(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物は(a)平均粒径50〜500μmの塩化ビニル樹脂を含有する。当該(a)平均粒径50〜500μmの塩化ビニル樹脂は、塩化ビニルの単独重合体の他、塩化ビニル単位を好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上含有する共重合体を含む。塩化ビニル共重合体の共単量体の具体例は、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類;塩化アリル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、三フッ化塩化エチレンなどのハロゲン化オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類;イソブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アリル−3−クロロ−2−オキシプロピルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのアリルエーテル類;アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジエチル、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸、そのエステルまたはその酸無水物類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類;アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどのアクリルアミド類;アリルアミン安息香酸塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどのアリルアミンおよびその誘導体類;などである。以上に例示される単量体は、塩化ビニルと共重合可能な単量体の一部に過ぎず、近畿化学協会ビニル部会編「ポリ塩化ビニル」日刊工業新聞社(1988年)第75〜104頁に例示されている各種単量体が使用され得る。これらの単量体の1種又は2種以上が使用され得る。上記(a)平均粒径50〜500μmの塩化ビニル樹脂は、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、塩素化ポリエチレンなどの樹脂に、(1)塩化ビニルまたは(2)塩化ビニルと前記される共重合可能な単量体がグラフト重合された樹脂も含む。
【0011】
上記(a)平均粒径50〜500μmの塩化ビニル樹脂は、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法など、従来から知られているいずれの製造法によっても製造され得る。特に、懸濁重合法により製造された塩化ビニル樹脂が好ましい。
【0012】
上記(a)平均粒径50〜500μmの塩化ビニル樹脂の平均重合度は1000以上であり、好ましくは1500〜3000である。上記(a)平均粒径50〜500μmの塩化ビニル樹脂の平均重合度が1000より小さいと、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性が低くなる。なお、平均重合度は、JIS K 6720−2に準拠して測定される。
【0013】
上記(a)平均粒径50〜500μmの塩化ビニル樹脂のより好ましい平均粒径は50〜250μm、更に好ましい平均粒径は100〜200μmである。塩化ビニル樹脂の平均粒径が小さすぎる場合、塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性が低くなる。一方、塩化ビニル樹脂の平均粒径が大きすぎる場合、上記塩化ビニル樹脂組成物をパウダースラッシュ成形してなる成形体の平滑性がなくなる。なお、平均粒径は、JIS Z 8801に規定されたJIS標準篩による篩い分け法に準拠して測定される。
【0014】
本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物は、(b)
アジピン酸ポリエステル系可塑剤
及びピロメリット酸エステル系可塑剤を含有する。
本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物が含有する
アジピン酸ポリエステル系可塑剤は、アジピン酸と、グリコール類とのポリエステル化により得られるポリマーである。当該
アジピン酸ポリエステル系可塑剤の分子量は800〜4000程度である。
アジピン酸ポリエステル系可塑剤の分子量が大きいと、熱収縮抑制効果が大きくなるが、可塑剤吸収性と取扱い性の観点から、当該分子量は決定される。
【0015】
本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物が含有するピロメリット酸エステル系可塑剤は、ピロメリット酸と一価アルコールとのエステル化合物である。当該ピロメリット酸エステル系可塑剤の具体例は、ピロメリット酸テトラヘキシル、ピロメリット酸テトラオクチル、ピロメリット酸テトラ−n−アルキル(C7〜C9)エステル等である。
