2枚のシリコンウェーハを貼り合わせてSOIウェーハを製造する方法であって、前記2枚のシリコンウェーハのうち少なくとも一方のウェーハの表面に、当該ウェーハを回転させながら有機物含有ガスを直接吹き付けて所定量の有機物を吸着させた後、前記2枚のウェーハの貼り合わせを行うことを特徴とするSOIウェーハの製造方法。
ガス供給ノズルを前記ウェーハの半径方向に所定の周期で複数回スイングさせながら前記有機物含有ガスを吹き付けることを特徴とする請求項1に記載のSOIウェーハの製造方法。
前記有機物含有ガスは、N−メチル−2−ピロリドンを含有する不活性ガス、あるいは芳香族炭化水素類、塩化炭化水素類、アルコール類、又はグリコール化合物類の有機物を含む不活性ガスであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のSOIウェーハの製造方法。
回転するシリコンウェーハの表面に有機物含有ガスを直接吹き付けて所定量の有機物を吸着させるガス吹き付け機構と、2枚のシリコンウェーハを貼り合わせるウェーハ貼り合わせ機構を含み、前記有機物含有ガスの吹き付け工程から前記シリコンウェーハの貼り合わせ工程までを連続的に行うことを特徴とするウェーハ貼り合わせシステム。
前記ガス吹き付け機構は、ガス供給ノズルと、前記ガス供給ノズルを前記ウェーハの半径方向にスイングさせるアームとを備え、前記ガス供給ノズルは、前記ウェーハの中心から外周まで半径方向に所定の周期で複数回スイングしながら、前記ウェーハの表面に前記有機物含有ガスを吹き付けることを特徴とする請求項6に記載のSOIウェーハ貼り合わせシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載された方法は、以下に示すように、シリコンウェーハの面内に均一且つ安定的に有機物を吸着させることができないという問題がある。例えば、有機物を含む雰囲気中でウェーハを洗浄する方法では、雰囲気中の有機物の濃度管理が非常に難しい。また、有機物を含む雰囲気中でウェーハを乾燥させる方法も同様であり、環境の僅かな変化によって有機物の吸着量が変化してしまい、非常に不安定である。特にスピンドライヤーを用いた乾燥では、スピンドライヤーの吸気・排気能力や設置環境(例えば、風速、風向、温度、湿度等)の変化により、ウェーハ表面の有機物の濃度の面内分布が不均一になるという問題がある。
【0008】
また、有機物を含む洗浄液を用いてウェーハ表面を処理する方法や有機物を含む処理液をウェーハ表面に塗布又は滴下する方法では、洗浄液や処理液に含まれるパーティクルや微量な金属がそのまま表面に付着し、それらが除去されずに貼り合わせ界面に残存する場合がある。その結果、貼り合わせ不良が発生し、最終的にはデバイス特性を低下させる原因となる。
【0009】
一方、上記特許文献2に記載された方法では、貼り合わせ前にイオン注入や析出物を形成するための熱処理など施す必要があるため、工程数増加や生産性低下による製造コストの上昇を招く問題がある。
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、貼り合わせSOIウェーハの貼り合わせ界面にゲッタリングサイト源となる有機物を面内均一且つ安定的に吸着させることが可能なSOIウェーハの製造方法を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、貼り合わせ界面にゲッタリングサイトを有する高品質な貼り合わせSOIウェーハを製造することが可能なウェーハ貼り合わせシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明によるSOIウェーハの製造方法は、2枚のシリコンウェーハのうち少なくとも一方のウェーハの表面に、当該ウェーハを回転させながら有機物含有ガスを直接吹き付けて所定量の有機物を吸着させた後、前記2枚のウェーハの貼り合わせを行うことを特徴とする。
