(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(B)成分が、(B−2)ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物又は分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含む、請求項1又は2に記載の感光性エレメント。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本発明における(メタ)アクリル酸とはアクリル酸又はそれに対応するメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基又はそれに対応するメタクリロイル基を意味する。
【0029】
(感光性樹脂組成物)
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)バインダーポリマーと、(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、(D)熱硬化剤とを含有する。
以下、(A)〜(D)成分につき、詳細に説明する。
【0030】
(A)バインダーポリマー
本発明で用いる(A)成分は、後述する光重合性化合物と共に光硬化可能な重合体であればよく、特に制限されないが、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドエポキシ、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリカーボネート、メラミン樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリオキシベンゾイル、ポリアルキド等の公知の樹脂やその酸変性樹脂が挙げられる。中でもエチレン性不飽和二重結合を有した単量体(重合性単量体)を重合(ラジカル重合等)して得られたものであることが好ましい。
【0031】
このようなエチレン性不飽和二重結合を有した単量体としては、例えば、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド、アクリロニトリル、ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸系単量体、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸系単量体、フマル酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0032】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、下記一般式(2)で示される化合物及びこれらの化合物のアルキル基に水酸基、エポキシ基、ハロゲン原子等が置換した化合物等が挙げられる。
【0033】
【化2】
[一般式(2)中、R
5は水素原子又はメチル基を示し、R
6は炭素数1〜12のアルキル基を示す。]
【0034】
なお、上記一般式(2)中のR
6で示される炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基及びこれらの構造異性体等が挙げられる。
【0035】
上記一般式(2)で示される化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸プロピルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸ペンチルエステル、(メタ)アクリル酸ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸オクチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を任意に組み合わせて用いることができる。
【0036】
(A)成分であるバインダーポリマーは、アルカリ現像性の見地から、カルボキシル基を有するポリマーの1種又は2種以上からなることが好ましい。このような(A)バインダーポリマーは、例えば、カルボキシル基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体をラジカル重合させることにより製造することができる。
【0037】
バインダーポリマーの酸価は、例えば、アクリル系又は酸変性ポリエステル等のバインダーポリマーの場合、30〜150mgKOH/gであると好ましく、50〜120mgKOH/gであるとより好ましく、60〜100mgKOH/gであると特に好ましい。
【0038】
また、(A)成分であるバインダーポリマーは、アルカリ現像性及び解像性の観点から、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構造単位を有していることが好ましい。
【0039】
上記(A)成分であるバインダーポリマーは、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。2種類以上を組み合わせて使用する場合のバインダーポリマーとしては、例えば、異なる共重合成分からなる2種類以上のバインダーポリマー、異なる重量平均分子量の2種類以上のバインダーポリマー、異なる分散度の2種類以上のバインダーポリマー等が挙げられる。また、特開平11−327137号公報記載のマルチモード分子量分布を有するポリマーを使用することもできる。
【0040】
上記(A)成分であるバインダーポリマーの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる(標準ポリスチレンを用いた検量線による換算)。この測定法によれば、バインダーポリマーのMwは、5000〜150000であることが好ましく、10000〜120000であることがより好ましく、30000〜100000であることが特に好ましい。Mwが、5000未満では耐現像液性が低下する傾向があり、150000を超えると現像時間が長くなる傾向がある。
【0041】
上記(A)成分であるバインダーポリマーは、分散度(Mw/Mn)が、1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがより好ましい。分散度が3.0を超えると密着性及び解像度が低下する傾向がある。
【0042】