【0016】
当該
アジピン酸ポリエステル系可塑剤
及びピロメリット酸エステル系可塑剤の添加量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して
115〜150質量部である。当該
アジピン酸ポリエステル系可塑剤
及びピロメリット酸エステル系可塑剤の添加量が少なすぎると、表皮材の成形が困難になる。一方、当該
アジピン酸ポリエステル系可塑剤
及びピロメリット酸エステル系可塑剤の添加量が多すぎると、ブリードアウトが発生したり、塩化ビニル樹脂組成物の粉体流動性が低下するおそれがある。
更に、アジピン酸ポリエステル系可塑剤の添加量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して57.5〜75質量部、ピロメリット酸エステル系可塑剤の添加量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して57.5〜75質量部である。
【0017】
本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記2つの可塑剤以外の可塑剤を含有し得る。上記2つの可塑剤以外の可塑剤の具体例は、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化植物油;ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジフェニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジノニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレートなどのフタル酸誘導体;ジメチルイソフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)イソフタレート、ジイソオクチルイソフタレートなどのイソフタル酸誘導体;ジ−(2−エチルヘキシル)テトラヒドロフタレート、ジ−n−オクチルテトラヒドロフタレート、ジイソデシルテトラヒドロフタレートなどのテトラヒドロフタル酸誘導体、ジ−n−ブチルアジペート、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ジイソノニルアジペートなどのアジピン酸誘導体;ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジ−n−ヘキシルアゼレートなどのアゼライン酸誘導体;ジ−n−ブチルセバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、ジイソデシルセバケート、ジ−(2−ブチルオクチル)セバケートなどのセバシン酸誘導体;ジ−n−ブチルマレエート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジ−(2−エチルヘキシル)マレエートなどのマレイン酸誘導体;ジ−n−ブチルフマレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フマレートなどのフマル酸誘導体;トリ−(2−エチルヘキシル)トリメリテート、トリ−n−オクチルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテート、トリイソオクチルトリメリテート、トリ−n−ヘキシルトリメリテート、トリイソノニルトリメリテートなどのトリメリット酸誘導体;トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−(2−エチルヘキシル)シトレートなどのクエン酸誘導体;モノメチルイタコネート、モノブチルイタコネート、ジメチルイタコネート、ジエチルイタコネート、ジブチルイタコネート、ジ−(2−エチルヘキシル)イタコネートなどのイタコン酸誘導体;ブチルオレエート、グリセリルモノオレエート、ジエチレングリコールモノオレエートなどのオレイン酸誘導体;メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、グリセリルモノリシノレート、ジエチレングリコールモノリシノレートなどのリシノール酸誘導体;n−ブチルステアレート、ジエチレングリコールジステアレートなどのステアリン酸誘導体;ジエチレングリコールモノラウレート、ジエチレングリコールジペラルゴネート、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルなどのその他の脂肪酸誘導体;トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェートなどのリン酸誘導体;ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−(2−エチルブチレート)、トリエチレングリコールジ−(2−エチルヘキソエート)、ジブチルメチレンビスチオグリコレートなどのグリコール誘導体;グリセロールモノアセテート、グリセロールトリアセテート、グリセロールトリブチレートなどのグリセリン誘導体;エポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソデシル、エポキシトリグリセライド、エポキシ化オレイン酸オクチル、エポキシ化オレイン酸デシルなどのエポキシ誘導体;などのいわゆる一次可塑剤;ならびに、塩素化パラフィン;トリエチレングリコールジカプリレートなどのグリコールの脂肪酸エステル;ブチルエポキシステアレート;フェニルオレエート;ジヒドロアビエチン酸メチル;などのいわゆる二次可塑剤;などである。