【0013】
本発明によるSOIウェーハの製造方法、ガス供給ノズルを前記ウェーハの半径方向に所定の周期で複数回スイングさせながら前記有機物含有ガスを吹き付けることが好ましい。この方法によれば、ウェーハの表面に有機物を均一且つ安定的に吸着させることができる。したがって、ゲッタリングサイトが均一に形成された高品質な貼り合わせSOIウェーハを製造することができる。
【0014】
また、本発明によるSOIウェーハの製造方法は、前記ウェーハの中心にガスを吹き付けることが好ましい。この方法によれば、ウェーハの表面への有機物の均一且つ安定的な吹き付けを簡単な構成により実現することができ、特に、有機物の吸着量が少ない場合には効果的である。
【0015】
本発明においては、前記有機物含有ガスに希釈ガスを加えることにより、前記有機物含有ガスに含まれる有機物の濃度を調整することが好ましい。この方法によれば、液体の有機物を揮発させて生成される有機物含有ガスの濃度が高い場合であっても、ウェーハ表面に吹き付ける最終的な有機物含有ガスの濃度は低くなるので、有機物の吸着量を制御しやすい。したがって、有機物をより均一且つ安定的に吸着させることができる。
【0016】
本発明においては、前記有機物含有ガスは、N−メチル−2−ピロリドンを含有する不活性ガス、あるいは芳香族炭化水素類、塩化炭化水素類、アルコール類、又はグリコール化合物類の有機物を含む不活性ガスであることが好ましい。これらの有機物のうち、N−メチル−2−ピロリドンは入手し易く、ウェーハ表面へ吸着しやすい性質を有している。
【0017】
また、上記課題を解決するため、本発明によるウェーハ貼り合わせシステムは、回転するシリコンウェーハの表面に有機物含有ガスを直接吹き付けて所定量の有機物を吸着させるガス吹き付け機構と、2枚のシリコンウェーハを貼り合わせるウェーハ貼り合わせ機構を含み、前記有機物含有ガスの吹き付け工程から前記シリコンウェーハの貼り合わせ工程までを連続的に行うことを特徴とする。この場合において、前記ガス吹き付け機構は、ガス供給ノズルと、前記ガス供給ノズルを前記ウェーハの半径方向にスイングさせるアームとを備え、前記ガス供給ノズルは、前記ウェーハの中心から外周まで半径方向に所定の周期で複数回スイングしながら、前記ウェーハの表面に前記有機物含有ガスを吹き付けることが好ましい。この構成によれば、ウェーハの表面に有機物を均一且つ安定的に吸着させることができる。したがって、ゲッタリングサイトが均一に形成された高品質な貼り合わせSOIウェーハを製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、貼り合わせSOIウェーハの貼り合わせ界面にゲッタリングサイト源となる有機物を面内均一且つ安定的に吸着させることが可能なSOIウェーハの製造方法を提供することができる。
【0019】
また、本発明によれば、貼り合わせ界面にゲッタリングサイトを有する高品質な貼り合わせSOIウェーハを製造することが可能なウェーハ貼り合わせシステムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
図1は、貼り合わせSOIウェーハの製造工程を説明するための模式図である。
【0023】
図1に示すように、貼り合わせSOIウェーハの製造では、まず材料基板として2枚のシリコンウェーハを用意する(ステップS101,S102)。2枚のウェーハのうち一方のウェーハ(第1のウェーハ)は貼り合わせ後に活性層となる活性側ウェーハ2Aであり、他方のウェーハ(第2のウェーハ)は貼り合わせ後に支持基板となる支持側ウェーハ2Bである。なおこれらのウェーハはその表面に自然酸化膜を有している。
【0024】
