(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記過硫酸洗浄工程の後に、前記過硫酸洗浄工程で洗浄された前記半導体をアンモニアと過酸化水素とを含む溶液に接触させて前記半導体を洗浄するSC−1洗浄工程をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載のメタルゲート半導体の洗浄方法。
前記メタルゲートの材料が、TiN、NiSiおよびTiAlNから選択される1種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のメタルゲート半導体の洗浄方法。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程では、レジスト残渣、微粒子、金属および自然酸化膜などを剥離洗浄するプロセスが行われている。これらのプロセスにおける洗浄液としては、濃硫酸と過酸化水素との混合溶液(SPM)や、濃硫酸にオゾンガスを溶解させたオゾン含有硫酸溶液(SOM)が多用されている。
高濃度の硫酸に過酸化水素やオゾンを加えると硫酸が酸化されて過硫酸(ペルオキソ一硫酸およびペルオキソ二硫酸)が生成される。過硫酸は、自己分解する際に強い酸化力を発するため、洗浄能力が高く、基板などの洗浄に有効であることが知られている。なお、過硫酸の強い酸化力は、その自己分解により生じる硫酸ラジカルにより発揮されていると考えられる。
【0003】
半導体製造におけるフォトレジスト剥離については、一般に、半導体に用いられている使用材料がポリシリコンなどのゲート電極材料や、酸化シリコンなどの誘電体材料であるため、主として次の2種類の洗浄工程で処理されることが多い(例えば特許文献1参照)。
その1つは、レジストを灰化するアッシング処理の後、SPMまたはSOMによる洗浄、およびSC−1(Standard Clean1)による洗浄を順次で行い、その後、必要に応じてSC−2(Standard Clean2)による洗浄を行う洗浄工程である。
他の1つは、アッシング処理を行わずに、SPMまたはSOMによる洗浄、およびSC−1による洗浄を順次行い、その後、必要に応じてSC−2による洗浄を行う洗浄工程である。なお、SC−1はアンモニアと過酸化水素水との混合溶液であり、SC−2は塩酸と過酸化水素水との混合溶液である。
前者の工程は、一般的に、中ないし高ドーズ量でドーパントが導入された、剥離し難いレジストを対象にしている。
後者の工程は、一般的に、低ドーズ量(例えば5×10
13atoms/cm
2未満)でドーパントが導入された、剥離し易いレジストを対象にしている。
【0004】
しかし、最近では、線幅45nm以下としたメタルゲートを用いた半導体が開発されて実用化されるに至っている。この種の半導体では、電極としてTiNなどからなるメタルゲートが用いられ、誘電体としてHfO
2系などの高誘電率(High−K)材料が用いられるようになっている。
メタルゲートやHigh−K誘電体を用いた半導体でも、製造工程ではフォトレジストを剥離する洗浄が必要とされる。しかし、この半導体の洗浄に、SPMやSOMなどのこれまでの硫酸系溶液を用いると、レジストを剥離するのみならず、メタルゲート材料をエッチングすることが知られている(例えば特許文献2、3参照)。
【0005】
アッシング後に残存するレジスト残渣は、本来、SPMなどの硫酸系溶液で除去することが望ましいが、上述のように硫酸系溶液はメタルゲート材料をエッチングすることになる。
【0006】
ところで、硫酸溶液を電気分解して得られた硫酸電解液には、上述のように高い酸化力を有する過硫酸が含まれており、このような過硫酸を含有する硫酸電解液を洗浄液として半導体基板などを洗浄する基板の洗浄方法が提案されている(例えば特許文献4、5参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のとおり、SPMやSOMなどを用いた洗浄では、レジストを剥離するのみならず、メタルゲート材料をエッチングしてしまう。また、過硫酸を含む硫酸電解液を用いた洗浄でも、同様のエッチングの問題が生じることがある。今後、高集積化によりメタルゲートの微細化がさらに進行した場合には、洗浄液によるメタルゲートのエッチングが、デバイス特性、製造歩留まりなどに大きな影響を与える恐れがある。
