特許第5728383号(P5728383)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5728383イソシアネート系強靱化剤を含んでなるベンゾオキサジン系組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5728383
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】イソシアネート系強靱化剤を含んでなるベンゾオキサジン系組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/04 20060101AFI20150514BHJP
   C08L 61/34 20060101ALI20150514BHJP
   C08G 18/80 20060101ALI20150514BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20150514BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20150514BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20150514BHJP
   C09J 161/34 20060101ALI20150514BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20150514BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20150514BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20150514BHJP
   C09D 161/34 20060101ALI20150514BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   C08L75/04
   C08L61/34
   C08G18/80
   C08L63/00 Z
   C09J11/06
   C09J175/04
   C09J161/34
   C09J163/00
   C09D7/12
   C09D175/04
   C09D161/34
   C09D163/00
【請求項の数】15
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2011-527328(P2011-527328)
(86)(22)【出願日】2009年9月18日
(65)【公表番号】特表2012-503054(P2012-503054A)
(43)【公表日】2012年2月2日
(86)【国際出願番号】EP2009062080
(87)【国際公開番号】WO2010031826
(87)【国際公開日】20100325
【審査請求日】2012年3月29日
(31)【優先権主張番号】61/098,451
(32)【優先日】2008年9月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100083356
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(74)【代理人】
【識別番号】100172605
【弁理士】
【氏名又は名称】岩木 郁子
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・クライリング
(72)【発明者】
【氏名】ライナー・シェーンフェルト
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ターデン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・クックス
(72)【発明者】
【氏名】ハラルト・キュースター
(72)【発明者】
【氏名】スタンリー・レロイ・レーマン
【審査官】 久保田 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/076244(WO,A1)
【文献】 特開昭62−195014(JP,A)
【文献】 特表2011−528042(JP,A)
【文献】 特表2010−507708(JP,A)
【文献】 特表2010−513057(JP,A)
【文献】 特表2009−518465(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/064801(WO,A1)
【文献】 特表2007−521377(JP,A)
【文献】 特開平01−188512(JP,A)
【文献】 特開平04−234420(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/049859(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08G 18/00− 18/87
C09D 4/00−201/10
C09J 4/00−201/10
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)N−アルキルベンゾオキサジン化合物およびN−アルケニルベンゾオキサジン化合物からなる群から選択される少なくとも1つのベンゾオキサジン成分、および、
B)2000〜54000g/molの範囲の数平均分子量を有する、下記一般構造のプレポリマー:
P−(X−CO−NH−D−NH−CO−Y−E)
[式中、
Pは、オリゴマーまたはポリマーのz価の基であり、
XおよびYは、それぞれNR’、OおよびSから選択され〔式中、R’は水素または脂肪族基、複素脂肪族基、芳香脂肪族基、複素芳香脂肪族基、芳香族基および複素芳香族基からなる群から選択される基である〕、
Dは、ジイソシアネートの2つのイソシアネート基を除去することにより得られる2価の基であり、
Eは、脂肪族基、複素脂肪族基、芳香脂肪族基、複素芳香脂肪族基、芳香族基および複素芳香族基からなる群から選択される末端キャップ基であり、
zは、1〜12の整数である]
を含んでなる硬化性組成物。
【請求項2】
Pがポリエーテル基およびポリエステル基からなる群から選択される、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
XおよびYが、それぞれNHおよび/またはOである、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
Eがフェノール性ヒドロキシ基を含んでなる芳香族基である、請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項5】
zが2〜6の整数である、請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項6】
Pがポリエーテルであり、XおよびYがOであり、Dが2,4−トルエンジイソシアネート、2,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート、4,4’−メチレンジフェニルジイソシネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネートの2つのイソシアネート基を除去することにより得られる基であり、Eがフェノール性ヒドロキシ基を含んでなる芳香族基であり、zが2または3である、請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項7】
Pがトリメチロールプロパンに由来する3価の基(z=3)である、請求項1〜6のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項8】
少なくとも1つのベンゾオキサジン成分が、1つ以上の
【化1】
〔式中、oは1〜4であり、Xは、直結合(oが2の場合)、アルキル(oが1の場合)、アルキレン(oが2〜4の場合)、カルボニル(oが2の場合)、酸素(oが2の場合)、チオール(oが1の場合)、チオエーテル(oが2の場合)、スルホキシド(oが2の場合)およびスルホン(oが2の場合)からなる群から選択され、Rはアルキルおよびアルケニルから選択され、およびRは、水素、アルキルおよびアルケニルから選択されるか、Rは、ベンゾオキサジン構造からナフトオキサジン基を作り出す2価の基である〕
