特許第5727601号(P5727601)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5727601複合金属構造体を選択的に燐酸塩処理する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5727601
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】複合金属構造体を選択的に燐酸塩処理する方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 22/36 20060101AFI20150514BHJP
【FI】
   C23C22/36
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-517208(P2013-517208)
(86)(22)【出願日】2011年6月24日
(65)【公表番号】特表2013-534972(P2013-534972A)
(43)【公表日】2013年9月9日
(86)【国際出願番号】EP2011060590
(87)【国際公開番号】WO2012000894
(87)【国際公開日】20120105
【審査請求日】2014年6月23日
(31)【優先権主張番号】102010030697.5
(32)【優先日】2010年6月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】ヤン−ウィレム・ブラウウェル
(72)【発明者】
【氏名】フランク−オリヴァー・ピラレク
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ハマッハー
(72)【発明者】
【氏名】マルク・バルツァー
(72)【発明者】
【氏名】ロラント・ポップ
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−515959(JP,A)
【文献】 特表2010−509499(JP,A)
【文献】 特開平04−006281(JP,A)
【文献】 特表平11−502569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 22/00 − 22/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムからなる少なくとも一部、および亜鉛からなる少なくとも一部、並びに任意に、鉄からなる一部を含む複合金属構造体の有機被覆に先立つ化学的前処理方法であって、該方法は、
(I)第一段階で、亜鉛と鉄からなる部分上に、0.5ないし5g/m2の範囲の被覆重量で表面カバー結晶性燐酸亜鉛層の形成をもたらすが、アルミニウム部分上に少なくとも0.5g/m2の被覆重量を備えた燐酸亜鉛層を生じさせない、複合金属構造体の燐酸亜鉛処理溶液による処理を含み、
およびその後に、水による中間的なリンスを行い又は行わず、
(II)第二段階で、3.5ないし5.5の範囲にpH値を有する処理溶液の複合金属構造体上への適用を含み、該溶液は、亜鉛と鉄からなる部分上で、段階(I)で付着した結晶性燐酸亜鉛の50%以下を溶解除去するが、アルミニウム部分上に少なくとも0.5g/m2の層重量を有する表面カバー結晶性燐酸塩層ではない転化層を形成し、
段階(I)における燐酸亜鉛処理溶液は、20ないし65°Cの範囲の温度を有し、および少なくとも0.005g/lであって、数8と溶液温度(°C)の商(8/T)以下である遊離フッ化物量(g/lで測定)を含み、
燐酸亜鉛処理溶液は、少なくとも0.025g/lであるが1g/l未満の、SiF6として計算された水溶性無機化合物の形態でのシリコンを含み、水溶性無機化合物の形態でのシリコンの濃度[mMとしてのSi]と遊離酸ポイント数で割った遊離フッ化物の濃度[mMとしてのF]の積(Si/mM)・(F/mM)は5以下であり、
燐酸亜鉛処理溶液中の遊離酸ポイント数は、少なくとも0.4ポイントとなるが3.0ポイントの値を超過しない、方法。
【請求項2】
段階(I)における燐酸亜鉛処理溶液は、
(a) 5-50g/lの燐酸塩イオン、
(b) 0.3-3g/lの亜鉛(II)イオン
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階(I)における燐酸亜鉛処理溶液は、ジルコニウム元素および/またはチタン元素に対して合計5ppm以下の、ジルコニウムおよび/またはチタンの水溶性化合物を含有する、請求項1〜2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
