】
別の一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体は、配列番号93、94、95、98、99及び100の配列のCDR、又は上述した配列とそれぞれ比較して1又は2つのアミノ酸だけ配列が異なるCDRを含むが、これは、前記抗体のFGF−R4受容体結合特異性を改変しない。
【0061】
別の一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体は、配列番号103、104、105、108、109及び110の配列のCDR、又は上述した配列とそれぞれ比較して1又は2つのアミノ酸だけ配列が異なるCDRを含むが、これは、前記抗体のFGF−R4受容体結合特異性を改変しない。
【0062】
本発明の好ましい一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体は、配列番号83、84、85、88、89及び90の配列のCDRを含む。
【0063】
有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体は、重鎖可変領域が配列番号76、86、96又は106の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むヒト抗体である。
【0064】
有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体は、軽鎖可変領域が配列番号71,81,91又は101の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むヒト抗体である。
【0065】
また、本発明の対象は、配列番号77、87、97又は107の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%の同一性を有するタンパク質配列によってコードされる可変領域を含む重鎖を含むFGF−R4受容体特異的ヒト拮抗薬抗体でもある。
【0066】
また、本発明の対象は、配列番号72、82、92又は102の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%の同一性を有するタンパク質配列によってコードされる可変領域を含む軽鎖を含むFGF−R4受容体特異的ヒト拮抗薬抗体でもある。
【0067】
また、本発明の対象は、配列番号71及び76のヌクレオチド配列、又は配列番号81及び86のヌクレオチド配列、又は配列番号91及び96のヌクレオチド配列、又は配列番号101及び106のヌクレオチド配列によってコードされる配列を含むFGF−R4受容体特異的ヒト拮抗薬抗体でもある。
【0068】
また、本発明の対象は、配列番号72及び77のポリペプチド配列、又は配列番号82及び87のポリペプチド配列、又は配列番号92及び97のポリペプチド配列、又は配列番号102及び107のポリペプチド配列を含むFGF−R4受容体特異的ヒト拮抗薬抗体でもある。
【0069】
有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体は、配列番号72及び/又は配列番号77と少なくとも80%、90%、95%又は99%同一の配列を含む。
【0070】
別の有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的ヒト拮抗薬抗体は、配列番号82及び/又は配列番号87と少なくとも80%、90%、95%又は99%同一の配列を含む。
【0071】
別の有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的ヒト拮抗薬抗体は、配列番号92及び/又は配列番号97と少なくとも80%、90%、95%又は99%同一の配列を含む。
【0072】
別の有利な一実施形態において、FGF−R4受容体特異的ヒト拮抗薬抗体は、配列番号102及び/又は配列番号107と少なくとも80%、90%、95%又は99%同一の配列を含む。
【0073】
好ましい一実施形態において、本発明の対象は、配列番号82の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%同一のヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖を含み、配列番号87の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%同一のポリペプチド配列の軽鎖を含むFGF−R4受容体特異的ヒト拮抗薬抗体である。
【0074】
更により好ましくは、本発明の対象は、配列番号82及び87のヌクレオチド配列によってコードされる配列を含むFGF−R4受容体特異的ヒト拮抗薬抗体である。
【0075】
配列番号77の配列の重鎖及び配列番号72の軽配列から構成される抗体は、残りの本出願においてクローン8と呼ばれる。
【0076】
配列番号87の配列の重鎖及び配列番号82の軽配列から構成される抗体は、残りの本出願においてクローン31と呼ばれる。
【0077】
