特許第5727043号(P5727043)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5727043
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】導電性酸化物焼結体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/453 20060101AFI20150514BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20150514BHJP
   C23C 14/08 20060101ALI20150514BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20150514BHJP
   C04B 35/04 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   C04B35/00 P
   C23C14/34 A
   C23C14/08 K
   H01B5/14 A
   C04B35/04 Z
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-551455(P2013-551455)
(86)(22)【出願日】2013年1月21日
(86)【国際出願番号】JP2013051043
(87)【国際公開番号】WO2014010259
(87)【国際公開日】20140116
【審査請求日】2013年11月7日
(31)【優先権主張番号】特願2012-153243(P2012-153243)
(32)【優先日】2012年7月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX日鉱日石金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093296
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100173901
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 一輝
(72)【発明者】
【氏名】奈良 淳史
【審査官】 原田 隆興
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/129410(WO,A1)
【文献】 特開2011−202268(JP,A)
【文献】 特開平06−002130(JP,A)
【文献】 特開平11−236219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/453
C04B 35/04
C23C 14/08
C23C 14/34
H01B 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)及び/又は珪素(Si)、酸素(O)からなり、Alの含有量がAl換算で0.1〜3.0 mol%、Mg及び/又はSiの総含有量がMgO及び/又はSiO換算で27〜70 mol%、残部がZnのZnO換算の含有量であり、さらに融点が1000°C以下の酸化物を形成する金属を含有し、前記酸化物を形成する金属の含有量が酸化物重量換算で0.1〜5wt%であり、焼結体のバルク抵抗が10Ω・cm以下であることを特徴とする焼結体。
【請求項2】
相対密度が90%以上であることを特徴とする請求項1に記載の焼結体。
【請求項3】
前記酸化物として、B、P、KO、V、Sb、TeO、Ti、PbO、Bi、MoOから選択した一種以上の材料であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか一項に記載の焼結体。
【請求項4】
スパッタリングターゲットとして用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の焼結体。
【請求項5】
請求項4に記載の焼結体を用いてスパッタリングにより形成した膜であって、屈折率が2.0以下であることを特徴とする薄膜。
【請求項6】
