(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0019】
(実施の形態1)
図1を参照して、本発明の一実施の形態における含油水の処理装置として、油を含有する排水(含油排水)を処理する装置、すなわち含油排水の処理装置10について説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態における含油排水の処理装置10は、第1の曝気槽11と、気泡発生部12、17と、第2の曝気槽13と、仕切部14と、連通配管15と、分離膜16と、脱水機18とを備えている。
【0021】
第1の曝気槽11は、含油排水が供給される。含油排水は、油分を含有していれば特に限定されないが、油の濃度が4mg/L以上の排水であることが好ましい。供給される排水の油の濃度に上限はないが、長期使用の観点及び処理水の高品質の観点から、例えば50mg/Lである。
【0022】
第1の曝気槽11は、反応槽やエアレーションタンクとも称される生物処理槽であり、活性汚泥を内部に収容する。活性汚泥は、油、有機物などを分解、吸収することが可能な微生物を有している。
【0023】
第1の曝気槽11は、気泡を発生する気泡発生部12を含む。気泡発生部12は、第1の曝気槽11の下方に配置されていることが好ましく、本実施の形態では第1の曝気槽11の槽底に配置されている。気泡発生部12は、例えば、散気装置、撹拌部材などである。気泡発生部12は、空気を発生することが好ましく、この場合、第1の曝気槽11に貯留する活性汚泥に酸素を供給する。このため、気泡発生部12は、第1の曝気槽11において、油を浮上させる物理的分離操作の役割と、排水中に生物処理のための空気を供給する役割とを有する。また、空気の代わりに酸素でもよく、攪拌の場合には窒素などの単一気体でもよい。
【0024】
第2の曝気槽13は、仕切部14を介して、第1の曝気槽11と接続されている。第2の曝気槽13は、第1の曝気槽11の下方から排水が供給されるように構成されている。本実施の形態では、第1及び第2の曝気槽11、13の下方に配置され、かつ第1の曝気槽11から第2の曝気槽13へ排水を移動するための連通配管15が配置されている。
【0025】
第2の曝気槽13は、反応槽やエアレーションタンクとも称される生物処理槽であり、内部に活性汚泥を収容する。この活性汚泥は、油、有機物などを分解、吸収することが可能な微生物を有している。
【0026】
第2の曝気槽13は、処理水と活性汚泥とを分離する分離膜16を含む。つまり、分離膜16は、第2の曝気槽13内に収容されている。分離膜16は、例えば、精密ろ過(MF)膜及び限外ろ過(UF)膜の少なくとも一方である。
【0027】
第2の曝気槽13は、気泡を発生する気泡発生部17を含んでいてもよい。気泡発生部17は、第1の曝気槽11に配置されている気泡発生部12と同様である。気泡発生部117は、本実施の形態では、第2の曝気槽13の槽底に配置されている。
【0028】
仕切部14は、第1の曝気槽11と第2の曝気槽13との間に配置され、本実施の形態では、仕切部14を介して第1の曝気槽11と第2の曝気槽13とが分離されている。
【0029】
仕切部14は、排水の水面Wから下方に向けて延びる。つまり、仕切部14は、第1及び第2の曝気槽11、13の槽頂から下方に向けて延びる。本実施の形態における仕切部14は、第1及び第2の曝気槽11、13の槽頂から第1及び第2の曝気槽11、13の槽底まで延在している。
【0030】
連通配管15は、第1及び第2の曝気槽11、13の下方に配置され、かつ第1の曝気槽11から第2の曝気槽13へ排水を移動する。つまり、連通配管15は、第1及び第2の曝気槽11、13の下方を連結している。
第1及び第2の曝気槽11、13の槽底から水面Wまでの高さをAとすると、連通配管15が取り付けられている高さH(第1及び第2の曝気槽11、13の槽底から連通配管15までの高さH)は、0.85A以下であることが好ましく、0.70A以下であることがより好ましく、0.50A以下であることがより一層好ましく、0.15A以下であることが最も好ましい。