配列番号97の配列の重鎖及び配列番号92の軽配列から構成される抗体は、残りの本出願においてクローン33と呼ばれる。
【0078】
配列番号107の配列の重鎖及び配列番号102の軽配列から構成される抗体は、残りの本出願においてクローン36と呼ばれる。
【0079】
本発明の技術分野は、これらの配列を含む抗体に限定されない。実際、この受容体に対する拮抗的作用を有する、FGF−R4に特異的に結合する全ての抗体は、本発明の技術分野の一部である。
【0080】
本発明の対象は、細胞毒性薬とコンジュゲートするFGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体でもある。
【0081】
本発明の対象は、血管形成を伴う疾患の治療におけるFGF−R4受容体特異的拮抗薬の使用である。
【0082】
本発明の対象は、癌の治療におけるFGF−R4受容体特異的拮抗薬の使用である。
【0083】
本発明の対象は、肝臓癌又は他の任意の種類の肝癌の治療におけるFGF−R4受容体特異的拮抗薬の使用である。
【0084】
本発明の対象は、膵臓癌の治療におけるFGF−R4受容体特異的拮抗薬の使用である。
【0085】
本発明の対象は、血管形成を伴う疾患の治療、及び肝臓癌又は他の任意の種類の肝癌の治療の両方において有用なFGF−R4受容体特異的抗体である。
【0086】
本発明の対象は、血管形成を伴う疾患の治療において、肝臓癌又は他の任意の種類の肝癌の治療において、及び膵臓癌又は胃腸管の器官若しくはFGF−R4を発現する他の任意の器官の癌の治療において同時に有用なFGF−R4受容体特異的抗体である。
【0087】
本発明の対象は、FGF−R4受容体特異的拮抗薬及び賦形剤を含む医薬組成物である。
【0088】
本発明の対象は、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体を患者に投与することを含む癌の治療方法である。
【0089】
本発明の対象は、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体を患者に投与することを含む血管形成の病理学的増大を伴う疾患の治療方法である。
【0090】
本発明の対象は、
a.マウスを免疫化するステップ、
b.マウスからリンパ節を採取するステップ、及び
c.ハイブリドーマ上清をスクリーニングするステップ
を含む、FGF−R4受容体特異的拮抗薬モノクローナル抗体の選択方法である。
【0091】
本発明の対象は、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体を産生する細胞系である。
【0092】
本発明の対象は、FGF−R4受容体拮抗薬抗体を産生する細胞系を培養することを含むFGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体の作製方法である。
【0093】
本発明の対象は、FGF−R4受容体特異的拮抗薬を含む薬物である。
【0094】
また、本発明の対象は、配列番号2、4、6、8、9、10、11、12、13、14、30、32、34、36、38、72、73、74、75、77、78、79、80、82、83、84、85、87、88、89、90、92、93、94、95、97、98、99、100、102、103、104、105、107、108、109及び110、並びにこれらの配列の1つと少なくとも80%、90%、95%又は99%同一の配列から構成される群から選択されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドでもある。
【0095】
本発明の対象は、上記の通りのポリヌクレオチドを含む組換えベクター、又は上記の通りのポリペプチドをコードする組換えベクターである。
【0096】
本発明の対象であるFGF−R4受容体拮抗薬抗体の重鎖及び/又は軽鎖の発現を可能にするため、前記鎖をコードするポリヌクレオチドが発現ベクターに挿入される。これらの発現ベクターは、プラスミド、YAC、コスミド、レトロウイルス、EBV由来エピソーム、及び当業者が前記鎖の発現のために適切であると考え得るベクターのいずれかであってよい。
【0097】
本発明の対象は、上記の通りの組換えベクターを含む宿主細胞である。
本発明の詳細な説明
本発明の対象は、血管形成及び腫瘍成長を阻害するための(FGF−R1、R2又はR3との交差反応なしで)FGF−R4に対して特異的な抗体の使用である。
【0098】
予想外に、本発明者らは、FGF−R4が血管形成の制御に活性的及び特異的役割を果たすことを示した。
【0099】
FGF−R4のこの機能は、以前に示されず、提案もされなかった。したがって、この受容体は、血管形成機能不全を示す病状を治療するための標的として使用され得る。したがって、前記受容体の活性を調節し得るFGF−R4リガンドは、多くの血管形成関連病状のための可能な治療剤である。
【0100】