段階(I)における燐酸亜鉛処理溶液は、少なくとも0.6ポイント、2.5ポイント以下、の遊離酸含有量を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
総酸含有量は、少なくとも10ポイント、50ポイント以下、である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
段階(II)における処理溶液は、ジルコニウム元素および/またはチタン元素に対して合計10〜1500ppmの、ジルコニウムおよび/またはチタンのフルオロ複合体を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
鋼および亜鉛メッキ鋼および/または合金亜鉛メッキ鋼上に0.5ないし5g/m2の範囲の被覆重量を有する表面カバー結晶性燐酸亜鉛層を形成する、第一段階(I)における複合金属構造体の燐酸亜鉛処理溶液による処理は、燐酸亜鉛処理溶液の浸漬適用を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
少なくとも0.4ポイントであるが3ポイント以下の遊離酸含有量、および2.2ないし3.6の範囲のpH値を有し、
(a) 5-50g/lの燐酸塩イオン、
(b) 0.3-3g/lの亜鉛(II)イオン、
(c)少なくとも10ppmであるが100ppm以下の遊離フッ化物イオン、
(d)少なくとも0.025g/lであるが1g/l未満の、SiF6として計算された水溶性無機化合物の形態でのシリコン
を含む燐酸亜鉛処理溶液であって、水溶性無機化合物の形態でのシリコンの濃度[mMとしてのSi]と遊離酸ポイント数で割った遊離フッ化物の濃度[mMとしてのF]の積(Si/mM)・(F/mM)は5以下である、溶液。
【請求項9】
ジルコニウム元素および/またはチタン元素に対して合計5ppm以下の、ジルコニウムおよび/またはチタンの水溶性化合物を含む、請求項8に記載の燐酸亜鉛処理溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段方法における、アルミニウム、亜鉛および任意に鉄からなる金属表面を含む複合金属構造体の腐食保護処理に関する。本発明による方法によって、アルミニウム表面上での相当量の燐酸亜鉛の沈積なしに、複合金属構造体の亜鉛および鉄の表面を選択的に燐酸亜鉛処理することが可能となる。それにより、アルミニウム表面は、その後の方法段階において、保護する薄く均質な転化層を生じさせる従来の酸性処理溶液による不動態化に利用可能である。本発明による方法では、一方でアルミニウム表面上での燐酸塩の結晶クラスター形成が、および他方で亜鉛表面上での白点形成が抑えられる。本発明はまた、白点形成を抑えるのに十分であるが、燐酸亜鉛処理が複合金属構造体の亜鉛および鉄表面に対する選択性を失う値を超過しない量でシリコンの水溶性無機化合物を含有する燐酸亜鉛処理溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明にとって特に適切である自動車製造セクターにおいて、種々の金属材料が益々使用されており、複合構造体中へ組み込まれている。非常に種々様々の鋼は、その特定の材質性状がゆえに車体設計において継続して使用されているが、ボディ全体の相当な軽量化の点から特に重要であるアルミニウムのような軽金属も、ますます利用されている。この開発を考慮するために、ボディ保護用の新しい概念を開発するか、基本的なボディの腐食保護処理用の既存の方法および組成物をさらに開発することが必要である。したがって、アルミニウムだけでなく鋼ならびに場合により亜鉛メッキ鋼からなる部分を含む、例えば車体のような複雑なコンポーネントのための改善された前処理方法に対する要求が存在する。前処理の全体としての意図する結果は、特に陰極の電気浸漬コーティングの前に、生じるすべての金属表面上に、腐食保護ペイント基材として適切な、転化層または不動態化する層を形成することである。
【0003】
ドイツ出願DE 19735314は、まず、さらにアルミニウム表面を含むボディの鋼表面および亜鉛メッキ鋼表面の選択的な燐酸塩処理を生じさせ、その後、ボディのアルミニウム部分の腐食保護処理のための不動態化用溶液によるボディの処理を行う2段階法を提案している。同文献の教示によれば、選択的な燐酸塩処理は、燐酸塩処理溶液の酸洗効果が減少するという事実によって達成される。これに関して、DE 19735314は、水溶性の複合フルオリド、特にヘキサフルオロケイ酸塩によって専ら構成される遊離フッ化物を由来とする、1ないし6g/lの濃度で、100ppm未満の遊離フッ化物含有量の燐酸塩処理溶液を教示する。
【0004】
