特許第5727772号(P5727772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5727772
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0224 20060101AFI20150514BHJP
【FI】
   H01L31/04 262
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-273826(P2010-273826)
(22)【出願日】2010年12月8日
(65)【公開番号】特開2012-124328(P2012-124328A)
(43)【公開日】2012年6月28日
【審査請求日】2013年10月18日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】田中 美和
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 一也
(72)【発明者】
【氏名】片桐 弘明
(72)【発明者】
【氏名】小松 孝
(72)【発明者】
【氏名】崎尾 進
(72)【発明者】
【氏名】高木 牧子
(72)【発明者】
【氏名】金澤 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】大澤 正人
(72)【発明者】
【氏名】鄭 久紅
(72)【発明者】
【氏名】橋本 夏樹
【審査官】 池谷 香次郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−009682(JP,A)
【文献】 特開2003−249666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/0224
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともp型半導体層、およびn型半導体層を備えた半導体素子と、該半導体素子の少なくとも一面側に沿って延びるバスバー電極と、該バスバー電極と交差する複数のフィンガー電極と、を少なくとも備えた太陽電池であって、
前記フィンガー電極のうち、少なくとも1つのフィンガー電極が、互いに異なる材料で形成された2つの領域を有し、前記2つの領域が、透明導電体で形成された第一領域、および、前記第一領域と前記バスバー電極との間に配され、両者を電気的に接続する導電性金属で形成された第二領域、からなることを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記フィンガー電極のうち、少なくとも1つのフィンガー電極が、その全域にわたって透明導電体からなることを特徴とする請求項1記載の太陽電池。
【請求項3】
前記フィンガー電極と交差し、前記バスバー電極と略平行に延びる、透明導電体で形成された配線を更に備えたことを特徴とする請求項1または2記載の太陽電池。
【請求項4】
前記配線は、前記第一領域と前記第二領域との接続部において、前記フィンガー電極と交差することを特徴とする請求項3記載の太陽電池。
【請求項5】
前記配線は、前記第二領域において、前記フィンガー電極と交差することを特徴とする請求項3記載の太陽電池。
【請求項6】
前記バスバー電極は、互いに略平行に延びるように複数形成されており、かつ、前記フィンガー電極の延長方向の少なくとも端部が透明導電体で形成されていることを特徴とする請求項1ないし5いずれか1項記載の太陽電池。
【請求項7】
前記フィンガー電極は、隣り合う前記バスバー電極どうしを導通させることを特徴とする請求項6記載の太陽電池。
【請求項8】
前記フィンガー電極は、前記第二領域において隣り合う前記バスバー電極どうしを導通させることを特徴とする請求項7記載の太陽電池。
【請求項9】
複数の前記フィンガー電極は、前記第二領域をもつフィンガー電極と、全域にわたって透明導電体で形成されたフィンガー電極とが互いに隣り合うように配列されたことを特徴とする請求項7または8記載の太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池に関し、詳しくは、太陽光の透過率を向上させて、光電変換効率を高めた太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光に含まれる光子というエネルギー粒子がpn接合界面に当たると光起電力効果により、電子と正孔(hole)が発生し、電子はn層、正孔はp層に向かって移動する。この光起電力効果により発生した電子を上部電極と裏面電極により取り出して、光エネルギーを電気エネルギーに変換する素子が太陽電池である。
