(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基板保持部の回転中心と基板の中心とのずれ量が予め設定された許容差を越える場合には、前記中心のずれ量が許容差よりも小さくなるように前記基板保持部に保持された基板の中心を前記回転中心に一致させる方向に当該基板を移動させる工程を含むことを特徴とする請求項7に記載の液処理方法。
前記基板保持部の回転中心と基板の中心とのずれ量が予め設定された許容差を越える場合には、前記中心のずれ量が許容差よりも小さくなるように前記基板保持部に保持された基板の中心を前記回転中心に一致させる方向に当該基板を移動させる工程を含むことを特徴とする請求項6に記載の液処理方法。
円形の基板を水平に保持して鉛直軸周りに回転させ、回転する基板の周縁部に薬液を供給して膜を除去する液処理装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体であって、
前記プログラムは請求項6ないし9のいずれか一つに記載された液処理方法を実行するためにステップが組まれていることを特徴とする記憶媒体。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の液処理装置の実施の形態であるウエハ処理装置の構成について
図1〜
図5を参照しながら説明する。本例のウエハ処理装置は、ウエハ処理システム内に設けられている。
図1の平面図、
図2の側面図に示すように、このウエハ処理システムは、基板処理部110と、外部から搬送されてくるキャリアであり、複数枚、例えば25枚のウエハを収容することのできるFOUP(Front Opening Unified Pod)131と前記基板処理部110との間でウエハWの搬入出を行う搬入出部120と、を有している。
【0011】
搬入出部120には、例えば3個のFOUP131を載置することが可能な載置台130と、載置台130に載置されたFOUP131と基板処理部110との間でウエハWの受け渡しを行うための搬送室140とが設けられている。図中、141はFOUP131の蓋体を取り外して、FOUP131と搬送室140とを連通させるシャッタである。
【0012】
搬送室140内には、FOUP131と基板処理部110内のウエハ受け渡しユニット114との間でウエハWを搬送する第1のウエハ搬送機構150が設けられている。第1のウエハ搬送機構150は、FOUP131が並んでいる方向への移動や、進退、昇降、回転の全てが自在に構成された例えば2個のピック151を備えており、各ピック151上にウエハWが保持されて搬送される。また、
図2に示す152は、搬送室140内に清浄な空気のダウンフローを形成するためのファンフィルタユニット(FFU)である。
【0013】
基板処理部110は、搬送室140との間で受け渡しされるウエハWを一時的に載置する載置棚114aを備えたウエハ受け渡しユニット114と、ウエハWに対する液処理が行われるウエハ処理ユニット171〜174と、基板処理部110においてウエハWの搬送を行う第2のウエハ搬送機構160とが設けられている。第2のウエハ搬送機構160は、進退、昇降、回転の全てが自在に構成されたピック161を備えており、このピック161上にウエハWが保持されて搬送される。
【0014】
ウエハ処理ユニット171〜174には、本実施の形態のウエハ処理装置が組み込まれている。更に
図1中の111はウエハ処理装置で使用される処理液(薬液やリンス液など)を貯蔵するための処理液貯蔵ユニット、112は基板処理システム全体に電力を供給するための電源ユニット、113は基板処理システム全体の制御を行う後述の制御部5を収容した制御ユニットである。また
図2に示した116は、ウエハ処理ユニット171〜174や第2のウエハ搬送機構160が設けられている空間などに清浄な空気のダウンフローを形成するためのFFUである。
【0015】
次に、ウエハ処理ユニット171〜174内に設けられているウエハ処理装置について
図3〜
図5を参照しながら説明する。本例のウエハ処理装置は、ウエハWの周縁部、詳細には当該周縁部に形成されウエハWの端部が面取りされたベベル部に形成されているSiO
2膜やSiN膜、ポリシリコン膜等の不要な膜を薬液であるエッチング処理液により除去する。
【0016】
図3に示すようにウエハ処理装置は、ウエハWを水平に保持して鉛直軸周りに回転させるためのウエハ保持部230(基板保持部)と、回転するウエハWに供給され、周囲に振り飛ばされた処理液を受け止めて、外部に排出するためのドレインカップ210と、ウエハWの上方を覆うためのトッププレート220と、ウエハWのベベル部の各々上面側及び下面側から処理液を供給するための第1、第2のノズル部240、250と、が設けられている。