したがって、本発明は、血管形成の調節不全を含み、その阻害を必要とする全ての病状の治療に使用され得る。腫瘍血管形成阻害剤として本発明による拮抗薬を用いる、包含される病状は、癌、又は血管形成の調節不全が報告されている病状、例えば、加齢性黄斑変性若しくはARMD、炎症性疾患、例えば、関節リウマチ、骨関節炎、大腸炎、潰瘍、若しくは腸管の任意の炎症性疾患、アテローム性動脈硬化症、又は肥満の治療におけるものであってもよい。
【0101】
また、これらの抗体の使用は、腫瘍の成長の阻害においても示される。したがって、本発明による拮抗薬は、FGF−R4の調節不全を伴う特定の癌、より詳しくは、肝臓癌、大腸癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、膵臓癌、皮膚癌又は食道癌の治療のために使用され得る。
【0102】
本発明による拮抗薬の主要な利点の内の1つは、FGF受容体、適例としてFGF−R4を特異的に標的とすることである。この特異性は、チロシンキナーゼドメインを阻害する化学的小分子が有し得る悪影響を限定することを可能にする。更に、FGF−R4は、偏在して発現しないが、内皮細胞上で、例えば、肝細胞、胆管細胞、乳腺細胞、前立腺細胞、卵巣細胞、膵臓細胞又は腎臓細胞上で特に発現することから、これは、副作用を限定するFGF−R4活性の調節不全に関連する疾患の治療方法を提供する。
【0103】
「拮抗薬」という用語は、FGF−R4の活性を低下させる又は完全に阻害する任意のリガンドを指す。したがって、この拮抗剤化合物は、FGF−R4阻害剤とも呼ばれる。
【0104】
この拮抗薬は、他のFGFR以外のFGF−R4受容体に特異的に結合し得る化学的分子、組換えタンパク質、オリゴ糖、多糖、オリゴヌクレオチド、抗体等の任意のFGF−R4リガンドであってよい。
【0105】
したがって、本発明の対象は、FGF−R4特異的拮抗薬である。本発明によれば、FGF−R4に特異的に結合する拮抗薬は、他のFGF受容体、即ち、FGF−R1、FGF−R2又はFGF−R3に結合しないリガンドを指す。特に、FGF−R4特異的抗体は、FGF−R1、FGF−R2又はFGF−R3とのいかなる交差反応も示さない抗体である。
【0106】
「特異的結合」は、ある受容体に対する結合の強度を別の受容体と比較した差、この場合は、FGF−R4に対する結合と、FGF−R1、FGF−R2又はFGF−R3に対する可能な結合との間の差が少なくとも10倍であることを指す。
【0107】
本発明の一実施形態において、FGF−R4リガンドは、オリゴ糖又は多糖である。
【0108】
「オリゴ糖」は、3から10単位の単糖を含有する任意の糖ポリマーを指す。例えばフルクトオリゴ糖(FOS)等の天然オリゴ糖、及び例えばヘパリン模倣抗血栓剤等の合成オリゴ糖が存在する。
【0109】
「多糖」という用語は、グリコシド結合によって相互に結合する10超の単糖から構成される任意のポリマーを指す。合成多糖と同様に、例えばムコ多糖、フコイド、カラゲナン、細菌性エキソポリサッカライド等の天然多糖が存在する。したがって、低分子量フコイダン又は高硫酸化エキソポリサッカライドは、血管新生促進活性を示した(Chabutら、Mol Pharmacol.、2003年、64:696−702頁、Matouら、Biochem Pharmacol.、2005年、69:751−9頁)。逆に、ヘパリン由来弱硫酸化オリゴ糖又はホスホマンノペントーススルフェートは、血管新生阻害特性を有することができる(Parishら、1999年、15:3433−41頁、Casuら、J Med Chem.、2004年、12:838−48頁)。
【0110】
本発明の一実施形態において、FGF−R4リガンドは抗体である。
【0111】
「抗体」という用語は、任意の種類の抗体又は誘導分子、例えばポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を指す。ヒト化抗体、ヒト抗体、多特異的抗体、キメラ抗体、抗体フラグメント、ナノ体等は、モノクローナル抗体から誘導される分子の中に含まれる。
【0112】
本発明の一実施形態において、FGF−R4特異的拮抗薬は、ポリクローナル抗体である。
【0113】
「ポリクローナル抗体」は、幾つかのBリンパ球クローンに由来する抗体の混合物から産生された、一連の異なるエピトープを認識する抗体である。
【0114】
有利な一実施形態において、FGF−R4特異的拮抗薬は、モノクローナル抗体である。
【0115】
「モノクローナル抗体」は、単一の種類のBリンパ球から誘導される(クローン的に増幅される)抗体の実質的に均質な集団から得られる抗体である。この集団を占める抗体は、小量で存在し得る可能な天然の突然変異を除いて同一である。これらの抗体は、単一のエピトープに対するものであり、したがって高度に特異的である。
【0116】
「エピトープ」という用語は、抗体が結合する抗原の部位を指す。抗原がポリマー、例えばタンパク質又は多糖である場合、エピトープは、隣接残基又は非隣接残基から構成され得る。
【0117】
本発明の有利な一実施形態において、抗FGF−R4拮抗薬抗体は、FGF−R4受容体のD2−D3ドメインに属するエピトープに結合する。
【0118】
更により有利な一実施形態において、前記抗体は、FGF−R4受容体のアミノ酸144から365を含むドメインに含まれるエピトープに結合する。
