(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本出願人は、上記構成の水質測定装置においては、エラーとなった原因が分からないまま、複数の解決策の中から1つの解決策を選択してしまい有効な解決策を選択できない恐れがあり、結果として種々の解決策を試してみる必要が生じてしまうという課題に新たに着目した。また、複数の解決策をアウトライン表示しているとはいえ、それらが並んで表示されるとユーザにとっては見にくく、誤った解決策を選択してしまう恐れもあるという課題にも着目した。
【0006】
そこで本発明は、測定装置においてエラー発生時に正確且つ容易に解決策を見出すことを可能にするとともに、解決策に行き着くまでの画面表示をユーザにとって見やすくすることをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る測定装置は、測定対象物を
電極を用いて測定することにより得られた測定結果を
、ディスプレイ上に表示する表示制御部を有する測定装置であって、前記表示制御部が、測定又は校正における
電極異常、不斉電位異常又は感度異常に応じた複数の質問文を、それら各質問文に対する前記
電極異常、不斉電位異常又は感度異常の原因となった症状を示す選択肢とともに前記ディスプレイ上に順次表示し、ユーザにより選択された選択肢に対応付けられた、次の質問及びこの次の質問に対する選択肢、又は、前記
電極異常、不斉電位異常又は感度異常に対する解決策を表示する解決策表示モードを有しており、各質問に対する選択肢
には、
前記電極異常、不斉電位異常又は感度異常の原因となった症状を示す選択肢文と、当該選択肢文が示す症状における電極外観の特徴部を表す図とが表示されていることを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、エラー発生時においてユーザはディスプレイ上の表示される質問文に対して該当する選択肢を選択するだけで解決策に到達することができる。また、各質問文に対する選択肢においてその内容を示す図を表示していることから、ユーザは、選択肢の内容を視覚的に把握することができ、解決策に行き着くまでの画面表示がユーザにとって見やすく、選択肢の選択間違いを起こしにくい。
【0009】
ここで、選択肢1つ1つをより一層見やすくして選択肢の選択間違いを起こしにくくするためには、前記表示制御部が、前記ディスプレイ上に前記選択肢として選択肢ボタンを表示するものであり、この選択肢ボタン内に前記選択肢の内容を示す選択肢文及び前記選択肢の内容を示す選択肢図を表示するものであることが望ましい。
【0010】
また、選択肢だけでなく、解決策においてもユーザがその内容を視覚的に把握できるようにして使い勝手を良くするためには、前記表示制御部が、前記解決策を表示するに際して、当該解決策を示す説明文とともにその内容を示す図を表示するものであることが望ましい。
【0011】
測定装置を取り扱うユーザの熟練度によっては、エラー内容をみるだけでその解決策を想起することが可能となる。この場合には、前記表示制御部が、エラー発生時に当該エラー内容を表示するとともに、前記解決策表示モードに切り替えるか否かをユーザに選択させるための選択画面を表示することが望ましい。これにより、熟練したユーザによっても使いやすいものとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
このように構成した本発明によれば、測定装置においてエラー発生時に正確且つ容易に解決策を見出すことを可能にするとともに、解決策に行き着くまでの画面表示をユーザにとって見やすくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
本実施形態にかかる測定装置100は、例えば河川や湖沼、海等の水質調査や、養液や液耕栽培における水質管理や、工場等からの排水のフィールド測定等に用いられるものである。
【0016】
具体的にこのものは、
図1に示すように、測定対象物に接触させるプローブ2と、そのプローブ2に無線又は有線ケーブルCLで接続された本体3とを備えたもので、前記測定対象物のpH、酸化還元電位、イオン濃度、導電率、溶存酸素を測定して前記本体3に設けたタッチパネル式ディスプレイ304にその測定値を表示するものである。
【0017】