を含んでなる、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも1つのベンゾオキサジン成分が、1つ以上の
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
〔式中、Xは、直結号、CH、C(CH、C=O、O、S、S=OおよびO=S=Oからなる群から選択され、R、RおよびRは、同じか異なって、アルキルまたはアルケニル基であり、Rは、水素、ハロゲン、アルキルおよびアルケニルからなる群から選択されるか、またはRはベンゾオキサジン構造からナフトオキサジン基を作り出す2価の基である〕
を含んでなる、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも1つのベンゾオキサジン成分が、組成物の総重量に基づいて、5〜95重量%の量で存在する、請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
さらにエポキシ樹脂成分を含んでなる請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の組成物の硬化反応生成物。
【請求項13】
硬化前に請求項1〜11のいずれかの組成物を注入した繊維層または繊維束を含んでなる、請求項12に記載の硬化反応生成物。
【請求項14】
請求項13に記載の硬化反応生成物の製造方法であって、
A)繊維層または繊維束を提供する工程;
B)請求項1〜11のいずれかに記載の組成物を提供する工程;
C)組立品を形成するために、該組成物と繊維層または繊維束を結合させる工程;
D)場合により、過剰な熱硬化性組成物を組立品から除去する工程;
および、硬化反応生成物を形成するために、熱硬化性組成物を繊維層または繊維束に注入するのに十分に高い温度および圧力条件に得られる組立品を暴露する工程、
を含んでなる方法。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれかに記載の組成物を含んでなる接着剤、封入剤またはコーティング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)N−アルキルベンゾオキサジン化合物およびN−アルケニルベンゾオキサジン化合物からなる群から選択される少なくとも1つのベンゾオキサジン成分、および(b)ジイソシアネートから製造されるプレポリマーを含んでなる硬化性組成物に関する。この組成物は、接着剤および封入剤、プリプレグおよびトウプレグの製造に特に適している。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂およびフェノールキャップされたポリウレタンの混合物は既知である。ポリウレタンは、通常、イソシアネートとヒドロキシ含有化合物とを反応させることにより得られる。得られるポリウレタン生成物は、もはや未反応のフェノール性ヒドロキシル基を含んでいてはいけない。このようなポリウレタン生成物は、硬化性コーティング剤を与えるためにエポキシ樹脂およびアミン硬化剤と組み合わされてもよいが、伝えられるところ、改善された弾性により区別される。米国特許第4,423,201号および同3,442,974号各を参照のこと。
【0003】
硬化生成物の衝撃強度および/または柔軟性を増強するために、エポキシ樹脂をブタジエンとアクリロニトリルに基づくコポリマーと混合することができる。しかしながら、このようなコポリマーは、通常、得られる硬化生成物の引張剪断強度およびガラス転移温度を低下させる。
【0004】
米国特許第5,278,257号(Muelhaupt)は、少なくとも1種の1,3−ジエンおよび少なくとも1種の極性エチレン系不飽和コモノマーに基づくコポリマー、特定の式のフェノール末端ポリウレタン、ポリ尿素またはポリ尿素ウレタンを含む組成物に言及し、クレームしている。前記ポリウレタン、ポリ尿素またはポリ尿素ウレタンは、末端イソシアネート基、アミノ基またはヒドロキシル基を除いた後、エポキシ樹脂への可溶性または分散性があり、これらの基の少なくとも1つは第3級アミンであることが必要であり、ポリウレタン、ポリ尿素またはポリ尿素ウレタンに対するコモノマーの重量比は、5:1〜1:5であり、かつエポキシ樹脂は1分子当り少なくとも2つの1,2−エポキシド基を有する。
【0005】
米国特許出願公開第2005/0070634号は、a)1つ以上のエポキシ樹脂;b)1つ以上のゴム変性エポキシ樹脂;c)1つ以上のイソシアネート末端プレポリマーと1つ以上のビスフェノール部分、フェノール部分、ベンジルアルコール部分、アミノフェニル部分またはベンジルアミノ部分を有する1つ以上のキャッピング化合物との反応生成物(該反応生成物は、前記キャッピング化合物で末端停止されている)を含む1つ以上の強化組成物;d)エポキシ樹脂のための、約100℃以上の温度で硬化を開始する1つ以上の硬化剤および1つ以上の触媒;およびe)場合により、エポキシ接着剤組成物において有用なフィラー、接着促進剤、湿潤剤およびレオロジー添加剤、を含む組成物を開示している。得られる接着剤組成物は、粘度が45℃で約20Pa.s〜約400Pa.sであると報告されている。
【0006】
また、エポキシ樹脂とベンゾオキサジンのブレンドも既知である。米国特許第4,607,091号(Schreiber)、同5,021,484号(Schreiber)、同5,200,452号(Schreiber)を参照のこと。このエポキシ樹脂が、ベンゾオキサジンの溶融粘度を下げることができ、加工が可能な粘度を維持しながらも充填材の充填量を高めることができるため、これらの組成物は、商業上、役に立つ可能性があるように思われる。しかしながら、エポキシ樹脂は、しばしばベンゾオキサジンが重合する温度を高めるので望ましくない。
【0007】
エポキシ樹脂、ベンゾオキサジンおよびフェノール樹脂の酸成分ブレンドも同様に既知である。米国特許第6,207,786号(Ishida)を参照のこと。
【0008】
ベンゾオキサジンおよびエポキシ以外の硬化性材料および/またはフェノール系のブレンド既知である。そのために、米国特許第6,620,905号(Musa)は、ベンゾオキサジン以外の反応性官能基がない特定のベンゾオキサジン化合物(開示されているがクレームされていないアリルおよびプロパギルは除いて)ならびにビニルエーテル、ビニルシラン、ビニルまたはアリル官能基を含有する化合物または樹脂、チオールエン、シンナミルまたはスチレン官能基を含有する化合物または樹脂、フマレート、マレエート、アクリレート、マレイミド、シアネートエステル、およびビニルシランとシンナミル、スチレン、アクリレートまたはマレイミドの両方の官能基を含有するハイブリッド樹脂、から選択される硬化性化合物または樹脂を含む、硬化性組成物を対象とし、クレームしている。
【0009】
さらに、米国特許第6,743,852号(Dershem)は、異なった熱膨張係数を有する接着剤材料として、液体ベンゾオキサジンおよび熱硬化性樹脂組成物の組合せを開示しており、これは、a)液体形態のベンゾオキサジン化合物、b)エポキシ、シアネートエステル、マレイミド、アクリレート、メタクリレート、ビニルエーテル、スチレン系、ビニルエステル、プロパギルエーテル、ジアリルアミド、芳香族アセチレン、ベンゾシクロブテン、チオレン、マレエート、オキサゾリン、およびイタコネートを含む熱硬化性化合物、c)場合により、1つ以上の抗酸化剤、ブリード制御剤、フィラー、希釈剤、カップリング剤、接着促進剤、軟化剤、染料および顔料、ならびにd)硬化開始剤、を含んでいる。
【0010】
Rimdusit等は、「Toughening of Polybenzoxazine by Alloying with Polyurethane Prepolymer and flexible Epoxy: A comparative study」、Polym. Eng. Sci. (2005) 288-296において、ポリベンゾオキサジンおよび軟性エポキシと混ぜ合わせたイソホロンジイソシアネート系ポリウレタン−プレポリマーの使用を教示する。
【0011】
改善された強靱性および衝撃後圧縮を有する硬化性組成物が、国際特許出願公開第2007/064801号(Li)に開示されている。開示されたこの硬化性組成物は、(a)種々のベンゾオキサジンを、(b)1つがヒドロキシ含有化合物、イソシアネート含有化合物およびフェノール性化合物から調製され、もう一つが第1付加物とエポキシ含有化合物から調製される付加物の組み合わせ、(c)エポキシ樹脂および(d)場合により強靱化剤、との組み合わせで含有する。
