特許第5729377号(P5729377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5729377
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月3日
(54)【発明の名称】ガスバリア積層体及び円偏光板
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20150514BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20150514BHJP
【FI】
   B32B9/00 A
   H05B33/04
【請求項の数】11
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2012-507046(P2012-507046)
(86)(22)【出願日】2011年3月23日
(86)【国際出願番号】JP2011057043
(87)【国際公開番号】WO2011118661
(87)【国際公開日】20110929
【審査請求日】2013年9月13日
(31)【優先権主張番号】特願2010-70943(P2010-70943)
(32)【優先日】2010年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】円谷 学
(72)【発明者】
【氏名】井上 弘康
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−001156(JP,A)
【文献】 特開2000−332275(JP,A)
【文献】 特開2009−178956(JP,A)
【文献】 特開2002−156524(JP,A)
【文献】 特開2004−219825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 〜43/00
G02B 1/10
5/30
G02F 1/1335
H01L51/50
H05B33/02 〜33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム(a)と無機バリア層(a)とを有する複合層A、及び脂環式オレフィン樹脂フィルム(b)と無機バリア層(b)とを有する複合層Bを備えるガスバリア積層体であって、
前記複合層Aの表面及び前記複合層Bの表面が対向し貼付されてなり、
前記脂環式オレフィン樹脂フィルム(b)は、その前記複合層Aに対向する側の面が、活性化処理された面であり、
前記脂環式オレフィン樹脂フィルム(b)の前記活性化処理された面は、金属アルコキシドにより構成された金属アルコキシド層(b)を介して、前記複合層Aに接する、ガスバリア積層体。
【請求項2】
前記複合層Bが、前記脂環式オレフィン樹脂フィルム(b)の前記活性化処理された面に接して設けられた前記金属アルコキシド層(b)を有し、
前記脂環式オレフィン樹脂フィルム(b)の前記活性化処理された面は、前記金属アルコキシド層(b)を介して、前記複合層Aに接する、請求項1に記載のガスバリア積層体。
【請求項3】
前記複合層A及び前記複合層Bが、熱圧着により貼付されてなる、請求項1に記載のガスバリア積層体。
【請求項4】
前記複合層Aが、前記フィルム(a)又は前記無機バリア層(b)の、活性化処理された面に接して設けられた金属アルコキシド層(a)をさらに有し、
前記複合層Bに対向する側の、前記複合層Aの表面が、前記金属アルコキシド層(a)の面である、請求項1に記載のガスバリア積層体。
【請求項5】
前記複合層Bに対向する側の、前記複合層Aの表面が、前記フィルム(a)又は前記無機バリア層(b)の、活性化処理された面である、請求項1に記載のガスバリア積層体。
【請求項6】
前記活性化処理された面が、プラズマ処理、UVオゾン処理、及びコロナ処理からなる群より選択される処理により処理された面である、請求項1に記載のガスバリア積層体。
【請求項7】
前記複合層Aのフィルム(a)が、脂環式オレフィン樹脂からなるフィルムである、請求項1に記載のガスバリア積層体。
【請求項8】
前記フィルム(a)及び前記脂環式オレフィン樹脂フィルム(b)のうちの一方又は両方が延伸フィルムである、請求項1に記載のガスバリア積層体。
【請求項9】
前記フィルム(a)及び前記脂環式オレフィン樹脂フィルム(b)のうちの一方又は両方が、1/4波長板である、請求項8に記載のガスバリア積層体。
【請求項10】
前記フィルム(a)及び前記脂環式オレフィン樹脂フィルム(b)のうちの一方が1/4波長板であり、他方が1/2波長板であり、前記1/4波長板の遅相軸と前記1/2波長板の遅相軸との交差角が57°〜63°である、請求項9に記載のガスバリア積層体。
【請求項11】
請求項1に記載のガスバリア積層体と、偏光子とを有する円偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア積層体及びそれを備える円偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置並びに有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」ということがある。)を有する表示装置、光源装置、有機太陽電池、あるいは色素増感太陽電池においては、装置を構成する素子の保護などの目的で、水分及び酸素の透過を妨げる機能を有するガスバリア層を用いることが知られている。
【0003】
かかるガスバリア層としては、透湿度(水分を透過する割合)が小さい材料が好ましい。そのような材料として、脂環式オレフィンを含む樹脂及び各種の無機材料が知られている。かかる材料を有するガスバリア層において、無機材料の層を厚くすればガスバリア性能が高まるが、厚い層を一層設けると可とう性、耐久性等が低減しうるため、複数の樹脂の層及び複数の比較的薄い無機材料の層を交互に成膜して積層した構造を有するガスバリア積層体が提案されている(例えば特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−190186号公報
【特許文献2】特開2005−327687号公報(対応ヨーロッパ公報:EP1768463 (A1))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の無機材料の層を蒸着等の方法により交互に成膜する場合、真空度の高い環境下において成膜工程を行う必要があるが、かかる交互の成膜の操作においては、樹脂の層からのアウトガスが蒸着の操作を妨げたり、蒸着される層の品質を損ないガスバリア性能を劣化させたりすることが多い。
【0006】
複数の無機材料の層を有する積層体を得るための別の手段としては、無機材料の単層を有するフィルムを複数枚調製し、これらを接着剤を介して接着する方法が考えられる。しかしながら、このようにして得られた積層体においては、接着剤層の耐久性の低さや、脂環式オレフィン樹脂を含む層と接着剤の層との熱膨張率及び湿度膨張率の違い等に基づいて、耐久性が損なわれ、高温高湿の環境下におけるガスバリア性能が経時的に劣化しやすい。
【0007】
また、脂環式オレフィン樹脂の層を、位相差を調節する機能など、装置に求められるガスバリア以外の機能を有する層とすることができれば、装置全体の厚さの低減、装置全体としての高温高湿の環境に対する経時的な耐久性、製造工程の簡素化、製造コストの低減等の観点から望ましい。
【0008】
したがって、本発明の目的は、ガスバリア性能が高く、高温高湿の環境下においてもガスバリア性能の劣化が少なく、且つ容易に製造しうるガスバリア積層体を提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、容易に製造することができ、高いガスバリア層としての機能をも兼ね備え、装置全体としての厚さを低減することができる円偏光板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために本発明者らは鋭意検討した結果、ガスバリア積層体を、脂環式オレフィン樹脂の層と無機バリア層とを有する複合層を所定の態様で貼り合せることにより、当該課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
本発明によれば、下記のものが提供される。
〔1〕 フィルム(a)と無機バリア層(a)とを有する複合層A、及び脂環式オレフィン樹脂フィルム(b)と無機バリア層(b)とを有する複合層Bを備えるガスバリア積層体であって、
前記複合層Aの表面及び前記複合層Bの表面が対向し貼付されてなり、
前記脂環式オレフィン樹脂フィルム(b)は、その前記複合層Aに対向する側の面が、活性化処理された面であり、
前記脂環式オレフィン樹脂フィルム(b)の前記活性化処理された面は、直接又は金属アルコキシド層(b)を介して、前記複合層Aに接する、ガスバリア積層体。
〔2〕 前記複合層Bが、前記脂環式オレフィン樹脂フィルム(b)の前記活性化処理された面に接して設けられた前記金属アルコキシド層(b)をさらに有し、
前記脂環式オレフィン樹脂フィルム(b)の前記活性化処理された面は、前記金属アルコキシド層(b)を介して、前記複合層Aに接する、〔1〕に記載のガスバリア積層体。
〔3〕 前記複合層A及び前記複合層Bが、熱圧着により貼付されてなる、〔1〕又は〔2〕に記載のガスバリア積層体。
〔4〕 前記複合層Aが、前記フィルム(a)又は前記無機バリア層(b)の、活性化処理された面に接して設けられた金属アルコキシド層(a)を有し、
前記複合層Bに対向する側の、前記複合層Aの表面が、前記金属アルコキシド層(a)の面である、〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載のガスバリア積層体。
〔5〕 前記複合層Bに対向する側の、前記複合層Aの表面が、前記フィルム(a)又は前記無機バリア層(b)の、活性化処理された面である、〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載のガスバリア積層体。
〔6〕 前記活性化処理された面が、プラズマ処理、UVオゾン処理、及びコロナ処理からなる群より選択される処理により処理された面である、〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載のガスバリア積層体。
〔7〕 前記複合層Aのフィルム(a)が、脂環式オレフィン樹脂からなるフィルムである、〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載のガスバリア積層体。
〔8〕 前記フィルム(a)及び前記脂環式オレフィン樹脂フィルム(b)のうちの一方又は両方が延伸フィルムである、〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載のガスバリア積層体。