1種又は2種以上の可塑剤が使用できる。二次可塑剤を用いる場合、それと等質量以上の一次可塑剤を好ましくは併用する。上記2つの可塑剤以外の可塑剤の添加量は、上記(a)平均粒径50〜500μmの塩化ビニル樹脂100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0018】
本発明の粉体成形用塩化ビニル系樹脂組成物は、水酸基を有する飽和脂肪酸を含有し、所望により金属石鹸を含有し得る。水酸基を有する飽和脂肪酸の具体例は、ヒドロキシステアリン酸、ヒドロキシミリスチン酸、ヒドロキシラウリン酸等である。金属石鹸の具体例は、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸バリウム、2−エチルヘキサン酸亜鉛、リシノール酸バリウム、リシノール酸亜鉛などである。金属石鹸としては、脂肪酸の金属塩が好ましく、脂肪酸の多価金属塩がより好ましく、脂肪酸の亜鉛塩が更に好ましい。1種又は2種以上の水酸基を有する飽和脂肪酸、所望により金属石鹸を配合する。水酸基を有する飽和脂肪酸、所望により配合する金属石鹸の
合計配合量は特定の範囲に限定されない。好ましい当該配合量は、(a)平均粒径50〜500μmの塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.1〜3質量部である。
【0019】
本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物は、ハイドロタルサイトを含有し得る。ハイドロタルサイトは、一般式 [Mg
1-xAl
x(OH)
2]
x+ [(CO
3)
x/2・mH
2O]
x-で表される不定比化合物で、プラスに荷電した基本層 [Mg
1-xAl
x(OH)
2]
x+と、マイナスに荷電した中間層 [(CO
3)
x/2・mH
2O]
x-とからなる層状の結晶構造を有する無機物質である。ここで、xは0より大で0.33以下の範囲の数である。天然のハイドロタルサイトはMg
6Al
2(OH)
16CO
3・4H
2Oである。合成されたハイドロタルサイトMg
4.5Al
2(OH)
13CO
3・3.5H
2Oが市販されている。合成ハイドロタルサイトの合成方法は、特公昭61−174270号公報に記載されている。また、ハイドロタルサイトは、過塩素酸処理されたものであっても良い。
ハイドロタルサイトの配合量は特定の範囲に限定されない。好ましい当該配合量は、(a)平均粒径50〜500μmの塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.5〜10質量部である。
【0020】
本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物は、ゼオライトを安定剤として含有し得る。ゼオライトは、一般式
M
x/n・[(AlO
2)
x・(SiO
2)
y]・zH
2O
(式中のMは原子価nの金属イオン、x+yは単子格子当たりの四面体数、zは水のモル数である)で表されるものであって、該式中のMの種類としてはNa、Li、Ca、Mg、Znなどの一価又は二価の金属及びこれらの混合型が挙げられる。
ゼオライトの配合量は特定の範囲に限定されない。好ましい当該配合量は、(a)平均粒径50〜500μmの塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部である。
【0021】
本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物は、ダスティング剤(粉体流動性改良剤)を含有し得る。ダスティング剤の具体例は、炭酸カルシウム、タルク、酸化アルミニウムなどの無機微粒子;塩化ビニル系樹脂微粒子、ポリアクリロニトリル系樹脂微粒子、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂微粒子、ポリスチレン系樹脂微粒子、ポリエチレン系樹脂微粒子、ポリプロピレン系樹脂微粒子、ポリエステル系樹脂微粒子、ポリアミド系樹脂微粒子などの有機微粒子である。特に、平均粒径が10〜100nmの無機微粒子、平均粒径が0.1〜10μmの塩化ビニル系樹脂微粒子が好ましい。ダスティング剤である塩化ビニル系樹脂微粒子を構成する塩化ビニル系樹脂の重合度は500〜2000であり、好ましくは800〜1500である。ダスティング剤である塩化ビニル系樹脂微粒子の添加量は特定の範囲に限定されない。当該添加量は、好ましくは上記(a)平均粒径50〜500μmの塩化ビニル樹脂100質量部に対して30質量部以下であり、更に好ましくは25質量部以下である。
【0022】