【0017】
ウエハ保持部230は、プーリーとベルトとなどからなる動力伝達部231を介してモータ232に接続され、鉛直方向に伸びる中心軸周りに回転自在に構成された回転軸235の上端部に、円板状の真空チャック部233を設けた構成となっている。図中、236は回転軸を保持する軸受である。
【0018】
真空チャック部233及び回転軸235には、一端側が真空チャック部233の上面に開口する一方、他端側が不図示の真空ポンプ並びに窒素ガス供給部に切り替え自在に接続されたガス流路234が設けられている。そして、ウエハWの処理を行う際には、真空ポンプによりガス流路234内を真空排気して、真空チャック部233上でウエハを吸着保持する。また、真空排気を停止してガス流路234内に窒素(N
2)ガスを供給することにより、真空チャック部233上のウエハWを浮上させることも可能である。
【0019】
トッププレート220は、ウエハ保持部230に保持されたウエハWの上面を覆う円板状の部材であり、その下面にはベベル部に供給された処理液のミストや蒸気がウエハWの中央部側に進入することを抑制するために、気体の流路を狭くするための円環状の凸部221が形成されている。また、トッププレート220の中央部には、上述のミストや蒸気の進入を防ぐために、清浄空気や窒素ガスを供給するためのガス供給路222が設けられており、ウエハWの中央部側から周縁部側へと流れるガスの流れを形成することができる。
【0020】
トッププレート220は、円板の外周部の一部が切り欠かれており、この切り欠き内には、ウエハWのベベル部に上面側から処理液を供給するための第1のノズル部240が配置されている。第1のノズル部240は、エッチング処理液やリンス液といった複数種類の処理液を切り替えて供給することが可能となっている。ウエハWのベベル部に薬液であるエッチング処理液を供給するという観点において、第1のノズル部240は、本例の薬液ノズルに相当する。
【0021】
第1のノズル部240には、トッププレート220の直径方向、即ち、ウエハWの直径方向に向けて第1のノズル部240を移動させるためのロッドやシリンダモータを含む移動機構241が設けられている。移動機構241は、後述する位置決め機構3によりウエハWの直径を計測した結果に基づいて、ウエハWの端部から予め設定された距離だけ中心側の位置に処理液を供給するように第1のノズル部240を移動させる役割を果たす。
【0022】
ドレインカップ210は、ウエハ保持部230に保持されたウエハWの周囲を囲むように配置される円環状の部材であり、その内周面に沿って、ウエハWから振り切られた処理液を受け止める溝部211が形成されている。この溝部211には、不図示の排液管及び排気管が接続されており、ドレインカップ210に受け止められた処理液やウエハWの上面側から流れ込んできたガスを外部に排出することができる。
【0023】
ドレインカップ210の溝部211よりも内側の領域には、ウエハWのベベル部に下面側から処理液を供給するための第2のノズル部250を配置するための切り欠きが形成されている。エッチング処理液やリンス液などの複数種類の処理液を切り替えて供給可能な点、処理液の供給位置をウエハWの端部から予め設定された距離だけ中心側の位置に調節するための移動機構251が設けられている点において、第2のノズル250は、既述の第1のノズル240と共通の機能を備えている。ウエハWのベベル部に薬液であるエッチング処理液を供給するという観点において、第2のノズル部240も本例の薬液ノズルに相当する。
【0024】
以上に説明したトッププレート220及びドレインカップ210は、不図示の昇降機構を備えており、ウエハ保持部230へウエハWを載置する際には、トッププレート220を上方側へ、ドレインカップ210を下方側へ退避させる。そして、ベベル部の処理を実行する際には
図12に示すようにこれらの部材220、210が上下に重なり合うように退避位置から処理位置まで移動し、ウエハWの処理を行う処理空間を形成する。
【0025】
さらにウエハ処理装置は、ウエハ保持部230の回転中心と、ウエハWの中心とを一致させるための位置決め機構3を備えている。位置決め機構3は、ウエハWの側周面に当接する第1の位置決め部材311が設けられた第1の位置決め機構部31と、ウエハ保持部230の回転中心を挟んで第1の位置決め部材311と対向する位置に配置され、ウエハWの側周面に当接する第2の位置決め部材321が設けられた第2の位置決め機構部32と、を備えている。
【0026】
