(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)成分、(B)成分及び(C)成分における酸解離性基が夫々独立して炭素原子数2乃至11のアルコキシアルキル基である、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
(B)成分が、酸解離性基及びブロックイソシアナート基を5乃至50:15乃至80のモル比で有するアクリル重合体である、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
(C)成分が、酸解離性基、脂肪族水酸基、炭素原子数3乃至10のフルオロアルキル基及びシリルエーテル基を5乃至40:5乃至50:5乃至50:10乃至60のモル比で有するアクリル重合体である、請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
(A)成分100質量部に基づいて、(B)成分を5乃至50質量部、(C)成分を0.5乃至30質量部、及び(D)成分を0.1乃至20質量部にて含有する、請求項1乃至
請求項5のうちいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
(E)成分としてシロキサン化合物を(A)成分100質量部に基づいて0.05乃至10質量部含有する、請求項1乃至請求項6のうちいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
(F)成分として1分子中に2個以上のビニルエーテル基を有する化合物を(A)成分100質量部に基づいて0.5乃至10質量部含有する、請求項1乃至請求項7のうちいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
感光性樹脂組成物を基材に塗布して被膜を形成した後、露光及び現像を行うことにより画像を形成する方法であって、該樹脂組成物が請求項1乃至請求項9のうちいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物であって、露光後現像前において更に温度50乃至150℃で露光後加熱(PEB)する工程を含む画像形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(A)乃至(C)成分のアクリル重合体及び(D)成分の光酸発生剤を含有し、且つ、それぞれ所望により、(E)成分のシロキサン化合物、(F)成分の1分子中に2個以上のビニルエーテル基を有する化合物を含有する組成物である。
本発明の組成物は、上記(C)成分のアクリル重合体を含有することで、炭素原子数3乃至10のフルオロアルキル基及びシリルエーテル基が表面付近に偏在する膜を形成することができる。これにより、膜表面に撥水性と撥液性を効率的に付与することができる。
また、上記(A)乃至(C)成分のアクリル重合体を含むことにより、良好なリワーク性を実現するとともに、硬化時にリフローを起こさずに良好な画像を維持することができる。
以下、各成分の詳細を説明する。
【0012】
[(A)成分]
(A)成分は酸解離性基、脂肪族水酸基及びN置換マレイミド基を有するアクリル重合体である。
【0013】
上記酸解離性基とは、後述する光酸発生剤から発生する酸の作用によってアクリル重合体から解離する基を意味し、例えばアルコキシアルキル基、t−アルキル基、橋かけ環式炭化水素基及びアルコキシカルボニル基を表し、好ましくは炭素原子数1乃至12を有する上記基である。
アルコキシアルキル基において、アルキル基は炭素原子数1乃至5であることが好ましく、より好ましくは炭素原子数1乃至3のアルキル基である。またここでのアルコキシ基は、炭素原子数1乃至6であることが好ましい。このようなアルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、イソプロポキシエチル基、イソプロポキシエチル基、ブトキシエチル基、イソブトキシエチル基、t−ブトキシエチル基、及びシクロヘキシルオキシエチル基が挙げられる。
上記t−アルキル基としては、t−ブチル基、及びt−アミル基等が挙げられる。
橋かけ環式炭化水素基としては、ノルボルネニル基、2−メチルアダマンチル基、及び1−メチルアダマンチル基等が挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、t−ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0014】
上記脂肪族水酸基としてはヒドロキシアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数2乃至10のヒドロキシアルキル基、より好ましくは炭素原子数2乃至10のヒドロキシアルキル基が挙げられる。
【0015】
また上記N置換マレイミド基とは、マレイミド基のN原子が有機基で置換された基であり、ここでN原子における置換基としては、脂環式基、アルキル基又はフェニル基が挙げられ、具体的には、シクロヘキシル基、炭素数1乃至5のアルキル基、フェニル基が挙げられる。好ましくは脂環式基又はアルキル基である。
【0016】
上記(A)成分のアクリル重合体において、酸解離性基:脂肪族水酸基:N置換マレイミド基のモル比は、5乃至50:5乃至50:20乃至70であることが好ましく、より好ましくは10乃至40:10乃至40:30乃至60である。
また上記(A)成分のアクリル重合体の数平均分子量は1,500乃至20,000であることが好ましい。
【0017】
上記(A)成分のアクリル重合体(以下、単にアクリルAともいう)の製造方法としては、酸解離性基を有するモノマー、脂肪族水酸基を有するモノマー及びN置換マレイミドモノマー、並びに所望により前記以外のモノマー(以下その他モノマーAともいう)とを、重合開始剤存在下の溶剤中において、50乃至110℃の温度下で重合反応させることにより得られる。
このようにして得られるアクリルAは、通常、このアクリルAが溶剤に溶解した溶液の状態であり、この状態で(単離することなく)本発明のポジ型感光性樹脂組成物に用いることもできる。
【0018】
また、上記のようにして得られたアクリルAの溶液を、ジエチルエーテルや水等の撹拌下に投入して再沈殿させ、生成した沈殿物を濾過・洗浄した後、常圧又は減圧下で、常温あるいは加熱乾燥することで、アクリルAの粉体とすることができる。このような操作により、アクリルAと共存する重合開始剤や未反応モノマーを除去することができ、その結果、精製したアクリルAの粉体を得られる。一度の操作で充分に精製できない場合は、得られた粉体を溶剤に再溶解して、上記の操作を繰り返し行えば良い。
本発明においては、アクリルAの粉体をそのまま用いても良く、あるいはその粉体を、たとえば後述する溶剤に再溶解して溶液の状態として用いても良い。
【0019】
上記解離性基を有するモノマーとしては、1−メトキシエチルメタクリレート、1−メトキシエチルアクリレート、1−エトキシエチルメタクリレート、1−エトキシエチルアクリレート、1−プロポキシエチルメタクリレート、1−プロポキシエチルアクリレート、1−イソプロポキシエチルメタクリレート、1−イソプロポキシエチルアクリレート、1−ブトキシエチルメタクリレート、1−ブトキシエチルアクリレート、1−イソブトキシエチルメタクリレート、1−イソブトキシエチルアクリレート、1−t−ブトキシエチルメタクリレート、1−t−ブトキシエチルアクリレート、1−シクロヘキシルオキシエチルメタクリレート、1−シクロヘキシルオキシエチルアクリレート、メトキシメチルメタクリレート、メトキシメチルアクリレート、エトキシメチルメタクリレート、エトキシメチルアクリレート、プロポキシメチルメタクリレート、プロポキシメチルアクリレート、イソプロポキシメチルメタクリレート、イソプロポキシメチルアクリレート、ブトキシメチルメタクリレート、ブトキシメチルアクリレート、イソブトキシメチルメタクリレート、イソブトキシメチルアクリレート、t−ブトキシメチルメタクリレート、t−ブトキシメチルアクリレート、シクロヘキシルオキシメチルメタクリレート、シクロヘキシルオキシメチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、t−アミルアクリレート、t−アミルメタクリレート、ノルボニネニルアクリレート、ノルボニネニルメタクリレート、1−メチルアダマンチルアクリレート、2−メチルアダマンチルアクリレート、2−メチル−2−アダマンチルアクリレート、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート及びp−t−ブトキシカルボニルオキシスチレン等が挙げられる。