【0119】
更により有利な一実施形態において、前記抗体は、FGF−R4受容体のD2ドメインに含まれるエピトープに結合し、このエピトープは、配列番号70の配列に記載されるアミノ酸145から242に対応する。
【0120】
免疫グロブリンとしても公知である抗体は、ジスルフィド架橋によって結合する2つの同一の重鎖(「VH」)及び2つの同一の軽鎖(「VL」)から構成される。各鎖は、定常領域及び可変領域を含む。各可変領域は、抗原のエピトープへの結合を主に担う「相補性決定領域」(「CDR」)又は「超可変領域」と呼ばれる3つのセグメントを含む。
【0121】
「VH」という用語は、Fv、scFv、dsFv、Fab、Fab’又はF(ab)’フラグメントの重鎖を含む抗体の免疫グロブリン重鎖の可変領域を指す。
【0122】
「VL」という用語は、Fv、scFv、dsFv、Fab、Fab’又はF(ab)’フラグメントの軽鎖を含む抗体の免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指す。
【0123】
「抗体フラグメント」という用語は、前記抗体の任意の部分:Fab(抗原結合フラグメント)Fv、scFv(一本鎖Fv)、Fc(結晶化可能フラグメント)を指す。好ましくは、これらの機能性フラグメントは、Fv、scFv、Fab、F(ab’)2、Fab’、scFv−Fcの種類のフラグメント又は二重抗体であり、前記二重抗体は、一般にそれらが誘導されるキメラ又はヒト化モノクローナル抗体と同じ結合特異性を有する。本発明によれば、本発明の抗体フラグメントは、酵素、例えばペプシン又はパパインによる消化等の方法によって及び/又は化学還元によるジスルフィド架橋の開裂によってキメラ又はヒト化モノクローナル抗体から得られ得る。
【0124】
「CDR領域又はCDR」という用語は、Kabatら(Kabatら、Sequences of proteins of immunological interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH、1991年、及び以降の版)によって定義される通りの免疫グロブリン重鎖及び軽鎖超可変領域を示すことが意図される。3つの重鎖CDR及び3つの軽鎖CDRがある。1つのCDR又は複数のCDRという用語は、抗体の、抗原又はそれが認識するエピトープに対する親和性結合を担う大部分のアミノ酸残基を含有するこれらの領域の内の1つ若しくは複数又はこれらの領域の内の全てさえも必要に応じて示すために本明細書において使用される。可変ドメインの最も保存された領域は、FR(「フレームワーク」)領域又は配列と呼ばれる。
【0125】
本発明の他の一実施形態において、FGF−R4特異的拮抗薬は、キメラ抗体である。
【0126】
「キメラ抗体」という用語は、定常領域又はその部分が、可変領域が異なる種の定常領域に結合するように改変、置換又は交換される、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体を指す。
【0127】
また、「キメラ抗体」という用語は、可変領域又はその部分が、定常領域が異なる種の可変領域に結合するように改変、置換又は交換される、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体をも指す。
【0128】
キメラ抗体の作製方法は、当業者に公知である。例えば、Morrison、1985年、Science、229:1202頁、Oiら、1986年、Bio Techniques、4:214頁、Gilliesら、1989年、J.Immunol.Methods、125:191−202頁、米国特許第5,807,715号、第4,816,567号及び第4,816,397号を参照すること。
【0129】
前記抗体のこれらのキメラバージョンは、キメラモノクローナル抗体を生成するためにヒト由来のCkappa及びCH(IgG1)定常ドメインへのVL及びVH可変領域の融合を含むことができる。
【0130】
また、CH(IgG1)ドメインは、FcγRIIIa受容体に対するFcフラグメントの親和性を増大させ、それにより前記抗体のエフェクター機能を増大させるために点突然変異によって改変することも可能である(Lazarら、2006年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA103:4005−4010頁、Stavenhagenら、2007年、Cancer Res.67:8882−8890頁)。
【0131】
本発明は、抗体のヒト化バージョンを含む。
【0132】
「ヒト化抗体」という用語は、主にヒト免疫グロブリン配列を含む抗体を指す。この用語は、ヒト配列の又はヒト配列中に見出される残基の組み込みによって改変された非ヒト免疫グロブリンを一般に指す。
【0133】
一般に、ヒト化抗体は、CDR領域の全て又は一部が非ヒト親配列から誘導される部分に対応し、FR領域の全て又は一部がヒト免疫グロブリン配列から誘導されるものである1つ又は典型的には2つの可変ドメインを含む。したがって、ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常部領域(Fc)の少なくとも一部、特に選択されるヒト免疫グロブリン鋳型の一部を含むことができる。