既存の技術は、第一段階で鋼表面上、並びに任意に亜鉛メッキおよび合金亜鉛メッキ鋼表面上に、結晶性燐酸塩層を付着させ、および、さらに後の段階でアルミニウム表面を不動態化する概念に同様に従う他の2段階の前処理方法を開示する。これらの方法は、文献WO 99/12661およびWO 02/066702に開示されている。原則として、そこに開示された方法は、第一段階において、鋼表面または亜鉛メッキ鋼表面の選択的な燐酸塩処理が生じる方法であって、該燐酸塩処理を第二段階での後不動態化においてでさえ保持されるが、燐酸塩結晶がアルミニウム表面上で形成されない方法で、実施される。鋼表面および亜鉛メッキ鋼表面の選択的な燐酸塩処理は、燐酸塩処理溶液での遊離フッ化物イオンの割合の温度に依存する制限により達成され、その遊離酸濃度は0ないし2.5ポイントの範囲に設定される。
【0005】
国際出願WO 2008/055726は、アルミニウム部分を包含する複合構造体の鋼表面、および亜鉛メッキ鋼表面の選択的燐酸塩処理に関する少なくとも1段階の方法を開示する。この出願は、ジルコニウム元素およびチタン元素の水溶性無機化合物を含む燐酸塩処理溶液を教示し、これを存在させると、アルミニウム表面の燐酸塩処理がうまく抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ドイツ出願DE 19735314
【特許文献2】WO 99/12661
【特許文献3】WO 02/066702
【特許文献4】国際出願WO 2008/055726
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この既存の技術から考えを進めると、課題は、燐酸塩処理中のプロセス経済における改善が選択性を制御する浴パラメーターの目的とするモニタリングによって達成されるように、混合設計の中で組み立てられ、アルミニウム表面を含む金属成分の腐食保護処理のコンテキストで、鋼と亜鉛メッキ鋼の選択的な燐酸塩処理をさらに開発することである。これは、複合金属構造体の腐食保護処理の質に関して、アルミニウム表面上の燐酸塩結晶クラスターの発生を回避し、亜鉛メッキ鋼表面上のピンホールの発生を回避することを含む。
【0008】
当業者は、「燐酸塩結晶クラスター」が、金属表面(この場合アルミニウム表面)上の燐酸塩結晶の、分離され局所的に区切られた沈積を意味するものと理解する。この種の「結晶クラスター」は、その後のペイントプライマーによって囲まれるようになり、塗面の一様な視覚的な印象を妨げ得るだけでなく単一ポイントのペイントダメージを引き起こし得るコーティング中の不均質を示す。
【0009】
「白点形成」は、処理された亜鉛表面上、あるいは処理された亜鉛メッキ鋼表面または合金亜鉛メッキ鋼表面上で、そうでなければ結晶性の燐酸塩層における無定形の白燐酸亜鉛の局所的な沈着の現象として、燐酸塩処理の当業者に理解される。白点形成は、基材のピックリングの局所的に高い割合によって引き起こされる。燐酸塩処理におけるこの種の点欠陥は、続いて適用される有機塗装系の腐食剥離の出発点になり得るため、実際上、ピンホールの発生を大きく回避しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による以下の方法により、上記目的は達成される:アルミニウムからなる少なくとも一部、および亜鉛からなる少なくとも一部、並びに任意に、鉄からなる一部を含む複合金属構造体の化学的前処理方法であって、該方法は、
(I)第一段階で、亜鉛と鉄からなる部分上に、0.5ないし5g/m2の範囲の被覆重量で表面カバー結晶性燐酸亜鉛層の形成をもたらすが、アルミニウム部分上に少なくとも0.5g/m2の被覆重量を備えた燐酸亜鉛層を生じさせない、複合金属構造体の燐酸亜鉛処理溶液による処理を含み、
およびその後に、水による中間的なリンスを行い又は行わず、
(II)第二段階で、3.5ないし5.5の範囲にpH値を有する酸性処理溶液の複合金属構造体上への適用を含み、該酸性処理溶液は、亜鉛と鉄からなる部分上で、段階(I)で付着した結晶性燐酸亜鉛の50%以下を溶解除去するが、アルミニウム部分上に少なくとも0.5g/m2の層重量を有する表面カバー結晶性燐酸塩層ではない転化層を形成し、
段階(I)における燐酸亜鉛処理溶液は、20ないし65°Cの範囲の温度を有し、および少なくとも0.005g/lであって、数8と溶液温度(°C)の商(8/T)以下である遊離フッ化物量(g/lで測定)を含み
燐酸亜鉛処理溶液は、少なくとも0.025g/lであるが1g/l未満の、SiF6として計算された水溶性無機化合物の形態でのシリコンを含み、水溶性無機化合物の形態でのシリコンの濃度[mMとしてのSi]と遊離酸ポイント数で割った遊離フッ化物の濃度[mMとしてのF]の積(Si/mM)・(F/mM)は5以下であり、