【0012】
先端技術にもかかわらず、いくつかの硬化性組成物における性能欠損のための強靱化剤を提供する代替硬化性組成物を提供することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第4,423,201号明細書
【特許文献2】米国特許第3,442,974号明細書
【特許文献3】米国特許第5,278,257号明細書
【特許文献4】国際特許出願公開第2005/0070634号パンフレット
【特許文献5】米国特許第4,607,091号明細書
【特許文献6】米国特許第5,021,484号明細書
【特許文献7】米国特許第5,200,452号明細書
【特許文献8】米国特許第6,620,905号明細書
【特許文献9】米国特許第6,743,852号明細書
【特許文献10】国際特許出願公開第2007/064801号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、N−アルキルベンゾオキサジン化合物およびN−アルケニルベンゾオキサジン化合物から選択される少なくとも1つのベンゾオキサジン成分を、ジイソシアネートから調製され得る末端キャップ化プレポリマーと組み合わせて含む組成物を提供する。このような本発明の硬化性組成物は、エポキシ樹脂を添加しない場合でさえ、十分な曲げ弾性率および強靱性を示す。しかしながら、本発明の硬化性組成物に、特定の態様に対して所望されるエポキシ樹脂を使用する場合のその有利な特性を欠くことなく、エポキシ樹脂を補充することができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち、本発明は以下を含んでなる硬化性組成物を提供する:
(A)N−アルキルベンゾオキサジン化合物およびN−アルケニルベンゾオキサジン化合物からなる群から選択される少なくとも1つのベンゾオキサジン成分、および、
B)1000〜54000g/molの範囲の数平均分子量を有する、下記一般構造のプレポリマー:
P−(X−CO−NH−D−NH−CO−Y−E)
[式中、Pは、オリゴマーまたはポリマーのz価の基であり;XおよびYは、それぞれNR’、OおよびSから選択され〔式中、R’は水素または脂肪族基、複素脂肪族基、芳香脂肪族基、複素芳香脂肪族基、芳香族基および複素芳香族基からなる群から選択される基である〕;Dは、ジイソシアネートの2つのイソシアネート基を除去し、2つの結合部位(価数)を形成する2価の基であり;Eは、脂肪族基、複素脂肪族基、芳香脂肪族基、複素芳香脂肪族基、芳香族基および複素芳香族基からなる群から選択される末端キャップ基であり;zは、1〜12の整数である]。
【0016】
本発明の硬化性組成物は、N−アルキルベンゾオキサジン化合物およびN−アルケニルベンゾオキサジン化合物からなる群から選択される少なくとも1つのベンゾオキサジン成分とプレポリマーを混合することにより調製することができる。
【0017】
該プレポリマーは、ポリマーP−(XH)〔式中、z個のXH基は、それぞれNHR’、OHまたはSHであり、ジイソシアネートD−(NCO)および末端キャッピング試薬E−YHと反応する〕を反応させることにより作ることができる。該反応は、下記構造:
P−(X−CO−NH−D−NCO)
〔式中の基は前記と同じ意味を有する〕を有するイソシアネート末端中間体を得るために、好ましくはz個のXH基をそれぞれ1分子のジイソシアネートと反応させることにより行われる。この中間体は、基本的に全ての末端イソシネート基を反応させて、上記の目的化合物を得るために、適当な量の末端キャッパーE−YHと最終的に反応する。
【0018】
適当なポリマーP−(XH)、ジイソシアネートD−(NCO)および末端キャッパーE−YHは、N−アルキルベンゾオキサジン化合物およびN−アルケニルベンゾオキサジン化合物と同様に以下で詳細に説明する。
【0019】
本発明の組成物は、接着剤、封入剤、ならびにプリプレグおよびトウプレグなどの強化部材の製造のための物質として特に適している。
【0020】
本発明は、本発明の組成物の硬化生成物、特に繊維層または繊維束を含む硬化生成物、およびそのような物質の製造方法も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ベンゾオキサジン成分
本発明のベンゾオキサジン成分は、N−アルキルベンゾオキサジン化合物およびN−アルケニルベンゾオキサジン化合物からなる群から選択される。
【0022】
本明細書中で用いられる用語「N−アルキルベンゾオキサジン化合物」は、ベンゾオキサジン窒素原子に直接結合したアルキル基を有する全てのベンゾオキサジン化合物をさす。
【0023】
本明細書中で用いられる用語「N−アルケニルベンゾオキサジン化合物」は、ベンゾオキサジン窒素原子に直接結合したアルケニル基を有する全てのベンゾオキサジン化合物をさす。
【0024】
N−アルキルベンゾオキサジン化合物およびN−アルケニルベンゾオキサジン化合物の上記定義によれば、少なくとも1つのベンゾオキサジン部分を含んでなる全ての硬化性モノマー、オリゴマーまたはポリマーを使用し得る。好ましくは、4個までのベンゾオキサジン部分を含有するモノマーを、単独化合物のかたちで、または2個以上の異なるベンゾオキサジンの混合物のかたちで使用する。
【0025】
1〜4個のベンゾオキサジン部分を含有する、以下の広範囲の異なる適当なN−アルキルまたはN−アルケニルベンゾオキサジンが存在する。
【0026】
本発明のN−アルキルベンゾオキサジン化合物およびN−アルケニルベンゾオキサジン化合物の1つの群は、下記構造を包含し得る。
【化1】
〔式中、oは1〜4であり、Xは、直結合(oが2の場合)、アルキル(oが1の場合)、アルキレン(oが2〜4の場合)、カルボニル(oが2の場合)、酸素(oが2の場合)、チオール(oが1の場合)、チオエーテル(oが2の場合)、スルホキシド(oが2の場合)およびスルホン(oが2の場合)からなる群から選択され、Rはアルキルおよびアルケニルから選択され、およびRは、水素、アルキルおよびアルケニルから選択されるか、Rは、ベンゾオキサジン構造からナフトオキサジン基を作り出す2価の基である。〕
【0027】
より具体的には、構造Iにおける本発明のN−アルキルベンゾオキサジン化合物およびN−アルケニルベンゾオキサジン化合物は、以下の構造を包含し得る。
【化2】
〔式中、Xは、直結合、CH、C(CH、C=O、O、S、S=OおよびO=S=Oから選択され、RおよびRは、同じか異なっていて、アルキル基またはアルケニル基であるか、Rは、同じか異なっていて、上記と同じ意味を有する。〕
【0028】
構造IIにおける代表的なN−アルキルベンゾオキサジン化合物およびN−アルケニルベンゾオキサジン化合物は、以下の構造を含む。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
〔式中、R、RおよびRは、上記と同じ意味を有する。〕
【0029】
構造Iに包含されるものではないが、さらなるN−アルキルベンゾオキサジン化合物およびN−アルケニルベンゾオキサジン化合物は、以下の構造の範囲にある:
【化7】
【化8】
【化9】
〔式中、R、RおよびRは、上記と同じ意味を有し、RはRまたはRと定義される。〕
【0030】
適当なN−アルキルベンゾオキサジン化合物およびN−アルケニルベンゾオキサジン化合物の具体例には、以下のものが含まれる。
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【0031】
N−アルキルベンゾオキサジン化合物およびN−アルケニルベンゾオキサジン化合物からなる群から選択されるベンゾオキサジン成分は、多官能性ベンゾオキサジン化合物および単官能性ベンゾオキサジン化合物の組み合わせを含んでいてよく、または、1つ以上の多官能性ベンゾオキサジン化合物または1つ以上の単官能性ベンゾオキサジン化合物の組み合わせであってもよい。
【0032】
N−アルキルベンゾオキサジン化合物およびN−アルケニルベンゾオキサジン化合物からなる群から選択される単官能性ベンゾオキサジン化合物の例は、下記構造を包含する。
【化14】