〔9〕 前記フィルム(a)及び前記脂環式オレフィン樹脂フィルム(b)のうちの一方又は両方が、1/4波長板である、〔8〕に記載のガスバリア積層体。
〔10〕 前記フィルム(a)及び前記脂環式オレフィン樹脂フィルム(b)のうちの一方が1/4波長板であり、他方が1/2波長板であり、前記1/4波長板の遅相軸と前記1/2波長板の遅相軸との交差角が57°〜63°である、〔9〕に記載のガスバリア積層体。
〔11〕 〔1〕〜〔10〕のいずれか1項に記載のガスバリア積層体と、偏光子とを有する円偏光板。
【発明の効果】
【0011】
本発明のガスバリア積層体は、複数の無機バリア層及び脂環式オレフィン樹脂のフィルムを有するためガスバリア性能が高く、且つ、これらが所定の態様で積層されているため、高温高湿の環境下においてもガスバリア性能の劣化が少なく、且つ容易に製造しうる。したがって、本発明のガスバリア積層体は、液晶表示装置並びに有機EL素子を有する表示装置、光源装置、有機太陽電池、あるいは色素増感太陽電池等の装置におけるガスバリア層として有用に用いることができる。
【0012】
本発明の円偏光板は、偏光子に加えて前記本発明のガスバリア積層体を有するため、良好なガスバリア層としての機能をも有する円偏光板として、特に液晶表示装置並びに有機EL素子を有する表示装置及び光源装置等の装置において有用に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明のガスバリア積層体を構成する複合層Bの具体的な構成の例を概略的に示す断面図である。
図2図2は、本発明のガスバリア積層体を構成する複合層Bの具体的な構成の別の例を概略的に示す断面図である。
図3図3は、本発明のガスバリア積層体を構成する複合層Aの具体的な構成の例を概略的に示す断面図である。
図4図4は、本発明のガスバリア積層体を構成する複合層Aの具体的な構成の別の例を概略的に示す断面図である。
図5図5は、本発明のガスバリア積層体を構成する複合層Aの具体的な構成のさらに別の例を概略的に示す断面図である。
図6図6は、本発明のガスバリア積層体の具体例を概略的に示す断面図である。
図7図7は、本発明のガスバリア積層体の別の具体例を概略的に示す断面図である。
図8図8は、本発明のガスバリア積層体のさらに別の具体例を概略的に示す断面図である。
図9図9は、本発明のガスバリア積層体のさらに別の具体例を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態及び例示物等を示して本発明について詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
【0015】
本発明のガスバリア積層体は、フィルム(a)と無機バリア層(a)とを有する複合層A、及び脂環式オレフィン樹脂フィルム(b)と無機バリア層(b)とを有する複合層Bを備える。さらに、複合層A及びBはそれぞれ、任意の構成要素として、金属アルコキシド層を有しうる。
【0016】
〔脂環式オレフィン樹脂フィルム(b)〕
本発明のガスバリア積層体(b)を構成する脂環式オレフィン樹脂フィルム(b)において、脂環式オレフィン樹脂とは、脂環式オレフィン重合体と、必要に応じてその他の任意の成分とを含有する樹脂である。
【0017】
脂環式オレフィン重合体は、主鎖及び/又は側鎖に脂環構造を有する非晶性の熱可塑性重合体である。脂環式オレフィン重合体中の脂環構造としては、飽和脂環炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられるが、機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造が好ましい。脂環構造を構成する炭素原子数には、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個であるときに、機械強度、耐熱性、及びフィルムの成形性の特性が高度にバランスされ、好適である。
【0018】
脂環式オレフィン重合体を構成する脂環構造を有する繰り返し単位の割合は、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式オレフィン重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合がこの範囲にあると、透明性および耐熱性の観点から好ましい。
【0019】
脂環式オレフィン重合体としては、例えば、ノルボルネン重合体、単環の環状オレフィン重合体、環状共役ジエン重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及び、これらの水素化物等が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン重合体は、透明性と成形性が良好なため、好適に用いることができる。
【0020】
ノルボルネン重合体としては、例えば、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との開環共重合体、又はそれらの水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との付加共重合体、又はそれらの水素化物等が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環(共)重合体水素化物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適に用いることができる。
脂環式オレフィン樹脂は、脂環式オレフィン重合体として、これらの重合体のうち1種類のみを単独で含有してもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて含有してもよい。また、フィルム(b)は、複数種類の脂環式オレフィン樹脂のそれぞれが層をなした構成であってもよい。
【0021】
脂環式オレフィン樹脂に含まれる脂環式オレフィン重合体の分子量は使用目的に応じて適宜選定されるが、溶媒としてシクロヘキサンを用いて(但し、重合体がシクロヘキサンに溶解しない場合にはトルエンを用いてもよい)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレン換算(溶媒がトルエンのときは、ポリスチレン換算)の重量平均分子量(Mw)で、通常10,000以上、好ましくは15,000以上、より好ましくは20,000以上であり、通常100,000以下、好ましくは80,000以下、より好ましくは50,000以下である。重量平均分子量がこのような範囲にあることにより、得られる基材フィルムの機械的強度及び成型加工性などが高度にバランスされるため好ましい。
【0022】
脂環式オレフィン樹脂が含有しうる任意の成分としては、例えば酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、塩素捕捉剤、難燃剤、結晶化核剤、強化剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、離型剤、顔料、有機又は無機の充填剤、中和剤、滑剤、分解剤、金属不活性化剤、汚染防止剤、抗菌剤やその他の樹脂、熱可塑性エラストマーなどの公知の添加剤を挙げることができる。
これらの添加剤の量は、本発明の効果を損なわない範囲とすることができる。例えば、樹脂Aに含まれる重合体100重量部に対して、通常0〜50重量部、好ましくは0〜30重量部である。
【0023】
脂環式オレフィン樹脂は、高い透明性を有するものに必ずしも限られないが、本発明のガスバリア積層体を表示装置、光源装置、あるいは太陽電池において光を透過することが求められる部分に用いうる有用なものとするという観点から、高い透明性を有するものが好ましい。例えば、脂環式オレフィン樹脂を厚み1mmの試験片として測定した全光線透過率が、通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である透明性を有するものが好ましい。
【0024】
〔フィルム(a)〕
本発明のガスバリア積層体を構成するフィルム(a)は、上に述べたフィルム(b)と同様の脂環式オレフィン樹脂のフィルム、又はその他の材料からなるフィルムとすることができる。フィルム(b)と同様の脂環式オレフィン樹脂のフィルムとすることが、良好なガスバリア性能の発現、フィルム(a)との物性の違いが少ないことにより反りを抑制できる等の観点から好ましい。
【0025】
フィルム(a)の材料としうる、脂環式オレフィン以外の樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、フルオレン変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、メタクリル−マレイミド共重合体、ポリスチレン、トリアセチルセルロース、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド等の樹脂を挙げることができる。
【0026】
フィルム(a)は、これらの樹脂のうち1種類のみを単独で含有してもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて含有してもよい。また、フィルム(a)は、複数種類の樹脂のそれぞれが層をなした構成であってもよい。
【0027】
〔フィルム;延伸〕
フィルム(a)及び/又はフィルム(b)は、好ましくは、延伸フィルムとすることができる。延伸フィルムとすることにより、熱膨張率を抑制することができ、高温高湿の環境下におけるガスバリア性能の劣化を、さらに低減することができる。
かかる延伸フィルムは、上で挙げたフィルム(a)及び(b)の材料として例示したものなどの樹脂を、原反フィルムに成形し、かかる原反フィルムを延伸することにより得ることができる。
【0028】
かかる原反フィルムの形状は、所望の延伸倍率により所望の寸法の基材フィルムが得られるよう、適宜設定することができる。好ましくは、長尺のフィルム状の形状とすることができる。
【0029】
延伸の態様は、好ましくは二軸延伸とすることができる。かかる二軸延伸は、原反フィルムを、その面に平行であって且つ互いに直交する2の方向に延伸することにより行うことができる。ここで、「直交」する方向とは、90°の角度をなすことが好ましいが、加えて、±10°程度の誤差を含む場合をも含むことができる。
通常、直交する2の方向は、それぞれ、長尺のフィルムのMD方向(フィルムの流れ方向、即ち長尺のフィルムの長さ方向)及びTD方向(MD方向に直交する、フィルムの幅方向)とされるが、これに限られず、MD及びTD方向に対して斜めの、互いに直交する2方向であってもよい。
【0030】
二軸延伸の態様は、逐次二軸延伸(2方向の延伸のそれぞれを別々の工程として行う)であってもよく、同時二軸延伸(2方向の延伸の工程の少なくとも一部を同時に行う延伸)であってもよい。製造の効率の点からは同時二軸延伸が好ましいが、Re値をなるべく少ない値とすることが求められる場合など、2方向の延伸を独立して精密に制御する必要がある場合には、かかる制御が容易という点から、逐次二軸延伸が好ましい場合もある。