図4に示すように第1の位置決め部材311は、上面から見てV字状の切り欠きを有した部材である。第1の位置決め部材311は、前記切り欠き内の側面である接触面314にて円形のウエハWの側面の2点と当接する。
【0027】
図3に示すように第1の位置決め部材311は、レール312a上を移動自在に構成された支持部312を介して第1の駆動部313に接続されている。第1の駆動部313は、ウエハ保持部230の回転中心に近づく方向と、遠ざかる方向との間で第1の位置決め部材311を直線的に移動させ、所望の位置で停止させることができる。第1の駆動部313は、例えば伸縮ロッドや、この伸縮ロッドを比較的正確な長さに伸縮させることが可能なステッピングモータなどを備えている。
【0028】
図3、
図4に示す第2の位置決め部材321は、中心軸周りに回転可能に保持された部材である。第2の位置決め部材321は、円筒の側周面をウエハWの側周面と当接させることができるように、前記中心軸を上下方向に向けて保持されている。この結果、当該部材321がウエハWの側周面と接触する際に、ウエハWの中心がウエハ保持部230における回転中心と第2の位置決め部材321とを結ぶ直線上からずれていたとしても、ウエハWの移動に合わせて第2の位置決め部材321が回転することで、ウエハWは滑らかに移動することができる。
【0029】
図3に示すように第2の位置決め部材321は、後述するウエハWの直径の計測機構324を介して、レール322a上を移動自在に構成された支持部322に支持されている。この支持部322の基端部には、第2の駆動部323が設けられている。第2の駆動部323は、前述の第1の位置決め部材311の移動方向と、ウエハ保持部230の回転中心とを結ぶ直線の延長線の上で、第2の位置決め部材321を、ウエハ保持部230の回転中心に近づく方向と、遠ざかる方向とに移動させ、所望の位置で停止させることができる。第2の駆動部323は、例えば伸縮ロッドや、この伸縮ロッドを比較的正確な長さに伸縮させることが可能なステッピングモータなどを備えている。
【0030】
以上の構成を備えることにより、
図4に示すようにウエハ保持部230の回転中心(O’点)を挟んで互いに対向する位置に配置された第1の位置決め部材311及び第2の位置決め部材321は、前記回転中心を通る直線上を移動することができる。そして、第1の位置決め部材311、第2の位置決め部材321をウエハWの側周面に当接させて、ウエハWを挟むことにより、前記回転中心にウエハWの中心を一致させることができる。
【0031】
しかしながらウエハWは、製造誤差などの理由により、例えば直径±0.2mm程度の公差があるため、第1、第2の位置決め部材311、321が当接する側周面から中心までの距離がウエハW毎に変化する。そこで、位置決め機構3の例えば第2の位置決め機構部32には、ウエハWの直径を計測するための計測機構324が設けられている。
【0032】
図3に示すように計測機構324は、その先端部に第2の位置決め部材321を保持した状態で支持部322に支持されている。
図4に示すように計測機構324は、本体327と、その先端部がウエハ保持部230の回転中心側に飛び出した状態で第2の位置決め部材321を上面側から保持する連結部329と、前記本体327内に収容され、前記連結部329の基端部と本体327の内壁面との間に介設されたバネ部326と、前記連結部329の先端部であって、第2の位置決め部材321の上方位置から側方に伸び出すように設けられた板状の部材からなる可動部325と、この可動部325の板面と対向するように前記連結部329の側方位置に配置された位置センサ328と、を備えている。位置センサ328は、接触式のセンサ、または、磁気センサや光学センサ等の非接触センサを用いることが可能である。
【0033】
バネ部326は、連結部329を、ウエハ保持部230の回転中心側へ押し出す方向に付勢されており、第2の位置決め部材321はウエハWの側周面より中心側に伸び出している。そして、直径300mmに正確に加工された位置決め用のウエハWを、当該ウエハWの中心がウエハ保持部230の回転中心(回転軸235の中心)と一致するようにウエハ保持部230に保持させる。
【0034】
そして、第1の位置決め部材311の2つの接触面314に位置決めウエハWの側周面を接触させた状態で第2の位置決め部材321を位置決めウエハWの側周面に当接させると、バネ部326により押し出されている連結部329が押し戻される。この連結部329の動きに伴って可動部325が移動し、位置センサ328は当該可動部325までの距離を検出する。
【0035】