【0031】
処理装置10は、第1の曝気槽11に含油排水を供給するための供給部をさらに備えている。また、処理装置10は、第2の曝気槽13内の分離膜16により油、有機物、汚泥などが低減された処理水を排出するための排出部をさらに備えている。
【0032】
また、処理装置10は、第2の曝気槽13に接続され、第2の曝気槽13から余剰汚泥を引き抜くための配管及びポンプをさらに備えている。余剰汚泥は、系外へ排出される。
【0033】
また、処理装置10は、第1及び第2の曝気槽11、13に接続され、第2の曝気槽13から返送汚泥を引き抜いて第1の曝気槽11へ返送汚泥を返送するための配管及びポンプをさらに備えている。
【0034】
また、処理装置10は、第1の曝気槽11の上方からスカムを引き抜くための配管及びポンプをさらに備えている。スカムは、系外へ排出される。
【0035】
また、処理装置10は、引き抜いた余剰汚泥を脱水するための脱水機18、配管及びポンプをさらに備えている。
【0036】
続いて、本実施の形態における含油排水の処理方法について説明する。本実施の形態における含油排水の処理方法は、
図1に示す処理装置10を用いて行う。
【0037】
具体的には、まず、第1の曝気槽11に含油排水を供給する。この工程では、油の濃度が好ましくは4mg/L以上の排水を第1の曝気槽11に供給することが好ましい。この工程により、活性汚泥と含油排水とは混合される。
【0038】
次に、第1の曝気槽11において、気泡発生部12から気泡を発生させて、含油排水中に気泡を供給する。この工程では、気泡により、排水が上方に向かう流れを形成することが好ましい。油は軽いため、含油排水中の油分が気泡及び活性汚泥に付着した状態で、上方に移動してスカムを形成する。このため、第1の曝気槽11の下方に位置する排水は、油分が低減されている。なお、スカムは、第1の曝気槽11の上方から適宜除去される。
【0039】
また、この工程では、第1の曝気槽11に貯留している排水の曝気処理を行う。つまり、この工程では、気泡発生部12から発生する気泡を用いて油を上方に移動させるとともに、気泡発生部12から発生する気泡及び活性汚泥により曝気処理を行う。曝気によって、活性汚泥中に存在する好気性微生物に酸素を供給する。曝気処理により、排水中の有機物、油などを吸収、分解することもできる。
【0040】
この工程により、有機物、低分子油は、曝気(活性汚泥処理)により分解等され、高分子油は、気泡に付着させた状態で浮上させることができる。本実施の形態の含油排水の処理装置10によれば、第1の曝気槽11の気泡供給部12から発生される気泡の表面は疎水性であり、第1の曝気槽11に収容される好気条件下の活性汚泥の表面は一般的に負に帯電しているので、第1の曝気槽11に供給された含油排水中の油分は気泡及び活性汚泥に付着した状態で上方に移動する。
【0041】
次に、第1の曝気槽11の下方から第2の曝気槽13へ、この油分が低減された排水が供給される。この工程では、第1及び第2の曝気槽11、13の下方に配置されている連通配管15を介して、油分が低減された排水を移動させる。なお、第1の曝気槽11と第2の曝気槽13との上方は、仕切部14により仕切られているので、第1の曝気槽11の上方に浮遊している油を含有するスカムは第2の曝気槽13に移動しない。これにより、浮上した油は排水から分離される。
【0042】
第2の曝気槽13に移動された排水から、分離膜16で活性汚泥を分離する。これにより、処理水を生成することができる。第2の曝気槽13に供給される排水は油分が低減されているので、分離膜16を用いても、油分による分離膜16の汚れ、詰りなどを抑制できる。
【0043】