燐酸亜鉛処理溶液中の遊離酸ポイント数は、少なくとも0.4ポイントとなるが3.0ポイントの値を超過しない、方法。
【0011】
本発明によれば、材料「アルミニウム」もその合金と理解される。同時に、本発明によれば、材料「亜鉛」は、さらに亜鉛メッキ鋼および合金亜鉛メッキ鋼を包含する一方、「鉄」の記述はさらに鉄合金、特に鋼を含む。前記材料の合金は、50原子%未満の不純物原子割合を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
処理段階(I)においてアルミニウム部分上で燐酸亜鉛層が形成してはならないという要件は、連続的で密閉された結晶層がその上に生じないことを意味すると理解されるものである。アルミニウム上に沈積した燐酸亜鉛の単位面積あたりの質量が、0.5g/m2未満となる場合には少なくとも、この条件が満たされる。本発明では、「アルミニウム部分」は、アルミニウムおよび/またはアルミニウム合金からなるパネルおよびコンポーネントとして理解される。
【0013】
鋼表面上および/または亜鉛メッキおよび/または合金亜鉛メッキの鋼表面上の連続的で結晶性の燐酸亜鉛層の形成は、他方では、本発明による方法に絶対に必要で特徴的である。このために、単位面積当たりの被覆重量が好ましくは少なくとも1.0g/m2、特に好ましくは少なくとも2.0g/m2であるが、好ましくは4.0g/m2以下である燐酸亜鉛層を、本発明による方法の段階(I)における複合金属構造体のそれらの表面上に沈積する。
【0014】
燐酸亜鉛表面被覆率を、それぞれの複合金属構造体の個々の金属材料の試験パネルについて重量法による示差計量を用いて、複合金属構造体の全表面について決定する。鋼パネルは、段階(I)の直後に、温度70°Cの5-wt% CrO3水溶液と15分間接触させ、それによって、そこから燐酸亜鉛表面被覆を取り除く。同様に、亜鉛メッキあるいは合金亜鉛メッキされた鋼パネル上の燐酸亜鉛表面被覆率の測定のために、対応する試験パネルを、段階(I)の直後に、温度25°Cの5-wt% CrO3水溶液と5分間接触させ、それによって、そこから燐酸亜鉛層を取り除く。他方、アルミニウムパネルを、段階(I)の直後に、温度25°Cの65-wt% HNO3水溶液と15分間接触させ、相応して燐酸亜鉛成分を除去する。この各処理後の乾燥した金属パネルの重量と、段階(I)の直前の同じ乾燥した未処理の金属パネルの重量との差は、本発明に従う燐酸亜鉛表面被覆率に相当する。
【0015】
鋼表面、亜鉛メッキおよび/または合金亜鉛メッキ鋼表面上の結晶性燐酸亜鉛層の50%以下を段階(II)で溶解するという本発明による要件は、同様に、それぞれの複合金属構造体の個々の金属材料の試験パネルに基づいて実施することができる。これについて、本発明による方法の段階(I)に従って燐酸化された、鋼または亜鉛メッキまたは合金亜鉛メッキされた鋼からなる試験パネルは、および脱イオン水によるリンス段階の後、圧縮空気でブロー乾燥し、次いで計量する。次いで同じ試験板を、本発明の方法の段階段階(II)に従って、酸性処理溶液と接触させ、その後、脱イオン水でリンスし、圧縮空気でブロー乾燥し、次いで計量する。その後、同じ試験パネルの燐酸亜鉛処理は、上記のような5-wt% CrO3溶液で完全に除去され、乾燥させた試験パネルをもう1回計量する。その後、本発明による方法の段階(II)における燐酸塩層のパーセンテージロスを、試験パネルの重量差から決定する。
【0016】
燐酸亜鉛処理溶液の遊離酸(ポイントによる)は、燐酸塩処理溶液の10mlのサンプル容量を50mlに希釈し、0.1N水酸化ナトリウムによってpH値3.6へ滴定することにより、本発明による方法の段階(I)において決定する。消費された水酸化ナトリウムの量(mlによる)は遊離酸ポイント数を示す。
【0017】
本発明による方法では、燐酸亜鉛処理溶液中の遊離フッ化物の濃度は、電位差測定法によって決定される。燐酸亜鉛処理溶液のサンプル容量を取り除き、任意の市販のフッ化物選択的電位電極を使用して遊離のフッ化物イオンの活性を決定し、フッ化物含有緩衝液を使用してpH緩衝を行わずに電極を較正した後、電極の較正および遊離フッ化物の測定の両方を、20°Cの温度で実施する。
【0018】
商8/Tによって定義された本発明による遊離フッ化物濃度(g/l)を超過すると、アルミニウム表面上への完全被覆の結晶性燐酸亜鉛層の沈積が引き起こされる。しかしながら、そのような層が形成されることは、燐酸亜鉛処理の基材に特有の被覆特性のため望ましくなく、したがって、本発明に従うものではない。しかしながら、遊離フッ化物の特定の最小量は、複合金属構造体の鉄と亜鉛の表面上への燐酸亜鉛層に十分な沈積反応速度論を保証するため必要であって、これは、複合金属構造体のアルミニウム表面の同時処理によって特に、アルミニウムカチオンの燐酸亜鉛処理溶液中への移行、および順次、不完全な形態での燐酸亜鉛処理の抑制が引き起こされるからである。