さらに、本発明の感光性樹脂組成物における(A)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の固形分全量を基準として、10〜80質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがより好ましく、40〜60質量%であることが特に好ましい。この含有量が10質量%未満であると感度及び解像度が低下する傾向があり、80質量%を超えると良好なビア形状が得られにくい傾向がある。
【0043】
(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物
本発明で用いる(B)成分は、(B−1)分子内にフルオレン骨格、及びオキシエチレン基又はオキシプロピレン基を有する光重合性化合物を含有する。(B−1)成分としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0045】
上記一般式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。
【0046】
R
3及びR
4は、それぞれ独立にハロゲン原子、アミノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数1〜6のアルキルアミノ基を示し、溶剤への溶解性の観点から、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であることがより好ましい。前記炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数1〜6のアルキルアミノ基は直鎖状でも分岐状でもよく、特に分岐状であることが好ましく、本発明の効果を損なわない範囲で水素原子が任意の置換基によって置換されていてもよい。
【0047】
p及びrは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、溶剤への溶解性の観点からは、1〜4であることが好ましい。なお、p又はrが2以上の場合、複数存在するR
3又はR
4は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0048】
−(A−O)−及び−(O−B)−はそれぞれ独立に、(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、又はエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのブロック共重合鎖若しくはランダム共重合鎖を示し、解像性の観点から、(ポリ)オキシエチレン鎖又はエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのブロック共重合鎖若しくはランダム共重合鎖であることが好ましく、(ポリ)オキシエチレン鎖であることがより好ましい。上記(ポリ)オキシプロピレン鎖又は上記共重合鎖におけるプロピレン基は、直鎖状でも分岐状でもよく、分岐状である場合、−CH(CH
3)CH
2−であっても、−CH
2CH(CH
3)−であってもよい。
【0049】
−(A−O)−及び−(O−B)−に含まれるオキシエチレン基又はオキシプロピレン基の繰り返し総数;m+nは1〜20であり、解像性、耐クラック性及び耐熱性をバランスよく向上させる観点から、2〜15であることが好ましく、4〜12であることがより好ましく、5〜10であることがさらに好ましい。
【0050】
(B−1)成分以外の光重合性化合物としては、例えば、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー又はウレタンオリゴマー等が挙げられる。また、これら以外にも、ノニルフェノキシポリオキシエチレンアクリレート、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β’−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−o−フタレート等のフタル酸系化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及びEO変性ノニルフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。これらの中では、前記(B)成分が、(B−2)ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物又は分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含むことが好ましい。
【0051】
なお、「EO」とは「エチレンオキシド」のことをいい、「PO」とは「プロピレンオキシド」のことをいう。また、「EO変性」とはエチレンオキシドユニット(−CH
2−CH
2−O−)のブロック構造を有することを意味し、「PO変性」とはプロピレンオキシドユニット(−CH
2−CH
2−CH
2−O−、−CH(CH
3)CH
2−O−、−CH
2CH(CH
3)−O−)のブロック構造を有することを意味し、「EO・PO変性」とはエチレンオキシドユニット及びプロピレンオキシドユニットのブロック共重合鎖又はランダム共重合鎖を有することを意味する。
【0052】
ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等のEO又はPO変性ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0053】
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン、及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカエトキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
【0054】
上記化合物のうち、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、FA−321M(日立化成工業株式会社製、商品名)又はBPE−500(新中村化学工業株式会社製、商品名)として商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−1300(新中村化学工業株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0055】
また、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカプロポキシ)フェニル)プロパン、及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0056】