【0031】
二軸延伸の、好ましい延伸倍率は、2方向それぞれにおいて1.05〜4.5倍であることが好ましく、1.5〜3.5倍であることがより好ましい。また、2方向の倍率の比は、1:1〜2:1の範囲内であることが、高温高湿環境下での透湿度変化を最小とするため、及びガスバリア積層体を透過する光を均質なものとするために好ましい。
【0032】
二軸延伸を行う際の温度は、原反フィルムのTg(ガラス転移温度)を基準に適宜設定することができる。具体的には例えば、Tg以上Tg+30℃以下の範囲、より好ましくはTg以上Tg+20℃以下の範囲とすることができる。原反フィルムが脂環式オレフィン樹脂の層及びそれ以外の樹脂の層からなる複層フィルムである場合は、脂環式オレフィン樹脂の層のTgを原反フィルムのTgとすることができる。原反フィルムが複数種類の異なるTgを有する脂環式オレフィン樹脂の層を有する場合は、最も低いTgを有する脂環式オレフィン樹脂の層のTgを原反のTgとすることができる。
【0033】
二軸延伸を行うのに用いる装置として、例えば、テンター延伸機、及びその他の、ガイドレールと当該ガイドレールに沿って移動する把持子を有する延伸機を好ましく挙げることができる。またその他に、縦一軸延伸機、バブル延伸機、ローラ延伸機等の任意延伸機を使用することができる。
【0034】
〔フィルムの物性等〕
フィルム(a)及びフィルム(b)は、その一方または両方が、1/4波長板とすることができる。好ましい態様において、フィルム(a)及びフィルム(b)のうちの一方が1/4波長板であり、他方が1/2波長板であり、前記1/4波長板の遅相軸と前記1/2波長板の遅相軸との交差角が57°〜63°とすることができる。かかる特性を有することにより、ガスバリア積層体を、円偏光板の構成要素としても用いることができる。フィルム(a)及び/又はフィルム(b)が、かかる1/4波長板又は1/2波長板としての特性を示しうる波長範囲は、用途に応じて適宜選択することができるが、例えば可視光波長の中心である550nm付近とすることができる。
【0035】
フィルム(a)及びフィルム(b)のそれぞれの厚さは、好ましくは10μm〜500μmとすることができ、より好ましくは30μm〜250μmとすることができる。フィルムの厚さは、接触式膜厚計により測定することができる。具体的には、TD方向に平行な線状において等間隔で10点測定し、その平均値を求め、これを厚さの測定値とすることができる。
【0036】
フィルム(a)及び(b)の、上記以外の物性は、特に限定されないが、熱膨張率が70ppm/k以下であることが好ましく、50ppm/k以下であることがより好ましく、40ppm/k以下であることが更に好ましく、湿度膨張率は30ppm/RHであることが好ましく、10ppm/RHであることがより好ましく、1.0ppm/RHであることが、更に好ましい。かかる熱膨張率は、フィルムを20mm×5mmの試料片とし、荷重5.0g、窒素100cc/分、昇温速度0.5℃/分の条件で、30℃から130℃にわたり昇温した際の試料片の長さの伸びを測定することにより測定した値とすることができる。かかる湿度膨張率は、フィルムを20mm×5mmの試料片とし、荷重5.0g、窒素100cc/分、温度25℃、速度5.0%RH/分の条件で、30%RHから80%RHにわたり湿度を上昇した際の試料片の長さの伸びを測定することにより測定した値とすることができる。かかる好ましい熱膨張率及び湿度膨張率を得ることにより、高温高湿の環境下における経時的なガスバリア性能の低下が抑制されたガスバリア積層体を得ることができる。
【0037】
〔無機バリア層(a)(b)〕
本発明のガスバリア積層体が備える無機バリア層(a)及び(b)は、無機材料を主成分とし、水分及び酸素等の、外気中に存在する成分であって表示装置及び発光装置等の装置の内部の構成要素(例えば、有機EL素子の発光層等)を劣化させうる成分をバリアする能力を有する層である。
無機バリア層の水蒸気透過率は、その上限が1.0g/m・day以下であることが好ましく、0.2g/m・day以下であることがより好ましい。一方水蒸気透過率の下限は、0g/m・dayであることが最も好ましいが、それ以上の値であっても、上記上限以下の範囲内であれば、好ましく機能しうる。
【0038】
無機バリア層の材料は、特に限定されないが、好ましい材料として、珪素の酸化物、窒化物、窒化酸化物、アルミニウムの酸化物、窒化物、窒化酸化物、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)及びこれらの2以上が混合した材料とすることができる。透明性の点では、珪素の酸化物、窒化酸化物が特に好ましく、一方基材フィルムの材料である脂環式オレフィン樹脂との親和性の点では、DLCが特に好ましい。
【0039】
珪素の酸化物、窒化物、窒化酸化物、としては、SiOx(透明性、水蒸気バリア性を両立するためには、1.4<x<2.0が好ましい。)、SiNy(透明性、水蒸気バリア性を両立するためには、0.5<y<1.5が好ましい。)、SiOxNy(密着性向上を重視するときは1<x<2.0,0<y<1.0として酸素リッチの膜とすることが好ましく、水蒸気バリア性向上を重視するときは0<x<0.8、0.8<y<1.3として窒素リッチの膜とすることが好ましい。)、SiOC等を挙げることができる。アルミニウムの酸化物、窒化物、窒化酸化物としては、AlOx、AiNy、やAlOxNyを挙げることができる。無機バリア性の観点からはSiOxNyやAlOx、およびそれらの混合物をより好ましい材料として用いることができる。
【0040】
無機バリア層の厚さは、3〜500nmであることが好ましく、10〜100nmであることがより好ましい。
【0041】
無機バリア層の形成方法は、特に限定されないが、好ましくは、基材フィルムとなるフィルム(a)又はフィルム(b)上に、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、イオンビームアシスト蒸着、アーク放電プラズマ蒸着、熱CVD、プラズマCVD法等の成膜方法により形成することが好ましい。アーク放電プラズマを用いると適度なエネルギーを有する蒸発粒子が生成され高密度の膜を形成することができる。複数種類の成分を含む無機バリア層を形成する場合、これらを同時に蒸着又はスパッタリングすることができる。
【0042】
本発明において、無機バリア層は、ガスバリア積層体の表裏の一方の面から他方の面への、水分及び酸素等の成分の透過をバリアするのに加えて、基材フィルム自体を保護し、基材フィルムが外気の水蒸気を吸収して膨張することを防止し、ひいては装置の変形を防止する効果をも発現しうる。
加えて、本発明のガスバリア積層体を基板としてその上に透明電極層を形成する場合は、蒸着、スパッタリング等の、透明電極層の形成の工程の条件下において、基材フィルムからアウトガスが放出されるのを防止することができるので、透明電極層の形成の条件を自由に選択することができ、その結果、透明電極層の抵抗値を低減することができる、または透明電極層を容易に製造することが可能となる、等の効果を奏しうる。
さらに、一般に、脂環式ポリオレフィン樹脂は他の材料との親和性が低いことが多いところ、無機バリア層は脂環式ポリオレフィン樹脂ともその他の材料とも高い親和性を有し得るため、無機バリア層が脂環式ポリオレフィン樹脂からなる層とその他の材料からなる層との間に設けられることにより、脂環式ポリオレフィン樹脂と他の材料からなる層との密着性が良好となるという効果も奏されうる。
【0043】
〔金属アルコキシド層(a)(b)〕
本発明において、複合層A及びBが有しうる金属アルコキシド層を構成する金属アルコキシドは、一般にR−OM(Rはアルキル基、Mは任意の金属原子)の構造を分子内に有する化合物である。
金属アルコキシドは、より具体的には、金属原子に1以上の基R−O−及び任意に1以上の基R−が結合した構造(R−O)m−M−(R)n(Rは任意の有機基、mは1以上の数、nは0以上の数)とすることができる。ここで、基Rは、具体的には例えばメチル基、エチル基等の基とすることができる。基Rは、具体的には例えばエポキシ基、アミノ基、アリール基、アルキル基、フルオロ基、クロロ基、カルボキシル基、カーボネート基、イミノ基、チオール基、ニトロ基、ビニル基、ウレイド基、メタクリロイル基、アクリロイル基を含む有機基等の基とすることができる。基Rが1分子中に複数存在する場合、及び基Rが1分子中に複数存在する場合、これらはいずれも、同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。特に、アミノ基、エポキシ基、ビニル基、メタクリロイル基、アクリロイル基が好ましい。
【0044】
金属アルコキシドが含有しうる金属としては、Ti、Li、Si、Na、Mg、Ca、St、Ba、Al、Zn、Fe、Cu、Zrから選択された1種以上の金属を挙げることができる。特に、Si、Ti、Al,Zrが好ましい。
【0045】
金属アルコキシド層の形成方法は、特に限定されないが、基材となる、フィルム(a)(b)又は無機バリア層(a)(b)等の層の表面を、上記金属アルコキシドの蒸気に暴露する方法、上記金属アルコキシドをアルコールなどの溶液に溶かし、表面にコーティング、噴霧する方法等により形成することができる。特に、蒸気に暴露する方法が、形成後の金属アルコキシド層からの脱ガス成分が少ないために好ましい。
【0046】
本発明のガスバリア積層体において、金属アルコキシドの層の厚さは、0.005〜1.0μmであることが好ましく、0.01〜0.8μmであることがより好ましい。複合層A及び複合層Bの両方が金属アルコキシド層を有し、金属アルコキシド層の面同士が貼付されてガスバリア積層体が形成される場合は、これら2層の金属アルコキシド層の合計の厚さを、上記範囲内とすることが好ましい。金属アルコキシドの層の厚さを上記好ましい下限値以上とすることにより、良好な接着力を発揮することができる。また、金属アルコキシド層の厚さを上記好ましい上限値以下とすることにより、ガスバリア積層体のヘイズを低く保つことができ、また、金属アルコキシド層からの脱ガス成分を低減することが出来る。
【0047】
〔複合層A及びBの構成〕
本発明のガスバリア積層体において、複合層Bの脂環式オレフィン樹脂フィルム(b)は、その前記複合層Aに対向する側の面が、活性化処理された面であり、当該活性化処理された面は、直接又は金属アルコキシド層を介して、複合層Aに接する。
当該活性化処理されたフィルム(b)の面は、その面粗さRaが、Ra≦5.0nmであることが好ましく、Ra≦3.0nmであることがより好ましい。かかる低い面粗さを有することにより、より良好な接着力を得ることができる。
【0048】
本発明において、複合層Aに対向する側の複合層Bの表面は、具体的には、