【0020】
また脂肪族水酸基を有するモノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、及びグリセロールメタクリレート等が挙げられる。
【0021】
N置換マレイミドモノマーとしては、N−エチルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、及びN−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0022】
上記その他モノマーAとしては、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−アミノメチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、γ−ブチロラクトンメタクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルメタクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルメタクリレート、8−エチル−8−トリシクロデシルメタクリレート、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、フェニルアクリレート、グリシジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−アミノメチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、γ−ブチロラクトンアクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルアクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルアクリレート、8−エチル−8−トリシクロデシルアクリレート、スチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルビフェニル、ビニル安息香酸、及びヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0023】
上記重合開始剤としては、α、α’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、1−(1−シアノ−1−メチルエチルアゾ)ホルムアミド、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、ジ−o−メチルベンゾイルパーオキサイド、ジ−p−メチルベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、及びt−ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。
【0024】
上記アクリルAの製造に使用される溶剤(以下重合溶剤ともいう)としては、アクリルAを構成する各モノマー及びアクリルAを溶解するものであれば特に限定されない。例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、γ―ブチロラクトン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
これらの溶剤は、一種単独で、または二種以上の組合せで使用することができる。
【0025】
[(B)成分]
(B)成分は、酸解離性基及びブロックイソシアナート基を有するアクリル重合体である。
上記酸解離性基としては、前述の(A)成分において挙げた酸解離性基と同じものを挙げることができる。
【0026】
上記ブロックイソシアナート基とは、イソシアネート基(−NCO)が適当な保護基によりブロックされた基を意味し、すなわち、イソシアネート基にブロック剤を反応させた基である。
上記保護基(ブロック部分)は高温で熱解離して外れ、イソシアネート基を生じ、ここで保護基は140℃以上でイソシアネート基から解離することが好ましい。
このようなブロック剤の具体例としては、メチルエチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ジイソブチルケトンオキシム、アセトンオキシム、ブタナールオキシム、アセトアルデヒドオキシム等のオキシム類、イプシロンカプロラクタム、ヘプタノラクタム等のラクタム類、フェノール、クレゾール等のフェノール類、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、及び3−メチルピラゾール等のピラゾール類等が挙げられる。
【0027】
上記(B)成分のアクリル重合体において、酸解離性基:ブロックイソシアナート基のモル比は、5乃至50:15乃至80であることが好ましい。
また上記(B)成分のアクリル重合体の数平均分子量は、2,000乃至30,000であることが好ましい。
【0028】
上記(B)成分のアクリル重合体(以下、単にアクリルBともいう)の製造方法としては、前記(A)成分のアクリル重合体の製造方法と同様であり、すなわち、酸解離性基を有するモノマー及びブロックイソシアナート基を有するモノマー、並びに所望により前記以外のモノマー(以下その他モノマーBともいう)とを、重合開始剤存在下の溶剤中において、50乃至110℃の温度下で重合反応させることにより得られる。
このようにして得られるアクリルBは、通常、このアクリルBが溶剤に溶解した溶液の状態であり、この状態で(単離することなく)本発明のポジ型感光性樹脂組成物に用いることもできる。
また、上記のようにして得られたアクリルBの溶液は、前記アクリルAの溶液同様、再沈殿、沈殿物の濾過・洗浄、常圧又は減圧下で常温あるいは加熱乾燥を必要に応じて繰り返すことにより、アクリルBと共存する重合開始剤や未反応モノマーを除去し、精製したアクリルBの粉体とすることができる。
またアクリルAの粉体同様、本発明においてはアクリルBの粉体をそのまま用いても良く、あるいはその粉体を、たとえば後述する溶剤に再溶解して溶液の状態として用いても良い。
【0029】
上記アクリルBの製造方法に用いる酸解離性基を有するモノマー、重合開始剤並びに溶剤は前記アクリルAの製造方法で用いたものと同じものを用いることができる。
また、その他モノマーBは、前記アクリルAの製造方法で用いた脂肪族水酸基を有するモノマー及びその他モノマーAと同じものを用いることができる。
【0030】
上記ブロックイソシアナート基を有するモノマーの具体例としては、イソシアネートエチルメタクリレート、イソシアネートエチルアクリレート、m−テトラメチルスチレンイソシアネート等のイソシアネート含有モノマーに、メチルエチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ジイソブチルケトンオキシム、アセトンオキシム、ブタナールオキシム、アセトアルデヒドオキシム、イプシロンカプロラクタム、ヘプタノラクタム、フェノール、クレゾール等のフェノール類、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、又は3−メチルピラゾール等のブロック剤を付加したモノマーが挙げられる。