本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物は、着色剤、耐衝撃性改良剤、過塩素酸化合物(過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム等)、酸化防止剤、防黴剤、難燃剤、帯電防止剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、発泡剤、β−ジケトン類等の添加剤を含有し得る。
【0023】
着色剤の具体例は、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ポリアゾ縮合顔料、イソインドリノン系顔料、銅フタロシアニン系顔料、チタンホワイト、カーボンブラックである。1種又は2種以上の顔料が使用される。キナクリドン系顔料は、p−フェニレンジアントラニル酸類が濃硫酸で処理されて得られ、黄みの赤から赤みの紫の色相を示す。キナクリドン系顔料の具体例は、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンバイオレットである。ペリレン系顔料は、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸無水物と芳香族第一級アミンの縮合反応により得られ、赤から赤紫、茶色の色相を示す。ペリレン系顔料の具体例は、ペリレンレッド、ペリレンオレンジ、ペリレンマルーン、ペリレンバーミリオン、ペリレンボルドーである。ポリアゾ縮合顔料は、アゾ色素が溶剤中で縮合されて高分子量化されて得られ、黄、赤系顔料の色相を示す。ポリアゾ縮合顔料の具体例は、ポリアゾレッド、ポリアゾイエロー、クロモフタルオレンジ、クロモフタルレッド、クロモフタルスカーレットである。イソインドリノン系顔料は、4,5,6,7−テトラクロロイソインドリノンと芳香族第一級ジアミンの縮合反応により得られ、緑みの黄色から、赤、褐色の色相を示す。イソインドリノン系顔料の具体例は、イソインドリノンイエローである。銅フタロシアニン系顔料は、フタロシアニン類に銅を配位した顔料で、黄みの緑から鮮やかな青の色相を示す。銅フタロシアニン系顔料の具体例は、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルーである。チタンホワイトは、二酸化チタンからなる白色顔料で、隠蔽力が大きく、アナタース型とルチル型がある。カーボンブラックは、炭素を主成分とし、酸素、水素、窒素を含む黒色顔料である。カーボンブラックの具体例は、サーマルブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、ボーンブラックである。着色剤の添加量は、上記(a)平均粒径50〜500μmの塩化ビニル樹脂100質量部に対し、好ましくは1〜20質量部である。
【0024】
耐衝撃性改良剤の具体例は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体への塩化ビニルグラフト共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、クロロスルホン化ポリエチレンなどである。1種又は2種以上の耐衝撃性改良剤が使用できる。耐衝撃性改良剤は、塩化ビニル樹脂組成物中で微細な弾性粒子の不均一相となって分散する。当該弾性粒子にグラフト重合した鎖及び極性基が(a)平均粒径50〜500μmの塩化ビニル樹脂と相溶し、塩化ビニル樹脂組成物の耐衝撃性が向上する。
【0025】
酸化防止剤の具体例は、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などである。
防黴剤の具体例は、脂肪族エステル系防黴剤、炭化水素系防黴剤、有機窒素系防黴剤、有機窒素硫黄系防黴剤などである。
【0026】
難燃剤の具体例は、塩素化パラフィン等のハロゲン系難燃剤;リン酸エステル等のリン系難燃剤;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機水酸化物;などである。
帯電防止剤の具体例は、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル類、スルホン酸塩類等のアニオン系帯電防止剤;脂肪族アミン塩類、第四級アンモニウム塩類のカチオン系帯電防止剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル類等のノニオン系帯電防止剤;などである。
【0027】
充填剤の具体例は、シリカ、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、クレーなどである。
光安定剤の具体例は、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ニッケルキレート系等の紫外線吸収剤、ヒンダートアミン系光安定剤などである。
【0028】
発泡剤の具体例は、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N′−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、p−トルエンスルホニルヒドラジド、p,p−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等のスルホニルヒドラジド化合物などの有機発泡剤;フロンガスや炭酸ガス、水、ペンタン等の揮発性炭化水素化合物、これらを内包したマイクロカプセルなどの、ガス系の発泡剤;などである。