次に、支持側ウェーハ2Bの表面に所定の厚さの酸化膜(ボックス酸化膜)3を形成する(ステップS103)。酸化膜の厚さは0.5〜5μm程度であることが好ましく、例えば酸化熱処理によって形成することができる。酸化熱処理としては、ドライ酸化処理、ウェット酸化処理、パイロジェニック酸化処理、塩酸酸化処理などを採用することができる。なお、洗浄後の支持用ウェーハ2Bの表面には自然酸化膜が存在しているため、要求されるボックス酸化膜3の厚みが薄い場合には、熱酸化による熱酸化膜の形成を省略してもよい。
【0025】
次に、活性側ウェーハ2A及び支持側ウェーハ2Bの両方に対して、アルカリ洗浄(SC1洗浄)及び酸洗浄(SC2洗浄)を行い、さらに純水リンスした後、スピンドライヤーで乾燥させる(ステップS104)。この洗浄・乾燥処理により、両ウェーハの表面からはパーティクルや有機物が除去され、さらにウェーハの表面は乾燥した状態となる。
【0026】
次に、活性側ウェーハ2A及び支持側ウェーハ2Bの表面に有機物含有ガスを直接吹き付けて、当該ウェーハの表面に有機物4を吸着させる(ステップS105、S106)。この有機物4はゲッタリングサイトの形成に寄与する。なお、有機物4を吸着させる対象は活性側ウェーハ2Aと支持側ウェーハ2Bの両方である必要はなく、活性側ウェーハ2Aにのみ吸着させてもよく、支持側ウェーハ2Bにのみ吸着させてもよい。
【0027】
次に、活性側ウェーハ2Aと支持側ウェーハ2Bとを貼り合わせた後(ステップS107)、貼り合わせ界面の接合強度を高めるため1000〜1200℃の温度で熱処理を行う(ステップS108)。一般的に、この熱処理ではバッチ式の縦型又は横型の熱処理装置が用いられ、一度に複数枚ウェーハが熱処理される。この熱処理により、貼り合わせ界面に閉じ込めた有機物に起因して結晶欠陥が形成され、この結晶欠陥がゲッタリングサイトとなる。さらに、ウェーハの周辺の剥離を防止するため貼り合わせウェーハの外周(テラス)を1mm程度研削した後、貼り合わせウェーハの活性側の表面を研磨して薄化する(ステップS109)。以上により、埋め込み酸化膜が形成されたSOIウェーハ2Cが完成する。
【0028】
次に、上記製造方法を実現するためのウェーハ貼り合わせシステムについて説明する。
【0029】
図2は、本発明の好ましい実施の形態によるウェーハ貼り合わせシステムの構成を示すブロック図である。
【0030】
図2に示すように、本実施形態によるウェーハ貼り合わせシステム1は、シリコンウェーハ2の表面に有機物含有ガスを吹き付けるためのガス吹き付け機構10と、有機物含有ガスを生成するガス混合装置20と、表面に有機物を吸着させた2枚のウェーハの貼り合わせを行う自動貼り合わせ機構30と、シリコンウェーハ2に吹き付けられた有機物含有ガスを回収するガス回収機構40と、ウェーハを自動で搬送する搬送ロボット50とを備えている。
【0031】
また、ウェーハ貼り合わせシステム1は、洗浄・乾燥済みの活性側ウェーハ2Aを格納する活性側カセット61と、洗浄・乾燥済みの支持側ウェーハ2Bを格納する支持側カセット62と、貼り合わせSOIウェーハ2Cを格納するSOIウェーハカセット63を備えており、貼り合わせ前の2枚のウェーハは活性側カセット61及び支持側カセット62からそれぞれ取り出され、貼り合わせ後のSOIウェーハ2CはSOIウェーハカセット63に収容される。これらの取り出し及び収容動作は搬送ロボット50の動作によって行われる。
【0032】
ウェーハ貼り合わせ工程では、活性側カセット61から活性側ウェーハ2Aが取り出され、アライナ70を経由してガス吹き付け機構10に移載される。アライナ70はウェーハを各装置に受け渡す前にその位置決めを高速に実現するための装置である。その後、ガス吹き付け機構10で所定の吸着処理が施された後、自動貼り合わせ機構30に移載される。
【0033】