【0031】
[(C)成分]
(C)成分は、酸解離性基、脂肪族水酸基、炭素原子数3乃至10のフルオロアルキル基及びシリルエーテル基を有するアクリル重合体である。
上記酸解離性基及び脂肪族水酸基としては、前述の(A)成分において挙げた酸解離性基及び脂肪族水酸基と同じものを挙げることができる。
【0032】
上記フルオロアルキル基の炭素原子数は3乃至10であり、好ましくは、炭素原子数4乃至10のフルオロアルキル基であることが望ましい。
このようなフルオロアルキル基としては、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、2−(パーフルオロブチル)エチル基、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピル基、2−(パーフルオロヘキシル)エチル基、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピル基、2−(パーフルオロオクチル)エチル基、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピル基、2−(パーフルオロデシル)エチル基、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチル基、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピル基、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エチル基、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピル基、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチル基、及び2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピル基、等が挙げられる。
【0033】
上記シリルエーテル基とは、アルコールのヒドロキシ基がトリアルキルシリル基で保護された基を意味し、好ましくは下記式で表わされる基である。
−X
4−Si(O−SiX
1X
2X
3)
3
(式中、X
1、X
2、X
3はそれぞれ独立して炭素原子数1乃至3のアルキル基を表し、X
4は炭素原子数1乃至6のアルキレン基を表す。)
【0034】
上記(C)成分のアクリル重合体において、酸解離性基:脂肪族水酸基:フルオロアルキル基:シリルエーテル基のモル比は、5乃至40:5乃至50:5乃至50:10乃至60であることが好ましい。
また上記(C)成分のアクリル重合体の数平均分子量は、2,000乃至30,000であることが好ましい。
【0035】
上記(C)成分のアクリル重合体(以下、単にアクリルCともいう)の製造方法としては、前記(A)成分のアクリル重合体の製造方法と同様であり、すなわち、酸解離性基を有するモノマー、脂肪族水酸基を有するモノマー、炭素原子数3乃至10のフルオロアルキル基を有するモノマー及びシリルエーテル基を有するモノマー、並びに所望により前記以外のモノマー(以下その他モノマーCともいう)とを、重合開始剤存在下の溶剤中において、50乃至110℃の温度下で重合反応させることにより得られる。
このようにして得られるアクリルCは、通常、このアクリルCが溶剤に溶解した溶液の状態であり、この状態で(単離することなく)本発明のポジ型感光性樹脂組成物に用いることもできる。
また、上記のようにして得られたアクリルCの溶液は、前記アクリルAの溶液同様、再沈殿、沈殿物の濾過・洗浄、常圧又は減圧下で常温あるいは加熱乾燥を必要に応じて繰り返すことにより、アクリルCと共存する重合開始剤や未反応モノマーを除去し、精製したアクリルCの粉体とすることができる。
またアクリルAの粉体同様、本発明においてはアクリルCの粉体をそのまま用いても良く、あるいはその粉体を、たとえば後述する溶剤に再溶解して溶液の状態として用いても良い。
【0036】
上記アクリルCの製造方法に用いる酸解離性基を有するモノマー、脂肪族水酸基を有するモノマー、重合開始剤並びに溶剤は前記アクリルAの製造方法で用いたものと同じものを用いることができる。
【0037】
上記炭素原子数3乃至10のフルオロアルキル基を有するモノマーの具体例としては、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチルメタクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチルメタクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エチルメタクリレート、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチルメタクリレート、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、及び2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。
【0038】
シリルエーテル基を有するモノマーとしては、メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、メタクリルオキシトリスプロピルシラン、2−(メタクリロキシエトキシ)トリメチルシラン、2−(メタクリロキシエチル)トリメチルシラン、2−(アクリロキシエトキシ)トリメチルシラン、アクリルオキシトリスプロピルシラン、2−(アクリロキシエチル)トリメチルシラン、及びアクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン等が挙げられる。
【0039】
またその他モノマーCは、前記アクリルAの製造方法で用いたその他モノマーAと同じものを用いることができるが、中でも、アルカリ可溶性基(ヒドロキシフェニル基、カルボキシル基)を有さないモノマーであることが好ましい。
このようなその他モノマーCの具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−アミノメチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、γ−ブチロラクトンメタクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルメタクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルメタクリレート、8−エチル−8−トリシクロデシルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、フェニルアクリレート、グリシジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−アミノメチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、γ−ブチロラクトンアクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルアクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルアクリレート、8−エチル−8−トリシクロデシルアクリレート、スチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、及びビニルビフェニル等が挙げられる。
