(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1から12のいずれか1項に記載の化合物、請求項13または14のいずれか1項に記載の組成物、請求項15または16のいずれか1項に記載の重合体、の少なくともいずれか1つを含む液晶表示素子。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。「液晶性化合物」は液晶相を有する化合物および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称である。液晶性化合物、液晶組成物、液晶表示素子をそれぞれ化合物、組成物、素子と表記することがある。式(1)で表わされる化合物を化合物(1)または式(1)の化合物と表記することがある。他の式についても同様に略記することがある。「化合物(1)」は、式(1)で表される1つの化合物または2つ以上の化合物を意味する。他の式で表される化合物についても同様である。アクリレートおよびメタクリレートを総称して(メタ)アクリレートと表記することがある。組成物に混合される添加物の割合は、液晶組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)または重量百万分率(重量ppm)を表す。
【0012】
「任意の」は、「位置だけでなく数においても自由に選択できること」を意味する。例えば、「任意のAがB、C、DまたはEで置き換えられてもよい」という表現は、1つのAがB、C、DまたはEで置き換えられてもよいという意味と、複数のAのどれもがB、C、DおよびEのいずれか1つで置き換えられてもよいという意味とに加えて、Bで置き換えられるA、Cで置き換えられるA、Dで置き換えられるA、およびEで置き換えられるAの少なくとも2つが混在してもよいという意味をも有する。任意の−CH
2−が−O−で置き換えられてもよいとするとき、隣り合った−CH
2−が−O−で置き換えられることおよび−O−の隣の−CH
2−が−O−で置き換えられることは含まれない。また、任意の−CH
2−が−CH=CH−や−C≡C−で置き換えられる場合、炭素数が記載の範囲を越えることはない。例えば、式(1)におけるR
1は炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH
2−は−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよいが、−CH=CH−または−C≡C−での置き換えを含むアルキルの炭素数は、この場合20を超えるものではない。
【0013】
本発明は、下記の項などである。
1. 式(1)で表される化合物。
【0014】
(式中、
R
1は水素または炭素数1から20のアルキルであり、このアルキルにおいて、任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
R
2およびR
3は独立して水素またはメチルであり;
A
1は単結合、1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;
A
2は独立して1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;
A
1およびA
2の1,4−フェニレンおよび1,4−シクロヘキシレンにおいて、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
Z
1は単結合または炭素数1から3のアルキレンであり;
Z
2は独立して−O−、−COO−、−OCO−または炭素数1から6のアルキレンであり;
Z
3は独立して単結合または−O−であり;
Z
4は独立して単結合または炭素数2から20のアルキレンであり、このアルキレンにおいて任意の−CH
2−は、−O−で置き換えられてもよく;
X
1は独立して水素、ハロゲン、炭素数1から3のアルキル、または炭素数1から3のフルオロアルキルであり;
aは独立して0または1である。
ただし、aが0、R
2、R
3およびX
1が水素であり、A
1、Z
1、Z
3およびZ
4が単結合のとき、R
1は炭素数4から20のアルキルであり、このアルキルにおける任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
aが0、R
2が水素、X
1が水素またはメチル、R
3がメチルであり、A
1、Z
1、Z
3およびZ
4が単結合のとき、R
1は炭素数1から20のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
aが0、R
2およびR
3が水素、X
1がメチルであり、A
1、Z
1、Z
3およびZ
4が単結合のとき、R
1は炭素数2から20のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
aが0、X
1がメチル、R
2およびR
3が水素であり、A
1およびZ
1が単結合、R
1が単結合または炭素数1から4のアルキル、Z
3が−O−のとき、Z
4は炭素数3から20のアルキレンであり;
