特許第5728003号(P5728003)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5728003
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】縮合ビチオフェンビニレンコポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20150514BHJP
   C08L 65/00 20060101ALI20150514BHJP
   H01L 51/30 20060101ALI20150514BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20150514BHJP
   H01L 51/46 20060101ALI20150514BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   C08G61/12
   C08L65/00
   H01L29/28 250G
   H01L29/78 618B
   H01L31/04 152B
   H05B33/14 B
【請求項の数】17
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2012-513542(P2012-513542)
(86)(22)【出願日】2010年5月26日
(65)【公表番号】特表2012-528907(P2012-528907A)
(43)【公表日】2012年11月15日
(86)【国際出願番号】EP2010057225
(87)【国際公開番号】WO2010149451
(87)【国際公開日】20101229
【審査請求日】2013年5月20日
(31)【優先権主張番号】09162087.2
(32)【優先日】2009年6月5日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】10150780.4
(32)【優先日】2010年1月14日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/305,558
(32)【優先日】2010年2月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(73)【特許権者】
【識別番号】511124954
【氏名又は名称】ポリエラ、コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ミシュラ,アショキ クマル
(72)【発明者】
【氏名】バイドヤナタン,スブラマニアン
(72)【発明者】
【氏名】野口 宙幹
(72)【発明者】
【氏名】デツ,フローリーアン
(72)【発明者】
【氏名】ケーラー,ズィルケ アニカ
(72)【発明者】
【氏名】カストラー,マルセル
【審査官】 岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−176337(JP,A)
【文献】 特表2009−533878(JP,A)
【文献】 特開平07−188399(JP,A)
【文献】 特開2003−201339(JP,A)
【文献】 特開2007−112878(JP,A)
【文献】 特表2010−507233(JP,A)
【文献】 特表2011−512444(JP,A)
【文献】 KUANG-CHIEH Li et al.,Soluble Narrow-Band=gap Copolymers Containing Novel Cyclopentadithiophene Units for Organic Photovoltaic Cell Applications,journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry,2009年,Vol.47,p.2073-2092
【文献】 M.Kalaji et al.,The study of Conductiong Polymer for use as Redox Supercapacitors,Synthetic Metals,1999年,VOl.102,p.1360-1361
【文献】 Macromolecules,2009年,42,6564-71
【文献】 Gerhard Koβmehlら,Die Makromolekulare Chemie,1982年11月19日,第183巻第11号,2771-2786頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/12
C08L 65/00
H01L 29/786
H01L 51/30
H01L 51/46
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2個の繰返単位Aと、少なくとも2個の繰返単位Bを含むポリマー。
【化1】
[式中、
Xは、
−CR−、−NR−又は−SiR
であり;
Wは、ベンゾチアジアゾールであり;
Zは硫黄であり;
1、R2、R5、R6は、それぞれ独立して、H、CN、C1-30アルキル基、C2-30アルケニル基、C1-30ハロアルキル基、−L−Ar1、−L−Ar1−Ar1、−L−Ar1−R7、または−L−Ar1−Ar1−R7であり;
(但し、
Lは、それぞれ独立して、−O−、−Y−O−Y−、−S−、−S(O)−、−Y−S−Y−、−C(O)−、−NRcC(O)−、−NRc−、−SiRc2、−Y−[SiRc2]−Y−、2価のC1-30アルキル基、2価のC1-30アルケニル基、2価のC1-30ハロアルキル基、または共有結合であり;
式中、
cは、それぞれ、H、C1-20アルキル基、または−Y−C6-14アリール基であり;
Ar1は、それぞれ独立して、C6-14アリール基または5〜14員環ヘテロアリール基であり、それぞれ、ハロゲン、−CN、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、及びC1-6ハロアルキル基から選ばれる1〜5個の置換基で必要に応じて置換されており;
7は、それぞれ独立して、C1-20アルキル基、C2-20アルケニル基、C1-20ハロアルキル基、C1-20アルコキシ基、−L’−Ar2、−L’−Ar2−Ar2、−L’−Ar2−R8、または−L’−Ar2−Ar2−R8であり;
式中、
L’は、それぞれ独立して、−O−、−Y−O−Y−、−S−、−S(O)−、−Y−S−Y−、−C(O)−、−NRcC(O)−、−NRc−、−SiRc2−、−Y−[SiRc2]−Y−、2価のC1-20アルキル基、2価のC1-20アルケニル基、2価のC1-20ハロアルキル基、または共有結合であり;
Ar2は、それぞれ独立して、C6-14アリール基または5〜14員環ヘテロアリール基であり、それぞれ、ハロゲン、−CN、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、及びC1-6ハロアルキル基から選ばれる1〜5個の置換基で必要に応じて置換されており;そして
8は、それぞれ、C1-20アルキル基、C2-20アルケニル基、C1-20ハロアルキル基、またはC1-20アルコキシ基であり;
Yは、それぞれ独立して、2価のC1-6アルキル基、2価のC1-6ハロアルキル基、または共有結合である。)
3、R4は、それぞれ独立して、H、CN、C1-30アルキル基、C2-30アルケニル基、C1-30ハロアルキル基、または−L−R9であり;
(但し、
Lは、それぞれ独立して、−O−、−Y−O−Y−、−S−、−S(O)−、−Y−S−Y−、−C(O)−、−NRc'C(O)−、−NRc'−、2価のC1-30アルキル基、2価のC1-30アルケニル基、2価のC1-30ハロアルキル基、または共有結合であり;
式中、
c'は、それぞれ、H、C1-20アルキル基であり、
9は、それぞれ独立して、C1-20アルキル基、C2-20アルケニル基、C1-20ハロアルキル基であり;
Yは、それぞれ独立して、2価のC1-6アルキル基、2価のC1-6ハロアルキル基、または共有結合である。)
cは1である。]
【請求項2】
返単位AとBがランダムの順序又は交互の順序に存在し、繰返単位AとBの数が2〜5000である請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記ポリマーが、一般式(I)のポリマーである請求項1に記載のポリマー。
【化4】
(式中、Z、X、Wc、R1、R2、R3及びR4は、請求項1の定義どおりであり、
は1である。)
【請求項4】
5とR6が、C1-30アルキル、C1-30ハロアルキルまたはC2-30アルケニル基である請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項5】
1、R2、R3及びR4が水素である請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項6】
XがN(R5)またはSi(R56)である請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項7】
前記繰返単位Aの数が、2〜5000の整数である請求項に記載のポリマー。
【請求項8】
前記繰返単位が次のものから選ばれる請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリマー。
【化8】
(式中、及びRは上記の定義どおりである。)
【請求項9】
液状媒体中に溶解または分散した一種以上の請求項1〜のいずれか一項に記載のポリマーを含む組成物。
【請求項10】
上記液状媒体が、水または有機溶媒と、必要に応じて粘度調整剤、洗剤、分散剤、結合剤、相溶化剤、硬化剤、開始剤、湿潤剤、消泡剤、界面活性剤、pH改質剤、殺菌剤、静菌剤から独立して選ばれる一種以上の添加物を含む請求項に記載の組成物。
【請求項11】
一種以上の請求項1〜のいずれか一項に記載のポリマーを含む電子装置、光学機器または光電子装置。
【請求項12】
一種以上の請求項1〜のいずれか一項に記載のポリマーを含む薄膜半導体。
【請求項13】
請求項12に記載の薄膜半導体を含む電界効果トランジスタ装置。
【請求項14】
前記電界効果トランジスタが、トップゲート・ボトムコンタクト構造、ボトムゲート・トップコンタクト構造、トップゲート・トップコンタクト構造、及びボトムゲート・ボトムコンタクト構造から選ばれる構造をもつ請求項13に記載の電界効果トランジスタ装置。
【請求項15】
誘電体材料を含み、該誘電体材料が有機誘電体材料、無機誘電体材料またはハイブリッド有機/無機の誘電体材料を含む請求項13又は14に記載の電界効果トランジスタ装置。
【請求項16】
請求項12に記載の薄膜半導体を含む光起電装置。