【0019】
シリコンを含む水溶性無機化合物の本発明による添加は、亜鉛表面上の白点形成の抑制をもたらす;これについては、SiF6として計算される少なくとも0.025g/lの上記化合物が、燐酸塩処理浴中に含まれていなければならないが、わずか1g/l未満、好ましくは0.9g/l未満が含まれていなければならない。その上限は、一方では上記方法の費用効果によって管理され、および他方では、シリコンを含む水溶性無機化合物のそのような高濃度によってプロセス監視が相当により困難になるという事実によって管理されるが、これは、アルミニウム表面上での燐酸塩結晶クラスターの形成が遊離酸含有量の増加によって単に不十分に妨げられ得るからである。結晶クラスターは、続いて適用される塗られた浸漬ペイントの腐食剥離の出発点である局所的な表面欠陥を同様に表わし得る。また、一旦ペンキ構造が完成すると、この種の結晶クラスターは単一点上昇を引き起こす;この上昇は常に、顧客によって望まれるように、複合金属構造体、例えば車体上での視覚的に均一なペイント被覆を形成するために、サンドペーパーで磨く必要がある。
【0020】
驚くべきことに、結晶性燐酸亜鉛層、およびアルミニウム表面上での燐酸亜鉛の結晶クラスターの形成を有効に抑制する点で、水溶性無機化合物の形態でのシリコンの濃度と遊離フッ化物のイオン積の比率、および燐酸塩処理溶液での遊離酸ポイント数は、本発明による方法の成功にとって重要なパラメーターとして決定的であることが判明した。この商を超過する場合、アルミニウム表面上の少なくとも個々の燐酸亜鉛結晶クラスターの形成が、既に生じる。この重要なパラメーターをさらに超過するにしたがい、本発明による方法のアルミニウム表面は、完全被覆の結晶性燐酸亜鉛層で覆われる。腐食保護前処理を成功させるためには、両方の状況を絶対に回避しなければならない。したがって、本発明による方法の段階(I)では、遊離酸ポイント数で割った、水溶性無機化合物としてのシリコンの濃度[mMとしてのSi]と遊離フッ化物の濃度[mMとしてのF]の積(si/mM)・(F/mM)が4.5の値、特に好ましくは4.0の値を超過しない燐酸亜鉛処理溶液を使用することが好ましい。しかしながら、いかなる場合も、水溶性無機化合物の形態でのシリコンの本発明による割合は、本発明によって処理された亜鉛部分上の白点形成を妨げるのに十分である。本発明による方法において好適であるシリコンを含む水溶性無機化合物は、フルオロ珪酸塩、特に好ましくはH2SiF6、(NH4)SiF6、Li2SiF6、Na2SiF6および/またはK2SiF6である。水溶性フルオロ珪酸塩は、遊離フッ化物源としてさらに適切であり、したがって、浴溶液中へ運ばれた錯体三価アルミニウムカチオンに役立ち、その結果、鋼表面、ならびに亜鉛メッキおよび/または合金亜鉛メッキ鋼表面上の燐酸塩処理がいっそう保証される。フルオロ珪酸塩を本発明による方法の段階(I)において燐酸塩処理溶液中に使用する場合、もちろん、本発明の請求項1により、水溶性無機化合物としてのシリコンと遊離酸ポイント数に関する遊離フッ化物のイオン積を超過ないことに、常に注意しなければならない。
【0021】
0.6ポイントより大きい遊離酸含有量を有する燐酸亜鉛処理溶液は、本発明による方法における段階(I)では、特に好ましくは少なくとも1.0ポイントであって、好ましくは2.5ポイント以下、特に好ましくは2.0ポイント以下であることが好適である。遊離酸にとって好ましい範囲の遵守により、一方では選択された金属表面上の燐酸塩層に十分な沈積反応速度論が保証され、他方では、順次、スラッジの析出を回避するかあるいは本発明による方法の連続作業の間にそれらを処分するために燐酸塩処理浴の集中的な監視または再処理を要することとなる、金属イオンの不必要なピックリング除去が妨げられる。
【0022】
さらに、本発明による方法の段階(I)における燐酸塩処理溶液中の総酸含有量は、少なくとも10ポイント、好ましくは少なくとも15ポイントであって、50ポイント以下、好ましくは25ポイント以下となるべきである。本発明による方法の他の好適な実施形態では、段階(I)における燐酸亜鉛処理溶液は、ジルコニウム元素および/またはチタン元素に対して合計5ppm以下の、特に好ましくは合計1ppm以下の、ジルコニウムおよび/またはチタンの水溶性化合物を含有する。
【0023】
