(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吐出面における前記開口の位置よりも下方から、前記開口の下端と前記ストランド状物との境界点を含む一部に向けて、ガスを吹き付ける第二ガス吹き付け部をさらに備える請求項4又は5に記載の押出機。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂材料を押出す際の成形法の一つとして、スクリュー押出機を用いた押出成形が汎用されている。スクリュー押出機には単軸又は多軸押出機があり、一般的なものはスクリュー、シリンダー(バレルという場合もある)、駆動装置、加熱・冷却ユニット等を備えており、吐出孔部分に目的に応じたダイプレートが付設されている。
【0003】
押出機を用いて熱可塑性樹脂組成物を成形する際、熱可塑性樹脂組成物がダイプレートの吐出孔周りに付着滞留し、メヤニと称される塊を形成する。このメヤニは炭化して変色する。
【0004】
そして、押出成形を長時間継続していくと、次第にメヤニが押出機用ダイプレートの吐出孔付近に付着蓄積される。そのままの状態で放置しておくと、炭化したメヤニがストランド状の押出物に付着する。このメヤニは、最終製品中に異物となり、品質を低下させる場合がある。また、このメヤニが原因となって、ストランド切れ等が生じ、安定な運転が不可能となる場合もある。
【0005】
このため製造現場では、ピンセット等を用いて、ダイプレートに付着堆積したメヤニを除去する作業が必要となる。メヤニの除去作業は押出成形を中止せずに行なえるものの、手作業となるため作業が繁雑である。
【0006】
そこで、ストランド状物やシート等の熱可塑性樹脂成形体を得る際にメヤニが発生することを防止し、生産性の向上と製品の品質維持等を達成できるメヤニの発生防止法が開示されている(特許文献1参照)。
【0007】
また、メヤニの問題を改善する技術として、ダイプレートの吐出孔に突起ノズルを設けて、突起ノズルを通して、ストランド状物等を押し出す方法が開示されている(特許文献2参照)。
【0008】
特許文献1、特許文献2に記載の技術によれば、メヤニの問題に対して、一定の効果があるものの、さらなる改善が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は以上の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、押出機用ダイプレートの吐出孔付近に付着蓄積されるメヤニが、製品の品質を低下させたり、安定な成形を阻害したりする等の問題を抑える技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、ストランド状に吐出させる吐出孔を有するダイプレートと、吐出されたストランド状物にガスを吹き付ける第一ガス吹き付け部と、を備える押出機を用いて溶融状態の熱可塑性樹脂組成物を成形することで上記課題を解決できることを見出した。より具体的には、上記第一ガス吹き付け部から、押し出されたストランド状物と上記開口の上部との境界線上の少なくとも一部にガスを吹き付け、上記ダイプレートは、ダイプレートの吐出面における、吐出孔の開口の下端からダイプレートの外周までの最短距離が2mm以上5mm以下であることで、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は以下のものを提供する。
【0012】
(1) 押出機を用いて熱可塑性樹脂組成物ペレットを製造する方法であって、前記押出機に設けられたダイプレートの吐出孔から、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物をストランド状に押し出す際に、押し出されたストランド状物と前記吐出孔の吐出面側の開口の上部との境界線上の少なくとも一部にガスを吹き付け、前記ダイプレートの吐出面における、前記吐出孔の開口の下端から前記ダイプレートの外周までの最短距離が2mm以上5mm以下であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
【0013】
(2) 前記境界線上の少なくとも一部は、前記開口の上端と前記ストランド状物との境界点を含む一部であり、さらに、前記開口の下端と前記ストランド状物との境界点を含む一部にもガスを吹き付ける(1)に記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