【0009】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、メタルゲートのエッチングを抑制しつつ、半導体に付着したレジストを効果的に剥離することができるメタルゲート半導体の洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明のメタルゲート半導体の洗浄方法のうち、第1の本発明は、メタルゲートを有する半導体を洗浄するメタルゲート半導体の洗浄方法において、
前記半導体上のフォトレジストを灰化するアッシング工程と、
前記アッシング工程の後に、前記アッシング工程を経た前記半導体に過硫酸含有硫酸溶液を接触させて前記半導体上の前記フォトレジストを前記半導体から剥離する過硫酸洗浄工程と、を有し、
前記過硫酸洗浄工程における前記過硫酸含有硫酸溶液は、過酸化水素濃度が16mM as O以下、硫酸濃度が90質量%以上96質量%以下、液温度が70℃以上130℃以下であり、過硫酸濃度が0.50mM as O以上25mM as O以下であることを特徴とする。
【0011】
第2の本発明のメタルゲート半導体の洗浄方法は、前記第1の本発明において、前記過硫酸洗浄工程における前記過硫酸含有硫酸溶液と前記半導体との接触時間が5分以内であることを特徴とする。
【0012】
第3の本発明のメタルゲート半導体の洗浄方法は、前記第1または第2の本発明において、前記過硫酸洗浄工程の後に、前記過硫酸洗浄工程で洗浄された前記半導体をアンモニアと過酸化水素とを含む溶液に接触させて前記半導体を洗浄するSC−1洗浄工程をさらに有することを特徴とする。
【0013】
第4の本発明のメタルゲート半導体の洗浄方法は、前記第1〜第3の本発明のいずれかにおいて、前記メタルゲートの材料が、TiN、NiSiおよびTiAlNから選択される1種以上であることを特徴とする。
【0014】
第5の本発明のメタルゲート半導体の洗浄方法は、前記第1〜第4の本発明のいずれかにおいて、前記過硫酸含有硫酸溶液が、硫酸溶液を電気分解して得られた硫酸電解液であることを特徴とする。
【0015】
第6の本発明のメタルゲート半導体の洗浄方法は、前記第1〜第5の本発明のいずれかにおいて、前記過硫酸含有硫酸溶液が、硫酸溶液にオゾンを含有させたものであることを特徴とする。
【0016】
第7の本発明のメタルゲート半導体の洗浄方法は、前記第1〜第6の本発明のいずれかにおいて、前記メタルゲートのゲート幅が45nm以下であることを特徴とする。
【0017】
第8の本発明のメタルゲート半導体の洗浄方法は、前記第1〜第7の本発明のいずれかにおいて、前記過硫酸洗浄工程が、枚葉式の洗浄により実施されることを特徴とする。
【0018】
本願発明者らは、TiNなどのメタルゲート材料の過硫酸含有硫酸溶液によるエッチング挙動を実験的に明らかにし、過硫酸含有硫酸溶液を洗浄液として用いる際の洗浄条件を鋭意検討した。その結果、メタルゲート材料のエッチングを抑制することができる洗浄条件を見出した。
【0019】
TiNなどのメタルゲート材料のエッチング挙動に関しては、以下の(a)〜(d)に掲げる点が明らかになっている。
(a)硫酸溶液中に過酸化水素が存在すると、メタルゲート材料のエッチング速度が大きい。
(b)硫酸溶液中の水分の含有量が大きいほど、メタルゲート材料のエッチング速度が大きくなる。
(c)硫酸溶液の液温度が高いほど、メタルゲート材料のエッチング速度が大きくなる。
(d)硫酸溶液の酸化剤濃度(過硫酸濃度)が高いほど、メタルゲート材料のエッチング速度が大きくなる。なお、メタルゲート材料としては、TiNのほか、NiSi、TiAlNなどが挙げられるが、これらも上記TiNと同様のエッチング挙動を示すことが確認されている。
【0020】
濃硫酸と過酸化水素との混合溶液であるSPMによる洗浄の場合、過酸化水素の添加を避けられない。メタルゲート材料のエッチングを抑制することができる濃度まで過酸化水素の濃度を低くすることも考えられるが、発生するカロ酸の濃度も低くなり、アッシング後のレジスト残渣を除去することが困難になってしまう。仮に、溶液調製直後のSPMではメタルゲート材料のエッチングを抑えることができたとしても、洗浄処理を繰り返すためには洗浄排液を循環して過酸化水素の添加を行わなければならない。このため、メタルゲート材料のエッチングを抑制しつつレジストを除去することは、SPMによる洗浄では困難である。