第2の曝気槽13にも活性汚泥が収容されているので、活性汚泥に酸素を供給することにより、第1の曝気槽11と同様に第2の曝気槽13においても曝気処理(活性汚泥処理)が行われる。
【0044】
第2の曝気槽13内の活性汚泥の量が増えてくると、活性汚泥を引き抜いて、返送汚泥として第1の曝気槽11へ返送する工程、及び/または、余剰汚泥として系外へ排出する工程を実施してもよい。また、余剰汚泥を引き抜いて脱水機18で脱水する工程を実施してもよい。さらに、第2の曝気槽13内から余剰汚泥を引き抜かずに、第1の曝気槽11でスカムと一緒に余剰汚泥も取り出して脱水機18で脱水する工程を実施してもよい。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態の含油排水の処理装置10は、油を含有する排水を処理する装置であって、排水が供給され、かつ活性汚泥を内部に収容する第1の曝気槽11と、第1の曝気槽11の下方から排水が供給され、かつ活性汚泥を内部に収容する第2の曝気槽13と、第1の曝気槽11と第2の曝気槽13との間に配置され、排水の水面Wから下方に向けて延びる仕切部14とを備え、第1の曝気槽11は、気泡を発生する気泡発生部12を含み、第2の曝気槽13は、活性汚泥を分離する分離膜16を含む。
【0046】
本実施の形態の含油排水の処理装置10によれば、第1の曝気槽11の気泡発生部12から発生される気泡の表面は疎水性であるので、第1の曝気槽11に供給された含油排水中の油分を気泡及び活性汚泥に付着させた状態で上方に移動させることができる。なお、活性汚泥が排水中の油の凝集粒子の核となって油を浮上させることができるので、少量の気泡でも油を上方に移動できる。これにより、含油排水中の油分を上方に移動させることができるので、第1の曝気槽11の下方の排水中の油分を低減もしくは除去することができる。第1の曝気槽11の下方から第2の曝気槽13へ排水を移動させるので、油分が低減された排水を第2の曝気槽13に供給することができる。このため、DAFを用いる代わりに、第1の曝気槽11で排水中の油分を分離することができる。本実施の形態の処理装置10の前処理装置である第1の曝気槽11では、このように含油排水中の油を低減できるので、この前処理装置は、運転管理上、排水中の油を十分に処理することができる。
【0047】
また、スカムの引き抜き頻度を減らすと、第1の曝気槽11上部に汚泥と油が蓄積していく。しかし、蓄積した汚泥と油の接触時間をあえて延ばすことで、活性汚泥と油との接触時間が延び
る。これにより、生分解作用による油分除去効果が促進され、スカム量の減量化とともにスカム引き抜き後の油分処理の負荷を低減させることができる。スカムを引き抜くタイミングはスカムの蓄積量に応じて適宜実施すればよい。さらに、DAFを用いる場合は凝集剤を用いて油分を処理することが一般的であるが、本実施の形態においては活性汚泥が凝集剤の役割を果たすので、凝集剤の注入が不要となる。
また、油分の多い排水が分離膜16へ流出すると、分離膜において詰り、汚れが顕著になり、連続して使用することができない。しかし、本実施の形態では、仕切部14を設けたことにより第1の曝気槽11で油分を分離できるので、油分が低減もしくは除去された排水を第2の曝気槽13に供給できる。このため、第2の曝気槽13では分離膜16を用いたろ過処理(膜分
離活性汚泥法)を行うことができ、ろ過処理により活性汚泥と処理水とに分離できる。なお、本実施の形態では、分離膜16の表面に油が付着することを抑制できるので、処理装置10の長期使用が可能になる。
以上より、本実施の形態の処理装置10は、DAFの代替となる前処理装置を見出したので、DAFの代替となる前処理装置を備えた含油排水の処理装置を実現することができる。
【0048】
本実施の形態の含油排水の処理装置10において好ましくは、仕切部14は、排水の水面Wから第1及び第2の曝気槽11、13の槽底まで延在し、第1及び第2の曝気槽11、13の下方に配置され、かつ第1の曝気槽11から第2の曝気槽13へ排水を移動するための連通配管15をさらに備えている。