【0134】
したがって、目的は、ヒトにおいて免疫原性が最小限である抗体を有することである。したがって、1つ又は複数のCDRにおける1又は2つアミノ酸は、FGF−R4への抗体の特異的結合機能を実質的に低下させることなく、ヒト宿主に対してより免疫原性でないものによって改変され得ることが可能である。同様に、フレームワーク領域の残基はヒトでなくてよく、それらが抗体の免疫原性に寄与しないことから、それらが改変されないことが可能である。
【0135】
ヒトに対してより免疫原性でない抗体を得るように非ヒト親抗体を改変するための当業者に公知の幾つかのヒト化方法が存在する。ヒト抗体との全体的配列同一性は、必ずしも必要とされない。これは、全体的配列同一性が必ずしも低下した免疫原性の予測的指標でないからであり、限定された数の残基の改質は、ヒトにおける大きく低下した免疫原性を有するヒト化抗体をもたらす可能性がある(Molecular Immunology(2007)44、1986−1998頁)。
【0136】
各種方法は、例えば、CDRグラフティング(EPO0239400、WO91/09967、並びに米国特許第5,530,101号及び第5,585,089号)、表面再構成(resurfacing)(EPO0592106、EPO0519596、Padlan、1991年、Molec Imm28(4/5):489−498頁、Studnickaら、1994年、Prot Eng7(6):805−814頁、及びRoguskaら、1994年、PNAS91:969−973頁)、又は鎖シャフリング(米国特許第5,565,332号)である。
【0137】
本発明は、特に、可変部分が以下の技術に従って改変されるヒト化抗体に関する。
【0138】
抗FGF−R4マウス抗体40−12の対応する鎖に最も類似の軽鎖及び重鎖は、Protein Data Bankとの比較により同定される(H.M.Berman、J.Westbrook、Z.Feng、G.Gilliland、T.N.Bhat、H.Weissig、I.N.Shindyalov、P.E.Bourne.Nucleic Acids Research、2000年、28:235−242頁)。配列アラインメントは、BLASTアルゴリズムを使用する(J Mol Biol.1990年10月215:403−410頁)。これらは、可変ドメインの軽鎖及び重鎖の相同性モデルを構築するために使用されたそれぞれPDBコード1NDM及び1ETZに対応する三次元構造である。続いて、これらの三次元モデルは、MOEソフトウェア(Molecular Operating Environment、Chemical Computing Group、Quebec、Canada)において実施される標準手順を使用して最小化されるエネルギーである。続いて、抗体のこれらの最小化された三次元のモデルの分子力学(MD)シミュレーションは、Amberソフトウェアによって実施される(D.A.Case、T.E.Cheatham、III、T.Darden、H.Gohlke、R.Luo、K.M.Merz,Jr.、A.Onufriev、C.Simmerling、B.Wang及びR.Woods.J.Computat.Chem.2005年、26:1668−1688頁)。このシミュレーションは、一般化ボルン暗溶媒において1.1ナノ秒の期間の間500Kの温度でタンパク質骨格原子に適用される調和的制約条件で行われる(Gallicchio及びLevy、J Comput Chem2004年、25:479−499頁)。したがって、10の多様な立体配座は、シミュレーションの最後のナノ秒の間、100ピコ秒毎に1つの三次元立体配座でこの第1のシミュレーションから抽出される。次いで、これらの10の多様な立体配座は、一般化ボルン暗溶媒において2.3ナノ秒間、27℃の温度で、タンパク質骨格に対する制約なしで、それぞれ分子力学シミュレーションに供される。水素原子を含む結合は、SHAKEアルゴリズムを使用して限定され(Barthら、J Comp Chem、1995年、16:1192−1209頁)、時間ステップは1フェムト秒であり、シミュレーションは、一定体積及び27℃の一定温度でランジュバン方程式に基づいて実行された。次いで、10の分子力学シミュレーションの各々について、1ピコ秒毎に1回の頻度で抽出される最後の2,000の立体配座は、ヒト化すべき抗体の各アミノ酸について、アミノ酸の平均又はメドイド立体配座に対する原子配置の偏差を定量するために使用される。MOEソフトウェアのScientific Vector Language(SVL)は、以下に記載される解析の全てをコード化するために使用される。アミノ酸のメドイド立体配座は、アミノ酸の全ての立体配座の原子の位置から算出される平均立体配座に最も近い分子力学から誘導される立体配座である。メドイド立体配座を検出するために使用される距離は、アミノ酸の2つの立体配座の原子の間のスカラー距離の二乗平均平方根(RMSD)である。