【0040】
[(D)成分]
(D)成分は、光酸発生剤(PAG)である。これは、露光に使用される光の照射によって直接もしくは間接的に酸(スルホン酸類、カルボン酸類など)を発生する物質であり、斯様な性質を有するものであれば、その種類及び構造などは特に限定されるものでない。
【0041】
(D)成分の光酸発生剤としては、例えば、ジアゾメタン化合物、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、ジスルホン系化合物、スルホン酸誘導体化合物、ニトロベンジル化合物、ベンゾイントシレート化合物、鉄アレーン錯体、ハロゲン含有トリアジン化合物、アセトフェノン誘導体化合物、及び、シアノ基含有オキシムスルホネート化合物などが挙げられる。従来知られ又は従来から使用されている光酸発生剤は、いずれも、特に限定されることなく、本発明において適用することができる。なお、本発明において、(D)成分の光酸発生剤は、一種単独で用いてもよく、また二種以上を組合わせて用いてもよい。
【0042】
光酸発生剤の具体例としては、以下のものが挙げられる。最も、これらの化合物は極めて多数の適用可能な光酸発生剤の中の一例であり、当然それらに限定されるものではない。
【0044】
ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムメシレート、ジフェニルヨードニウムトシレート、ジフェニルヨードニウムブロミド、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムメシレート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトシレート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムクロリド、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウムクロリド、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムクロリド、トリフェニルスルホニウムブロミド、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリ(p−メトキシフェニル)スルホニウムテトラフルオロボレート、トリ(p−メトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリ(p−エトキシフェニル)スルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルホスホニウムクロリド、トリフェニルホスホニウムブロミド、トリ(p−メトキシフェニル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、トリ(p−メトキシフェニル)ホスホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリ(p−エトキシフェニル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、
【0053】
上記光酸発生剤の中でも、好ましくは光によって強酸を生成する化合物、特にスルホン酸又は塩酸を生成する化合物を用いることが好ましい。
【0054】
[(E)成分]
本発明において、(E)成分としてシロキサン化合物を用いてもよい。この(E)成分であるシロキサン化合物は、本発明のポジ型感光性樹脂組成物から硬化膜(パターン形成膜)を形成する過程で行う一連の加熱処理工程、すなわち、(A)成分のアクリル重合体と(C)成分のアクリル重合体との架橋反応のための加熱処理、露光後加熱処理、そして(B)成分との架橋反応のための加熱処理において、パターン表面に滲み出る特性を有するものであることが好ましい。
上記(E)成分は、具体的には、数平均分子量が100乃至2,000のシロキサン化合物である。ここで言うところのシロキサン化合物とは、オルガノシロキサン化合物及びその一部が水素原子やヒドロキシ基で置換された化合物並びにこれらの変性物をさす。
【0055】
このようなシロキサン化合物としては、例えば、直鎖状シロキサン化合物、分岐構造を有するシロキサン化合物、環状シロキサン化合物及びこれらの共重合体が挙げられる。また、これらのシロキサン化合物を、アルコキシ変性、ポリエーテル変性、フッ素変性、メチルスチリル変性、高級脂肪酸エステル変性、親水性特殊変性、高級アルコキシ変性等の非反応性基で変性したシロキサン化合物、及び、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシ変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性等の反応性基で変性したシロキサン化合物等を挙げることができる。
【0056】
これらの具体例としては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルエチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチルヒドロキシシロキサン、ポリメチルプロピルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリメチルブチルシロキサン等の直鎖状シロキサンまたはその共重合体、環状ポリジメチルシロキサン、環状ポリメチルフェニルシロキサン、環状ポリメチルヒドロキシシロキサン、環状ポリメチルエチルシロキサン、環状ポリメチルプロピルシロキサン、環状ポリメチルブチルシロキサン等の環状シロキサン、アルコキシ変性、ポリエーテル変性、フッ素変性、メチルスチリル変性、高級脂肪酸エステル変性、親水性特殊変性、高級アルコキシ変性等の非反応性基変性シロキサン、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシ変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性等の反応性基変性シロキサン及びこれらの共重合体等が挙げられる。
【0057】
上記のシロキサン化合物は、市販品として容易に入手が可能であり、その具体例としては、例えばL−45(日本ユニカー(株)製)、SH200、510、550、710、705、1107(東レ・ダウコーニング(株)製)、X−22−162C、3701E、3710、1821、164S、170DX、176DX、164A、4952、KF96、50、54、99、351、618、910、700、6001、6002、8010、KR271、282(信越化学工業(株)製)等の直鎖状シロキサン化合物、VS−7158(日本ユニカー(株)製)、BY11−003(東レ・ダウコーニング(株)製)等の環状シロキサン化合物、L−77、720、7001、7604、Y−7006、L−9300、FZ−2101、2110、2130、2161、3704、3711、3722、3703、3720、3736、3705、3760(日本ユニカー(株)製)、SF8427、8428、8413、8417、SH193、194、190、192、556、3746、3749、3771、8400、SRX280A、BY16−036、−848、−828、−853B、−855B、−839、−845、−752、−750、−838、−150B、BX16−854、−866、SF8421EG、SH28PA、SH30PA、ST89PA、ST103PA(東レ・ダウコーニング(株)製)、ES1001N、1023、X−22−161、−163、−169、−162、−164、KF−860、−101、−102、−6001、−6011、−6015、−8001、−351、−412、−910、−905、X−22−2426、X−22−174DX、X−24−8201(信越化学工業(株)製)等の変性シロキサン化合物、FS1265(東レ・ダウコーニング(株)製)、FL−5、FL−10、X−22−820、X−22−821、X−22−822、FL100(信越化学工業(株)製)等のフッ素変性シロキサン化合物、FZ−2203、2207、2222(日本ユニカー(株)製)等のポリシロキサンとポリアルキレンオキサイドの共重合体を挙げることができる。