【0049】
これにより、仕切部14は、第1及び第2の曝気槽11、13間の高さ方向全体を仕切ることができるとともに、連通配管15を用いて、第1の曝気槽11の下方から第2の曝気槽13へ、油分が低減された排水が供給される。このため、第1の曝気槽11で上方に移動させた含油排水中の油を第2の曝気槽13へ移動することを抑制できる。したがって、第2の曝気槽13へ移動される排水中の油分をより低減することができるので、分離膜16での活性汚泥の分離をより効果的に行うことができる。
【0050】
本実施の形態の含油排水の一の局面における処理方法は、含油排水の処理装置10を用いて、排水を処理する方法であって、第1の曝気槽11に排水を供給して、気泡発生部12から気泡を発生させる工程と、第1の曝気槽11から第2の曝気槽13へ排水を移動して、第2の曝気槽13の分離膜16で、活性汚泥を分離する工程とを備えている。
【0051】
本実施の形態の一の局面における含油排水の処理方法は、DAFを備えていない含油排水の処理装置10を用いているので、DAFの代替となる前処理装置を用いて含油排水を処理することができる。
【0052】
また、本実施の形態の他の局面における含油排水の処理方法は、油を含有する排水と活性汚泥とを混合させた状態で排水の中に気泡を供給して、油を付着させた活性汚泥を浮上させて、排水と油とを分離する工程と、分離膜16を用いて、油が分離された排水から活性汚泥を分離する工程とを備えている。活性汚泥を分離する工程では、下方に位置する、油が分離された排水を分離膜16に移動させて、排水から活性汚泥を分離する。すなわち、活性汚泥を分離する工程では、油が分離された排水を下方から分離膜16に移動させて、排水から活性汚泥を分離する。
なお、本実施の形態の他の局面における含油
排水の処理方法では、活性汚泥を分離する工程において、分離膜16以外の分離部材を用いて、油が分離された排水から活性汚泥を分離してもよい。分離膜16以外の分離部材として、例えば、膜状ではない多孔質材料等を用いることができる。
【0053】
本実施の形態の他の局面における含油排水の処理方法によれば、油を含む排水と活性汚泥とを混合させた状態で油を含む排水の中に気泡を発生させることにより、油を活性汚泥に付着させ、かつ気泡とともに浮上させることができる。このようにして、油を浮上させた後、含油排水から浮上した油を分離することにより、DAFを用いなくても、含油排水を活性汚泥により生物処理しながら含油排水から油を分離することができる。また、分離する工程において、排水から油が分離されているので、分離膜16に油が付着することを抑制できる。このため、分離膜16を用いたろ過処理を行うことができるため、ろ過処理により活性汚泥と処理水とに分離できる。以上より、DAFの代替となる前処理装置を用いて含油水を処理することができる。
【0054】
このように、本実施の形態の含油排水の処理装置10及び処理方法は、油を含有する排水の処理において、前処理としてDAFを用いず、かつ油に適さない分離膜を用いた処理装置を用いることができる。また、本実施の形態の含油排水の処理装置10及び処理方法は、処理する排水の水質が変化しても処理が可能であり、時間が経過しても再現性の高い処理が可能である。このため、本実施の形態の含油排水の処理装置10及び処理方法は、石油精製工場の排水、食品工場、化学関連工場、鉄鋼関連工場の排水などの油を含有する含油排水など、油を高濃度(例えば4mg/L以上)に有する排水の処理に好適に用いられる。
また、本発明の含油水の処理装置及び処理方法は、油を含有する排水を処理する装置及び方法に限定されず、排水以外の水を処理する装置及び方法であってもよい。例えば、本実施の形態の処理装置10及び処理方法は、天然ガスや原油などの資源の採掘に伴って発生する随伴水の処理に用いてもよいし、オイルタンカーや海洋リグの事故で漏出した油を含む海水の処理に用いてもよい。
【0055】
(実施の形態2)