aが0、X
1、R
1、R
2およびR
3が水素であり、A
1およびZ
1が単結合、Z
3が−O−のとき、Z
4は炭素数3から20のアルキレンである。)
【0015】
2. 項1に記載の式(1)中、A
1が1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンである項1に記載の化合物。
【0016】
3. 項1に記載の式(1)中、R
1が水素または炭素数1から10のアルキルであり、A
1が1,4−シクロヘキシレンであり、Z
2が独立して−O−、−COO−、−OCO−または−CH
2−であり、Z
4が独立して単結合または炭素数2から10のアルキレンであり、X
1が独立して水素、フッ素、メチル、またはトリフルオロメチルである項2に記載の化合物。
【0017】
4. 項1に記載の式(1)中、R
2がメチルである項1に記載の化合物。
【0018】
5.項1に記載の式(1)中、A
1およびZ
1が単結合である項4に記載の化合物。
【0019】
6. 項1に記載の式(1)中、R
1が水素または炭素数1から10のアルキルであり、Z
2が独立して−O−、−COO−、−OCO−または−CH
2−であり、Z
3が独立して単結合または−O−であり、Z
4が独立して単結合または炭素数2から10のアルキレンであり、X
1が独立して水素、フッ素、メチル、またはトリフルオロメチルであり、aが独立して0または1である項5に記載の化合物。
【0020】
7. 項1に記載の式(1)中、aが1である項1に記載の化合物。
【0021】
8. 項1に記載の式(1)中、A
1およびZ
1が単結合である項7に記載の化合物。
【0022】
9. 項1に記載の式(1)中、R
1が水素または炭素数1から10のアルキルであり、Z
2が独立して−O−、−COO−、−OCO−または−CH
2−であり、Z
3が独立して単結合または−O−であり、Z
4が独立して単結合または炭素数2から10のアルキレンであり、X
1が独立して水素、フッ素、メチル、またはトリフルオロメチルである項8に記載の化合物。
【0023】
10. 項1に記載の式(1)中、aが0である項1に記載の化合物。
【0024】
11. 項1に記載の式(1)中、A
1,Z
1が単結合である項10に記載の化合物。
【0025】
12. 下記の何れか一つである、項11に記載の化合物。
X
1が水素、Z
3およびZ
4が単結合であり、R
1が炭素数2または4から10のアルキル;もしくは
X
1が水素またはメチル、Z
3が単結合または−O−であり、Z
4は炭素数3から10のアルキレンであり、R
1は水素または炭素数1から10のアルキル;もしくは
X
1がフッ素、塩素、またはトリフルオロメチル、Z
3が単結合または−O−であり、Z
4は単結合または炭素数2から10のアルキレンであり、R
1は水素または炭素数1から10のアルキル。
【0026】
13. 項1から12のいずれか1項に記載の化合物を含む組成物。
【0027】
14. 項1から12のいずれか1項に記載の化合物を、非重合性の液晶組成物に添加してなる、項13に記載の組成物。
【0028】
15. 項1から12のいずれか1項に記載の化合物を重合させて得られる重合体。
【0029】
16. 項13または14に記載の組成物を重合させて得られる重合体。
【0030】
17.項1から12のいずれか1項に記載の化合物、項13または14のいずれか1項に記載の化合物に記載の組成物、項15または16のいずれか1項に記載の重合体、の少なくともいずれか1つを含む液晶表示素子。
【0031】
本発明は、次の項も含む。1)光学活性な化合物をさらに含有する上記の組成物、2)酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤などの添加物をさらに含有する上記の組成物。3)上記の組成物を含有するAM素子、4)上記の組成物を含有し、そしてTN、ECB、OCB、IPS、VA、またはPSAのモードを有する素子、5)上記の組成物を含有する透過型の素子、6)ネマチック相を有する組成物としての使用、7)上記の組成物に光学活性な化合物を添加することによる光学活性な組成物としての使用。
【0032】
次に液晶性化合物の合成方法を説明する。これらの化合物は既知の方法によって合成できる。例えば、特表平2−503441号公報、特開昭59−176221号公報、特開2005−35986号公報に記載された方法である。
【0033】
重合基(メタ)アクリレートは水酸基を持つ化合物にアクリル酸クロリド類を作用させることにより導入できる。
【0034】
合成方法を記載しなかった化合物は、オーガニック・シンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などの成書に記載された方法によって合成できる。組成物は、このようにして得た化合物から公知の方法によって調製される。例えば、成分化合物を混合し、そして加熱によって互いに溶解させる。
【0035】
重合性化合物、式(1)の合成方法について説明する。
【0036】
式(1)中、aが0、R
2およびR
3が水素、Z
3およびZ