前記プローブ2は、測定目的に応じて複数種類、すなわちpH測定用プローブ、酸化還元電位測定用プローブ、イオン濃度測定用プローブ、導電率測定用プローブ、溶存酸素測定用プローブが用意してあり、測定目的に対応するプローブ2を本体3に選択的に接続して使用するように構成している。本実施形態では、pH測定用プローブ2を代表例として以下の説明を行う。
【0018】
このpH測定用プローブ2は、ガラス電極と比較電極とを一体化して備えたいわゆる複合電極と称されるもので、先端部に前記ガラス電極及び比較電極を表出させ、これを測定対象物に接触させ得るように構成したものである。本実施形態におけるプローブ2は、その筐体内部にインピーダンス変換部をさらに備えおり、前記ガラス電極及び比較電極で発生した電位差を、このインピーダンス変換部でインピーダンス変換するとともに増幅し、プローブ出力信号として出力するように構成してある。お
図1では標準型のものを示しているが、食品等に突き刺して用いる先端の尖ったニードル形のものでも構わないし、その他ガラス電極と比較電極とが別体のもの等、種々のタイプのプローブでも構わないのは言うまでもない。
【0019】
本体3は、
図1及び
図2に示すように、ハードウェア構成として、CPU301、A/D変換器302、記憶装置303、入力手段及び表示手段を兼ねるタッチパネル式ディスプレイ304等を一体的に備えた専用のものである。ここで記憶装置303とは、内部メモリ等の他、コンパクトフラッシュ
(登録商標)メモリ、USBメモリ等の外部接続メモリ等の着脱可能な不揮発性の記録媒体をも含むものである。なお、
タッチパネル式ディスプレイ304を用いているので、入力手段及び表示手段が一体のため本体3を小型化することができる。
【0020】
そして前記CPU
301やその周辺機器が、前記記憶装置303に格納したプログラムに基づいて動作することにより、この本体3が、
図3に示すように、測定データ算出部31、測定データ格納部D1、表示制御部32、エラー判断部33、
質問等データ格納部D2等としての機能を発揮する。
【0021】
測定データ算出部31は、前記A/D変換器302によって所定の間隔でサンプリングされ、デジタル値に次々変換される前記プローブ出力信号の値、すなわちガラス電極及び比較電極で発生した電位差から、既知の緩衝液を用いて予め測定し記憶させておいた基準となる電位差と比較するなどして、測定対象物のpH値(測定値)を示す測定データを算出するものである。
【0022】
測定データ格納部D1は、前記記憶装置303の所定領域に設定されたもので、測定データ算出部
31で次々算出される測定データを逐次格納するものである。
【0023】
表示制御部32は、測定モード及び校正モードにおいて、前記測定データ算出部31で算出された測定データの値、すなわちpH値をタッチパネル式ディスプレイ304上に、種々の表示形式で表示するものである。具体的に表示制御部32は、
図4に示すように、ディスプレイ304上に、pH値の数値を示す数値表示画面W1を表示する。なお、
図4は校正モードにおける数値表示画面である。その他、表示制御部32は、所要箇所に値を付した一連の目盛り及び前記pH値に対応する目盛り上の位置を指し示す指示手段を表示するアナログ表示画面、又は、一方の軸が時間を示す時間軸で他方の軸がpH値を示す測定軸である座標系に、pH値を時系列グラフとして表示するグラフ表示画面を表示する。これらの表示はユーザの切り替え操作によって切り替え表示される。具体的には、ユーザがディスプレイ304を所定方向(本実施形態では、左右方向)にタッチスライド操作することによって、表示制御部32が、当該タッチスライド操作を示す入力操作信号をディスプレイ304から取得して、各表示画面に切り替える。その他、表示制御部32は、ディスプレイ304上に、測定モードや校正モード等の各種モードを切り替えるための切り替えボタン、測定モードの場合は測定開始ボタン、校正モードの場合は校正開始ボタン、マニュアルを表示するためのヘルプボタン、校正モードにおけるpH値の安定度等を表示する。
【0024】
エラー判断部33は、測定モードにおける測定エラーや校正モードにおける校正エラー等を判断するものであり、具体的には、前記プローブ出力信号の値又は前記測定データ算出部31で算出された測定データの値と、予め定められたエラー判断基準とを比較して、エラーが発生しているか否かを判断するものである。そして、エラー判断部33は、エラーが発生していると判断した場合には、当該エラー内容を含むエラー判断データを表示制御部32に出力する。ここで測定モードにおける測定エラーとしては、測定範囲外、電極異常、変換器異常などであり、校正モードにおける校正エラーとしては、不斉電位異常、感度異常、応答速度異常、標準液異常、校正間隔エラーなどである。