(B-i)脂環式オレフィン樹脂フィルム(b)が露出した面、又は
(B-ii)脂環式オレフィン樹脂フィルム(b)の面に接して設けられた金属アルコキシド層(b)の面
としうる。
【0049】
上記態様(B-i)の場合、当該活性化処理されたフィルム(b)の面は、即ち複合層Aに対向する側の複合層Bの表面となる。
上記態様(B-ii)の場合、当該活性化処理されたフィルム(b)の面は、フィルム(b)と金属アルコキシド層(b)との界面となり、したがって、金属アルコキシド層(b)の、当該界面とは反対側の面が、複合層Aに対向する複合層Bの表面となる。
【0050】
図1は、上記態様(B-i)をとる複合層Bの具体的な構成の例を概略的に示す断面図である。図1に示す複合層B-Iは、脂環式オレフィン樹脂フィルム13bと、その一方の面3bUに接して設けられた無機バリア層12bとを有する。フィルム13bの他方の面3bDは、活性化処理され、この面が即ち複合層Aに対向する側の複合層B-Iの表面となる。
【0051】
図2は、上記態様(B-ii)をとる複合層Bの具体的な構成の例を概略的に示す断面図である。図2に示す複合層B-IIは、脂環式オレフィン樹脂フィルム13bと、その一方の面3bUに接して設けられた無機バリア層12bとを有する。フィルム13bの他方の面3bDは、活性化処理され、この面に接して金属アルコキシド層11bが設けられる。複合層B-IIの複合層Aに対向する側の表面は、面3bDではなく、金属アルコキシド層の表面1bDとなる。
【0052】
フィルム(b)が脂環式オレフィン樹脂フィルムであり、且つこのように配置された活性化処理された面を有することにより、良好なガスバリア性能を、高温高湿環境下においても経時的に維持することができる。さらに、それぞれが無機バリア層を有する複合層A及び複合層Bをそのような態様で貼付することにより、複数の無機バリア層を有するガスバリア積層体を容易に得ることができ、しかもそれぞれの無機バリア層の形成において、樹脂の層からのアウトガスによる蒸着の効率の低下及び品質の劣化を少なくすることができる。
【0053】
前記フィルム(b)の面の活性化処理としては、常圧プラズマ処理、真空プラズマ処理、UVオゾン処理、又はコロナ処理を採用することができる。特に常圧プラズマ処理、コロナ処理が、処理時間が短く生産性に優れる点で好ましい。
【0054】
複合層Bに対向する側の、複合層Aの表面は、種々の態様をとりうるが、良好な強度及びガスバリア性能を高温高湿の環境下で維持しうる観点から、
(A-i)活性化処理されていない、無機バリア層(a)が露出した面、
(A-ii)活性化処理された、無機バリア層(a)が露出した面
(A-iii)活性化処理された無機バリア層(a)の面に接して設けられた金属アルコキシド層(a)の面、又は
(A-iv)活性化処理されたフィルム(a)の面に接して設けられた金属アルコキシド層(a)の面
であることが好ましく、態様(A-ii)〜(A-iv)であることがより好ましく、態様(A-iii)〜(A-iv)であることがさらにより好ましい。
【0055】
図3は、上記態様(A-i)又は(A-ii)をとる複合層Aの具体的な構成の例を概略的に示す断面図である。図3に示す複合層A-Iは、フィルム13aと、その一方の面3aUに接して設けられた無機バリア層12aとを有する。さらに、態様(A-ii)では、無機バリア層12aの、フィルム13aと反対側の面2aUは、活性化処理される。態様(A-i)及び(A-ii)では、面2aUが、複合層Bに対向する側の複合層A-Iの表面となる。
【0056】
図4は、上記態様(A-iii)をとる複合層Aの具体的な構成の例を概略的に示す断面図である。図4に示す複合層A-IIは、フィルム13aと、その一方の面3aUに接して設けられた無機バリア層12aとを有する。無機バリア層12aのフィルム13aと反対側の面2aUは、活性化処理されている。複合層A-IIは、この活性化処理された面に接して設けられる金属アルコキシド層11aをさらに有する。複合層A-IIの複合層Bに対向する側の表面は、金属アルコキシド層の表面1aUとなる。
【0057】
図5は、上記態様(A-iv)をとる複合層Aの具体的な構成の例を概略的に示す断面図である。図5に示す複合層A-IIIは、フィルム13aと、その一方の面3aDに接して設けられた無機バリア層12aとを有する。フィルム13aの他方の面3aUは、活性化処理されている。複合層A-IIIは、この活性化処理された面に接して設けられる金属アルコキシド層11aをさらに有する。複合層A-IIIの複合層Bに対向する側の表面は、金属アルコキシド層の表面1aUとなる。
【0058】
複合層Aの、複合層Bに対向する側の表面が金属アルコキシド層(a)を有しない場合における当該表面(図3の例では面2aU)、又は複合層Aの、複合層Bに対向する側の表面が金属アルコキシド層(a)を有する場合における当該金属アルコキシド層が形成された面(図4の例では面2aU、図5の例では面3aU)は、その面粗さRaが、Ra≦5.0nmであることが好ましく、Ra≦3.0nmであることがより好ましい。かかる低い面粗さを有することにより、より良好な接着力を得ることができる。
【0059】
〔ガスバリア積層体〕
本発明のガスバリア積層体は、複合層Aの表面及び複合層Bの表面が対向し貼付されてなる。
このように、それぞれが無機バリア層を備える複合層を貼付することにより、ガスバリア性能が高く、強度が高く、且つ容易に製造しうるガスバリア積層体とすることができる。つまり、無機バリア層を、フィルム上にスパッタリング等の方法により設ける場合、一枚のフィルムに複数層無機バリア層を設けることは製造工程上困難であるところ、複数の基材フィルムのそれぞれに一層ずつ無機バリア層を設け、これを貼付することにより、複数の無機バリア層を有するガスバリア積層体を容易に得ることができる。とくに、スパッタリング等の低圧の工程を含む製造方法の場合、ガス引きの工程が少なくて済むため、効率的な製造を行うことができる。また、それぞれの複合層に用いるフィルムに、異なる特性を有するフィルムを使用することで、積層体の特性を向上させることできる。例えば、複合層Aに耐熱性の高いフィルム、複合層Bに透湿度の低いフィルムを用いることができる。例えば、積層体の表面にITOなどの導電膜を形成する際に、当該ITOの抵抗値をできるだけ低くする目的で焼成温度を高くすることがあるが、この場合には、導電膜を形成する基材に十分な耐熱性が要求される。しかしながら、一般に、十分な耐熱性と十分な耐湿性を両立する一の基材を得ることは技術的に困難である。これに対して、本発明では、複合層Aに耐熱性の高いフィルムを使用し、また、複合層Bに透湿度の低いフィルムを使用して、これらの複合層A,Bを貼付することにより、比較的簡単でありながら、低抵抗値で、かつ低透湿である一の基材としてのガスバリア積層体を得ることができる。
【0060】
かかる貼付は、熱圧着により行うことが好ましい。具体的には、層間を減圧し且つ層を加熱した状態で、複合層A及び複合層Bの表面が接した状態でこれらを圧着させることにより、複合層A及び複合層Bを貼付することが好ましい。かかる熱圧着の操作は、真空ラミネート装置を用いて行うことができる。熱圧着の条件は、0.1〜1.5MPa、70〜250℃で適宜選択できる。圧力が高すぎると、無機バリア層を劣化させる恐れがあり、低すぎると、密着力の低下を引き起こすため、特に0.3〜1.0MPaの条件がより好ましい。温度が積層体に用いられるフィルムのTgより高いと、フィルムの変形を伴うため、Tg-20℃が好ましく、低すぎると接着力の低下を引き起こすため80℃以上が好ましい。このような熱圧着を行うことにより、接着剤などのさらに他の層を界面に設けて接着する場合に比べて、高温高湿環境下におけるガスバリア層のガスバリア性能の低下を低減することができる。
貼付工程は、生産性の観点から、ロールトゥロールで行うことが好ましい。しかしながら、遅相軸の調整などにおいて必要であれば、ロールトゥロールの貼付ではなく、複合層A及びBをそれぞれ所望の形状に切り出してから逐次貼り合せる貼付も、好ましく行うこともできる。
【0061】
複合層A及びBに含まれるフィルムが延伸フィルム等の光学異方性を有するフィルムであり、それらの位相差による光学的効果を得ることが求められる場合、かかる光学的効果が得られるよう、複合層Aの遅相軸と複合層Bの遅相軸とがなす角度を所望の角度に調整して貼付を行うことができる。具体的には例えば、複合層Aの遅相軸と複合層Bの遅相軸とがなす角度が57〜63°、好ましくは58〜62°となるよう貼付することができる。
【0062】
一方、複合層A及びBに含まれるフィルムが延伸フィルムであるがそれらの位相差による光学的効果を得ることが特に求められない場合、それらの延伸方向は揃えた状態(具体的には角度誤差10°以内)とすることが、良好な低熱膨張率を得るなどの観点から好ましい。
【0063】
図6は、本発明のガスバリア積層体の具体例を概略的に示す断面図である。図6において、ガスバリア積層体100は、上において態様(A-i)又は(A-ii)として説明した複合層A-I(図3参照)の表面2aUと、態様(B-i)として説明した複合層B-I(図1参照)の表面3bDとが対向し貼付されてなるものである。ガスバリア積層体100においては、活性化された表面3bDと、無機バリア層12aの表面2aUとが、他の層を介在せず貼付されている。このような構成を有することにより、脂環式オレフィン樹脂のフィルム及び複数の無機バリア層によるガスバリア性能が、高温高湿の環境下においても維持されうるガスバリア積層体とすることができる。
【0064】
図7は、本発明のガスバリア積層体の、別の具体例を概略的に示す断面図である。図7において、ガスバリア積層体200は、上において態様(A-i)又は(A-ii)として説明した複合層A-I(図3参照)の表面2aUと、態様(B-ii)として説明した複合層B-II(図2参照)の表面1bDとが対向し貼付されてなるものである。ガスバリア積層体200においては、脂環式オレフィン樹脂フィルム13bの活性化処理された面3bDに接して設けられた金属アルコキシド層11bの面1bDと、無機バリア層12aの表面2aUとが、他の層を介在せず貼付されている。このような構成を有することにより、脂環式オレフィン樹脂のフィルム及び複数の無機バリア層によるガスバリア性能が、高温高湿の環境下においても維持されうるガスバリア積層体とすることができ、且つ複合層AとBとの間の接着力をさらに強固なものとすることができる。
【0065】
図8は、本発明のガスバリア積層体の、さらに別の具体例を概略的に示す断面図である。図8において、ガスバリア積層体300は、上において態様(A-iii)として説明した複合層A-II(図4参照)の表面1aUと、態様(B-ii)として説明した複合層B-II(図2参照)の表面1bDとが対向し貼付されてなるものである。ガスバリア積層体300においては、脂環式オレフィン樹脂フィルム13bの活性化処理された面3bDに接して設けられた金属アルコキシド層11bの面1bDと、無機バリア層12aの表面2aUに接して設けられた金属アルコキシド層11aの面1aUとが、他の層を介在せず貼付されている。このような構成を有することにより、脂環式オレフィン樹脂のフィルム及び複数の無機バリア層によるガスバリア性能が、高温高湿の環境下においても維持されうるガスバリア積層体とすることができ、且つ複合層AとBとの間の接着力をさらに強固なものとすることができる。
