(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5726784
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】処理液交換方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20150514BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
H01L21/304 648F
H01L21/304 648G
H01L21/304 648L
H01L21/30 572B
H01L21/30 569Z
【請求項の数】17
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-38597(P2012-38597)
(22)【出願日】2012年2月24日
(65)【公開番号】特開2013-175552(P2013-175552A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2013年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【弁理士】
【氏名又は名称】名塚 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100096895
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 淳平
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】笠 原 政 俊
(72)【発明者】
【氏名】下 村 伸一郎
【審査官】
▲高▼須 甲斐
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−269743(JP,A)
【文献】
特開2007−317927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液を貯留する貯留タンクと、前記貯留タンクにその両端が接続されて処理液が循環する循環ラインとを備え、前記循環ラインに接続された分岐管路を介して処理液により基板に液処理を施す基板処理装置の処理液を交換する処理液交換方法において、
前記貯留タンク内の処理液を排液する処理液排液工程と、
前記循環ラインにパージガスを供給して、前記循環ライン内に残存する処理液を前記循環ラインから排出するガスパージ工程と、
前記貯留タンク内に処理液を供給する処理液供給工程と、
を備え、
前記ガスパージ工程において、流れ方向で見て、前記循環ラインに対する前記分岐管路の接続領域よりも下流側であってかつ前記貯留タンクよりも上流側の排出位置から前記処理液を前記パージガスに乗せて排出する、処理液交換方法。
【請求項2】
前記ガスパージ工程において、流れ方向で見て、前記循環ラインに対する前記分岐管路の接続領域よりも上流側の供給位置からパージガスを前記循環ラインに供給する、請求項1記載の処理液交換方法。
【請求項3】
処理液を前記循環ラインに循環させる循環ポンプが前記循環ラインに設けられており、前記供給位置は、前記循環ポンプよりも下流側の位置である、請求項2記載の処理液交換方法。
【請求項4】
前記処理液排液工程において、前記貯留タンク内の処理液は、前記貯留タンクに設けられたドレン部を介して排出される、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の処理液交換方法。
【請求項5】
処理液を前記循環ラインに循環させる循環ポンプが前記循環ラインに設けられており、前記処理液排液工程において、前記貯留タンク内の処理液は、前記循環ポンプにより前記貯留タンクから送り出されて、前記循環ラインを流れた後、前記排出位置から排出される、請求項1記載の処理液交換方法。
【請求項6】
前記貯留タンクおよび循環ラインをDIW(純水)で洗浄するDIW洗浄工程をさらに備えた、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の処理液交換方法。
【請求項7】
前記DIW洗浄工程は、前記貯留タンクにDIWを供給し、この供給したDIWを、前記排出位置から排出する工程を含む、請求項6記載の処理液交換方法。
【請求項8】
