特許第5727999号(P5727999)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5727999
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】吸水シート構成体
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/49 20060101AFI20150514BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20150514BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   A41B13/02 C
   A41B13/02 D
   A61F13/18 307E
【請求項の数】4
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-506933(P2012-506933)
(86)(22)【出願日】2011年3月10日
(86)【国際出願番号】JP2011055670
(87)【国際公開番号】WO2011118409
(87)【国際公開日】20110929
【審査請求日】2014年1月30日
(31)【優先権主張番号】特願2010-69990(P2010-69990)
(32)【優先日】2010年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 潤一
(72)【発明者】
【氏名】松下 英樹
(72)【発明者】
【氏名】坂田 淳
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 悠
【審査官】 二ッ谷 裕子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−510165(JP,A)
【文献】 特開平02−053968(JP,A)
【文献】 特開2006−051218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/00
A61F 13/15 − 13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性樹脂と、接着剤とを含有してなる吸収層が、親水性不織布により該吸収層の上方及び下方から挟持され該接着剤により該親水性不織布に接着された構造を有する吸水シート構成体であって、該吸水シート構成体の上面及び下面の少なくとも1面にエンボスが施され、以下の特性:
生理食塩水を、該吸水シート構成体1m2あたり4L(4L/m2)吸収させた際に、次の関係(A)及び(B)の両方を満たすこと。ただし、T1は生理食塩水吸収前の吸水シート構成体厚み(mm)、T2は生理食塩水吸収後の吸水シート構成体厚み(mm)、t2は生理食塩水吸収後の吸水シート構成体におけるエンボス厚み(mm)である。
(A)膨張厚み比(T2/T1)が、2以上
(B)膨張エンボス深さ[(T2−t2)/T2]が、0.7以上
を有することを特徴とする吸水シート構成体。
【請求項2】
前記吸水シート構成体に施されたエンボスの面積率が、該吸水シート構成体のエンボスが施された面の面積の3〜25%である請求項1に記載の吸水シート構成体。
【請求項3】
前記吸水シート構成体の乾燥状態の厚みが、4mm以下である請求項1又は2に記載の吸水シート構成体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸水シート構成体を、液体透過性シート及び液体不透過性シートで狭持してなる、吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生材料分野等に使用し得る吸水シート構成体に関する。詳しくは、薄型で紙おむつ、失禁パッド等の吸収性物品に好適に使用し得る吸水シート構成体に関する。さらに本発明は、かかる吸水シート構成体を用いてなる紙おむつ、失禁パッド等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
紙おむつ等に代表される吸収性物品は、体液等の液体を吸収する吸収体が、体に接する側に配された柔軟な液体透過性の表面シート(トップシート)と、体と接する反対側に配された液体不透過性の背面シート(バックシート)とにより挟持された構造を有する。
【0003】
従来、デザイン性、携帯時における利便性、流通時における効率等の観点から、吸収性物品の薄型化、軽量化に対する要求は高まっていた。さらに近年、環境保全の観点から、資源を有効に利用し、樹木のような成長に長期間を要する天然素材の使用を極力回避する、いわゆるエコ・フレンドリーな志向にニーズが集まりつつある。
【0004】
そこで、木材の解砕パルプ繊維等が極めて少なく、基本的な性能(速い液体浸透速度、十分な液体吸収能、少ない液体逆戻り量、少ない液漏れ量、形態保持性等)に優れ、薄型化を達成した吸水シート構成体として、所定量の吸水性樹脂及び所定量のホットメルト接着剤が、2枚以上の所定の目付量を有する親水性不織布により挟持された構造を有する吸水シート構成体(例えば、特許文献1参照)が提案されている。
【0005】
一方、従来の前記吸収体においては、吸収速度及びフィット性、ならびに型くずれ防止効果を改良するために、エンボスを施すことが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開WO2010/004894号パンフレット
【特許文献2】特開平5−300922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されている吸水シート構成体は、前記基本的な性能に十分優れているが、特に速い液体浸透速度、少ない液漏れ量、形態保持性においてさらに優れた吸水シート構成体の提案が望まれている。
【0008】
前記吸水シート構成体に、特許文献2等に開示されているエンボスを施してみたが、吸水シート構成体が液体を吸収した際、吸収層中の吸水性樹脂が液体を吸収して膨潤するのを前記エンボスが阻害し、吸水シート構成体の液体吸収能が悪くなることを見出した。また、前記吸水性樹脂の膨潤により、エンボスが失われ、次に発生する液体の吸収にエンボスが有効に働かない場合があることも見出した。
【0009】
本発明の目的は、優れた液体浸透性、少ない液漏れ量、形態保持性に優れ、薄型化を達成した吸水シート構成体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕 吸水性樹脂を含有してなる吸収層が、親水性不織布により該吸収層の上方及び下方から挟持された構造を有する吸水シート構成体であって、該吸水シート構成体の上面及び下面の少なくとも1面にエンボスが施され、以下の特性:
生理食塩水を、該吸水シート構成体1mあたり4L(4L/m)吸収させた際に、次の関係(A)及び(B)の両方を満たすこと(ただし、T1は生理食塩水吸収前の吸水シート構成体厚み(mm)、T2は生理食塩水吸収後の吸水シート構成体厚み(mm)、t2は生理食塩水吸収後の吸水シート構成体におけるエンボス厚み(mm)である)。
(A)膨張厚み比(T2/T1)が、2以上
(B)膨張エンボス深さ[(T2−t2)/T2]が、0.7以上
を有することを特徴とする吸水シート構成体;並びに
〔2〕 前記〔1〕に記載の吸水シート構成体を、液体透過性シート及び液体不透過性シートで狭持してなる、吸収性物品;に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる吸水シート構成体は、薄型であっても、形態保持性が良好なために、液体吸収前や吸収後に型くずれを起こさず、しかも優れた液体浸透性、少ない液漏れ量等の吸収能力を十分に発揮することができるという優れた効果を奏する。従って、本発明にかかる吸水シート構成体を紙おむつ等の吸収体として使用することにより、薄くて外観の意匠性に優れると共に、液漏れ等の不都合のない衛生材料を提供することができる。また、本発明にかかる吸水シート構成体は、衛生材料分野以外に、農業分野や建材分野等にも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明にかかる生理食塩水吸収前(乾燥状態)の吸水シート構成体の一例を、模式的に示す断面図である。
図2】本発明にかかる生理食塩水吸収後の吸水シート構成体の一例を、模式的に示す断面図である。
図3】本発明に用いられるエンボス図形(パターン)の一例である。
図4】本発明に用いられるエンボス図形(パターン)の他の一例である。
図5】本発明に用いられるエンボス図形(パターン)の他の一例である。
図6】本発明に用いられるエンボス図形(パターン)の他の一例である。
図7】本発明に用いられるエンボス図形(パターン)の他の一例である。
図8】吸水シート構成体の傾斜における漏れ試験を実施するために用いる装置の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明にかかる吸水シート構成体は、吸水性樹脂を含有してなる吸収層が、親水性不織布により該吸収層の上方及び下方から挟持された構造を有する吸水シート構成体であり、該吸水シート構成体の上面及び下面の少なくとも1面にエンボスが施され、該吸水シート構成体における特定の厚み条件及び特定のエンボス保持条件を満たすことで、速い液体浸透速度、少ない液漏れ量、形態保持性に優れた薄型の吸水シート構成体を実現することができるものである。
【0014】
本発明にかかる吸水シート構成体は、パルプ繊維等の親水性繊維が本発明の効果を損なわない範囲の量で、親水性不織布間に吸水性樹脂とともに混在している態様であってもよいが、薄型化の観点からは、実質的に親水性繊維を含まない態様であることが好ましい。
【0015】
本発明にかかる吸水シート構成体に用いられる吸水性樹脂としては、公知の吸水性樹脂が使用でき、例えば、澱粉−アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、澱粉−アクリル酸グラフト重合体の中和物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、ポリアクリル酸部分中和物等が挙げられる。これらの吸水性樹脂の中では、生産量、製造コストや吸水性能等の観点から、ポリアクリル酸部分中和物が好適に用いられる。ポリアクリル酸部分中和物を合成する方法としては、逆相懸濁重合法及び水溶液重合法等が挙げられる。これらの重合法の中でも、得られる粒子の流動性の良さや微粉末の少なさ、液体吸収容量(保水能、有効吸水量、荷重下での吸水能等の指標にて表される)や吸水速度等の吸水性能が高いという観点から、逆相懸濁重合法により得られる吸水性樹脂が好適に用いられる。
【0016】
前記ポリアクリル酸部分中和物の中和度は、吸水性樹脂の浸透圧を高め、吸水能力を高める観点から、50モル%以上が好ましく、70〜90モル%がより好ましい。
【0017】
本発明にかかる吸水シート構成体における吸水性樹脂の含有量は、前記吸水シート構成体が吸収性物品に使用された際に十分な液体吸収性能を得る観点から、吸水シート構成体の1mあたり好ましくは100〜1000g(即ち100〜1000g/m)であり、より好ましくは150〜800g/m、さらに好ましくは200〜700g/mであり、よりさらに好ましくは220〜600g/mである。吸水シート構成体としての十分な液体吸収性能を発揮させ、液体の逆戻りを抑制する観点から、当該含有量は100g/m以上であることが好ましく、ゲルブロッキング現象の発生を抑制し、吸水シート構成体として液体の拡散性能を発揮させ、さらに液体の浸透速度を改善する観点から、当該含有量は1000g/m以下であることが好ましい。
【0018】
本発明にかかる吸水シート構成体に用いられる親水性不織布としては、当該技術分野で公知の親水性不織布であれば特に限定されないが、液体浸透性、柔軟性及び前記吸水シート構成体とした際の形態保持性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル繊維、ナイロン等のポリアミド繊維、レーヨン繊維、その他の合成繊維からなる親水性不織布や、綿、絹、麻、パルプ(セルロース)繊維等が混合されて製造された親水性不織布等が挙げられる。これらの親水性不織布の中でも、吸水シート構成体の形態保持性を高める等の観点から、合成繊維の親水性不織布が好ましく用いられ、とりわけレーヨン繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維からなる親水性不織布であることが好ましい。また、前記合成繊維の親水性不織布には、得られる吸水シート構成体の厚みを増大させない程度に、少量のパルプ繊維が含まれていてもよい。これらの親水性不織布は、前記繊維の単独の親水性不織布でもよく、2種以上の繊維を組み合わせた親水性不織布でもよい。
【0019】
より詳細には、吸水シート構成体の形態保持性を高め、吸水性樹脂の目抜けによる脱落を防止する観点から、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維及びそれらの混合体からなる群より選択される繊維より製造されるスパンボンド不織布がより好ましく、また、吸水シート構成体を形成した際の液体吸収性能、柔軟性をより高める観点から、レーヨン繊維を主成分とするスパンレース不織布も、本発明に用いられる不織布として、より好ましい。前記スパンボンド不織布のなかでも、ポリオレフィン繊維の多層構造である、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)不織布、及びスパンボンド−メルトブローン−メルトブローン−スパンボンド(SMMS)不織布がより好ましく用いられ、とりわけポリプロピレン繊維を主成分とするSMS不織布、SMMS不織布が好ましく用いられる。一方、前記スパンレース不織布としては、主成分のレーヨン繊維にポリオレフィン繊維及び/又はポリエステル繊維を適宜配合したものが好ましく使用され、なかでもレーヨン−PET不織布、レーヨン−PET−PE不織布が好ましく用いられる。前記不織布には、吸水シート構成体の厚みを増大させない程度に少量のパルプ繊維が含まれていてもよい。