〔式中、Rはアルキル基またはアルケニル基、あるいは置換し得る部分の1つ、いくつかまたは全てが置換されたアルキル基またはアルケニル基であり、Rは、水素、ハロゲン、アルキルおよびアルケニルから選択され、またはRは、ベンゾオキサジン構造からナフトオキサジン基を作り出す2価の基である。〕
【0033】
1つの好ましい実施態様において、本発明の少なくとも1つのベンゾオキサジン成分は、1つまたはいくつかのN−アルキルベンゾオキサジン化合物のみからなる。
【0034】
別の好ましい実施態様において、本発明の少なくとも1つのベンゾオキサジン成分は、1つまたはいくつかのN−アルケニルベンゾオキサジン化合物のみからなる。
【0035】
しかしながら、別の好ましい実施態様においては、本発明の少なくとも1つのベンゾオキサジン成分が、少なくとも1つのN−アルキルベンゾオキサジン化合物および少なくとも1つのN−アルケニルベンゾオキサジン化合物の混合物からなることも好適である。
【0036】
ベンゾオキサジン化合物は、現在、Huntsman Advanced Materials; Georgia-Pacific Resins, Inc.; および四国化成工業株式会社(千葉、日本)を含むいくつかの供給源から入手し得る。中でも、四国化成工業株式会社は、ビスフェノールA−アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールA−メチルアミン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールF−アニリン型ベンゾオキサジン樹脂を提供する。しかしながら、必要に応じて、市販の原料を使用する代わりに、通常、フェノール性化合物(例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSまたはチオジフェノール)をアルデヒドおよびアリールアミンと反応させることにより、ベンゾオキサジンを調製し得る。米国特許第5,543,516号(参照によりここに明確に組み込まれる)は、反応物質の濃度、反応性および温度によって、反応時間を数分から数時間に変更することができるベンゾオキサジン化合物を形成する方法を開示する。一般的に、米国特許第4,607,091号(Schreiber)、同5,021,484号(Schreiber)、および同5,200,452号(Schreiber)を参照のこと。
【0037】
前記ベンゾオキサジン化合物はいずれも、部分的に開環ベンゾオキサジン構造を含んでいてよい。しかしながら、本発明の目的のため、これらの構造はベンゾオキサジン部分、特に開環ベンゾオキサジン部分であるとみなされる。
【0038】
N−アルキルベンゾオキサジン化合物およびN−アルケニルベンゾオキサジン化合物からなる群から選択されるベンゾオキサジン成分は、本発明の組成物中に、本発明の硬化性組成物の総重量に基づいて、約50〜約95重量%、より好ましくは約55〜約85重量%、特に好ましくは約60〜約80重量%の範囲の量で存在し得る。50重量%未満の量は、通常、硬化組成物の曲げ弾性率に悪影響を及ぼし、95重量%を超えるN−アルキルおよび/またはN−アルケニルベンゾオキサジン化合物は、K1C値およびG1C値により示される強靱性のほんの少しの増加を伴う硬化組成物を生じるであろう。
【0039】
ベンゾオキサジン重合は、上昇温度下で自己開始することができ、また、無水物またはカチオン性開始剤、例えばルイス酸および他の既知のカチオン性開始剤、例えば金属ハロゲン化物;有機金属誘導体;金属ポルフィリン化合物、例えばアルミニウムフタロシアニンクロリド;メチルトシレート、メチルトリフラート、およびトリフルオロメタンスルホン酸(Triflic acid);およびオキシハライド、の介在によっても自己開始し得る。同様に、塩基性物質、例えばイミダゾールまたは無水物を、重合を開始するために使用してもよい。
【0040】
プレポリマー(「PP」)
54000g/molを超える数平均分子量を有するプレポリマーPPは本発明のベンゾオキサジン成分に対して低い相溶性を示すため、これらのポリマーは本発明から除外される。
【0041】
用語「相溶性」は、プレポリマーと少なくとも1つのベンゾオキサジン成分を混合することにより、硬化性組成物の肉眼で見える相分離が全く生じないことを意味する。
【0042】
さらに、54000g/molを超える数平均分子量を有するプレポリマーPPは、前記硬化性組成物の粘度が増加することにより本発明の硬化性組成物の簡単で低コストの加工可能性を著しく制限するため、これらのポリマーは本発明から除外される。
【0043】
前述のとおり、本発明のPPは、1つ以上のヒドロキシ、アミノおよび/またはチオール含有ポリマー、特にプレポリマー中に熱可塑性特性を導入したポリマーなど、と1つ以上のジイソシアネートおよびイソシアネートに対して反応性である1つのヒドロキシ基、チオール基またはアミノ基を含んでなる少なくとも1つ以上の末端キャッピング剤(「末端キャッパー」)を反応させることにより調製される。
【0044】
これらの反応物質に対して、ヒドロキシ、アミノおよび/またはチオール含有ポリマーを、ヒドロキシ、アミノおよび/またはチオール含有ポリマーまたはオリゴマーのイソシアネートキャッピングを確保するのに十分な時間と量で、1つ以上のジイソシアネートと反応させる。すなわち、ポリマーまたはオリゴマーを1つ以上のジイソシアネートと混合してよく、約50℃〜約80℃の範囲の温度で0.5〜2.5時間、好ましくは不活性雰囲気(窒素雰囲気生成装置など)のもと反応させ、末端キャッパーと反応して本発明の組成物において使用するプレポリマーの形成をもたらすイソシアネート末端プレポリマー中間体を形成する。
【0045】
同様に、プレポリマーを調製するために代替経路も使用し得る。
【0046】
そのような代替経路の実例は、反応を縮合触媒の存在下実行する経路である。そのような触媒の例には、カルボン酸のスズ塩、例えばオクタン酸スズ、オレイン酸スズ、酢酸スズおよびラウリン酸スズ;ジアルキルスズジカルボキシレート、例えばジブチルスズジラウレートおよびジブチルスズジアセテート;第三級アミンおよびスズメルカプチド等が含まれる。使用する際の触媒の量は、反応物質の性質に応じて、通常、触媒する反応物質の約0.00025〜約5重量%である。
【0047】
PPは、1000〜54000g/molの範囲の数平均分子量(該数平均分子量は、較正目的のためにポリスチレン標準を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(「GPC」)での測定による)を有すべきである。
PPの数平均分子量は、好ましくは少なくとも2000g/mol、好ましくは少なくとも5000g/mol、最も好ましくは少なくとも10000g/molである。
さらに、PPの数平均分子量は、好ましくは50000g/molより小さく、好ましくは40000g/molより小さく、最も好ましくは30000g/molよりも小さい。
【0048】
本発明の1つの実施態様において、PPの数平均分子量は、2000g/mol〜40000g/molの範囲であり、好ましくは3000g/mol〜30000g/molの範囲、より好ましくは10000g/mol〜30000g/molの範囲である。
【0049】
PP(すなわち、成分B)を本発明の硬化性組成物の総重量に基づいて5〜50重量%、例えば15〜45重量%、最も好ましくは20〜40重量%の量で用いてもよい。
【0050】
ヒドロキシ、アミノおよび/またはチオール含有ポリマー P−(XH)
P−(XH)ポリマーのポリマーまたはオリゴマー部分Pは、プレポリマーに対して熱可塑性特性を導入するための特質の部分となり得る。したがって、該化学的性質は、包含する様々なポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリブタジエンおよびポリイソシアネート(中でも、ポリエーテルが望ましい)において変化する。
【0051】
Pは、直鎖状または分枝状である。P自体が、低分子量のポリオール、ポリアミンまたはポリチオールの反応に由来する尿素またはチオウレタン基を含み得る。例えばポリエーテルジオールのようなポリエーテルポリオールを得ることができるイソシアネート末端低分子量モノマーを形成するために、例えばグリセロールまたはトリメチロールプロパンのようなトリオールを、例えばジイソシアネートのようなポリイソシアネートと反応させることができる。
【0052】