【0014】
(3) 前記ダイプレートの前記吐出面には切り欠き部が形成され、前記切り欠き部は、前記吐出面における前記開口の位置よりも下側に形成され、前記開口の下端と前記ストランド状物との境界点を含む一部に吹き付けるガスは、前記切り欠き部の形成により切り欠かれた空間を通る(2)に記載の熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法。
【0015】
(4) 溶融状態の熱可塑性樹脂組成物をストランド状に吐出する吐出孔を有するダイプレートと、吐出されたストランド状物にガスを吹き付ける第一ガス吹き付け部と、を備える押出機であって、前記ダイプレートの吐出面における、前記吐出孔の開口の下端から前記ダイプレートの外周までの最短距離が2mm以上5mm以下であり、前記ガス吹き付け部は、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物をストランド状に押し出す際に、押し出されたストランド状物と前記吐出孔の吐出面側の開口上部との境界線上の少なくとも一部にガスを吹き付ける押出機。
【0016】
(5) 前記境界線上の少なくとも一部は、前記開口の上端と前記ストランド状物との境界点を含む一部である(4)に記載の押出機。
【0017】
(6) 前記吐出面における前記開口の位置よりも下方から、前記開口の下端と前記ストランド状物との境界点を含む一部に向けて、ガスを吹き付ける第二ガス吹き付け部をさらに備える(4)又は(5)に記載の押出機。
【0018】
(7) 前記吐出面には切り欠き部が形成され、前記切り欠き部は、前記吐出面における前記開口の位置よりも下側に形成され、前記第二ガス吹き付け部から吹き付けられるガスは、前記切り欠き部の形成により切り欠かれた空間を通る(6)に記載の押出機。
【0019】
(8) 溶融状態の熱可塑性樹脂組成物を、ストランド状に吐出する吐出孔を有するダイプレートであって、前記ダイプレートの吐出面における、前記吐出孔の開口の下端から前記ダイプレートの外周までの最短距離が2mm以上5mm以下であるダイプレート。
【0020】
(9) 前記吐出面には切り欠き部が形成され、前記切り欠き部は、前記吐出面における前記開口の位置よりも下側に形成された(8)に記載のダイプレート。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、押出機用ダイプレートの吐出面における吐出孔付近に付着蓄積されるメヤニが、製品の品質を低下させたり、安定な成形を阻害したりする等の問題を、従来の技術と比較して大幅に抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0024】
<押出機>
図1は、本実施形態の押出機1の断面を模式的に示す図である。押出機1はホッパー10と、シリンダー11と、スクリュー12とダイプレート13と、第一ガス吹き付け部14と、第二ガス吹き付け部15とを備える。
【0025】
シリンダー11は、内部にスクリュー12が配設される。また、シリンダー11は、上流側の端部に、スクリュー12の根元に熱可塑性樹脂組成物2を供給するためのホッパー10が設けられ、下流側の
端部にダイプレート13が接続される。
【0026】
押出機1の使用方法について簡単に説明する。ホッパー10から供給された熱可塑性樹脂組成物2は、スクリュー12の回転により、シリンダー11とスクリュー12との間を通り、ダイプレート13の方向に搬送される。この搬送の過程で、熱可塑性樹脂組成物2は、シリンダー11やスクリュー12から受けるせん断力により溶融する。溶融した熱可塑性樹脂組成物2はダイプレート13から、ストランド状に吐出される。ストランド状の熱可塑性樹脂組成物2(以下、ストランド状物という場合がある)は、吐出された直後、第一ガス吹き付け部14からガスを吹き付けられる。また、熱可塑性樹脂組成者2を吐出するダイプレート13に向けて、第二ガス吹き付け部15からガスが吹き付けられる。
【0027】
続いて、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物2を吐出する吐出孔を有するダイプレート13についてさらに説明する。以下に説明するダイプレートが本発明のダイプレートの一例である。