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン、及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14でありプロピレン基の数が2〜14であるポリエチレン・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO・PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0058】
グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート及び2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ)フェニル等が挙げられる。なお、上述したような化合物を得るためのα,β−不飽和カルボン酸としては、例えば(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0059】
また、ウレタンモノマーとしては、例えば、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーと、イソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物や、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、及びEO・PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート等のEO又はPO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0060】
さらに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル等が挙げられる。これらの(B)成分は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
(B)成分は、(B−1)成分以外の光重合性化合物として、前述のようにフィルム形成時の可とう性及び硬化膜の耐クラック性を向上させる観点から、(B−2)ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物又は分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含むことが好ましい。
【0062】
本発明の感光性樹脂組成物における(B−1)成分の含有割合は、フィルム形成時の可とう性及び硬化膜の耐クラック性を向上させる観点から、(B)成分全体の質量を基準として、1〜50質量%であることが好ましく、2〜40質量%であることがより好ましく、3〜30質量%であることがさらに好ましく、5〜20質量%であることが特に好ましい。
【0063】
さらに、本発明の感光性樹脂組成物における(B)成分全体の含有量は、(A)成分及び(B)成分の固形分全量を基準として、15〜50質量%であることが好ましく、20〜45質量%であることがより好ましく、25〜40質量%であることが特に好ましい。この含有量が15質量%未満であると良好な感度及び解像度が得られにくい傾向があり、50質量%を超えると表面のタック性が悪化し、また、良好なビア形状が得られにくい傾向がある。
【0064】
(C)光重合開始剤
本発明で用いる(C)成分としては、例えば、4,4’−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、ベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン、アルキルアントラキノン等のキノン類、ベンゾイン、アルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンゾインアルキルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン等のクマリン系化合物、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製、製品名「IRGACURE−819」)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製,製品名「DAROCUR−TPO」)等のアシルフォスフィンオキサイド系化合物、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(o−ベンゾイルオキシム)(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製、製品名「IRGACURE−OXE01」)、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン1−(o−アセチルオキシム)(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製、製品名「IRGACURE−OXE02」)等のオキシムエステル系化合物、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン(株式会社アデカ製、製品名「N−1717」)等のアクリジン誘導体等が挙げられる。上記2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体の二つのアリール置換基は同一で対称な化合物を与えてもよいし、相違して非対称な化合物を与えてもよい。これらは1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
また、本発明で用いる(C)成分としては,より良好なビア形状を得る観点から、アシルフォスフィンオキサイド系化合物を含むことが好ましく、下記式(3)で表されるビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドを含むことが特に好ましい。ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドは、IRGACURE−819(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製、製品名)として商業的に入手可能である。
【0067】
上記式(3)で表されるビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドを含有することにより、本発明の感光性樹脂組成物は、より透過性に優れ、またソルダーレジストとして使用する場合には、より良好なビア形状を得ることができる。