【0029】
β−ジケトン類は、本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を粉体成形して得られる塩化ビニル樹脂成形体の初期色調の変動をより効果的に抑えるために用いられる。β−ジケトン類の具体例は、ジベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、パルミトイルベンゾイルメタンなどである。これらのβ−ジケトン類は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
β−ジケトン類の配合量は特定の範囲に限定されない。好ましい当該配合量は、(a)平均粒径50〜500μmの塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.1〜3質量部である。
【0030】
上記(a)平均粒径50〜500μmの塩化ビニル樹脂、(b)上記式(1)で示されるトリメリテート系可塑剤、(c)上記式(2)で示されるフタル酸ジエステル系可塑剤と必要に応じて添加されるその他の添加剤の混合方法は限定されない。好ましい混合方法はドライブレンドである。ドライブレンドには、ヘンシェルミキサーを使用することが好ましい。また、ドライブレンド時の温度は、好ましくは50〜100℃、より好ましくは70〜80℃である。
【0031】
本発明の塩化ビニル樹脂成形体は、本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物をパウダースラッシュ成形(本発明においては、「粉体成形」ともいう。)して得る。パウダースラッシュ成形時の金型温度は、好ましくは200〜300℃、より好ましくは220〜280℃である。本発明の塩化ビニル樹脂成形体は、上記温度範囲の金型に本発明の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を振りかけて5〜30秒間放置し、その後、余剰の当該組成物を振り落とし、さらに30秒〜3分間放置した後、金型を10〜60℃に冷却し、本発明の塩化ビニル樹脂成形体を金型から脱型することで、好適に得ることができる。本発明の塩化ビニル樹脂成形体は、自動車内装材、例えばインスツルメントパネル、ドアトリム等の表皮として好適に用いられる。
【0032】
本発明の塩化ビニル樹脂成形体と発泡ポリウレタン成形体を積層して、本発明の積層体を得る。積層方法は、塩化ビニル樹脂成形体と、発泡ポリウレタン成形体とを別途作製した後に、熱融着あるいは熱接着又は公知の接着剤などを用いることにより貼り合わせる方法;塩化ビニル樹脂成形体上にて、発泡ポリウレタン成形体の原料となるイソシアネート類とポリオール類などを反応させて重合を行うと共に、公知の方法によりポリウレタンの発泡を行うことにより積層する方法;などが挙げられる。後者の方が、工程が簡素であり、かつ、種々の形状の積層体を得る場合においても、塩化ビニル樹脂成形体と発泡ポリウレタン成形体との接着を確実に行うことができるのでより好適である。
本発明の積層体は、自動車内装材、例えばインスツルメントパネル、ドアトリム等として好適に用いられる。
【0033】
本発明の積層体は、発泡ポリウレタン成形体がリン酸エステル類を含有するものであることが好ましい。
リン酸エステル類は、リン酸エステル類の骨格、即ち、−O−P−O−結合を少なくとも含む化合物であり、リン酸エステル、亜リン酸エステル、ポリリン酸エステルなどを広く含むものである。例としては、トリメチルフォスフェート、イソプロピルフェニルホスフェート、トリス(クロロエチル)フォスフェート、トリフェニルフォスファイト、トリストリデシルフォスファイト、ジブチルハイドロジェンフォスファイトなどが挙げられる。
前記発泡ポリウレタン成形体に前記リン酸エステル類を含有させる場合、その方法は、好ましくは、前記発泡ポリウレタン成形体の原料となるイソシアネート類及びポリオール類などとともに前記リン酸エステル類を含有させた後、重合反応及び発泡を行わせることが好ましい。前記発泡ポリウレタン成形体に前記リン酸エステル類を含有させる場合、その含有量は、発泡ウレタン成形体100質量部に対し、5〜15質量部が好ましく、8〜12質量部がより好ましい。リン酸エステル類の含有量が上記の好ましい範囲内にあることにより、塩化ビニル樹脂成形体からなる表皮の熱老化を改善することが可能であり、また、発泡ポリウレタン成形体を製造する際にウレタン樹脂の発泡を効率良く行うことができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明が詳細に説明されるが、本発明はこれらの実施例に限定されない。各種の物性は以下のように測定された。
【0035】
実施例1〜
2、参考例1〜6及び比較例1〜
3