【0020】
前記親水性不織布は、本発明にかかる吸水シート構成体に、良好な液体浸透性、柔軟性、形態保持性やクッション性を付与すること、及び吸水シート構成体の液体浸透速度を速める観点から、適度に嵩高く、目付量が大きい親水性不織布が好ましい。その目付量は、好ましくは5〜300g/m2であり、より好ましくは10〜200g/m2、さらに好ましくは11〜100g/m2、よりさらに好ましくは13〜50g/m2である。また、親水性不織布の厚さとしては、好ましくは200〜1500μmの範囲であり、より好ましくは250〜1200μmの範囲であり、さらに好ましくは300〜1000μmの範囲である。
【0021】
本発明にかかる吸水シート構成体において、得られる吸水シート構成体の形態保持性を高める観点から、吸収層はさらに接着剤を含有してなることが好ましい。接着剤を使用する場合、その接着剤としては、例えば、天然ゴム系、ブチルゴム系、ポリイソプレン等のゴム系接着剤;スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソブチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)等のスチレン系エラストマー接着剤;エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)接着剤;エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体(EBA)等のエチレン−アクリル酸誘導体共重合系接着剤;エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)接着剤;共重合ナイロン、ダイマー酸ベースポリアミド等のポリアミド系接着剤;ポリエチレン、ポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、共重合ポリオレフィン等のポリオレフィン系接着剤;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、共重合ポリエステル等のポリエステル系接着剤、及びアクリル系接着剤等が挙げられる。これらの接着剤の中でも、接着力が強く、吸水シート構成体における親水性不織布の剥離や吸水性樹脂の散逸を防ぐことができるという観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体接着剤、スチレン系エラストマー接着剤、ポリオレフィン系接着剤及びポリエステル系接着剤が好適に用いられる。これらの接着剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
前記接着剤の溶融温度又は軟化点は、吸水性樹脂を親水性不織布に十分に固定するとともに、親水性不織布の熱劣化や変形を防止する観点から、好ましくは60〜180℃であり、より好ましくは70〜150℃である。
【0023】
また、前記接着剤の保持力は、使用する親水性不織布等により異なるため一概には言えないが、吸水シート構成体が液体を吸収した際のエンボスの形状保持性や効果持続性の観点から、1000分間以上であることが好ましく、1100分間以上であることがより好ましく、1200分間以上であることがさらに好ましい。なお、本明細書において、接着剤の保持力は、後述の測定方法に従って評価した値である。
【0024】
本発明にかかる吸水シート構成体における接着剤の含有量は、前記吸水性樹脂の含有量(質量基準)の0.05〜2.0倍の範囲であることが好ましく、0.08〜1.5倍の範囲であることがより好ましく、0.1〜1.0倍の範囲であることがさらに好ましい。十分な接着によって親水性不織布の剥離や吸水性樹脂の散逸を防止し、吸水シート構成体の形態保持性を高め、さらにエンボスの形状保持性や効果持続性を高める観点から、接着剤の含有量は0.05倍以上であることが好ましく、接着が強くなり過ぎることによる吸水性樹脂の膨潤阻害を回避し、吸水シート構成体の液体浸透速度や液漏れを改善する観点から、接着剤の含有量は2.0倍以下であることが好ましい。
【0025】
本発明にかかる吸水シート構成体は、親水性不織布間に形成される吸収層が、少なくとも吸水性樹脂を含有してなるものであり、例えば、親水性不織布上で吸水性樹脂と接着剤の混合粉末を均一に散布し、さらに親水性不織布を重ねて、接着剤の溶融温度付近で加熱すること、要すれば圧力下で加熱することにより形成される。また、接着剤を塗布した親水性不織布上に、吸水性樹脂を均一に散布した後、接着剤を塗布した親水性不織布をさらに重ねて、要すれば圧力下で加熱すること、又は親水性不織布間に吸水性樹脂を挟みこんだ後、熱エンボス等を施すことによっても、本発明にかかる吸水シート構成体が形成される。
【0026】
本発明にかかる吸水シート構成体は、例えば、以下のような方法で製造することができる。
【0027】
(a)親水性不織布の上に、吸水性樹脂と接着剤の混合粉末を均一に散布し、さらに親水性不織布を重ねて、接着剤の溶融温度付近で加熱圧着する。
(b)親水性不織布の上に、吸水性樹脂と接着剤の混合粉末を均一に散布し、加熱炉を通過させて粉末が散逸しない程度に固定する。これに親水性不織布を重ねて、加熱圧着する。
(c)親水性不織布の上に、接着剤を溶融塗布した直後、吸水性樹脂を均一に散布して層を形成させ、さらに、上部から接着剤を溶融塗布した親水性不織布を、接着剤の塗布面が散布した吸水性樹脂層の側に向くように上部から重ね、ロールプレス等を用いて加圧して、要すれば加熱して、圧着する。
(d)親水性不織布の上に、吸水性樹脂を均一に散布し、さらに親水性不織布を重ねて、加熱エンボスを施すことにより、親水性不織布同士を加熱圧着する。
【0028】
例えば、これら(a)〜(d)に示された方法によって吸水シート構成体を製造することで、吸水性樹脂を含有してなる吸収層が、2枚の親水性不織布により上方及び下方から挟持された構造を有する吸水シート構成体を得ることができる。これらの方法のなかでも、製造方法の簡便さと製造効率の高さの観点から、(a)、(c)、(d)の方法がより好ましい。なお、(a)〜(d)に例示された方法を組み合わせて、吸水シート構成体を製造することもできる。親水性不織布の枚数としては、2枚以上が好ましく、2枚がより好ましい。
【0029】
また、本発明にかかる吸水シート構成体は、消臭剤、抗菌剤やゲル安定剤等の添加剤が適宜配合されていてもよい。
【0030】