【0068】
また、本発明の感光性樹脂組成物における(C)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の固形分全量100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.5〜6質量部であることがより好ましく、1〜5質量部であることが特に好ましい。この含有量が0.1質量部未満であると良好な感度及び解像度が得られにくい傾向があり、10質量部を超えると良好なビア形状が得られにくい傾向がある。
【0069】
(D)熱硬化剤
本発明で用いる(D)成分としては、例えば、加熱によりそれ自体が架橋する熱硬化剤、すなわち、熱を加えることにより高分子網目構造を形成する硬化剤や、加熱により(A)成分のカルボキシル基と反応し3次元構造を形成する硬化剤等が挙げられる。
【0070】
加熱によりそれ自体が架橋する熱硬化剤としては、例えば、ビスマレイミド化合物が挙げられる。
【0071】
上記ビスマレイミド化合物としては、例えば、1,6−ビス(N−マレイミジル)−2,2,4−トリメチルヘキサン、m−ジ−N−マレイミジルベンゼン、ビス(4−N−マレイミジルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−N−マレイミジルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−N−マレイミジル2,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス〔(4−N−マレイミジルフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔(4−N−マレイミジル−2−メチル−5−エチルフェニル)プロパン等の各種ビスマレイミド化合物が挙げられる。これらビスマレイミド化合物は単体としても、各種樹脂との変性物としても用いてもよい。これらのうち、硬化膜の耐熱性の観点から、芳香族環を有するビスマレイミド化合物が好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
上記ビスマレイミド化合物は市販品を用いてもよく、BMI−1000、BMI−2000、BMI−3000、BMI−4000、BMI−5100、BMI−7000、BMI−TMH(以上、大和化成工業株式会社製、製品名)等が商業的に入手可能である。
【0073】
また、加熱により(A)成分のカルボキシル基と反応し、3次元構造を形成する硬化剤としては、例えば、ブロックイソシアネート化合物が挙げられる。
【0074】
ブロックイソシアネート化合物としては、アルコール化合物、フェノール化合物、ε−カプロラクタム、オキシム化合物、活性メチレン化合物等のブロック剤によりブロック化されたポリイソシアネート化合物が挙げられる。ブロック剤の解離温度は120〜200℃のものが好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0075】
ブロック化されるポリイソシアネート化合物としては、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン1,5−ジイソシアネート、o−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、2,4−トリレンダイマー等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートが挙げられ、耐熱性の観点からは芳香族ポリイソシアネートが、着色防止の観点からは脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートが好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0076】
上記ブロックイソシアネート化合物は市販品を用いてもよく、スミジュールBL−3175、デスモジュールTPLS−2957、TPLS−2062、TPLS−2957、TPLS−2078、BL4165、TPLS2117、BL1100,BL1265、デスモサーム2170、デスモサーム2265(住友バイエルウレタン株式会社製、商品名)、コロネート2512、コロネート2513、コロネート2520(日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名)、B−830、B−815、B−846、B−870、B−874、B−882(三井武田ケミカル株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【0077】
本発明の感光性樹脂組成物における(D)成分の含有量は、硬化膜の耐熱性、耐クラック性及びHAST耐性を向上させる観点から、(A)成分及び(B)成分の固形分全量を基準として、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜15質量%であることがより好ましく、1〜10質量部であることがさらに好ましい。
【0078】
(E)増感剤
本発明の感光性樹脂組成物は、(E)増感剤をさらに含有することが好ましい。(E)成分としては、例えば、ピラゾリン系、アントラセン系、クマリン系、キサントン系、チオキサントン系、オキサゾール系、ベンゾオキサゾール系、チアゾール系、ベンゾチアゾール系、トリアゾール系、スチルベン系、トリアジン系、チオフェン系、ナフタルイミド系、トリアリールアミン系化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
また、(E)成分としては、より良好なビア形状を得る観点から、チオキサントン系化合物を含むことが好ましい。チオキサントン系化合物としては、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等が挙げられ、下記式(4)で表される2,4−ジエチルチオキサントンを含むことが特に好ましい。2,4−ジエチルチオキサントンは、KAYACURE−DETX(日本化薬株式会社製、製品名)として商業的に入手可能である。
【0081】
上記式(4)で表される2,4−ジエチルチオキサントンを含有することにより、本発明の感光性樹脂組成物は、露光光に対する感度をより高くすることができる。
【0082】