4が単結合である化合物(1−a)はスキーム1の工程により合成する。
(スキーム1)
(式中、R
1、A
1、Z
1およびX
1は前記と同じ定義を表す。)
【0037】
シクロヘキサノン(i)とフェノール(ii)の脱水反応により化合物(iii)を合成した後、酸クロライド(iv)と反応させることで化合物(1−a)を合成できる。
【0038】
式(1)中、aが0、R
2およびR
3が水素、Z
3が酸素、Z
4がアルキレンである化合物(1−b)はスキーム2の工程により合成できる。
【0039】
(スキーム2)
(式中、R
1、A
1、Z
1およびX
1は前記と同じ定義を表す。)
【0040】
(メタ)アクリル酸のアルキルアルコール(v)を塩化パラトルエンスルホニル(vi)によりトシル化し、化合物(iii)と反応させることにより化合物(1−b)を合成できる。
【0041】
以上の方法により化合物(1−1−1)〜(1−1−6)、(1−2−1)〜(1−2−7)、(1−3−1)〜(1−3−9)(1−4−1)〜(1−4−6)、(1−5−1)〜(1−5−6)、(1−6−1)〜(1−6−13)および(1−7−1)〜(1−7−9)を合成する。
【0055】
本願化合物は、誘電率異方性が正または負の、非重合性の液晶組成物に添加して用いることができる。誘電率異方性が正の好ましい液晶組成物は、特許第3086228号公報、特許第2635435号公報、特表平5−501735号公報、特開平8−157826号公報、特開平8−231960号公報、特開平9−241644号公報(欧州特許出願公開第885272号明細書)、特開平9−302346号公報(欧州特許出願公開第806466号明細書)、特開平8−199168号公報(欧州特許出願公開第722998号明細書)、特開平9−235552号公報、特開平9−255956号公報、特開平9−241643号公報(欧州特許出願公開第885271号明細書)、特開平10−204016号公報(欧州特許出願公開第844229号明細書)、特開平10−204436号公報、特開平10−231482号公報、特開2000−087040公報、特開2001−48822公報等に開示されている。
【0056】
誘電率異方性が負の、好ましい非重合性の液晶組成物は、特開昭57−114532号公報、特開平2−4725号公報、特開平4−224885号公報、特開平8−40953号公報、特開平8−104869号公報、特開平10−168076号公報、特開平10−168453号公報、特開平10−236989号公報、特開平10−236990号公報、特開平10−236992号公報、特開平10−236993号公報、特開平10−236994号公報、特開平10−237000号公報、特開平10−237004号公報、特開平10−237024号公報、特開平10−237035号公報、特開平10−237075号公報、特開平10−237076号公報、特開平10−237448号公報(欧州特許出願公開第967261号明細書)、特開平10−287874号公報、特開平10−287875号公報、特開平10−291945号公報、特開平11−029581号公報、特開平11−080049号公報、特開2000−256307公報、特開2001−019965公報、特開2001−072626公報、特開2001−192657公報等に開示されている。
【0057】
前記誘電率異方性が正または負の液晶組成物に1種以上の光学活性化合物、重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤などの添加物をさらに添加して使用することもできる。
【0058】
本発明の重合体は、化合物(1)またはそれらを含有する組成物を重合することで得られる重合体である。化合物(1)の1つのみを重合させると、単独重合体が得られる。複数の重合性化合物を含有する組成物を重合させると、共重合体が得られる。
また、化合物(1)を、非重合性の液晶組成物に添加してなる組成物を重合させた場合、非重合性の液晶組成物中に化合物(1)が重合した単独重合体が含まれることとなるが、この組成物も重合体と言う。
【0059】
重合はエネルギー(電磁波)を照射することで実施できる。かかる電磁波は、紫外線、赤外線、可視光線、X線、γ線などである。また、イオンやエレクトロンといった高エネルギー粒子を照射してもよい。
【0060】
本発明の化合物の少なくとも1つまたは組成物の配向は電磁波の照射で固定できる。電磁波の波長の範囲は150〜500nmが好ましい。さらに好ましい範囲は250〜450nmであり、特に好ましい範囲は300〜400nmである。照射時の温度は、化合物の少なくとも1つまたは組成物が液晶状態である温度であるが、熱重合を防ぐために、100℃以下が好ましい。
【0061】
重合性化合物は電圧を印加した状態で液晶表示素子の基板間の液晶組成物中に於いて表示素子中で重合させることにより重合または架橋される。重合方法は例えば熱、または光重合で、好ましくは光重合である。必要であればここに一種以上の重合開始剤を加えることもできる。重合条件および重合開始剤の適当な種類は当業者に公知であり、多くの文献に記載されている。