さらに、支持側カセット62から支持側ウェーハ2Bが取り出され、活性側ウェーハ2Aと同様の吸着処理が施され、自動貼り合わせ機構30に移載される。活性側ウェーハ2Aおよび支持側ウェーハ2Bが共に自動貼り合わせ機構30に移載されると、両者の貼り合わせが開始される。貼り合わせが完了した後、貼り合わせSOIウェーハ2CはSOIウェーハカセット63に収納され、一連の処理が完了する。その後は一連のウェーハ貼り合わせ工程が繰り返される。
【0034】
図3は、ガス吹き付け機構10の構成を示す模式図である。
【0035】
図3に示すように、ガス吹き付け機構10は、ウェーハ2が搭載される回転ステージ11と、回転ステージ11の中心から半径方向にスイング可能なアーム12と、アーム12の先端に取り付けられたノズル13を備えている。
【0036】
ウェーハ2は真空吸着によって回転ステージ上に固定されている。ウェーハ2をその中心を中心軸として所定の回転数で回転させながら、アーム12の先端に取り付けられたノズル13から有機物含有ガスを放出することにより、ウェーハ2の表面に有機物を吸着させる。このとき、ガスを吹き出すノズル13は、ウェーハ2の半径方向の範囲を一定の速度で複数回スイングさせることが好ましいが、ウェーハ2の中心から外周までの半径方向のスイングが必要である。半径以内のスイングでは吸着が不均一となるからである。
【0037】
ウェーハ2の回転数、ノズル13のスイング回数、ガスの吹き付け時間等の条件は目標とする有機物の吸着量によって変えればよく、特に限定されない。ただし、ウェーハ2の回転数とガスの吹き付け時間に関しては、ウェーハ全面にガスが均一に供給されるようにする必要がある。例えば、ノズル13をスイングさせる場合においてウェーハ2の回転数を1rpmに設定した場合、ガスの吹き付け時間を60秒以上とする必要がある。ガスの吹き付け時間を例えば30秒とした場合には、ウェーハ2の半分の領域にしかガスを吹き付けることができないからである。
【0038】
ウェーハ2の表面に有機物を均一且つ安定的に吸着させるためには、ウェーハ2の回転数は30rpm以上とすることが好ましい。また、ノズル13はウェーハ2上を複数回往復したほうがよく、ノズル13のスイング回数は2〜4回程度が好ましい。ノズル13の一往復のスイング時間はウェーハサイズによって異なるが、10秒以内であることが好ましい。
【0039】
ノズル13の先端はウェーハ2の中心に固定的に配置してもよい。ただし、ノズル13がウェーハ2の中心以外の位置で固定され、ガスが吹き出されると、有機物が不均一に吸着されるため好ましくない。また、ノズル13をウェーハの中心に固定する場合には、ウェーハの回転数が低すぎるとガスが周辺に流れず、有機物を均一に吸着させることができないので、例えば、30rpm以上とすることが好ましい。
【0040】
ノズル13からのガスの吹き出し流量は、目標とする有機物の吸着量に応じて調整すればよく、特に限定するものではない。コスト面を考慮してガスの使用量10L/分以下に抑えてもよいが、有機物をウェーハの全面に短時間で吸着させるためには、10L/分以上の吹き出し流量とすることが好ましい。
【0041】
ガスの吹き付け時間も目標とする有機物の吸着量に応じて調整すればよく、所定の吸着量に達するまでガスを吹き付ければよい。例えば、ウェーハ2の回転数を60rpm、ノズル13の一往復のスイング時間を10秒、ガスの吹き出し流量を20L/分とする場合において、有機物の吸着量を0.05ng/cm
2とする場合、吹き付け時間を10秒とすればよく、吸着量を0.1ng/cm
2とする場合、吹き付け時間を20秒とすればよい。さらに、吸着量を1ng/cm
2する場合、吹き付け時間を200秒とすればよく、吸着量を5ng/cm
2とする場合、吹き付け時間を1000秒とすればよい。
【0042】
また詳細は後述するが、吸着量を調整する方法として有機物含有ガスとは別系統から不活性ガスを供給し、有機物含有ガスを所定の配合比で希釈した後、シリコンウェーハに吹き付ける方法も有効である。