【0003】
こうした太陽電池の一例として、結晶シリコン太陽電池は、pn接合された半導体素子の裏面側に金属膜などからなる裏面電極を形成すると共に、受光面側には、集電電極として、フィンガー電極、およびバスバー電極が形成される。フィンガー電極は、例えば、半導体基板の受光面側に沿って延びる数百〜数十μm幅の細長い電極であり、こうしたフィンガー電極が多数、配列されている。また、バスバー電極は、こうした多数のフィンガー電極と交差するように形成され、フィンガー電極で集められた電子を外部に取り出す電力線に接続される。
【0004】
従来、こうしたフィンガー電極、およびバスバー電極は、導電性の高い金属材料、例えばAgを含むペーストを半導体素子の一面側に所定のパターンで形成して得られる金属膜によって構成されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−237363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したフィンガー電極は、光を透過させない金属膜で形成されているため、この部分に入射した太陽光(自然光)は半導体素子に達しないため発電に寄与せず、ロスになってしまう。一方でこうしたロスを低減するために、フィンガー電極の幅を細くするなどして開口率を上げようとすると、今度はフィンガー電極の抵抗が増加し、集電性が低下するという課題があった。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、フィンガー電極による集電性を充分に確保しつつ、半導体素子まで達する太陽光を増加させ、高い発電効率を実現した太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のいくつかの態様は次のような太陽電池を提供した。
すなわち、本発明の太陽電池は、少なくともp型半導体層、およびn型半導体層を備えた半導体素子と、該半導体素子の少なくとも一面側に沿って延びるバスバー電極と、該バスバー電極と交差する複数のフィンガー電極と、を少なくとも備えた太陽電池であって、前記フィンガー電極のうち、少なくとも1つのフィンガー電極が、互いに異なる材料で形成された2つの領域を有し、前記2つの領域が、透明導電体で形成された第一領域、および、前記第一領域と前記バスバー電極との間に配され、両者を電気的に接続する導電性金属で形成された第二領域、からなることを特徴とする。


【0009】
記フィンガー電極のうち、少なくとも1つのフィンガー電極が、その全域にわたって透明導電体からなる構成とされていてもよい。
また、前記フィンガー電極と交差し、前記バスバー電極と略平行に延びる、透明導電体で形成された配線を更に備えていてもよい。
【0010】
前記配線は、前記第一領域と前記第二領域との接続部において、前記フィンガー電極と交差する構成とされていてもよい。
また、前記配線は、前記第二領域において、前記フィンガー電極と交差する構成とされていてもよい。
【0011】
前記バスバー電極は、互いに略平行に延びるように複数形成されており、かつ、前記フィンガー電極の延長方向の少なくとも端部が透明導電体で形成されていればよい。
また、前記フィンガー電極は、隣り合う前記バスバー電極どうしを導通させてもよい。
【0012】
前記フィンガー電極は、前記第二領域において隣り合う前記バスバー電極どうしを導通させればよい。
また、複数の前記フィンガー電極は、前記第二領域をもつフィンガー電極と、全域にわたって透明導電体で形成されたフィンガー電極とが互いに隣り合うように配列されていればよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の太陽電池によれば、太陽光の入射の際に、櫛歯状に配列されたフィンガー電極どうしの間から太陽光が半導体素子に達するが、更に、このフィンガー電極のうち、透明導電材料によって形成された領域に入射した太陽光も、この領域を透過して半導体素子に達することができる。