本発明にかかる吸水シート構成体は、前記吸水シート構成体の上面及び下面の少なくとも1面にエンボスが施されており、両面にエンボスが施されていても良い。
【0031】
本発明にかかる吸水シート構成体に施されるエンボスの図形(パターン)は特に限定されず、点状(例えば、図3参照)、直線(例えば、図4及び5参照)、曲線、波型及びそれらを組み合わせた図形(例えば、図6及び7参照)等が挙げられる。これらの図形の中でも、得られる吸水シート構成体が、速い液体浸透速度、少ない液漏れ量を達成する観点から、図6及び7の図形が好適に用いられる。
【0032】
本発明にかかる吸水シート構成体に施されるエンボスの面積率は、当該吸水性シート構成体のエンボスが施された面の面積の3〜25%の範囲であることが好ましく、より好ましくは4〜20%の範囲であり、さらに好ましくは5〜15%の範囲である。エンボス部より液体の拡散を促進し、液体の浸透速度を速くする観点、吸水性樹脂の吸水シート構成体への固定化による吸水シート構成体の型崩れを防止する観点から、エンボスの面積率は3%以上であることが好ましく、液体が吸水シート構成体に吸収される前に生じ得る拡散を防止し、吸水シート構成体からの液漏れを防ぐ観点、吸水性樹脂の膨潤を阻害しない観点、また得られる吸水シート構成体の風合いを柔らかくする観点から、エンボスの面積率は25%以下であることが好ましい。
【0033】
本発明にかかる吸水シート構成体において、吸水シート構成体にエンボスを施す方法としては、圧力、熱、超音波又は接着剤を用いる方法等が挙げられる。また、それらを組み合わせた方法を用いてもよい。なお、エンボスを施す際、前記の製造方法において圧着する際に直接エンボスを施してもよく、一度エンボスを施す前の吸水シート構成体を製造した後、別途エンボスを施してもよい。
【0034】
本発明にかかる吸水シート構成体は、生理食塩水を、該吸水シート構成体1mあたり4L(4L/m)吸収させた際に、次の関係(A)及び(B)の両方を満たすことに一つの特徴を有している。ただし、T1は生理食塩水吸収前の吸水シート構成体厚み(mm)、T2は生理食塩水吸収後の吸水シート構成体厚み(mm)、t2は生理食塩水吸収後の吸水シート構成体におけるエンボス厚み(mm)であり、後述の測定方法により評価した値である。
(A)膨張厚み比(T2/T1)が、2以上。
(B)膨張エンボス深さ[(T2−t2)/T2]が、0.7以上。
【0035】
前記膨張厚み比は、吸水シート構成体が液体を吸収した際、エンボス周辺における吸水性樹脂の膨潤性の度合いを示す指標である。膨張厚み比は2以上であり、好ましくは3〜20であり、より好ましくは4〜15である。膨張厚み比が2未満の場合、吸収層中の吸水性樹脂が液体を吸収して膨潤する際、吸収層の上方及び下方の親水性不織布に押さえつけられた状態となり、吸水性樹脂の膨潤が阻害され、吸水シート構成体の吸収能力が低下し、液漏れが生じやすくなる。
【0036】
前記膨張エンボス深さは、吸水シート構成体が液体を吸収した際、エンボスの形状保持性の度合いを示す指標である。膨張エンボス深さは0.7以上であり、好ましくは0.8以上であり、より好ましくは0.9以上である。膨張エンボス深さが0.7未満の場合、吸水シート構成体が液体を吸収して膨張した際、エンボスの形状が失われ、次に発生する液体吸収時に、エンボスが有効に働かない。具体的には、エンボスの形状が失われることで、吸水シート構成体における液体の浸透速度が遅くなったり、吸水シート構成体が型崩れする。
【0037】
上記のT1、T2及びt2を所望の程度に設定する方法としては、例えば、吸収層の吸水性樹脂量と接着剤量及び吸水シート構成体に施すエンボスの面積率を適宜調整することが挙げられる。より具体的には、T1については、例えば親水性不織布の厚さや吸水性樹脂の量を調整することにより、所望の程度に設定することができる。T2については、例えばエンボスの面積率を小さくすることや、吸水性樹脂の量を増加することにより、その値を大きくすることができる。さらにt2については、例えば接着剤の量を増やしたり、より保持力が強い接着剤を用いることにより、その値を小さくすることができる。
【0038】
本発明においては、前記吸水シート構成体の吸収層の全面又は一部を、適切な通気性分画層を用いて、垂直方向(シート構成体の厚み方向)に、上方の1次吸収層と下方の2次吸収層に分画した構造とすることもできる。かかる構造とすることで、吸水シート構成体の液体吸収性能、なかでも傾斜における液漏れが飛躍的に改善される。
【0039】
前記通気性分画層は、適度な通気性と通液性を有するが、吸水性樹脂のような粒子状物が実質的に通過しない層であればよい。具体的には、PE、PP繊維からなる細孔を有するネット等の網状物、パフォーレイティッドフィルム等の多孔質フィルム、ティッシュペーパー等の衛生用紙、パルプ/PE/PPからなるエアレイド型不織布等のセルロース含有合成繊維不織布、あるいはレーヨン繊維、ポリオレフィン繊維及びポリエステル繊維からなる合成繊維不織布等が挙げられる。これらのなかでも、得られる吸水シート構成体の性能面から、本発明における吸収層を挟持する前記不織布と同様のものが好ましく用いられる。
【0040】
2次吸収層における吸水性樹脂の使用量は、1次吸収層の吸水性樹脂の使用量に対して、0.01〜1.0倍(質量比)の範囲であることが好ましく、0.05〜0.8倍の範囲であることがより好ましく、0.1〜0.5倍の範囲であることがさらに好ましい。2次吸収層の液体吸収性を十分に発揮し、液漏れを防止する観点から、0.01倍以上であることが好ましく、吸液後における表面でのドライ感を高め、逆戻りを少なくする観点から、1.0倍以下であることが好ましい。
【0041】
本発明にかかる吸水シート構成体の液体吸収性能は、使用される吸水性樹脂の吸水性能に影響をうける。よって本発明で使用される1次吸収層の吸水性樹脂は、吸水シート構成体の各成分の構成等を考慮して、好適な範囲のものを選択することが好ましい。また、2次吸収層の吸水性樹脂は、1次吸収層の吸水性樹脂と同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0042】
より具体的には、少なくとも一方の吸収層に用いられる吸水性樹脂が逆相懸濁重合法により得られる吸水性樹脂である態様が好ましく、2次吸収層に用いられる吸水性樹脂が逆相懸濁重合法により得られる吸水性樹脂である態様がより好ましく、1次吸収層及び2次吸収層に用いられる吸水性樹脂の両者が逆相懸濁重合法により得られる吸水性樹脂である態様がさらに好ましい。
【0043】
本発明にかかる吸水シート構成体は、薄型化が可能である点に一つの特徴を有しており、紙おむつ等の吸収性物品への使用を考慮すると、吸水シート構成体の厚みは、乾燥状態で、好ましくは4mm以下であり、より好ましくは3mm以下であり、さらに好ましくは0.5mm〜2mmである。乾燥状態とは、吸水シート構成体が液体を吸収する前の状態のことをいう。本明細書において、吸水シート構成体の乾燥状態の厚みは、後述の測定方法により評価した値である。