前記DIW洗浄工程は、前記貯留タンクにDIWを供給し、この供給したDIWを、前記循環ライン内で循環させる工程を含む、請求項6または7記載の処理液交換方法。
【請求項9】
前記DIW洗浄工程の後に、前記循環ラインにパージガスを供給して、前記循環ライン内に残存するDIWを前記循環ラインから排出する工程をさらに備えた、請求項6〜8のうちのいずれか一項に記載の処理液交換方法。
【請求項10】
前記処理液供給工程にて前記貯留タンクに供給された処理液を用いて前記貯留タンクおよび循環ラインを洗浄する処理液洗浄工程をさらに備えた、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の処理液交換方法。
【請求項11】
前記処理液洗浄工程は、前記貯留タンクに供給された処理液を、前記排出位置から排出する工程を含む、請求項10記載の処理液交換方法。
【請求項12】
前記処理液洗浄工程は、前記貯留タンクに供給された処理液を、前記循環ライン内で循環させる工程を含む、請求項10または11記載の処理液交換方法。
【請求項13】
前記処理液洗浄工程の後に、前記循環ラインにパージガスを供給して、前記循環ライン内に残存する処理液を前記循環ラインから排出する工程をさらに備えた、請求項10〜12のうちのいずれか一項に記載の処理液交換方法。
【請求項14】
処理液を貯留する貯留タンクと、
前記貯留タンクにその両端が接続された循環ラインと、
前記循環ラインに介設された循環ポンプと、
前記循環ラインに分岐管路を介して接続された処理液供給ノズルと、
前記循環ラインに対する前記分岐管路の接続領域よりも上流側の供給位置において前記循環ラインにパージガスを供給するパージガス供給部と、
流れ方向で見て、前記循環ラインに対する前記分岐管路の接続領域よりも下流側であって前記貯留タンクよりも上流側の排出位置において前記循環ラインに接続されたドレン部と、
を備えた基板処理装置。
【請求項15】
前記供給位置は、前記循環ポンプより下流側の位置である、請求項14記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記貯留タンク内にある液を排液するために貯留タンクにドレン部を設けた、請求項14または15記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記循環ラインを流れる液体が貯留タンクに流れる状態とドレン部に流れる状態とを切り替える開閉弁を前記循環ラインに設けた、請求項14〜16のうちのいずれか一項に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置において処理液を交換するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造においては、半導体ウエハ等の基板上の不要な膜ないし汚染物質除去するために薬液を用いた洗浄処理が行われる。このような洗浄処理を行う基板処理装置には、基板処理装置に組み込まれた液処理ユニットに処理液を供給するための処理液循環システムが設けられている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1の基板処理装置に設けられる処理液循環システムは、処理液貯留タンクと、処理液貯留タンクに接続された循環ライン(管路)を有している。循環ラインにはポンプが設けられ、ポンプにより処理液貯留タンクから処理液が送り出され、再び処理液貯留タンクに戻される。循環ラインの途中には、複数台の液処理ユニットが各々の分岐ラインを介して並列に接続されている。各液処理ユニットの処理スケジュールに応じて循環ラインから各分岐ラインを介して各液処理ユニットに処理液が送られ、各液処理ユニットはこの処理液を用いて基板に所定の液処理を施す。処理液が劣化した場合、あるいは、基板処理装置において異なる種類または濃度の処理液を用いた別の処理を行う場合、処理液供給システム内の処理液が同じ種類の処理液に交換されるか、あるいは別の種類の処理液に交換される。
【0004】