Al粉が0.1〜3.0mol%、MgO及び/又はSiO粉が27〜70mol%、残部をZnO粉として、合計量が100mol%となるように、これらの原料粉を調整し、この原料粉を不活性ガス又は真空雰囲気下、1050°C以上、1500°C以下で焼結することを特徴とする焼結体の製造方法。
【請求項7】
さらに融点が1000°C以下の酸化物粉を0.1〜5wt%添加して原料粉とすることを特徴とする請求項6に記載の焼結体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄を含有せず、バルク抵抗が低くDCスパッタリングが可能であり、低屈折率の光学薄膜形成用ターゲット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主として相変化型の光情報記録媒体の保護層に一般的に使用されるZnS−SiOは、光学特性、熱特性、記録層との密着性等において、優れた特性を有し、広く使用されている。しかし、今日Blu−Rayに代表される書き換え型光ディスクは、さらに書き換え回数の増加、大容量化、高速記録化が強く求められている。
【0003】
光情報記録媒体の書き換え回数等が劣化する原因の一つとして、保護層ZnS−SiOに挟まれるように配置された記録層材への、ZnS−SiOからの硫黄成分の拡散が挙げられる。また、大容量化、高速記録化のため高反射率で高熱伝導特性を有する純AgまたはAg合金が反射層材に使用されるようになったが、このような反射層も保護層材であるZnS−SiOと接するように配置されている。
したがって、この場合も同様に、ZnS−SiOからの硫黄成分の拡散により、純AgまたはAg合金反射層材も腐食劣化して、光情報記録媒体の反射率等の特性劣化を引き起こす要因となっていた。
【0004】
これら硫黄成分の拡散防止対策として、反射層と保護層、記録層と保護層の間に、窒化物や炭化物を主成分とした中間層を設けた構成にすることも行なわれている。しかし、これは積層数の増加となり、スループット低下、コスト増加になるという問題を発生している。上記のような問題を解決するため、保護層材に硫化物を含まない酸化物のみの材料へと置き換え、ZnS−SiOと同等以上の光学特性、非晶質安定性を有する材料系が検討されている。
【0005】
また、ZnS−SiO等のセラミックスターゲットは、バルク抵抗値が高いため、直流スパッタリング装置により成膜することができず、通常高周波スパッタリング(RF)装置が使用されている。ところが、この高周波スパッタリング(RF)装置は、装置自体が高価であるばかりでなく、スパッタリング効率が悪く、電力消費量が大きく、制御が複雑であり、成膜速度も遅いという多くの欠点がある。また、成膜速度を上げるため、高電力を加えた場合、基板温度が上昇し、ポリカーボネート製基板の変形を生ずるという問題がある。また、ZnS−SiOは膜厚が厚いために起因するスループット低下やコスト増も問題となっていた。
【0006】
以上のようなことから、DCスパッタリング可能なターゲットとして、ZnOの使用すなわち硫黄成分を含有させずに透明導電性の薄膜を形成するために、ZnOに正三価以上の原子価を有する元素を単独で添加するという焼結体ターゲットの提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この場合は低バルク抵抗値と低屈折率化を両立させるということが十分にできないと考えられる。
また、透明導電膜及びそれを製造するための焼結体として、I族、III族、IV族元素を様々に組合せた高周波又は直流マグネトロンスパッタリング法による製造方法が提案されている(特許文献2参照)。しかし、この技術の目的は、ターゲットの低抵抗化を目途とするものではなく、さらに、低バルク抵抗値と低屈折率化を両立させるということが十分にできないと考えられる。
【0007】
また、添加する元素の少なくとも1種がZnOに固溶されるという条件のZnOスパッタリングターゲットが提案されている(特許文献3参照)。これは添加元素の固溶が条件であるから、成分組成に制限があり、したがって光学特性にも制限が生ずるという問題がある。
【0008】