そこで後述の制御部5では、第1の位置決め部材311が位置決めウエハWに当接しているときにおける第1の駆動部313の伸縮ロッドの伸び幅と、例えば位置センサ328から可動部325までの距離が1mmとなる位置に第2の位置決め部材321が配置されるときの第2の駆動部323の伸縮ロッドの伸び幅とを記憶しておく。
【0036】
そして、実際のウエハW処理時に、上述の位置決めウエハWを用いて予め記憶しておいた位置まで第1、第2の位置決め部材311、321を移動させる。このとき、位置センサ328から可動部325までの距離が1mmよりも大きく、例えば1.1mmとなった場合には、当該ウエハWの直径は300mmよりも小さく、299.9mmであることが分かる。また、位置センサ328から可動部325までの距離が1mmよりも小さく、例えば0.9mmとなった場合には、当該ウエハWの直径は300mmよりも大きく、300.1mmであることが分かる。
【0037】
計測機構324は上述の原理でウエハWの直径を計測し、第1、第2の位置決め機構部31、32は、計測機構324にて計測されたウエハWの直径の中心位置が回転中心と一致するようにウエハWを移動させることにより位置決めが完了する。以上に説明した位置決めは、例えばガス流路234から窒素ガスを吐出させて、ウエハWを浮上させた状態で行っている。
【0038】
また、各第1、第2のノズル240、250の移動機構241、251は、計測機構324にて計測された直径に基づいて特定される各ウエハWの端部の位置に基づき、この端部から予め設定された距離だけ中心側の位置に各ノズル240、250を移動させ、その位置から各処理液が供給される。これにより、公差の範囲内でウエハWの直径が変化しても、各ノズル240、250はウエハWの端部から一定の除去幅(以下、カット幅という)でベベル部の膜を除去することができる。
【0039】
また、
図5のブロック図に示すように、本例のウエハ処理システムに設けられた各機器やウエハ処理装置は、制御部5に接続されている。制御部5はCPU51と記憶部52とを備えたコンピュータからなり、記憶部52には制御部5の作用、つまり、ウエハ処理システム内にウエハWを搬入して、ウエハ処理ユニット171〜174内のウエハ処理装置に受け渡し、位置決め機構3による位置合わせを行ってからトッププレート220とドレインカップ210を昇降させて処理空間を形成し、ウエハWのベベル部の液処理を行ってから当該ウエハWを搬出するまでの動作に係わる制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0040】
ここで、上述の位置決め機構3や計測機構324を用いたウエハWの中心の位置合わせ(以下センタリングという)や、ウエハWの直径を計測した結果に基づく第1、第2のノズル240、250の位置調節に関する動作に関するステップは、各々センタリングプログラム522やノズル位置調節プログラム521に組まれている。この観点において、制御部5は、ウエハ処理装置のノズル制御部や位置決め制御部の機能を備えているといえる。
【0041】
以上に説明したように、本例のウエハ処理装置はウエハの位置決め機構3やウエハWの直径の計測機構324を備え、これらの機構3、324を用いてウエハWの中心とウエハ保持部230の回転中心とを一致させた状態で処理液の供給位置を調節している。
第1、第2のノズル240、250の移動機構241、251や第1、第2の位置決め部材311、321の駆動部313、323は、例えばステッピングモータを利用して位置調節を行っている。しかしながら例えば環境温度の変化による機器の膨張、伸縮や、ステッピングモータのパルスずれなどの影響で、第1、第2のノズル240、250の位置ずれやセンタリングのずれが徐々に生じる場合がある。
【0042】
このようなノズル240、250の移動機構241、251や位置決め部材311、321の駆動部313、323に起因する位置ずれは、位置決め機構3や計測機構324にて計測することが困難である。一方で、近年のベベルの液処理においては、液処理後におけるカット幅の精度を予め設定した距離に対して例えば±100μm以下に低減することが求められる場合がある。
【0043】
そこで本例のウエハ処理装置は、液処理が行われた後のベベル部の状態をCCD(Charge-Coupled Device)カメラ4A〜4Cで撮像し、この撮像結果に基づいてカット幅を計測することにより、第1、第2のノズル部240、250の位置ずれと、ウエハWのセンタリングのずれと、を特定する機能を備えている。以下、CCDカメラ4A〜4Cを用いた各ずれ量の特定方法について説明する。
【0044】
本例のウエハ処理装置においては、FOUP131から各ウエハ処理装置へのウエハWの搬送経路を成す搬送室140の空間内に、複数のウエハ処理装置に共通のCCDカメラ4A〜4Cが3台設けられている。