従来、処理液の交換は、(1)処理液貯留タンクから古い処理液を排出すること、(2)新しい処理液を処理液貯留タンクに投入すること、(3)処理液貯留タンク内の新しい処理液を処理液循環ラインに所定時間循環させ、処理液循環ライン内の古い処理液を押し出すこと、(4)処理液貯留タンクから処理液を排出すること、(5)上記(2)〜(4)を複数回繰り返すことによって行われている。処理液循環システム内にある液、特に配管内にある液を押し出して完全に排出することは困難であり、ある程度の量の液が処理液循環システム内に不可避的に残存する。処理液循環システム内に残存する液の量が多いと、上記工程(2)〜(4)の必要実行回数が多くなり、無駄な処理液の消費を招く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−329328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、基板処理装置において、処理液交換時の処理液消費量を減らす方法およびそのための構成を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、処理液を貯留する貯留タンクと、前記貯留タンクにその両端が接続されて処理液が循環する循環ラインとを備え、前記循環ラインに接続された分岐管路を介して処理液により基板に液処理を施す基板処理装置の処理液を交換する処理液交換方法において、前記貯留タンク内の処理液を排液する処理液排液工程と、前記循環ラインにパージガスを供給して、前記循環ライン内に残存する処理液を前記循環ラインから排出するガスパージ工程と、前記貯留タンク内に処理液を供給する処理液供給工程と、を備えた処理液交換方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、処理液を貯留する貯留タンクと、前記貯留タンクにその両端が接続された循環ラインと、前記循環ラインに介設された循環ポンプと、前記循環ラインに分岐管路を介して接続された処理液供給ノズルと、前記循環ラインに対する前記分岐管路の接続領域よりも上流側の第1位置において前記循環ラインにパージガスを供給するパージガス供給部と、 流れ方向で見て、前記循環ラインに対する前記分岐管路の接続領域よりも下流側であって前記貯留タンクよりも上流側の第2位置において前記循環ラインに接続されたドレン部と、を備えた基板処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、循環ラインをパージガスによりパージすることにより、通常排液の後に循環ライン内に残存する処理液の多くを効率よく強制的に排出することができる。このため、循環ラインひいては循環システムの洗浄に用いる処理液の使用量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】基板処理装置の全体構成を示す系統図である。
【
図2】処理液交換の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、好適な実施形態について説明する。
【0012】
図1に示すように、基板処理装置は、処理液循環システム10と、処理液循環システム内を循環する処理液を用いて半導体ウエハ等の被処理基板(以下単に「基板W」と呼ぶ)を処理する処理ブロック20と、処理ブロック20から排出された処理液を処理液循環システム10に戻して再利用するための処理液回収システム30と、処理液循環システム10に交換用または補充用の処理液を供給するための処理液補給システム40とを有している。
【0013】
まず、処理液循環システム10について説明する。処理液循環システム10は、処理液を貯留する貯留タンク11と、貯留タンク11に接続された循環ライン(循環管路)12を有している。循環ライン12には、貯留タンク11から出て上流側から順に、処理液を加熱するヒータ13(処理液の種類次第では省略可能である)と、処理液を送る循環ポンプ14と、処理液中に含まれるパーティクル等の汚染物質を除去するフィルタ15とが順次介設されている。循環ライン12には、この循環ライン12をガスパージするための循環ラインパージ機構16が設けられている。循環ラインパージ機構16は、フィルタ15の下流側において循環ライン12に介設された開閉弁16aと、パージガス供給源としてのN2ガス(窒素ガス)供給源16bと、開閉弁16aの下流側の第1位置12bにおいて循環ライン12に接続されたパージガス供給ライン16cと、パージガス供給ライン16cに介設された開閉弁16dとを有している。さらに、循環ラインパージ機構16は、貯留タンク11の下流側であってかつ貯留タンク11に戻る前の位置において循環ライン12に介設された開閉弁16eと、開閉弁16eの上流側の第2位置12cにおいて循環ライン12に接続されたドレンライン16fと、ドレンライン16fに介設された開閉弁16gとを有している。