【0025】
そして、エラー判断部33からエラー判断データを取得した表示制御部32は、前記ディスプレイ304上に数値表示画面W1とは別に、当該数値表示画面W1に重ねて選択画面W2を直ちに表示する。この選択画面W2には、エラー内容W21が表示されるとともに、エラー内容を解決するための解決策表示モードに切り替えるか否かをユーザに選択させるためのボタンW22、W23を表示する。なお、
図5には、校正モードにおいて不斉電位異常が発生した場合のメッセージ「不斉電位異常のため校正できません。」が表示されたものを示している。また、左側に表示されたボタンW22は、解決策表示モードに移行しないで選択画面W2を閉じるOKボタンである。一方、右側に表示されたボタンW23は、解決策表示モードに移行するためのNAVIボタンである。このようにOKボタンW22を設けることで、エラー内容を見ただけで解決策を想起できるユーザが、解決策表示モードに移行して一々解決策を見つけ出す手間を省くことができる。
【0026】
この選択画面W2を表示した状態で、ユーザがNAVIボタンW23を選択(画面タッチ操作)すると、表示制御部32は、解決策表示モードに移行してナビゲーション画面W3をディスプレイ304上に、前記選択画面W2と同様に数値表示画面W1に重ねて表示する。そして、表示制御部32は、このナビゲーション画面W3上に、エラー内容に応じて複数の質問文をそれら各質問文に対する選択肢とともに階層的に順次表示するとともに、エラー内容に対する解決策を表示する。
【0027】
ここで、ナビゲーション画面W3上に表示される質問文及びこの質問文に対する選択肢(以下、質問文/選択肢ともいう。)を示す質問文/選択肢データ、及びエラー内容に対する解決策を示す解決策データは、予め質問等データ格納部D2に格納されている。質問等データ格納部D2に格納された複数の質問文/選択肢データ及び解決策データは、前記エラー判断部33により判断されるエラー毎に関連付けられて格納されている。例えば、不斉電位異常に対応した複数の質問文/選択肢データ及びその解決策データ、電極異常に対応した複数の質問文/選択肢データ及びその解決策データ、標準液異常に対応した複数の質問文/選択肢データ及びその解決策データ等といったように、エラー毎に複数の質問文/選択肢データ及びその解決策データが分類して格納されている。また、各エラー毎に分類された複数の質問文/選択肢データ及び解決策データは階層的に対応付けられており、具体的には、各選択肢毎に次に表示される質問文/解決データ又は解決策データが対応付けられている。
【0028】
そして表示制御部32は、ユーザにより選択された選択肢に対応付けられた、次の質問文及びこの次の質問文に対する選択肢、又は、エラー内容に対する解決策を質問等データ格納部D2から取得してナビゲーション画面W3内に表示する。
【0029】
例えば前記不斉電位異常においては、
図6に示すように、ナビゲーション画面W3内に、最初の質問文として「pH電極外観を確認し、当てはまる症状を選択してください。」という質問文Q1を表示する。また、その質問文Q1の下に、当該質問文Q1に対する複数の選択肢ボタンA1a〜
A1dを表示する。本実施形態では、ナビゲーション画面W3内に2つの選択肢ボタンA1a、A1bを表示するようにしており(
図6(A)参照)、ナビゲーション画面W3内に表示されない選択肢ボタンA1c、A1dは、ナビゲーション画面W3の所定箇所(本実施形態では右端)に表示される移動ボタンW32をタッチすることで、次の選択肢ボタンA1c、A1dが表示される。なお、ナビゲーション画面W3内には、1つ前の画面表示(選択画面W2又は1つ前の質問文/選択肢を表示する画面)に戻ることが可能となるように、戻るボタンW31が設けられている。
【0030】
ここで、選択肢ボタンA1a〜A1dには、質問
文Q1の回答として当てはまる選択肢文(単語だけのものを含む。)Axと、当該選択肢文Axの内容を示す選択肢
図Ayとが表示されている。なお、これらの選択肢文及び選択肢図を示すデータは、質問文/選択肢データに含まれている。選択肢
図Ayとしては、選択肢文Axの内容を示す模式図とともに、当該模式図中における特徴部(選択肢の要点や具体例を示す部分)を示す名称とが表示される。本実施形態では、選択肢ボタンA1a〜A1d内の上に選択肢文Ax、下に選択肢
図Ayが表示されているが、これら文Ax及び