以上から、本出願人は、下記の特許文献4に示す内容の発明を行い、すなわち、Al:0.2〜3.0 at%、MgO及び/又はSiO:1〜27 at%、残部ZnOからなる低屈折率でありかつ低バルク抵抗を備えているスパッタリングターゲットを提供することにより、ターゲット及び成膜特性は非常に向上させることができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平2−149459号公報
【特許文献2】特開平8−264022号公報
【特許文献3】特開平11−322332号公報
【特許文献4】特許第4828529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の特許文献4は、低屈折率の膜が成膜可能なスパッタリングターゲットであるが、さらなる屈折率を低下させるように成分組成を調整した場合、低バルク抵抗が得られず、DCスパッタリングができないことがあった。
そこで、本発明は低屈折率の薄膜をDCスパッタリングによって成膜することのできる焼結体及びその製造方法を提供するものである。これによって、成膜速度の向上を可能とし、低屈折率の薄膜形成のスループットを大幅に改善することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために本発明者らは鋭意研究を行った結果、低屈折率の組成領域においても、不活性ガス又は真空雰囲気下で焼結を行うことにより、低バルク抵抗を達成することができ、DCスパッタリングが可能との知見を得た。そして、DCスパッタリングによる高速成膜が可能となり、光情報記録媒体の特性改善、生産性向上が可能であるとの知見を得た。
【0012】
本発明はこの知見に基づき、
1)亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)及び/又は珪素(Si)、酸素(O)からなり、Alの含有量がAl換算で0.1〜3.0 mol%、Mg及び/又はSiの総含有量がMgO及び/又はSiO換算で27〜70 mol%、残部がZnのZnO換算の含有量であることを特徴とする焼結体。
2)焼結体のバルク抵抗が10Ω・cm以下であることを特徴とする上記1)に記載の焼結体。
3)相対密度が90%以上であることを特徴とする上記1)又は2)に記載の焼結体。
4)さらに融点が1000°C以下の酸化物を形成する金属を含有し、前記酸化物を形成する金属の含有量が酸化物重量換算で0.1〜5wt%であることを特徴とする上記1)〜3)のいずれか一に記載の焼結体。
5)前記酸化物として、B、P、KO、V、Sb、TeO、Ti、PbO、Bi、MoOから選択した一種以上の材料であることを特徴とする上記4)記載の焼結体。
6)スパッタリングターゲットとして用いることを特徴とする上記1)〜5)のいずれか一に記載の焼結体。
【0013】
7)上記6)に記載の焼結体を用いてスパッタリングにより形成した膜であって、屈折率が2.0以下であることを特徴とする薄膜。
【0014】
8)Al粉が0.1〜3.0mol%、MgO及び/又はSiO粉が27〜70mol%、残部をZnO粉として、合計量が100mol%となるようにこれらの原料粉を調整し、この原料粉を不活性ガス又は真空雰囲気下、1050°C以上、1500°C以下で焼結することを特徴とする焼結体の製造方法。
9)さらに融点が1000°C以下の酸化物粉を0.1〜5wt%添加して原料粉とすることを特徴とする上記8)記載の焼結体の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
以上により、本発明は、低屈折率の薄膜をDCスパッタリングによって成膜することのできる焼結体及びその製造方法を提供することができるという優れた効果を有する。また、特に光情報記録媒体用薄膜(特に保護膜、反射層、半透過膜層としての使用)に有用であるスパッタリングターゲットを提供できる。以上の通り、光情報記録媒体の特性の向上、設備コストの低減化、成膜速度の向上によるスループットを大幅に改善することが可能となるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)及び/又は珪素(Si)、酸素(O)を構成元素とする焼結体であって、Alの含有量がAl換算で0.1〜3.0 mol%、Mg及び/又はSiの総含有量がMgO及び/又はSiO換算で27〜70 mol%、残部がZnのZnO換算の含有量であり、DCスパッタリングが可能な程度の低バルク抵抗を備えることを特徴とする。