図1、
図2に示すようにCCDカメラ4A〜4Cは、第1のウエハ搬送機構150がFOUP131とウエハ受け渡しユニット114との間でウエハWを搬送する軌道と干渉しない位置、例えば載置台130から見て右手側の搬送室140の側壁部近傍であって、FOUP131の開口部よりも高い位置に配置されている。
【0045】
CCDカメラ4A〜4Cは、レンズを下方側に向けた状態で配置されており、
図5、
図6に示すようにCCDカメラ4A〜4Cのレンズから焦点距離だけ離れた撮像位置に、第1のウエハ搬送機構150のピック151に保持されたウエハWを位置させることにより、液処理後のウエハWの撮像が行われる。CCDカメラ4A〜4Cは、本実施の形態の撮像部に相当する。
【0046】
本例のCCDカメラ4A〜4Cは、例えば200万画素のものが用いられ、等倍レンズで5mm四方の視野を撮像し10μm以下の解像度で被写体を撮像することができる。
またCCDカメラ4A〜4Cの近傍位置には、不図示の照明が配置されており、この照明を用いて被写体となるウエハWのベベル部を照らすことができる。
【0047】
一方、
図6に示すように、各CCDカメラ4A〜4Cは、液処理後のウエハWを保持したピック151を予め設定された位置に移動させたときウエハWを撮像する。そして各CCDカメラ4A〜4Cによって撮像された3ヶ所の位置を撮像領域A〜Cとする。
【0048】
本例のウエハ処理装置においては、上下2段に配置されたピック151のうち、上段側のピック151上に保持されたウエハWのベベル部を撮像する構成となっている。但し、例えば上段側のピック151に保持されたウエハWの撮像を終えた後、当該ウエハWをFOUP131に収容してから下段側のピック151に保持されたウエハWのベベル部の撮像を行ってもよい。さらにまた、ピック151を1個だけ備えるウエハ搬送機構150を用いて、すべてのウエハWの撮像を行ってもよいことは勿論である。
【0049】
ここで既述のウエハ保持部230は、例えば真空チャック部233にウエハWが載置された際のウエハWの向きと同じ向きでウエハWの回転を停止することができる。従って、ウエハ保持部230と第2のウエハ搬送機構160との間では、液処理の前後で同じ向きを向いた状態のウエハWが受け渡され、このウエハWが載置棚114aを介して第1のウエハ搬送機構150のピック151に保持される。従って、当該ピック151上のウエハWは、センタリング方向に対して常に決まった位置で保持された状態となっており、この結果、各ウエハWの撮像領域A〜Cを正確に撮像することが可能となっている。
【0050】
図7は、ウエハWにおける撮像領域A〜Cの設定位置と、センタリング方向との関係を示した説明図である。図中、一点鎖線で示した直線は、ウエハWの中心(図中のO点)を挟んで第1の位置決め部材311と第2の位置決め部材321とが対向し、センタリングが行われる方向(センタリング方向)を示す直線(センタリング直線)である。v点及びz点はこの直線とウエハWの外周(端部)との交点であり、z点は第1の位置決め部材311側、v点は第2の位置決め部材321側に位置している。
【0051】
そして、v点からウエハWの外周に沿って、前記O点を中心として時計回りに35°回転する方向に移動した位置にa点、このa点から時計回りに120°ずつ移動した位置にb点、c点が設定されている。これらa〜c点は、液処理後の膜のカット幅の計測が行われる計測点である。
【0052】
既述の撮像領域A〜Cは、300mmのウエハWにおける上述の各計測点(a〜c点)が、CCDカメラ4で撮像された画像内の予め設定された位置に配置されるように、その位置が設定されている。なお、
図7中に示したX方向、Y方向は、
図6に示したピック151が移動する方向に対応している。
【0053】
このように各計測点が設定されたウエハWについて、第1のノズル240のずれ、及びウエハWのセンタリングずれの各ずれ量を特定する手法について説明する。ここで
図2等に示しているように、本例のCCDカメラ4A〜4Cは、ウエハWの上面側からベベル部を撮像するように配置されているので、当該上面側に処理液を供給する第1のノズル部240の位置ずれ量が把握される。
【0054】
まず、第1のノズル部240のずれ量を把握する手法について説明する。
図7中の実線OLは、ウエハWの中心O点から、センタリング方向のz点側にずれ量eだけずれた状態でウエハWがウエハ保持部230に載置された場合において、エッチングでカットされなかった膜の輪郭線を示している。この場合は、ウエハWはO’点を回転中心として液処理が行われている。
【0055】
一方、同図中に示した破線OL