【0058】
上記のようなシロキサン化合物の中でも、特に式(70)で表される構造の繰り返し単位を有するシロキサン化合物が好ましい。
【0060】
(式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はフェニル基であり、pは正の整数を表す。)
【0061】
本発明においては、上記式(70)で表される構造の繰り返し単位を有するシロキサン化合物であれば、変性されていても未変性であってもいずれでもよい。
【0062】
また、上記シロキサン化合物が、エポキシ基を有する場合、露光時に前述の(D)成分の光酸発生剤から発生した酸成分が該エポキシ基と反応する虞があるため、エポキシ基を持たないシロキサン化合物が好ましい。
【0063】
エポキシ基を持たないシロキサン化合物としては、未変性のシロキサン化合物、アルコキシ変性、ポリエーテル変性、フッ素変性、メチルスチリル変性、高級脂肪酸エステル変性、親水性特殊変性、高級アルコキシ変性等の非反応性基で変性したシロキサン化合物、及び、アミノ変性、カルボキシ変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性等の反応性基で変性したシロキサン化合物等が挙げられる。
【0064】
上記(E)成分のシロキサン化合物のうち、未変性のシロキサン化合物及びカルビノール変性したシロキサン化合物は、(A)成分のアクリル重合体との相溶性が得られ易く、また、フッ素変性したシロキサン化合物は、撥油性が得られるので好ましい。
ここで言うところのフッ素変性シロキサン化合物とは、上述のオルガノシロキサン化合物及びその一部が水素原子やヒドロキシ基で置換された化合物並びにそれらの変性物がフッ素でさらに変性された化合物をさす。
【0065】
このようなフッ素変性シロキサン化合物とは、具体的には前述の式(70)において、式中のR
1及び/またはR
2がフルオロアルキル基である、シロキサン化合物である。
ここでフルオロアルキル基の導入量は10乃至100%が好ましく、より好ましくは20乃至80%である。フルオロアルキル基の導入量が少ない場合は撥油性が低下し、フルオロアルキル基の導入量が多すぎる場合はUV−オゾン処理耐性が低下することがある。
【0066】
本発明に用いる(E)成分のシロキサン化合物にあっては、前述の化合物の中でも、カルビノール変性したシロキサン化合物又はフッ素変性シロキサン化合物、並びに、フッ素でのみ変性されたシロキサン化合物がより好ましく、特に、未変性のシロキサン化合物をフッ素変性したフッ素変性シロキサン化合物、すなわち、フッ素変性以外の変性が施されていないシロキサン化合物が好ましい。
【0067】
本発明に用いる(E)成分であるシロキサン化合物としては、本発明のポジ型感光性樹脂組成物の溶液において、各成分との相溶性、特に(A)成分のアクリル重合体との相溶性が良好で、且つ該ポジ型感光性樹脂組成物が良好な安定性を有することに加え、現像液への溶解性、ならびに非露光領域(遮光部分)である残存パターン上面部の撥水性さらには撥油性を付与する観点から、数平均分子量が100乃至2,000の化合物が好ましい。
【0068】
本発明において、さらに(F)成分として1分子中に2個以上のビニルエーテル基を有する化合物を含んでいてもよい。
このような(F)成分としては、慣用のプリベーク温度(例えば80℃〜150℃)で(A)成分のアクリル重合体と熱架橋することができるようなビニルエーテル基を1分子中二個以上有する化合物であればよく、その種類及び構造について特に限定されるものでない。
【0069】
この(F)成分の化合物は、(A)成分のアクリル重合体との熱架橋の後、光酸発生剤の存在下での露光により生じた酸により、(A)成分のアクリル重合体から分離(脱架橋)し、その後アルカリ現像液を用いた現像により(A)成分のアクリル重合体ともに除去される。従って、この種の化合物としては、一般にビニルエーテル型化学増幅型レジストの成分に使用されるビニルエーテル系化合物などが適用されうる。斯かる化合物の使用の場合、該化合物の配合量を変えて熱架橋密度を調整することにより、形成される膜の形状を制御することができるという利点を有する。
【0070】
そして、(F)成分の化合物としては、上記ビニルエーテル系化合物の中でも、特に式(71)及び式(72)で表される化合物が、露光部において残膜や残渣なく現像される点で、好ましい。
【0072】
(式中、nは2乃至10の整数、kは1乃至10の整数を表し、R
3はn価の有機基を表す。)
【0074】
(式中、mは2乃至10の整数を表す。)
【0075】
式(71)のnは、1分子中のビニルエーテル基の数を表すが、nとしては、2乃至4の整数がより好ましい。そして、式(72)のmも一分子中のビニルエーテル基の数を表すが、mとしては、2乃至4の整数がより好ましい。
【0076】
式(71)及び式(72)で表される化合物の具体例としては、ビス(4−(ビニロキシメチル)シクロヘキシルメチル)グルタレート、トリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、アジピン酸ジビニルエステル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリス(4−ビニロキシ)ブチルトリメリレート、ビス(4−(ビニロキシ)ブチル)テレフタレート、ビス(4−(ビニロキシ)ブチルイソフタレート、及びシクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0077】
<その他添加剤>
更に、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、界面活性剤、レオロジー調整剤、シランカップリング剤等の接着補助剤、顔料、染料、保存安定剤、消泡剤、または多価フェノール、多価カルボン酸等の溶解促進剤等を含有することができる。
【0078】
[ポジ型感光性樹脂組成物]
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(A)成分のアクリル重合体、(B)成分のアクリル重合体、(C)成分のアクリル重合体、(D)成分の光酸発生剤を含有し、且つ、本発明の効果を損なわない限りにおいて、それぞれ所望により、(E)成分のシロキサン化合物、(F)成分の1分子中に2個以上のビニルエーテル基を有する化合物、及びその他添加剤のうち一種以上を更に含有することができる組成物である。
【0079】
中でも、本発明のポジ型感光性樹脂組成物の好ましい例は、以下のとおりである。
[1]:(A)成分100質量部に基づいて、5乃至50質量部の(B)成分、0.5乃至30質量部の(C)成分、及び、0.1乃至20質量部の(D)成分を含有するポジ型感光性樹脂組成物。
[2]:上記[1]の組成物において、(A)成分100質量部に基づいて、8乃至40質量部の(B)成分、1乃至20質量部の(C)成分、又は0.5乃至10質量部の(D)成分を含有するポジ型感光性樹脂組成物。
【0080】
(E)成分であるシロキサン化合物が使用される場合、(A)成分のアクリル重合体100質量部に対して好ましくは0.05乃至10質量部の割合で使用される。
(E)成分の化合物の使用量が上記範囲の上限を超える量であると、塗膜形成時に白化や膜ムラが発生する場合がある。