原料の調整の際、残部をZnOとして各酸化物の比率をその合計が100mol%の組成となるように調整するため、Znの含有量は、残部のZnO換算から求めることができる。
なお、本発明では、焼結体中の各金属の含有量を酸化物換算で規定しているが、焼結体中の各金属はその一部又は全てが複合酸化物として存在している。また、通常用いられる焼結体の成分分析では、酸化物ではなく、金属として、それぞれの含有量が測定される。
【0017】
本発明の焼結体は、導電性を付与するために、Alの酸化物をAl換算で0.1〜3.0 mol%添加することを特徴とする。この範囲を超えるAlの酸化物の添加は、所望の導電性を付与することが困難となる。
また、本発明の焼結体は、屈折率を低下させるために、Mg及び/又はSiの酸化物を添加することを特徴とする。MgOとSiOは、それぞれ単独添加又は複合添加が可能であり、いずれも本発明の目的を達成することができる。通常、MgO及び/又はSiOが27mol%以上では、バルク抵抗値が高くなってDCスパッタリングが困難となるが、本発明によれば、MgO及び/又はSiOが27mol%以上であっても、DCスパッタリングが可能な程度のバルク抵抗値を得ることが可能となる。一方、70mol%超となると、低バルク抵抗を維持することが困難となるため、好ましくない。
【0018】
また、本発明の焼結体は、DCスパッタリングが可能な程度のバルク抵抗値を有するものであるが、より好ましくは10Ω・cm以下である。さらに好ましくは1Ω・cm以下である。
【0019】
また、本発明の焼結体は、相対密度が90%以上であることが好ましい。相対密度が90%以上とすることにより、スパッタリングにより成膜した薄膜の膜厚均一性を向上することができる。
【0020】
また、本発明は、融点が1000°C以下の酸化物を形成する金属を、酸化物換算で0.1〜5wt%含有することを特徴とする。融点が1000°C以下の酸化物の添加することにより、低温焼結化、高密度化が可能となり、異常放電がなく、安定したスパッタリングが可能となる。この低融点酸化物として、特にB、P、KO、V、Sb、TeO、Ti、PbO、Bi、MoOから選択した材料の添加が有効である。含有量が0.1wt%未満であると前記の効果が十分に得られず、5wt%を超えると、組成によっては特性に影響を与えるので好ましくない。
【0021】
本発明の焼結体スパッタリングターゲットは、波長550nmの光に対して、屈折率2.00以下の低屈折率の光ディスク用光学薄膜を工業的に製造するために有用である。特に、光情報記録媒体の保護層、反射層又は半透過層を形成するためのターゲットとして用いることができる。
【0022】
本発明のスパッタリングターゲットの製造に際しては、原料となるAl粉を0.1〜3.0mol%、MgO及び/又はSiO粉を27〜70mol%、残部をZnO粉として、これらが100mol%となるように、基本となる原料粉を調整し、この混合粉を、1050℃以上、1500℃以下で焼結する。
本発明において特に重要な点は、不活性ガス又は真空雰囲気下で焼結することである。不活性ガス又は真空雰囲気下で焼結することにより、ZnOの一部に酸素欠損が生じる。この酸素欠損により導電性が得られるようになり、DCスパッタが可能な低バルク抵抗値を備える焼結体を作製することができる。雰囲気ガスとしては、アルゴンガス、窒素ガスなどがあるが、いわゆる不活性雰囲気として一般に用いられているものを使用することができる。
【0023】
また、原料となるAl粉とZnO粉を予め混合して予め仮焼し、次にこの仮焼結したAl−ZnO粉(AZO粉)に、MgO及び/又はSiO粉を混合して焼結することもできる。単にMgO及び/又はSiO粉を添加する場合には、AlとMgO及び/又はSiOが反応してスピネルとなり易く、バルク抵抗値が上昇する傾向にある。したがって、焼結体のより低バルク抵抗化を達成するためには、仮焼結したAl−ZnO分(AZO粉)を使用して焼結することが望まれる。
【0024】
さらに、原料となるAl粉とZnO粉を予め混合して予め仮焼してAZO粉とするとともに、原料となるMgO粉とSiO粉とを同様に混合して仮焼し、次に前記仮焼したAl−ZnO粉(AZO粉)に、このMgO−SiO仮焼粉を混合して焼結することが推奨される。これによって、スピネル化をさらに抑制でき低バルク抵抗化を達成できるからである。