同様に、メドイド立体配座と比較したアミノ酸の1つの立体配座の原子の位置の偏差は、シミュレーションの1つの立体配座のアミノ酸の原子とメドイド立体配座の同じ原子との間のスカラー距離のRMSDを算出することによって定量される。続いて、10の分子力学シミュレーション全てに亘って平均された所定のアミノ酸(i)の原子の位置のRMSD(Fi)と10の分子力学シミュレーション全てに亘って平均された抗体の全てのアミノ酸の位置のRMSD(Fm)とを比較することによって、アミノ酸が、潜在的にT細胞受容体と相互作用し、免疫系の活性化を誘発し得ると考えられるのに十分柔軟であるのかが決定される。アミノ酸iは、Zi=(Fi−Fm)/Fmと定義されるその柔軟性スコアZiが0.15を越える場合、柔軟であると考えられる。したがって、45のアミノ酸が、抗原相補性決定領域(CDR)及びそのごく近傍を除いて抗体の可変ドメインにおいて柔軟であると同定される。CDRのごく近傍は、CDRのα炭素と5オングストローム(Å)以下の距離のα炭素を有する任意のアミノ酸と定義される。
【0139】
次いで、10の分子力学シミュレーション(10×2ns)が同じプロトコルを使用して実行された各々について、シミュレーションの20ナノ秒(10×2ns)の間の抗体の60の最も柔軟なアミノ酸の運動が、ヒト抗体生殖細胞系の49の相同性モデルの対応するアミノ酸の運動と比較される。60の最も柔軟なアミノ酸は、抗原相補性決定領域(CDR)及びそのごく近傍を含まない。7つの最もよく認められるヒト軽鎖(vk1、vk2、vk3、vk4、vlambda1、vlambda2、vlambda3)と7つの最もよく認められるヒト重鎖(vh1a、vh1b、vh2、vh3、vh4、vh5、vh6)とを系統的に組み合わせることによって、49のヒト抗体生殖細胞系モデルが構築された(Nucleic Acids Research、2005年、Vol.33、Database issue D593−D597)。
【0140】
49のヒト生殖細胞系モデルとのヒト化すべき抗体の類似性は、1Åの分解能を有する固有の三次元立方格子によって10の分子力学シミュレーションの経過を通じて抗体の60の柔軟なアミノ酸の特異的原子の位置をサンプリングすることにより定量される。これは四次元類似性と呼ばれる。使用される三次元格子は、445,740の点で構成され、PDBコード8FABに対応するヒト抗体の三次元構造を使用して初期化される。また、8FAB構造は、三次元格子においてサンプリングされる抗体の全ての立体配座を配置するためにも使用される。この目的のため、抗体の分子力学のメドイド立体配座は、8FAB構造上に重ね合わせられる。この重ね合わせは、2つの立体配座の慣性モーメントを整列配置した後、両方の立体配座のα炭素原子の間のスカラー距離の最適化を行うことから成る。抗体の分子力学の全ての残りの立体配座は、同じ方法を使用してメドイド立体配座上へ重ね合わせられる。
【0141】
比較される一対の抗体について2つの種類のサンプリングが実施され、2つの類似性(静電気の類似性及び親油性の類似性)が得られる。次いで、全体の類似性を得るためにこれらの2つの類似性が加えられる。第1のサンプリング(静電気のサンプリング)は、アミノ酸側鎖の全ての原子を考慮する。格子の1つの点の値xは、Amber99力場において記載される通りの原子部分電荷で重み付けされた三次元ガウス関数f(x)をアミノ酸側鎖の原子に適用することによって得られる(Cieplak,J.ら、J.Comp.Chem.2001年、22:1048−1057頁)。f(x)関数は、3本のデカルト座標軸上に適用され、以下の式:
【0142】
【数1】
[式中、x及びuは、それぞれ格子点x及びサンプリングされた原子のデカルト座標であり、s=r/1.6(r=原子の共有結合半径)である]に対応する。サンプリングは、アミノ酸の全ての立体配座について繰り返され、得られた結果は、三次元格子の全ての点xで平均される。第2のサンプリング(親油性サンプリング)は、アミノ酸側鎖の親油性原子のみを考慮する。格子の1点の値xは、重み付けなしで同じガウス関数f(x)によって算出される。その結果、比較される2つの抗体の分子力学シミュレーションからの立体配座の2つの集合は、同じ三次元格子によってサンプリングされる。抗体aと抗体bとの間の静電気類似性(sim−elec)は、以下の式:
【0143】
【数2】
によって測定される。親油性類似性は、既に記載された親油性サンプリングによって生成されるデータに適用される同じ式によって算出される。
【0144】
したがって、ヒト生殖細胞系モデルvlambda2−vh2は、マウス抗体40−12の柔軟なアミノ酸に対してこれらの60の柔軟なアミノ酸の最も高い四次元類似性(総類似性=58%)を示す。したがって、ヒト生殖細胞系モデルvlambda2−vh2は、45の柔軟なアミノ酸に焦点を合わせると共にヒト化すべき抗体をヒト化するために使用された。作製される突然変異を決定するため、マウス抗体40−12のモデルの三次元構造は、最適化されるアミノ酸のα炭素の位置で最も高い類似性を示す生殖細胞系から誘導されるモデルのものに重ね合わせられた。柔軟であると同定されたアミノ酸は、最も高い類似性を示すモデルの配列において対応するアミノ酸によって突然変異する。