図2を参照して、本実施の形態における含油排水の処理装置20を説明する。
図2に示す実施の形態2の含油排水の処理装置20は、基本的には
図1に示す実施の形態1と同様であるが、第3の曝気槽をさらに備えている点において異なる。
【0056】
具体的には、第3の曝気槽21は、第1の曝気槽11と仕切部24を介して接続されている。仕切部24は、第1の曝気槽11と第3の曝気槽21との間に配置され、排水の水面Wから下方に向けて延びている。
【0057】
第3の曝気槽21は、含油排水が供給され、活性汚泥を内部に収容する。第3の曝気槽21は、下方に配置された気泡発生部22を含む。第3の曝気槽21の気泡発生部22は、第1の曝気槽11の気泡発生部12よりも気泡供給量が少ないことが好ましい。つまり、第3の曝気槽21での曝気量は、第1の曝気槽11での曝気量よりも小さいことが好ましい。気泡発生部12、22が散気装置である場合、第1の曝気槽11の散気装置は、第3の曝気槽21の散気装置よりも大きいことが好ましい。
【0058】
第1の曝気槽11は、第3の曝気槽21の下方から排水が供給されるように構成されている。本実施の形態では、第1及び第3の曝気槽11、21の下方に配置され、かつ第3の曝気槽21から第1の曝気槽11へ排水を移動するための連通配管25が配置されている。
【0059】
第1及び第3の曝気槽11、21の槽底から水面Wまでの高さをAとすると、連通配管25が取り付けられている高さH(第1及び第3の曝気槽11、21の槽底から連通配管25までの高さH)は、0.85A以下であることが好ましく、0.70A以下であることがより好ましく、0.50A以下であることがより一層好ましく、0.15A以下であることが最も好ましい。
【0060】
実施の形態2の含油排水の処理方法は、基本的には実施の形態1の含油排水の処理方法と同様であるが、第1の曝気槽11に排水を供給する工程に先立って、第3の曝気槽21に排水を供給する工程を実施する点において異なる。
【0061】
具体的には、まず、第3の曝気槽21に含油排水を供給する。この工程により、活性汚泥と含油排水とは混合される。
【0062】
次に、第3の曝気槽21において、気泡発生部22から気泡を発生させて、含油排水中に気泡を供給する。この工程では、気泡により、排水が上方に向かう流れを形成することが好ましい。油は軽いため、含油排水中の油分が気泡及び活性汚泥に付着した状態で、上方に移動してスカムを形成する。このため、第3の曝気槽21の下方に貯留している排水は、油分が低減されている。なお、スカムは、第3の曝気槽21の上方から適宜除去され、焼却処理等を経て処分される。
また、この工程では、第3の曝気槽21に貯留している排水の曝気処理も行う。
【0063】
次に、第3の曝気槽21の下方から第1の曝気槽11へ、この油分が低減された排水が供給される。この工程では、第1及び第3の曝気槽11、21の下方に配置されている連通配管25を介して、油分が低減された排水を移動させる。なお、第3の曝気槽21と第1の曝気槽11との上方は、仕切部24により仕切られているので、第3の曝気槽21の上方に浮遊している油を含有するスカムは第1の曝気槽11に移動しない。
【0064】
次に、第1の曝気槽11において、気泡発生部12から気泡を発生させて、第1の曝気槽11に移動された排水中に気泡を供給する。第1の曝気槽11に移動された排水中に油が残存している場合、排水中の油分が気泡に付着した状態で、上方に移動してスカムを形成する。このため、第1の曝気槽11に供給された排水に油が含有されていても、第1の曝気槽11の下方に貯留している排水は、油分がさらに低減されている。
また、この工程では、第1の曝気槽11に貯留している排水の曝気処理も行う。
【0065】