【0066】
図9は、本発明のガスバリア積層体の、さらに別の具体例を概略的に示す断面図である。図9において、ガスバリア積層体400は、上において態様(A-iv)として説明した複合層A-III(図5参照)の表面1aUと、態様(B-ii)として説明した複合層B-II(図2参照)の表面1bDとが対向し貼付されてなるものである。ガスバリア積層体400においては、脂環式オレフィン樹脂フィルム13bの活性化処理された面3bDに接して設けられた金属アルコキシド層11bの面1bDと、フィルム13aの表面3aUに接して設けられた金属アルコキシド層11aの面1aUとが、他の層を介在せず貼付されている。このような構成を有することにより、脂環式オレフィン樹脂のフィルム及び複数の無機バリア層によるガスバリア性能が、高温高湿の環境下においても維持されうるガスバリア積層体とすることができ、且つ複合層AとBとの間の接着力をさらに強固なものとすることができる。
【0067】
〔その他の任意の層〕
本発明のガスバリア積層体は、上記各層に加えて、他に任意の層を備えうる。かかる任意の層としては、例えば、前記フィルム(a)(b)以外の、脂環式オレフィン樹脂及び他の樹脂材料からなる任意のフィルムを設けることができる。その他、帯電防止層、ハードコート層、導電性付与層、汚染防止層、凹凸構造層を設けることが出来る。これらの層は組み合わされていてもよいし、複数であってもよい。導電性付与層などは、印刷あるいはエッチングによりパターニングされたものであってもよい。かかる任意の層は、基材フィルム上にかかる任意の層の材料を塗布し硬化させる方法、又は、熱圧着により貼付する方法、凹凸構造を形成する場合は、基材フィルムと型の間に電子線硬化型樹脂を配置し硬化することでフィルム上に凹凸構造を形成する方法などの方法により設けることができる。
【0068】
〔その他の態様〕
本発明のガスバリア積層体は、フィルム(a)(b)及び無機バリア層(a)(b)をそれぞれ1枚ずつのみ備えていてもよいが、さらに他のフィルム及び無機バリア層を備えてもよい。例えば、複合層Cとして、複合層A又はBと同様の態様の複合層をさらに備えていてもよい。複合層Cと複合層A又はBとの貼付は、その界面が、上で説明した複合層AとBとの界面と同様の態様となるような態様で、熱圧着などにより達成することができる。
またフィルム(b)の複合層Aに対向しない側の面が、熱転写により凹凸構造になっているなどの態様でもよい。脂環式オレフィン樹脂フィルム(b)は、型に対して優れた離型性を示すため、このような凹凸構造を形成する態様を容易に実現できる。
【0069】
〔ガスバリア積層体の物性〕
本発明のガスバリア積層体全体の水蒸気透過率は、1×10−6〜1×10−2g/m・dayとすることができる。このような積層体全体の水蒸気透過率は、無機バリア層及びその他の層の材質及び厚さを適宜選択することにより達成しうる。
本発明のガスバリア積層体全体の複合層A、複合層B間の接着力は作製直後の接着力で、1.0N/cm以上とすることができ、2.0N/cm以上が好ましい。また、作製直後の接着力と、高温高湿下に曝した後の接着力との差が10%以下であることが好ましい。
【0070】
本発明のガスバリア積層体全体のヘイズは、特に限定されないが、光を拡散させることを特段意図しない光学的用途に用いる場合、ヘイズは一般的には低い方が好ましく、好ましくは3.0%以下、より好ましくは1.0%以下とすることができる。
【0071】
〔用途〕
本発明のガスバリア積層体の用途は、特に限定されないが、液晶表示装置並びに有機EL素子を有する表示装置、光源装置、及び太陽電池等の装置の構成要素として用いることができる。具体的には、装置を構成する他の構成要素を、水分及び酸素から保護するために封止するための層として用いることができる。
【0072】
特に好ましい用途として、所定の光学異方性を有する本発明のガスバリア積層体を、偏光子と組み合わせた円偏光板とし、これを表示装置の構成要素として用いることができる。
【0073】
〔円偏光板〕
本発明の円偏光板は、前記本発明のガスバリア積層体と、偏光子とを有する。
本発明の円偏光板において、好ましくは、ガスバリア積層体のフィルム(a)(b)は、その一方が1/4波長板であり、他方が1/2波長板である。これら1/4波長板及び1/2波長板の遅相軸の交差角は、好ましくは57〜63°、より好ましくは58〜62°である。
偏光子は、ガスバリア積層体の1/2波長板側の表面上に設けることができる。偏光子の透過軸に対して、1/2波長板の遅層軸を好ましくは13〜17°、より好ましくは14〜16°になるように積層する。
【0074】
本発明の円偏光板が有しうる偏光子としては、ヨウ素系偏光フィルム、染色系偏光フィルム、ワイヤーグリッド偏光フィルムが用いられる。
【0075】
本発明の円偏光板は、前記本発明のガスバリア積層体の一面に、偏光子を形成するか、別の積層体であって偏光子を有するものを貼付することにより構成することができる。
【0076】
本発明の円偏光板の用途は、特に限定されず液晶表示装置等の各種の表示装置の円偏光板として用いることができる。
【実施例】
【0077】
以下、実施例及び比較例を参照して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例及び比較例において、諸物性の測定は、下記の通り行った。
【0078】
(厚みの測定)
フィルム等の厚みの測定は、接触式膜厚計でTD方向に10点測定し、その平均値を算出した。
【0079】
(金属アルコキシド層の厚み測定)
金属アルコキシド層を有する複合層等の試料を、集束イオンビーム加工観察装置FB−2100(日立製作所製)のマイクロサンプリング装置にて加工し、観察用切片を作製した。作製した切片を透過電子顕微鏡H−7500(日立製作所製)で観察し、ランダムに20点測定し、測定値の平均から金属アルコキシド層の厚さを求めた。
【0080】
(表面粗さ)
JIS B 0601:2001の規定に従って、カラー3Dレーザー顕微鏡(キーエンス社製、製品名「VK−9500」)を用いて測定し、表面粗さRaを算出した。
【0081】
(ヘイズ)
濁度計(日本電色社製、製品名「NDM 2000」)を用いて測定した。
【0082】
(接着力の測定)
ガスバリア積層体を、幅10mmの寸法に切り出し、粘着剤でガラスに固定し、引張り角度90°、剥離速度20mm/minの条件で、島津製作所製 オートグラフィーで測定した。測定は、測定対象の製造が完了した直後と、その後測定対象を高温高湿の環境に暴露した後に実施した。
(剥離面の観察)
剥離試験後の剥離面の断面をFE-TEMで観察して、剥離界面の特定を行った。
【0083】
(透湿度)
JIS K7129Bに基づいて、「PERMATRAN W3/33」(モコン社製)を用いて、40℃、90%RHの条件で測定を行った。測定は、測定対象の製造が完了した直後と、その後測定対象を高温高湿の環境に暴露した後に実施した。
【0084】
(高温高湿環境への暴露)
高温高湿の環境への暴露は、「EHS−211MD」(エスペック社製)を用い、80℃、90%RHで1時間保持し、続いて120℃、30%RHで1時間保持することにより行った。
【0085】
(レターデーションの測定)
王子計測機器(株)製 KOBRA−21ADHにより、TD方向に10点測定した。
【0086】
<実施例1>
図8に概略的に示す層構成を有するガスバリア積層体1を作製した。
【0087】
(1−1.原反フィルム1の作製)
ノルボルネン重合体1(日本ゼオン社製、商品名「ZEONOR1600」、Tg163℃、屈折率1.525)のペレットを、空気を流通させた熱風乾燥器を用いて70℃で2時間乾燥したのち、65mmφのスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するTダイ式フィルム溶融押出し成形機に供給し、溶融樹脂温度240℃、Tダイの幅500mmの条件で、押出成形して、厚さ100μmの原反フィルム1を得た。Tダイは、鏡面に研磨したものを用いた。
【0088】
(1−2.延伸フィルム1の作製)
得られた原反フィルム1を、縦延伸装置を用い延伸温度172℃でフィルムの流れ方向(MD方向)に2.0倍延伸し、次いで、テンター法を用いた横延伸機に供給し、172℃の温度でフィルムの幅方向(TD方向)に2.0倍に延伸し、巻き取って、延伸フィルム1を得た。
【0089】
(1−3.無機バリア層の形成)
得られた延伸フィルム1の表面に、フィルム巻き取り式マグネトロンスパッタ装置を用いて、Siターゲットを用いて、アルゴン流量150sccm、酸素流量10sccm、出力4.0kW、真空度0.3Pa、巻きとり速度0.5m/min、張力30Nの条件で、厚さ100nmのSiOx層を無機バリア層として成膜し、(SiOx層)−(延伸フィルム)の層構成を有する積層体P1を得た。積層体P1のSiOx層側の面及び延伸フィルム側の面の表面粗さRaを測定すると、それぞれ0.65nm及び0.70nmであった。得られた積層体P1を200mm×200mmのサイズで2枚切り出し、それぞれを積層体P1−A、積層体P1−Bとした。
【0090】
(1−4.複合層A1の作製)
積層体P1−AのSiOx層側の表面に、リモート式の常圧プラズマ装置を用いて窒素流量200L/min、ドライエアー流量200mL/min、出力1.5kW、1.0m/min、処理幅300mmの条件で、表面処理を実施した。
表面処理をした積層体P1−Aを密閉容器に入れて、表面処理をしたSiOx層側の表面をγ−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−903:信越シリコーン社製)の蒸気で10分間暴露処理して、金属アルコキシド層を形成し、(金属アルコキシド層)−(SiOx層)−(延伸フィルム)の層構成を有する複合層A1(図8の複合層A-IIに相当)を得た。
【0091】
(1−5.複合層B1の作製)
積層体P1−Bの延伸フィルム側の表面に、リモート式の常圧プラズマ装置を用いて窒素流量200L/min、ドライエアー流量200mL/min、出力1.5kW、1.0m/min、処理幅300mmの条件で、表面処理を実施した。
表面処理をした積層体P1−Bを密閉容器に入れて、表面処理をした延伸フィルム側の表面をγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403:信越シリコーン社製)の蒸気で10分間暴露処理して、金属アルコキシド層を形成し、(SiOx層)−(延伸フィルム)−(金属アルコキシド層)の層構成を有する複合層B1(図8の複合層B-IIに相当)を得た。
【0092】