【請求項17】
請求項12に記載の薄膜半導体を含む有機発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縮合ビチオフェンビニレンポリマー、薄膜半導体、および該ポリマーを含む電子装置、光学装置および光電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子時代の幕開け以来、エレクトロニクスやマイクロエレクトロニクスの主たる構成要素は、無機電極と絶縁体と半導体とを基にする電界効果トランジスタ(FET)であった。これらの材料は、信頼性が高く高度に効率的であることがわかっており、ムーアの法則に従って性能が向上している。最近、電子回路中の能動材料と受動材料の両方としての有機材料が開発された。分子材料や高分子材料系の有機FET(OFET)は、従来のケイ素技術に競合するのではなく、特殊分野で、例えば低価格ラジオ波技術や、センサー、発光など、またディスプレイ装置中の画素ドライブや開閉素子などの集積光電子装置として需要がある。これらの系は、その利点のため、例えば気相/液相での加工性や、いろいろな基板(例えば、軟質プラスチック)に対する親和性や、複雑な構造への加工性などのため、広く検討されている。低コスト大面積で柔軟で軽量な装置に対して継続的な需要があるため、また無機半導体に比べてずっと低い基板温度でこれらの材料を加工するプロセスが可能であるため、この傾向がさらに強まっている。
【0003】
最も簡単でよく用いられるOFET装置の構成は、薄膜トランジスタ(TFT)構造であり、この構造では、下部にゲート(G)電極をもつ誘電体の上に有機半導体の薄膜が形成されている。接点を与える電荷注入用ドレイン−ソース(D−S)電極は、この有機フィルムの上に形成される(トップ配置)か、半導体の形成の前にFET誘電体の表面に形成される(ボトム配置)。G電極とD電極との間に電圧(VG)がかかっていない場合はS電極とD電極間の電流が小さく、装置はいわゆる「オフ」状態となる。Vgが印加されると、半導体中で誘電体層との界面に電荷が誘起される。その結果、ソース−ドレインバイアス(Vd)がかかると、S電極とD電極の間の回路に電流(Id)が流れ、トランジスタは「オン」状態となる。FET性能を評価する上で重要なパラメータは、単位電界における平均電荷キャリアードリフト速度を示す電解効果移動度(μ)であり、また「オン」状態と「オフ」状態間でのD−S電流の比率である電流オン/オフ比(Ion:Ioff)である。高性能OFETには、この電解効果移動度とオン/オフ比がともに、できる限り高いことが、例えば少なくともμが約0.1〜1cm2-1-1で、Ion:Ioffが約106であることが望ましい。
【0004】
ほとんどのOFETは、p型の蓄積モードで作動し、半導体は正孔輸送物質として作用する。ほとんどの実用的な用途には、電解誘起された電荷の移動度が、約0.01cm2/Vsより大きいことが必要である。高性能を達成するには、有機半導体は、注入と電流容量の両方に関係する厳格な条件を満たす必要がある。特に(i)材料のHOMO/LUMOエネルギーが、実用的な電圧で正孔/電子注入をするのに好適である必要がある、(ii)材料の結晶構造がフロンティア軌道の十分な重なりを可能とし(例えば、π電子の重なりとエッジ/フェイス接触)、隣接する分子間を電荷が移動できるようにする必要がある。(iii)不純物は電荷キャリアー移動度を低下する可能性があるため、この化合物が極めて純粋である必要がある。(iv)材料の共役核部を選択的に配向させて、TFT基板の面内で電荷輸送が起こる(最も効率的な電荷輸送が、分子間π−πスタッキングの方向に沿って起こる)ようにする必要がある。また、(v)結晶性の半導体のドメインが、ソース接点とドレイン接点間の領域を覆う必要があり、このためフィルムが単結晶的な構造をもつ必要がある。
【0005】
OFET中で用いられる有機p型半導体の中では、(オリゴ、ポリ)チオフェンとアセン系のものが最も検討されている。例えば、多複素環系のFETの最初の報告はポリチオフェンであり、ポリ(3−ヘキシル)チオフェンとα,ω−ジアルキルオリゴチオフェンが、それぞれ最初の高移動度ポリマーと高移動度小分子である。それ以降、π共役核部の化学修飾や環−環結合や置換様式の変更により、かなりの数の移動度の改善された半導性材料が見つかった。
【0006】
スピンコート法、スタンプ法、インクジェット印刷法などの溶液プロセスあるいはグラビア印刷やオフセット印刷などの大量印刷のコスト効率の良さを最大限に利用するためには、材料として高分子有機半導体が望ましい。ポリチオフェンの中では、可溶性の位置規則性ポリチオフェン、例えばポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)、またはポリ(3,3’”−ジドデシルクォーテルチオフェン)、ポリ(2,5−ビス−(3−ドデシルチオフェン−2−イル)−チエノ−(3,2−b)チオフェン、ポリ(4,8−ジドデシル−2,6−ビス−(3−メチル−チオフェン−2−イル)−ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン)とその誘導体が、高い電荷キャリアー移動度を持つためOTFT用途に有望である。例えば、Ong、B. S. et af. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 3378−3379; McCulloch、I. et al. Nat. Mater. 2006, 5, 328−333、およびPan、H. et al. Adv.Fund Mater. 2007, 17, 3574−3579を参照。
【0007】
最新の高性能半導体のもう一つの欠点は、室温での汎用有機溶媒中への溶解度が低いことである。これらのポリマーは、ジクロロベンゼンなどの高沸点塩素化溶媒のみに充分可溶であり、時には高温でのみ可溶である。
【0008】
太陽電池中の半導性材料に対する重要な要件は、大部分の太陽光を吸収できることである。有機半導性材料のほとんどは、かなり大きなバンドギャップをもつが、これらの材料の吸収バンドギャップは、太陽スペクトルの大部分を吸収するには狭すぎる。この電磁スペトクルの可視赤色領域と近IR領域にまで達する光を吸収して広い吸収バンド幅を持つ半導性材料をもつことが望ましい。
【0009】
半導性ポリマーの最初の報告の中では、ポリ(パラ−フェニレンビニレン)(PPV)とその誘導体が、有機発光ダイオード(OLED)中の活性物質として用いられている。例えば、Burroughes、J. H. et al. Nature 1990, 347, 539−541、及びKraft, A. et al. Angew. Chem. Int. Ed. 1998, 37, 402−428を参照。PPVは、比較的大きなバンドギャップを持ち、小さな正孔移動度を持つ。このため、PTVとその誘導体はOTFT用途に用いられている。例えば、Fuchigami, H. T. et al. Appl. Phys. Lett. 1993, 63, 1372 ; Prins, P. et. al. Adv. Mater. 2005, 17, 718; Gillissen S. et al., Synth. Met. 2003, 135−136, 255、およびYamada, S. J. Chem. Soc、Chem. Commun. 1987, 1448を参照。
【0010】
US6,645,401には、ジチエノチオフェン繰返環単位とビニレンまたはアセチレン繰り返し単位とからなる共役型ポリマーで、そのジチエノチオフェンが一個または二個のハロゲン、アリール、ヘテロアリール、または直鎖、分岐状または環状アルキル基で置換されとおり、そのビニレン基が非置換であるか、FとClとCNから選ばれる一個または二個の基で置換されているものが開示されている。これらのポリマーは、光学材料や電子材料、半導体材料として、特に電界効果トランジスタ中の電荷輸送材としてまた太陽電池やセンサー材料として有用であるといわれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、上記のような最新技術の不足点や欠点を補うことのできる有機半導体材料やそれに関連する組成物、複合物及び/又は装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、半導性活性をもつポリマーとこれらのポリマーから作られた半導体材料を提供する。本発明のポリマーは、繰返単位Aと、必要により繰返単位Bを含む:
【0013】
【化1】
[式中、
Zは、S、Se、N−R、Oであり;
Xは、
【0014】
【化2】
であり;
Dは、O、C(CN)2、CR45であり;
Eは、CR45、NR4、O、Sであり;
X’は、
【0015】
【化3】
であり、
Wは、それぞれ独立して、必要に応じて1〜4個のRa基で置換された単環基または多環基であり;
(但し、
aは、それぞれ独立して、a)ハロゲン、b)−CN、c)−NO2、d)オキソ、e)−OH、f)=C(Rb2、g)C1-20アルキル基、h)C2-20アルケニル基、i)C2-20アルキニル基、j)C1-20アルコキシ基、k)C1-20アルキルチオ基、l)C1-20ハロアルキル基、m)−Y−C3-10シクロアルキル基、n)−Y−C6-14アリール基、o)−Y−3〜12員環シクロヘテロアルキル基、またはp)−Y−5〜14員環ヘテロアリール基であり、式中、上記のC1-20アルキル基、C2-20アルケニル基、C2-20アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C6-14アリールまたはハロアリール基、3〜12員環シクロヘテロアルキル基、及び5〜14員環ヘテロアリール基のそれぞれは、必要に応じて1〜4個のRb基で置換されており;