【0021】
そこで、本発明では、メタルゲート材料のエッチングを抑制するべく、メタルゲートを有する半導体を洗浄する過硫酸含有硫酸溶液として、過酸化水素濃度が16mM as O以下であり、硫酸濃度が90質量%以上96質量%以下であり、液温度が70℃以上130℃以下であり、過硫酸濃度が0.50mM as O以上25mM as O以下であるものを使用する。なお、過酸化水素濃度、過硫酸濃度の単位に用いる[mM as O]は、各濃度を各物質から発生する酸素原子の濃度に換算した場合におけるミリモル濃度を表している。
このような過硫酸含有硫酸溶液は、硫酸溶液を電気分解して得ることができる。また、硫酸溶液にオゾンを含有させて、オゾンと硫酸との反応により過硫酸を生成させて得ることもできる。なお、硫酸電解液にオゾンを含有させた過硫酸含有硫酸溶液を用いることも可能である。
ただし、上記のような条件の過硫酸含有硫酸溶液は、SPMなどと比較してレジスト剥離性能が低い。そこで、本発明では、過硫酸含有硫酸溶液を洗浄液として用いた過硫酸洗浄工程の前工程として、レジストが付着した半導体にアッシング処理を行うアッシング工程を行い、レジストを灰化しておく。こうして、アッシング工程の後に、上記過硫酸含有硫酸溶液による過硫酸洗浄工程を行うことにより、メタルゲート材料のエッチングを抑制しつつ、半導体に付着したレジストを確実に剥離することができる。
以下、本発明の工程および条件において説明する。
【0022】
(1)アッシング工程
本発明では、過硫酸洗浄工程に先だってアッシング工程が行われる。
アッシング工程は、一般に、紫外線等の光を照射してガスとレジストの化学反応を使ってレジスト剥離をする光励起アッシングと、ガスを高周波等でプラズマ化し、そのプラズマを利用してレジストを剥離するプラズマアッシングの2つに大別される。しかし、本発明としてはアッシングの方法は特に限定されるものではない。要はフォトレジストを加熱・燃焼し無機化(灰化)できるものであればよい。
なお、アッシングでは、灰化の程度を調整することも可能であるが、これに応じて後述する過硫酸洗浄工程の条件範囲内で過硫酸洗浄の程度を調整することが可能である。
【0023】
(2)過硫酸洗浄工程
(a)過酸化水素濃度:16mM as O以下
上記の通りSPMでは過酸化水素の存在を阻止し得ず、16mM as Oを超過してしまう。SPM以外、例えば硫酸電解や硫酸へのオゾン吹き込みにより製造した過酸化水素の含有がごく少量(16mM as O以下)の過硫酸含有硫酸溶液が好ましい。
(b)硫酸濃度:90質量%以上96質量%以下
メタルゲート材料のエッチングを抑制するため、硫酸溶液中の水分含有量が少ない方が好適なので硫酸濃度を90質量%以上とする。また、硫酸濃度を高くすることにより、電解における過硫酸の生成効率が悪化するので硫酸濃度を96質量%以下とする。このため硫酸濃度を90質量%以上96質量%以下に定める。
【0024】
(c)過硫酸濃度:0.50mM as O以上、25mM as O以下
アッシング処理後の半導体に対し、十分なレジスト剥離効果があり、かつメタルゲート材料のエッチングを防ぐために、過硫酸濃度は重要である。剥離効果を十分に得るためには0.50mM as O以上の過硫酸濃度が必要である。一方、25mM as Oを越える濃度で過硫酸を含有すると、メタルゲート材料のエッチング速度が大きくなる。したがって、過硫酸濃度は0.50mM as O以上、25mM as O以下とする。なお、同様の理由で下限を5mM as O、上限を16mM as Oとするのが望ましい。なお、下限を5mM as Oとする場合は、硫酸電解液を過硫酸含有硫酸液とするのが過硫酸生成効率の点で好ましい。
【0025】
(d)液温度:70℃以上130℃以下
過硫酸含有硫酸溶液の液温は、低すぎるとレジスト剥離効果が小さくなり、高すぎると酸化力が強くなりすぎてメタルゲート材料のエッチング速度が大きくなる。このため、過硫酸含有硫酸溶液温度は70℃以上、130℃以下に定める。
なお、液温は、洗浄時に必要な温度として規定されるものである。
【0026】
(e)接触時間:5分以内