プレポリマーを作るために用いる(P−(XH)と定義した)ヒドロキシ、アミノおよび/またはチオール含有ポリマーは、好ましくは500〜4000g/mol、より好ましくは700〜2000g/mol、最も好ましくは800〜1600g/molの数平均分子量(M)(該数平均分子量は、較正目的のためにポリスチレン標準を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(「GPC」)での測定による)を有すべきである。
【0053】
最も好ましい基Pは、ポリアルキレンオキシド基である。ポリアルキレンオキシドは、酸素原子により分断され、かつヒドロキシ、アミノまたはチオールにより末端化された一連の炭化水素基を含む。
【0054】
該炭化水素基は、好ましくは直鎖または分枝鎖のアルキレン基であり、好ましくは2〜約6個の炭素原子、例えば約2〜約4個の炭素原子、望ましくは約3〜約4個の炭素原子を有すべきである。
【0055】
したがって、該アルキレン基は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドまたはテトラヒドロフランに由来していてよい。ヒドロキシ、アミノおよび/またはチオール末端化ポリアルキレンオキシドは、好ましくは約500〜約4000g/mol、例えば約700〜2000g/mol、最も好ましくは800〜1800g/molの数平均分子量(該数平均分子量は、較正目的のためにポリスチレン標準を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(「GPC」)での測定による)を有すべきである。
【0056】
本発明の目的に対して、プレポリマーPPの調製のためにただ1つのP−(XH)だけでなく、P−(XH)の混合物を使用し得る。これらの混合物において、Pの性質ならびに分子量は、適当な範囲内で変化してよい。
【0057】
P−(XH)として使用する好ましいヒドロキシ含有ポリマーは、構造XVIIIにより記載し得る。
【化15】
【0058】
式中、RおよびRは、独立してH、メチルまたはエチルであり、zは1〜16、好ましくは2〜3であり、xは12〜45、例えば20〜35である。一般式XXのヒドロキシ含有化合物において、RおよびRの一方または両方がHであり、zが2〜3であり、xの値により決定する数平均分子量が500〜4000g/mol、より好ましくは700〜2000g/mol、最も好ましくは800〜1600g/molであることが、最も好ましい。
【0059】
P−(XH)として使用する好ましいアミノ含有ポリマーは、構造XIXにより記載し得る。
【化16】
〔式中、R、R、zおよびxは、構造XVIIIと同じ意味を有し、RはHまたはアルキルである〕。これらの化合物は、ポリ尿素含有プレポリマーをもたらす。
【0060】
ヒドロキシおよびアミノ含有ポリマーまたはオリゴマーに対する構造を示したが、本発明に使用するための代替はこれらのチオールバージョンを含む。そして、当然そのような化合物を本発明において使用し得る。
【0061】
ヒドロキシ、アミノおよび/またはチオール含有ポリアルキレンエーテルは、1つ以上のジイソシアネートのイソシアネート基に対するOH、アミノおよび/またはSH基が、1:0.9〜1:4.0、例えば1:1.0〜1:2.5、例えば1:1.85の範囲のモル比において使用すべきである。
【0062】
P−(XH)の整数zは、1〜12、好ましくは1〜6、より好ましくは2〜4で変化し、最も好ましいzは、2または3である。
【0063】
ジイソシアネート D−(NCO)
本発明のためのジイソシアネートは、好ましくは約160g/mol〜500g/molの分子量の、芳香族、脂肪族または脂環式ジイソシアネートから選択することができる。
【0064】
使用し得るジイソシアネートには、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、ヘキサデカメチレンジイソシアネート、オクタデカメチレンジイソシアネート、エイコサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサメチレンジイソシアネート、シクロペンタレンジイソシアネート、またはシクロヘプタレンジイソシアネート、またはビス−シクロヘキサレン、シクロヘキシルメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、フェニルジイソシアネート、トルエンジイソシアネート(例えば2,4−ジイソシアネートトルエンおよび2,6−ジイソシアネートトルエン)、4,4’−ジフェニレンメタンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、1.5−ナフタレンジイソシアネート、1,8−ナフタレンジイソシアネート(1,8−NDI)、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロ−ヘキシルメチレンジイソシアネート、1,3−ビス−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、シクロへキシレンジイソシアネート、テトラクロロフェニレンジイソシアネート、2,6−ジエチル−p−フェニレンジイソシアネート、3,5−ジエチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニル−メタン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、オクタデカメチレンジイソシアネート、2−クロロプロパンジイソシアネート、2,2’−ジエチルエーテルジイソシアネート、3−(ジメチルアミン)ペンタンジイソシアネート、テトラクロロフェニレンジイソシアネート−1,4、3−ヘプタンジイソシアネート、トランスビニレンジイソシアネート、1,6−ジイソシアナトヘキサン、3,5,5−トリメチル−1−イソシアノ−3−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホレンジイソシアネート)、N,N’,N'''−トリ−(6−イソシアナトヘキシル)ビューレット、2,2,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、m−テトラメチルキシレンジイソシネート、1−メチル−2,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、三量体イソホレン、ジイソシアネート、三量体ヘキサンジイソシアネートおよびメチル2,6−ジイソシアナトヘキサノエートが含まれる。
【0065】
本発明の好ましい実施態様において、ジイソシアネートは、2,4−トルエンジイソシアネート、2,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシレンジイソシネート、イソホロンジイソシアネートおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0066】
末端キャッピング剤 E−YH
イソシアネート末端化PPのイソシアネート末端基と反応するための1つ以上の末端キャッピング剤、一般式E−YH[式中、Eは、脂肪族基、複素脂肪族基、芳香脂肪族基、複素芳香脂肪族基、芳香族基および複素芳香族基からなる群から選択される末端キャップ基であり、YHは、NHR’〔R’は前記P−(XH)のXH基と同じ意味を有する〕、OHおよびSHから選択される]を有する。
【0067】
さらにEは、例えばOH基、第1級および第2級アミノ基、チオール基、オキサゾリン基、ベンゾオキサジン基またはシラン基のような反応性官能基により置換されていてよい。
【0068】
好ましいEはフェノール基である。より好ましいE−YHは、ビスフェノールA、ビスフェノールP、ビスフェノールM、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールAP、ビスフェノールEまたはビスフェノールTMCのようなビスフェノール、あるいは、p−ヒドロキシフェニルエーテルおよびp−ヒドロキシフェニルチオエーテルのようなヒドロキシフェニルエーテル、あるいは4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2’−ジヒドロキシジフェニル、あるいは4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、レゾルシノールまたはヒドロキノンである。