【0025】
本発明は、これにさらに、融点が1000°C以下の低融点酸化物粉を0.1〜5wt%添加して焼結用原料とすることができる。また、この低融点酸化物粉を予め混合し仮焼した仮焼粉に混合することも有効である。
【0026】
本発明は、このような成分組成を有する焼結体において、導電性を保有させることができ、直流スパッタ(DCスパッタ)によって薄膜を形成することが可能となる。DCスパッタリングはRFスパッタリングに比べ、成膜速度が速く、スパッタリング効率が良いという点で優れており、スループットを著しく向上できる。また、DCスパッタリング装置は価格が安く、制御が容易であり、電力の消費量も少なくて済むという利点がある。保護膜自体の膜厚を薄くすることも可能となるため、生産性向上、基板加熱防止効果をさらに発揮できる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例および比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例によって何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明に含まれる実施例以外の種々の変形を包含するものである。
【0028】
(実施例1)
3N相当で5μm以下のZnO粉、3N相当で平均粒径5μm以下のMgO粉、3N相当で平均粒径5μm以下のAl粉、3N相当で平均粒径5μm以下のSiO粉を基本原料とし、これらを表1に示すように合計量が100mol%となるように基本原料の比率を調整した後、これに融点が1000℃以下の低融点酸化物である3N相当で平均粒径5μm以下のB粉を表1に示す比率にて調合した。次に、これを混合した後、アルゴン雰囲気下、1050°Cの温度でホットプレス(HP)した。ホットプレスの圧力は220kg/cmとした。
【0029】
焼結後、この焼結体を機械加工でターゲット形状に仕上げた。焼結体ターゲットの密度は100.0%に達し、バルク抵抗は3.2×10−3Ω・cm(3.2mΩ・cm)となった。なお、本明細書で表示する密度は相対密度を意味する。各相対密度は、原料の密度から計算されたターゲットの理論密度に対して、製造した複合酸化物であるターゲットの密度を計測し、それぞれの密度から相対密度を求めたものである。原料の単なる混合物でないため、表1に示すように、相対密度が100%を超える例がある。
【0030】
上記の仕上げ加工した6インチφサイズのターゲットを使用して、スパッタリングを行った。スパッタ条件は、DCスパッタ、スパッタパワー500W、Ar−2%O混合ガス圧0.5Paとし、膜厚1500Åに成膜した。成膜速度は2.8Å/secが達成され、安定したDCスパッタができ、良好なスパッタ性を有した。成膜サンプルの屈折率(波長550nm)は1.92、体積抵抗率:2E+05(2×10Ω・cm)、消衰係数(λ=450nm):<0.01であった。これらの条件及び結果を、まとめて表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
(実施例2)
3N相当で5μm以下のZnO粉、3N相当で平均粒径5μm以下のMgO粉、3N相当で平均粒径5μm以下のAl粉、3N相当で平均粒径5μm以下のSiO粉を基本原料とし、これらを表1に示すように合計量が100mol%となるように基本原料の比率を調整した後、これに融点が1000℃以下の低融点酸化物である3N相当で平均粒径5μm以下のB粉を表1に示す比率にて調合した。次に、これを混合した後、アルゴン雰囲気下、1050°Cの温度でホットプレス(HP)した。ホットプレスの圧力は220kg/cmとした。
【0033】
焼結後、この焼結体を機械加工でターゲット形状に仕上げた。焼結体ターゲットの密度は99.5%に達し、バルク抵抗は2.9×10−3Ω・cm(2.9mΩ・cm)となった。また、上記の仕上げ加工した6インチφサイズのターゲットを使用して、実施例1と同様の条件でスパッタリングを行った。その結果、安定したDCスパッタができ、良好なスパッタ性を有した。成膜サンプルの屈折率(波長550nm)は1.90、体積抵抗率:6E+04(6×10Ω・cm)、消衰係数(λ=450nm):<0.01であった。
【0034】
(実施例3)