図2は、ダイプレート13を模式的に示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は正面図であり、(c)は側面図である。
【0028】
ダイプレート13は、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物2をストランド状に吐出するための吐出孔130と、切り欠き部131とを備える。
【0029】
吐出孔130は、吐出面Aと吐出面Aの反対側の面とを貫通する。吐出面Aの反対側の面に存在する開口から、吐出孔130に熱可塑性樹脂組成物2が溶融状態で流れ込み、吐出面A側の開口から熱可塑性樹脂組成物2がストランド状で押し出される。
【0030】
吐出孔130の吐出面A側の開口は、吐出面A上に存在している。吐出面Aにおける上記開口の下端Pと、吐出面Aの外周との最短距離(Δx=PQ間の距離)は、2mm以上5mm以下である。吐出面A側の開口の位置がこの条件を満たせば、どのように吐出孔130がダイプレート13に形成されていてもよい。
【0031】
例えば、
図2では、吐出面A側の開口とその反対側の面に存在する開口とが対向する位置に存在するが、吐出孔130の両端に存在する開口同士の位置関係は特に限定されない。また、
図2では、吐出孔130は、熱可塑性樹脂組成物2が流れる方向に延びる直線状の孔であるが、熱可塑性樹脂組成物2が流れる方向から所定の角度ずれた方向に延びてもよく、また、直線状以外であってもよい。したがって、吐出面Aの反対側の面に存在する開口の位置、熱可塑性樹脂組成物2が通る流路の形状は、適宜設定することができる。
【0032】
なお、
図2では吐出孔130が一個の場合について説明したが、吐出孔130を複数有するダイプレートであってもよい。吐出孔130を複数有する場合には、全ての吐出孔で、上記最短距離が2mm以上5mm以下であることが好ましい。また、全ての吐出孔から吐出される熱可塑性樹脂組成物2に対して、第一ガス吹き付け部、第二ガス吹き付け部からガスが吹き付けられることが好ましい。この場合、第一ガス吹き付け部、第二ガス吹き付け部が、複数のガス吹き付け部から構成されていてもよい。
【0033】
切り欠き部131は、吐出面Aに形成される段状の切り欠き部である。切り欠き部131は、吐出面Aとその反対側の面とをつなぐ2つの側面を貫くように段状に形成されているが、後述する本発明の効果を害さない範囲であれば、切り欠き部131の形状は特に限定されない。
【0034】
続いて、第一ガス吹き付け部14について説明する。
図3は、第一ガス吹き付け部14から、ストランド状物に向けてガスが吹き付けられる様子を模式的に示す図である。
【0035】
本実施形態において、第一ガス吹き付け部14は、吐出面Aにおける吐出孔130の開口の位置よりも上方に配置される。そして、第一ガス吹き付け部14は、押し出されたストランド状物と上記吐出面A上の開口の上部との境界線上の少なくとも一部にガスを吹き付けられるように、ガス吹き出し口の位置が調整されている。ここで、「押し出されたストランド状物と上記吐出面A上の開口の上部との境界線」とは、上記開口の上側の半円の外周とストランド状物との境界線を指す。本実施形態において、境界線上の少なくとも一部は、上記開口の上端とストランド状物との境界点を含む。
【0036】
なお、吹き付けられるガスの種類は特に限定されず、大気、不活性気体等を例示することができる。また、第一ガス吹き付け部14が吹き付けるガスは、湿度や温度が調整されたものであってもよい。湿度や温度の調整は、従来公知の制御方法で行うことができる。また、ガスの風量についても、後述する効果を奏する範囲で適宜調整可能である。例えば、ガスの風圧は、
0.1
MPa以上
0.4
MPa以下に調整することが好ましい。
0.1
MPa以上であればメヤニが冷却されダイプレートから剥離しやすくなるという理由で好ましく、
0.4
MPa以下であればダイプレートの冷却による吐出孔での樹脂目詰まり防止という理由で好ましい。より好ましい風圧は、
0.1
MPa以上
0.3
MPa以下である。
【0037】
第一ガス吹き付け部14のガス吹き出し口からストランド状物までの最短距離は、特に限定されないが、本実施形態においては、20cm以下である。20cm以下であることにより、ガスの噴射範囲が広がることによるダイプレート13の冷却を抑えることができる。
【0038】
第一ガス吹き付け部14のガスの吹き出し口と、上記開口の上端とストランド状物との境界点とを結ぶ直線と、上記吐出面Aとが成す角度θ