上記のように過酸化水素濃度、硫酸濃度、液温度、及び過硫酸濃度が設定された過硫酸含有硫酸溶液に半導体を接触させる接触時間は、5分以内であることが望ましい。同じ条件でのエッチング速度はほぼ一定であるため、エッチング量は接触時間に比例する。接触時間が5分を超えると、メタルゲート材料のエッチング量が過度に多くなってしまうため好ましくない。
【0027】
(f)洗浄装置
また、上記過硫酸含有硫酸溶液を用いた過硫酸洗浄工程を実施する洗浄装置は、枚葉式であってもバッチ式であってもよいが、枚葉式であることが望ましい。枚葉式は、半導体一枚ずつに対し、過硫酸含有硫酸溶液を滴下、スプレーなどにより接触させて洗浄を行うものであり、短時間で洗浄を行うことでメタルゲート材料のエッチングを低減することが可能になる。なお、半導体を過硫酸含有硫酸溶液に浸漬して洗浄するバッチ式を採用する場合にも短時間洗浄によって、メタルゲート材料のエッチングを抑制しつつレジストの剥離を行うことは可能である。
【0028】
(3)SC−1洗浄
本発明では、上記過硫酸洗浄工程の後には、過硫酸洗浄工程で洗浄された半導体に対して、所望によりSC−1洗浄工程を行ってもよい。SC−1洗浄工程は、半導体をアンモニアと過酸化水素とを含む溶液(SC−1)に接触させて半導体を洗浄するものである。過硫酸洗浄工程後にSC−1工程を行うことにより、半導体上に残存するレジスト残渣をより確実に除去することができる。
なお、SC−1洗浄工程における洗浄条件は、例えば、NH
4OH:H
2O
2:H
2O=1:(1〜2):5(容積比)、処理温度70〜80℃、処理時間10〜15分である。
【0029】
本発明の洗浄対象となる半導体は、メタルゲートを有するものであれば特に限定されるものではなく、メタルゲートが形成された半導体ウエハその他の半導体基板などである。
また、メタルゲートの材料も、本発明としては特に限定されるものではない。例えば、TiN、NiSi、およびTiAlNよりなる群から選択される1種以上のものを挙げることができる。本発明は、ゲート幅が45nm以下のメタルゲートを有する半導体の洗浄に好適に適用することができる。
【発明の効果】
【0030】
以上、説明したように、本発明によれば、メタルゲートを有する半導体を洗浄するメタルゲート半導体の洗浄方法において、
前記半導体上の前記フォトレジストを灰化するアッシング工程と、前記アッシング工程の後に、前記アッシング工程を経た前記半導体に過硫酸含有硫酸溶液を接触させて前記半導体上のフォトレジストを前記半導体から剥離する過硫酸洗浄工程と、を有し、前記過硫酸洗浄工程における前記過硫酸含有硫酸溶液は、過酸化水素濃度が16mM as O以下、硫酸濃度が90質量%以上96質量%以下、液温度が70℃以上130℃以下であり、過硫酸濃度が0.50mM as O以上25mM as O以下であるので、メタルゲートのエッチングを抑制しつつ、半導体に付着したレジストを効果的に剥離することができ、高集積化によりメタルゲートの微細化がさらに進行した場合であっても、メタルゲートのエッチングによる影響を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(実施形態1)
本発明の一実施形態の半導体の洗浄方法を
図1および
図2に基づいて説明する。
図1は本実施形態の半導体の洗浄方法における各工程を示すフローチャートである。
図2は本実施形態の半導体の洗浄方法における過硫酸洗浄工程を実施するための洗浄システムを示す概略図である。
本実施形態の半導体の洗浄方法は、メタルゲートを有する半導体ウエハを洗浄対象とし、該半導体ウエハ上に付着したレジストを剥離する。メタルゲートは、例えば、TiN、NiSi、TiAlNなどの金属材料により構成されている。また、メタルゲートのゲート幅は、例えば45nm以下である。
剥離すべきレジストは、例えば、フォトリソグラフィによるメタルゲートなどのパターニングの際にマスクとして用いられたレジスト、半導体ウエハなどへのドーパントの注入の際にマスクとして用いられたレジストなどである。
本実施形態の半導体の洗浄方法は、
図1に示すように、アッシング工程(ステップs1)と、過硫酸洗浄工程(ステップs2)と、リンス工程(ステップs3)と、SC−1洗浄工程(ステップs4)と、リンス工程(ステップs5)と、乾燥工程(ステップs6)とを有している。以下、各工程について詳述する。
【0033】