また、本発明の感光性樹脂組成物における(E)成分の含有量は,(A)成分及び(B)成分の固形分全量を基準として,0.01〜10質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%であることがより好ましく、0.1〜2質量%であることが特に好ましい。この含有量が0.01質量%未満であると良好な感度及び解像度が得られにくい傾向があり、10質量%を超えると良好なビア形状が得られにくい傾向がある。
【0083】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、上記構成により奏される効果を阻害しない範囲で、必要に応じて熱重合開始剤を含有してもよい。
【0084】
上記熱重合開始剤としては公知のものを利用することができ、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、ターシャリーブチルパーオキサイド等のアルキルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、パーオキシケタール類、パーオキシエステル類、アルキルパーエステル類等を用いることができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0085】
感光性樹脂組成物が熱重合開始剤を含有する場合、その含有量は、硬化膜の耐熱性、耐クラック性、HAST耐性等の諸特性を向上させる観点から、(A)成分及び(B)成分の固形分全量を基準として,0.01〜10質量%であることが好ましく、0.1〜8質量%であることがより好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0086】
また、感光性樹脂組成物は、硬化膜の耐熱性、耐クラック性、HAST耐性等の諸特性を向上させる目的でフィラーを添加してもよい。
【0087】
フィラーとしては、例えば、シリカ、溶融シリカ、タルク、アルミナ、水和アルミナ、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、アエロジル、炭酸カルシウム等の無機微粒子、粉末状エポキシ樹脂、粉末状ポリイミド粒子等の有機微粒子、粉末状テフロン(登録商標)粒子等が挙げられる。これらのフィラーには予めカップリング処理を施してあってもよい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0088】
感光性樹脂組成物中に上記フィラーの分散させる方法としては、例えば、ニーダー、ボールミル、ビーズミル、3本ロール等公知の混練方法が挙げられる。
【0089】
感光性樹脂組成物がフィラーを含有する場合、その含有量は、硬化膜の耐熱性、耐クラック性、HAST耐性等の諸特性を向上させる観点から、(A)成分及び(B)成分の固形分全量を基準として、1〜50質量%であることが好ましく、3〜40質量%であることがより好ましく、5〜30質量%であることがさらに好ましい。
【0090】
なお,本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、前述の(A)〜(E)成分以外の成分を含有してもよい。このような成分としては、分子内に少なくとも1つのカチオン重合可能な環状エーテル基を有する光重合性化合物(オキセタン化合物等)、カチオン重合開始剤、マラカイトグリーン等の染料、トリブロモフェニルスルホン、ロイコクリスタルバイオレット等の光発色剤、熱発色防止剤、p−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤、無機及び/又は有機フィラーなどが挙げられる。これらは、本発明の目的の達成を阻害しない程度に添加されていればよく、(A)成分及び(B)成分の固形分全量を基準として、各々0.01〜20質量%程度添加することができる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0091】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤又はこれらの混合溶剤に溶解して固形分30〜60質量%程度の溶液としてもよい。この溶液を感光性エレメントの感光層を形成するための塗布液として使用することができる。
【0092】
また、上記の塗布液は、後述の支持体上に塗布・乾燥させて感光性エレメントの感光層を形成させるために使用してもよいが、例えば、金属板の表面、例えば、銅、銅系合金、ニッケル、クロム、鉄、ステンレス等の鉄系合金、好ましくは銅、銅系合金、鉄系合金の表面上に、液状レジストとして塗布して用いてもよい。
【0093】
(感光性エレメント)
次に、本発明の感光性エレメントについて説明する。
図1は,本発明の感光性エレメントの好適な一実施形態を示す模式断面図である。
図1に示した感光性エレメント1は、支持フィルム(支持体)10と、該支持フィルム10上に形成された感光性樹脂組成物からなる感光層20と、を備えるものであり、感光層20上にはそれを被覆する保護フィルム30を更に備えてもよい。
【0094】
上記支持フィルム10としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムを用いることができる。上記支持フィルム10(重合体フィルム)の厚みは、5〜25μmとすることが好ましく、この厚みが5μm未満では、現像前の支持フィルム10を剥離の際に支持フィルム10が破れやすくなる傾向があり、25μmを超えると解像度が低下する傾向がある。なお、支持フィルム10は、一つを感光層20の支持体として、他の一つを感光性樹脂組成物の保護フィルム30として感光層20の両面に積層して使用してもよい。
【0095】
上記保護フィルム30としては、例えば,ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムを用いることができる。市販のものとしては、例えば、王子製紙株式会社製の製品名「アルファンMA−410」、「E−200C」、信越フィルム株式会社製等のポリプロピレンフィルム、帝人株式会社製の製品名「PS−25」等のPSシリーズなどのポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられるが、これらに限られたものではない。上記保護フィルムの厚みは、1〜100μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましく、5〜30μmであることが更に好ましく、15〜30μmであることが特に好ましい。この厚みが1μm未満では、ラミネートの際に保護フィルムが破れる傾向があり、100μmを超えると廉価性に劣る傾向がある。なお、保護フィルム30は、感光層20及び支持フィルム10の接着力よりも、感光層20及び保護フィルム30の接着力の方が小さいものが好ましく、また、低フィッシュアイのフィルムが好ましい。フィッシュアイとは、材料を熱溶融し、混練、押し出し、2軸延伸、キャスティング法等によりフィルムを製造する際に、材料の異物、未溶解物、酸化劣化物等がフィルム中に取り込まれたものである。