bは、それぞれ独立して、a)ハロゲン、b)−CN、c)−NO2、d)オキソ、e)−OH、f)−NH2、g)−NH(C1-20アルキル)、h)−N(C1-20アルキル)2、i)−N(C1-20アルキル)−C6-14アリール、j)−N(C6-14アリール)2、k)−S(O)mH、l)−S(O)m−C1-20アルキル、m)−S(O)2OH、n)−S(O)m−OC1-20アルキル、o)−S(O)m−OC6-14アリール、p)−CHO、q)−C(O)−C1-20アルキル、r)−C(O)−C6-14アリール、s)−C(O)OH、t)−C(O)−OC1-20アルキル、u)−C(O)−OC6-14アリール、v)−C(O)NH2、w)−C(O)NH−C1-20アルキル、x)−C(O)N(C1-20アルキル)2、y)−C(O)NH−C6-14アリール、z)−C(O)N(C1-20アルキル)−C6-14アリール、aa)−C(O)N(C6-14アリール)2、ab)−C(S)NH2、ac)−C(S)NH−C1-20アルキル、ad)−C(S)N(C1-20アルキル)2、ae)−C(S)N(C6-14アリール)2、af)−C(S)N(C1-20アルキル)−C6-14アリール、ag)−C(S)NH−C6-14アリール、ah)−S(O)mNH2、ai)−S(O)mNH(C1-20アルキル)、aj)−S(O)mN(C1-20アルキル)2、ak)−S(O)mNH(C6-14アリール)、al)−S(O)mN(C1-20アルキル)−C6-14アリール、am)−S(O)mN(C6-14アリール)2、an)SiH3、ao)SiH(C1-20アルキル)2、ap)SiH2(C1-20アルキル)、ar)−Si(C1-20アルキル)3、as)C1-20アルキル基、at)C2-20アルケニル基、au)C2-20アルキニル基、av)C1-20アルコキシ基、aw)C1-20アルキルチオ基、ax)C1-20ハロアルキル基、ay)C3-10シクロアルキル基、az)C6-14アリールまたはハロアリール基、ba)3〜12員環シクロヘテロアルキル基、またはbb)5〜14員環ヘテロアリール基であり;
Yは、それぞれ独立して、2価のC1-6アルキル基、2価のC1-6ハロアルキル基、または共有結合であり;そして
mは、それぞれ独立して、0、1または2である。)
R、R1、R2、R5、R6は、それぞれ独立して、H、CN、C1-30アルキル基、C2-30アルケニル基、C1-30ハロアルキル基、−L−Ar1、−L−Ar1−Ar1、−L−Ar1−R7、または−L−Ar1−Ar1−R7であり;
(但し、
Lは、それぞれ独立して、−O−、−Y−O−Y−、−S−、−S(O)−、−Y−S−Y−、−C(O)−、−NRcC(O)−、−NRc−、−SiRc2、−Y−[SiRc2]−Y−、2価のC1-30アルキル基、2価のC1-30アルケニル基、2価のC1-30ハロアルキル基、または共有結合であり;
式中、
cは、それぞれ、H、C1-20アルキル基、または−Y−C6-14アリール基であり;
Ar1は、それぞれ独立して、C6-14アリール基または5〜14員環ヘテロアリール基であり、それぞれ、ハロゲン、−CN、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、及びC1-6ハロアルキル基から選ばれる1〜5個の置換基で必要に応じて置換されており;
7は、それぞれ独立して、C1-20アルキル基、C2-20アルケニル基、C1-20ハロアルキル基、C1-20アルコキシ基、−L’−Ar2、−L’−Ar2−Ar2、−L’−Ar2−R8、または−L’−Ar2−Ar2−R8であり;
式中、
L’は、それぞれ独立して、−O−、−Y−O−Y−、−S−、−S(O)−、−Y−S−Y−、−C(O)−、−NRcC(O)−、−NRc−、−SiRc2−、−Y−[SiRc2]−Y−、2価のC1-20アルキル基、2価のC1-20アルケニル基、2価のC1-20ハロアルキル基、または共有結合であり;
Ar2は、それぞれ独立して、C6-14アリール基または5〜14員環ヘテロアリール基であり、それぞれ、ハロゲン、−CN、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、及びC1-6ハロアルキル基から選ばれる1〜5個の置換基で必要に応じて置換されており;そして
8は、それぞれ、C1-20アルキル基、C2-20アルケニル基、C1-20ハロアルキル基、またはC1-20アルコキシ基であり;
Yは、それぞれ独立して、2価のC1-6アルキル基、2価のC1-6ハロアルキル基、または共有結合である。)
3、R4は、それぞれ独立して、H、CN、C1-30アルキル基、C2-30アルケニル基、C1-30ハロアルキル基、または−L−R9であり;
(但し、
Lは、それぞれ独立して、−O−、−Y−O−Y−、−S−、−S(O)−、−Y−S−Y−、−C(O)−、−NRc'C(O)−、−NRc'−、2価のC1-30アルキル基、2価のC1-30アルケニル基、2価のC1-30ハロアルキル基、または共有結合であり;
式中、
c'は、それぞれ、H、C1-20アルキル基であり、
9は、それぞれ独立して、C1-20アルキル基、C2-20アルケニル基、C1-20ハロアルキル基であり;
Yは、それぞれ独立して、2価のC1-6アルキル基、2価のC1-6ハロアルキル基、または共有結合である。)
そして、
cは1〜6である。]
【発明を実施するための形態】
【0016】
ポリマー主鎖中にビニレン結合を導入すると、バンドギャップが小さくなり、吸光スペクトルが広がることが明らかとなった。また、チオフェン単位の架橋によりポリマー鎖が平たくなると、吸収極大のレッドシフトが起こり、分子間電荷輸送がよくなる。
【0017】
いくつかの実施様態においては、繰返単位A中のZはSである。いくつかの実施様態においては、繰返単位A中のXは、N(R5)またはSi(R56)である。多くの実施様態においては、R5とR6は、C1-30アルキルまたはC2-30アルケニル基である。いくつかの好ましい実施様態においては、R1、R2、R3及びR4が水素である。
【0018】
多くの実施様態においては、R、R1、R2、R5、R6は、独立して、H、CN、C1-30アルキル基、C2-30アルケニル基、またはC1-30ハロアルキル基である。多くの実施様態においては、R3とR4は、独立して、H、CN、C1-30アルキル基、C2-30アルケニル基、またはC1-30ハロアルキル基である。
【0019】
いくつかの好ましい実施様態においては、R、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、独立して、H、CN、C1-30アルキル基、C2-30アルケニル基、C1-30ハロアルキル基から選ばれる。
【0020】
いくつかの好ましい実施様態においては、R5とR6は、C1-30アルキルまたはC1-30ハロアルキルまたはC2-30アルケニル基である。いくつかの他の好ましい実施様態においては、R1、R2、R3、R4が水素である。いくつかの特定の実施様態においては、R5とR6が、C1-30アルキルまたはC1-30ハロアルキルまたはC2-30アルケニル基であり、R1、R2、R3及びR4が水素である。
【0021】
いくつかの実施様態においては、繰返単位A中のZはSである。いくつかの実施様態においては、繰返単位A中のXは、N(R5)またはSi(R56)である。いくつかの特定の実施様態においては、繰返単位A中のZはSで、XはN(R5)またはSi(R56)である。
【0022】
いくつかの特定の実施様態においては、単位A中のZはSであり、XはN(R5)またはSi(R56)であり、R5とR6はC1-30アルキル、C1-30ハロアルキルまたはC2-30アルケニル基であり、R1、R2、R3及びR4は水素である。
【0023】
いくつかの実施様態においては、本発明のポリマーは、繰返単位Aを含むホモポリマーである。いくつかの実施様態においては、本発明のポリマーは、繰返単位Aと繰返単位Bとを含むコポリマーである。繰返単位Aと繰返単位Bは、ランダムに存在していても(ランダムコポリマー)、交互に存在していても(交互コポリマー)よい。ランダムコポリマーの場合、A:Bのモル比は、一般的には0.2:0.8〜0.8:0.2であり、好ましくは0.3:0.7〜0.7:0.3である。
【0024】
モノマー繰返単位Aまたはコモノマー繰返単位AとBの平均数nは、通常2〜5000である。nは18〜5000であることが好ましい。
【0025】
いくつかの実施様態においては、本発明のポリマーはホモポリマーまたは一般式(I)の交互コポリマーである。
【0026】
【化4】
(式中、Z、X、Wc、R1、R2、R3、R4は、上記の定義どおりであり、
xは0または1であり、
nは1より大きな整数である。)
本発明のポリマーは、本明細書中では、ポリマーまたはコポリマーと呼ぶこととする。また、他の半導体系の装置での利用のために、これらのポリマーが他の部品と共に用いられてもよい。本発明のポリマーは、p型またはn型半導体材料の製造に用いることができ、またこれらの半導体材料は、今度は、いろいろな有機電子器具や構造物、装置の製造に、具体的には電界効果トランジスタやユニポーラ回路、相補回路、光起電装置、発光素子の製造に使用できる。
【0027】
本発明のポリマーは、半導体的な挙動を示すことができ、具体的には、電解効果装置中で高いキャリア移動度及び/又は優れた電流変調特性、また光起電装置中での光吸収/電荷分離を示すことができる。同様に、他の有機半導体系装置、例えばOPVやOLETやOLEDを、本明細書に記載の高分子材料を用いて効率的に製造することが可能である。また、本ポリマーは、溶液加工性、高い移動度及び/又は巾広い吸光スペクトルなどの特定の加工上の利点をもつことができる。
【0028】
本発明はまた、このようなポリマーや半導体材料の、また本明細書に開示のポリマーや半導体材料を含むいろいろな組成物や複合物、装置の製造方法を提供する。
【0029】
上記のまた他の本発明の特徴や利点は、以下の図や説明、請求の範囲からより一層明らかとなろう。
【0030】
以下に述べる図は説明を目的とするものである。これらの図は、決して本発明の範囲を減縮させたり制限することを意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1に、ポリ(ジチエノシロールビニレン)P3とポリ(ジチエノピロール)P4と比較用のポリ(ビチオフェンビニレン)P5の希薄溶液のUV−可視スペクトルを示す。吸光度(縦軸)を波長(nm、横軸)に対してプロットしている。
図2図2は、四種の異なる薄膜トランジスタの構成:a)ボトムゲート・トップコンタクト、b)ボトムゲート・ボトムコンタクト、c)トップゲート・ボトムコンタクト、及びd)トップゲート・トップコンタクトを示し、いずれの構成も、本発明のポリマーを利用することができる。
図3図3には、実施例2F中で用いた、ゲート接点1と誘電体層2、ポリマー半導体層3、基材4、ドレイン接点5、ソース接点6からなるトランジスタ構造を示す。
図4図4には、ゲート接点1と、誘電体層2、ポリマー半導体層3、ドレイン接触5、ソース接点6とからなる実施例2A〜2Eで用いたトランジスタ構造を示す。
図5図5には、ボトムゲート・ボトムコンタクト(BGBC)構成をもつポリ(ジチエノシロールビニレン)系のトランジスタで、その活性層が200℃で熱処理されたものでの、例示の電子移動図を示す。ソースドレイン電流(Amp、縦軸)をゲート電圧(V、横軸)に対してプロットした。
図6図6には、ボトムゲート・ボトムコンタクト(BGBC)構成のポリ(ジチエノピロールビニレン)系トランジスタで、その活性層が125℃で熱処理されたものでの、例示の電子移動図を示す。ソースドレイン電流(Amp、縦軸)をゲート電圧(V、横軸)に対してプロットした。