【0014】
また、フィルタ15には、循環ライン12を流れる処理液に含まれる気泡を除去するためのガス抜きライン17が接続されており、ガス抜きライン17は貯留タンク11に接続されている。ガス抜きライン17には開閉弁17aが介設されている。またフィルタ15には、ドレンライン18も接続されており、ドレンライン18には開閉弁18aが介設されている。貯留タンク11には、ドレンライン19が接続されており、ドレンライン19には開閉弁19aが介設されている。
【0015】
次に、処理ブロック20および処理液回収システム30について説明する。処理ブロック20は、互いに同じ構成を有する複数の処理ユニット21を有している。処理液循環システム10の循環ライン12の一部が処理ブロック20内を通っている。循環ライン12の処理ブロック20内にある接続領域12aにおいて、各処理ユニット21に処理液を供給する分岐ライン22が循環ライン12に接続されている。分岐ライン22が接続される接続領域12aは、循環ラインパージ機構16のパージガス供給ライン16cが接続される第1位置12bの下流側であって、かつ、循環ラインパージ機構16のドレンライン16fが接続される第2位置12cの上流側にある。分岐ライン22には、開閉弁23および流量調整弁24が介設されている。分岐ライン22は処理液供給ノズル25に接続されており、処理液供給ノズル25から基板保持部26により保持された基板Wに制御された流量で処理液が供給され、これにより基板Wに対して洗浄処理あるいはウエットエッチング処理等の所定の液処理が施される。なお、
図1には4つの処理ユニット21が表示されているが、処理ブロック20内に設けられる処理ユニット21の数は任意である。
【0016】
各処理ユニット21には、処理液供給ノズル25から吐出された処理液を、基板保持部26の周囲に設けられた処理液飛散防止用のカップ27を介して回収する分岐回収ライン28が接続されている。各分岐回収ライン28は回収ライン29に接続されており、この回収ライン29は、処理液回収システム30の回収タンク31に接続されている。回収タンク31には戻しライン32が接続されており、戻しライン32は貯留タンク11に接続されている。戻しライン32には戻しポンプ33が介設されており、この戻しポンプ33は、回収タンク31に回収された処理液を貯留タンク11に戻す。さらに、戻しポンプ33の下流側には、戻しライン32をN2ガス(窒素ガス)でパージするための戻しラインパージ機構34が設けられている。戻しラインパージ機構34は、戻しポンプ33の下流側において戻しライン32に介設された開閉弁34aと、パージガス供給源としてのN2ガス供給源34bと、開閉弁34aの下流側の位置32aにおいて戻しライン32に接続されたパージガス供給ライン34cと、パージガス供給ライン34cに介設された開閉弁34dとを有している。また、回収タンク31には、開閉弁35aが介設されたドレンライン35が接続されている。
【0017】
次に、処理液補給システム40について説明する。処理液補給システム40は、処理液循環システム10の貯留タンク11に処理液を供給するための補給タンク41を有している。補給タンク41には補給ライン42が接続されており、この補給ライン42は貯留タンク11に接続されている。補給ライン42には補給ポンプ43が介設されており、この補給ポンプ43は、補給タンク41に貯留された処理液を貯留タンク11に供給する。さらに、補給ポンプ43の下流側には、補給ライン42をガスパージするための補給ラインパージ機構44が設けられている。補給ラインパージ機構44は、補給ポンプ43の下流側において補給ライン42に介設された開閉弁44aと、パージガス供給源としてのN2ガス供給源44bと、開閉弁44aの下流側の位置42aにおいて補給ライン42に接続されたパージガス供給ライン44cと、パージガス供給ライン44cに介設された開閉弁44dとを有している。また、また、補給タンク41には、開閉弁45aが介設されたドレンライン45が接続されている。なお、図示はされていないが、補給タンク41に処理液を補充する補充ラインが設けられている。
【0018】
基板処理装置にはさらに、処理液循環システム10を洗浄する洗浄液としてのDIWを供給するDIW供給装置50を備えており、このDIW供給装置50は、DIW供給源51と、DIW供給源51と処理液循環システム10の貯留タンク11を接続するDIW供給ライン52と、DIW供給ライン52に介設された開閉弁53とを有している。