【0043】
有機物としては、芳香族炭化水素類、塩化炭化水素類、アルコール類、グリコール化合物類等、極性を有し、室温でシリコンに吸着されるものであれば特に限定されないが、中でも著しい効果があるものとして、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)が有効である。N−メチル−2−ピロリドンは入手し易く、ウェーハ表面へ吸着しやすい性質を有しているからである。一方、有機物のキャリアガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等の不活性ガスを用いることができる。
【0044】
有機物の吸着量は、ガス流量やスイング回数から決めることができるが、有機物含有ガス自体の有機物濃度を監視することで有機物をより安定的に供給することが可能である。例えば、有機物含有ガスの供給ラインにサンプリング用の配管を取り付け、流量制御が可能なフローメータを介してモニタリング装置に接続する。これにより、有機物含有ガスの有機物濃度を計測し、監視することが可能となる。
【0045】
図4(a)及び(b)は、ガス吹き付け機構10の変形例を示す模式図である。
【0046】
図4(a)に示すガス吹き付け機構10は、複数の穴を有するノズル13を用いるものである。ノズル13に設けられた複数の穴は、所定の間隔で一方向に配置されている。複数の穴は、ウェーハの径方向と直交する方向に一次元配列されており、一度のスイングで広範囲の吹き付けを可能としている。また、
図4(b)に示すガス吹き付け機構10は、二次元配列された複数の穴を有するノズルを用いるものである。複数の穴は円盤状のノズル本体の底面に設けられており、有機物含有ガスは複数の穴からシャワーのように吹き出してウェーハの表面の広範囲に供給される。
【0047】
このように、ガス吹き付け機構10は、
図3に示した単管あるいは単一の穴からガスを吹き出す構成に限定されず、複数の穴からガスを吹き出す構成であってもよく、ノズルの形状や穴の配置も特に限定されない。ただし、前記のように、ノズル13のスイング回数、ガスの吹き付け時間等の条件は目標とする有機物の吸着量によって変える必要がある。これらの変形例によれば、複数の穴から有機物含有ガスを供給するので、ウェーハ上の広い範囲にガスを吹き付けることができ、ウェーハ表面への有機物の吸着を効率良く行うことができる。
【0048】
図5は、ガス混合装置20の配管系統の一例を示す模式図である。
【0049】
図5に示すように、ガス吹き付け機構10のノズル13にはガス混合装置20から有機物含有ガスが供給される。また、有機物含有ガスはガス回収機構40によって回収されるので、図示のようにガス吹き付け機構10がオープンな空間であったとしても周囲への有機物の拡散が防止される。有機物含有ガスを供給するための配管ライン上にはパーティクルフィルタ21、電磁弁22a〜22d、流量計23a〜23cが設けられている。これらは一般的なガスラインに使用されているものであり、発塵や汚染の可能性はない。
【0050】
不活性ガス5Aは電磁弁22a及び流量計23aが設けられた第1の配管ライン24aを経由してポット25内に供給され、ポット25内の有機物26と混合される。詳細は後述するが、有機物をガスに含有させる方法としては、バブリング方法および揮発方法のどちらを採用しても良い。ポット25内で生成された有機物含有ガスは、電磁弁22b、流量計23b及びパーティクルフィルタ21が設けられた第2の配管ライン24bを通ってノズル13に供給される。第2の配管ライン24bの途中には電磁弁22c及び流量計23cが設けられた第3の配管ライン24cが連結されており、第3の配管ライン24cには希釈用の不活性ガス5Cが供給され、有機物含有ガス5Bの濃度がさらに調整される。
【0051】