図7図7には、トップゲート・ボトムコンタクト(TGBC)構成のポリ(ジチエノシロールビニレン)系トランジスタで、その活性層が230℃で熱処理されたものでの、例示の電子移動図を示す。ソースドレイン電流(Amp、縦軸)をゲート電圧(V、横軸)に対してプロットした。
【0032】
表1に、本発明の代表的なポリマーを含むTFTの構造、いろいろな成分用の材料、作製方法をまとめた。
【0033】
本発明は、縮合ビチオフェンビニレンポリマーから製造される半導体材料に関する。本発明はまた、これらのコポリマーや半導体材料の製造方法、またこのようなコポリマーや半導体材料を含む組成物や複合物、材料、部品、構造、装置の製造方法に関する。
【0034】
本明細書においては、組成物が特異な成分を有する、含む、あるいは含有すると記載されている、あるいはプロセスが特異的な加工段階を有する、含む、あるいは含有すると記載されているが、これは、本発明の組成物はまた、上記の成分からなっているかこれらから実質的になっていると、あるいは本発明のプロセスはまた、上記の加工工程からなっているかこれらから実質的になっていると考える。
【0035】
本明細書においては、「p型半導体材料」または「p型半導体」は、主たる荷電キャリアとして空孔をもつ半導性材料、例えば有機半導性材料をいう。いくつかの実施様態においては、p型半導体は、支持体上に形成されると、約10-5cm2/Vsを超える正孔移動度を与えることがある。電解効果装置の場合、p型半導体材料はまた、約1000を超える電流オン/オフ比を示す必要がある。
【0036】
本明細書においては、「n型半導体材料」または「n型半導体」は、主たる荷電キャリアとして電子をもつ半導性材料、例えば有機半導性材料をいう。いくつかの実施様態においては、支持体上に形成されると、n型半導体は約10-5cm2/Vsを超える電子移動度を与える。電界効果装置の場合、n型半導体材料の示す電流オン/オフ比が約1000より大きい必要がある。
【0037】
本明細書においては、「溶液処理可能な」は、スピンコートや印刷(例えば、インクジェット印刷、グラビア印刷、オフセット印刷)、スプレーコート、エレクトロスプレーコート、ドロップキャスト、浸漬塗装、ブレード塗布などのいろいろな液相プロセスで使用可能な化合物、材料、または組成物をさす。
【0038】
本明細書においては、「縮合環」または「縮合環基」は、少なくとも2個の環をもつ多環系であって、その環の少なくとも一個が芳香族で、この芳香族環(炭素環式または複素環式)が少なくとも一個の他の環(芳香族または非芳香族であっても、炭素環式または複素環式であってもよい)と結合を有しているものをいう。
【0039】
本明細書においては、「環状の基」は、1個以上の(例えば、1−6)炭素環式または複素環式環を含みうる。環状の基が多環式の基である実施様態においては、この多環系は、相互に縮合した(即ち、共通の結合を共有する)及び/又はスピロ原子で相互に連結された一個以上の環をもつことができる。この環状の基は、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基であり、上述のように必要に応じて置換されていてもよい。
【0040】
本明細書においては、「ハロ」または「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードをさす。
【0041】
本明細書においては、「アルキル」は、直鎖または分岐状の飽和炭化水素基をさす。アルキル基の例としては、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(例えば、n−プロピルとイソプロピル)、ブチル(例えば、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル)、ペンチル基(例えば、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)などが挙げられる。いろいろな実施様態において、アルキル基は、1〜20個の炭素原子をもち、即ち、C1-20アルキル基である。いくつかの実施様態においては、アルキル基が1〜6個の炭素原子をもつことができ、「低級アルキル基」とよぶ。低級アルキル基の例としては、メチルやエチル、プロピル(例えば、n−プロピルやiso−プロピル)、ブチル基(例えば、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル)があげられる。いくつかの実施様態においては、本明細書に記載のようにアルキル基が置換されていてもよい。アルキル基は一般に他のアルキル基またはアルケニルまたはアルキニル基で置換されていない。
【0042】
本明細書においては、「ハロアルキル」は、一個以上のハロゲン置換基を有するアルキル基をさす。ハロアルキル基の例としては、CF3や、C25、CHF2、CH2F、CCl3、CHCl2、CH2Cl、C2Cl5等があげられる。ペルハロアルキル基、即ちすべての水素原子がハロゲン原子で置換されたアルキル基(例えば、CF3やC25)も、「ハロアルキル」の定義に含まれる。例えば、C1-20ハロアルキル基は、−Cm2t−または−Cm2m-tt−の化学式をとることができる。式中で、XはF、Cl、Br、またはIであり、mは1〜20の範囲の整数であり、tは0〜40の範囲の整数であり、ただし、mは2t以下である。ペルハロアルキル基でないハロアルキル基は、本明細書に記載のように、必要に応じて置換されていてもよい。
【0043】
本明細書においては、「アリールアルキル」は、−アルキル−アリール基を意味し、アリールアルキル基は、アルキル基を経由して特定の化学構造に共有結合している。アリールアルキル基は、−Y−C6-14アリール基の定義に含まれ、Yは本明細書の定義どおりである。アリールアルキル基の一例が、ベンジル基(−CH2−C65)である。アリールアルキル基は、必要に応じて置換されていてもよく、即ち、そのアリール基及び/又はアルキル基は、本明細書に記載のように置換されていてもよい。
【0044】
本明細書においては、「アルケニル」は、一個以上の炭素−炭素二重結合を有する直鎖または分岐状のアルキル基をさす。アルケニル基の例としては、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル基等があげられる。この一個以上の炭素−炭素二重結合は、内部にあっても(2−ブテンのように)末端に合っても(1−ブテンのように)よい。いろいろな実施様態において、アルケニル基は2〜20個の炭素原子をもつことができ、即ちC2-20アルケニル基である。いくつかの実施様態においては、アルケニル基が、本明細書に記載のように置換されていてもよい。アルケニル基は、一般的には他のアルケニル基またはアルキルまたはアルキニル基で置換されていない。
【0045】
本明細書においては、「アルキニル」は、一個以上の炭素−炭素三重結合をもつ直鎖または分岐状のアルキル基をさす。アルキニル基の例としては、エチニルやプロピニル、ブチニル、ペンチニル等があげられる。この一個以上の炭素−炭素三重結合は、内部にあっても(2−ブチンのように)、末端にあっても(1−ブチンのように)よい。いろいろな実施様態においては、アルキニル基が2〜20個の炭素原子をもつことができ、即ちC2-20アルキニル基である。いくつかの実施様態においては、アルキニル基は、本明細書に記載のように置換されていてもよい。アルキニル基は、一般的には他のアルキニル基またはアルキルまたはアルケニル基で置換されていない。
【0046】
本明細書においては、「シクロアルキル」は、環状のアルキル、アルケニル、アルキニル基を含む非芳香族炭素環基をさす。シクロアルキル基は、単環式(例えば、シクロヘキシル)であっても、多環式(例えば、縮合環、架橋環及び/又はスピロ環系を含む)であってもよく、その炭素原子は、その環系の内部または外部に位置している。シクロアルキル基のいずれか適当な環位置が、特定の化学構造と共有結合していてもよい。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピルやシクロプロピルメチル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、シクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタトリエニル、ノルボルニル、ノルピニル、ノルカリル、アダマンチル、スピロ[4.5]デカニル基、さらにはその同族体や異性体等があげられる。本明細書に開示されているように、いくつかの実施様態においては、シクロアルキル基は置換されていてもよい。
【0047】
本明細書で用いる「ヘテロ原子」は、炭素または水素以外のいずれかの元素の原子であり、例えば、窒素や酸素、ケイ素、硫黄、リン、セレンがあげられる。
【0048】
本明細書で用いる「シクロヘテロアルキル」は、OとNとSから選ばれる少なくとも一種の環ヘテロ原子と、必要に応じて一個以上の二重または三重結合を含む非芳香族シクロアルキル基である。シクロヘテロアルキル環中の一個以上のNまたはS原子は酸化されていてもよい(例えば、モルホリンN−オキシド、チオモルフォリンS−オキシド、チオモルフォリン、S−ジオキシド)。いくつかの実施様態においては、シクロヘテロアルキル基の窒素原子は、本明細書に記載のように、置換基をもつことででき、例えば、水素原子、アルキル基、または他の置換基をもつことができる。シクロヘテロアルキル基は、一個以上のオキソ基をもつことができ、例えばピペリドン、オキサゾリジノン、ピリミジン−2,4(1H,3H)−ジオン、ピリジン−2(1H)−オン等があげられる。シクロヘテロアルキル基の例としては、特に、モルホリン、チオモルフォリン、ピラン、イミダゾリジン、イミダゾリン、オキサゾリジン、ピラゾリジン、ピラゾリン、ピロリジン、ピロリン、テトラヒドロフラン、テトラハイドロチオフェン、ピペリジン、ピペラジン等があげられる。いくつかの実施様態においては、シクロヘテロアルキル基は、本明細書に記載のように置換されていてもよい。
【0049】