【0019】
なお、基板処理装置には複数種類の薬液を処理液として用いて基板の処理をするものもあり、このような場合には、処理ブロック20の各処理ユニット21に複数の処理液供給ノズル25が設けられるとともに、処理液循環システム10、処理液回収システム30および処理液補給システム40が必要に応じて複数設けられる。なお、処理液には貯留タンク11に戻すことができない種類のものもあり、その場合には、回収ライン29は工場廃液系に直接接続されるドレンラインとして設けられ、回収タンク31、戻しポンプ33および戻しラインパージ機構34は設けられない。なお、パージガスはN2ガスに限定されるものではなく、処理液と反応性が無く、処理液が通流する領域を汚染しないものであるなら任意のものを用いることができる。
【0020】
基板処理装置は、その全体の動作を統括制御する制御部100を有している。制御部100は、基板処理装置の各機能部品(処理ユニットの基板保持部、各種開閉弁、流量調整弁、ポンプ等)の動作を制御する。制御部100は、ハードウエアとして例えば汎用コンピュータと、ソフトウエアとして当該コンピュータを動作させるためのプログラム(装置制御プログラムおよび処理レシピ等)とにより実現することができる。ソフトウエアは、コンピュータに固定的に設けられたハードディスクドライブ等の記憶媒体に格納されるか、或いはCDROM、DVD、フラッシュメモリ等の着脱可能にコンピュータにセットされる記憶媒体に格納される。このような記憶媒体が参照符号101で示されている。プロセッサ102は必要に応じて図示しないユーザーインターフェースからの指示等に基づいて所定の処理レシピを記憶媒体101から呼び出して実行させ、これによって制御部100の制御の下で基板処理装置の各機能部品が動作して所定の処理が行われる。記憶媒体101には下記の処理液交換手順を実行するためのプログラムも記憶されている。
【0021】
次に、上記基板処理装置の作用について説明する。
【0022】
基板処理装置の通常運転時には、開閉弁16a、16eが開いた状態で、循環ポンプ14により循環ライン12内を処理液が循環している。この処理液循環時には、開閉弁19a,16d,16g,17a,18aは閉じている。ヒータ13が必要に応じて処理液を適当な温度に加熱する。処理液中に含まれるパーティクル等の汚染物質は、フィルタ15により除去される。必要に応じて、各処理ユニット21に循環ライン12から分岐ライン22を介して処理液が送り込まれて、基板Wの液処理が行われる。基板Wの液処理は、制御部100の制御の下で行われる。また、通常運転時には、必要に応じて、処理液回収システム30が、回収ライン29を介して回収タンク31に集められた使用済み処理液を、貯留タンク11に戻す。このような通常運転は、記憶媒体101に記憶された処理レシピに基づいて制御部100が基板処理装置の各機能部品を制御することにより実行される。
【0023】
次に、処理液を交換する場合の手順について
図2に示すフローチャートも参照して説明する。
【0024】
図示しないユーザーインターフェースにより、オペレータが、DIW洗浄(詳細後述)の回数、共洗い(詳細後述)の回数等の処理液交換作業に関する各種のパラメータを事前に設定しており、各種パラメータの設定値は、記憶媒体101に記憶されている。処理液交換作業は、前記各種設定値および記憶媒体101に記憶された処理液交換手順に基づいて、制御部100が基板処理装置の各機能部品を制御することにより実行される。なお、古い(現在使用中の)処理液から、同じ仕様の(種類、濃度等が同じ)新しい処理液に交換する場合には、交換タイミングは、現在使用中の処理液の通算使用時間、現在使用中の処理液による通算基板処理枚数により決定することができ、あるいは、現在使用中の処理液の劣化度合いの指標となるパラメータ(パーティクル数、pH値等)のセンサ(図示せず)による検出値により決定することができ、交換タイミングを決定する基準値も、オペレータが図示しないユーザーインターフェースを介して定めることができる。これとは別に、この基板処理装置に対して予め定められたプロセススケジュールに基づき、現在使用中の処理液から、別の仕様の(種類、濃度等が異なる)処理液に交換する場合もある。いずれの場合においても、制御部100が処理液交換要求を認識すると、