【0014】
従来は金属膜などで形成されていたために発電(光電変換)に寄与できなかった集電電極に入射した太陽光のうち、透明導電材料によって形成された領域に入射した太陽光も半導体素子18に達することができるため、金属材料で形成されたバスバー電極と、少なくとも一部が透明導電材料で形成されたフィンガー電極によって、高い集電能力を保ちつつ、発電効率を向上させた太陽電池を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の太陽電池の一実施形態を示す断面図である。
図2図1の太陽電池における一面側を示す平面図である。
図3】本発明の太陽電池の一実施形態における作用を示す説明図である。
図4】第二実施形態の太陽電池を示す断面図である。
図5】第三実施形態の太陽電池を示す断面図である。
図6】第四実施形態の太陽電池を示す断面図である。
図7】本発明の太陽電池の製造方法の一例について段階的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る太陽電池の一実施形態について説明する。なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0017】
(第一実施形態)
図1は、本発明の太陽電池の一実施形態である単結晶シリコン太陽電池の厚み方向に沿った断面図である。
例えば、単結晶シリコン太陽電池(以下、単に太陽電池と称する)10は、n型半導体層を構成する基板(n型半導体層)11を備える。この基板(n型半導体層)11の一面(太陽光の入射面)11a側には、p型半導体層13、および透明導電膜14が順に重ねて積層されている。このうち、基板(n型半導体層)11、およびp型半導体層13で、半導体素子18が構成される。
一方、基板11の他面(裏面)11b側には、金属電極膜(裏面電極)16が順に重ねて積層されている。
【0018】
基板(n型半導体層)11は、例えば、シリコン単結晶ウェーハから構成されればよい。p型半導体層13は、例えば、アモルファスシリコン(a−Si)や、マイクロクリスタルシリコン(μc−Si)の薄膜から構成されていればよい。また、p型半導体となるようにドープされた層であってもよい。
【0019】
透明導電膜14は、光透過性のある導電体薄膜、例えば、ITO(酸化インジウム−スズ)膜、ZnO(酸化亜鉛)膜、TO(酸化スズ)膜などから構成されれば良い。なお、太陽光の入射面側となる透明導電膜14には、光エネルギーの変換効率を向上させるために、入射した太陽光の光路を伸ばすプリズム効果と光の閉じ込め効果を目的としたテクスチャを形成するのも好ましい。
金属電極膜16は、例えば、Ag(銀)膜から構成されればよい。
【0020】
このように構成した太陽電池10は、太陽光に含まれる光子というエネルギー粒子が半導体素子18に入射し、基板(n型半導体層)11とp型半導体層13とのpn接合界面に達すると、光起電力効果によって電子と正孔(hole)が発生し、電子は基板(n型半導体層)11、正孔はp型半導体層13に向かって移動する。この光起電力効果により発生した電子によって、透明導電膜14と金属電極膜(裏面電極)16との間に電位差が生じる。これにより、光エネルギーを電気エネルギーに変換(光電変換)することができる。
【0021】
透明導電膜14は、金属膜などと比較すると電気抵抗が大きく、この透明導電膜14を電力取り出し用の電極として用いるには難がある。このため、透明導電膜14の一面14a側には、入射面側の電極となる集電電極(上部電極)21が形成されている。
【0022】
図2は、図1の太陽電池における一面側(太陽光の入射面側)を示す平面図である。
集電電極(上部電極)20は、バスバー電極21と、このバスバー電極21と交差する複数のフィンガー電極22とを備えている。
バスバー電極21は、例えばAgなど良導体である金属層からなり、後述するフィンガー電極22に流れ込んだ電子を集めて外部に出力する。バスバー電極21は、例えば、幅0.05〜2mm、厚み0.5〜40μm程度の細長く形成されたAg膜であればよい。
【0023】
フィンガー電極22は、バスバー電極21と、例えば直角に交差する方向に延びる細長い電極であり、バスバー電極21の延長方向に沿って両側に複数形成されている。このフィンガー電極22は、例えば、幅0.05〜0.1mm、厚み0.5〜40μm程度に形成されている。