Tは、ウエハWの中心O点と回転中心とが一致している場合における理想的な輪郭線を示している。このとき、第1のノズル部240は、ウエハWの端部からxmmのカット幅でベベル部のエッチングを行うことを目標として配置されているものとする。なお、説明の便宜上、
図7においては両輪郭線(OL、OL
T)のずれ幅を実際よりも誇張して示してある。
【0056】
ウエハW中心(O点)からの回転中心(O’点)のずれ方向がセンタリング方向と一致しているとき、輪郭線OLとウエハWの端部との間のカット幅は、センタリング直線上のz点で最小となり、v点で最大となる。例えば、第1のノズル部240の位置ずれを含むカット幅がx’(=x+Δx)であるときz点におけるカット幅は「x’−e」、v点におけるカット幅は「x’+e」となる。Δxは、本発明の第1の差に相当する。
またカット幅x’は、本発明における除去幅の実際値に相当する。
【0057】
そして、これらz点、v点以外の位置のカット幅は、下記(1)式で表される。
x’(θ)=(x’−e)+e(1−cosθ) …(1)
ここでθは、z点を始点、O点を中心とした時計回りの方向の回転角である。
【0058】
このとき、撮像領域A〜Cのベベル部のエッチングの状態を撮像すると、
図8〜
図10に示すように各々異なるカット幅x
a〜x
cが観察される。そこで撮像された画像データの例えば各画素の階調変化からウエハWの端部(外周)、及び輪郭線OLを特定する。
ここでカット幅xa〜xcは、本発明における除去幅の実測値に相当する。
【0059】
そして、各撮像領域A〜C中に予め設定されているa〜c点の各点からウエハWの半径方向に直線を引き(
図8〜
図10中に破線で示してある)、この直線と輪郭線OLとの交点までの距離xa〜xcを求める。この距離は例えば、前記半径方向の直線上の画素数などから特定できる。ここで既述のように、実際にはウエハWの直径は公差の範囲で変化するが、上述の画像処理で特定したウエハWの輪郭線と、予め設定した半径方向の直線との交点をa〜c点として把握すればよい。
【0060】
一方、
図7に示すように、これらa〜c点の各点は、z点から215°(a点)、335°(b点)、95°(c点)回転した位置に配置されているので、上記(1)式からxa〜xcは以下のように表される。
x
a=x’(215°)=(x’−e)+e(1−cos(215°))
…(2)
x
b=x’(335°)=(x’−e)+e(1−cos(335°))
…(3)
x
c=x’(95°)=(x’−e)+e(1−cos(95°))
…(4)
【0061】
そして、円を周方向に均等に3分割した角度の余弦値の和(本例では「cos(215°)+cos(335°)+cos(95°)」)は0なので、(2)〜(4)式の両辺の和をとって整理すると、ずれ量eが相殺されて下記(5)式が得られる。
x’=(x
a+x
b+x
c)/3 …(5)
この結果、Δx=x’−xから、第1のノズル部240の位置ずれ量が把握される。
【0062】
ここで、第1のノズル部240のずれ量を把握するために必要な撮像領域の数は3箇所に限定されるものではない。ウエハWの外周を周方向に等間隔でn分割(nは2以上の自然数)して特定される位置(分割点)におけるカット幅を特定して上述の例と同様の計算を行えばよい。この場合は、分割点を含む位置にn個の撮像領域が設定される。
【0063】
次に、センタリングのずれ量を把握する手法について説明する。既述の(2)式を計算すると下記(6)式が得られ、ずれ量eを算出できる。
e=(x
a−x’)/(−cos(215°))
={x
a−(x+Δx)}/0.
82 …(6)
eが正の値であれば、回転中心(O’点)は、ウエハWの中心(O点)の右方向にずれており、負の値であれば左方向にずれていることになる。この方法により特定されたずれ量eは、本発明の第2の差に相当する。
【0064】
本例のウエハ処理装置の制御部5の記憶部52には、上述のCCDカメラ4A〜4Cにて撮像した撮像結果から、ウエハWの外周や輪郭線OLを検出する画像処理プログラム523、この画像処理の結果からベベル部のカット幅x
a〜x
cを求めるカット幅検出プログラム524、カット幅の検出結果から第1のノズル部240のずれ量を算出するノズルずれ量算出プログラム525、位置決め機構3によるセンタリングのずれ量を算出するセンタリングずれ量算出プログラム526が記憶されている。そして、これらのプログラム523〜526には、上述の手法を用いて各ずれ量を把握し、予め設定された許容差(例えばノズルずれ量とセンタリングずれ量との合計が±100μm以下となる値が設定される)とを比較して、液処理によるカット幅が適切であるか否かを判断するステップが組まれている。この観点において制御部5は、本発明の判断部に相当しているといえる。