図2のフローに基づく一連の処理液交換手順が制御部100の制御の下で自動的に実行される。
【0025】
処理液交換の際には、処理ユニット21への基板Wの搬入が中止される。全ての処理ユニット21において基板Wの処理が終了し基板Wの搬出が完了すると
図2に示すフローが開始される。まず、ドレンライン19の開閉弁19aを開き、貯留タンク11内の液を排出する(ステップS1)。次に、開閉弁19aを開いた状態のまま、循環ポンプ14を作動させて、貯留タンク11から循環ポンプ14までの区間の循環ライン12内にある液を循環ポンプ14の下流側に追い出す(ステップS2)。このステップS2は、循環ポンプ14の上流側の循環ライン12が空になり、循環ポンプ14が液をポンプ送りしない状態(空打ち状態)になるまで循環ポンプ14の運転を継続することにより行う。なお、ステップS1およびステップS2を別の方法で実施することもできる。例えば、開閉弁16d,16e,19aを閉じ、開閉弁16a,16gを開き、循環ポンプ14を作動させる。こうすれば、貯留タンク11内の液は循環ライン12内を通ってドレンライン16fから排出される。そして貯留タンク11が空になった後しばらくの間、循環ポンプ14を空打ち状態(液を吐出しない状態)になるまで運転すれば、ステップS2の終了直後と同じ状態を実現することができる。なお、ステップS1およびS2は処理液排液工程とも呼ぶ。
【0026】
ステップS2の直後には、液流れ方向に関して循環ポンプ14から貯留タンク11までの間の区間の循環ライン12内に液が残っていることになる。これを排出するため、N2ガスパージ(ガスパージ工程)を行う。まず、循環ライン12に介設された開閉弁16aおよび開閉弁16eを閉じ、パージガス供給ライン16cに介設された開閉弁16dおよびドレンライン16fに介設された開閉弁16gを開く。これにより、N2ガス供給源16bからパージガス供給ライン16cを介して循環ライン12にN2ガスが流れ込み、循環ライン12を流れた後、ドレンライン16fから排出される。このN2ガスの流れに乗って、第1位置12bから第2位置12cまでの間の区間における循環ライン12内にある液がドレンライン16fから強制的に排出される(ステップS3)。ステップS3の終了間際に(例えば終了の5秒前から終了までの間に)、開閉弁16gに加えて開閉弁16eを開く。これによって、循環ライン12の第2位置12cから貯留タンク11までの間の区間にある液を抜くことができる。この開閉弁16eの開放をあまり早く開始すると、第2位置12cより上流側の循環ライン12内にある古い処理液が貯留タンク11内に流れ込み、貯留タンク11が汚染されるので好ましくない。これに対して、ステップS3の終了間際においては第2位置12cより上流側の循環ライン12内にある古い処理液はほとんどドレンライン16fから排出されているため、その時点で開閉弁16eを開いても、貯留タンク11内に流入するのは実施的に第2位置12cより下流側にある古い処理液のみである。
【0027】
次に、DIW洗浄(後述のステップS5、S6)が予め定められた回数だけ実行されたか否かが判断され(ステップS4)、まだ所定回数実行されていないと判断されたら(ステップS4のNO)、フローはステップS5に進み、DIW洗浄が行われる。まず、循環ライン12の開閉弁16aおよびドレンライン16fの開閉弁16gが開状態とされ、循環ライン12の開閉弁16eパージガス供給ライン16cの開閉弁およびドレンライン19の開閉弁19aが閉状態とされる。この状態で、DIW供給ライン52に介設された開閉弁53が開かれ、貯留タンク11内に所定量(満水である必要はない)のDIW(純水)が貯留された状態にされる。そしてDIW供給ライン52から貯留タンク11へのDIWの供給を継続しつつ循環ポンプ14が作動され、これにより、貯留タンク11内にあるDIWが、循環ライン12内を流れてゆき、ドレンライン16fから排出される。このとき、貯留タンク11から第2位置12cまでの間の区間の循環ライン12および当該区間内に介設された機器(ヒータ13、ポンプ14、フィルタ15等)がDIWにより洗浄される(ステップS5)。ステップS5を所定時間実行した後、循環ポンプ14の作動およびDIW供給ライン52から貯留タンク11へのDIWの供給を継続しつつ、ドレンライン16fの開閉弁16gを閉じるととともに循環ライン12の開閉弁16eを開き、貯留タンク11がDIWで満たされた状態(満水状態)としつつ、DIWを循環ライン12内に所定時間循環させる。なお、DIW供給ライン52から貯留タンク11へのDIWの供給は貯留タンク11が満水となった時点で停止する。これによって、貯留タンク11から出て貯留タンク11に戻るまでの全区間において、循環ライン12および当該区間内に介設された機器がDIWによりさらに洗浄される(ステップS6)。