(1−6.ガスバリア積層体1の作製)
複合層A1及び複合層B1の、金属アルコキシド層側の表面同士を対向させてこれらを重ねて、真空ラミネート装置を用いて、0.9MPa、130℃、360secの条件で圧着し、(SiOx層)−(延伸フィルム)−(金属アルコキシド層)−(金属アルコキシド層)−(SiOx層)−(延伸フィルム)の層構成を有するガスバリア積層体1を得た。
【0093】
(1−7.評価)
ガスバリア積層体1の金属アルコキシド層2層の合計の膜厚は、0.05μmであった。ガスバリア積層体1のヘイズは0.20%であった。ガスバリア積層体1の複合層A1とB1と間の接着力及びガスバリア積層体1の透湿度を測定すると、それぞれ4.50N/cm及び0.20×10−2g/m/dayであった。剥離界面は、金属アルコキシド層と積層体P1−Bの界面であった。高温高湿環境に暴露した後の接着力及び透湿度を測定すると、それぞれ4.40N/cm及び0.21×10−2g/m/dayであった。剥離界面は、金属アルコキシド層と積層体P1−Bの界面であった。
【0094】
<実施例2>
図9に概略的に示す層構成を有するガスバリア積層体2を作製した。
【0095】
(2−1.複合層A2の作製)
表面処理及び金属アルコキシド層の形成を、積層体P1−AのSiOx層側ではなく延伸フィルム側の表面に対して行った他は、実施例1の工程(1−4)と同様にして表面処理及び金属アルコキシド形成を行い、(金属アルコキシド層)−(延伸フィルム)−(SiOx層)の層構成を有する複合層A2(図9の複合層A-IIIに相当)を得た。
【0096】
(2−2.ガスバリア積層体2の作製)
複合層A1に代えて、上記(2−1)で得た複合層A2を用いた他は、実施例1の工程(1−6)と同様にして複合層A2及びB1を圧着し、(SiOx層)−(延伸フィルム)−(金属アルコキシド層)−(金属アルコキシド層)−(延伸フィルム)−(SiOx層)の層構成を有するガスバリア積層体2を得た。
【0097】
(2−3.評価)
ガスバリア積層体2の金属アルコキシド層2層の合計の膜厚は、0.05μmであった。ガスバリア積層体2のヘイズは0.21%であった。ガスバリア積層体2の複合層A2とB1との間の接着力及びガスバリア積層体2の透湿度を測定すると、それぞれ3.10N/cm及び0.20×10−2g/m/dayであった。剥離界面は、金属アルコキシド層と積層体P1−Bの界面であった。高温高湿環境に暴露した後の接着力及び透湿度を測定すると、それぞれ3.00N/cm及び0.22×10−2g/m/dayであった。剥離界面は、金属アルコキシド層と積層体P1−Bの界面であった。
【0098】
<実施例3>
図6に概略的に示す層構成を有するガスバリア積層体3を作製した。
【0099】
(3−1.複合層A3及び複合層B3の作製)
金属アルコキシド層の形成を行わなかった他は、実施例1の工程(1−4)と同様にして積層体P1−Aの表面処理を行い、(SiOx層)−(延伸フィルム)の層構成を有し、SiOx層側の表面がプラズマ処理された複合層A3(図6の複合層A-Iに相当)を得た。
一方、金属アルコキシド層の形成を行わなかった他は、実施例1の工程(1−5)と同様にして積層体P1−Bの表面処理を行い、(SiOx層)−(延伸フィルム)の層構成を有し、延伸フィルム側の表面がプラズマ処理された複合層B3(図6の複合層B-Iに相当)を得た。
【0100】
(3−2.ガスバリア積層体3の作製)
複合層A3及び複合層B3の、プラズマ処理された表面同士を対向させてこれらを重ねて、真空ラミネート装置を用いて、0.9MPa、130℃、360secの条件で圧着し、(SiOx層)−(延伸フィルム)−(SiOx層)−(延伸フィルム)の層構成を有するガスバリア積層体3を得た。
【0101】
(3−3.評価)
ガスバリア積層体3のヘイズは0.20%であった。ガスバリア積層体3の複合層A3とB3との間の接着力及びガスバリア積層体3の透湿度を測定すると、それぞれ2.20N/cm及び0.20×10−2g/m/dayであった。剥離界面は、積層体P1−Aと積層体P1−Bの界面であった。高温高湿環境に暴露した後の接着力及び透湿度を測定すると、それぞれ0.60N/cm及び0.80×10−2g/m/dayであった。剥離界面は、積層体P1−Aと積層体P1−Bの界面であった。
【0102】
<実施例4>
図6に概略的に示す層構成を有するガスバリア積層体4を作製した。ガスバリア積層体4は、表面処理の態様が異なる他は、実施例3のガスバリア積層体3と同様の構成を有している。
【0103】
(4−1.複合層A4及び複合層B4の作製)
実施例1の工程(1−3)で得られた積層体P1−AのSiOx層側の表面に、コロナ処理(0.15kW、電極間2mm、処理速度1.0m/min、処理幅300mm)を行ない、(SiOx層)−(延伸フィルム)の層構成を有し、SiOx層側の表面がコロナ処理された複合層A4(図6の複合層A-Iに相当)を得た。
一方、実施例1の工程(1−3)で得られた積層体P1−Bの延伸フィルム側の表面に、コロナ処理(0.15kW、電極間2mm、処理速度1.0m/min、処理幅300mm)を行ない、(SiOx層)−(延伸フィルム)の層構成を有し、延伸フィルム側の表面がコロナ処理された複合層B4(図6の複合層B-Iに相当)を得た。
【0104】
(4−2.ガスバリア積層体4の作製)
複合層A4及び複合層B4の、コロナ処理された表面同士を対向させてこれらを重ねて、真空ラミネート装置を用いて、0.9MPa、130℃、360secの条件で圧着し、(SiOx層)−(延伸フィルム)−(SiOx層)−(延伸フィルム)の層構成を有するガスバリア積層体4を得た。
【0105】
(4−3.評価)
ガスバリア積層体4のヘイズは0.20%であった。ガスバリア積層体4の複合層A4とB4との間の接着力及びガスバリア積層体4の透湿度を測定すると、それぞれ2.00N/cm及び0.20×10−2g/m/dayであった。剥離界面は、積層体P1−Aと積層体P1−Bの界面であった。
高温高湿環境に暴露した後の接着力及び透湿度を測定すると、それぞれ0.55N/cm及び1.00×10−2g/m/dayであった。剥離界面は、積層体P1−Aと積層体P1−Bの界面であった。
【0106】
<実施例5>
図8に概略的に示す層構成を有するガスバリア積層体5を作製した。ガスバリア積層体5は、積層体を構成する層の表面粗さが異なる他は、実施例1のガスバリア積層体1と同様の構成を有している。
【0107】
(5−1.原反フィルム5の作製)
実施例1の工程(1−1)で得られた原反フィルム1をさらに、165℃に加熱した金属製の鏡面ロール(表面に、厚さ100μmのハードクロムめっきを施したもの)と、180℃に加熱したセラミック製のロール(表面粗さRa 6.0nm)を用いて、線圧100kN/mにて狭圧して、厚さ95μmの原反フィルム5を得た。
【0108】
(5−2.無機バリア層の形成)
延伸フィルム1に代えて上記(5−1)で得られた原反フィルム5を用いた他は、実施例1の工程(1−3)と同様にして無機バリア層の形成を行い、(SiOx層)−(延伸フィルム)の層構成を有する積層体P5を得た。積層体P5のSiOx層側の面及び延伸フィルム側の面の表面粗さRaを測定すると、それぞれ5.5nm及び5.9nmであった。得られた積層体P5を200mm×200mmのサイズで2枚切り出し、それぞれを積層体P5−A、積層体P5−Bとした。
【0109】
(5−3.複合層A5及び複合層B5の作製)
積層体P1−A及びP1−Bに代えて、上記(5−2)で得たP5−A及びP5−Bを用いた他は、実施例1の工程(1−4)及び(1−5)と同様にして表面処理及び金属アルコキシド形成を行い、(金属アルコキシド層)−(SiOx層)−(延伸フィルム)の層構成を有する複合層A5(図8の複合層A-IIに相当)、及び(SiOx層)−(延伸フィルム)−(金属アルコキシド層)の層構成を有する複合層B5(図8の複合層B-IIに相当)を得た。
【0110】
(5−4.ガスバリア積層体5の作製)
複合層A1及びB1に代えて、上記(5−3)で得た複合層A5及びB5を用いた他は、実施例1の工程(1−6)と同様にして複合層A5及びB5を圧着し、(SiOx層)−(延伸フィルム)−(金属アルコキシド層)−(金属アルコキシド層)−(SiOx層)−(延伸フィルム)の層構成を有するガスバリア積層体5を得た。
【0111】
(5−5.評価)
ガスバリア積層体5の金属アルコキシド層2層の合計の膜厚は、0.05μmであった。ガスバリア積層体5のヘイズは0.35%であった。ガスバリア積層体5の複合層A5とB5との間の接着力及びガスバリア積層体5の透湿度を測定すると、それぞれ1.50N/cm及び0.22×10−2g/m/dayであった。剥離界面は、金属アルコキシド層と積層体P5−Bの界面であった。高温高湿環境に暴露した後の接着力及び透湿度を測定すると、それぞれ1.20N/cm及び0.23×10−2g/m/dayであった。剥離界面は、金属アルコキシド層と積層体P5−Bの界面であった。
【0112】
<実施例6>
図6に概略的に示す層構成を有するガスバリア積層体6を作製した。ガスバリア積層体6は、積層体を構成する層の表面粗さが異なる他は、実施例3のガスバリア積層体3と同様の構成を有している。
【0113】
(6−1.複合層A6及び複合層B6の作製)
積層体P1−Aに代えて実施例5の工程(5−2)で得た積層体P5−Aを用い、且つ金属アルコキシド層の形成を行わなかった他は、実施例1の工程(1−4)と同様にして積層体P5−Aの表面処理を行い、(SiOx層)−(延伸フィルム)の層構成を有し、SiOx層側の表面がプラズマ処理された複合層A6(図6の複合層A-Iに相当)を得た。
一方、積層体P1−Bに代えて実施例5の工程(5−2)で得た積層体P5−Bを用い、且つ金属アルコキシド層の形成を行わなかった他は、実施例1の工程(1−5)と同様にして積層体P5−Bの表面処理を行い、(SiOx層)−(延伸フィルム)の層構成を有し、延伸フィルム側の表面がプラズマ処理された複合層B6(図6の複合層B-Iに相当)を得た。
【0114】
(6−2.ガスバリア積層体6の作製)
複合層A6及び複合層B6の、プラズマ処理された表面同士を対向させてこれらを重ねて、真空ラミネート装置を用いて、0.9MPa、130℃、360secの条件で圧着し、(SiOx層)−(延伸フィルム)−(SiOx層)−(延伸フィルム)の層構成を有するガスバリア積層体6を得た。
【0115】
(6−3.評価)
ガスバリア積層体6のヘイズは0.35%であった。ガスバリア積層体6の複合層A6とB6との間の接着力及びガスバリア積層体6の透湿度を測定すると、それぞれ1.40N/cm及び0.21×10−2g/m/dayであった。剥離界面は、積層体P5−Aと積層体P5−Bの界面であった。高温高湿環境に暴露した後の接着力及び透湿度を測定すると、それぞれ0.53N/cm及び1.00×10−2g/m/dayであった。剥離界面は、積層体P5−Aと積層体P5−Bの界面であった。
【0116】
<実施例7>