重合基(メタ)アクリレートはラジカル重合に適している。重合開始剤の添加または反応温度を最適化することにより、より敏速に重合させることができるが、重合開始剤は添加してもしなくてもよい。
【0062】
光ラジカル重合開始剤の例は、具体的な商品名で、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)のダロキュアシリーズからTPO、1173および4265、イルガキュアシリーズから184、369、500、651、784、819、907、1300、1700、1800、1850、2959の商品であるが、公知のいずれの光ラジカル重合開始剤も使用できる。
【0063】
光ラジカル重合開始剤のその他の例は、4−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)トリアジン、2−(4−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン混合物、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール混合物、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,4−ジエチルキサントン/p−ジメチルアミノ安息香酸メチル混合物、ベンゾフェノン/メチルトリエタノールアミン混合物であるが、公知のいずれの光ラジカル重合開始剤も使用できる。
【0064】
本発明の重合性化合物は、特に重合開始剤を用いることなく、速やかに反応する点で優れている。これによって系中に残存する光ラジカル重合開始剤またはその残渣に由来する表示不良を低減することおよび製品寿命の長期化を達成できる。
本発明の重合性化合物は単独で用いても、その他の重合性化合物と混合して用いてもよい。併せて用いることのできる重合性化合物としては市販または公知のモノマー、例えば特開2004−123829に記載の液晶表示素子に好適である既存の単官能(重合性基を1つもつ)または多官能(重合性基を2つ以上もつ)の液晶性モノマーが挙げられる。
【0065】
本発明の液晶表示素子は透明電極と液晶分子を配向させる配向制御膜を備えた二枚の基板を有し、これらの基板の間に重合性化合物を含む液晶組成物を配置し、これらの基板の相対する透明電極の間に電圧を印加しながら重合性化合物を重合させて液晶分子の配向を固定化する工程を経て製造される液晶表示装置である。
【実施例】
【0066】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によっては制限されない。なお特に断りのない限り、「%」は「重量%」を表す。また、容量を表すリットルは、Lで表記した。
【0067】
合成によって得られた化合物は、プロトン核磁気共鳴分光法(
1H−NMR)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などにより同定した。化合物の融点は、示差走査熱量測定(DSC)により決定した。まず、各分析方法について説明をする。
【0068】
1H−NMR分析:測定装置は、DRX−500(ブルカーバイオスピン製)を用いた。測定は、実施例などで合成したサンプルを、CDCl
3などのサンプルが可溶な重水素化溶媒に溶解し、室温で、500MHz、積算回数24回などの条件で行った。なお、得られた核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、mはマルチプレットであることを意味する。また、化学シフトδ値のゼロ点の基準物質としてはテトラメチルシラン(TMS)を用いた。
【0069】
HPLC分析:測定装置は、島津製作所製のProminence(LC−20AD;SPD−20A)を用いた。カラムはワイエムシー製のYMC−Pack ODS−A(長さ150mm、内径4.6mm、粒子径5μm)を用いた。溶出液はアセトニトリルと水を適宜混合して用いた。検出器としてはUV検出器、RI検出器、CORONA検出器などを適宜用いた。UV検出器を用いた場合、検出波長は254nmとした。
試料はアセトニトリルに溶解して、0.1重量%の溶液となるように調製し、得られた溶液1μLを試料室に導入した。記録計としては島津製作所製のC−R7Aplusを用いた。得られたクロマトグラムには、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積値が示されている。
【0070】
HPLCより得られたクロマトグラムにおけるピークの面積比は成分化合物の割合に相当する。一般には、分析サンプルの成分化合物の重量%は、分析サンプルの各ピークの面積%と完全に同一ではないが、本発明において上述したカラムを用いる場合には、実質的に補正係数は1であるので、分析サンプル中の成分化合物の重量%は、分析サンプル中の各ピークの面積%とほぼ対応している。成分の液晶性化合物における補正係数に大きな差異がないからである。クロマトグラムにより液晶組成物中の液晶性化合物の組成比をより正確に求めるには、クロマトグラムによる内部標準法を用いる。一定量正確に秤量された各液晶性化合物成分(被検成分)と基準となる液晶性化合物(基準物質)を同時にHPLCにより測定して、得られた被検成分のピークと基準物質のピークとの面積比の相対強度をあらかじめ算出する。基準物質に対する各成分のピーク面積の相対強度を用いて補正すると、液晶組成物中の液晶性化合物の組成比をクロマトグラムより正確に求めることができる。