【0028】
ステップS6を所定時間実行した後、循環ポンプ14を停止する。次に、フローはステップS1に戻り、貯留タンク11内の液(ここではDIW)を排出し(ステップS1)、次いで、循環ライン12内の液(ここではDIW)を排出する(ステップS2)。次に、ステップS3を実行して、循環ライン12の第1位置12bよりも下流側に残存するDIWをガスパージする。
【0029】
次に、フローは再びステップS4に進み、ここでDIW洗浄(ステップS5、S6)が所定回数実行されたか否かが再びされる。所定回数実行されていない(ステップS4のNO)と判断されれば、再びステップS5、S6、S1、S2、S3が実行される。ここで、例えば所定回数が3回で、すでに各3回のDIW洗浄が既に実行されているものとする(ステップS4のYES)。この場合、フローはステップS7に進む。
【0030】
まず、循環ライン12の開閉弁16aおよびドレンライン16fの開閉弁16gが開状態とされ、循環ライン12の開閉弁16eパージガス供給ライン16cの開閉弁およびドレンライン19の開閉弁19aが閉状態とされる。この状態で、処理液補給システム40により貯留タンク11に新しい処理液を供給する。詳細には、パージガス供給ライン44cに介設された開閉弁44dが閉じられた状態で、補給ライン42に介設された開閉弁44aが開かれるとともに、補給ポンプ43が作動され、これにより補給タンク41内に貯留された新しい処理液が貯留タンク11に供給され、貯留タンク11内に所定量(満水である必要はない)の新しい処理液が貯留された状態にされる。そして補給ライン42から貯留タンク11への新しい処理液の供給を継続しつつ循環ポンプ14が作動され、これにより、貯留タンク11内にある新しい処理液が、循環ライン12内を流れてゆき、ドレンライン16fから排出される。このとき、貯留タンク11から第2位置12cまでの間の区間の循環ライン12および当該区間内に介設された機器(ヒータ13、ポンプ14、フィルタ15等)が新しい処理液により洗浄される(ステップS7)。ステップS7を所定時間実行した後、循環ポンプ14の作動および補給ライン42から貯留タンク11への新しい処理液の供給を継続しつつ、ドレンライン16fの開閉弁16gを閉じるととともに循環ライン12の開閉弁16eを開き、貯留タンク11が新しい処理液で満たされた状態(満水状態)としつつ、新しい処理液を循環ライン12内に所定時間循環させる。なお、補給ライン42から貯留タンク11への新しい処理液の供給は貯留タンク11が満水となった時点で停止する。これによって、貯留タンク11から出て貯留タンク11に戻るまでの全区間において、循環ライン12および当該区間内に介設された機器が新しい処理液によりさらに洗浄される(ステップS8)。
【0031】
ステップS8を所定時間実行した後、循環ポンプ14を停止する。次に、新しい処理液による共洗い(ステップS7、S8)が所定回数(例えば2回)実行されたか否かが判断され(ステップS9)、まだ所定回数実行されていないと判断されたら(ステップS9のNO)、再びステップS1、S2、S3、(S4)、S7、S8が実行される。ステップS9にて「所定回数実行された」と判断されたら(ステップS9のYES)、一連の処理液交換作業が終了する。
【0032】
なお、ガス抜きライン17にも、古い処理液が存在するため、ステップS5およびステップS6のうちの少なくとも1つにおいて、開閉弁17aを開いて、ガス抜きライン17をDIWにて洗浄することが好ましい。また、処理液交換作業の終了時、すなわち、新しい処理液を用いた処理ユニット21による処理行われる時には、フィルタ15のエア抜きが完了していることが望ましいため、少なくとも最後にステップS8を実行する時には開閉弁17aを開くことが望ましい。
【0033】