本明細書においては、「アリール」は、単環式の芳香族炭化水素環系、または2個以上の芳香族炭化水素環が縮合した(即ち、共通の結合を共有する)、あるいは少なくとも一個の芳香族単環式炭化水素環が一個以上のシクロアルキル及び/又はシクロヘテロアルキル環に縮合した多環系をさす。アリール基は、その環系中に6〜30個の炭素原子をもち、複数の縮合環をもつこともできる。いくつかの実施様態においては、多環式アリール基は、8〜14個の炭素原子をもつことができる。このアリール基のいずれか適当な環位置が、上記の特定の化学構造に共有結合していてもよい。芳香族炭素環のみを有するアリール基の例としては、フェニル、1−ナフチル(二環式)、2−ナフチル(二環式)、アントラセニル(三環式)、フェナンスレニル(三環式)などの基があげられる。少なくとも一個の芳香族炭素環が一個以上のシクロアルキル及び/又はシクロヘテロアルキル環に縮合している環式の環系の例としては、特に、シクロペンタンのベンゾ誘導体(即ち、インダニル基、即ち5,6−二環式シクロアルキル/芳香族環系)、シクロヘキサン(即ち、テトラヒドロナフチル基、即ち6,6−二環式シクロアルキル/芳香族環系)、イミダゾリン(即ち、ベンズイミダゾリニル基、即ち5,6−二環式シクロヘテロアルキル/芳香族環系)、およびピラン(即ち、クロメニル基、即ち6,6−二環式シクロヘテロアルキル/芳香族環系)があげられる。アリール基の他の例としては、ベンゾジオキサニル、ベンゾジオキソリル、クロマニル、インドリニル基等があげられる。いくつかの実施様態では、アリール基が、本明細書に記載のように置換されていてもよい。いくつかの実施様態においては、アリール基が一個以上のハロゲン置換基をもつことができ、これを「ハロアリール」基とよぶ。ペルハロアリール基、即ちその水素原子のすべてがハロゲン原子で置換されたアリール基(例えば、−C65)も、「ハロアリール」の定義に含まれる。特定の実施様態においては、アリール基は他のアリール基で置換されており、ビアリール基とよぶ。このビアリール基中の各アリール基は、本明細書に記載のように置換されていてもよい。
【0050】
本明細書においては、「ヘテロアリール」は、酸素(O)と窒素(N)、硫黄(S)、セレン(Se)、ヒ素(As)から選ばれる少なくとも1個のヘテロ原子を含む芳香族単環系、または環系に存在する少なくとも一個の環が芳香族であり少なくとも1個の環ヘテロ原子をもつ多環式の環系をいう。多環状のヘテロアリール基は、相互に縮合した2つ以上のヘテロアリール環と一個以上の芳香族炭素環、非芳香族炭素環、及び/又は非芳香族シクロヘテロアルキル環に縮合した単環状のヘテロアリール環を含む。ヘテロアリール基は、全体として、例えば5〜14個の環原子と1〜5個の環ヘテロ原子をもつことができる。このヘテロアリール基は、安定な構造を与えるいずれかのヘテロ原子に結合していてもよく、炭素原子で上記特定の化学構造に結合していてもよい。一般的には、ヘテロアリール環は、O−O、S−S、またはS−O結合を含まない。しかしながら、ヘテロアリール基中の一個以上のNまたはS原子が酸化されていてもよい(例えば、ピリジンN−オキシド、チオフェンS−オキシド、チオフェンS,S−ジオキシド)。ヘテロアリール基の例としては、以下に示す5員環単環式と5〜6二環式環系があげられる。
【0051】
【化5】
【0052】
式中、Tは、O、S、NH、N−アルキル、N−アリール、またはN−(アリールアルキル)(例えば、N−ベンジル)である。このようなヘテロアリール環の例としては、ピロリル、フリル、チエニル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、キノリル、2−メチルキノリル、イソキノリル、キノキサリル、キナゾリルベンゾトリアゾリルベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズオキサジアゾリル、ベンズオキサゾリル、シンノリニル、1H−インダゾリル、2H−インダゾリル、インドリジニル、イソベンゾフリル、ナフチリジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、オキサゾロピリジニル、チアゾロピリジニル、イミダゾピリジニル、フロピリジニル、チエノ−ビリジニル、ピリドピリミジニル、ピリドピラジニル、ピリドピリダジニル、チエノチアゾリル、チエノキサゾリル、チエノイミダゾリル基等があげられる。ヘテロアリール基の他の例としては、4,5,6,7−テトラヒドロインドリル、テトラヒドロキノリニル、ベンゾチエノピリジニル、ベンゾフロピリジニル基等があげられる。いくつかの実施様態においては、ヘテロアリール基が、本明細書に記載のように置換されていてもよい。
【0053】
本明細書で用いる「可溶化基」は、ある分子中の同一位置の置換した場合、水素原子より、得られる分子をほとんどの汎用有機溶媒に溶解可能とする(同一分子と同一溶媒の組合せで)官能基をさす。可溶化基の例としては、特に限定されるのではないが、アルキル(例えば、メチル、エチル、i−プロピル、n−プロピル、i−ブチル、s−ブチル、n−ブチル、ヘキシル、2−メチルヘキシル、オクチル、3,7−ジメチルオクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル)、アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、n−プロポキシ、i−ブチロキシ、s−ブチロキシ、n−ブチロキシ、キシロキシ、2−メチルキシロキシ、オクチルオキシ、3,7−ジメチルオクチルオキシ、デシロキシ、ドデシルオキシ、テトラデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ)、チオアルキル(例えば、チオオクチル)、アルキルエーテル、チオエーテルがあげられる。
【0054】
全ての汎用の置換基を反映して、数百個の汎用置換基の電子供与性または電子吸引性が、決定され、数値化され、出版されている。電子供与性と電子吸引性の定量で最もよく使われるのは、ハメットのσ値である。水素のハメットσ値はゼロであり、他の置換基のハメットσ値は、その電子吸引性または電子供与性に直接関係して、正または負に増加する。負のハメットσ値をもつ置換基は電子供与性と考えられ、正のハメットσ値をもつものは電子吸引性と考えられる。Lange’s Handbook of Chemistry, 12th ed., McGraw Hill, 1979, Table 3−12, pp. 3−134 to 3−138を参照。ここには、多数の汎用置換基のハメットσ値がリストアップされており、本文献を本明細書の引用文献とする。
【0055】
用語「電子受容性基」は、本明細書において、「電子受容体」や「電子吸引基」と同様に用いることができるものとする。特に、「電子吸引基」(「EWG」)または「電子受容性基」または「電子受容体」は、分子中の同一位置にある場合、水素原子より大きく電子を自分自身の方に引っ張る官能基をいう。電子吸引基の例としては、以下の例に限定されないが、ハロゲンまたはハロー(例えば、F、Cl、Br、I)、−NO2、−CN、−NC、S(R02+、−N(R03+、−SO3H、−SO20、−SO30、−SO2NHR0、−SO2N(R02、−COOH、−COR0、−COOR0、−CONHR0、−CON(R02、C1-40ハロアルキル基、C6-14アリール基、5〜14員環の電子欠乏性ヘテロアリール基があげられる。なお、式中、R0は、C1-20アルキル基、C2-20アルケニル基、C2-20アルキニル基、C1-20ハロアルキル基、C1-20アルコキシ基、C6-14アリール基、C3-14シクロアルキル基、3〜14員環シクロヘテロアルキル基、あるいは5〜14員環ヘテロアリール基であり、本明細書に記載のようにそれぞれ任意に置換されていてもよい。例えば、上記C1-20アルキル基、C2-20アルケニル基、C2-20アルキニル基、C1-20ハロアルキル基、C1-20アルコキシ基、C6-14アリール基、C3-14シクロアルキル基、3〜14員環シクロヘテロアルキル基、および5〜14員環ヘテロアリール基のそれぞれは、必要に応じて1〜5個の小さな電子吸引性基、例えばFや、Cl、Br、−NO2、−CN、−NC、S(R02+、−N(R03+、−SO3H、−SO20、−SO30、−SO2NHR0、−SO2N(R02、−COOH、−COR0、−COOR0、−CONHR0、−CON(R02で置換されていてもよい。
【0056】
用語「電子供与性の基」は、本明細書において「電子供与体」と同じ意味で使用できるものとする。特に、「電子供与性の基」または「電子供与体」は、分子中の同一位置を締める場合に、水素原子よりも大きく隣接原子に電子を供与する官能基をさす。電子供与性の基の例としては、−OH、−OR0、−NH2、−NHR0、−N(R02、5〜14員環の電子に富むヘテロアリール基があげられる。なお、R0は、C1-20アルキル基、C2-20アルケニル基、C2-20アルキニル基、C6-14アリール基、またはC3-14シクロアルキル基である。
【0057】
いろいろな無置換のヘテロアリール基が、電子に富む(またはπ過剰)あるいは電子が乏しい(またはπ欠乏)と記載できる。このような分類は、各環原子の平均電子密度を、ベンゼン中の炭素原子上の平均電子密度と比較したものである。電子に富む系の例としては、一個のヘテロ原子を含む五員環ヘテロアリール基、例えばフランやピロール、チオフェン、またそのベンゾ縮合物、例えばベンゾフランやベンズピロール、ベンゾチオフェンがあげられる。電子の乏しい系の例としては、一個以上のヘテロ原子を持つ六員環ヘテロアリール基、例えばピリジンやピラジン、ピリダジン、ピリミジン、およびそのベンゾ縮合物、例えばキノリンやイソキノリン、キノキサリン、シノリン、フタラジン、ナフチリジン、キナゾリン、フェナントリジン、アクリジン、プリンがあげられる。混合複素芳香環は、環中の一個以上のヘテロ原子の種類や番号、位置によりいずれかの等級に帰属させることができる。Katritzky, A.R and Lagowski, J.M., Heterocyclic Chemistry(John Wiley & Sons, New York, 1960)を参照。
【0058】
本明細書で用いる「半結晶性ポリマー」は、溶融状態から冷却するか溶液から析出させる場合、あるいは徐冷や小さな溶媒蒸発速度などの速度論的に好ましい条件にかけられた場合、本質的に少なくとも部分的に結晶化しやすいポリマーである。この結晶化、あるいはその欠乏は、当分野の専門家により、いろいろな分析方法で、例えば示差走査熱量分析(DSC)及び/又はX線回折(XRD)で容易に確認することができる。
【0059】
本明細書で用いる「熱処理」は、半結晶性高分子膜を得るために行われる常圧または減圧/加圧下で100秒間を超える時間での膜形成後の熱処理をさし、「熱処理温度」は、この高分子膜が熱処理の間に少なくとも60秒間さらされる最高の温度をさす。いずれかの特定の理論に拘泥するのではないが、熱処理の結果、可能な場合高分子膜の結晶性が増加し、このため電界効果移動度が増加すると考えられている。結晶化度の増加はいろいろな方法で追跡可能であり、例えば付着フィルムと熱処理後のフィルムの示差走査熱分析(DSC)またはX線回折(XRD)試験を比較することにより追跡可能である。
【0060】
本明細書を通して構造が化学名で示される場合もあれば、そうでない場合もある。名称に疑義がある場合は、その構造が優先する。
【0061】