【0024】
フィンガー電極22は、少なくとも透明導電体で形成された第一領域22aと、導電性金属で形成された第二領域22bとの、互いに異なる材料で形成された2つの領域をもつ。換言すると、図2や、後述する図4に示すとおり、フィンガー電極22のうち、少なくとも1つのフィンガー電極が、透明導電体で形成された第一領域22a、および、前記第一領域22aと前記バスバー電極21との間に配され、両者を電気的に接続する導電性金属で形成された第二領域22b、からなる構成とされている。
第一領域22aは、透明導電体、例えばITO(酸化インジウム−スズ)、ZnO(酸化亜鉛)、TO(酸化スズ)などから構成されれば良い。この本実施形態では、例えばITOが用いられる。一方、第二領域22bは、導電性金属、例えば、Ag(銀)、Al(アルミニウム)Au(金)Cu(銅)などから構成されれば良い。この本実施形態では、例えばAgが用いられる。


【0025】
フィンガー電極22は、例えばバスバー電極21に電気的に接続される部分から所定の長さ、例えば10〜50mmの長さでAgからなる第二領域22bが形成され、この第二領域22bの端部から更に太陽電池10の周縁部に向けて、例えば2〜10mmの長さでITOからなる第一領域22aが延びている。
【0026】
こうした構成の太陽電池10の作用を説明する。図1〜3を用いて説明する。
図3は、本発明の一実施形態の太陽電池の作用を説明する説明図である。
太陽電池10は、入射面側、即ち集電電極(上部電極)20が形成された側から太陽光(自然光)Sを入射させる。そして、透明導電膜14を経て半導体素子18に達した太陽光Sによって光電変換を行い電力を発生させる。こうした太陽光Sの入射の際に、櫛歯状に配列されたフィンガー電極22どうしの間から太陽光Sが半導体素子18に達するが、更に、このフィンガー電極22のうち、透明導電材料であるITOによって形成された第一領域22aに入射した太陽光Saも、この第一領域22aを透過して半導体素子18に達することができる。
【0027】
従来は金属膜などで形成されていたために発電(光電変換)に寄与できなかった集電電極(上部電極)に入射した太陽光Sのうち、透明導電材料であるITOによって形成された第一領域22aに入射した太陽光Saは、この第一領域22を透過して半導体素子18に達することができる。これによって、金属材料で形成されたバスバー電極21とフィンガー電極22の第二領域22bによって高い集電能力を保ちつつ、透明導電材料で形成された第一領域22aによって集電電極(上部電極)20に入射した太陽光Sの一部を透過させて発電効率を向上させることを可能とした太陽電池10を実現できる。
【0028】
次に、こうした太陽電池の製造方法の一例を説明する。
図7は、本発明の太陽電池の製造方法の一例について、段階的に示した断面図である。
太陽電池10の製造にあたっては、まず、例えば、テクスチャエッチングにより表面がテクスチャ構造とされた厚み200μm、125mm角程度のp型単結晶シリコン基板101を用意し(図7(a))、このシリコン基板101の表面101aに、リン(P)を含む塗料を塗布する。次いで、このシリコン基板101を、例えば、900℃にて10分間熱処理を施し、シリコン基板の表面近傍に、厚みが約0.5μmのn型の拡散層102を形成する(図7(b))。
【0029】
次いで、シリコン基板101の裏面101bの裏面電極を形成する領域に、スパッタ法によりアルミニウム層104を2μm程度の厚みで成膜する。または、シリコン基板101の裏面101bの裏面電極を形成する領域に、スクリーン印刷法によりアルミニウムペーストを40μmの厚みで塗布し、その後150℃にて10分間乾燥させればよい。これによって、シリコン基板101の裏面101bに、アルミニウム層104が所定のパターンで形成される(図7(c))。
【0030】
次に、シリコン基板101の拡散層102の表面に、スパッタ装置を用いて、200℃程度でITOを膜厚800Å程度に成膜し、ITO膜107を形成する(図7(d))。