【0096】
上記感光層20は、本発明の感光性樹脂組成物を先に述べたような溶剤に溶解して固形分30〜60質量%程度の溶液(塗布液)とした後に、かかる溶液(塗布液)を支持フィルム10上に塗布して乾燥することにより形成することが好ましい。上記塗布は、例えば、ロールコータ、コンマコータ、グラビアコータ、エアーナイフコータ、ダイコータ、バーコータ等を用いた公知の方法で行うことができる。また、上記乾燥は70〜150℃、5〜30分間程度で行うことができる。感光性樹脂組成物中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止する点から、感光性樹脂組成物の総量に対して2質量%以下とすることが好ましい。上記感光層20の厚みは、用途により異なるが、乾燥後の厚みで1〜100μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましく、10〜40μmであることが特に好ましい。この厚みが1μm未満では、工業的に塗工困難な傾向があり、100μmを超えると本発明の効果が小さくなり、接着力、解像度が低下する傾向がある。
【0097】
なお、上記感光層20は、波長365nmの紫外線に対する吸光度が0.1〜3であることが好ましく、0.15〜2であることがより好ましく、0.2〜1.5であることが特に好ましい。この吸光度は、0.1未満では感度が劣る傾向があり、3を超えると密着性が劣る傾向がある。上記吸光度は、UV分光計により測定することができ、上記UV分光計としては、228A型(株式会社日立製作所製、製品名)Wビーム分光光度計等が挙げられる。
【0098】
上記感光性エレメント1は、更にクッション層、接着層、光吸収層、ガスバリア層等の中間層等を有していてもよい。また、得られた感光性エレメント1はシート状、又は巻芯にロール状に巻き取って保管することができる。なお、この際支持体が最も外側になるように巻き取られることが好ましい。上記ロール状の感光性エレメント1ロールの端面には、端面保護の見地から端面セパレータを設置することが好ましく、耐エッジフュージョンの見地から防湿端面セパレータを設置することが好ましい。また、梱包方法として、透湿性の小さいブラックシートに包んで包装することが好ましい。上記巻芯としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)等のプラスチックなどが挙げられる。
【0099】
(レジストパターンの形成方法)
次に、本発明の感光性エレメント1を用いたレジストパターンの形成方法について説明する。
【0100】
レジストを形成すべき基板上に、上述した感光性樹脂組成物からなる感光層を形成する。上記感光性エレメント1の保護フィルム30を感光層20から剥離させ、露出した感光層20の面を、ラミネート等により、基板上に形成された回路パターンを有する導体層を覆うように密着させる。密着性、追従性向上の観点から減圧下で積層する方法も好ましい。なお、感光性樹脂組成物は、感光性樹脂組成物のワニスをスクリーン印刷法やロールコータにより塗布する方法等の公知の方法により基板上に塗布することもできる。
【0101】
次いで、上記感光層に所定のパターン形状を有するマスクパターンを通して活性光線を照射し、感光層の所定領域を光硬化させる(マスク露光法)。この際、感光層20上に存在する支持フィルム10が活性光線に対して透明である場合には、支持フィルム10を通して活性光線を照射することができ、支持フィルム10が遮光性である場合には、支持フィルム10を除去した後に感光層20に活性光線を照射することができる。
【0102】
上記活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、青紫色レーザ等の半導体レーザ、YAGレーザ等の固体レーザなどの紫外線を有効に放射するものを用いることができる。また、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射するものも用いることができる。
【0103】
更に、感光層上に支持体が存在している場合にはその支持体を除去した後、ウエット現像又はドライ現像で光硬化されていない部分(未露光部)を除去して現像することにより、レジストパターンを形成することができる。
【0104】
上記ウエット現像の場合、現像液としては、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等の安全かつ安定であり操作性が良好なものが、感光性樹脂組成物の種類に対応して用いられる。また、現像方法としては、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法が適宜採用される。
【0105】
上記アルカリ性水溶液の塩基としては、アルカリ金属、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムの水酸化物である水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等、アルカリ金属、アンモニウム等の炭酸塩又は重炭酸塩である炭酸アルカリ又は重炭酸アルカリ、アルカリ金属のリン酸塩であるリン酸ナトリウム、リン酸カリウム等、アルカリ金属のピロリン酸塩であるピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等、安全かつ安定であり、操作性が良好なものが用いられる。
【0106】
また、このようなアルカリ性水溶液としては、例えば、0.1〜5質量%炭酸ナトリウムの希薄溶液,0.1〜5質量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%水酸化ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%四ホウ酸ナトリウムの希薄溶液が好ましく、そのpHは9〜11の範囲とすることが好ましい。また、このようなアルカリ性水溶液の温度は感光層20の現像性に合わせて調節され、20〜50℃とすることが好ましい。更に、上記アルカリ性水溶液中には、現像を促進させるために界面活性剤、消泡剤等の少量の有機溶剤を混入させてもよい。
【0107】