そして、(E)成分であるシロキサン化合物の種類や使用量を適宜選択することで、得られる塗膜及び硬化膜に生成する空孔の大きさを制御することも可能である。
【0081】
また、(F)成分の1分子中に2個以上のビニルエーテル基を有する化合物が使用される場合、(A)成分のアクリル重合体100質量部に対して0.5乃至10質量部の割合で使用される。
(F)成分の化合物の使用量が前記範囲の上限を超える量であると、膜の感度が大きく低下し、現像後にパターン間の残渣が生じるようになる。
【0082】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、溶剤((G)成分)に溶解した形態であってもよい。その場合の(G)溶剤としては、上記(A)成分乃至(D)成分、並びに所望により(E)成分、(F)成分及びその他添加剤を溶解するものであればよく、斯様な溶解能を有する溶剤であれば、その種類及び構造などは特に限定されるものでない。
斯様な(E)溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、γ―ブチロラクトン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
これらの溶剤は、一種単独で、または二種以上の組合せで使用することができる。
【0083】
これら(E)溶剤の中、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2−ヘプタノン、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル等が、塗膜性が良好で安全性が高いという観点より好ましい。これら溶剤は、一般にフォトレジスト材料のための溶剤として用いられている。
【0084】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物における固形分の割合は、各成分が均一に溶剤に溶解している限り、特に限定されるものではないが、例えば1乃至80質量%であり、また例えば5乃至60質量%であり、または10乃至50質量%である。ここで、固形分とは、ポジ型感光性樹脂組成物の全成分から(G)溶剤を除いたものをさす。
【0085】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物の調製方法は、特に限定されないが、その調製法としては、例えば、(A)成分を(G)溶剤に溶解し、この溶液に、(B)成分、(C)成分及び(D)成分(光酸発生剤)を所定の割合で混合し、均一な溶液とする方法、或いは、この調製法の適当な段階において、必要に応じて、(F)成分(シロキサン化合物)、(G)成分(1分子中に2個以上のビニルエーテル基を有する化合物)及びその他添加剤からなる群からえらばれる少なくとも一種を更に添加して混合する方法が挙げられる。
【0086】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物の調製にあたっては、(A)成分乃至(C)成分のアクリル重合体の製造時に得られる(A)成分乃至(C)成分のアクリル重合体の溶液をそのまま使用することができ、この場合、この(A)成分の溶液に前記と同様に(B)成分(又は(B)成分の溶液)、(C)成分(又は(C)成分の溶液)、(D)成分などを入れて均一な溶液とする際に、濃度調整を目的としてさらに(G)溶剤を追加投入してもよい。このとき、(A)成分乃至(C)成分のアクリル重合体の調製過程で用いられる溶剤と、ポジ型感光性樹脂組成物の調製時に濃度調整のために用いられる(G)溶剤とは同一であってもよいし、異なってもよい。
【0087】
而して、調製されたポジ型感光性樹脂組成物の溶液は、孔径が0.2μm程度のフィルタなどを用いて濾過した後、使用することが好ましい。
【0088】
<塗膜及び硬化膜>
本発明のポジ型感光性樹脂組成物を半導体基板(例えば、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンナイトライド基板、金属例えばアルミニウム、モリブデン、クロムなどが被覆された基板、ガラス基板、石英基板、ITO基板等)の上に、回転塗布、流し塗布、ロール塗布、スリット塗布、スリットに続いた回転塗布、インクジェット塗布などによって塗布し、その後、ホットプレートまたはオーブン等で予備乾燥することにより、塗膜を形成することができる。その後、この塗膜を加熱処理することにより、ポジ型感光性樹脂膜が形成される。
【0089】
この加熱処理の条件としては、例えば、温度70℃乃至160℃、時間0.3乃至60分間の範囲の中から適宜選択された加熱温度及び加熱時間が採用される。加熱温度及び加熱時間は、好ましくは80℃乃至140℃、0.5乃至10分間である。
また、ポジ型感光性樹脂組成物から形成されるポジ型感光性樹脂膜の膜厚は、例えば0.1乃至30μmであり、また例えば0.2乃至10μmであり、更に例えば0.2乃至5μmである。
【0090】
そして、形成されたポジ型感光性樹脂膜は、形成時の加熱処理により、(C)成分のアクリル重合体が(A)成分のアクリル重合体に架橋することにより、アルカリ現像液に難溶な膜となる。この場合、加熱処理の温度が上記の温度範囲の下限よりもより低い場合には、熱架橋が不十分なものとなり、未露光部において膜減りが生じることがある。また、加熱処理の温度が上記の温度範囲の上限を超えて高すぎる場合には、一旦形成された熱架橋部が再び切断され、未露光部において膜減りをひき起こすことがある。
【0091】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物から形成されるポジ型感光性樹脂膜は、所定のパターンを有するマスクを用いて紫外線、ArF、KrF、F
2レーザー光等の光で露光されると、ポジ型感光性樹脂膜中に含まれる(D)成分の光酸発生剤(PAG)から発生する酸の作用によって、該膜のうち露光部はアルカリ性現像液に可溶なものとなる。
【0092】
次いで、ポジ型感光性樹脂膜に対して露光後加熱(PEB)が行われる。この場合の加熱の条件としては、温度50℃乃至150℃、時間0.3乃至60分間の範囲の中から適宜選択された加熱温度及び加熱時間が採用される。
【0093】
その後、アルカリ性現像液を用いて現像が行われる。これにより、ポジ型感光性樹脂膜のうち、露光された部分が除去され、パターン様のレリーフが形成される。
使用され得るアルカリ性現像液としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリンなどの水酸化第四級アンモニウムの水溶液、エタノールアミン、プロピルアミン、エチレンジアミンなどのアミン水溶液等のアルカリ性水溶液が挙げられる。さらに、これらの現像液には、界面活性剤などを加えることもできる。
上記の中、水酸化テトラエチルアンモニウム0.1乃至2.38質量%水溶液は、フォトレジストの現像液として一般に使用されており、本発明のポジ型感光性樹脂組成物においても、このアルカリ性現像液を用いて、膨潤などの問題をひき起こすことなく良好に現像することができる。
また、現像方法としては、液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法など、いずれも用いることができる。その際の現像時間は、通常、15乃至180秒間である。
【0094】
現像後、ポジ型感光性樹脂膜に対して流水による洗浄を例えば20乃至90秒間行い、続いて圧縮空気もしくは圧縮窒素を用いてまたはスピニングにより風乾することにより、基板上の水分が除去され、そしてパターン形成された膜が得られる。
【0095】
続いて、斯かるパターン形成膜に対して、熱硬化のためにポストベークを行うことにより、具体的にはホットプレート、オーブンなどを用いて加熱することにより、耐熱性、透明性、平坦化性、低吸水性、耐薬品性などに優れ、良好なレリーフパターンを有する膜が得られる。