次に、実施の形態1と同様に、第1の曝気槽11の下方から第2の曝気槽13へ、連通配管15を介して、さらに油分が低減された排水が供給される。次に、実施の形態1と同様に、第2の曝気槽13に移動された排水を分離膜16で、活性汚泥を分離する。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態における含油排水の処理装置20は、排水が供給され、かつ活性汚泥を内部に収容する第3の曝気槽21と、この第3の曝気槽21の下方から排水が供給され、かつ活性汚泥を内部に収容する第1の曝気槽11と、この第1の曝気槽11の下方から排水が供給され、かつ活性汚泥を内部に収容する第2の曝気槽13と、第3の曝気槽21と第1の曝気槽11との間に配置され、かつ排水の水面Wから下方に向けて延びる仕切部24と、第1の曝気槽11と第2の曝気槽13との間に配置され、排水の水面Wから下方に向けて延びる仕切部14とを備え、第1及び第3の曝気槽11、21は、気泡を発生する気泡発生部12、22を含み、第2の曝気槽13は、活性汚泥を分離する分離膜16を含む。
【0067】
本実施の形態における含油排水の処理方法は、第3の曝気槽21に排水を供給して、気泡発生部22から気泡を発生させる工程と、第3の曝気槽21から第1の曝気槽11へ排水を移動して、気泡発生部12から気泡を発生させる工程と、第1の曝気槽11から第2の曝気槽13へ排水を移動して、第2の曝気槽13の分離膜16で、活性汚泥を分離する工程とを備えている。
【0068】
本実施の形態における含油排水の処理装置20及び処理方法によれば、第3の曝気槽21で排水中の油分を気泡に付着させた状態で上方に移動させることができるので、下方に位置する油分が低減された排水を第1の曝気槽11へ移動させることができる。第1の曝気槽11においても、油は軽いため、含油排水中の油分が気泡及び活性汚泥に付着し、上方に移動させることができるので、下方に位置する油分がさらに低減された排水を第2の曝気槽13へ移動させることができる。これにより、第3及び第1の曝気槽21、11での2段の油分を分離する前処理をした後の排水について、第2の曝気槽13での分離膜16を用いたろ過処理を行うことができる。このため、分離膜16の負担を低減することができる。
【0069】
(実施の形態3)
図3を参照して、実施の形態3の含油排水の処理装置30は、基本的には
図1に示す実施の形態1の含油排水の処理装置10と同様であるが、連通配管15が省略されている代わりに、仕切部34の下端34aの下方を通って第1の曝気槽11から第2の曝気槽13へ排水が移動されるように構成されている点において異なる。
【0070】
具体的には、仕切部34の下端34aは、第1及び第2の曝気槽11、13の槽底よりも上方に位置している。本実施の形態の仕切部34は、第1及び第2の曝気槽11、13の槽頂から、槽底よりも上方まで延在している。第1及び第2の曝気槽11、13の槽底から水面Wまでの高さをAとすると、連通配管25が取り付けられている高さH(第1及び第2の曝気槽11、13の槽底から連通配管15までの高さH)は、0.85A以下であることが好ましく、0.70A以下であることがより好ましく、0.50A以下であることがより一層好ましく、0.15A以下であることが最も好ましい。
【0071】
実施の形態3の含油排水の処理方法は、基本的には実施の形態1の含油排水の処理方法と同様であるが、連通配管15を介して第1の曝気槽11から第2の曝気槽13に排水を移動する代わりに、仕切部34の下端34aの下方を通って排水を移動する点において異なる。つまり、第1の曝気槽11において下方に位置する油分が低減された排水は、仕切部34の下端34aの下方を通って第2の曝気槽13へ移動する。
【0072】
以上説明したように、本実施の形態における含油排水の処理装置30は、仕切部34の下端34aは、第1及び第2の曝気槽11、13の槽底よりも上方に位置し、第1の曝気槽11から第2の曝気槽13へ、仕切部34の下端34aの下方を通って排水が移動される。
【0073】