【0044】
本発明にかかる吸水シート構成体は、液体の浸透速度が速い点に一つの特徴を有しており、吸収性物品への使用を考慮すると、吸水シート構成体の合計浸透速度が50秒以下であることが好ましく、48秒以下であることがより好ましい。本明細書において、吸水シート構成体の合計浸透速度は、後述の測定方法により得られる値である。
【0045】
さらに本発明にかかる吸水シート構成体は、液体の傾斜における漏れが少ない点に一つの特徴を有しており、吸収性物品への使用を考慮すると、吸水シート構成体の漏れ指数が150以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましい。本明細書において、吸水シート構成体の漏れ指数は、後述の測定方法により得られる値である。
【0046】
さらに本発明にかかる吸水シート構成体は、液体浸透後の逆戻りが少ない点に一つの特徴を有しており、吸収性物品への使用を考慮すると、吸水シート構成体における液体の逆戻り量が12g以下であることが好ましく、10g以下であることがより好ましい。本明細書において、吸水シート構成体における液体の逆戻り量は、後述の測定方法により得られる値である。
【0047】
本発明にかかる吸水シート構成体は、液体透過性シート及び液体不透過性シートで狭持することにより、本発明にかかる吸収性物品を得ることができる。エンボスが施された面が吸水シート構成体の1面である場合、エンボスが施された面に液体透過性シートを設けることが好ましい。前記液体透過性シート及び液体不透過性シートとしては、本発明分野で用いられる公知のシートを用いることができ、これらのシートで狭持する方法についても、公知の方法を採用することができる。
【実施例】
【0048】
以下に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0049】
本明細書において規定する測定は、以下の方法により測定、評価した。
【0050】
[接着剤の保持力]
ポリエチレンフィルム(長さ150mm、幅25mm)に、50μmの厚みとなるように接着剤を均一に塗布して、試験片とした。ステンレス鋼板(長さ125mm、幅50mm)の一端に、試験片の長さ25mm×幅25mmの面積が接するように、貼り付け、貼り付いていない部分は、接着面を内側にして折り重ねた。試験片の上から、2kgのゴムローラーを用いて、5mm/秒の速度で1往復し圧着した。
【0051】
20分後、ステンレス鋼板の一端を止め、ステンレス鋼板及び試験片が垂直に垂れ下がるようにし、折り重ねられた試験片の部分の端に、1kgのおもりを取り付けた。
【0052】
試験片がステンレス鋼板から剥がれて落下するまでの時間を測定した。測定を3枚の試験片について行い、その平均値を、接着剤の保持力とした。なお、1440分間(24時間)を超えた場合は、「1440分間以上」と評価した。
【0053】
[吸水シート構成体の乾燥状態の厚み]
得られた吸水シート構成体をそのまま、サンプルとした(10cm×30cm)。なお、得られた吸水シート構成体が10cm×30cmの形状になっていない場合は、10cm×30cmの短冊状で、長手方向が不織布の縦方向(機械方向)となるように切断したものを、サンプルとして使用した。
【0054】
厚み測定器(株式会社尾崎製作所製、型番:J−B)を用いて、長手方向に左端、中央、右端の3箇所(左から3cmを左端、15cmを中央、27cmを右端)を測定した。幅方向は中央部を測定した。厚みの測定値は各箇所で3回測定して平均した。さらに、左端、中央、右端の値を平均して、吸水シート構成体全体の厚みとした。
【0055】
[吸水シート構成体の膨張厚み比及び膨張エンボス深さ]
吸水シート構成体を、5cm×5cmに切断したものをサンプルとして使用した。
得られたサンプルについて、レーザ変位センサ(株式会社キーエンス製、型番:LBシリーズ)を用いて、エンボスが施されていない平面の厚みを測定した。厚みの測定は、測定箇所を変えて5回行い、その平均値を生理食塩水吸収前の厚みT1(mm)とした(例えば、図1参照)。
【0056】
前記サンプルに、10mLの生理食塩水(0.9質量%塩化ナトリウム水溶液、以下同様)を均一に投入し、吸収させた。なお、吸収させた生理食塩水は、サンプル(吸水シート構成)1mあたり4L(4L/m)に該当する。
【0057】
生理食塩水の投入から10分間経過後の生理食塩水吸収後のサンプルについて、上記T1と同様の測定方法により、生理食塩水吸収後の厚みT2(mm)を測定した(例えば、図2参照)。
【0058】
また、レーザ変位センサ(株式会社キーエンス製、型番:LBシリーズ)を用いて、エンボスが施されている箇所の厚みを測定した。エンボス深さの測定は測定箇所を変えて5回行い、その平均値を生理食塩水吸収後のエンボス厚みt2(mm)とした(例えば、図2参照)。
【0059】
前記T1、T2、t2を測定した後、下記式により、吸水シート構成体の膨張厚み比及び膨張エンボス深さを、それぞれ算出した。
(A)膨張厚み比=T2/T1
(B)膨張エンボス深さ=(T2−t2)/T2
【0060】
[吸水シート構成体の浸透速度、幅方向の液漏れ、及び逆戻り量]
吸水シート構成体を10cm×30cmの短冊状で、長手方向が親水性不織布の縦方向(機械方向)となるように切断したものを、サンプルとして使用した。
【0061】
10L容の容器に、塩化ナトリウム60g、塩化カルシウム二水和物1.8g、塩化マグネシウム六水和物3.6g及び適量の蒸留水を入れ、完全に溶解させた。次に、1質量%ポリ(オキシエチレン)イソオクチルフェニルエーテル水溶液15gを添加し、さらに蒸留水を添加して、水溶液全体の質量を6000gに調整した後、少量の青色1号で着色して、試験液を調製した。
【0062】
サンプル(吸水シート構成体)の上部に、サンプルと同じ大きさ(10cm×30cm)、目付量22g/mのポリエチレン製エアスルー型多孔質液体透過性シートを載せた。また、サンプルの下に、サンプルと同じ大きさ及び目付量のポリエチレン製液体不透過性シートを置き、簡易的な吸収性物品を作製した。この吸収性物品の中心付近に、内径3cmの円筒型シリンダーを置き、50mLの試験液をそのシリンダー内に一度に投入するとともに、ストップウォッチを用いて、試験液がシリンダー内から完全に消失するまでの時間を測定し、1回目の浸透速度(秒)とした。次いで30分後及び60分後にも、1回目と同じ位置に前記円筒型シリンダーを置いて同様の操作を行い、2回目及び3回目の浸透速度(秒)を測定した。1回目〜3回目の秒数の合計を合計浸透速度とした。
【0063】
また、前記1〜3回の各浸透速度の測定終了後、吸水シート構成体の幅方向の液漏れの有無について、目視にて確認した。1回でも幅方向の液漏れが発生すれば、液漏れ有りと評価した。
【0064】