【0145】
考えられる望ましくない配列モチーフは、以下のものである。アスパルテート−プロリン(酸性媒質における易動性のペプチド結合)、アスパラギン−X−セリン/スレオニン(グリコシル化部位、X=プロリン以外の任意のアミノ酸)、アスパルテート−グリシン/セリン/スレオニン(柔軟なゾーンにおけるスクシンイミド/イソアスパルテートの可能な形成)、アスパラギン−グリシン/ヒスチジン/セリン/アラニン/システイン(曝露されたアミド分解部位)、メチオニン(曝露されたゾーンにおける酸化)。したがって得られたヒト化配列は、配列がB及びTリンパ球によって認識されることが公知のいかなるエピトープも含まないことを確認するようにBLAST配列比較アルゴリズムによってIEDBデータベース(http://www.immuneepitope.org/ The immune epitope database and analysis resource:from vision to blueprint.PLoS Biol.2005年3月;3(3):e91)の配列と最後に比較される。配列が望ましくない配列を有する残基を含む場合、それらも次いで改変される。コンポジット配列がIEDBにおいて列挙される公知のエピトープを含む場合、次いで高い類似性を示す別の生殖細胞系構造鋳型がモデルとして使用される。
【0146】
より有利には、本発明による抗体は、配列番号34の配列、配列番号36の配列又は配列番号38の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%の同一性を有する配列と組み合わせて、使用される配列番号30の配列又は配列番号32の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%の同一性を有する配列を含む。
【0147】
一実施形態において、本発明による抗体は、配列番号30の配列の可変軽鎖及び配列番号34の配列の可変重鎖を含む。
【0148】
別の一実施形態において、抗体は、配列番号32の配列の可変軽鎖及び配列番号38の配列の可変重鎖を含む。
【0149】
別の一実施形態において、抗体は、配列番号30の配列の可変軽鎖及び配列番号36の配列の可変重鎖を含む。
【0150】
別の一実施形態において、抗体は、配列番号32の配列の可変軽鎖及び配列番号34の配列の可変重鎖を含む。
【0151】
別の一実施形態において、抗体は、配列番号32の配列の可変軽鎖及び配列番号36の配列の可変重鎖を含む。
【0152】
別の一実施形態において、抗体は、配列番号30の配列の可変軽鎖及び配列番号38の配列の可変重鎖を含む。
【0153】
また、本発明の対象は、FGF−R4特異的ヒト拮抗薬抗体でもある。かかる抗体は、当業者に公知の方法に従ってファージディスプレイによって得られ得る(McCafferty J.ら、1990年;Hoogenboom,HRら、2005年)。米国特許第5,939,598号に記載されるXenoMouse技術等の他の技術は、ヒト抗体の調製に利用可能である。
【0154】
特定の一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体は、重鎖可変領域が配列番号76、86、96又は106の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%の同一性を有する配列を含むヒト抗体である。
【0155】
別の一実施形態において、FGF−R4受容体特異的拮抗薬抗体は、軽鎖可変領域が配列番号71、81、91又は101の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%の同一性を有する配列を含むヒト抗体である。
【0156】
また、本発明の対象は、配列番号77、87、97又は107の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる可変領域を含む重鎖を含むFGF−R4受容体特異的ヒト拮抗薬抗体でもある。
【0157】
また、本発明の対象は、配列番号72、82、92又は102の配列と少なくとも80%、90%、95%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる可変領域を含む軽鎖を含むFGF−R4受容体特異的ヒト拮抗薬抗体でもある。
【0158】
また、本発明の対象は、配列番号71及び76のヌクレオチド配列又は配列番号81及び86のヌクレオチド配列又は配列番号91及び96のヌクレオチド配列又は配列番号101及び106のヌクレオチド配列によってコードされる配列を含むFGF−R4受容体特異的ヒト拮抗薬抗体でもある。
【0159】
また、本発明の対象は、配列番号72及び77のポリペプチド配列又は配列番号82及び87のポリペプチド配列又は配列番号92及び97のポリペプチド配列又は配列番号102及び107のポリペプチド配列を含むFGF−R4受容体特異的ヒト拮抗薬抗体でもある。
【0160】
特に好ましくは、FGF−R4受容体特異的ヒト拮抗薬抗体は、配列番号82及び87のポリペプチド配列を含む。