上記水系現像液としては、水及びアルカリ性水溶液若しくは一種以上の有機溶剤とからなるものが用いられる。ここでアルカリ性水溶液の塩基としては、上述したもの以外に、例えば、ホウ砂、メタケイ酸ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、エタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ジアミノプロパノール−2、モルホリンが挙げられる。このような水系現像液のpHは、現像処理が充分にできる範囲でできるだけ小さくすることが好ましく、pH8〜12であることが好ましく、pH9〜10であることがより好ましい。
【0108】
上記有機溶剤としては、例えば、アセトン、酢酸エチル、炭素数1〜4のアルコキシ基をもつアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが用いられる。このような有機溶剤の濃度は、通常、2〜90質量%であることが好ましい。また、このような有機溶剤の温度は、現像性にあわせて調節することができる。このような有機溶剤は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。単独で用いる有機溶剤系現像液としては、例えば、1,1,1−トリクロロエタン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、γ−ブチロラクトンが挙げられる。更に、上記アルカリ性水溶液中には、現像を促進させるために界面活性剤、消泡剤等の少量の有機溶剤を混入させてもよい。上記有機溶剤は、引火防止のため1〜20質量%の範囲で水を添加することが好ましい。
【0109】
本発明のレジストパターンの形成方法においては、必要に応じて、上述した2種類以上の現像方法を併用して用いてもよい。現像の方式には、ディップ方式、バトル方式、スプレー方式、高圧スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等があり、高圧スプレー方式が解像度向上のためには最も適している。現像後に行われる金属面のエッチングには、例えば、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液、アルカリエッチング溶液等を用いることができる。
【0110】
(ソルダーレジスト)
次に、本発明の感光性エレメント1を用いた本発明のソルダーレジストの好適な実施形態について説明する。上記現像工程の終了後には、レジストパターンの半田耐熱性、耐薬品性等を向上させる目的で、レジストパターンに対し、高圧水銀ランプによる紫外線照射や加熱を更に行うことが好ましい。紫外線を照射する場合には、必要に応じてその照射量を調整することが好ましく、例えば0.2〜10J/cm
2程度の照射量で照射を行うことができる。また、レジストパターンを加熱する場合は、100〜170℃程度の範囲で15〜90分程度の条件で行うことが好ましい。
【0111】
紫外線照射及び加熱は、両方を行ってもよい。この場合、両方を同時に行ってもよく、いずれか一方を実施した後に他方を実施してもよい。紫外線照射と加熱とを同時に行う場合は、半田耐熱性、耐薬品性をより良好に付与する観点から、60〜150℃に加熱することが好ましい。
【0112】
このようにして形成されたソルダーレジストは、例えば、基板に対し、めっきやエッチングを施す場合に、めっきレジストやエッチングレジストとして用いられる他、そのまま基板上に残されて、配線等を保護するための保護膜(ソルダーレジスト)として用いられる。
【0113】
また、上述の露光工程において、前記導体層の所定部分が未露光となるパターンを有するマスクを用いて露光を行った場合、これを現像することにより、未露光部分が除去され、基板上に形成された導体層の一部が露出した、開口パターンを有するレジストが得られる。その後、上述のソルダーレジストを形成するのに必要な処理を行うことが好ましい。
【0114】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【実施例】
【0115】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0116】
(実施例1〜2及び比較例1〜2)
(感光性樹脂組成物の調製)
表1に、実施例及び比較例で用いた、(A)〜(E)成分及び溶剤の配合量(質量部)を示す。表1に示す組成に基づき、感光性樹脂組成物の溶液を調製した。
【0117】
【表1】
【0118】
なお、表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
(A−1):メタクリル酸/メタクリル酸メチル/アクリル酸エチルの共重合体(12/58/30(質量比)、重量平均分子量70000、酸価78mgKOH/g)
(b1):ビスフェノキシフルオレンジメタクリレート(オキシエチレン基の繰り返し総数;m+n=1)(大阪ガス化学株式会社製、製品名「EA−200」)
(b2)ビスフェノキシフルオレンジメタクリレート(オキシエチレン基の繰り返し総数;m+n=4)(大阪ガス化学株式会社製、製品名「EA−1000」)
FA−321M:2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン(日立化成工業株式会社製、製品名「FA−321M」)
I−819:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製、製品名「IRGACURE−819」)
DETX:2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬株式会社製、製品名「KAYACURE−DETX」)
BL−3175SN:ブロックイソシアネート(住化バイエルウレタン株式会社製、製品名「デスモジュールBL−3175SN」)
【0119】
(感光性エレメントの作製)
得られた感光性樹脂組成物の溶液を、支持体である16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人株式会社製、製品名「HTF01」)上に均一に塗布し、80℃及び125℃の熱風対流式乾燥機(送り速度:3.1m/min、乾燥炉の長さ:各3m)で乾燥して感光性樹脂組成物からなる感光層を形成させた。感光層の乾燥後の膜厚は30μmであった。続いて、感光層を覆う保護フィルムとしてポリエチレンフィルム(帝人株式会社製、製品名「NF−15」)を貼り付けて、感光性エレメントを得た。
【0120】
(評価用積層体の作製)
ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、両面に銅箔層を有する日立化成工業株式会社製、製品名「MCL−E−679」)の銅表面を、CZ10号処理機(メック株式会社製)を用いて、処理温度35℃、スプレー圧0.2MPa、エッチング量2.0μmの条件で化学粗化した。得られた銅張積層板の銅表面上に、上記感光性エレメントのポリエチレンフィルムを剥離し、プレス式真空ラミネータ(株式会社名機製作所製、製品名「MVLP−500」)を用いて、プレス熱板温度70℃、真空引き時間20秒、ラミネートプレス時間30秒、気圧4hPa以下、圧着圧力0.4MPaの条件の下、熱圧着し、評価用積層体を得た。
【0121】
(感光性エレメントの評価)
実施例1〜2及び比較例1〜2の感光性エレメントをそれぞれ用いて以下の各試験を行い、各感光性エレメントを用いた場合の、感度、ガラス転移温度(Tg)、アルカリ現像性、ビア形状、耐クラック性及びHAST耐性について評価した。結果を表2に示した。
【0122】
<感度>
評価用積層体上に、濃度領域0.00〜2.00、濃度ステップ0.05、タブレット(矩形)の大きさが20mm×187mmで、各ステップ(矩形)の大きさが3mm×12mmである41段ステップタブレットを有するフォトツールをネガとして密着させ、該41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が14となるエネルギー量で、株式会社オーク製作所製のEXM−1201型露光機を使用して露光を行った。また、残存ステップ段数が14となる露光量を感光層の感度(単位;mJ/cm
2)とした。この数値が低いほど光感度が高いことを示す。
【0123】
<ガラス転移温度(Tg)>
各感光性エレメントに対して、上記と同様の条件で露光し、感光層を硬化して支持体上に硬化膜を形成させた。該硬化膜のガラス転移温度(Tg)をTMA(セイコーインスツルメンツ株式会社製)を用いて、昇温速度10℃/min、測定範囲25〜350℃、サンプル幅2mm、加重5gの条件で測定した。
【0124】
<アルカリ現像性>
上記露光条件で露光した評価用積層体を、常温(25℃)で1時間静置した後、この積層体上のポリエチレンテレフタレートを剥離し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で、最小現像時間の2倍の時間でスプレー現像を行った。これにより、感光性樹脂組成物層が硬化されてなるパターンを形成した。最小現像時間とは、未露光部が現像液によって除去されるのに必要な最小限の時間である。この最小現像時間(MD)が短いものほど、アルカリ現像性に優れていることを示す。
【0125】
<ビア形状>
直径30μm〜200μmの円形の開口パターンを有するフォトツールを評価用ネガとして、上記露光条件で露光を行った。続いて、上記現像条件で現像後、株式会社オーク製作所製の紫外線照射装置を使用して1J/cm
2のエネルギー量で紫外線照射を行い、更に160℃で60分間加熱処理を行うことにより、円形の開口部が形成されたソルダーレジストを有する評価用基板を得た。
【0126】
上記評価用基板について、ソルダーレジストに形成された直径80μmの円形開口部の形状(ビア形状)を、走査型電子顕微鏡(株式会社キーエンス製、製品名「VE−8800」)を用いて観察した。
図2中、(a)はビア形状が「順テーパ」形であるソルダーレジストの一例を示す模式断面図であり、(b)はビア形状が「ストレート」形であるソルダーレジストの一例を示す模式断面図であり、(c)はビア形状が「アンダーカット」形であるソルダーレジストの一例を示す模式断面図であり、(d)はビア形状が「オーバーハング」形であるソルダーレジストの一例を示す模式断面図である。
図2において、2はソルダーレジストを備える基板、21は導体層、22はガラスエポキシ基材、23は開口部を示す。ビア形状は、半田の密着性の観点から、断面形状が
図2(a)に示すような「順テーパ」形、又は(b)に示すような「ストレート」形であることが望ましい。現像時にパターンのレジスト底部が溶出してできる、
図2(c)に示す「アンダーカット」や、パターンのレジスト上部が現像残りでせり出す、(d)に示す「オーバーハング」のような逆テーパ形状であると、半田付けの際、半田の密着性が悪くなる可能性があるため、好ましくない。
【0127】
<耐クラック性>
上記と同様にして作製したソルダーレジストを有する評価用基板に対し、−65℃の大気中に15分間晒した後、180℃/分の昇温速度で昇温し、次いで、150℃の大気中に15分間晒した後、180℃/分の降温速度で降温する熱サイクルによる処理を500回繰り返す試験を行った。試験後、評価用基板のソルダーレジスト(永久レジスト膜)のクラック及び剥離程度を光学顕微鏡(株式会社キーエンス製、製品名「VHX−100」)により観察し、次の基準で評価した。
「○」:ソルダーレジストのクラック及び剥離が認められないもの
「×」:ソルダーレジストのクラック及び剥離が認められたもの
【0128】
<HAST耐性>
18μm厚の銅箔をガラスエポキシ基材に積層したプリント配線板用基板(日立化成工業株式会社製、製品名「MCL−E−679」)の銅表面にエッチングを施し、ライン/スペースが28μm/32μmであり、互いのラインが接触しておらず、互いに対向した同一面上の櫛型電極を形成させ、これを評価用配線板とした。
【0129】
この評価用配線板における櫛型電極上に、上述した評価用積層体と同様にして、レジストの硬化物からなるソルダーレジストを形成し、これを耐電食性評価用基板とした。この耐電食性評価用基板を、130℃、85%、50Vの条件で超加速高温高湿寿命試験(HAST)槽内に100時間晒した。試験後、各評価用基板のソルダーレジストにおけるマイグレーションの発生の程度を、光学顕微鏡(株式会社キーエンス社製、製品名「VHX−100」)により観察し、次の基準で評価した。マイグレーションとは、銅電極からソルダーレジストへ銅が溶出し、析出することにより、電極周辺のソルダーレジストの変色や絶縁抵抗の低下が起こる現象である。
「○」:ソルダーレジストにおけるマイグレーションの発生を確認できなかったもの
「×」:ソルダーレジストにおけるマイグレーションの発生を確認できたもの
【0130】
【表2】
【0131】
(A)〜(D)成分を含有した本発明の感光性樹脂組成物を用いた実施例1、2の膜は、表2に示されるように、ビア形状、耐クラック性及びHAST耐性が十分に優れていた。これに対し、(B−1)成分のない比較例1は、ビア形状、耐クラック性及びHAST耐性の特性について、実施例よりも劣っており、(D)成分のない比較例2は、Tg、耐クラック性及びHAST耐性の特性に劣っていた。