図8に概略的に示す層構成を有するガスバリア積層体7を作製した。ガスバリア積層体7は、金属アルコキシド層の形成の条件が異なる他は、実施例1のガスバリア積層体1と同様の構成を有している。
【0117】
(7−1.複合層A7及びB7の作製)
金属アルコキシド層の形成に際しての暴露処理時間を2分間とした他は、実施例1の工程(1−4)及び(1−5)と同様にして表面処理及び金属アルコキシド形成を行い、複合層A7(図8の複合層A-IIに相当)及び複合層B7(図8の複合層B-IIに相当)を得た。
【0118】
(7−2.ガスバリア積層体7の作製)
複合層A1及びB1に代えて、上記(7−1)で得た複合層A7及びB7を用いた他は、実施例1の工程(1−6)と同様にして複合層A7及びB7を圧着し、(SiOx層)−(延伸フィルム)−(金属アルコキシド層)−(金属アルコキシド層)−(SiOx層)−(延伸フィルム)の層構成を有するガスバリア積層体7を得た。
【0119】
(7−3.評価)
ガスバリア積層体7の金属アルコキシド2層の合計の厚さは、0.005μmであった。ガスバリア積層体7のヘイズは0.20%であった。ガスバリア積層体7の複合層A7とB7との間の接着力及びガスバリア積層体7の透湿度を測定すると、それぞれ2.20N/cm及び0.22×10−2g/m/dayであった。剥離界面は、金属アルコキシド層と積層体P1−Bの界面であった。高温高湿環境に暴露した後の接着力及び透湿度を測定すると、それぞれ0.52N/cm及び0.50×10−2g/m/dayであった。剥離界面は、金属アルコキシド層と積層体P1−Bの界面であった。
【0120】
<実施例8>
図9に概略的に示す層構成を有するガスバリア積層体8を作製した。ガスバリア積層体8は、金属アルコキシド層の形成方法が異なる他は、実施例2のガスバリア積層体2と同様の構成を有している。
【0121】
(8−1.複合層A8の作製)
実施例1の工程(1−3)で得た積層体P1−Aの延伸フィルム側の表面に、リモート式の常圧プラズマ装置を用いて窒素流量200L/min、ドライエアー流量200mL/min、出力1.5kW、1.0m/min、処理幅300mmの条件で、表面処理を実施した。
表面処理を施した当該表面に、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−903:信越シリコーン社製)1.0重量部、エタノール79.2重量部、及び純水19.8重量部からなる混合溶液をバーコーター#6で塗布し、85℃で30分間アニール処理し、金属アルコキシ層を形成し、(金属アルコキシド層)−(延伸フィルム)−(SiOx層)の層構成を有する複合層A8(図9の複合層A-IIIに相当)を得た。
【0122】
(8−2.複合層B8の作製)
実施例1の工程(1−3)で得た積層体P1−Bの延伸フィルム側の表面に、リモート式の常圧プラズマ装置を用いて窒素流量200L/min、ドライエアー流量200mL/min、出力1.5kW、1.0m/min、処理幅300mmの条件で、表面処理を実施した。
表面処理を施した当該表面に、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403:信越シリコーン社製)1.0重量部、エタノール79.2重量部、及び純水19.8重量部からなる混合溶液をバーコーター#6で塗布し、85℃で30分間アニール処理し、金属アルコキシ層を形成し、(SiOx層)−(延伸フィルム)−(金属アルコキシド層)の層構成を有する複合層B8(図9の複合層B-IIに相当)を得た。
【0123】
(8−3.ガスバリア積層体8の作製)
複合層A1及びB1に代えて、上記(8−1)及び(8−2)で得た複合層A8及びB8を用いた他は、実施例1の工程(1−6)と同様にして複合層A8及びB8を圧着し、(SiOx層)−(延伸フィルム)−(金属アルコキシド層)−(金属アルコキシド層)−(延伸フィルム)−(SiOx層)の層構成を有するガスバリア積層体8を得た。
【0124】
(8−4.評価)
ガスバリア積層体8の金属アルコキシド2層の合計の厚さは、1.3μmであった。ガスバリア積層体8のヘイズは2.10%であった。ガスバリア積層体8の複合層A8とB8との間の接着力及びガスバリア積層体8の透湿度を測定すると、それぞれ3.50N/cm及び0.23×10−2g/m/dayであった。剥離界面は、金属アルコキシド層と積層体P1−Bの界面であった。高温高湿環境に暴露した後の接着力及び透湿度を測定すると、それぞれ3.40N/cm及び0.24×10−2g/m/dayであった。剥離界面は、金属アルコキシド層と積層体P1−Bの界面であった。
【0125】
<実施例9>
図8に概略的に示す層構成を有するガスバリア積層体9を作製した。ガスバリア積層体9は、金属アルコキシド層の形成方法が異なる他は、実施例5のガスバリア積層体5と同様の構成を有している。
【0126】
(9−1.複合層A9の作製)
実施例5の工程(5−2)で得た積層体P5−AのSiOx層側の表面に、リモート式の常圧プラズマ装置を用いて窒素流量200L/min、ドライエアー流量200mL/min、出力1.5kW、1.0m/min、処理幅300mmの条件で、表面処理を実施した。
表面処理を施した当該表面に、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−903:信越シリコーン社製)1.0重量部、エタノール79.2重量部、及び純水19.8重量部からなる混合溶液をバーコーター#6で塗布し、85℃で30分間アニール処理し、金属アルコキシ層を形成し、(金属アルコキシド層)−(SiOx層)−(延伸フィルム)の層構成を有する複合層A9(図8の複合層A-IIに相当)を得た。
【0127】
(9−2.複合層B9の作製)
実施例5の工程(5−2)で得た積層体P5−Bの延伸フィルム側の表面に、リモート式の常圧プラズマ装置を用いて窒素流量200L/min、ドライエアー流量200mL/min、出力1.5kW、1.0m/min、処理幅300mmの条件で、表面処理を実施した。
表面処理を施した当該表面に、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403:信越シリコーン社製)1.0重量部、エタノール79.2重量部、及び純水19.8重量部からなる混合溶液をバーコーター#6で塗布し、85℃で30分間アニール処理し、金属アルコキシ層を形成し、(SiOx層)−(延伸フィルム)−(金属アルコキシド層)の層構成を有する複合層B9(図8の複合層B-IIに相当)を得た。
【0128】
(9−3.ガスバリア積層体9の作製)
複合層A1及びB1に代えて、上記(9−1)及び(9−2)で得た複合層A9及びB9を用いた他は、実施例1の工程(1−6)と同様にして複合層A9及びB9を圧着し、(SiOx層)−(延伸フィルム)−(金属アルコキシド層)−(金属アルコキシド層)−(SiOx層)−(延伸フィルム)の層構成を有するガスバリア積層体9を得た。
【0129】
(9−4.評価)
ガスバリア積層体9の金属アルコキシド2層の合計の厚さは、1.7μmであった。ガスバリア積層体9のヘイズは2.30%であった。ガスバリア積層体9の複合層A9とB9との間の接着力及びガスバリア積層体9の透湿度を測定すると、それぞれ1.50N/cm及び0.24×10−2g/m/dayであった。剥離界面は、金属アルコキシド層と積層体P5−Bの界面であった。高温高湿環境に暴露した後の接着力及び透湿度を測定すると、それぞれ1.50N/cm及び0.30×10−2g/m/dayであった。剥離界面は、金属アルコキシド層と積層体P5−Bの界面であった。
【0130】
<実施例10>
図7に概略的に示す層構成を有するガスバリア積層体10を作製した。
【0131】
(10−1.ガスバリア積層体の作製)
実施例1の工程(1−3)で得た積層体P1−Aを、表面処理及び金属アルコキシド層の形成処理を行わずそのまま用いた。積層体P1−AのSiOx層側の表面と、実施例1の工程(1−5)で得た複合層B1の金属アルコキシド層側の表面とを対向させてこれらを重ねて、真空ラミネート装置を用いて、0.9MPa、130℃、360secの条件で圧着し、(SiOx層)−(延伸フィルム)−(金属アルコキシド層)−(SiOx層)−(延伸フィルム)の層構成を有するガスバリア積層体10を得た。
【0132】
(10−2.評価)
ガスバリア積層体10の金属アルコキシドの厚さは、0.03μmであった。ガスバリア積層体10のヘイズは0.20%であった。ガスバリア積層体10の積層体P1−AとB1との間の接着力及びガスバリア積層体10の透湿度を測定すると、それぞれ3.50N/cm及び0.20×10−2g/m/dayであった。剥離界面は、P1−Aと金属アルコキシド層の界面であった。高温高湿環境に暴露した後の接着力及び透湿度を測定すると、それぞれ3.00N/cm及び0.24×10−2g/m/dayであった。剥離界面は、P1−Aと金属アルコキシド層の界面であった。
【0133】
<実施例11>
図8に概略的に示す層構成を有するガスバリア積層体11を作製した。ガスバリア積層体11は、延伸フィルムに代えて、材料の異なる非延伸のフィルムを用いた他は、実施例1のガスバリア積層体1と同様の構成を有している。
【0134】
(11−1.ノルボルネン重合体2の合成)
窒素置換したガラス反応器に、(アリル)パラジウム(トリシクロヘキシルホスフィン)クロリド0.77重量部及びリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート1.14重量部を入れ、続けてトルエン2重量部を加え触媒液を調製した。
次いで、窒素置換した攪拌機付きの耐圧ガラス反応器に、2−ノルボルネン(NB;分子量=94)1,650重量部、5−エチル−2−ノルボルネン(E0NB;分子量=122)915重量部、分子量調整剤としてスチレン1,300重量部及び重合溶媒としてトルエン7,200重量部を仕込み、上記の触媒液全量(3.91重量部)を添加して重合を開始した。45℃で4.5時間反応させた後、重合反応液を多量のメタノールに注いでポリマーを完全に析出させ、濾別洗浄後、50℃で18時間減圧乾燥して、ノルボルネン重合体2を2,462重量部得た。
ノルボルネン重合体2の数平均分子量は140,000、重量平均分子量は502,000であった。ノルボルネン重合体2中のNB単位/E0NB単位組成比は、61/39(モル/モル)であった。ノルボルネン重合体2のガラス転移温度は274℃であった。重合体の重量平均分子量及び数平均分子量は、テトラヒドロフラン又はクロロホルムを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値として測定した。重合体の共重合比は、H−NMR測定により求めた。ガラス転移温度は、DMS6100(セイコーインスツルメント社製)を用いて動的粘弾性測定により求まる貯蔵弾性率E’の屈曲点の温度で算出した。
【0135】
(11−2.原反フィルム11の作製)