図6は、有機物含有ガスの生成方法を説明するための模式図であり、(a)はバブリング方式、(b)は揮発方式をそれぞれ示している。
【0052】
図6(a)に示すように、バブリング方式は、ポット25内に用意された液体の有機物4Aの液体内に窒素ガス等の不活性キャリアガスを直接吹き込み、そのバブリング効果によって有機物の揮発性を高める方式であり、比較的高濃度な有機物のガスを発生させることができる。また、
図6(b)に示すように、揮発方式は、ポット25内に用意された液体の有機物4Aの液体の表面にキャリアガスを吹き付け、有機物の気化を促進させる方式であり、バブリング方法ほどではないが比較的高濃度な有機物のガスを発生させることができる。このように、有機物をガスに含有させるための装置では、バブリング方式および揮発方式のどちらを採用してもよい。さらに、図示しないが、常温または加熱条件下で自然に揮発させてもよい。有機物によっては加熱されることで揮発しやすくなることから、加熱用ヒーターを用いて有機物の液体を加熱してもよい。加熱ヒーターの種類は特に限定されず、ホットプレート、テープヒーター、ランプ加熱等を用いることができる。
【0053】
有機物の分析に関しては、一般的な有機物の吸着量を分析することができるガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)を用いることで、ウェーハ表面の有機物の吸着量を容易に確認することがでる。また、貼り合わせ界面の有機物の吸着量の分析を行う場合、貼り合わせていない状態でアルミケースに保管し、分析装置まで運搬してもよいが、一端貼り合わせを行い、分析直前に活性側ウェーハを支持側ウェーハから剥がして貼り合わせ界面を分析することも可能である。その場合、アルミケースは不要であり、通常のウェーハケースでの運搬が可能である。
【0054】
貼り合わせ界面に存在する有機物の量は、活性側ウェーハまたは支持側ウェーハのどちらか一方の分析を行うことで把握することができる。すなわち、片方のウェーハの有機物の量を2倍にすることで貼り合わせ界面のトータルの有機物の量を求めることができる。
【0055】
ウェーハ表面の有機物の面内分布の確認方法としては、例えば、貼り合わせSOIウェーハとして最終的な加工を完了させた後、SOI層のライフタイムを測定することで、面内分布を推測することができる。例えば、有機物が多く吸着している領域は、少ししか吸着していない領域に比べ、SOI層のライフタイムが短い傾向がある。これは、貼り合わせ界面に存在する有機物がキャリアの再結合を間接的に行うためである。このように、ウェーハ全面のライフタイムを測定することで、SOIウェーハの貼り合わせ界面に存在する有機物の面内分布を容易にかつ短時間で確認することができる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態による貼り合わせSOIウェーハの製造方法は、回転するウェーハの表面に有機物含有ガスを直接吹き付けるので、ウェーハの表面に所定量の有機物を均一且つ安定的に吸着させることができる。したがって、ゲッタリングサイトが均一に形成された高品質な貼り合わせSOIウェーハを製造することができる。
【0057】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【実施例】
【0058】
(実施例1)
活性側ウェーハおよび絶縁膜が形成された支持側ウェーハとなる200mmのシリコンウェーハを用意し、
図1のウェーハ貼り合わせシステムを用いてウェーハ表面に有機物を吸着させた。有機物含有ガスの吹き付け条件は以下の通りである。まず、ガス流量に関しては、有機物含有ガスの流量を1L/分とし、濃度制御用の窒素ガスの流量を29L/分とし、ノズル13から供給する合計のガス流量は30L/分とした。有機物にはNMPを用い、キャリアガスには窒素ガスを用い、有機物含有ガスの生成方法には窒素ガスによる揮発方式(