【0065】
以下、上述のウエハ処理装置の動作について
図11のフロー図を参照しながら説明する。まず、実際のウエハWの処理を始める前に位置決め用の治具ウエハWを用いて位置決め機構3を移動させる位置を決定し、当該位置のデータを記憶する(ステップS1)。
【0066】
位置決め機構3を移動させる位置が決定されたら、位置決め用の治具ウエハWを取り出した後、処理対象のウエハWを収容したFOUP131を載置台130に載置し、搬送室140にFOUP131を接続する。そして、第1の搬送機構150によりウエハWを取り出してウエハ受け渡しユニット114の載置棚114aに載置する。
【0067】
第2の搬送機構160は、載置棚114aから処理対象のウエハWを取り出して、液処理が行われていないウエハ処理ユニットに搬入する(ステップS2)。ウエハ処理ユニット171〜174内では、
図3に示すようにウエハ処理装置がトッププレート220及びドレインカップ210を上下に退避させた状態で待機しており、第2の搬送機構160は、ウエハ保持部230の真空チャック部233にウエハWを受け渡した後、ウエハ処理ユニット171〜174から退避する。
【0068】
ウエハ保持部230にウエハWが受け渡されたら、ガス流路234から窒素ガスを供給しながらウエハWを浮かせた状態で位置決め機構3を予め記憶した位置に移動させ、ウエハWの直径を測定する(ステップS3)。しかる後、測定された直径に基づき、ウエハWのセンタリングを行い、予め設定されたカット幅だけベベル部のエッチングが行われるように第1、第2のノズル部240、250が移動する位置データの設定を行う(ステップS4)。
【0069】
こうして、ウエハWのセンタリング、第1、第2のノズル部240、250の位置決めが行われたら、ウエハWを真空チャック部233に吸着保持し、第1、第2の位置決め機構部31、32を退避させた後、トッププレート220及びドレインカップ210を処理位置まで下降、上昇させ、処理空間を形成する。このとき、第1、第2のノズル部240、250は、ウエハWの外方位置に退避している(
図12)。
【0070】
しかる後、トッププレート220のガス供給路222からガスを供給し、予め設定された回転速度までウエハ保持部230上のウエハWを回転させる。そして、薬液であるエッチング処理液の吐出を行いながら、第1、第2のノズル部240、250は、先に設定された位置まで移動する。
【0071】
エッチング処理液としては、フッ酸(HF)、アンモニア(NH3)と過酸化水素(H
2O
2)との混合溶液、フッ硝酸(フッ酸と硝酸(HNO
3)との混合液)等が用いられる。
こうして第1、第2のノズル部240、250が所定の位置に到達したら、予め設定した時間、ウエハWの上下面側からベベル部にエッチング処理液を供給して、当該部からの不要な膜の除去を行う(ステップS5)。
【0072】
しかる後、第1、第2のノズル部240、250から供給される処理液をリンス液であるDIWに切り替えてベベル部のリンス処理を実行する。所定時間リンス処理を行ったら、DIWの供給を停止し、ウエハWの回転を継続し、DIWの振り切り乾燥を実行する。
【0073】
振り切り乾燥を終えたら、ウエハWの回転を停止し、トッププレート220及びドレインカップ210を上下方向に退避させてから、真空チャック部233による吸着保持を解除する。そして、第2のウエハ搬送機構160をウエハ処理ユニット171〜174に進入させてウエハWを受け渡し、ウエハ処理ユニットからウエハWを搬出する(ステップS6)。
【0074】
液処理を終えたウエハWは、搬入時とは反対の動作で第2のウエハ搬送機構160→ウエハ受け渡しユニット114→第1のウエハ搬送機構150と受け渡される。そして、ピック151上に液処理後のウエハWを保持した第1のウエハ搬送機構150は、CCDカメラ4A〜4Cの下方の撮像位置にピックを移動させる(ステップS7)。しかる後、撮像領域A〜Cを撮像してその撮像結果からベベル部のカット幅を検出した後(ステップS8)、当該ウエハWをFOUP131に収容する。
【0075】
一方で制御部5は、カット幅の検出が行われたウエハWがいずれのウエハ処理ユニット171〜174内のウエハ処理装置で処理されたものであるかを把握している。そして、既述の計測点a〜c点のカット幅の検出結果に基づき、そのエッチング処理液の供給位置が適切であるか、本例では、第1のノズル部240の位置に起因するカット幅の位置ずれの量Δxが予め定めた許容差以内の値であるか否かを判断する(ステップS9)。
【0076】