1は、0°から90°の領域で本発明の効果を奏する範囲で適宜調整するが、0°以上60°以下であることが好ましい。但し、本発明では、上記噴射角度よりも、押し出されたストランド状物と上記吐出面A上の開口の上部との境界線上にガスを当てることが重要である。
【0039】
続いて、第二ガス吹き付け部15について説明する。
図4は第二ガス吹き付け部15から、上記吐出面に存在する開口の下端と上記ストランド状物との境界点に向けてガスが吹き付けられる様子を模式的に示す図である。
【0040】
第二ガス吹き付け部15は、吐出面Aにおける吐出孔130の開口の位置よりも下方に配置される。本実施形態においては、吐出面Aにおける上記開口の下端Pと吐出面Aの外周との最短距離(Δx=PQ間の距離)が、5mm以下である。このため、吐出面Aよりも押出機側にガスの吹き出し口があっても、吹き出すガスの方向等を調整することで、上記吐出面に存在する開口の下端と上記ストランド状物との境界点にもガスを吹き付けることができる。つまり、
図4に示す通り、上記境界点付近にガスを吹き付けることで、境界点にもガスが吹き付けられるようにすることができる。
【0041】
上記吐出面に存在する開口の下端と上記ストランド状物との境界点にガスを吹き付けるためには、第二ガス吹き付け部15のガス吹き出し口と上記境界点とを結ぶ直線と、押出機の押出方向に沿った直線とが成す角度θ
2は、本発明の効果を奏する範囲で適宜調整するが、100°以上150°以下が好ましい。
【0042】
第二ガス吹き付け部15のガス吹き出し口と上記開口の上端とストランド状物との境界点との間の距離が20cm以下であることが好ましい。距離が近いほどガスが照射される面積が小さくダイプレート13の冷却を抑えることができる。
【0043】
ガス吹き付け部15から吹き付けられるガスは、二点鎖線で囲まれる空間を通る。二点鎖線で囲まれる空間とは、切り欠き部131の形成により、切り欠かれた空間を指す。
【0044】
使用可能なガスの種類は、上記第一ガス吹き付け部14と同様である。また、湿度や温度の調整を行なってもよい。また、風圧等についても、後述する効果を害さない範囲で適宜調製可能である。例えば、ガスの風圧は、
0.1
MPa以上
0.5
MPa以下に調整することが好ましい。
0.1
MPa以上であればメヤニが冷却されダイプレートから剥離しやすくなるという理由で好ましく、
0.5
MPa以下であればダイプレートの冷却による吐出孔での樹脂組成物の目詰まり防止という理由で好ましい。より好ましい風圧は、
0.15MPa以上
0.35MPa以下である。
【0045】
また、第二ガス吹き付け部15から、間欠的にガスを吹き付けることが好ましい。間欠的とは、所定の時間の間隔をあけてガスを吹き付けることを指す。所定の時間の間隔とは、一定の間隔でもよいし、一定の間隔でなくてもよい。そして所定の時間の間隔は、適宜調整可能である。
【0046】
続いて、熱可塑性樹脂組成物2について説明する。熱可塑性樹脂組成物2は熱可塑性樹脂を含有する。熱可塑性樹脂としては、せん断速度や熱を加えることによって可塑化する樹脂であれば限定されず、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、熱可塑性ポリエステル、熱可塑性エラストマー、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー等が挙げられ、これらの樹脂は単独でも2種類以上を併用してもよい。
【0047】
上記の熱可塑性樹脂の中でも、本発明の押出機は、特にエンジニアリングプラスチックス等の高融点で、且つ金属密着性の高い熱可塑性樹脂の押出成形にも好適に使用することができる。ここで、高融点の熱可塑性樹脂としては、融点が150〜400℃の熱可塑性樹脂であり、具体的にはポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、液晶性ポリマーが好ましく、中でもポリフェニレンサルファイドが好ましい。
【0048】