ポストベークとしては、一般に、温度130℃乃至250℃の範囲の中から選択された加熱温度にて、ホットプレート上の場合には5乃至30分間、オーブン中の場合には30乃至90分間処理するという方法が採られる。
而して、斯かるポストベークにより、目的とする、良好なパターン形状を有する硬化膜を得ることができる。
【0096】
以上のように、本発明のポジ型感光性樹脂組成物により、十分高感度であり且つ現像の際に未露光部の膜減りが非常に小さい、微細な画像を形成することができる。
【0097】
この硬化膜の特性としては、膜表面に高い撥水性と高い撥油性を有しており、酸素プラズマ処理(UVオゾン処理)後における撥水性及び撥油性の低下を抑制することができる。
【0098】
また、ポストベーク後の硬化膜は、(A)乃至(C)成分に含まれる酸解離性基によって各種溶剤に溶解でき、リワーク性に優れた膜となる。リワークに使用される溶剤としては以下のものが挙げられる:エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート等のグリコールエステル類;ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類;メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド及びN−メチル−2−ピロリドン等のアミド類。
【0099】
そのため、例えば、有機ELの画素分画用バンクなどの用途や、TFT型液晶素子のアレイ平坦化膜、液晶又は有機ELディスプレイにおける各種の膜、例えば層間絶縁膜、保護膜、絶縁膜などの用途に好適である。
【実施例】
【0100】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、数平均分子量及び重量平均分子量の測定は以下の通りである。
[数平均分子量及び重量平均分子量の測定]
以下の合成例に従い得られた共重合体の数平均分子量及び重量平均分子量を、日本分光(株)製GPC装置(Shodex(登録商標)カラムKF803LおよびKF804L)を用い、溶出溶媒テトラヒドロフランを流量1ml/分でカラム中に(カラム温度40℃)流して溶離させるという条件で測定した。なお、下記の数平均分子量(以下、Mnと称す。)及び重量平均分子量(以下、Mwと称す。)は、ポリスチレン換算値にて表される。
【0101】
以下の実施例で用いる略記号の意味は、次の通りである。
<モノマー>
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
CHMI:N−シクロヘキシルマレイミド
BEMA:1−ブトキシエチルメタクリレート
MOI:メタクリル酸2−(O−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル
TMSSMA:メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン
PFOMA:2−(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレート
PFHMA:2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート
TFMMA:トリフルオロメチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
<重合開始剤>
AIBN:α、α’−アゾビスイソブチロニトリル
<光酸発生剤>
PAG1:オキシムスルホネート系光酸発生剤 PAG103(チバジャパン製)
【化13】
<シロキサン化合物>
Si1:SH−28PA(東レダウコーニングシリコーン製)
Si2:ポリジメチルシロキサン−co―ポリジフェニルシロキサン ヒドロキシ末端
<1分子中に2個以上のビニルエーテル基を有する化合物>
VE1:トリス(ビニルオキシブチル)トリメリテート
<溶剤>
PMA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0102】
<合成例1>
CHMI 45.0g、HEMA 15.0g、BEMA 25.0g、MAA 3.0g、MMA 12g、AIBN 4.4gをPMA 230.6gに溶解し90℃にて20時間反応させることによりアクリル重合体溶液(固形分濃度30質量%)を得た(P1)。得られたアクリル重合体のMnは4,700、Mwは9,800であった。
【0103】
<合成例2>
MOI 69.0g、BEMA 23.0g、MMA 23g、AIBN 5.2gをPMA 309.2gに溶解し85℃にて20時間反応させることによりアクリル重合体溶液(固形分濃度28質量%)を得た(P2)。得られたアクリル重合体のMnは4,900、Mwは9,500であった。
【0104】
<合成例3>
MOI 69.0g、BEMA 23.0g、CHMI 23g、AIBN 5.2gをPMA 309.2gに溶解し85℃にて20時間反応させることによりアクリル重合体溶液(固形分濃度28質量%)を得た(P3)。得られたアクリル重合体のMnは5,900、Mwは10,300であった。
【0105】
<合成例4>
TMSSMA 32.0g、HEMA 12.0g、BEMA 12.0g、PFHMA 20.0g、MMA 4.0g、AIBN 2.3gをPMA 192.0gに溶解し90℃にて20時間反応させることによりアクリル重合体溶液(固形分濃度30質量%)を得た(P4)。得られたアクリル重合体のMnは4,900、Mwは8,400であった。
【0106】
<合成例5>
TMSSMA 32.0g、HEMA 12.0g、BEMA 12.0g、PFOMA 20.0g、MMA 4.0g、AIBN 2.3gをPMA 192.0gに溶解し90℃にて20時間反応させることによりアクリル重合体溶液(固形分濃度30質量%)を得た(P5)。得られたアクリル重合体のMnは4,300、Mwは7,900であった。
【0107】
<合成例6>
TMSSMA 32.0g、HEMA 12.0g、BEMA 12.0g、TFMMA 20.0g、MMA 4.0g、AIBN 2.3gをPMA 192.0gに溶解し90℃にて20時間反応させることによりアクリル重合体溶液(固形分濃度30質量%)を得た(P6)。得られたアクリル重合体のMnは4,700、Mwは8,600であった。
【0108】
<合成例7>
HEMA 15.0g、BEMA 25.0g、MAA 48.0g、MMA 12g、AIBN 4.4gをPMA 230.6gに溶解し90℃にて20時間反応させることによりアクリル重合体溶液(固形分濃度30質量%)を得た(P7)。得られたアクリル重合体のMnは5,500、Mwは10,300であった。
【0109】
<合成例8>
CHMI 45.0g、BEMA 25.0g、MAA 3.0g、MMA 27g、AIBN 4.4gをPMA 230.6gに溶解し90℃にて20時間反応させることによりアクリル重合体溶液(固形分濃度30質量%)を得た(P8)。得られたアクリル重合体のMnは4,400、Mwは9,300であった。
【0110】
<合成例9>
TMSSMA 32.0g、BEMA 12.0g、PFHMA 20.0g、MMA 16.0g、AIBN 2.3gをPMA 192.0gに溶解し90℃にて20時間反応させることによりアクリル重合体溶液(固形分濃度30質量%)を得た(P9)。得られたアクリル重合体のMnは4,100、Mwは7,900であった。
【0111】
<合成例10>
TMSSMA 32.0g、HEMA 12.0g、BEMA 12.0g、PFHMA 20.0g、CHMI 4.0g、AIBN 2.3gをPMA 192.0gに溶解し90℃にて20時間反応させることによりアクリル重合体溶液(固形分濃度30質量%)を得た(P10)。得られたアクリル重合体のMnは5,200、Mwは8,700であった。