【0069】
しかしながら、Eは、必ずしも反応性官能基または芳香族基を含んでいる必要はない。例えば、n−ブチルアミンを末端キャッパー(E=n−ブチルおよびYH=NH)またはカルダノール(E=m−C1531−2n−フェニル、n=0、1、2、3およびYH=OH)として使用し得る。
【0070】
しかしながら、高いG1c値の曲げ弾性率を考慮すると、Eがフェノール基である場合、最も好ましくはE−YHがビスフェノールAである場合に最良の結果が観測される。
【0071】
末端キャッピング剤およびイソシアネート末端化PPは、適当な温度で、イソシアネート末端基とキャッピング剤のYH基とが反応するために十分な時間反応させ得る。好ましくは、この反応は、約60〜約100℃、好ましくは約70〜約90℃、最も好ましくは約80〜90℃の範囲の温度で、30分〜4時間続けられる。上述した任意の縮合触媒(例えばジブチルスズジラウレート)のような触媒を、PPの製造における反応時間を促進するために使用してもよい。当然、そのような化合物の組み合わせも使用し得る。
【0072】
好ましくは、基本的に全ての1つ以上のジイソシアネートを末端キャッピング剤と反応させる(末端キャッパーの適当な量は、そのような反応を促進する量である)。当然ながら正確な量は、付加物を形成するために使用する他の反応物質の性質、特質および量に依存するであろうし、また、当業者の裁量に委ねられるであろう。
【0073】
一般構造P−(X−CO−NH−D−NCO)の好ましいプレポリマーにおいて、Pはポリエーテルであり、XおよびYはOであり、Dは、2,4−トルエンジイソシアネート、2,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシレンジイソシネートまたはイソホロンジイソシネートの2つのイソシアネート基を反応させることにより得られる基であり、Eはフェノール性ヒドロキシ基を含む芳香族基であり、zは2または3である。
【0074】
エポキシ樹脂
本発明の組成物はエポキシ樹脂の添加を必要としないが、本発明の1つの実施態様において、本発明の組成物は成分C)として1つ以上のエポキシ樹脂(例えばエポキシ含有化合物)をさらに含有してよい。好ましくは、使用するエポキシ樹脂の量は60重量%を超えず、より好ましくは40重量%を超えず、最も好ましくは30重量%を超えない。本質的にエポキシ樹脂を含まない本発明の硬化性組成物が特に好ましい。本発明の硬化性組成物において使用するための市販のエポキシ含有化合物を以下に挙げる。
【0075】
使用されるエポキシ含有化合物には、多官能性エポキシ含有化合物、例えばC〜C28アルキルポリフェノールグリシジルエーテル;ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン(またはビスフェノールF、例えば日本化薬(日本)製のRE−303−SまたはRE−404−Sなど)、4−4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン(またはビスフェノールA)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメチルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、およびトリス(4−ヒドロキシフェニル)メタンのポリグリシジルエーテル;遷移金属錯体のポリグリシジルエーテル;上記ジフェノールの塩化物および臭化物;ノボラックのポリグリシジルエーテル;芳香族炭化水素とジハロアルカンまたはジハロゲンジアルキルエーテルとの塩のエステル化により得られるジフェノールのエーテルをエステル化することにより得られるジフェノールのポリグリシジルエーテル;フェノールと、少なくとも2つのハロゲン元素を有する長鎖ハロゲンパラフィンとの縮合により得られるポリフェノールのポリグリシジルエーテル;フェノールノボラックエポキシ樹脂;クレゾールノボラックエポキシ樹脂;およびそれらの組み合わせが含まれ得る。
【0076】
本発明の使用に適当な市販されているエポキシ樹脂は、フェノール性化合物のポリグリシジル誘導体であり、例えば、商標名EPON825、EPON826、EPON828、EPON1001、EPON1007およびEPON1009であり、Huntsman製のAraldite CY179またはHexion製のEPI−REZ3510、EPI−REZ3515、EPI−REZ3520、EPI−REZ3522、EPI−REZ3540またはEPI−REZ3546の水性分散体のような脂環式エポキシ含有化合物;Dow Chemical社製のDER331、DER332、DER383、DER354、およびDER542;Huntsman製のGY285;日本化薬製のBREN−Sなどである。他の適当なエポキシ樹脂には、ポリオールなどから調製されるポリエポキシドおよびフェノール−ホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジル誘導体が含まれ、フェノール−ホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジル誘導体は、Dow Chemical社製のDEN431、DEN438、およびDEN439およびHuntsman製の水性分散体ARALDITE PZ323の商標名のもと入手可能である。
【0077】
クレゾール類似体も、Huntsman社から、ECN1273、ECN1280、ECN1285およびECN1299または水性分散体ARALDITE ECN1400を入手し得る。SU−8およびEPI−REZ5003は、Hexionより入手可能なビスフェノールA型エポキシノボラックである。接着性、柔軟性および強靱性を改善するためのエポキシまたはフェノキシ官能性変性剤(例えばHELOXYブランドエポキシ変性剤67、71、84および505)を使用し得る。使用時、エポキシまたはフェノキシ官能性変性剤を、硬化性樹脂に対して、約1:1〜約5:1の量で使用し得る。
当然異なるエポキシ樹脂(エポキシ含有化合物)の組み合わせも本発明の使用に好ましい。
【0078】
本発明の組成物において、エポキシ含有化合物を、硬化性組成物の総重量に基づいて、好ましくは0〜60重量%、より好ましくは5〜50重量%、最も好ましくは10〜30重量%の量で使用し得る。
【0079】
任意の添加剤
本発明の組成物は、当業者に既知の硬化触媒を含有し得る。
硬化剤の例としては、一般的に、例えばフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、またはフェノール−ホルムアルデヒド樹脂のようなフェノール性化合物、無水酢酸などの無水物、イミダゾールおよびイミダゾール誘導体などのアミン、パラ−トルエンスルホン酸などのスルホン酸、ハロゲン化ホウ素またはハロゲン化アルミニウムのようなルイス酸および脂肪族カルボン酸および芳香族カルボン酸が挙げられる。
【0080】
硬化剤を使用する場合、硬化剤は組成物を硬化するために十分な量、例えば硬化性組成物100部に対して約1〜約15部の量、例えば硬化性組成物100部に対して約3〜約10部の量で存在させる。
【0081】
一般的に、本発明の組成物の硬化温度は120〜220℃、例えば150〜190℃であり、時間は約2分〜5時間、より好ましくは約60分〜180分である。したがって、本発明の組成物を比較的穏やかな温度で使用することができ、非常に良好な生産性を達成することができる。必要な場合には、硬化工程を中断することにより、または、高温用の硬化剤を使用する場合にはより低い温度で硬化性組成物を部分的に硬化することにより、硬化を二段階で行うことができる。
【0082】
必要な場合には、硬化性組成物の粘度を下げるために、反応性希釈剤(例えばスチレンオキシド、ブチルグリシジルエーテル、2,2,4−トリメチルフェニルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテルまたは、合成された高度に分枝した主に第三級脂肪族モノカルボン酸のグリシジルエステル、オキサゾリン基含有化合物)を硬化性組成物に添加してもよい。
【0083】