3N相当で5μm以下のZnO粉、3N相当で平均粒径5μm以下のMgO粉、3N相当で平均粒径5μm以下のAl粉、3N相当で平均粒径5μm以下のSiO粉を基本原料とし、これらを表1に示すように合計量が100mol%となるように基本原料の比率を調整した後、これに融点が1000℃以下の低融点酸化物である3N相当で平均粒径5μm以下のB粉を表1に示す比率にて調合した。次に、これを混合した後、アルゴン雰囲気下、1050°Cの温度でホットプレス(HP)した。ホットプレスの圧力は220kg/cmとした。
【0035】
焼結後、この焼結体を機械加工でターゲット形状に仕上げた。焼結体ターゲットの密度は99.8%に達し、バルク抵抗は3.0×10−3Ω・cm(3.0mΩ・cm)となった。また、上記の仕上げ加工した6インチφサイズのターゲットを使用して、実施例1と同様の条件でスパッタリングを行った。その結果、安定したDCスパッタができ、良好なスパッタ性を有した。成膜サンプルの屈折率(波長550nm)は1.93、体積抵抗率:4E+05(4×10Ω・cm)、消衰係数(λ=450nm):<0.01であった。
【0036】
(実施例4)
3N相当で5μm以下のZnO粉、3N相当で平均粒径5μm以下のMgO粉、3N相当で平均粒径5μm以下のAl粉、3N相当で平均粒径5μm以下のSiO粉を基本原料とし、これらを表1に示すように合計量が100mol%となるように基本原料の比率を調整した後、これに融点が1000℃以下の低融点酸化物である3N相当で平均粒径5μm以下のB粉を表1に示す比率にて調合した。次に、これを混合した後、アルゴン雰囲気下、1050°Cの温度でホットプレス(HP)した。ホットプレスの圧力は220kg/cmとした。
【0037】
焼結後、この焼結体を機械加工でターゲット形状に仕上げた。焼結体ターゲットの密度は107.9%に達し、バルク抵抗は3.7×10−1Ω・cm(0.37mΩ・cm)となった。また、上記の仕上げ加工した6インチφサイズのターゲットを使用して、実施例1と同様の条件でスパッタリングを行った。その結果、安定したDCスパッタができ、良好なスパッタ性を有した。成膜サンプルの屈折率(波長550nm)は1.70、体積抵抗率:8E+08(8×10Ω・cm)、消衰係数(λ=450nm):<0.01であった。
【0038】
(実施例5)
3N相当で5μm以下のZnO粉、3N相当で平均粒径5μm以下のMgO粉、3N相当で平均粒径5μm以下のAl粉、3N相当で平均粒径5μm以下のSiO粉を基本原料とし、これらを表1に示すように合計量が100mol%となるように基本原料の比率を調整した後、これに融点が1000℃以下の低融点酸化物である3N相当で平均粒径5μm以下のB粉を表1に示す比率にて調合した。次に、これを混合した後、アルゴン雰囲気下、1050°Cの温度でホットプレス(HP)した。ホットプレスの圧力は220kg/cmとした。
【0039】
焼結後、この焼結体を機械加工でターゲット形状に仕上げた。焼結体ターゲットの密度は98.1%に達し、バルク抵抗は9.0×10−1Ω・cm(0.9Ω・cm)となった。また、上記の仕上げ加工した6インチφサイズのターゲットを使用して、実施例1と同様の条件でスパッタリングを行った。その結果、安定したDCスパッタができ、良好なスパッタ性を有した。成膜サンプルの屈折率(波長550nm)は1.83、体積抵抗率:4E+05(4×10Ω・cm)、消衰係数(λ=450nm):<0.01であった。
【0040】
(実施例6)
3N相当で5μm以下のZnO粉、3N相当で平均粒径5μm以下のMgO粉、3N相当で平均粒径5μm以下のAl粉、3N相当で平均粒径5μm以下のSiO粉を基本原料とし、これらを表1に示すように合計量が100mol%となるように基本原料の比率を調整した後、これに融点が1000℃以下の低融点酸化物である3N相当で平均粒径5μm以下のB粉を表1に示す比率にて調合した。次に、これを混合した後、アルゴン雰囲気下、1050°Cの温度でホットプレス(HP)した。ホットプレスの圧力は220kg/cmとした。
【0041】