なお、上記の実施形態の説明においては、戻しラインパージ機構34の作用について説明しなかったが、戻しライン32内には古い処理液が残存するので、戻しライン32でも同様に古い処理液を可能な限り取り除いておくことが好ましい。このような古い処理液の除去は、例えば、ステップS1の開始前に実施することができる。具体的には、まず、ドレンライン35の開閉弁35aを開き、回収タンク31内にある古い処理液を排出する。次いで、パージガス供給ライン34cの開閉弁34dを閉じるとともに戻しライン32の開閉弁34aを開いた状態で、戻しポンプ33を空打ち状態になるまで作動させ、戻しライン32の回収タンク31から戻しポンプ33までの間の区間に残留する古い処理液を貯留タンク11に送る。その後、戻しライン32の開閉弁34aを閉じるとともにパージガス供給ライン34cの開閉弁34dを開き、N2ガス供給源34bからN2ガスを戻しライン32に流入させると、N2ガスに乗って戻しライン32の位置32aより下流側に残存する古い処理液が貯留タンク11内に流入する(N2ガスによるパージ)。
【0034】
また、DIW洗浄(ステップS5およびS6、特にステップS6)の実施中、あるいは新しい処理液による共洗い(ステップS7およびS8、特にステップS8)の実施中に、各分岐ライン22に介設された開閉弁23を開き、循環ライン12を循環する液を分岐ライン22を介して各処理ユニット22に流し、分岐回収ライン28および回収ライン29を介して回収タンク31に流し、この回収タンク31内の液を戻しポンプ33により戻りライン32を介して貯留タンク11内に戻してもよい。また、その後に、戻しラインパージ機構34を用いて上記のような手順で戻しライン32のN2ガスパージを行ってもよい。
【0035】
なお、上記の実施形態の説明においては、補給ラインパージ機構44の作用についても説明しなかったが、補給ライン42内には古い処理液が残存するので、補給ライン42でも同様に古い処理液を可能な限り取り除いておくことが好ましい。このような古い処理液の除去は、例えば、ステップS2の開始前に実施することができる。具体的には、まず、ドレンライン45の開閉弁45aを開き、補給タンク41内にある古い処理液を排出する。次に、補給ライン42の開閉弁44aを閉じるとともにパージガス供給ライン44cの開閉弁44dを開き、N2ガス供給源44bからN2ガスを補給ライン42に流入させると、N2ガスに乗って補給ライン42内に残存する古い処理液が貯留タンク11内に流入する(N2ガスによるパージ)。
【0036】
上記の実施形態によれば、循環ライン12をパージガス(N2ガス)によりパージすることにより、ドレンライン19を介した排液および循環ポンプ14を用いた通常排液の後に循環ライン12内に残存する液の多くを効率よく強制的に排出することができる。このため、共洗い(ステップS7、S8)に使用する新しい処理液の量を減らすことができる。
【0037】
また、古い処理液を排出した後に(ステップS1〜S3の後に)DIW洗浄(ステップS5、S6)を行っているため、処理液循環システム10内に残っている古い処理液を安価なDIW(純水)により確実に押し出すことができ、共洗い(ステップS7、S8)の開始前に処理液循環システム10内をよりクリーンな状態にすることができる。このため、共洗い(ステップS7、S8)に使用する新しい処理液の量をより減らすことができる。また、DIW洗浄(ステップS5、S6)を複数回行っているため、共洗い(ステップS7、S8)の開始前に処理液循環システム10内をさらに一層クリーンな状態にすることができ、共洗い(ステップS7、S8)に使用する新しい処理液の量をより減らすことができる。
【0038】
なお上記の実施形態においては、DIW洗浄(ステップS5、S6)および共洗い(ステップS7、S8)をそれぞれ複数回行うこととしていたが、これに限定されるものではない。例えば、DIW洗浄(ステップS5、S6)を省略することができる。この場合においても、古い処理液がパージガスにより効率良く排出されるため、共洗い(ステップS7、S8)に使用する新しい処理液の量を減らすことができる。また、DIW洗浄(ステップS5、S6)を一回だけ実行するようにしてもよい。共洗い(ステップS7、S8)も、一回だけ実行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
11 貯留タンク
12 循環ライン
12a 接続領域
12b 第1位置
(供給位置)
12c 第2位置
(排出位置)
14 循環ポンプ
16b,16c,16d パージガス供給部
16f,16g (循環ラインの)ドレン部
19,19a (貯留タンクの)ドレン部
22 分岐管路
25 処理液供給ノズル
W 基板