熱可塑性樹脂組成物2には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、その他の熱可塑性樹脂、各種配合剤等を添加することができる。他の樹脂としては、例えば、他のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、フッ素樹脂等が例示される。これらの他の樹脂は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。また、配合剤としては、安定剤(酸化防止剤又は抗酸化剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等)、ガラス繊維等の強化剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤(染料や顔料等)、潤滑剤、可塑剤、滑剤、離型剤、結晶核剤、ドリッピング防止剤、架橋剤等が例示される。
【0049】
上記のその他の成分の中でも、強化剤の使用が好ましい。熱可塑性樹脂組成物2に添加して使用する強化剤としては、繊維状、粉状、板状、針状、クロス状、マット状等の種々の形状を有する強化剤を挙げることができる。特に繊維状の強化剤が好ましく、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、金属被覆ガラス繊維等の無機繊維又は有機繊維が用いられる。また、これらの繊維状充填剤の表面をシラン系化合物等で表面処理しておいてもよい。これらの中では、耐熱性の点から無機繊維、特にガラス繊維が好ましい。
【0050】
ホッパー10、シリンダー11、スクリュー12については、通常の押出機に使用するものを使用することができる。押出機は、単軸又は多軸或いはこれらを組み合わせたスクリューを有する押出機であってもよい。また、押出機が多軸押出機の場合、スクリューの回転方向がそれぞれの軸で異方向でも同方向でもよく、また噛み合い型でも非噛み合い型でも良い。さらに軸の形状はパラレルタイプでもコニカルタイプでも良く、加えて、スクリュー押出機を多段に組み合わせたタンデム方式でも良く、これらの押出機に本発明のダイプレート、第一ガス吹き付け部、第二ガス吹き付け部を組み込んで、熱可塑性樹脂組成物を押出成形することができる。
【0051】
<熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法>
熱可塑性樹脂組成物2が、ホッパー10に投入される。ホッパー10に投入された熱可塑性樹脂組成物2は、シリンダー11内に入る。熱可塑性樹脂組成物2は、スクリュー12の回転により、スクリュー12とシリンダー11との間を通ることで、ダイプレート13に向かう方向に搬送される。ダイプレート13の方向に向かう搬送途中で、熱可塑性樹脂組成物2は溶融し、溶融状態のまま、ダイプレート13まで送られる。ダイプレート13まで送られた熱可塑性樹脂組成物2は、吐出孔130内を通って、吐出される。この押出成形の成形条件(吐出量、スクリュー回転数、シリンダー温度等)は、材料の種類等に応じて適宜変更することができる。
【0052】
押し出されたストランド状物と上記吐出孔130の吐出面A側の開口上部との境界線上の少なくとも一部に、第一ガス吹き付け部14からガスを吹き付ける。本実施形態においては、上記開口の上端と上記ストランド状物との境界点を含む部分にガスを吹き付ける。このガスの吹き付けによりメヤニの発生が促進される。発生したメヤニの多くは、ガスの風圧で落下する。
【0053】
上記ストランド状物と上記吐出面に存在する開口の下端との境界点に、第二ガス吹き付け部15からガスを間欠的に吹き付ける。このガスの吹き付けにより、上記開口の下端付近にメヤニが貼り付いたとしても、メヤニは炭化前に落下する。
【0054】
<効果>
本実施形態においては、第一ガス吹き付け部14が、熱可塑性樹脂組成物の塊(以下、メヤニと言う場合がある)の形成を促進させる。このメヤニは吐出面Aに貼り付き、通常であれば、炭化して黒色メヤニとなる。しかし、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物2をストランド状に押し出す際に、押し出されたストランド状物と吐出孔130の吐出面A側の開口上部との境界線上の少なくとも一部にガスを吹き付けることの効果で、吐出面Aに貼り付く前又は貼り付いたとしても炭化する前に、メヤニがガスの風圧で飛ばされる。このように、黒色メヤニのもととなるメヤニの形成を促進させた後、速やかにガスで吹き飛ばすことで、メヤニが吐出面Aに溜まり、炭化することが抑えられる。
また、上記の通り、第一ガス吹き付け部14からのガスにより、メヤニが炭化する前に飛ばされる。その結果、飛ばされたメヤニが、ストランド状物を切断して得られるペレットに混入したとしても、異物混入の問題は生じない。