燐酸塩処理段階でこれらの元素の水溶性化合物の存在によって、同様に、アルミニウム表面上の結晶性燐酸塩層の形成を効果的に抑え得ることは、WO 2008/055726から既知である。しかしながら、特に燐酸塩処理溶液がスプレーにより適用される場合、ジルコニウムおよび/またはチタンの水溶性化合物の存在下、不均一な無定形のジルコニウムおよび/またはチタンに基づく化成被覆は、アルミニウム部上でよりしばしば生成し、これは後の有機ペイント操作において「マッピング」の発生に結びつくことが明らかとなった。「マッピング」は、浸漬被覆ペイントの焼き付け後の不均一なペイント層厚さにより、浸漬被覆金属成分の当業者によって、ペイント被覆の斑点のある視覚印象として理解される。従って、特にジルコニウムおよび/またはチタンの水溶性化合物を燐酸塩処理溶液へ添加することは、本発明による方法では完全に回避される。ジルコニウムおよび/またはチタンの水溶性化合物を含む燐酸塩処理溶液を適用する場合、金属成分の鉄表面や鋼表面上の燐酸塩層の形成を抑制しないようにするために燐酸塩処理浴中の遊離フッ化物の割合を相応して増加させることが、さらに必要である。しかしながら、遊離フッ化物割合のそのような増加は、アルミニウム部上の燐酸塩結晶クラスターの形成を促進し、同時にピックリング割合を増加させる。その結果、高スラッジ形成は、上記方法の費用対効果に不利な効果を有する。したがって、本発明による方法におけるジルコニウムおよび/またはチタンの水溶性化合物の存在は、鋼表面上の比較的より低い燐酸亜鉛層重量を生じさせるか、あるいは燐酸塩結晶クラスターとしての局所的欠陥が均質のペイント構造と干渉して、腐食ペイント剥離を潜在的に促進するアルミニウム表面を生じさせる。したがって、アルミニウム表面だけでなく、鋼表面および亜鉛メッキおよび/または合金亜鉛メッキ鋼の表面を含む金属成分上の最適な燐酸塩処理結果のために、ジルコニウム元素および/またはチタン元素に対して全体で5ppm以下、特に好ましくは1ppm以下のジルコニウムおよび/またはチタン水溶性化合物を含む、特に好ましくはジルコニウムおよび/またはチタンの水溶性化合物を含まない燐酸亜鉛処理溶液は、本発明による方法の段階(I)において好適である。
【0024】
燐酸亜鉛処理溶液は、本発明による方法の段階(I)において、好ましくは少なくとも0.3g/l、特に好ましくは少なくとも0.8g/lであって、好ましくは3g/l以下、特に好ましくは2g/l以下の亜鉛イオンを含有する。ここで、燐酸塩処理溶液中の燐酸塩イオンの割合は、好ましくは総計少なくとも5g/lとなり、好ましくは50g/l以下、特に好ましくは25g/lである。
【0025】
本発明による方法の燐酸亜鉛処理溶液は、上記の亜鉛イオンおよび燐酸塩イオンに加えて、以下の促進剤の少なくとも一種をさらに含み得る:
0.3〜4g/lの塩素酸イオン、
0.01〜0.2g/lの亜硝酸イオン、
0.05〜4g/lのニトログアニジン、
0.05〜4g/lのN-メチルモルホリン-N-オキシド、
0.2〜2g/lのm-ニトロベンゼンスルホン酸イオン、
0.05〜2g/lのm-ニトロ安息香酸イオン、
0.05〜2g/lのp-ニトロフェノール、
1〜150mg/lの遊離または結合形態の過酸化水素、
0.1〜10g/lの遊離または結合形態のヒドロキシルアミン、
0.1〜10g/lの還元糖。
【0026】
そのような促進剤は燐酸塩処理浴の成分として既存技術において通例であり、金属表面に対する酸の攻撃に起因する水素を直接酸化させることにより「水素キャッチャー」の機能を果たし、そのために自身は還元される。鋼表面上、および亜鉛メッキおよび/または合金亜鉛メッキされた鋼表面上への均質な結晶性燐酸亜鉛層の形成は、促進剤によって本質的に促進され、それにより、金属表面上の水素ガスの発生が減少する。
【0027】
次のカチオンの1種以上がさらに含まれている場合、本発明による水性組成物により生成した結晶性燐酸亜鉛層の防食および塗料密着性は、本発明によって改善される:
0.001〜4g/lのマンガン(II)、
0.001〜4g/lのニッケル(II)、
0.001〜4g/lのコバルト(II)、
0.002〜0.2g/lの銅(II)、
0.2〜2.5g/lのマグネシウム(II)、
0.2〜2.5g/lのカルシウム(II)、
0.01〜0.5g/lの鉄(II)、
0.2〜1.5g/lのリチウム(I)、
0.02〜0.8g/lのタングステン(VI)。
【0028】
亜鉛イオンに加えて、マンガンとニッケルイオンの両方を含む化成処理用水性組成物は、「トリカチオン」燐酸塩処理溶液として燐酸塩処理の当業者に既知であり、さらに、本発明においても適切である。燐酸塩処理の分野において通例である5g/l以内、好ましくは3g/l以内の割合の硝酸塩は、さらに、鋼表面上ならびに亜鉛メッキおよび合金亜鉛メッキされた鋼表面上の均質および連続的な結晶性燐酸塩層の形成を促進する。