鎖間π共役と鎖間スタッキングを乱さずに溶解度を増加させるために、アルキル鎖(また、ハロアルキル基やアリールアルキル基、ヘテロアリールアルキル基などの類似基)が、チオフェン環の一つまたは両方の位置に対称的に及び/又はビニル結合に置換されていてもよい。従って、特定の実施様態においては、R1、R2、R3、R4は、独立して、直鎖又は分岐鎖のC1-20アルキル基または直鎖又は分岐鎖のC2-20アルケニル基であってもよい。例えば、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して、n−ヘキシルとn−オクチル、n−デシル、n−ドデシル、nテトラデシル、n−ヘキサデシルから選ぶことができる。特定の実施様態においては、R1とR2の少なくとも一つがHである。
【0062】
いくつかの実施様態においては、Wは、独立して、平面状の高度に共役した環状の核をもち、その環原子は交互に単結合と二重結合で共有結合している。このように核が高度に共役して平面状となっているため、π電子が非局在化し(このため、安定性が増加し、LUMOエネルギーが低下する)、分子間πスタッキングがよくなる。好適な環状の核の例としては、ベンゼンやナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ペリレン、ピレン、コロネン、フルオレン、インダセン、インデノフルオレン、テトラフェニレン、またこれらの一個以上の炭素原子がO、S、Si、Se、NまたはPなどのヘテロ原子で置換された類似体があげられる。
【0063】
いくつかの実施様態においては、Wは、必要に応じて置換された、以下のものから選ばれる単環基、二環基または複素環基である。
【0064】
【化6】
【0065】
(式中、
kとk’、I、I’、p、p’、q、u、u’、v及びv’は、独立して−S−、−O−、−CH=、=CH−、−CR10=、=CR10−、−C(O)−、−C(C(CN)2)−、−N=、=N−、−NH−、−NR10−、−SiR11=、=SiR11−、及び−SiR1111−から選ばれ;
10は、それぞれ独立して、a)ハロゲン、b)−CN、c)−NO2、d)N(Rc2、e)−ORc、f)−C(O)Rc、g)−C(O)ORc、h)−C(O)N(Rc2、i)C1-40アルキル基、j)C2-40アルケニル基、k)C2-40アルキニル基、l)C1-40アルコキシ基、m)C1-40アルキルチオ基、n)C1-40ハロアルキル基、o)−Y−C3-14シクロアルキル基、p)−Y−C6-14アリール基、q)−Y−3〜14員環シクロヘテロアルキル基、及びr)−Y−5〜14員環ヘテロアリール基から選ばれ、式中、C1-40アルキル基、C2-40アルケニル基、C2-40アルキニル基、C3-14シクロアルキル基、C6-14アリール基、3〜14員環シクロヘテロアルキル基並びにY及びRcは、本明細書の定義のとおりであり;
11は、それぞれ、独立してHまたはRcであってよく、Rcは本明細書の定義どおりであり;
rとsは、独立して−CR1111−または−C(C(CN)2)−であってよく;そして
bは、1、2、3または4である。)
【0066】
特定の実施様態においては、Wは、一個以上のチエニル、チアゾリル、またはフェニル基を含む単環基、二環基または複素環基であり、これらの基はそれぞれ、必要に応じて本明細書に記載のように置換されていてもよい。例えば、Wは、次のものから選ばれる。
【0067】
【化7】
【0068】
【化8】
【0069】
(式中、R1、R2、R5及びR6は、それぞれ互いに独立して本明細書の定義どおりである。)
【0070】
上記のいろいろなポリマーにおいて、nは2〜5000の整数である。いくつかの実施様態においては、nは18〜5000であってもよい。例えば、nは8〜4000でよく、8〜2000、8〜500、または8〜200であってよい。特定の実施様態においては、nは8〜100である。
【0071】
従って、特定の実施様態においては、本発明のポリマーは、式Iaの繰返単位を含む。
【0072】
【化9】
【0073】
(式中、X、R1、R2、R3及びR4は、本明細書の定義どおりである。)
例えば、特定の実施様態においては、本発明のポリマーは、式Ib、Ic、Id、Ie、If、Ig、Ih、li、Ij、Ik、Il及びImの一つ以上の繰返単位を含むことができる。
【0074】
【化10】
【0075】
【化11】
【0076】
他の例では、本発明のポリマーの特定の実施様態は、式Ik、Il、Im、In、Io、Ip、Iq、Ir、Is及びItの一つ以上の繰返単位を含む。
【0077】
【化12】
【0078】
【化13】
【0079】
ポリマーIa〜Itのいくつかの好ましい実施様態においては、R4、R5は、独立してH、CN、C1-30アルキル基、C2-30アルケニル基、及びC1-30ハロアルキル基から選ばれる。
【0080】
コポリマーは、下の経路1に示す方法で製造できる。
【0081】
【化14】
【0082】
(式中、
【0083】
【化15】
【0084】
TOP=トリス(o−トリル)ホスフィン
TEA=トリエチルアミン)
【0085】
ジアルデヒド2は、縮合ビチオフェン化合物1からジメチルホルムアミドの存在下で、n−BuLiで処理することにより製造できる。化合物3は、塩基としてのn−ブチルリチウムの存在下で、ジアルデヒド2とメチルトリフェニルホスホニウムアイオダイドの間の有名なウィッティヒ反応で製造できる。コポリマーP1は、ジブロモ化合物4とジビニル化合物3間のヘックカップリング反応で製造できる。ポリマー鎖の末端封鎖は、重合混合物の最終処理前に1〜10%のモノブロモまたはモノビニル芳香族または複素芳香族単位を添加して行うことができる。
【0086】
例えばコポリマーP2は、次の経路により製造できる。
【0087】
【化16】
【0088】
下の経路2に、本ポリマーの特定例を製造するためのもう一つの方法を示す。
【0089】
【化17】
【0090】
Pd2dba3=トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)
P(o−tolyl)3=トリス−o−トリルホスフィン
Bu=ブチル
【0091】
下の経路3には、本発明のランダムコポリマーの製造方法を示す。
【0092】
【化18】
【0093】
下の経路4には、本発明のポリマーの特定例の合成を示す。
【0094】
【化19】
【0095】
下の経路5には、本発明のポリマーの他の特定の実施態様の合成を示す。
【0096】
【化20】
【0097】
他の本発明のポリマーは、経路1と2と3に記載の方法に似た方法で製造可能である。あるいは、本ポリマーは、市販の出発原料、文献記載の化合物、または容易に製造可能な中間体から、当業界の熟練者には既知の標準的な合成方法や手法で製造可能である。有機分子の製造、官能基の変換や操作のための標準的な合成方法や手法が、関連する科学文献や当分野の標準的な教科書から容易に得ることができる。具体的な、あるいは好ましいプロセス条件(即ち、反応温度、時間、反応物のモル比、溶媒、圧力等)が与えられた場合でも、特記しない場合は、他のプロセス条件も使用可能であることはご理解いただけるであろう。最適の反応条件は用いる特定の反応物または溶媒により変動するが、このような条件は、当業界の熟練者により常用の最適化手法で決定可能である。本明細書に記載の化合物の製造を最適化するために、合成工程の内容と順序を変更してもよいことは、有機合成技術の熟練者にとって明らかであろう。
【0098】
本明細書に記載のプロセスは、いずれか適当な既知の方法で追跡可能である。例えば、生成物の生成は、核磁気共鳴スペクトル(NMR、例えば、1Hまたは13C)や赤外線スペクトル(IR)、吸光分光分析(例えば、UV−可視)、質量分析(MS)などの分光的な方法、あるいは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、または薄層クロマトグラフィー(TLC)などのクロマトグラフィーにより追跡可能である。
【0099】
本明細書に記載の反応あるいはプロセスは、適当な溶媒中で実施可能であり、この溶媒は有機合成技術の熟練者により容易に選択される。好適な溶媒は、通常実質的に反応物、中間体、及び/又は生成物に、反応の温度で、即ちその溶媒の凍結温度から溶媒の沸騰温度の範囲の温度で実質的に反応しない。ある反応は、単一の溶媒中で行っても、二種以上の溶媒の混合物中で行ってもよい。特定の反応工程では、特定の反応工程用に好適な溶媒を選ぶことができる。
【0100】
本発明のポリマーの例としては、次のものがあげられる。
【0101】
【化21】
【0102】
本発明のポリマーの分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて決めることができる。ポリマーP3の一つの例では、そのSECによる分子量(Mn)が1.43×104g/molであった。その多分散指数(PDI)は2.7であった。もう一つのポリマーP4の例では、SECによる分子量(Mn)が6.8×103g/mol(THF可溶)であった。その多分散指数(PDI)は1.7であった。
【0103】
本発明のポリマーは半導体材料(例えば、組成物や複合物)の製造に使用でき、これらは製造や構造、装置の製品の製造に使用できる。いくつかの実施様態においては、本明細書の一種以上のポリマーを含む半導体材料がn型の半導活性を示し、いくつかの実施様態においては、一種以上の本明細書のポリマーを含む半導体材料がp型または両極性半導活性を示す。
【0104】
本発明は、一種以上の本発明のポリマーを含む電子機器や光学機器、光電子機器を与える。いくつかの実施様態においては、本発明は、一種以上の本発明のポリマーを含む薄膜半導体とこの薄膜半導体を含む電界効果トランジスタ装置を与える。特に、この電界効果トランジスタ装置は、トップゲート・ボトムコンタクト構造とボトムゲート・トップコンタクト構造、トップゲート・トップコンタクト構造、ボトムゲート・ボトムコンタクト構造から選ばれる構造をもつ。特定の実施様態においては、この電界効果トランジスタ装置が、誘電体材料を含み、この誘電体材料は有機誘電体材料、無機誘電体材料、またはハイブリッド有機/無機誘電体材料を含んでいる。他の実施様態においては、本発明は、一種以上の本発明のポリマーを含む薄膜半導体を有する光起電装置や有機発光素子を与える。
【0105】