【0071】
DSC測定:パーキンエルマー社製走査熱量計DSC−7システム、またはDiamond DSCシステムを用いて、3℃/分速度で昇降温し、試料の相変化に伴う吸熱ピーク、または発熱ピークの開始点を外挿により求め(on set)、融点を決定した。
【0072】
応答時間(τ;25℃で測定;ms):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプである。ローパス・フィルター(Low-pass filter)は5kHzに設定した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が3.2μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のPVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤を用いて密閉した。この素子にしきい値電圧を若干超える程度の電圧を約1分間印加し、次に5.6Vの電圧を印加しながら超高圧水銀灯(HOYA CANDEO OPTRONICS株式会社製 EXECURE3000 250W)を用いて23.5mW/cm
2の紫外線を約8分間照射した。この素子に矩形波(60Hz、10V、0.5秒)を印加した。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である。応答時間は透過率0%から90%に変化するのに要した時間立ち上がり時間(rise time;ミリ秒)である。
【0073】
[実施例1]
<化合物(1−2−2)の合成>
【0074】
第1工程:化合物(T−2)の合成
化合物(T−1)(50g)、フェノール(75g)の混合物に室温で塩化カルシウム(29g)を加えた。ここに塩酸(30mL;(関東化学株式会社製、鹿1級))を滴下し撹拌した。反応溶液は次第に固化した。16時間後、湯と酢酸エチルを加え有機層を抽出し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、次いで水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、有機溶媒を減圧下留去した。残渣をトルエンを用いて再結晶を行い、化合物(T−2)を無色結晶(55g)として得た。
【0075】
第2工程:化合物(1−2−2)の合成
窒素雰囲気下、ジクロロメタン(150 mL)、化合物(T−2)(10g)、トリエチルアミン(6.3 g)、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(5.2mg)の混合物に、氷冷下でメタクリル酸クロライド(6.5g)を滴下し、その後徐々に室温まで昇温した。室温で16時間撹拌した後、反応混合物を水に注ぎ、有機層を1M塩酸、1M水酸化ナトリウム水溶液、次いで水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機溶媒を減圧下留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:トルエン)で精製した。粗結晶をジクロロメタンとエタノールの混合溶媒から再結晶して化合物(1−2−2)を無色結晶(6.8g)として得た。
融点:142℃
1H−NMR(CDCl
3;δ ppm):7.36(d,2H),7.17(d,2H),7.08(d,2H),6.95(d,2H),6.33(s,1H),6.30(s,1H),5,74(t,1H),5.71(t,1H),2.66(s,1H), 2.63(s,1H),2.06(s,3H),2.03(s,3H),1.93−1.88(m,2H),1.71−1.66(m,6H),1.31−1.09(m,13H),0.92−0.74(m,4H),0.87(t,3H).
【0076】
[実施例2]
<化合物(1−1−1)の合成>
【0077】
第1工程:化合物(T−1)の合成
化合物(T−1)を化合物(T−3)に変更した他は、実施例1の第1工程に記載の方法と同様に合成を行い、化合物(T−4)を無色結晶として得た。
【0078】
第2工程:化合物(1−1−1)の合成
化合物(T−2)を化合物(T−4)に変更した他は、実施例1の第2工程に記載の方法と同様に合成を行い、化合物(1−1−1)を無色結晶として得た。
融点:79℃
1H−NMR(CDCl
3;δ ppm):7.36(d,2H),7.18(d,2H),7.08(d,2H),6.96(d,2H),6.33(s,1H),6.30(s,1H),5.74(t,1H),5.71(t,1H),2.64(s,1H),2.61(s,1H),2.06(s,3H),2.03(s,3H),1.97−1.91(m,2H),1.73−1.70(m,2H),1.30−1.24(m,1H),1.19−1.07(m,4H),0.84(t,3H).