図6(b)参照)を採用した。
【0059】
また、ウェーハ2の回転数を60rpmとし、ノズル13の一往復のスイング時間は10秒とし、ノズル13のスイング回数を、2回、3回、4回、6回、12回とした。この場合、各スイング回数に対応するガスの吹き付け時間はそれぞれ20秒、30秒、40秒、60秒、120秒となる。このようにノズル13のスイング回数が異なる条件下で処理した活性側ウェーハ及び支持側ウェーハをそれぞれ10枚ずつ用意した。
【0060】
次に、スイング回数が同一である10枚の活性側ウェーハのうち、5枚のウェーハを用いて有機物の吸着量の分析を行った。有機物の吸着量の分析では、活性側ウェーハの有機物の吸着量のみをGC−MSで測定し、その濃度の2倍の値を求め、これを貼り合わせ界面の有機物の吸着量とした。測定結果を
図7のグラフに示す。また、残りの5枚のウェーハについては最終的なSOI加工を行った後、有機物の吸着量の面内分布を評価するためライフタイムマップを作成した。その結果を
図8に示す。
【0061】
図7に示すように、SOIウェーハの貼り合わせ界面の有機物の吸着量はノズル13のスイング回数の増加に合わせて増加し、ガスの吹き付け時間に応じた所定量の有機物を吸着させることができ、連続処理によるバラツキもないことが確認された。また
図8に示すように、貼り合わせSOIウェーハの面内分布も均一であった。また、ライフタイムマップの標準偏差を確認したところ、すべて1未満(<1)であり、後述する比較例よりも改善されていることが確認された。
【0062】
(実施例2)
ノズル13の一往復のスイング時間を10秒から4秒に変えた点以外は実施例1と同様の条件下で有機物含有ガスの吹き付けを行い、その後、実施例1と同様の評価を行った。なお、一往復のスイング時間を4秒としたことに伴い、ノズル13のスイング回数を5回、10回、30回とした。この場合、各スイング回数に対応するガスの吹き付け時間はそれぞれ20秒、40秒、120秒となる。その結果、吹き付け時間が実施例1と同じであれば一往復のスイング時間を変えても吸着量の変化はなく、面内分布も良好であることが確認された。
【0063】
(実施例3)
ウェーハの回転数をパラメータとした点以外は実施例1と同様の条件下で有機物含有ガスの吹き付けを行い、その後、実施例1と同様の評価を行った。またこれに伴い、ノズル13のスイング回数を4回に設定した。なお、スイング回数に対応するガスの吹き付け時間は40秒となる。ウェーハの回転数は、30、60、150、300、450、600rpmとした。その結果、有機物の吸着量はすべての回転数において3ng/cm
2程度であり、ウェーハの回転数が30〜600rpmの範囲内であれば吸着量に変化がないことが確認された。また、ライフタイムマップの標準偏差も1未満(<1)であり、面内分布も良好であることが確認された。
【0064】
(実施例4)
有機物含有ガスの流量を0.5L/分とし、濃度制御用の窒素ガスの流量を29.5L/分とした点以外は実施例1と同様の条件下で有機物含有ガスの吹き付けを行い、その後、実施例1と同様の評価を行った。その結果、
図9に示すように、実施例1に比べて有機物の吸着量は少ないものの、有機物の吸着量は安定しており、ライフタイムマップの標準偏差もすべて1未満(<1)であった。
【0065】
以上の結果より、有機物含有ガスの流量、および、吹き付け時間を調整することで有機物の吸着量を制御することが可能であることが確認された。
【0066】
(実施例5)
有機物としてIPA(イソプロピルアルコール)を用いた点以外は実施例1と同様の条件下で有機物含有ガスの吹き付けを行い、その後、実施例1と同様の評価を行った。なお、ガス流量に関しては、NMPよりもウェーハ表面に吸着しにくいことを考慮し、有機物含有ガスの流量を1L/分とし、濃度制御用の窒素ガスは使用しなかった。