その後、表面側のフィンガー電極を形成する領域に、例えば、スクリーン印刷法、インクジェットプリンターによる塗布などによりITOペーストを塗布し、真空中で230℃で30分、1×10−3Paの減圧下で第1の焼成を行う。次いで、大気雰囲気に戻し、空気中で230℃で30分の第2の焼成を行う。次に表面に、グリッド及びフィンガー電極を形成する領域にスクリーン印刷法により、Agのペーストを印刷し、200℃20分焼成を行なう。こうした2段階の焼成によって、ITOからなるフィンガー電極108と、Agからなるバスバー電極109とを備えた太陽電池10を形成することができる(図7(e))。
【0031】
(第二実施形態)
図4は、本発明の第二実施形態の太陽電池における一面側(太陽光の入射面側)を示す平面図である。
この実施形態の太陽電池30は、半導体素子18の一面側(太陽光の入射面側)に、集電電極(上部電極)31が形成されている。この集電電極31は、バスバー電極32と、このバスバー電極32と交差する複数のフィンガー電極33とを備えている。
バスバー電極32は、例えばAgなど良導体である金属層から形成されている。フィンガー電極33は、バスバー電極32と、例えば直角に交差する方向に延びる細長い電極であり、バスバー電極32の延長方向に沿って両側に複数形成されている。
【0032】
フィンガー電極33は、少なくとも透明導電体で形成された第一領域22aと、導電性金属で形成された第二領域22bとからなる第一のフィンガー電極33aと、全域に渡って透明導電体で形成された第一領域22aからなる第二のフィンガー電極33bとからなる。そして、こうした第一のフィンガー電極33aと第二のフィンガー電極33bとが、バスバー電極32の延長方向に沿って交互に形成されている。
【0033】
こうした第二実施形態の太陽電池30によれば、全域に渡って透明導電体で形成された第一領域22aからなる第二のフィンガー電極33bによって、第一実施形態の太陽電池10と比べて太陽光の透過可能面積が更に大きくなり、より一層発電効率を高めることが可能になる。
【0034】
(第三実施形態)
図5は、本発明の第三実施形態の太陽電池における一面側(太陽光の入射面側)を示す平面図である。
この実施形態の太陽電池40は、半導体素子18の一面側(太陽光の入射面側)に、集電電極(上部電極)41が形成されている。この集電電極41は、バスバー電極42と、このバスバー電極42と交差する複数のフィンガー電極43とを備えている。
バスバー電極42は、例えばAgなど良導体である金属層から形成されている。フィンガー電極43は、バスバー電極42と、例えば直角に交差する方向に延びる細長い電極であり、バスバー電極42の延長方向に沿って両側に複数形成されている。
【0035】
フィンガー電極43は、少なくとも透明導電体で形成された第一領域22aと、導電性金属で形成された第二領域22bとからなる第一のフィンガー電極43aと、全域に渡って透明導電体で形成された第一領域22aからなる第二のフィンガー電極43bとからなる。そして、こうした第一のフィンガー電極43aと第二のフィンガー電極43bとが、バスバー電極42の延長方向に沿って交互に形成されている。
【0036】
更に、集電電極(上部電極)41を構成する配線(フィンガー電極連結配線)45が形成されている。この配線(フィンガー電極連結配線)45は、第一のフィンガー電極43aにおける第一領域22aと第二領域22bとが接続される部分を結ぶように、バスバー電極42と略平行に形成されている。配線45は、全体が透明導電体、例えばITOから構成されていれば良く、バスバー電極42を挟んで、例えば2本形成されていればよい。
【0037】
こうした第三実施形態の太陽電池40によれば、配線(フィンガー電極連結配線)45によって、複数のフィンガー電極43の相互間の導電性を高めるとともに、導電性に優れた金属膜(第二領域22b)による高い集電性をフィンガー電極43の先端方向に波及させる効果がある。従って、太陽光の透過可能面積を更に大きくして発電効率を高めるとともに、高い集電性を確保した太陽電池を実現することが可能になる。
【0038】
なお、第三実施形態における配線(フィンガー電極連結配線)45は、ITOなど透明導電膜で形成する以外にも、Agなどの導電性金属によって構成することも好ましい。配線45を透明導電材料とするかAgなどの導電性金属とするかは、導電性(集電性)を一層高めるか、あるいは太陽光の透過性(開口率)を高めるか、目的によって適宜選択されれば良い。
【0039】
(第四実施形態)
図6は、本発明の第四実施形態の太陽電池における一面側(太陽光の入射面側)を示す平面図である。