さらに、1回目の試験液投入開始から120分後にシリンダーを取り除き、吸収性物品上の試験液投入位置付近に、あらかじめ質量(Wa(g)、約70g)を測定しておいた10cm四方の濾紙(約80枚)を置き、その上に底面が10cm×10cmの5kgの重りを載せた。5分間の荷重後、濾紙の質量(Wb(g))を測定し、増加した質量を液体逆戻り量(g)とした。
液体逆戻り量(g)=Wb−Wa
【0065】
[傾斜における漏れ試験]
傾斜における漏れ試験は、図8に示す装置を用いて行った。
概略としては、市販の実験設備用の架台51を用いて、アクリル板52を傾斜させて固定した後、板上に載置した吸収性物品53に鉛直上方から滴下ロート54で前記の試験液を投入し、漏れ量を天秤55で計量する機構である。以下に詳細な仕様を示す。
【0066】
アクリル板52は傾斜面方向の長さが45cmで、架台51によって水平に対して成す角45±2°になるよう固定した。アクリル板52は幅100cm、厚さ1cmで、複数の吸収性物品53を並行して測定することも可能であった。アクリル板52の表面は滑らかなので、板に試験液が滞留したり吸収されたりすることはなかった。
【0067】
架台51を用いて、滴下ロート54を傾斜アクリル板52の鉛直上方に固定した。滴下ロート54は、容量100mL、先端部の内径が約4mmであり、8mL/秒で試験液が投入されるようにコックの絞りを調整した。
【0068】
アクリル板52の下部には、トレイ56を載置した天秤55が設置されており、漏れとして流れ落ちる試験液をすべて受けとめ、その質量を0.1gの精度まで記録した。
【0069】
このような装置を用いた傾斜における漏れ試験は、以下の手順で行った。幅10cm×長さ30cmの短冊状で、長手方向が親水性不織布の縦方向(機械方向)となるように切断した吸水シート構成体の質量を測定した。次いで、同サイズのエアスルー型ポリエチレン製液体透過性不織布(目付量22g/m)を前記吸水シート構成体の上方から付し、さらに、同サイズ及び同目付量のポリエチレン製液体不透過性シートを下方から付して作成した簡易的な吸収性物品53を、アクリル板52上に貼り付けた(漏れを作為的に止めないために、吸収性物品53の下端はアクリル板52上には貼り付けなかった)。
【0070】
吸収性物品53の上端から2cm下方向の箇所に目印をつけ、滴下ロート54の投入口を、目印から鉛直上方距離8±2mmになるように固定した。
【0071】
天秤55を起動させ、表示をゼロに補正した後、滴下ロート54に前記試験液80mLを一度に投入した。試験液が吸収性物品53に吸収されずに傾斜したアクリル板52を流れ、トレイ56に入った液量を測定し、1回目の漏れ量(g)とした。この1回目の漏れ量(g)の数値をLW1とした。
【0072】
1回目の投入開始から10分間隔にて、同様に2回目、3回目の試験液を投入して、2回目、3回目の漏れ量(g)を測定し、その数値をそれぞれLW2、LW3とした。
【0073】
次いで、以下の式に従って漏れ指数を算出した。指数が小さいほど、吸水シート構成体の傾斜における漏れ量、特に初期の漏れ量が少なく、優れた吸水シート構成体と判断される。
漏れ指数:L=LW1×10+LW2×5+LW3
【0074】
[吸水シート構成体の型崩れ]
前記の傾斜における漏れ試験実施後の吸水シート構成体の状態変化を、目にて確認して、以下の基準で評価した。
A:吸収層に変化なく、型崩れしていない。
B:一部、吸水性樹脂の移動等吸収層に変化があり、多少型崩れしている。
C:かなり型崩れをしている。
【0075】
[実施例1]
加熱温度を150℃に設定したホットメルト塗工機(株式会社ハリーズ製:マーシャル150)上に、親水性不織布として幅30cmのポリプロピレン製スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(以下、SMSと表記)不織布を親水化剤により親水化処理したもの(目付量:13g/m、厚さ:150μm、ポリプロピレン含有率:100%)を敷いた後、接着剤としてスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS−1;軟化点85℃、保持力1440分間以上)を目付量14g/mで当該不織布上に塗布した。
【0076】
次に、ローラー型散布機(株式会社ハシマ製:シンターエースM/C)の投入口に、吸水性樹脂としてポリアクリル酸部分ナトリウム中和物の架橋体(住友精化株式会社製:アクアキープSA55SX−II)を仕込んだ。一方、散布機下部のコンベアーに、前記接着剤を塗布した親水性不織布を敷いた。次いで、散布ローラーと下部コンベアーを稼動させることにより、前記ポリアクリル酸部分ナトリウム中和物の架橋体を目付量190g/mで前記接着剤を塗布した親水性不織布上に均一に積層し、積層体を得た。
【0077】
接着剤として前記SBS−1を目付量14g/mで前記と同様の方法で塗布した前記SMS親水性不織布で、得られた積層体の上部から挟みつけた後、加熱温度を100℃に設定したラミネート機(株式会社ハシマ製:直線式接着プレスHP−600LF)にて熱融着させることでこれらを一体化させ、吸水シート構成体の中間物を得た。
【0078】
前記と同様に、加熱温度を150℃に設定したホットメルト塗工機上に、得られた吸水シート構成体の中間物を敷き、接着剤として前記SBS−1を目付量10g/mで前記吸水シート構成体の中間物上に塗布した。
【0079】
次に、前記ローラー型散布機の投入口に、吸水性樹脂としてポリアクリル酸部分ナトリウム中和物の架橋体(住友精化株式会社製:アクアキープ10SH−PB)を仕込んだ。一方、散布機下部のコンベアーに、前記接着剤を塗布した吸水シート構成体の中間物を敷いた。次いで、散布ローラーと下部コンベアーを稼動させることにより、前記ポリアクリル酸部分ナトリウム中和物の架橋体を目付量50g/mで接着剤を塗布した吸水シート構成体の中間物上に均一に積層し、積層体を得た。
【0080】
接着剤として前記SBS−1を目付量10g/mで前記と同様の方法で塗布した前記SMS親水性不織布で、得られた積層体の上部から挟みつけた後、加熱温度を100℃に設定した前記ラミネート機にて熱融着させることでこれらを一体化させ、エンボスを施す前の吸水シート構成体を得た。
【0081】
得られたエンボスを施す前の吸水シート構成体を、10cm×30cmの短冊状で、長手方向が不織布の縦方向(機械方向)となるように切断した後、前記吸水シート構成体(片面)上に、加熱エンボスロールにて、エンボス面積率が7%、かつ図7で表されるエンボス形状が形成されるようにエンボスを施し、吸水シート構成体を得た。
【0082】
得られた吸水シート構成体について、前記各種測定及び評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0083】
[実施例2]
エンボス面積率を7%から13%に変更し、かつ図6に示すエンボス形状を施した以外は、実施例1と同様の方法によって、吸水シート構成体を得た。
【0084】