【0067】
その結果、
図10に示すように、実施例1と同様、有機物の吸着量は安定しており、面内分布もすべて<1であった。また、IPAはNMPと同様の効果はあるが、同じ吸着量を付けようとするとNMPよりも長い時間吹き付ける必要があるため、生産能力を考慮するとNMPのほうがより好ましいことが確認された。
【0068】
(実施例6)
ノズル13のスイングを行わずウェーハ2の中心に固定した点以外は実施例1と同様の条件下で有機物含有ガスの吹き付けを行い、その後、実施例1と同様の評価を行った。その結果、
図11及び
図12に示すように、安定性は良く、吹き付け時間に応じて吸着量を制御することも可能であるが、吸着量が5ng/cm
2の条件では面内分布を持つことが確認された。
【0069】
また
図12に示すように、吹き付け時間が60秒までの場合では、ライフタイムマップの標準偏差は1未満(<1)であったが、吹き付け時間が120秒の場合では、ライフタイムマップの標準偏差は3程度まで悪化した。したがって、有機物の吸着量を多くする場合はノズル13をスイングさせたほうがよいことが確認された。
【0070】
(比較例1)
活性側ウェーハ及び絶縁膜が形成された支持側ウェーハをそれぞれ25枚ずつ用意し、これらを有機物(NMP)の存在する環境下でBtタイプの洗浄機を用いて洗浄し、さらに同じ環境下でスピンドライヤーを用いて乾燥した。その後、活性側ウェーハ25枚から任意に選択した5枚のウェーハを有機物の吸着量の分析に用い、別の5枚については最終的なSOI加工を行い、実施例1と同様の評価を行った。その結果を
図13及び
図14に示す。
【0071】
図13のグラフに示すように、5枚のウェーハの有機物の吸着量はいずれも1ng/cm2程度であり、有機物の吸着量は安定していることが確認された。ただし、ライフタイムマップの標準偏差はいずれも3未満(>3)となり、有機物の吸着量の面内分布が不均一であることが確認された。測定したライフタイムマップの代表例を
図14に示す。
【0072】
また、別の日に同じ設備を用いて同様の評価を行ったところ、有機物の吸着量は2ng/cm
2程度となり、前回の結果の約2倍の有機物の吸着量となった。これは、有機物の存在している環境に変化が生じたものと考えられる。さらに、有機物の面内分布も不均一であることが再確認された。したがって、従来の方法では、ウェーハ表面に有機物を吸着させることはできても、所定の濃度に制御することは困難であり、面内分布も不均一であることが確認された。
【0073】
(比較例2)
活性側ウェーハ25枚と絶縁膜が形成された支持側ウェーハ25枚とを有機物(NMP)の存在しない環境下で洗浄した後、
図15の模式図に示すように、有機物(NMP)の溶液81が入った密閉容器82の中に所定の時間放置した。各ウェーハはカセット83内の順に並んだスロット1〜25にそれぞれ収容し、縦置きの状態で密閉容器82内に放置した。密閉容器82内でのウェーハの放置時間は、1分、5分、10分の3通りとした。その後、活性側ウェーハ25枚のうちの5枚を有機物の吸着量の分析に用い、別の5枚に対して最終的なSOI加工を行い、実施例1と同様の評価を行った。有機物の吸着量の分析に用いた5枚のウェーハは、カセット83のスロット1、7、13、19及び25に収容されていたものを用い、できるだけ分散して選択した。その結果を
図16及び
図17に示す。
【0074】
図16のグラフに示すように、ウェーハの放置時間が長くすれば有機物の吸着量も多くなり、有機物の吸着量を調整可能であることが分かった。ただし、カセット内のスロット間でウェーハ表面の有機物の吸着量にばらつきが発生しており、複数枚のウェーハの同時処理は困難であることが分かった。また、
図17のライフタイムマップから明らかなように、有機物の面内分布も不均一であり、スロット間でも面内分布のばらつきが発生していることが確認された。