図Ayの位置関係は特に限定されない。また各選択肢ボタンA1a〜A1dは、その輪郭が太線等の枠表示がされており、ユーザが各選択肢A1a〜A1dを区別して視認し易いように構成されている。
【0031】
この最初の質問文Q1に対して当てはまる選択肢ボタンA1a〜A1dを選択(画面タッチ操作)すると、当該選択肢A1a〜A1dに対応した次の質問文/選択肢が表示される。例えば前記不斉電位異常において、
図6中の選択肢ボタンA1a(「ガラス応答膜が汚れている」)が選択された場合、表示制御部32は、タッチパネル式ディスプレイ304から入力操作信号を取得して前記選択肢ボタンA1aが選択されたと判断して、当該選択肢ボタンA1aに対応した次の質問文/選択肢データを質問等データ格納部D2から取得する。具体的には、
図7に示すように、ナビゲーション画面W3内に、次の質問文として「ガラス応答膜の汚れの種類を選択してください。」という質問文Q2を表示する。なお、質問文Q2は、不斉電位異常においては最後の質問文である。また、その質問文Q2の下に、当該質問文Q2に対する複数の選択肢ボタンA2a〜A2dを表示する。なお、前記質問文Q1の場合と同様に、ナビゲーション画面W3内に2つの選択肢ボタンA2a、A2bが表示されており(
図7(A)参照)、ナビゲーション画面W3内に表示されない選択肢ボタンA2c、A2dは、ナビゲーション画面W3の所定箇所(本実施形態では右端)に表示される移動ボタンW32をタッチ操作することで、次の選択肢ボタンA2c、A2dが表示される。
【0032】
そして、この最後の質問文である質問文Q2に対して当てはまる選択肢ボタンA2a〜A2dを選択(画面タッチ操作)すると、当該選択肢に対応付けられた、エラー内容に対する解決策が表示される。例えば前記不斉電位異常において、
図7中の選択肢ボタンA2a(「一般的」)が選択された場合、表示制御部32は、タッチパネル式ディスプレイ304から入力操作信号を取得して前記選択肢ボタンA2aが選択されたと判断して、当該選択肢ボタンA2aに対応付けられた解決策データを質問等データ格納部D2から取得する。そして表示制御部32は、当該解決策データが示す内容をナビゲーション画面W3内に表示する。具体的には、
図8に示すように、ガラス応答膜の汚れが一般的である場合の解決策として、「アセトン・アルコール・界面活性剤などを含ませたガーゼなどでふきとってください。」という説明文Sxとともにその内容を示す説明
図Syとを表示する。本実施形態では、ナビゲーション画面W3内の上に説明文Sx、下に説明
図Syが表示されているが、これら文Sx及び
図Syの位置関係は特に限定されない。ここで、複数の解決策がある場合には、1つの解決策がナビゲーション画面W3内に表示されるとともに、その他の解決策を表示するための移動ボタンW33が表示される。
【0033】
なお、上記説明においては、不斉電位異常の場合において2つの質問Q1、Q2によって解決策に到達する場合を示しているが、その他のエラー内容においては3つ以上の質問を階層的に順次表示して解決策に到達することがあることは言うまでもない。
【0034】
このように構成した本実施形態に係る測定装置100によれば、エラー発生時においてユーザはディスプレイ304上のナビゲーション画面W3に表示される質問文に対して該当する選択肢ボタンを選択(画面タッチ)するだけで解決策に到達することができる。また、各質問文に対する選択肢ボタン内に選択肢文Axとともにその内容を示す選択肢
図Ayを表示していることから、ユーザは、選択肢の内容を視覚的に把握することができ、解決策に行き着くまでの画面表示がユーザにとって見やすく、選択肢の選択間違いを起こしにくい。さらに本発明はタッチパネル式ディスプレイ304を用いていることから、ユーザが画面をタッチ操作することで選択肢を選択することができ、より一層測定装置100の使い勝手を良くすることができる。
【0035】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0036】
例えば、前記実施形態では、ユーザの使い勝手を考えてタッチパネル式ディスプレイを用いたが、入力ボタンなどのボタン群を有する入力手段とディスプレイとを別に本体に設けたものであっても良い。
【0037】
また、前記実施形態では、各選択肢ボタンを視認し易くするとともに、タッチ操作し易くするために、ナビゲーション画面内に2つずつ選択肢ボタンを表示するようにしているが、3つ以上の選択肢ボタンを表示するようにしても良い。
【0038】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。