得られた吸水シート構成体について、前記各種測定及び評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0085】
[実施例3]
加熱温度を150℃に設定したホットメルト塗工機(株式会社ハリーズ製:マーシャル150)上に、親水性不織布として幅30cmのスパンレース親水性不織布(目付量:50g/m、厚さ:400μm、レーヨン含有率:70%、ポリエチレンテレフタレート含有率:30%)を敷いた後、接着剤としてスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS−1;軟化点85℃、保持力1440分間以上)を目付量20g/mで当該不織布上に塗布した。
【0086】
次に、ローラー型散布機(株式会社ハシマ製:シンターエースM/C)の投入口に、吸水性樹脂としてポリアクリル酸部分ナトリウム中和物の架橋体(住友精化株式会社製:アクアキープSA55SX−II)を仕込んだ。一方、散布機下部のコンベアーに、前記接着剤を塗布した親水性不織布を敷いた。次いで、散布ローラーと下部コンベアーを稼動させることにより、前記ポリアクリル酸部分ナトリウム中和物の架橋体を目付量270g/mで前記接着剤を塗布した親水性不織布上に均一に積層し、積層体を得た。
【0087】
接着剤として前記SBS−1を目付量20g/mで前記と同様の方法で塗布した前記スパンレース親水性不織布で、得られた積層体の上部から挟みつけた後、加熱温度を100℃に設定したラミネート機(株式会社ハシマ製:直線式接着プレスHP−600LF)にて熱融着させることでこれらを一体化させ、吸水シート構成体の中間物A−1を得た。
【0088】
前記と同様に、加熱温度を150℃に設定した前記ホットメルト塗工機上に、親水性不織布として幅30cmのスパンレース親水性不織布(目付量:50g/m、厚さ:400μm、レーヨン含有率:70%、ポリエチレンテレフタレート含有率:30%)を敷いた後、接着剤としてSBS−1を目付量6g/mで当該不織布上に塗布した。
【0089】
次に、前記ローラー型散布機の投入口に、吸水性樹脂としてポリアクリル酸部分ナトリウム中和物の架橋体(住友精化株式会社製:アクアキープ10SH−PB)を仕込んだ。一方、散布機下部のコンベアーに、前記接着剤を塗布した親水性不織布を敷いた。次いで、散布ローラーと下部コンベアーを稼動させることにより、前記ポリアクリル酸部分ナトリウム中和物の架橋体を目付量70g/mで前記接着剤を塗布した親水性不織布上に均一に積層し、積層体を得た。
【0090】
接着剤として前記SBS−1を目付量6g/mで前記と同様の方法で塗布した前記スパンレース親水性不織布で、得られた積層体の上部から挟みつけた後、加熱温度を100℃に設定した前記ラミネート機にて熱融着させることでこれらを一体化させ、吸水シート構成体の中間物B−1を得た。
【0091】
得られた吸水シート構成体の中間物B−1上に、前記SBS−1を目付量4g/mで前記と同様の方法で塗布した後、その上部から得られた吸水シート構成体の中間物A−1を重ねた。次いで、加熱温度を40℃に設定した前記ラミネート機にて熱融着させることで前記吸水シート構成体の中間物A−1及びB−1を一体化させ、エンボスを施す前の吸水シート構成体を得た。
【0092】
得られたエンボスを施す前の吸水シート構成体を、10cm×30cmの短冊状で、長手方向が不織布の縦方向(機械方向)となるように切断した後、前記吸水シート構成体(片面)上に、加熱エンボスロールにて、エンボス面積率が7%、かつ図7で表されるエンボス形状が形成されるようにエンボスを施し、吸水シート構成体を得た。
【0093】
得られた吸水シート構成体について、前記各種測定及び評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0094】
[実施例4]
実施例3において得られたエンボスを施す前の吸水シート構成体の中間物A−1を、10cm×30cmの短冊状で、長手方向が不織布の縦方向(機械方向)となるように切断した後、前記吸水シート構成体の中間物A−1(片面)上に、加熱エンボスロールにて、エンボス面積率が7%、かつ図7で表されるエンボス形状が形成されるようにエンボスを施し、吸水シート構成体の中間物A−1eを得た。
【0095】
実施例3において得られた吸水シート構成体の中間物B−1を、10cm×30cmの短冊状で、長手方向が不織布の縦方向(機械方向)となるように切断した後、吸水シート構成体の中間物B−1上に、前記SBS−1を目付量4g/mで前記と同様の方法で塗布した後、その上部から得られた吸水シート構成体の中間物A−1eのエンボスが施されていない面を重ねた。次いで、加熱温度を40℃に設定した前記ラミネート機にて熱融着させることで前記吸水シート構成体の中間物A−1e及びB−1を一体化させ、吸水シート構成体を得た。
【0096】
[実施例5]
加熱温度を150℃に設定したホットメルト塗工機(株式会社ハリーズ製:マーシャル150)上に、親水性不織布として幅30cmのスパンレース親水性不織布(目付量:50g/m、厚さ:400μm、レーヨン含有率:70%、ポリエチレンテレフタレート含有率:30%)を敷いた後、接着剤としてスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS−1;軟化点85℃、保持力1440分間以上)を目付量30g/mで当該不織布上に塗布した。
【0097】
次に、ローラー型散布機(株式会社ハシマ製:シンターエースM/C)の投入口に、吸水性樹脂としてポリアクリル酸部分ナトリウム中和物の架橋体(住友精化株式会社製:アクアキープSA55SX−II)を仕込んだ。一方、散布機下部のコンベアーに、前記接着剤を塗布した親水性不織布を敷いた。次いで、散布ローラーと下部コンベアーを稼動させることにより、前記ポリアクリル酸部分ナトリウム中和物の架橋体を目付量400g/mで前記接着剤を塗布した親水性不織布上に均一に積層し、積層体を得た。
【0098】
接着剤として前記SBS−1を目付量30g/mで前記と同様の方法で塗布した前記スパンレース親水性不織布で、得られた積層体の上部から挟みつけた後、加熱温度を100℃に設定したラミネート機(株式会社ハシマ製:直線式接着プレスHP−600LF)にて熱融着させることでこれらを一体化させ、エンボスを施す前の吸水シート構成体を得た。
【0099】
得られたエンボスを施す前の吸水シート構成体を、10cm×30cmの短冊状で、長手方向が不織布の縦方向(機械方向)となるように切断した後、前記吸水シート構成体(片面)上に、加熱エンボスロールにて、エンボス面積率が7%、かつ図7で表されるエンボス形状が形成されるようにエンボスを施し、吸水シート構成体を得た。
【0100】
得られた吸水シート構成体について、前記各種測定及び評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0101】
[比較例1]