【0161】
したがって改変されるアミノ酸配列はまた、哺乳類の細胞における作製の間に翻訳後修飾によって改変することも可能である。特に、フコース生合成において不十分な安定ラインの使用は、Fc(N297位)のN−グリカンが部分的に又は完全にフコースを欠くモノクローナル抗体を作製することを可能にすることができ、ADCCエフェクター効果を増大させることを可能にする(Kandaら、2006年、Biotechnol.Bioeng.94:680−688頁、及びRipkaら、1986年Arch Biochem Bioph249:533−545頁)。
【0162】
本発明の別の一実施形態において、FGF−R4特異的拮抗薬は、コンジュゲート抗体である。
【0163】
前記抗体は、細胞毒性薬とコンジュゲートすることができる。本明細書において、「細胞毒性薬」という用語は、細胞の機能若しくは成長を低下若しくは抑止させる又は細胞の破壊を引き起こす物質を示す。
【0164】
一実施形態において、抗体又はその結合フラグメントは、抗原を発現する細胞に対して細胞毒性を有する「プロドラッグ」を形成するようにメイタンシノイド等の薬物とコンジュゲートすることができる。
【0165】
本発明の細胞毒性薬は、細胞死を生じさせる又は細胞死を誘導する又は各種の方法で細胞生存度を減少させる任意の化合物であってよい。好ましい細胞毒性薬としては、例えば、上記で定義されたメイタンシノイド及びメイタンシノイド類似体、タキソイドCC−1065及びCC−1065類似体、ドラスタチン及びドラスタチン類似体が挙げられる。これらの細胞毒性薬は、本出願において記載される通りの抗体、抗体フラグメント、機能的等価物、改善された抗体及びその類似体とコンジュゲートする。
【0166】
コンジュゲート抗体は、インビトロでの方法によって調製され得る。リンカー基は、薬物又はプロドラッグを抗体に結合させるために使用される。適切なリンカー基は、当業者に周知であり、特に、ジスルフィド基、チオエーテル基、不安定酸性基、感光性基、不安定ペプチダーゼ基及び不安定エステラーゼ基を含む。好ましいリンカー基は、ジスルフィド基及びチオエーテル基である。例えば、コンジュゲートは、ジスルフィド交換反応を用いることによって又は抗体と薬物若しくはプロドラッグとの間にチオエーテル架橋を形成することによって構築され得る。
【0167】
メトトレキサート、ダウノルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、カリケアマイシン、ツブリシン及びツブリシン類似体、デュオカルマイシン及びデュオカルマイシン類似体、ドラスタチン及びドラスタチン類似体等の化合物はまた、本発明のコンジュゲートの調製にも適切である。分子は、血清アルブミン等の中間体分子を介して抗体分子に結合することもできる。例えば特許出願US09/740991に記載される通りのドキソルビシン及びドキソルビシン化合物もまた、有用な細胞毒性薬であり得る。
【0168】
本発明の対象である抗体は、細胞障害性分子又は化合物と組み合わせられ得る。また、それらは、他の血管形成経路に作用する血管新生阻害化合物とも組み合わせられ得る。
【0169】
「FGF−R4を発現する細胞」という表現は、その天然型において又は突然変異型においてFGF−R4受容体を発現する任意の真核細胞、とりわけ哺乳類細胞、特にヒト細胞を指す。FGF−R4は、例えばFGR−R4の細胞外ドメイン、特にD2−D3ドメインを含むその全体の型又は切断型であってもよい。FGF−R4は、キメラ型においても組み換えられ得る。
【0170】
本発明の化合物は、局所、経口、非経口、鼻腔内、静脈内、筋肉内、皮下、眼内等の投与の目的のために医薬組成物の形で製剤化され得る。好ましくは、医薬組成物は、注射可能製剤のために医薬的に許容し得る担体を含む。それらは、特に滅菌等張性食塩水(リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム若しくは塩化マグネシウム等、又はかかる塩の混合物)又は必要に応じて滅菌水若しくは生理的食塩水を添加することによって注射可能溶質を形成し得る乾燥、特に凍結乾燥組成物であってよい。
【0171】
血管形成が腫瘍性であっても非腫瘍性であっても、標的とされる病状は、血管形成に関連する全ての疾患であり得る。
【0172】
標的とされる病状は、癌(腫瘍血管形成の阻害剤として本発明を使用することによる)、特に肝臓癌、大腸癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、膵臓癌若しくは皮膚癌、又は血管形成の調節不全が報告されている病状、例えば、加齢性黄斑変性若しくはARMD、炎症性疾患、例えば、関節リウマチ、骨関節炎、大腸炎、潰瘍、若しくは腸管の任意の炎症性疾患、アテローム性動脈硬化症、又は肥満の治療におけるものであってもよい。
【0173】
腫瘍成長に直接及ぼす作用を有する阻害剤として、抗FGF−R4抗体を、癌、特に肝臓癌及び他の肝癌、並びに膵臓癌を治療するために使用することも可能である。
【0174】
本発明を以下の実施例によって示すが、限定されるものではない。