【0029】
少なくとも燐酸塩層の結晶成長に肯定的な効果がある、各燐酸塩層に組み入れられることになる前記のカチオンに加えて、本発明による方法の段階(I)における燐酸塩処理溶液は、通例はさらにナトリウムイオン、カリウムイオンおよび/またはアンモニウムイオンを含んでおり、対応するアルカリを添加することを手段として燐酸塩処理溶液中の遊離酸含有量を調節するよう機能する。
【0030】
本発明によると、段階(II)において、複合金属構造体を酸性処理溶液と接触させる結果、アルミニウム表面上への転化層の形成、鋼表面上、亜鉛メッキおよび/または合金亜鉛メッキされた鋼表面上への燐酸亜鉛層の形成が生じ、処理溶液と接触させられる間に50%以下、好ましくは20%以下、好ましくは10%以下が溶解する。本発明では、「アルミニウム上の転化層」を不動態化している無機あるいは無機/有機混合の薄層であると考えられ、これらは、連続的な結晶性燐酸塩層ではなく、したがって、アルミニウム表面を25°Cで15分間65-wt%硝酸と接触後に示差計量により決定される、単位面積あたりの質量が0.5g/m2未満の燐酸塩層を有する。
【0031】
3.5から5.5の範囲である酸性処理溶液のpH値は、既に本質的に、鋼表面、亜鉛メッキされたおよび/または合金亜鉛メッキされた鋼表面上の燐酸亜鉛層の50%以下が溶解していることを保証しており、Zr、Ti、Hf、Si、VおよびCe元素の水溶性化合物を好ましくは少なくとも各元素に対して合計10ppmの量で含むクロム不含有酸性処理溶液を使用して、複合金属構造体のアルミニウム表面上の対応する転化層が典型的に形成される。段階(II)における酸性処理溶液が、ジルコニウムおよび/またはチタン元素に対して合計10〜1500ppmのジルコニウムおよび/またはチタンのフルオロ複合体、および任意に、100ppm以内、任意に好ましくは少なくとも1ppmの銅(II)イオンを含む本発明による方法は、特に好適である。
【0032】
本発明による方法は、金属材料から組み立てられ、かつ少なくとも一部にアルミニウム表面をも含む複合金属構造体の腐食保護処理のために、金属面のクリーニングおよび活性化の後、20〜65°Cの範囲の温度で適用の方法に調整された期間、表面を段階(I)の燐酸亜鉛処理溶液と例えばスプレーかディップ法を使用して接触させることにより行われる。
亜鉛メッキおよび/または合金亜鉛メッキされた鋼表面上の白点形成は、従来の浸漬タイプの燐酸塩処理方法において特に顕著であって、その結果、本発明による方法の段階(I)における燐酸塩処理操作は、浸漬被覆の原理上で作用する燐酸処理設備にも特に適していることが、経験により示されているが、これは、白点形成が本発明による方法で抑えられるからである。
【0033】
水道水または脱イオン水によるリンス操作は、通常は段階(I)における燐酸塩処理溶液の適用後直ちに行われ;処理溶液の成分を強化したリンスの処理後、本発明による方法の段階(I)に従う燐酸塩処理浴中への燐酸塩処理溶液の成分の選択的な再利用を行なうことができる。このリンス段階を行い、またはこれを行うことなく、段階(II)において、段階(I)に従って処理された複合金属構造体を酸性処理溶液と浸漬によりまたは溶液のスプレーにより接触させる。さらに後の段階で、好ましくは有機浸漬被覆によって、好ましくは本発明によって処理された成分の事前乾燥なしに、複合金属構造体にプライマーコートを付与することができる。
【0034】
本発明による方法に従って腐食から保護された複合金属構造体は、車体構造における自動車製造、船舶建造、建設業界、および白物家電の製造用に利用される。
【0035】
他の態様では、本発明は、アルミニウムからなる部分を包含する金属複合構造体における鋼表面、亜鉛メッキおよび/または合金亜鉛メッキされた鋼表面を選択的に燐酸塩処理するための燐酸亜鉛処理溶液(A)であって、少なくとも0.4ポイントだが3ポイント以下の遊離酸含有量、および2.2〜3.6の範囲のpH値を有し、
(a)5-50g/lの燐酸塩イオン、
(b)0.3-3g/lの亜鉛(II)イオン、
(c)少なくとも10ppmであるが100ppm以下の遊離フッ化物イオン、および
(d)少なくとも0.025g/lであるが1g/l未満の、SiF6として計算された水溶性無機化合物の形態でのシリコン
を含み、水溶性無機化合物の形態でのシリコンの濃度[mMとしてのSi]と遊離酸ポイント数で割った遊離フッ化物の濃度[mMとしてのF]の積(Si/mM)・(F/mM)は5以下、好ましくは4.5以下、特に好ましくは4.0以下である、燐酸亜鉛処理溶液(A)に関する。
【0036】