【0112】
<合成例11>
MAA 15.3g、CHMI 35.5g、HEMA25.5g、MMA23.7g、AIBN 5.0gをPMA 233.3gに溶解し90℃にて20時間反応させることによりアクリル重合体溶液(固形分濃度30質量%)を得た(P11)。得られたアクリル重合体のMnは4,100、Mwは7,600であった。
【0113】
<合成例12>
CHMI 6.7g、HEMA 6.7g、MAA 3.3g、TMSSMA 25.0g、PFHMA 14.7g、BEMA 10.0g、AIBN 2.3gをPMA 160.8gに溶解し90℃にて20時間反応させることによりアクリル重合体溶液(固形分濃度30質量%)を得た(P12)。得られたアクリル重合体のMnは5,400、Mwは8,600であった。
【0114】
【表1】
【表2】
【0115】
<実施例1乃至7及び比較例1乃至5>
次の表3に示す組成に従い、(A)成分の溶液、(B)成分の溶液、(C)成分の溶液、(D)成分、(E)成分、(F)成分を所定の割合で(G)溶剤に溶解し、室温で3時間撹拌して均一な溶液とすることにより、各実施例及び各比較例のポジ型感光性樹脂組成物を調製した。
【0116】
【表3】
【0117】
[接触角の評価]
ポジ型感光性樹脂組成物をシリコンウェハ上にスピンコーターを用いて塗布した後、温度100℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚2.5μmの塗膜を形成した。この塗膜を0.4質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム(以下、TMAHと称す)水溶液に60秒間浸漬した後、超純水で20秒間流水洗浄を行った。次いでこの塗膜を温度230℃で30分間加熱することによりポストベークを行い、膜厚2.0μmの硬化膜を形成した。この硬化膜上の水およびアニソールの接触角を協和界面科学(株)製Drop Masterを用いて測定した。得られた結果を表4に示す。
【0118】
[UVオゾン処理耐性の評価]
ポジ型感光性樹脂組成物をシリコンウェハ上にスピンコーターを用いて塗布した後、温度100℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚2.5μmの塗膜を形成した。この塗膜を0.4質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム(以下、TMAHと称す)水溶液に60秒間浸漬した後、超純水で20秒間流水洗浄を行った。次いでこの塗膜を温度230℃で30分間加熱することによりポストベークを行い、膜厚2.0μmの硬化膜を形成した。この硬化膜を(株)テクノビジョン製UV−312を用いて10分間オゾン洗浄した。オゾン洗浄処理した膜上の水およびアニソールの接触角を協和界面科学(株)製Drop Masterを用いて測定した。得られた結果を表4に示す。
【0119】
[パターン形状の評価]
ポジ型感光性樹脂組成物をシリコンウェハ上にスピンコーターを用いて塗布した後、温度100℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚2.5μmの塗膜を形成した。この塗膜に20μmのラインアンドスペースパターンのマスクを介しキヤノン(株)製紫外線照射装置PLA−600FAにより365nmにおける光強度が5.5mW/cm
2の紫外線を一定時間照射し、次いで温度110℃で120秒間ホットプレート上において露光後加熱(PEB)を行った。その後0.4%TMAH水溶液に60秒間浸漬することで現像を行った後、超純水で20秒間流水洗浄を行った。次いでこのラインアンドスペースパターンが形成された塗膜を温度230℃で30分間加熱することによりポストベークを行い硬化させた。硬化したラインアンドスペースパターンの断面形状を(株)日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4100を用いて観察した。得られた結果を表4に示す。
【0120】
[溶剤耐性の評価]
ポジ型感光性樹脂組成物をシリコンウェハ上にスピンコーターを用いて塗布した後、温度100℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚2.5μmの塗膜を形成した。この塗膜を0.4質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム(以下、TMAHと称す)水溶液に60秒間浸漬した後、超純水で20秒間流水洗浄を行った。次いでこの塗膜を温度230℃で30分間加熱することによりポストベークを行い、膜厚2.0μmの硬化膜を形成した。この硬化膜をN−メチル−2−ピロリドンに1分間浸漬した後膜厚を測定し、ポストベーク後の膜厚から3%以上の変化がなかったものを○、3%以上の変化が見られたものを×とした。得られた結果を表4に示す。
【0121】
[感度の評価]
ポジ型感光性樹脂組成物をシリコンウェハ上にスピンコーターを用いて塗布した後、温度100℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚2.5μmの塗膜を形成した。この塗膜にキヤノン(株)製紫外線照射装置PLA−600FAにより365nmにおける光強度が5.5mW/cm
2の紫外線を一定時間照射し、次いで温度110℃で120秒間ホットプレート上において露光後加熱(PEB)を行った。その後0.4%TMAH水溶液に60秒間浸漬することで現像を行った後、超純水で20秒間流水洗浄を行った。露光部において溶け残りのなくなる最低の露光量(mJ/cm
2)を感度とした。得られた結果を表4に示す。
【0122】
[保存安定性の評価]
ポジ型感光性樹脂組成物を23℃にて1週間保管し調製後の粘度と比較して粘度変化が10%以上見られたものを×、10%以下のものを○とした。得られた結果を表4に示す。
【0123】
[リワーク性の評価]
ポジ型感光性樹脂組成物をシリコンウェハ上にスピンコーターを用いて塗布した後、温度100℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚2.5μmの塗膜を形成した。この塗膜に20μmのラインアンドスペースパターンのマスクを介しキヤノン(株)製紫外線照射装置PLA−600FAにより365nmにおける光強度が5.5mW/cm
2の紫外線を一定時間照射し、次いで温度110℃で120秒間ホットプレート上において露光後加熱(PEB)を行った。その後0.4%TMAH水溶液に60秒間浸漬させて現像した後、超純水で20秒間流水洗浄を行った。得られたラインアンドスペースパターンをPGMEAに2分間浸漬した。パターンが完全に消失したものを○、パターンが残存しているものを×とした。得られた結果を表4に示す。
【0124】
【表4】
【0125】
表4に示すように、実施例1乃至実施例7においては、UV−O
3照射後も水及びアニソールの撥液性は維持された。また、ポストベーク時にはリフローを起こさず、台形のパターン形状を維持するとともに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの浸漬によりパターンが完全に消失し、リワーク性にも優れるとする結果が得られた。
【0126】
一方、比較例1及び比較例2においては、ポストベーク後に十分な水及びアニソールの撥液性が得られず、特に比較例1においては、UV−O
3照射後に撥液性が大きく減少した。また比較例3及び比較例4においては、ポストベーク時にリフローが起こり、パターン形状が台形から半円形に変化した。さらに比較例5は、保存安定性に欠け、また、ポストベーク後のリワーク性に劣るとする結果となった。