特許第5726812号(P5726812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5726812
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】シリコンウェーハの乾燥方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20150514BHJP
【FI】
   H01L21/304 651M
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-122416(P2012-122416)
(22)【出願日】2012年5月29日
(65)【公開番号】特開2013-247348(P2013-247348A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2014年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390004581
【氏名又は名称】三益半導体工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】阿部 達夫
(72)【発明者】
【氏名】椛澤 均
(72)【発明者】
【氏名】新井 泉
【審査官】 外山 毅
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−287321(JP,A)
【文献】 特開昭63−228623(JP,A)
【文献】 特開平03−208344(JP,A)
【文献】 特開平07−297166(JP,A)
【文献】 特開2003−142451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウェーハの乾燥方法であって、
前記シリコンウェーハを純水で満たされた洗浄槽から取り出した後、該シリコンウェーハを、開口部及び排気口を有する石英製の乾燥容器内の載置台に配置し、前記排気口から前記乾燥容器内のガスをブロワ―で排気することで前記開口部からガスを吸引しつつ、前記乾燥容器の外側に設置したヒーターによって前記乾燥容器内を加熱することで前記シリコンウェーハを乾燥させる方法において、前記シリコンウェーハ表面における前記ガスの風速が0.2〜0.5m/secとなるように前記排気口から前記ガスを前記ブロワ―で排気することを特徴とするシリコンウェーハの乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェーハの乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェーハの製造工程では、各工程の前処理や後処理としてシリコンウェーハの洗浄が行われる。洗浄工程では各種薬液による洗浄を行い、超純水でリンスを行った後、乾燥が行われる。
【0003】
ここで行われる乾燥方法としては、シリコンウェーハをキャリアに収めた状態で回転させ、遠心力を利用して水を振り切って乾燥させる方法(スピンドライ乾燥)、イソプロピルアルコール(IPA)等の有機溶剤を用いた蒸気中にシリコンウェーハを保持して、その表面の水分を有機溶剤に置換して乾燥させる方法(IPA乾燥等)、特許文献1のように、載置台の空洞部を減圧して付着した水分を開口部から吸引する乾燥方法(吸引乾燥)、超純水中にシリコンウェーハを浸漬してゆっくりと超純水を排水し、超純水の表面張力を利用して乾燥させる方法(純水乾燥)、ハロゲンランプ等の熱源を用いてシリコンウェーハ表面の純水を蒸発させて乾燥させる方法(IR乾燥)、温純水にシリコンウェーハを浸漬してゆっくり引上げて乾燥させる方法(温水引上乾燥)、シリコンウェーハを密閉乾燥容器内に入れ、容器内を減圧排気し、蒸発する水分を排除して乾燥させる方法(減圧乾燥)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−50657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シリコンウェーハの乾燥工程では、数十枚のシリコンウェーハを同時に乾燥することが多い。上記のように、シリコンウェーハの乾燥には複数の方法があるが、例えばスピンドライ乾燥では、回転乾燥時のシリコンウェーハとキャリアの接触による発塵や回転駆動部からの発塵によって、シリコンウェーハ表面の清浄度に問題が生じる。
【0006】
また、IPA乾燥等は、使用する有機溶剤が揮発性であることから安全性の問題や、高価な有機溶剤によるコスト高が問題となっている。純水乾燥は、シリコンウェーハを純水中に浸漬し、ゆっくりと超純水を排水しながら乾燥を行うため時間が掛かり、生産性が著しく低い点が問題となっている。同様に、温水引上乾燥も低速でシリコンウェーハを温水から引き上げるため、生産性が低いという問題がある。IR乾燥は、主にシリコンウェーハを一枚ずつしか乾燥できないため、生産性の面から問題がある。減圧乾燥に関しては、乾燥中に気化熱が奪われ、シリコンウェーハ表面で水分が結露してしまうことが問題となっている。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、シリコンウェーハの品質を悪化させずに効率良く乾燥する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、シリコンウェーハの乾燥方法であって、前記シリコンウェーハを純水で満たされた洗浄槽から取り出した後、該シリコンウェーハを、開口部及び排気口を有する石英製の乾燥容器内の載置台に配置し、前記排気口から前記乾燥容器内のガスを排気することで前記開口部からガスを吸引しつつ、前記乾燥容器の外側に設置したヒーターによって前記乾燥容器内を加熱することで前記シリコンウェーハを乾燥させる方法において、前記シリコンウェーハ表面における前記ガスの風速が0.2〜0.5m/secとなるように前記排気口から前記ガスを排気することを特徴とするシリコンウェーハの乾燥方法を提供する。