好適な態様では、本発明による燐酸亜鉛処理溶液(A)は、ジルコニウム元素および/またはチタン元素に対して合計5ppm以下、特に好ましくは合計1ppm以下のジルコニウムおよび/またはチタンの水溶性化合物を含有し、特にはジルコニウムおよび/またはチタンの水溶性化合物を含有しない。

本発明の好ましい態様は以下を包含する。
〔1〕 アルミニウムからなる少なくとも一部、および亜鉛からなる少なくとも一部、並びに任意に、鉄からなる一部を含む複合金属構造体の有機被覆に先立つ化学的前処理方法であって、該方法は、
(I)第一段階で、亜鉛と鉄からなる部分上に、0.5ないし5g/m2の範囲の被覆重量で表面カバー結晶性燐酸亜鉛層の形成をもたらすが、アルミニウム部分上に少なくとも0.5g/m2の被覆重量を備えた燐酸亜鉛層を生じさせない、複合金属構造体の燐酸亜鉛処理溶液による処理を含み、
およびその後に、水による中間的なリンスを行い又は行わず、
(II)第二段階で、3.5ないし5.5の範囲にpH値を有する処理溶液の複合金属構造体上への適用を含み、該溶液は、亜鉛と鉄からなる部分上で、段階(I)で付着した結晶性燐酸亜鉛の50%以下を溶解除去するが、アルミニウム部分上に少なくとも0.5g/m2の層重量を有する表面カバー結晶性燐酸塩層ではない転化層を形成し、
段階(I)における燐酸亜鉛処理溶液は、20ないし65°Cの範囲の温度を有し、および少なくとも0.005g/lであって、数8と溶液温度(°C)の商(8/T)以下である遊離フッ化物量(g/lで測定)を含み、
燐酸亜鉛処理溶液は、少なくとも0.025g/lであるが1g/l未満の、SiF6として計算された水溶性無機化合物の形態でのシリコンを含み、水溶性無機化合物の形態でのシリコンの濃度[mMとしてのSi]と遊離酸ポイント数で割った遊離フッ化物の濃度[mMとしてのF]の積(Si/mM)・(F/mM)は5以下であり、
燐酸亜鉛処理溶液中の遊離酸ポイント数は、少なくとも0.4ポイントとなるが3.0ポイントの値を超過しない、方法。
〔2〕 段階(I)における燐酸亜鉛処理溶液は、
(a) 5-50g/lの燐酸塩イオン、
(b) 0.3-3g/lの亜鉛(II)イオン
を含む、〔1〕に記載の方法。
〔3〕 段階(I)における燐酸亜鉛処理溶液は、ジルコニウム元素および/またはチタン元素に対して合計5ppm以下の、好ましくは合計1ppm以下の、ジルコニウムおよび/またはチタンの水溶性化合物を含有する、〔1〕〜〔2〕のいずれかに記載の方法。
〔4〕 段階(I)における燐酸亜鉛処理溶液は、少なくとも0.6ポイント、好ましくは少なくとも1.0ポイントであるが、2.5ポイント以下、好ましくは2.0ポイント以下の遊離酸含有量を有する、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔5〕 総酸含有量は、少なくとも10ポイント、好ましくは少なくとも15ポイントであるが、50ポイント以下、好ましくは25ポイント以下である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の方法。
〔6〕 段階(II)における処理溶液は、ジルコニウム元素および/またはチタン元素に対して合計10〜1500ppmの、ジルコニウムおよび/またはチタンのフルオロ複合体を含む、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の方法。
〔7〕 鋼および亜鉛メッキ鋼および/または合金亜鉛メッキ鋼上に0.5ないし5g/m2の範囲の被覆重量を有する表面カバー結晶性燐酸亜鉛層を形成する、第一段階(I)における複合金属構造体の燐酸亜鉛処理溶液による処理は、燐酸亜鉛処理溶液の浸漬適用を含む、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の方法。
〔8〕 少なくとも0.4ポイントであるが3ポイント以下の遊離酸含有量、および2.2ないし3.6の範囲のpH値を有し、
(a) 5-50g/lの燐酸塩イオン、
(b) 0.3-3g/lの亜鉛(II)イオン、
(c)少なくとも10ppmであるが100ppm以下の遊離フッ化物イオン、
(d)少なくとも0.025g/lであるが1g/l未満の、SiF6として計算された水溶性無機化合物の形態でのシリコン
を含む燐酸亜鉛処理溶液であって、水溶性無機化合物の形態でのシリコンの濃度[mMとしてのSi]と遊離酸ポイント数で割った遊離フッ化物の濃度[mMとしてのF]の積(Si/mM)・(F/mM)は5以下である、溶液。
〔9〕 ジルコニウム元素および/またはチタン元素に対して合計5ppm以下、好ましくは合計1ppm以下の、ジルコニウムおよび/またはチタンの水溶性化合物を含む、〔8〕に記載の燐酸亜鉛処理溶液。