【0079】
[実施例3]
<化合物(1−1−5)の合成>
【0080】
化合物(T−2)を化合物(T−5)に変更した他は、実施例1の第2工程に記載の方法と同様に合成を行い、化合物(1−1−5)を無色結晶として得た。
融点:107℃
1H−NMR(CDCl
3;δ ppm):7.11−7.09(m,4H),6.95(d,2H),6.34(s,2H),5.73(t,2H),2.24(t,4H),2.14(s,6H),2.06(s,6H),1.58−1.52(m,4H),1.50−1.46(m,2H).
【0081】
[実施例4]
<化合物(1−2−5)の合成>
【0082】
第1工程:化合物(T−7)の合成
化合物(T−1)を化合物(T−6)に変更した他は、実施例1の第1工程に記載の方法と同様に合成を行い、化合物(T−7)を無色結晶として得た。
【0083】
第2工程:化合物(1−2−5)の合成
化合物(T−2)を化合物(T−7)に変更した他は、実施例1の第2工程に記載の方法と同様に合成を行い、化合物(1−2−5)を無色結晶として得た。
融点:130℃
1H−NMR(CDCl
3;δ ppm):7.36(d,2H),7.17(d,2H),7.08(d,2H),6.95(d,2H),6.33(s,1H),6.30(s,1H),5.74(t,1H),5.72(t,1H),2.63(s,1H),2.60(s,1H),2.06(s,3H),2.03(s,3H),1.96−1.91(m,2H),1.73−1.67(m,6H),1.32−1.18(m,7H),1.15−1.06(m,10H),0.87(t,3H),0.84−0.80(m,4H).
【0084】
[実施例5]
<化合物(1−4−1)の合成>
【0085】
化合物(T−5)(5.0g)のN,N−ジメチルホルムアミド(80mL)溶液に水素化ナトリウム(2.2g;(関東化学株式会社製、Organics))を加え60℃で1時間加熱撹拌した。次に、2−トシルオキシエチルメタクリレート(11.5g)、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(3.7mg)、N,N−ジメチルホルムアミド(80mL)を加え60℃で4時間加熱撹拌した。反応溶液を室温まで放冷した後、水を注いだ。有機層をトルエンで抽出し、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、有機溶媒を減圧下留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:トルエン:酢酸エチル=9:1の混合溶媒)で精製し、化合物(1−4−1)を無色油状物(3.5g)として得た。
1H−NMR(CDCl
3;δ ppm):7.05−7.00(m,4H),6.71(d,2H),6.11(s,2H),5.56(t,2H),4.48(t,4H),4.17(t,4H),2.21−2.19(m,4H),2.17(s,6H),1.94(s,6H),1.54−1.46(m,4H).
【0086】
[実施例6]
<化合物(1−5−2)の合成>
【0087】
化合物(T−5)を化合物(T−2)に変更した他は、実施例5に記載の方法と同様に合成を行い、粗結晶をジクロロメタンとエタノールの混合溶媒から再結晶して化合物(1−5−2)を無色結晶として得た。
融点:59℃
1H−NMR(CDCl
3;δ ppm):7.23(d,2H),7.05(d,2H),6.82(d,2H),6.72(d,2H),6.42−6.37(m,2H),6.15−6.07(m,2H),5.83−5.80(m,2H),4.24(t,2H),4.20(t,2H),3.97(t,2H),3.92(t,2H),2.61(s,1H),2.58(s,1H),1.88−1.82(m,10H),1.71−1.66(m,6H),1.31−1.09(m,13H),0.93−0.73(m,4H),0.87(t,3H).