汎用溶媒への溶解度が比較的高いため、本発明の化合物は、薄膜半導体や電界効果装置、有機発光ダイオード(OLED)、有機光起電体、光検出器、キャパシター、センサーなどの電気装置の製造に使用する場合に、加工上の利点を与えることができる。本明細書においては、1mLの溶媒中に少なくとも0.1mgの化合物が可溶である場合、その化合物は溶媒に可溶であると考える。汎用の有機溶媒の例としては、石油エーテル;アセトニトリル;ベンゼンやトルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素;アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン;テトラヒドロフランやジオキサン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテルなどのエーテル;メタノールやエタノール、ブタノール、ソプロピルアルコールなどのアルコール;ヘキサンなどの脂肪族炭化水素;酢酸メチルや酢酸エチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル;ジクロロメタンやクロロホルム、塩化エチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化脂肪族及び芳香族炭化水素;さらにはシクロペンタノンやシクロヘキサノン、2−メチルピロリドンなどの環状溶媒があげられる。
【0106】
したがって、本発明はまた、液状媒体中に溶解または分散した一種以上の本発明のポリマーを含む組成物を提供する。この液状媒体は、水及び/又は有機溶媒を含み、必要なら独立して、粘度調整剤と洗剤、分散剤、結合剤、相溶化剤、硬化剤、開始剤、湿潤剤、消泡剤、界面活性剤、pH改質剤、殺菌剤、静菌剤から選ばれる一種以上の添加物を含む。
【0107】
有機エレクトロニクスでは、各種の溶液加工法を含むいろいろな製膜技術が用いられている。例えば、印刷エレクトロニクス技術の多くは、インクジェット印刷に注目している。
【0108】
これは、主にこの技術が、形体の位置および多層の位置合わせに対して、より大きな制御を可能とするためである。インクジェット印刷は非接触プロセスであり、この方法は、(接触印刷法と較べて)前もってマスターを作る必要がない、また吐出量の定量的な制御が可能でこのためドロップ−オンデマンド印刷が可能であるという利点を有している。しかしながら、接触印刷法は、非常に高速のロール−ロール加工に適しているという主たる利点を有している。接触印刷技術の例としては、スクリーン印刷や、グラビア、オフセット印刷、フレキソ印刷、マイクロコンタクト印刷があげられる。他の溶液加工技術としては、例えば、スピンコート法や、ドロップキャステイング、ゾーンキャステイング、浸漬塗装、ブレード塗布があげられる。
【0109】
本ポリマーは、いろいろな加工に適している。これらのポリマーを含む配合物は、グラビア印刷やフレキソ印刷、インクジェット印刷などの異なる型式の印刷技術により印刷可能で、例えばその上にピンホールの無い誘電体フィルムを形成可能な平滑で均一なフィルムを与え、結果的にすべて印字された装置の組立を可能とする。
【0110】
したがって、本発明はまた、半導体材料の製造方法を提供する。これらの方法は、ここに開示されている一種以上のポリマーが溶媒あるいは溶媒混合物などの液状媒体中に溶解または分散した組成物を製造し、その組成物を支持体上に塗布して半導体材料前駆体を与え、該半導体前駆体を加工(例えば、加熱)して、ここに開示のポリマーを含む半導体材料(例えば、薄膜半導体)を与えることからなっていてもよい。いくつかの実施様態においては、この塗布工程が、インクジェット印刷などの印刷や、いろいろな接触印刷技術(例えば、スクリーン印刷やグラビア印刷、オフセット印刷、パッド印刷、マイクロコンタクト印刷)で実施可能である。他の実施様態においては、この塗布工程を、真空蒸着、スピンコート法、ドロップ塗布、ゾーン塗布、浸漬塗布、ブレード塗布、または吹き付けにより行うことができる。
【0111】
本発明はまた、本発明の半導体材料と基板部品及び/又は誘電体部品とを含む複合物などの製品を提供する。この基板部品は、ドープ処理したケイ素、酸化インジウムすず(ITO)、ITO塗装ガラス、ITO塗装ポリイミドまたは他のプラスチック、アルミニウムまたは他の純金属品、またはポリマーまたは他の基板にこれを塗布したもの、ドープ処理したポリチオフェン等の材料から選ばれる。誘電体部品は、いろいろな酸化物(例えば、SiO2、Al23、HfO2)などの無機誘電材料;いろいろな高分子材料(例えば、U.S. Patent Application Serial Nos. 11/315,076と、60/816,952、60/861,308に記載の架橋ポリマーブレンド、その開示の全体を本明細書の引用文献とする)や自己組織化超格子/自己組織化ナノ誘電体(SAS/SAND)材料(Yoon, M−H. et al., PAWS, 102 (13): 4678−4682 (2005)に記載、その開示の全体を本明細書の引用文献とする)などの有機誘電材料;およびハイブリッド有機/無機誘電材料(U.S. Patent Application Serial No./642,504,504に記載、その開示の全体を本明細書の引用文献とする)から製造可能である。この複合物はまた、一個以上の電気接点を有していてもよい。ソース電極やドレイン電極、ゲート電極に好適な材料としては、金属(例えば、Au、Al、Ni、Cu)や透明な導電性酸化物(例えば、ITO、IZO、ZITO、GZO、GIO、GITO)、また導電性ポリマー(例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホネート)(PE−DOT:PSS)、ポリアニリン(PANI)、ポリピロール(PPy))があげられる。ここに記載の複合物の一つ以上を、いろいろな有機電子装置や光学装置、また有機薄膜トランジスタ(OTFT)、詳しくは有機電界効果トランジスタ(OFET)などの光電子装置、さらにはセンサー、太陽電池、キャパシター、補償回路(例えば、インバータ回路)、などの中で用いることができる。
【0112】
従って、本発明の一側面は、本発明の半導体材料を含む有機電界効果トランジスタの組み立て方法に関する。本発明の半導体材料は、トップゲート・トップコンタクトキャパシター構造物、トップゲート・ボトムコンタクトキャパシター構造物、ボトムゲート・トップコンタクトキャパシター構造物、ボトムゲート・ボトムコンタクトキャパシター構造物などいろいろな型式の有機電界効果トランジスタの組立に使用できる。図2に、四種の汎用のOFET構造物:(a)ボトムゲート・トップコンタクト構造物、(b)ボトムゲート・ボトムコンタクト構造物、(c)トップゲート・ボトムコンタクト構造物、(d)トップゲート・トップコンタクト構造物を示す。図2に示すように、一個のOFETは、一枚の誘電体層(例えば、図2a、2b、2c、2d中ではそれぞれ8、8’、8”、8’”として示される)と、一枚の半導体層(例えば、図2a、2b、2c、2dではそれぞれ、6、6’、6”、6’”で示される)、一枚のゲート接点(例えば、図2a、2b、2c、2dではそれぞれ、10、10’、10”、10’”で示される)、一枚の基板(例えば、図2a、2b、2c、2dではそれぞれ、12、12’、12”、12’”で示される)、およびソース接点とドレイン接点(例えば、図2a、2b、2c、2dではそれぞれ、2、2’、2”、2’”、及び4、4’、4”、4’”で示される)を含むことができる。
【0113】
本発明のポリマーが有用であるもう一つの製品は、光起電セルまたは太陽電池である。本発明のポリマーは、広い光学吸収を示す。したがって、本明細書に記載のポリマーは、光起電性セルの設計においてn型またはp型半導体(pn接合を形成する隣接するp型またはn型の半導性材料を含む)として使用できる。これらのポリマーは薄膜半導体の形であってもよく、これが支持体上に形成された薄膜半導体の複合物であってもよい。このような装置で本発明のポリマーを利用することは、熟練技術者の知識内に収まることである。
【0114】
従って、本発明のもう一つの側面は、本発明の半導体材料を含む有機電界効果トランジスタの組み立て方法に関する。本発明の半導体材料は、トップゲート・トップコンタクトキャパシター構造物、トップゲート・ボトムコンタクトキャパシター構造物、ボトムゲート・トップコンタクトキャパシター構造物、ボトムゲート・ボトムコンタクトキャパシター構造物などのいろいろな型式の有機電界効果トランジスタを組み立てるのに使用できる。
【0115】
特定の実施様態においては、OTFT装置は、SiO2を誘電体として用い、トップコンタクト構造でドープ済みのケイ素基板上に本化合物をのせて組み立てることができる。特定の実施様態においては、少なくとも本発明の化合物を含むこの活性な半導性層が、スピンコート法またはジェット印刷により形成される。トップコンタクト装置を得るには、シャドウマスクを用いて金属性接点をフィルム上にパターン状に形成することができる。
【0116】
特定の実施様態においては、本ポリマーを用いて、プラスチックフォイル上に、本ポリマーを誘電体としてトップゲート・ボトムコンタクト構造で形成して、OTFT装置を組み立てることができる。特定の実施様態においては、少なくとも本発明の化合物を含むこの活性な半導性層を、室温でまたは高温で形成することができる。他の実施様態においては、少なくとも本発明の化合物を含むこの活性な半導性層を、本明細書に記載のようにスピンコート法または印刷により形成することができる。ゲート接点やソース/ドレイン接点は、Au、他の金属、または導電性ポリマーでできていてもよく、蒸着及び/又は印刷により形成されてもよい。
【0117】
以下の実施例は、より詳細に説明して、本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0118】
実施例1:ポリマー合成
以下の実施例では、特定の本発明のポリマー及び関連する中間体の製造について述べる。
【0119】
すべての試薬は市販品であり、特記しない場合はさらに精製することなく使用した。特記しない場合は、既存のシュレンク法を用い、反応はN2下で行った。NMRスペクトルは、バリアン400MRスペクトロメータ(1H、400MHz)で記録した。ポリマーの分子量は、屈折率検出器を備えたアジレント1200シリーズ装置を用いて、ポリスチレン標準試薬と比較しながら、THF中室温で測定した。ポリマーの熱的性質は、示差走査型熱量計(DSC)(メトラートレド、DSC/823e/500/404)を用い、走査速度を10℃/分として分析した。元素分析はシンガポール国立大学で行った。
【0120】
実施例1A:ポリ(ジチエノシロールビニレン)P3の調製
化合物1は、H. Usta et al., J. Am. Chem. Soc. 2006, 128,9034−9035に報告の方法で合成した。
【0121】
【化22】
【0122】
ジチエノシロール−ビニルポリマーの合成