さらに、強靱化剤、可塑剤、延長剤、マイクロスフェア、フィラーおよび剛性剤、例えば、コールタール、ビチューメン、織物用繊維、ガラス繊維、アスベスト繊維、ホウ素繊維、炭素繊維、鉱物ケイ酸塩、雲母、粉末石英、水和酸化アルミニウム、ベントナイト、珪灰石、カオリン、シリカ、アエロゲルまたは金属粉末、例えば、アルミニウム粉末または鉄粉末、および、また、顔料および色素、例えば、カーボンブラック、酸化染料および二酸化チタン、難燃剤、チクソ剤、流動制御剤、例えば、シリコーン、ワックスおよびステアリン酸塩を使用することができ、また、これらを一部、離型剤、接着促進剤、抗酸化剤および光安定剤として使うこともでき、その多くの粒径および分布を制御して本発明の組成物の物理的特性および性能を変えることができる。
【0084】
フィラーを使用する場合、フィラーは所望のレオロジー特性を提供するのに十分な量で使用し得る。フィラーは、最大約50重量%、例えば、約5〜約32重量%、例えば、約10〜約25重量%の量で使用し得る。
【0085】
フィラーは、無機物、例えば、シリカであってよい。例えば、シリカフィラーは、シリカナノ粒子であってもよい。シリカナノ粒子は、エポキシ樹脂に予備分散し、Nano Resins(ドイツ)から入手可能な商品名NANOPOX、例えば、NANOPOX XP0314、XP0516、XP0525、およびXP F360から選択することができる。これらのNANOPOX製品は、最大約50重量%の濃度のエポキシ樹脂へのシリカナノ粒子分散体である。これらのNANOPOX製品は、粒径が約5nm〜約80nmであると考えられる。NANOPOX XP0314は、脂環式エポキシ樹脂中の粒径サイズが直径50nm未満であるシリカ粒子を40重量%含んでいることが製造者から報告されている。他の種類のフィラーには、例えば国際特許出願公開第2007/064801号(Li)(参照によりここの明確に組み込まれる)に開示されるようなコア−シェル粒子が含まれる。
【0086】
本発明の組成物の物理的特性
本発明の硬化性組成物を硬化して、特にエポキシ樹脂を含有する必要がない処方において、成分B)(すなわちPP)を含有しない組成物に対する値と同等またはそれ以上の曲げ弾性率および曲げ強度を有する硬化生成物を得ることができる。さらに、強靱性〔「指標」−K1CおよびG1C値(K1Cは臨界応力拡大係数を意味し、G1Cは臨界エネルギー解放率を意味する)〕は、成分B)を含有しない組成物と比較して増加すべきである。
【0087】
本発明の1つの目的は、硬化後、2800MPa以上の、好ましくは3000MPa以上の、最も好ましくは3500MPa以上の曲げ弾性率を有し、200J/m以上の、好ましくは250J/m以上の、最も好ましくは350J/m以上の、または少なくとも400J/mの、または少なくとも450J/mのG1C値を示す硬化性組成物を提供することである。
【0088】
1CおよびG1C値は、いわゆる「単一端ノッチ曲げ(SENB)」試験試料(サイズ:56mm×12.7mm×3.2mm)を用いて、ASTM D5045−96に従って測定し得る。
【0089】
上述したように、本発明は、本発明の熱硬化性組成物を注入した繊維層または繊維束から形成されるプリプレグまたはトウプレグの形成における、硬化性組成物の使用に関する。
【0090】
これに関して、本発明は、プリプレグまたはトウプレグの製造方法に関する。そのような方法には、(a)繊維層または繊維束を提供する工程;(b)本発明の硬化性組成物を提供する工程;および(c)プリプレグまたはトウプレグ組立品をそれぞれ形成するために、熱硬化性組成物と繊維層または繊維束を結合する工程、および、プリプレグまたはトウプレグをそれぞれ形成するために、熱硬化性組成物を繊維層または繊維束に注入するのに十分に高い温度および圧力条件に、得られる組立品を暴露する工程、が含まれる。
【0091】
別のプリプレグまたはトウプレグの製造方法には、(a)繊維層または繊維束を提供する工程;(b)本発明の液体状の熱硬化性組成物を提供する工程;および(c)熱硬化性組成物を繊維層または繊維束に注入するために、液体硬化性組成物中に繊維層または繊維束を通す工程、および(d)過剰の熱硬化性組成物をプリプレグまたはトウプレグ組立品から除去する工程、が含まれる。
【0092】
繊維層または繊維束を、一方向繊維、織物繊維、短繊維、不織布繊維または長い不連続繊維から構築することができる。
【0093】
選択される繊維は、炭素、ガラス、アラミド、ホウ素、ポリアルキレン、石英、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリp−フェニレンベンゾビスオキサゾール、シリコンカーバイド、フェノールホルムアルデヒド、フタル酸およびナフテノエートから選択することができる。
【0094】
炭素は、ポリアクリロニトリル、ピッチおよびアクリルから選択され、ガラスは、Sガラス、S2ガラス、Eガラス、Rガラス、Aガラス、ARガラス、Cガラス、Dガラス、ECRガラス、ガラスフィラメント、ガラス短繊維、Tガラスおよび酸化ジルコニウムガラスから選択される。
【0095】
本発明の組成物(およびそれらから調製されるプリプレグおよびトウプレグ)は、特に、航空宇宙産業および産業最終用途のための複合部品の製造及び組立、複合体部品と金属部品の結合、サンドイッチ構造のためのコアおよびコア充填材、および複合体の表面仕上げに有用である。
【0096】
本発明の組成物は、接着剤の形態であってもよく、この場合、1つ以上の接着促進剤、難燃剤、フィラー(例えば、上記の無機フィラー、または異なったフィラー)、熱可塑性添加物、反応性または非反応性希釈剤、およびチクソ剤を含んでいてもよい。さらに、接着剤の形態である本発明の組成物をフィルム状にすることができ、この場合、支持体としては、ナイロン、ガラス、炭素、ポリエステル、ポリアルキレン、石英、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリp−フェニレンベンゾビスオキサゾール、シリコンカーバイド、フェノールホルムアルデヒド、フタレートおよびナフテノエートから構成されたものが挙げられる。
【実施例】
【0097】
本発明の強靱化剤の合成
1.1 PTHF1400を用いたプレポリマー#1(PU I)の合成
101.7gのポリテトラヒドロフラン(M=1400g/mol)および1.0gのトリメチロールプロパンを混合し、70℃で溶解し、水を除去した。この混合物に、27.1gの2,4−トルエンジイソシアネート(2,4−TDI)を攪拌しながら加えた。その後、この混合物を75℃で40分間攪拌した。第2工程において、過剰なイソシアネート基の反応を終了するために、33.2gのビスフェノールAおよび約30mgのジブチルスズジラウレート(DBTL)を75℃で加え、混合物を85〜90℃で2時間攪拌した。反応の進行は混合物のNCO含量により観察した。最終生成物は、いかなる残余の遊離NCO基をも含んでいない。
【0098】
1.2 PTHF1400/2000を用いたプレポリマー#2(PU II)の合成
101.7gのポリテトラヒドロフラン(M=1400g/mol)および144.0gのポリテトラヒドロフラン(M=2000g/mol)、および2.0gのトリメチロールプロパンを混合し、70℃で溶解し、水を除去した。この混合物に、54.2gの2,4−トルエンジイソシアネート(2,4−TDI)を攪拌しながら加えた。その後、この混合物を75℃で40分間攪拌した。第2工程において、過剰なイソシアネート基の反応を終了するために、66.4gのビスフェノールAおよび約30mgのDBTLを75℃で加え、混合物を85〜90℃で2時間攪拌した。反応の進行は混合物のNCO含量により観察した。最終生成物は、いかなる残余の遊離NCO基をも含んでいない。
【0099】
1.3 PTHF1400および増加量のTMPを用いたプレポリマー#3(PU III)の合成
101.7gのポリテトラヒドロフラン(M=1400g/mol)および2.0gのトリメチロールプロパンを混合し、70℃で溶解し、水を除去した。この混合物に、29.1gの2,4−トルエンジイソシアネートを攪拌しながら加えた。その後、この混合物を75℃で40分間攪拌した。第2工程において、過剰なイソシアネート基の反応を終了するために、33.2gのビスフェノールAおよび約30mgのDBTLを75℃で加え、混合物を85〜90℃で2時間攪拌した。反応の進行は混合物のNCO含量により観察した。最終生成物は、いかなる残余の遊離NCO基をも含んでいない。
【0100】
1.4 PPG1010を用いたプレポリマー#4(PU IV)の合成