なお、メヤニは、自重で剥離し落下する場合もある。
【0055】
吐出面Aに付着したメヤニの中で、ダイプレート13の吐出孔130付近に付着したメヤニは、吐出中のストランド状物との摩擦によって落下して、吐出中のストランド状物へ混入する場合がある。本実施形態では、上記のようにガスを吹き付ける結果、吐出孔130に付着したメヤニの上記摩擦による上記落下が促進されている。このため、上記摩擦が弱い摩擦であっても、メヤニは落下してストランド状物へ混入する。つまり、メヤニが吐出孔130に付着してから短時間で落下してストランド状物へ混入する傾向にある。このため、メヤニが、ストランド状物を切断して得られるペレットに混入したとしても、異物混入の問題は生じない。
【0056】
本実施形態においては、第二ガス吹き付け部15を備える。第二ガス吹き付け部15を備えることで、メヤニが吐出面A側の開口の下端付近に溜まったとしても、上記ストランド状物と上記開口の下端との境界点にガスを吹き付けることで、これを早期に吹き飛ばすことができる。したがって、吐出面A上でメヤニが炭化してしまう可能性がほとんど無くなる。なお、吐出面A側の開口の下端付近に貼り付いたメヤニを、第一ガス吹き付け部14から吹き付けられるガスで、落下させることもできるが、第二ガス吹き付け部15を備えることで、より確実にメヤニを変色前に落下させることができる。
【0057】
本実施形態において、吐出面Aにおける上記開口の外周の下端Pと、吐出面Aの外周との最短距離(Δx)が5mm以下である。このため、吐出面Aとメヤニとの接触面積は小さくなる。その結果、メヤニと吐出面Aとの密着力は低くなるため、特に第二ガス吹き付け部15からのガスの吹き付けで、メヤニを落下させやすくなる。したがって、メヤニが、ストランド状物を切断して得られるペレットを原料として製造される製品に混入したとしても、異物混入の問題は生じない。
なお、本発明においては、上記最短距離が2mm以上であるが、これは、2mm未満になると金型の強度が不充分になる等の問題が生じるからである。したがって、2mm未満であっても、本実施形態の製造方法の効果は奏される。
【0058】
また、第二ガス吹き付け部15から吹き付けられるガスにより得られる上記の効果は、間欠的にガスを吹き付ける場合でも、充分に奏する。また、間欠的にガスを吹き付けることで、一部が吐出面Aに貼り付き吐出面Aに吊り下がった状態で存在するメヤニを揺らし、そのメヤニを落下させることができる。また、間欠的にガスを吹き付けることで、ダイプレート13が冷却されることを抑えることができる。ダイプレート13の冷却を抑えることで、吐出が不安定になる等の問題を抑えることができる。
【0059】
本実施形態においては、吐出面Aには切り欠き部が形成され、上記切り欠き部は吐出面Aにおける吐出孔130の位置よりも下側に形成される。そして、第二ガス吹き付け部15から吹き付けられるガスは、切り欠き部の形成により切り欠かれた空間を通る。つまり第二ガス吹き付け部15は、斜め下方向から、ダイプレート13の外周に向けてガスを吹き付けることになる。したがって、ダイプレート13の下方にガス吹き付け部15が配置されることになる。本発明においては、ストランド状物の下方に第二ガス吹き付け部15を配置してもよいが、このような位置に第二ガス吹き付け部15を配置すると、ストランド切れの際に、切れたストランド状物が第二ガス吹き付け部15の上に落下し、第二ガス吹き付け部15を破損させる場合、また、ストランド切れを知らせるセンサーが作動しない等の問題を生じる場合がある。なお、この問題は、防護部材で第二ガス吹き付け部やストランド切れを知らせるセンサーを保護することで、切れたストランド状物の落下からセンサー等の破損を防ぐことができる。
また、第二ガス吹き付け部15をダイプレート13から少し離れた位置に配置して、切り欠きにより形成される空間を通さずに、ダイプレート13の外周にガスを吹き付けてもよいが、このような方法を採用すると、吐出面に貼り付いたメヤニを落下させるために強い風圧が必要になるだけでなく、ガスの噴射範囲が広がることでダイプレート13を冷却してしまい、吐出ムラを起こす問題等を生じさせる場合もある。
したがって、切り欠きにより形成される空間を通して、第二ガス吹き付け部15からのガスを、ダイプレート13の外周に吹き付けることで、ダイプレート13の冷却を抑えることができ、ストランド切れの場合にも特に上述のような問題を生じない。