適切と判断される場合には(ステップS9:YES)、次の判断のステップへと進む一方、適切でないと判断された場合にはノズル位置調節プログラム521により調節される第1のノズル部240の位置の設定を調節する(ステップS10)。例えば、カット幅がxに設定されており、位置ずれ量がΔxであった場合には、この位置ずれ量を解消するようにカット幅をx−Δxとする調節が行われる。
【0077】
これらのステップの後、ウエハWのセンタリングの位置が適切であるか、本例では、ウエハWの中心と回転中心とのずれ量eが予め定めた許容差以内の値であるか否かを判断する(ステップS11)。
【0078】
適切と判断される場合には、当該ウエハ処理装置に次のウエハWが搬入される(ステップS11:YES)。このとき、センタリングがずれていることは、計測点a〜c点のカット幅にばらつきがあることで判断できることから、このばらつきが予め設定した値の範囲にある場合には、センタリングのずれ量eを算出せずに適切であるとの判断を行い、制御部5の負荷を軽減してもよい。
【0079】
一方、センタリングの位置が適切でないと判断された場合にはセンタリングプログラム522により調節される位置決め機構3の設定を調節する(ステップS12)。例えば、センタリングのずれ量がeであった場合には、この位置ずれ量を解消する位置に第1、第2の位置決め機構部31、32による位置決め位置を修正する。
そして、当該設定を終えたら、このウエハ処理装置に次のウエハWが搬入されるまで待機する。
【0080】
本実施の形態に係わるウエハ処理装置によれば以下の効果がある。液処理が行われたウエハWのベベル部を撮像して得られた撮像結果に基づいて、エッチング処理液の供給に起因する不要な膜のカット幅が適切であるかを判断する。そして、カット幅が不適切である場合には、そのずれ量を解消する方向に第1のノズル部240の配置位置の設定を修正するので、ベベル部の液処理を常に高い精度で行うことができる。
【0081】
また、撮像領域Aの撮像結果を利用して、センタリングのずれ量を把握し、検出されたずれ量を解消する方向にウエハWのセンタリングの設定を修正することにより、この観点でもベベル部の液処理を常に高い精度で行うことができる。
【0082】
ここで、CCDカメラ4A〜4Cを利用したカット幅の検出、及び修正は第1のウエハ搬送機構150にて搬送されるすべてのウエハWで行わなくてもよい。例えば各ウエハ処理装置で予め設定された枚数のウエハWの液処理を行う度に、この作業を行ってもよい。
【0083】
また、撮像領域4A〜4Cに対応する位置に3台のCCDカメラ4A〜4Cを設けることに代えて、1台のCCDカメラの撮像位置にて液処理後のウエハWを移動させ、これら撮像領域4A〜4Cの撮影を順番に行うようにしてもよい。
【0084】
そして、本例では配置スペースの都合や腐食性のあるエッチング処理液からCCDカメラ4A〜4Cを遠ざける趣旨で、これらのCCDカメラ4A〜4Cをトッププレート220及びドレインカップ210の間に形成される処理空間から離れた、ウエハWの搬送経路上に配置した。これに対し、例えばトッププレート220の一部または全部を透明な部材で構成し、その上方位置にCCDカメラを配置して、ウエハWが処理空間に置かれている状態のまま撮像を行ってもよい。
【0085】
このほか、ウエハ処理装置は、CCDカメラ4A〜4Cによる撮像結果から、第1のノズル部240の位置やセンタリング位置のずれ量が予め設定された許容差以内であるか否かの判断のみを行い、その修正を行わなくてもよい。例えば、第1のノズル部240の配置位置に起因してカット幅のずれ量が大きくなっていることを示すアラームのみを発報し、手動で修正を行ってもよい。また、位置決め機構3を使わないウエハ処理装置では、センタリングの位置ずれ量を第2のウエハ搬送機構160の制御部に出力し、当該搬送機構160からウエハ保持部230へのウエハWの受け渡し位置の調節によりセンタリングを行ってもよい。
【0086】
また、ウエハ処理装置は第1のノズル部240の配置位置に起因するカット幅のずれ量と、センタリングに起因するカット幅のずれ量とのどちらか一方のずれ量の判断を行ってもよい。そして、CCDカメラ4を用いたカット幅の撮像は、ウエハ処理装置にて行う場合に限定されず、FOUP131にてウエハ処理システムからウエハWを搬送した後、スタンドアローンの装置にて判定を行ってもよい。
【0087】
さらに除去される膜の種類もSiO
2膜やSiN膜、ポリシリコン膜に限定されるものではなく、レジスト膜を除去してもよい。
また、これらカット幅の検出に加え、ベベル部の撮像結果を他の判断、例えば、エッチング不足の判定や、ウエハWの周縁部の膜を階段状にカットする場合などにおいて、カットされた膜の膜厚の検出を同時に行ってもよい。