77.5gのポリプロピレングリコール(M=1000g/mol)および1.0gのトリメチロールプロパンを混合し、70℃で溶解し、水を除去した。この混合物に、27.1gの2,4−トルエンジイソシアネートを攪拌しながら加えた。その後、この混合物を75℃で40分間攪拌した。第2工程において、過剰なイソシアネート基の反応を終了するために、33.2gのビスフェノールAおよび約30mgのDBTLを75℃で加え、混合物を85〜90℃で2時間攪拌した。反応の進行は混合物のNCO含量により観察した。最終生成物は、いかなる残余の遊離NCO基をも含んでいない。
【0101】
1.5 PTHF2000を用いたプレポリマー#5(PU V)の合成
100.0gのポリテトラヒドロフラン(M=2000g/mol)を70℃で溶解し、水を除去した。この混合物に、17.4gの2,4−トルエンジイソシアネートを攪拌しながら加えた。その後、この混合物を75℃で40分間攪拌した。第2工程において、過剰なイソシアネート基の反応を終了するために、22.8gのビスフェノールAおよび約30mgのDBTLを75℃で加え、混合物を85〜90℃で2時間攪拌した。反応の進行は混合物のNCO含量により観察した。最終生成物は、いかなる残余の遊離NCO基をも含んでいない。
【0102】
1.6 PTHF1800を用いたプレポリマー#6(PU VI)の合成
130.7gのポリテトラヒドロフラン(M=1800g/mol)および1.0gのトリメチロールプロパンを混合し、70℃で溶解し、水を除去した。この混合物に、27.1gの2,4−トルエンジイソシアネートを攪拌しながら加えた。その後、この混合物を75℃で40分間攪拌した。第2工程において、過剰なイソシアネート基の反応を終了するために、33.2gのビスフェノールAおよび約30mgのDBTLを75℃で加え、混合物を85〜90℃で2時間攪拌した。反応の進行は混合物のNCO含量により観察した。最終生成物は、いかなる残余の遊離NCO基をも含んでいない。
【0103】
1.7 PTHF1000/2000およびTMXDIを用いたプレポリマー#7(PU VII)の合成
48.4gのポリテトラヒドロフラン(M=1000g/mol)、48.4gのポリテトラヒドロフラン(M=2000g/mol)、および1.0gのトリメチロールプロパンを混合し、70℃で溶解し、水を除去した。この混合物に、38.1gのm−テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)を攪拌しながら加えた。その後、この混合物を75℃で40分間攪拌した。第2工程において、過剰なイソシアネート基の反応を終了するために、33.2gのビスフェノールAおよび約30mgのDBTLを75℃で加え、混合物を85〜90℃で2時間攪拌した。反応の進行は混合物のNCO含量により観察した。最終生成物は、いかなる残余の遊離NCO基をも含んでいない。
【0104】
1.8 PTHF1400および4,4’−MDIを用いたプレポリマー#8(PU VIII)の合成
101.7gのポリプロピレングリコール(M=1400g/mol)および1.0gのトリメチロールプロパンを混合し、70℃で溶解し、水を除去した。この混合物に、39.0gの4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート(4,4’−MDI)を攪拌しながら加えた。その後、この混合物を75℃で40分間攪拌した。第2工程において、過剰なイソシアネート基の反応を終了するために、32.9gのビスフェノールAおよび約30mgのDBTLを75℃で加え、混合物を85〜90℃で2時間攪拌した。反応の進行は混合物のNCO含量により観察した。最終生成物は、いかなる残余の遊離NCO基をも含んでいない。
【0105】
1.9 PTHF1400およびHDIを用いたプレポリマー#9(PU IX)の合成
101.7gのポリテトラヒドロフラン(M=1400g/mol)および1.0gのトリメチロールプロパンを混合し、70℃で溶解し、水を除去した。この混合物に、29.0gのヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を攪拌しながら加えた。その後、この混合物を75℃で40分間攪拌した。第2工程において、過剰なイソシアネート基の反応を終了するために、32.9gのビスフェノールAおよび約30mgのDBTLを75℃で加え、混合物を85〜90℃で2時間攪拌した。反応の進行は混合物のNCO含量により観察した。最終生成物は、いかなる残余の遊離NCO基をも含んでいない。
【0106】
1.10 PTHF1400およびIPDIを用いたプレポリマー#10(PU X)の合成
101.7gのポリテトラヒドロフラン(M=1400g/mol)および1.0gのトリメチロールプロパンを混合し、70℃で溶解し、水を除去した。この混合物に、34.6gのイソホロンジイソシアネート(IPDI)を攪拌しながら加えた。その後、この混合物を75℃で40分間攪拌した。第2工程において、過剰なイソシアネート基の反応を終了するために、32.9gのビスフェノールAおよび約30mgのDBTLを75℃で加え、混合物を85〜90℃で2時間攪拌した。反応の進行は混合物のNCO含量により観察した。最終生成物は、いかなる残余の遊離NCO基をも含んでいない。
【0107】
1.11 PTHF1400および2,4’−MDIを用いたプレポリマー#11(PU XI)の合成
101.7gのポリプロピレングリコール(M=1400g/mol)および1.0gのトリメチロールプロパンを混合し、70℃で溶解し、水を除去した。この混合物に、39.0gの2,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート(2,4’−MDI)を攪拌しながら加えた。その後、この混合物を75℃で40分間攪拌した。第2工程において、過剰なイソシアネート基の反応を終了するために、32.9gのビスフェノールAおよび約30mgのDBTLを75℃で加え、混合物を85〜90℃で2時間攪拌した。反応の進行は混合物のNCO含量により観察した。最終生成物は、いかなる残余の遊離NCO基をも含んでいない。
【0108】
上述した全てのプレポリマーは、1000〜54000g/molの範囲の数平均分子量を有する。前記プレポリマーの数平均分子量は、HR5、HR3およびHR1カラムからなるWaters Styragelカラムセットを用いてゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した(35℃、流速0.9ml/分、THF)。濃度における変化は、屈折率検出器により検出し、分子量は、ポリスチレンによるキャリブレーションに基づき決定した。
【0109】
本発明の組成物の調製/評価
ここで、N−アルキルベンゾオキサジンマトリックス樹脂としてBOX−#1を含む硬化性組成物を使用した。
【化17】
(コントロールサンプルとしての)サンプル1は、BOX−#1のみからなる。
【0110】
上記プレポリマーの強靱性特性を試験するため、ベンゾオキサジンと各プレポリマーを単に混合し、105〜115℃で15〜30分間攪拌しながら、プレポリマーがベンゾオキサジン中で均一に分散するまで真空(<1mbar)を適用することにより、BOX−#1と異なる量のプレポリマーの混合物を調製した。このようにして調製した調製物を、室温下、密封容器中で保管した。
【0111】
【表1】
【0112】
循環空気乾燥オーブン内、180℃3時間で、表1の硬化性組成物を密封した容器内で硬化させた。その後サンプルを乾燥オーブンから取り出し、容器から出して室温まで冷却した。
【0113】
硬化サンプルを、以下の方法を用いて特徴付けた。
【0114】
ガラス転移温度は、35mm×10mm×3.2mmにカットしたサンプルの動的熱機械測定(DMTA)により得た。サンプルを、10℃/分の加熱速度で25℃から最終温度の250℃まで加熱した。ガラス転移温度を、温度相図に対する損失率の最小値から得た。
【0115】
曲げ強度および曲げ弾性率は、90mm×12.7mm×3.2mmのサイズのサンプルを用いて、ASTM D790にしたがって測定した(長さ=50.8mm、速度=1.27mm/分)。
【0116】
表2は、上述した方法にしたがって試験したテスト片の特性を示す。
【0117】
【表2】
【0118】
この物性試験結果は、ベンゾオキサジン系に組み込まれる15重量%のPUプレポリマー(サンプル2)でさえも、臨界エネルギー開放率G1cおよび臨界応力拡大係数を大きく増加させることを示している。同時に曲げ弾性率はほんの少しだけ減少する。