【0060】
上記の通り、本実施形態において、第二ガス吹き付け部15は吐出面Aよりも後方に配置され、第二ガス吹き付け部15から吹き付けられるガスは、切り欠き部の形成により切り欠かれた空間をガスが通る。しかし、本発明においては、吐出面Aよりも前方に第二ガス吹き付け部15を配置してもよい。なお、この場合には上記のような防護部材が必要になる場合がある。
【0061】
本実施形態においては、第一ガス吹き付け部14は、吐出面Aにおける吐出孔130の位置よりも上方からガスを吹き付ける。第一ガス吹き付け部14は、吐出するストランド状物に対して、右方向又は左方向からガスを吹き付けてもよいが、複数の吐出孔を有するダイプレートを使用する場合、全ての吐出孔に本発明の効果を奏するように、ガスを吹き付けるためには、上方からのガスの吹き付けが好ましい。
【実施例】
【0062】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0063】
<装置等>
ダイプレート1:
図2に記載のダイプレートであり、PQ間の距離は2mmである。また、吐出孔の開口部分は直径3mmの円形である。
ダイプレート2:切り欠き部131を有さない以外はダイプレート1と同様のダイプレート(切り欠き部を有さないため、ダイプレート1のPQ間の距離に相当する部分の距離は5mm以上であり、具体的には50mmである。)
押出機:二軸押出機(日本製鋼所製 TEX65)に、第一ガス吹き付け部、第二ガス吹き付け部を
図1、3、4に示すように配置した。
第一ガス吹き付け部のガス吹き出し口からストランド状物までの最短距離は5cmである。
【0064】
<比較例1>
上記押出機にダイプレート2を取り付け、先ず、原料ホッパーにポリフェニレンサルファイド樹脂(粘度275Pa・s、融点290℃)59.4質量部に対して、アミノシラン0.4質量部、ステアリン酸エステル0.2質量部を配合した混合物を供給した。次いで、ガラス繊維をサイドフィーダーから40質量部供給して、ガラス繊維によって強化されたポリフェニレンサルファイド樹脂組成物を押出成形した。押出成形の成形条件は、押出量200kg/時間、スクリュー回転数270rpmの押出量で押出成形し、厚み3mmの樹脂ペレットを製造した。樹脂ペレット5kgあたり、着色しているペレットの数を計測した。
【0065】
押出成形の際には、常温の空気を風圧2kgf/cm
2の条件で、第一ガス吹き付け部からガスを、ストランド状物と吐出面における開口の上端との境界点に向けて連続的に吹き付けた。
【0066】
実験番号が0〜240までは上記の条件で押出成形を行なった。各実験番号における実験での着色ペレット数を計測した。計測結果を
図5に示した。
【0067】
<実施例1>
ダイプレート
2をダイプレート
1に変更した以外は、比較例1と同様の方法で着色しているペレットの数を計測した。実験番号が241〜350までは上記の実施例1の条件で押出成形を行なった。計測結果を
図5に示した。
【0068】
<実施例2>
第二ガス吹き付け部から、上記ストランド状物と上記開口の下端との境界点に当たるように、ガスを吹き付けた以外は実施例1と同様の方法で着色しているペレットの数を計測した。
【0069】
実験番号が351〜550までは上記の実施例2の条件で押出成形を行なった。計測結果を
図5に示した。
【0070】
なお、第二ガス吹き付け部は、常温の空気を3kgf/cm
2の条件の風圧で間欠的にガスを吹き付けるように設定した。
【0071】
実施例1と比較例1との結果から、吐出面における上記開口の外周の下端と、吐出面の外周との最短距離が短いことと、上方からのガスの吹き付けとを組み合わせることで、メヤニによる着色ペレットの数を大幅に低減できることが確認された。
【0072】
実施例2と実施例1との結果から、上記の実施例1にさらに下方からのガスの吹き付けを追加することで、着色ペレット数をほぼゼロに抑えられることが確認された。
【0073】
また、実施例1、2で製造した樹脂ペレットについて、一般物性(具体的には、溶融粘度、樹脂ペレットを焼却しAshを測定することによるガラス充填量測定、引張強度、曲げ強度)を評価したところ、一般的な方法で製造した樹脂ペレットと同等であった。つまり、得られる樹脂ペレットの物性面において、本発明のダイプレートを用いたことによる影響及びガス吹き付けを行なったことによる影響は認められなかった。