【0088】
[実施例7]
<化合物(1−6−6)の合成>
【0089】
化合物(1−6−6)の合成
窒素雰囲気下、ジクロロメタン(150mL)、化合物(T−4)(2.0g)、4−((6−(アクリロイルオキシ)ヘキシル)オキシ)安息香酸(4.3g)、4−ジメチルアミノピリジン(0.082g)、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(3.0mg)の混合物に、氷冷下で1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(3.1g)のジクロロメタン(50mL)溶液を滴下し、その後徐々に室温まで昇温した。室温で16時間撹拌した。反応溶液を水洗し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:トルエン:酢酸エチル=9:1の混合溶媒)で精製し、化合物(1−6−6)を無色油状物(4.9g)として得た。
1H−NMR(CDCl
3;δ ppm):8.14−8.10(m,4H),7.41(d,2H),7.27−7.15(m,4H),7.05(d,2H),6.97(t,4H),6.42−6.39(m,2H),6.15−6.10(m,2H),5.84−5.81(m,2H),4.18(t,2H),4.18(t,2H),4.05(t,2H),4.04(t,2H),2.68(s,1H),2.65(s,1H),1.20−1.94(m,2H),1.87−1.81(m,4H),1.76−1.69(m,6H),1.56−1.45(m,8H),1.34−1.25(m,1H),1.20−1.10(m,4H),0.85(t,3H).
【0090】
[実施例8]
<化合物(1−3−2)の合成>
【0091】
化合物(T−5)を化合物(T−4)に変更した他は、実施例5に記載の方法と同様に合成を行い、化合物(1−3−2)を無色油状物として得た。
1H−NMR(CDCl
3;δ ppm):7.25(d,2H),7.08(d,2H),6.86(d,2H),6.76(d,2H),6.46−6.39(m,2H),6.18−6.10(m,2H),5.86−5.82(m,2H),4.50(t,2H),4.46(t,2H),4.20(t,2H),4.14(t,2H),2.60(s,1H),2.57(s,1H),1.92−1.86(m,2H),1.71−1.68(m,2H),1.31−1.22(m,1H),1.17−1.04(m,4H),0.83(t,3H).
【0092】
[比較例1]
<4,4’−ビス(メタクリロイルオキシ)ビフェニル(R−1)の合成>
【0093】
化合物(T−2)を4,4’−ジヒドロキシビフェニルに変更した他は、実施例1の第2工程に記載の方法と同様に合成を行い、4,4’−ビス(メタクリロイルオキシ)ビフェニル(R−1)の無色結晶を得た。
融点:153℃
1H−NMR(CDCl
3;δ ppm):7.58(d,4H),7.20(d,4H),6.38(s,2H),5.78(t,2H),2.09(s,6H).
【0094】
[比較例2]
<1,1’−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)シクロヘキサン(R−2)の合成>
【0095】
化合物(T−2)を1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンに変更した他は、実施例1の第2工程に記載の方法と同様に合成を行い、1,1’−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)シクロヘキサン(R−2)の無色結晶を得た。
融点:109℃
1H−NMR(CDCl
3;δ ppm):7.28(d,4H),7.03(d,4H),6.32(s,2H),5.74(t,2H),2.27(t,4H),2.05(s,6H),1.59−1.50(m,6H).
【0096】
[実施例9]
(液晶組成物への溶解性の比較)
液晶組成物Aに本願の重合性化合物(1−2−2)および[比較例1]の重合性化合物(R−1)をそれぞれ0.3重量%加え、50℃で30分間加熱した。溶解した液晶組成物を1)室温で2日間放置、および2)−20℃で10日間放置した。その後、目視により結晶の析出を確認した。表1に結果を示す。表1中の記号において“○”は結晶が認められないもの、“×”は結晶が認められたものを示す。
液晶組成物Aの成分は以下のとおりである。
【0097】
【0098】
表1
【0099】
本願発明の重合性化合物は、液晶組成物Aへの溶解性が良好であることが分かった。
【0100】
[実施例10]
(応答時間の比較)
液晶組成物Aに本願の重合性化合物(1−2−2)を0.3重量%加え、本願記載のPVA素子において応答時間を測定したところτ=5.4msであった。
【0101】
[比較例3]
液晶組成物Aを、本願記載のPVA素子において応答時間を測定したところ、τ=7.3msであった。
【0102】
実施例10および比較例3より、本発明の重合性化合物を添加した液晶組成物は、添加していない液晶組成物と比べて、短い応答時間を示した。よって、本発明の重合性化合物を含有する液晶組成物は、PSAモードを利用する液晶表示素子としても好ましく利用できることが分かった。