焼結後、この焼結体を機械加工でターゲット形状に仕上げた。焼結体ターゲットの密度は101.5%に達し、バルク抵抗は2.8×10−3Ω・cm(2.8mΩ・cm)となった。また、上記の仕上げ加工した6インチφサイズのターゲットを使用して、実施例1と同様の条件でスパッタリングを行った。その結果、安定したDCスパッタができ、良好なスパッタ性を有した。成膜サンプルの屈折率(波長550nm)は1.88、体積抵抗率:5E+07(5×10Ω・cm)、消衰係数(λ=450nm):<0.01であった。
【0042】
(実施例7)
3N相当で5μm以下のZnO粉、3N相当で平均粒径5μm以下のMgO粉、3N相当で平均粒径5μm以下のAl粉、3N相当で平均粒径5μm以下のSiO粉を基本原料とし、これらを表1に示すように合計量が100mol%となるように基本原料の比率を調整した。次に、これを混合した後、アルゴン雰囲気下、1200°Cの温度でホットプレス(HP)した。ホットプレスの圧力は220kg/cmとした。
【0043】
焼結後、この焼結体を機械加工でターゲット形状に仕上げた。焼結体ターゲットの密度は97.8%に達し、バルク抵抗は1.6×10−3Ω・cm(1.6mΩ・cm)となった。また、上記の仕上げ加工した6インチφサイズのターゲットを使用して、実施例1と同様の条件でスパッタリングを行った。その結果、安定したDCスパッタができ、良好なスパッタ性を有した。成膜サンプルの屈折率(波長550nm)は1.92、体積抵抗率:2E+05(2×10Ω・cm)、消衰係数(λ=450nm):<0.01であった。
【0044】
(実施例8)
3N相当で5μm以下のZnO粉、3N相当で平均粒径5μm以下のMgO粉、3N相当で平均粒径5μm以下のAl粉、3N相当で平均粒径5μm以下のSiO粉を基本原料とし、これらを表1に示すように合計量が100mol%となるように基本原料の比率を調整した後、これに融点が1000℃以下の低融点酸化物である3N相当で平均粒径5μm以下のB粉を表1に示す比率にて調合した。次に、これを混合した後、窒素雰囲気下、1400°Cの温度で焼結した。
【0045】
焼結後、この焼結体を機械加工でターゲット形状に仕上げた。焼結体ターゲットの密度は94.5%に達し、バルク抵抗は3.0×10−3Ω・cm(3.0mΩ・cm)となった。また、上記の仕上げ加工した6インチφサイズのターゲットを使用して、実施例1と同様の条件でスパッタリングを行った。その結果、安定したDCスパッタができ、良好なスパッタ性を有した。成膜サンプルの屈折率(波長550nm)は1.92、体積抵抗率:3E+05(3×10Ω・cm)、消衰係数(λ=450nm):<0.01であった。
【0046】
(比較例1)
3N相当で5μm以下のZnO粉、3N相当で平均粒径5μm以下のMgO粉、3N相当で平均粒径5μm以下のAl粉、3N相当で平均粒径5μm以下のSiO粉を基本原料とし、これらを表1に示すように合計量が100mol%となるように基本原料の比率を調整した後、これに融点が1000℃以下の低融点酸化物である3N相当で平均粒径5μm以下のB粉を表1に示す比率にて調合した。次に、これを混合した後、大気中、1200°Cの温度で焼結した。
【0047】
焼結後、この焼結体を機械加工でターゲット形状に仕上げた。焼結体ターゲットの密度は90.9%であったが、バルク抵抗は1×10Ω・cm(1kΩ・cm)を超える値となった。また、上記の仕上げ加工した6インチφサイズのターゲットを使用して、実施例1と同様の条件でスパッタリングを行ったが、安定したDCスパッタができなかった。
【0048】
(比較例2)
3N相当で5μm以下のZnO粉、3N相当で平均粒径5μm以下のMgO粉、3N相当で平均粒径5μm以下のAl粉、3N相当で平均粒径5μm以下のSiO粉を基本原料とし、これらを表1に示すように合計量が100mol%となるように基本原料の比率を調整した後、これに融点が1000℃以下の低融点酸化物である3N相当で平均粒径5μm以下のB粉を表1に示す比率にて調合した。次に、これを混合した後、アルゴン雰囲気下、1050°Cの温度でホットプレス(HP)した。ホットプレスの圧力は220kg/cmとした。
【0049】
焼結後、この焼結体を機械加工でターゲット形状に仕上げた。焼結体ターゲットの密度は98.7%であったが、バルク抵抗は1×10Ω・cm(1kΩ・cm)を超える値となった。また、上記の仕上げ加工した6インチφサイズのターゲットを使用して、実施例1と同様の条件でスパッタリングを行ったが、安定したDCスパッタができなかった。また、成膜サンプルの屈折率(波長550nm)は1.67であった。