表1に示す配合成分のうち可塑剤を除く成分をヘンシェルミキサーに入れて混合し、混合物の温度が80℃に上昇した時点で可塑剤を添加後、ドライアップ(可塑剤が塩化ビニル樹脂粒子に吸収されて、上記混合物がさらさらになった状態をいう。)し、その後、組成物が70℃以下に冷却された時点でダスティング剤であるペースト塩化ビニル樹脂を添加し、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を調製した。その後、粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物を250℃に加熱したシボ付き金型に振りかけ、10秒間放置して溶融させ、余剰の当該組成物を振り落とした。当該組成物を金型に振りかけてから60秒経過した時点で金型を冷却水により冷却し、金型温度が40℃まで冷却された時点で205mm×298mm×1mmの塩化ビニル樹脂成形シートを金型から脱型した。成形シートを210mm×300mm×10mmの金型の中に敷き、変性MDI系イソシアナート(日本ポリウレタン工業(株)製CEI−264)40質量部及びポリエーテルポリオール(三洋化成工業(株)製サンフォームRC−3032、トリエチレンジアミン1.0質量%、水1.6質量%含有)80質量部を含み、リン酸トリアリールイソプロピル化物(味の素ファインテクノ(株)製レオフォス65)14.1質量部を含む(実施例1〜3、5〜7及び比較例1〜3)又は含まない(実施例4)混合物を当該成形シートの上に注ぎ、金型に305mm×395mm×2mmのアルミ板で蓋をし、金型を密閉した。10分後、1mm厚の塩化ビニル樹脂成形シートからなる表皮に9mm厚、密度0.18g/cm
3の発泡ポリウレタン成形体が裏打ちされた試料を金型から取り出した。但し、ポリエステル系可塑剤の含有量が多すぎる比較例2の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物はパウダーにならず、当該組成物のパウダースラッシュ成形は不可能だった。また、ポリエステル系可塑剤の含有量が少なすぎる比較例3の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物のパウダースラッシュ成形は不可能だった。
【0036】
その後、発泡ポリウレタン成形体が裏打ちされていない外周を除去し、200mm×295mm×10mmの寸法の積層体を打ち抜いた。4つの目印を当該積層体の長手方向、短手方向にそれぞれ等間隔で付し、それぞれの目印の間隔を長尺ノギス((株)ミツトヨ製長尺タイプABSデジマチックキャリパCD−60C)を使用して測定した。その後、長期使用を想定した促進試験として、当該積層体を125℃のギア式オーブン(東洋精機製作所(株)製ギアオーブン)中に保存し、加熱された積層体を250時間経過後にオーブンから取り出し、積層体の長手方向、短手方向にそれぞれ付された目印の間隔を上記長尺ノギスで測定した。そして、目印の間隔の実測値の平均値を求め、下記式(1)で示される熱収縮率が計算された。なお、熱収縮率は数値が小さい方が収縮が小さく、寸法安定性に優れる。
熱収縮率=(オーブン投入前の実測値−加熱後の実測値)/オーブン投入前の実測値
・・・(1)
結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
1)新第一塩ビ(株)製ZEST2000Z(平均重合度2000、平均粒子径125μm)
2)(株)ADEKA製アデカサイザーUL−80(炭素数8のアルキルピロメリテート)
3)(株)ADEKA製アデカサイザーPN−350
4)(株)ジェイ・プラスDINP
5)(株)ADEKA製アデカサイザーO−130S
6)協和化学工業(株)製アルカマイザー5
7)水澤化学工業(株)製ミズカライザーDS
8)RHODIA社製RHODIASTAB50
9)(株)ADEKA製アデカスタブ522A
10)(株)ADEKA製アデカスタブLA−72
11)堺化学工業(株)製SZ−2000
12)(株)ADEKA製アデカスタブLS−10
13)新第一塩ビ(株)製ZEST PQLT(重合度800、平均粒子径1μm)
14)0.7質量部の大日精化(株)製DA P 1050ホワイト及び4.3質量部の大日精化(株)製DA PX 1720(A)ブラック
【0039】
実施例1〜
2及び参考例1〜6の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物をパウダースラッシュ成形してなる塩化ビニル樹脂成形体と発泡ポリウレタン成形体が積層された成形体の熱収縮率は小さく、寸法安定性に優れていた。ポリエステル系可塑剤及びピロメリット酸エステル系可塑剤に代えてフタル酸エステル系可塑剤を含む比較例1の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物をパウダースラッシュ成形してなる塩化ビニル樹脂成形体と発泡ポリウレタン成形体が積層された成形体の熱収縮率は大きく、寸法安定性に劣っていた。ポリエステル系可塑剤の含有量が多すぎる比較例2の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物はパウダーにならず、当該組成物のパウダースラッシュ成形は不可能だった。ポリエステル系可塑剤の含有量が少なすぎる比較例3の粉体成形用塩化ビニル樹脂組成物のパウダースラッシュ成形は不可能だった。