本実施の形態の含油排水の処理装置30によれば、仕切部34の下端34aの下方を介して、第1の曝気槽11から第2の曝気槽13へ油分が低減された排水を移動することができる。このため、DAFの代替となる前処理装置を備えた処理装置30を実現することができる。
【0074】
また、1つの曝気槽を仕切部34で区分することにより、第1及び第2の曝気槽11、13が構成されてもよい。この場合、処理装置30の小型化を図ることができる。つまり、従来、DAFの後段に設置されていた膜分離活性汚泥槽と同じ大きさの水槽に仕切部34を設けるだけで従来と同程度の能力での処理が可能となったことがわかり、且つ安定した処理水質を得られるようになった。
【0075】
(実施の形態4)
図4を参照して、実施の形態4の含油排水の処理装置40について説明する。
図4に示す実施の形態4の含油排水の処理装置40は、基本的には
図1に示す実施の形態1の含油排水の処理装置10と同様であるが、第1の曝気槽11と第2の曝気槽13とは分離されており、第1及び第2の曝気槽11、13の下方に配置された連通配管45により排水が移動される点において異なる。
【0076】
具体的には、第1の曝気槽11と、第2の曝気槽13とは、接しておらず、隣り合っている。仕切部41、43は、第1の曝気槽11における第2の曝気槽13と対向する側壁、及び、第2の曝気槽13における第1の曝気槽11と対向する側壁である。仕切部41、43は、排水の水面Wから第1及び第2の曝気槽11、13の槽底まで延在し、本実施の形態では、第1及び第2の曝気槽11、13の槽頂から槽底まで延在している。なお、第1及び第2の曝気槽11、13の平面形状は矩形であっても円形であってもよい。
【0077】
連通配管45は、第1及び第2の曝気槽11、13の下方に接続され、分離した第1の曝気槽11と第2の曝気槽13との間に配置されている。連通配管45は、第1及び第2の曝気槽11、13において対向する側壁である仕切部41、43の下方に接続されている。
【0078】
連通配管45は、第1及び第2の曝気槽11、13の槽底から水面Wまでの高さをAとすると、連通配管45が取り付けられている高さHは、水面Wから5A/10(50%)以下であることが好ましく、3A/10(30%)以下であることがより好ましく、3A/20以下であることがより一層好ましい。また、連通配管45は、第1及び第2の曝気槽11、13の槽底から、下方に向けて延びるように設けられてもよい。
【0079】
実施の形態4の含油排水の処理方法は、基本的には実施の形態1の含油排水の処理方法と同様であるが、
図4に示す処理装置40を用いて含油排水を処理する点において異なる。
【0080】
具体的には、実施の形態1と同様に、第1の曝気槽11に排水を供給して、気泡発生部12から気泡を発生させて、油分を上方に移動させ、下方に位置する排水中の油分を低減する。
次に、連通配管45を用いて、第1の曝気槽11から第2の曝気槽13へ、油分が低減された排水を移動する。
次に、実施の形態1と同様に、第2の曝気槽13の分離膜16で、活性汚泥を分離する。
【0081】
以上説明したように、本実施の形態の含油排水の処理装置40は、第1の曝気槽11と、この第1の曝気槽11と分離した第2の曝気槽13と、排水の水面Wから第1及び第2の曝気槽11、13の槽底まで延在する仕切部41、43と、第1及び第2の曝気槽11、13の下方に配置され、かつ第1の曝気槽11から第2の曝気槽13へ排水を移動するための連通配管45とを備えている。
【0082】
このように、分離した曝気槽の下方を連通配管45で接続した処理装置40によっても、DAFの代替となる前処理装置を備えた、含油排水を処理するための装置を実現することができる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0084】
本実施例では、
図2に示す実施の形態2の含油排水の処理装置20及び処理方法を用いた。具体的には、第1〜第3の曝気槽11、13、21のそれぞれは、槽底は縦1mで横1mの長方形で、高さ2mの曝気槽であり、第1〜第3の曝気槽11、13、21の合計の容積は6m