【0050】
(実施例9)
3N相当で5μm以下のZnO粉、3N相当で平均粒径5μm以下のMgO粉、3N相当で平均粒径5μm以下のAl粉、3N相当で平均粒径5μm以下のSiO粉を基本原料とし、これらを表1に示すように合計量が100mol%となるように基本組成の比率を調整した後、これに融点が1000℃以下の低融点酸化物である3N相当で平均粒径5μm以下のB粉を表1に示す比率にて調合した。次に、これを混合した後、アルゴン雰囲気下、1050°Cの温度でホットプレス(HP)した。ホットプレスの圧力は220kg/cmとした。
【0051】
焼結後、この焼結体を機械加工でターゲット形状に仕上げた。焼結体ターゲットの密度は99.2%に達し、バルク抵抗は3.0×10−3Ω・cm(3.0Ω・cm)となった。また、上記の仕上げ加工した6インチφサイズのターゲットを使用して、実施例1と同様の条件でスパッタリングを行った。その結果、安定したDCスパッタができ、良好なスパッタ性を有した。成膜サンプルの屈折率(波長550nm)は1.93、体積抵抗率:3E+05(3×10Ω・cm)、消衰係数(λ=450nm):<0.01であった。
【0052】
(実施例10)
3N相当で5μm以下のZnO粉、3N相当で平均粒径5μm以下のMgO粉、3N相当で平均粒径5μm以下のAl粉を基本原料とし、これらを表1に示すように合計量が100mol%となるように基本原料の比率を調整した後、これに融点が1000℃以下の低融点酸化物である3N相当で平均粒径5μm以下のB粉を表1に示す比率にて調合した。次に、これらの粉末を表1に示す配合比に調合し、これを混合した後、アルゴン雰囲気下、1050°Cの温度でホットプレス(HP)した。ホットプレスの圧力は220kg/cmとした。
【0053】
焼結後、この焼結体を機械加工でターゲット形状に仕上げた。焼結体ターゲットの密度は99.6%に達し、バルク抵抗は2.0×10−3Ω・cm(3.0Ω・cm)となった。また、上記の仕上げ加工した6インチφサイズのターゲットを使用して、実施例1と同様の条件でスパッタリングを行った。その結果、安定したDCスパッタができ、良好なスパッタ性を有した。成膜サンプルの屈折率(波長550nm)は1.93、体積抵抗率:9E+04(9×10Ω・cm)、消衰係数(λ=450nm):<0.01であった。
【0054】
(実施例11)
3N相当で5μm以下のZnO粉、3N相当で平均粒径5μm以下のAl粉、3N相当で平均粒径5μm以下のSiO粉を基本原料とし、これらを表1に示すように合計量が100mol%となるように基本原料の比率を調整した後、これに融点が1000℃以下の低融点酸化物である3N相当で平均粒径5μm以下のB粉を表1に示す比率にて調合した。次に、これを混合した後、アルゴン雰囲気下、1050°Cの温度でホットプレス(HP)した。ホットプレスの圧力は220kg/cmとした。
【0055】
焼結後、この焼結体を機械加工でターゲット形状に仕上げた。焼結体ターゲットの密度は99.3%に達し、バルク抵抗は4.0×10−3Ω・cm(3.0Ω・cm)となった。また、上記の仕上げ加工した6インチφサイズのターゲットを使用して、実施例1と同様の条件でスパッタリングを行った。その結果、安定したDCスパッタができ、良好なスパッタ性を有した。成膜サンプルの屈折率(波長550nm)は1.92、体積抵抗率:6E+07(6×10Ω・cm)、消衰係数(λ=450nm):<0.01であった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の特徴は、屈折率を低下させるための成分調整を行った場合であっても、不活性ガス又は真空雰囲気下で焼結することにより、焼結体の低バルク抵抗化を達成し、安定したDCスパッタを可能とした点にある。そして、このDCスパッタリングの特徴である、スパッタの制御性を容易にし、成膜速度を上げ、スパッタリング効率を向上させることができるという著しい効果がある。また、成膜の際にスパッタ時に発生するパーティクル(発塵)やノジュールを低減し、品質のばらつきが少なく量産性を向上させることができる。
本発明の焼結体スパッタリングターゲットは、光学薄膜、有機ELテレビ用、タッチパネル用電極用、ハードディスクのシード層等の薄膜形成のために極めて有用である。