積層シート構成体にエンボスを施さない以外は、実施例1と同様の方法によって、吸水シート構成体を得た。
【0102】
得られた吸水シート構成体について、前記各種測定及び評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0103】
[比較例2]
接着剤を、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS−1;軟化点85℃、保持力1440分間以上)から、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SBS−2;軟化点82℃、保持力850分間)に変更した以外は、実施例1と同様の方法によって、吸水シート構成体を得た。
【0104】
得られた吸水シート構成体について、前記各種測定及び評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0105】
[比較例3]
エンボス面積率を7%から35%に変更し、かつ図6に示すエンボス形状を施した以外は、実施例1と同様の方法によって、吸水シート構成体を得た。
【0106】
得られた吸水シート構成体について、前記各種測定及び評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0107】
[比較例4]
加熱温度を150℃に設定したホットメルト塗工機(株式会社ハリーズ製:マーシャル150)上に、親水性不織布として幅30cmのスパンレース親水性不織布(目付量:50g/m、厚さ:400μm、レーヨン含有率:70%、ポリエチレンテレフタレート含有率:30%)を敷いた後、接着剤としてスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS−1;軟化点85℃、保持力1440分間以上)を目付量16g/mで当該不織布上に塗布した。
【0108】
次に、ローラー型散布機(株式会社ハシマ製:シンターエースM/C)の投入口に、吸水性樹脂としてポリアクリル酸部分ナトリウム中和物の架橋体(住友精化株式会社製:アクアキープSA55SX−II)を仕込んだ。一方、散布機下部のコンベアーに、前記接着剤を塗布した親水性不織布を敷いた。次いで、散布ローラーと下部コンベアーを稼動させることにより、前記ポリアクリル酸部分ナトリウム中和物の架橋体を目付量220g/mで前記接着剤を塗布した親水性不織布上に均一に積層し、積層体を得た。
【0109】
接着剤として前記SBS−1を目付量16g/mで前記と同様の方法で塗布した前記スパンレース親水性不織布で、得られた積層体の上部から挟みつけた後、加熱温度を100℃に設定したラミネート機(株式会社ハシマ製:直線式接着プレスHP−600LF)にて熱融着させることでこれらを一体化させ、エンボスを施す前の吸水シート構成体の中間物A−2を得た。
【0110】
得られたエンボスを施す前の吸水シート構成体の中間物A−2を、10cm×30cmの短冊状で、長手方向が不織布の縦方向(機械方向)となるように切断した後、前記吸水シート構成体の中間物A−2(片面)上に、加熱エンボスロールにて、エンボス面積率が7%、かつ図7で表されるエンボス形状が形成されるようにエンボスを施し、吸水シート構成体の中間物A−2eを得た。
【0111】
前記と同様に、加熱温度を150℃に設定した前記ホットメルト塗工機上に、親水性不織布として幅30cmのスパンレース親水性不織布(目付量:50g/m、厚さ:400μm、レーヨン含有率:70%、ポリエチレンテレフタレート含有率:30%)を敷いた後、接着剤としてスチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SBS−2;軟化点82℃、保持力850分間)を目付量9g/mで当該不織布上に塗布した。
【0112】
次に、前記ローラー型散布機の投入口に、吸水性樹脂としてポリアクリル酸部分ナトリウム中和物の架橋体(住友精化株式会社製:アクアキープ10SH−PB)を仕込んだ。一方、散布機下部のコンベアーに、前記接着剤を塗布した親水性不織布を敷いた。次いで、散布ローラーと下部コンベアーを稼動させることにより、前記ポリアクリル酸部分ナトリウム中和物の架橋体を目付量120g/mで前記接着剤を塗布した親水性不織布上に均一に積層し、積層体を得た。
【0113】
接着剤として前記SBS−2を目付量9g/mで前記と同様の方法で塗布した前記スパンレース親水性不織布で、得られた積層体の上部から挟みつけた後、加熱温度を100℃に設定した前記ラミネート機にて熱融着させることでこれらを一体化させ、吸水シート構成体の中間物B−2を得た。
【0114】
得られた吸水シート構成体の中間物B−2を、10cm×30cmの短冊状で、長手方向が不織布の縦方向(機械方向)となるように切断した後、吸水シート構成体の中間物B−2上に、前記SBS−1を目付量4g/mで前記と同様の方法で塗布した後、その上部から得られた吸水シート構成体の中間物A−2eのエンボスが施されていない面を重ねた。次いで、加熱温度を40℃に設定した前記ラミネート機にて熱融着させることで前記吸水シート構成体の中間物A−2e及びB−2を一体化させ、吸水シート構成体を得た。
【0115】
得られた吸水シート構成体について、前記各種測定及び評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
T1:生理食塩水吸収前の吸水シート構成体厚み(mm)
T2:生理食塩水吸収後の吸水シート構成体厚み(mm)
t2:生理食塩水吸収後の吸水シート構成体におけるエンボス厚み(mm)
【0118】
【表2】
【0119】
以上の結果より、実施例の吸水シート構成体は、液体の浸透速度が速く、幅方向の液漏れが少なく、液体吸収後に型崩れしない(形態保持性に優れている)ことがわかった。
【0120】
一方、比較例においては、エンボスが施されていないもの(比較例1)、吸水シート構成体が液体を吸収して膨潤した際にエンボス深さが浅くなるもの(比較例2及び4)、及び吸水シート構成体の膨潤厚み比が小さいもの(比較例3)のいずれもが、液体の浸透速度の向上、幅方向の液漏れの防止及び型崩れといった課題を同時に満たすことができず、吸水シート構成体として劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の吸水シート構成体は、優れた液体浸透性、少ない液漏れ量、形態保持性に優れ、薄型化を達成しており、紙おむつ等に代表される吸収性物品に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0122】
1 吸水シート
2 吸収層
3 エンボス
4 親水性不織布
51 架台
52 アクリル板
53 吸収性物品
54 滴下ロート
55 天秤
56 トレイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8