【0009】
このような乾燥方法であれば、ヒーターによる加熱と、排気によるガスの流れで効率的にシリコンウェーハを乾燥することができる。
更に、前記シリコンウェーハ表面における前記ガスの風速が0.2〜0.5m/secとなるように前記排気口から前記ガスを排気することで、乾き残りが生じること、及び、排気量の増大による空調設備のコストアップを招くことを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、ヒーターによる加熱と、排気によるガスの流れで効率的にシリコンウェーハを乾燥する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】シリコンウェーハの洗浄・乾燥工程フローの一例である。
図2】本発明のシリコンウェーハの乾燥方法の一例を示すフロー図であり、(a)がリンス、(b)が純水引上、(c)が乾燥ステージを表している。
図3】比較例におけるシリコンウェーハの温純水乾燥方法の概略図であり、(a)がリンス、(b)が温純水引上、(c)が乾燥ステージを表している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について、実施態様の一例として、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0013】
シリコンウェーハの洗浄では、まず、図1に示すように、シリコンウェーハをアンモニア・過酸化水素水(以下、過水ともいう)洗浄する。次に、アンモニア・過水洗浄を行ったシリコンウェーハを、リンスした後に、塩酸・過水洗浄を行う。その後、塩酸・過水洗浄を行ったシリコンウェーハを、再び純水リンスする。
例えば、上記のように洗浄されたシリコンウェーハを、以下に述べる本発明により乾燥させることができる。
【0014】
本発明では、図2(a)のような純粋リンス後に、図2(b)に示すように、上記リンスしたシリコンウェーハ1を、純水で満たされた洗浄槽2からシリコンウェーハスタンド9を用いて取り出した後、図2(c)に示すように、開口部3及び排気口4を有する石英製の乾燥容器5内の載置台6に配置し、乾燥させる。尚、シリコンウェーハ1を洗浄槽2から取り出す際、洗浄槽2内の純水がオーバーフローしている状態から、シリコンウェーハ1を取り出しても良いし、純水を洗浄槽2内から排出した後、シリコンウェーハ1を洗浄槽2から取り出しても良い。また、洗浄槽2内の純水は常温であることが好ましい。
【0015】
本発明のシリコンウェーハの乾燥方法では、排気口4から乾燥容器5内のガス7を排気することで開口部3からガス7を吸引しつつ、乾燥容器5の外側に設置したヒーター8によって乾燥容器5内を加熱することで、シリコンウェーハ1を乾燥させる。このとき、シリコンウェーハ1表面におけるガス7の風速が0.2〜0.5m/secとなるように排気口4からガス7を排気する。
【0016】
洗浄槽から取り出し表面全体が水で濡れたシリコンウェーハを上記のように乾燥することで、ヒーターによる加熱と、排気によるガスの流れで効率的にシリコンウェーハを乾燥することができる。このような本発明であれば、有機溶剤を使わず、発塵の原因となる稼動部や、真空に減圧する設備も必要無く、更に温純水製造設備も不要であり、複数のシリコンウェーハをバッチ処理により乾燥することが可能であるため、生産性の悪化も無く、清浄度、ランニングコスト、安全性、自動化の面において優れているシリコンウェーハの乾燥方法を提供することができる。
【0017】
このとき、シリコンウェーハ表面のガス風速が、0.2m/sec未満であると所定の時間内で乾き残りが生じてしまう場合があり、一方、0.5m/secを超えると、ガス排気量の増大による空調設備のコストアップを招き、無駄が生じてしまうとともに、パーティクルレベルの悪化が生じる。従って、本発明では、シリコンウェーハ表面におけるガスの風速が0.2〜0.5m/secとなるように排気することで、乾き残りが発生せずに、低コストでシリコンウェーハを乾燥させることが可能となる。また、排気・吸引される乾燥容器内のガスは特に限定されないが、空気であれば低コストでシリコンウェーハを乾燥させることができる。
【0018】
更に、上記ガスの排気風速の制御は、排気口に接続された排気ダクトの風量を調整することによって行われることが好ましいため、シリコンウェーハを配置した乾燥容器の排気専用にブロワーを用いることが望ましい。この場合には、排気風速の調整が他の排気バランスに影響を与えることなく、ブロワーの出力設定を変更するだけで行うことができる。