3であった。連通配管15、25は、50mmの直径を有し、槽底からの高さHが300mm(槽頂からは1700mm)であった。
【0085】
第1及び第3の曝気槽11、21のそれぞれには、槽底に気泡発生部12、22が設置されていた。また、膜洗浄曝気のために、第2の曝気槽13の槽底にも気泡発生装置17が設置されていた(図示せず)。これらの曝気槽に設置された気泡発生装置は、0〜5m
3/hの空気を供給できるものであった。
【0086】
また、第2の曝気槽13に配置された分離膜16として、旭化成(株)製のMUNC600を2本用いた。この膜は、1mの長さを有し、12.5m
2の膜面積を有するMBR膜であった。
【0087】
この処理装置20を用いて、以下のように、含油排水を処理した。具体的には、第1及び第3の曝気槽11、21には、汚泥濃度が8000〜10000mg/Lの活性汚泥が収容された。この第3の曝気槽21に、含油排水として、油分が50mg/Lで、CODが500mg/Lで、BODが250mg/Lの水質の排水を、10m
3/dの水量で供給した。
【0088】
また、第1〜第3の曝気槽11、13、21のそれぞれの気泡発生装置12、17、22から5m
3/hの空気を排水に供給した。
【0089】
また、第2の曝気槽13の下方から活性汚泥を引き抜き、引き抜いた活性汚泥を第3の曝気槽21の上方から活性汚泥を供給した。この活性汚泥の循環は、第2の曝気槽13に流入する水量の2倍の水量で、第3の曝気槽21へ供給により実施した。
【0090】
第
2の曝気槽
13において分離膜16で活性汚泥を分離することにより、10m
3/dの水量の処理水を得た。処理水の水質を測定した結果、油分が0.5mg/Lで、CODが50mg/Lで、BODが10mg/Lであった。このように、本実施例の処理装置20及び処理方法によれば、50mg/Lの高濃度の油を含有する排水であっても、DAFと異なる前処理装置を用いて、処理をすることが可能であった。
【0091】
また、上述した処理装置20及び処理方法において、第3及び第1の曝気槽21、11に収容されている排水の水面W近傍を観察した後、水面W近傍の排水を採取して、排水中に油が含まれているかを顕微鏡により観察した。その結果、1段目の第3の曝気槽21に収容されている排水の水面Wには、スカムが浮いており、採取したスカム中に油が含まれていたことを確認した。2段目の第1の曝気槽11に収容されている排水の水面Wにはスカムはほとんど浮いておらず、採取した排水中には油がほとんど含まれていなかった。このことから、1段の曝気槽で排水中の油分を分離させることができることがわかった。
【0092】
また、3段目の第2の曝気槽13に供給される排水中に含まれる油を低減できたので、分離膜での詰りを大幅に低減できることがわかった。
【0093】
本実施例で用いた3段の曝気槽を用いた処理装置20は、DAFを備えていなくても、含油排水の前処理をできたので、DAFの代替となる前処理装置を備えた処理装置を実現することができた。また、本実施例で用いた処理装置20は、排水中の油を分離できたので、分離膜を備えた曝気槽を実現することもできた。
【0094】
本実施例では、油を含有する排水を処理する装置及び方法について調べたが、油を含有する排水以外の水でも同様の効果があるという知見を本発明者は得ている。また、本実施例では、
図2に示す処理装置及びその処理装置を用いた処理方法について調べたが、本発明の範囲内の処理装置及び処理方法についても同様の効果があるという知見を本発明者は得ている。
【0095】
以上のように本発明の実施の形態及び実施例について説明を行なったが、各実施の形態及び実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態及び実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。