この第四実施形態では、大面積の太陽電池50における集電電極(上部電極)51の形成例を示す。第四実施形態の太陽電池50は、半導体素子18の一面側(太陽光の入射面側)に、集電電極(上部電極)51が形成されている。この集電電極51は、複数のバスバー電極52と、このバスバー電極52と交差する複数のフィンガー電極53とを備えている。
【0040】
複数のバスバー電極52は、例えば2本のバスバー電極52が互いに平行に形成されている。このバスバー電極52は、例えばAgなど良導体である金属層から形成され、長さ方向において、それぞれ一方の端部の幅が漸減するように形成されている。
【0041】
フィンガー電極53は、2本のバスバー電極52に対して、それぞれ直角に交差する方向に延びる細長い電極であり、バスバー電極52の延長方向に沿って両側に複数形成されている。フィンガー電極53は、少なくとも透明導電体で形成された第一領域22aと、導電性金属で形成された第二領域22bとからなる第一のフィンガー電極53aと、全域に渡って透明導電体で形成された第一領域22aからなる第二のフィンガー電極53bとからなる。そして、こうした第一のフィンガー電極53aと第二のフィンガー電極53bとが、例えば第一のフィンガー電極53aが1本に対して第二のフィンガー電極53bが3本の割合でバスバー電極52の延長方向に沿って、形成されている。
【0042】
こうしたフィンガー電極53のうち、第一のフィンガー電極53aのいくつかは、導電性金属で形成された第二領域22bで、隣り合う2本のバスバー電極52どうしを相互に接続(導通)させるように形成されている。
【0043】
更に、集電電極(上部電極)51を構成する配線(フィンガー電極連結配線)55が形成されている。この配線(フィンガー電極連結配線)55は、複数配列されたフィンガー電極53と交差して、互いにフィンガー電極53どうしを導通させるように、バスバー電極52と略平行に形成されている。配線55は、全体が透明導電体、例えばITOから構成されていれば良く、複数本、例えば本実施形態では6本形成されていればよい。
【0044】
こうした第四実施形態の太陽電池50によれば、太陽電池50の広い受光面を網羅するように、フィンガー電極53が配され、少なくとも透明導電体で形成された第一領域22aと、導電性金属で形成された第二領域22bとからなる第一のフィンガー電極53aによって、集電性を確保しつつ、太陽光の透過面積を増大させ、発電効率に優れた太陽電池を実現できる。
【0045】
また、配線(フィンガー電極連結配線)55によって、複数のフィンガー電極53の相互間の導電性を高めるとともに、導電性に優れた金属膜(第二領域22b)による高い集電性をフィンガー電極53の先端方向に波及させる効果がある。従って、太陽光の透過可能面積を更に大きくして発電効率を高めるとともに、高い集電性を確保した太陽電池を実現することが可能になる。
【実施例】
【0046】
本出願人は、本願発明の一実施形態に係る効果を検証した。
受光面が正方形の太陽電池のセル2種、125mm角、50mm角において、それぞれ
・フィンガー電極全体を金属膜で形成したもの(比較例(従来例))
・全てのフィンガー電極の先端領域だけをITOで形成したもの(実施例1)
・フィンガー電極の先端領域をITOで形成した第一のフィンガー電極と、フィンガー電極全体をITOで形成した第二のフィンガー電極とを交互に配置し、更に、これらフィンガー電極と交差するように、ITOで形成した配線を設けたもの(実施例2)
をそれぞれ形成し、比較例を100%とした時の実施例1と実施例2における発電効率を求めた。
こうした検証結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表1に示す結果によれば、本発明の実施例1と実施例2において、フィンガー電極の一部ないし全部をITOなど光透過性の導電材料で形成することによって、半導体素子まで到達する太陽光の光量が増加し、発電効率が向上することが確認された。
【符号の説明】
【0049】
10…太陽電池、11…基板、13…p型半導体層、20…集電電極(上部電極)、21…バスバー電極、22…フィンガー電極、22a…第一領域、22b…第一領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7