【0019】
また、ブロワーの運転は乾燥容器内のクリーン度を維持するために、常時、一定の排気風量の設定であることが好ましい。これは、例えば、乾燥時のみ排気ブロワーを運転すると、ブロワーの運転に合わせて乾燥容器内の室圧が変化することとなり、クリーン度を維持できない場合があるためである。尚、乾燥容器内のクリーン度を維持できる条件でシリコンウェーハ乾燥時と待機時で排気風量を変更することは可能である。
【0020】
また、図2(c)において、乾燥容器5は、シリコンウェーハ1の表面を通って排気される清浄なガスを無駄なく載置台6下方の排気口4に導入することができる構造となっている。そのため、開口部3は、最小限の開口面積で、かつ、気流が乱れないことが好ましい。また、乾燥容器5の外側に設置されたヒーター8によって、乾燥容器5内のシリコンウェーハ1の加熱を行うため、乾燥容器5は耐熱性を有する石英から作られている。更に、乾燥容器5の大きさとしては、シリコンウェーハ1を排気されるガスにより効率良く乾燥させるために、シリコンウェーハ1の全面が乾燥容器5内に位置することができる大きさが好ましい。
【0021】
また、本発明において、図2(c)では、シリコンウェーハ1は、載置台6の溝部に鉛直方向に配置されているが、水平(枚葉式)に配置しても同様に乾燥することができる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
最初に直径が300mmの両面を鏡面で仕上げた清浄なシリコン単結晶のシリコンウェーハを準備した。このシリコンウェーハは、図1に示すようにアンモニア・過酸化水素水洗浄を行った後、連続して、純水リンス、塩酸・過水洗浄、純水リンスを行い、最後に乾燥を行った。
【0023】
このとき、洗浄条件は、表1に示すように、アンモニア・過水洗浄の薬液組成(混合比率)はアンモニア:過水:純水=1:1:10、洗浄液温度は80℃、塩酸・過水洗浄の薬液組成(混合比率)は塩酸:過水:純水=1:1:10、洗浄液温度は80℃とし、各洗浄液による洗浄時間はそれぞれ5minとした。
【0024】
【表1】
【0025】
図1の工程4において、図2(a)に示すような純水リンスをした後には、図2(b)に示すように、洗浄槽2に取り付けられた可動式のシリコンウェーハスタンド9が、5mm/secの速度で上昇することによってシリコンウェーハ1を室温の純水中から取り出し、続けて図2(c)に示すように、シリコンウェーハ1を載置台6に配置し、ヒーター8で加熱しつつ、ブロワーで排気しながら乾燥を行った。このとき、シリコンウェーハ1表面における排気風速は、0.2m/secで行った。ヒーター8は波長が2〜3.5ミクロンの中波長赤外線ヒーター1.2KWを2個使用した。尚、排気される空気には、薬品は含まれていないので、乾燥容器5が配置されたクリーンルーム内に戻すことも可能であった。
【0026】
(実施例2)
シリコンウェーハ表面における排気風速を、0.4m/secとした以外は、実施例1と同様にシリコンウェーハの洗浄、乾燥を行った。
【0027】
(実施例3)
シリコンウェーハ表面における排気風速を、0.5m/secとした以外は、実施例1と同様にシリコンウェーハの洗浄、乾燥を行った。
【0028】
(比較例1)
実施例1と同様にアンモニア・過水洗浄、純水リンス、塩酸・過水洗浄、純水リンスを連続して行い、図3(a)に示す純水リンス後に、図3(b)に示すように温純水乾燥を行った。温純水乾燥では、洗浄槽12の温純水温度は50℃、流量は5L/min、洗浄槽12に取り付けられた可動式のシリコンウェーハスタンド19の上昇速度は2mm/secで行った。この後、図3(c)に示すように、乾燥用の載置台16にシリコンウェーハ11を載置し、温純水乾燥による余熱を利用して、シリコンウェーハ11の乾燥を行った。
【0029】
(比較例2)
シリコンウェーハ表面における排気風速を、0.1m/secとした以外は、実施例1と同様にシリコンウェーハの洗浄、乾燥を行った。
【0030】
(比較例3)
シリコンウェーハ表面における排気風速を、0.8m/secとした以外は、実施例1と同様にシリコンウェーハの洗浄、乾燥を行った。
【0031】
以下、実施例及び比較例における乾燥後のシリコンウェーハのパーティクルレベル(平均値)と乾き残りの結果について表2にまとめた。
【0032】
【表2】
【0033】
表2に示すように、比較例1では、乾き残りは生じなかったが、パーティクルレベルは若干悪く、また温純水乾燥における引き上げと、その後の乾燥に時間がかかるため、生産性が悪かった。また、比較例2では、シリコンウェーハ表面の排気速度が小さいため、乾き残りが発生した。更に、比較例3では、シリコンウェーハ表面の排気速度が大きいため、空間設備のコストアップを招き、更にパーティクルレベルも悪かった。
【0034】
一方、実施例1〜3では、シリコンウェーハを生産性良く乾燥することができ、パーティクルレベルの悪化や、乾き残りも生じなかった。
【0035】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0036】
1,11…シリコンウェーハ、 2,12…洗浄槽、 3…開口部、 4…排気口、 5…乾燥容器、 6,16…載置台、 7…ガス、 8…ヒーター、 9,19…シリコンウェーハスタンド。
図1
図2
図3