Pd2dba3(0.048g、0.052mmol)とP(o−tolyl)3(0.032g、0.104mmol)を100mLのRBFに添加し、3回脱気させた。次いで、ジブロモジチエノシロール5(1.00g、1.73mmol)とジスタニルビニレン6(1.05g、1.73mmol)とクロロベンゼン(58mL)を添加し、混合物を130℃で2日間攪拌した。末端封止剤をして2−ブロモチオフェンと2−トリブチルスタニルチオフェンを、2−ブロモチオフェン、次いで2時間後に2−トリブチルスタニルチオフェンの順で添加した。さらに2時間攪拌後、反応混合物を室温まで冷却した。次いで、この反応液を700mLのメタノール中に滴下し、ろ過し、次いでアセトンでソックスレー抽出(24h)し、さらに酢酸イソプロピルでソックスレー抽出(24h)した。ポリマーP3が、固形分として回収された。元素分析(計算値):C、70.10(70.53);H、7.90(8.56)。
【0123】
実施例1B:ポリ(ジチエノピロールビニレン)P4の調製
化合物4は、文献に報告されている化合物3 (Koeckelberghs, G. Tetrahedron 2005, 61, 687−691)から、以下の経路により合成できる。
【0124】
【化23】
【0125】
N−ブロモスクシンイミド(1.20g、6.76mmol)をDMF(5mL)に溶解し、攪拌下0℃で、ジチエノピロール7(1.24g、3.07mmol)のDMF(10mL)溶液に滴下した。次いで、この反応混合物を室温で1時間攪拌した。水を添加して反応を終了させた。生成物をジエチルエーテルで抽出した。有機分画は合わせて塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。減圧下で溶媒を除き、残渣をヘキサン中0.1%酢酸エチルを溶離液として用いるシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、緑がかった粘稠な油8を得た。単離収量=(1.09g、63.2%)。1H−NMR(400MHz):ppm 6.90 (s、2H)、ppm 3.94 (d、2H、J=7.4Hz)、ppm 1.91 (m、1H)ppm 1.25 (m、24H)、ppm 0.87 (m、6H)。
【0126】
化合物6は市販されている。
【0127】
【化24】
【0128】
ジチエノピロール−ビニルポリマーの合成。Pd2dba3(0.010g、0.011mmol)とP(o−tolyl)3(0.007g、0.021mmol)を100mLのRBFに添加し、3回脱気させた。次いで、ジブロモジチエノピロール8(0.20g、0.36mmol)とジスタニルビニレン6(0.22g、0.36mmol)とクロロベンゼン(20mL)とを添加し、混合物を130℃で一夜攪拌した。末端封止剤として2−ブロモチオフェンと2−トリブチルスタニルチオフェンを、2−ブロモチオフェン、次いで2時間後に2−トリブチルスタニルチオフェンの順で添加した。さらに2時間攪拌後、反応混合物を室温まで冷却した。次いで、この反応液を400mLのメタノールに滴下し、ろ過し、アセトンでソックスレー抽出した。ポリマーP4が、固形分として回収された。元素分析(計算値):C、72.58(73.01);H、7.94(8.72)。
【0129】
実施例2:UV−可視スペクトル
図1に、ポリ(ジチエノシロールビニレン)P3、ポリ(ジチエノピロール)P4とポリ(ビチオフェンビニレン)P5のUV−可視スペクトルを示す。
【0130】
【化25】
【0131】
このUV−可視吸収スペクトルから、二つのチオフェンの間に、ケイ素を架橋基として導入する(即ちポリマーP3)、あるいは窒素を導入(即ちポリマーP4)することで、ポリマーP5と較べて、新規ポリマーの極大吸収が約75nmレッドシフトすることがわかる。フィルムにおいては、このシフトが増幅され、太陽光スペクトルとの重複度が増加するため、OPV用途への光の捕集効率がよくなるものと考えられる。驚くべきことに、この極大吸収のレッドシフトは、架橋繰返単位の性質とは無関係に、即ち電気陽性元素(Si)または電気陰性元素(N)のどちらが架橋繰返単位となっても観測され、得られるポリマーP3とP4は共にP5と較べて吸収極大のレッドシフトと、バンドギャップの0.1〜0.2eVの低下を示す。
【0132】
実施例3:ランダムコポリマーP6の調製
【0133】
【化26】
【0134】
(式中、y=0.5であり、x=0.5である。)
2,7−ジブロモ−4,4−ジヘキサデシルシクロペンタジチオフェン9(150mg、0.19mmol)とジブロモベンゾチアジアゾール10(60mg、0.19mmol)とPd2dba3(10mg、0.03eq.)とP(o−tolyl)3(7mg、0.06eq.)を、RBFに添加し、三回脱気した。その後、(E)−1,2−ビス−(トリブチルスタニル)エタン11(230mg、0.38mmol)とクロロベンゼン(19mL)を添加し、この混合物を130℃で48時間攪拌した。末端封止剤として2−ブロモチオフェンと2−トリブチルスタニルチオフェンを添加した。後処理としてこのポリマー溶液をメタノール中で沈殿させて、2時間攪拌した。ポリマーをろ別し、12時間アセトンでソックスレー抽出した。さらに固体をTHFに溶解し、メタノールから沈殿させ、ろ過、乾燥させた。収量=83.92%。Mn=1.4×104×104g/mol、PDI=4.6。元素分析(計算値)C:75.45%(75.50%)、H:9.10%(9.19%)、N:2.72%(3.45%)。
【0135】
実施例4 ランダムコポリマーP7の調製
【0136】
【化27】
【0137】
(式中、yは0.7であり、xは0.3である。)
【0138】
2,7−ジブロモ−4,4−ジヘキサデシルシクロペンタジチオフェン9(200mg、0.25mmol)とジブロモベンゾチアジアゾール10(30mg、0.11mmol)とPd2dba3(10mg、0.03eq.)とP(o−tolyl)3(7mg、0.06eq.)とをRBFに添加し、三回脱気した。次いで、(E)−1,2−ビス−(トリブチルスタニル)エタン11(230mg、0.36mmol)とクロロベンゼン(18mL)とを添加し、混合物を130℃で48時間攪拌した。末端封止剤として2−ブロモチオフェンと2−トリブチルスタニルチオフェンを添加した。後処理として、このポリマー溶液をメタノール中で沈殿させて、2時間攪拌した。ポリマーをろ別し、12時間アセトンでソックスレー抽出した。さらに、固体をTHFに溶解し、メタノールから沈殿させ、ろ過、乾燥させた。収量=78.1%。Mn=2.8×104g/mol、PDI=2.9。元素分析(計算値) C:76.19%(77.47%)、H:9.58%(10.04%)、N:1.37%(1.67%)。
【0139】
実施例5:装置の組立
本発明のポリマーの半導性特性を、二つのトランジスタ構造(ボトムゲート・トップコンタクト及びトップゲート・ボトムコンタクト)で評価した。熱的に成長させたSiO2(200nm)層をもつn++−Si基板上に、光リソグラフィー的に形成した、W=350μm〜7mmで、L=5μm〜100μmで、W/Lが70である、異なる回路寸法を有するパターン状Au製S/D電極をもつボトムゲート・ボトムコンタクト(BGBC)薄膜トランジスタ(TFT)を作製した。これらの基板をヘキサメチルジシラザン蒸気とともに一夜処理して半導体を形成した。全てのBGBC装置には、最後に、スピンコート法(濃度=DCB中約5〜10mg/mL、1000〜2000rpm、フィルムは約90℃の環境下で30秒間乾燥または必要に応じて表1に示すように1時間熱処理、膜厚=10〜50nm)により半導体層を形成させた。
【0140】
トップゲート・ボトムコンタクト(TGBC)のTFTを、ガラス(PGOガラス)上に作製し、そのまま使用した。Au製ソース−ドレイン接点(厚み:30nm)を、熱蒸着させた。これらの基材を、スピンコート法(濃度:CHCs混合物中約5〜0mg/mL、1500〜2000rpm、フィルムは90℃で30秒間乾燥し、必要に応じて表1に示すように1時間熱処理、フィルム厚み:10〜30nm)で形成した半導体層で覆った。20〜60mg/mlのポリスチレンの独自製剤中の溶液をスピンコート(1500−2000rpm)し、その誘電体フィルムを100℃で1分間乾燥させた。得られた誘電体の厚みは300〜400nmである。シャドウマスク越しにパターン状のAu製ゲート接点(厚み:約30nm)を蒸着させて装置構造を完成させた。回路の長さと幅は、25〜75μmと0.5〜1.5mmであり、それぞれW/L=20である。
【0141】
フィルムの熱処理工程6を除き、全ての装置作製プロセスは、環境条件下で実施した。
【0142】
前増幅器を備えた3個のソース計測部(SMU)を持つデュアルチャネル・ケースレー2612またはケースレー4200半導体特性評価システムを用いて、すべての組立トランジスタの電気特性の評価を行った。本テスト装置の他の主要な部品は、シグナトーンプローブステーションである。金属製の暗幕を用いて光暴露を避け、環境に起因するノイズを低下させた。
【0143】
トランジスタキャリア移動度(μ)は、標準的な電界効果トランジスタ方程式により計算した。従来の金属−絶縁体−半導体FET(MISFET)においては、通常、異なるVGで、IDS対VDS曲線中に直線的で飽和した領域がある(なお、IDSはソース−ドレイン飽和電流であり、VDSはソースとドレイン間の電位で、VGはゲート電圧である)。
大きなVDSでは、電流が飽和し、次式で与えられる。
【0144】
(IDSsat=(WCi/2L)μ(VG−Vt2 (1)
式中、LとWは装置回路の長さと幅であり、それぞれのCiはゲート絶縁体の比静電容量であり、Vtは閾値電圧である。移動度(μ)は、飽和領域中では、計算式(1)を次のように変更して計算される:
μsat=(2IDSL)/[WCi(VG−Vt2] (2)
閾値電圧(Vt)は、VG対(IDS1/2のプロットの直線部のx切片として求めることができる。
【0145】
表1に、ポリマーP3とP4からの装置の構造、いろいろな成分の材料、作製方法をまとめた。
【0146】
【表1】
【0147】
もう一つの例として、ポリマーP3またはP4を1−(3−メトキシカルボニル)プロピル−1−フェニル−[6,6]−C61(PCBM)またはペリレンジイミド(PDI)誘導体などの電子受容体と混合し、これを汎用溶媒から、電極の一つとして作用できる底基板の上に塗布して、光起電装置を作ることができる。上に対極を形成してこの装置を完成させる。このポリマーの電子受容体に対する比率は、試験で慎重に決めることができる。必要なら正しい形態とするために、このフィルムを熱処理してもよい。他の電子受容体を使用することができ、色素増感太陽電池(DSSC)のような他の構造も可能である。
【0148】
表2に、ポリマーP6とP7から作られた装置の構造、作成方法、得られた結果をまとめた。
【0149】
【表2】
図1
図2a)】
図2b)】
図2c)】
図2d)】
図3
図4
図5
図6
図7