ノルボルネン重合体2の25重量部と、トルエン75重量部とを混合した溶液を用いて、溶剤キャスト法で原反フィルム11を作製した。原反フィルム11の厚さは60μmであった。
【0136】
(11−3.無機バリア層の形成)
延伸フィルム1に代えて上記(11−2)で得た原反フィルム11を用いた(即ち、延伸工程を経ずに用いた)以外は、実施例1の工程(1−3)と同様にして無機バリア層の形成を行い、(SiOx層)−(原反フィルム)の層構成を有する積層体P11を得た。積層体P11のSiOx層側の面及び原反フィルム側の面の表面粗さRaを測定すると、それぞれ3.50nm及び3.40nmであった。得られた積層体P11を200mm×200mmのサイズで2枚切り出し、それぞれを積層体P11−A、積層体P11−Bとした。
【0137】
(11−4.ガスバリア積層体11の作製)
積層体P1−A及び積層体P1−Bに代えて上記(11−3)で得た積層体P11−A及び積層体P11−Bを用いた他は、実施例1の工程(1−4)〜(1−6)と同様にして表面処理、金属アルコキシド層の形成及び圧着を行い、(金属アルコキシド層)−(SiOx層)−(原反フィルム)の層構成を有する複合層A11(図8の複合層A-IIに相当)、及び(SiOx層)−(原反フィルム)−(金属アルコキシド層)の層構成を有する複合層B11(図8の複合層B-IIに相当)を得、さらに(SiOx層)−(原反フィルム)−(金属アルコキシド層)−(金属アルコキシド層)−(SiOx層)−(原反フィルム)の層構成を有するガスバリア積層体11を得た。
【0138】
(11−5.評価)
ガスバリア積層体11の金属アルコキシド層2層の合計の膜厚は、0.05μmであった。ガスバリア積層体11のヘイズは0.20%であった。ガスバリア積層体11の複合層A11とB11と間の接着力及びガスバリア積層体11の透湿度を測定すると、それぞれ4.50N/cm及び0.20×10−2g/m/dayであった。剥離界面は、金属アルコキシド層と積層体P11−Bの界面であった。高温高湿環境に暴露した後の接着力及び透湿度を測定すると、それぞれ4.30N/cm及び0.20×10−2g/m/dayであった。剥離界面は、金属アルコキシド層と積層体P11−Bの界面であった。
【0139】
<実施例12>
図8に概略的に示す層構成を有するガスバリア積層体12を作製した。ガスバリア積層体12は、複合層Aを構成する層の材料が異なる他は、実施例1のガスバリア積層体1と同様の構成を有している。
【0140】
(12−1.無機バリア層の形成)
ポリエチレンナフタレートフィルム(商品名「テオネックスQ65FA」、帝人デュポン社製)を、原反フィルム12として用いた。延伸フィルム1に代えてこの原反フィルム12を用いた(即ち、延伸工程を経ずに用いた)以外は、実施例1の工程(1−3)と同様にしてSiOx層の形成を行い、(SiOx層)−(原反フィルム)の層構成を有する積層体P12を得た。積層体P12のSiOx層側の面及び原反フィルム側の面の表面粗さRaを測定すると、それぞれ2.0nm及び2.5nmであった。得られた積層体P12を200mm×200mmのサイズで切り出し、積層体P12−Aとした。
【0141】
(12−2.複合層A12の作製)
積層体P1−Aに代えて上記(12−1)で得た積層体P12−Aを用いた他は、実施例1の工程(1−4)と同様にして表面処理及び金属アルコキシド形成を行い、(金属アルコキシド層)−(SiOx層)−(原反フィルム)の層構成を有する複合層A12(図8の複合層A-IIに相当)を得た。
【0142】
(12−3.ガスバリア積層体12の作製)
複合層A1に代えて上記(12−2)で得た複合層A12を用いた他は、実施例1の工程(1−6)と同様にして複合層A12及びB1を圧着し、(SiOx層)−(延伸フィルム)−(金属アルコキシド層)−(金属アルコキシド層)−(SiOx層)−(延伸フィルム)の層構成を有するガスバリア積層体12を得た。
【0143】
(12−3.評価)
ガスバリア積層体12の金属アルコキシド層2層の合計の膜厚は、0.05μmであった。ガスバリア積層体12のヘイズは0.25%であった。ガスバリア積層体12の複合層A12とB12と間の接着力及びガスバリア積層体12の透湿度を測定すると、それぞれ4.30N/cm及び0.30×10−2g/m/dayであった。剥離界面は、P12-Aと金属アルコキシド層の界面であった。高温高湿環境に暴露した後の接着力及び透湿度を測定すると、それぞれ4.20N/cm及び0.65×10−2g/m/dayであった。剥離界面は、P12-Aと金属アルコキシド層の界面であった。
【0144】
<実施例13>
ガスバリア積層体及び偏光子を有する円偏光板を作製した。
【0145】
(13−1.1/2波長板積層体P13−Aの作製)
実施例1の工程(1−1)で得られた原反フィルム1を、縦延伸装置を用い延伸温度172℃でフィルムの流れ方向(MD方向)に1.3倍延伸し、1/2波長板を作製した。
延伸フィルム1に代えてこの1/2波長板を用いた他は、実施例1の工程(1−3)と同様にして無機バリア層の形成を行い、(SiOx層)−(1/2波長板)の層構成を有する積層体を得、これを200mm×200mmのサイズで切り出し、積層体P13−Aを得た。切り出しに際しては、1/2波長板の遅相軸と、他の層の遅相軸及び偏光軸との角度が後述する所定の状態となるよう、遅相軸と辺との関係を合わせて切り出しを行った。
得られた積層体P13−Aの波長550nmのレタデーション値(Re(550))は265nmであり、波長450nmのレタデーション値(Re(450))との比(Re(450))/(Re(550))は1.051であった。積層体P13−AのSiOx層側の面及び1/2波長板側の面の表面粗さRaを測定すると、それぞれ0.65nm及び0.78nmであった。
【0146】
(13−2.1/4波長板積層体P13−Bの作製)
実施例1の工程(1−1)で得られた原反フィルム1を、縦延伸装置を用い延伸温度172℃でフィルムの流れ方向(MD方向)に1.5倍延伸し、1/4波長板を作製した。
延伸フィルム1に代えてこの1/4波長板を用いた他は、実施例1の工程(1−3)と同様にして無機バリア層の形成を行い、(SiOx層)−(1/4波長板)の層構成を有する200mm×200mmの積層体を得、これを200mm×200mmのサイズで切り出し、積層体P13−Bを得た。切り出しに際しては、1/4波長板の遅相軸と、他の層の遅相軸及び偏光軸との角度が後述する所定の状態となるよう、遅相軸と辺との関係を合わせて切り出しを行った。
得られた積層体P13−Bの波長550nmのレタデーション値(Re(550))は132.5nmであり、波長450nmのレタデーション値(Re(450))との比(Re(450))/(Re(550))は1.051であった。積層体P13−BのSiOx層側の面及び1/4波長板側の面の表面粗さRaを測定すると、それぞれ0.69nm及び0.83nmであった。
【0147】
(13−3.複合層A13及び複合層B13の作製)
積層体P1−A及びP1−Bに代えて、上記(13−1)及び(13−2)で得たP13−A及びP13−Bを用いた他は、実施例1の工程(1−4)及び(1−5)と同様にして表面処理及び金属アルコキシド形成を行い、(金属アルコキシド層)−(SiOx層)−(1/2波長板)の層構成を有する複合層A13、及び(SiOx層)−(1/4波長板)−(金属アルコキシド層)の層構成を有する複合層B13を得た。
【0148】
(13−4.ガスバリア積層体13の作製)
複合層A1及びB1に代えて、上記(13−3)で得た複合層A13及びB13を用いた他は、実施例1の工程(1−6)と同様にして複合層A13及びB13を圧着し、(SiOx層)−(1/4波長板)−(金属アルコキシド層)−(金属アルコキシド層)−(SiOx層)−(1/2波長板)の層構成を有し、1/2波長板の遅相軸と1/4波長板の遅相軸との交差角が59°であるガスバリア積層体13を得た。
【0149】
(13−5.ガスバリア積層体13の評価)
ガスバリア積層体13の金属アルコキシド層2層の合計の膜厚は、0.05μmであった。ガスバリア積層体13のヘイズは0.25%であった。ガスバリア積層体13の複合層A13とB13との間の接着力及びガスバリア積層体13の透湿度を測定すると、それぞれ4.50N/cm及び0.20×10−2g/m/dayであった。剥離界面は、P13-Bと金属アルコキシド層の界面であった。高温高湿環境に暴露した後の接着力及び透湿度を測定すると、それぞれ4.40N/cm及び0.30×10−2g/m/dayであった。剥離界面は、P13-Bと金属アルコキシド層の界面であった。
【0150】
(13−6.円偏光板の作製)
得られたガスバリア積層体13の1/2波長板側の表面に、コロナ処理(0.15kW、電極間2mm、処理速度1.0m/min、処理幅300mm)を施した。
ポリエステル系ポリウレタン樹脂の酢酸エチル溶液(日本ポリウレタン社製WWA−608S)20重量部、ポリイソシアネートの酢酸エチル溶液(日本ポリウレタン社製HARDENER110)20重量部、酢酸ブチル0.4重量部、シクロヘキサン0.4重量部、及び酢酸エチル80重量部を混合し、塗布液を調製した。
ガスバリア積層体の、1/2波長板側のコロナ処理を施した面上に、上記塗布液を、バーコーターでウェット膜厚20μmで塗布し、85℃で30分間乾燥し、(SiOx層)−(1/4波長板)−(金属アルコキシド層)−(金属アルコキシド層)−(SiOx層)−(1/2波長板)−(樹脂層)の層構成を有する偏光層積層体13を得た。
得られた偏光層積層体13の樹脂層側の面と、片面にTACフィルムが積層されたよう素系偏光子の偏光子面とを、1/2波長板の遅層軸と偏光層の偏光軸との交差角が15°となり、且つ1/4波長板の遅相軸と偏光層の偏光軸が74°となるように重ね合わせて、70℃で熱圧着し、40℃で3日間エージングし、円偏光板を得た。
【0151】
(13−7.円偏光板の評価)
円偏光板を、裏面に反射板を有する反射型液晶表示素子上に、1/4波長板側が該液晶表示素子に対面するように設置し、液晶表示素子の表示を黒表示(前面を黒に表示する)にし、前記円偏光板を通して観た黒表示の鮮明度を評価した。黒表示の黒のトーンが画面全面に亘り均一で、且つ濃いトーンである良好な特性を有していることがわかった。
【0152】
実施例1〜13で得られた積層体は、いずれも、耐湿熱試験前後の接着力、水蒸気バリア性が良好であり、ヘイズも小さいため、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、液晶表示装置等に好適に使用できるものであった。
【符号の説明】
【0153】
100、200、300、400:ガスバリア積層体
11a:金属アルコキシド層(a)
11b:金属アルコキシド層(b)
12a:無機バリア層(a)
12b:無機バリア層(b)
13a:フィルム(a)
13b:フィルム(b)
A−I、A−II、A−III:複合層A
B−I、B−II:複合層B
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9