まず、アッシング工程により、半導体ウエハに対してアッシング処理を施してレジストを灰化する(ステップs1)。アッシング工程は、例えば、光励起アッシング装置、プラズマアッシング装置などにより実施することができる。
アッシング工程によるレジストの灰化の程度は、下地膜の材質や、続いて実施する過硫酸洗浄工程の洗浄条件との関係で決定することができる。例えば、灰化の程度としては、下地膜が有機膜の場合フルアッシングすると下地膜が消失するので、ハーフまたはクォーターアッシングに留める必要がある。また高ドーズされたレジストの場合、ウェット洗浄では除去しづらい表層の硬化層のみ除去するためにハーフまたはクォーターアッシングが利用されることもある。ハーフまたはクォーターアッシングはアッシング条件を変更するよりも処理時間を短くすることにより行うことが一般的である。
【0034】
次いで、過硫酸洗浄工程により、上記アッシング工程でアッシング処理を施した半導体ウエハに過硫酸含有硫酸溶液を接触させて半導体ウエハを洗浄する(ステップs2)。この工程で使用する過硫酸含有硫酸溶液は、過酸化水素濃度が16mM as O以下、硫酸濃度が90質量%以上96質量%以下であり、液温度が70℃以上130℃以下、過硫酸濃度が0.50mM as O以上25mM as O以下である。上記条件の過硫酸含有硫酸溶液は、硫酸溶液を電気分解することにより硫酸電解液として得ることができる。また、硫酸溶液にオゾンを含有させて過硫酸含有硫酸溶液を得ることもでき、硫酸電解液にさらにオゾンを添加することもできる。
アッシング工程の後に、上記硫酸濃度、液温度、および過硫酸濃度を有する過硫酸含有硫酸溶液で半導体ウエハを洗浄することにより、メタルゲートのエッチングを抑止しつつ、半導体ウエハに付着したレジストを確実に剥離することができる。以下に、過硫酸洗浄工程について詳細に説明する。
【0035】
図2に、上記過硫酸洗浄工程を実施するための洗浄システムの例を示す。該洗浄システムは、上記過硫酸洗浄工程を実施する洗浄装置30と、硫酸電解液からなる上記条件の過硫酸含有硫酸溶液の生成および再生を行う電解装置1とを有している。
【0036】
電解装置1は無隔膜型であり、少なくとも硫酸溶液と接液する部分をダイヤモンド電極とした陽極1aおよび陰極1bが隔膜で隔てることなく内部に配置され、両電極には図示しない直流電源が接続されている。なお、本発明としては、電解装置を隔膜型によって構成することも可能であり、バイポーラ電極を備えるものであってもよい。
上記電解装置1には、電解液貯留槽20が電解側循環ライン11を介して循環通液可能に接続されている。送り側の電解側循環ライン11には、硫酸溶液を循環させる第1循環ポンプ12が介設されている。
【0037】
電解液貯留槽20には、送液ポンプ21を介して送液ライン22が接続されている。
送液ライン22の送液側には、急速加熱器23が介設されており、送液ライン22の送液先端側は、洗浄開閉弁22aを介して枚葉式の洗浄装置30の洗浄液ノズル31に接続されている。なお、電解液貯留槽20には、槽内の硫酸溶液の過硫酸濃度を測定する過硫酸濃度測定器20aが備えられている。
急速加熱器23は、石英製の管路を有し、例えば近赤外線ヒータによって硫酸溶液を一過式で、洗浄装置30の洗浄液ノズル31出口で70〜130℃の液温が得られるように過硫酸含有硫酸溶液を急速加熱する。
送液ライン22には、急速加熱器23が介設された位置の下流側で、送液される過硫酸含有硫酸溶液の液温を測定する温度計24が設けられている。温度計24は、洗浄時の液温を正確に推定できるように洗浄装置30に近い位置に配置するのが望ましい。
【0038】
上記した枚葉式の洗浄装置30では、搬入された半導体ウエハ100に向けた洗浄液ノズル31と、半導体ウエハ100を載置して回転させる回転台(図示しない)とを備える。洗浄液ノズル31で、洗浄液として酸化性物質として過硫酸を含む上記過硫酸含有硫酸溶液がスプレーされるか少量ずつ流れ落ちて、回転台に保持された半導体ウエハ100に供給される。さらに、洗浄装置30には、洗浄排液の共通排液ライン40が接続されている。共通排液ライン40は、回収ライン41と廃棄ライン42とに分岐しており、それぞれに回収開閉弁41aと廃棄開閉弁42aとが介設されている。廃棄ライン42の送液側は、系外に伸長して、洗浄排液を排出する。
回収ライン41の送液側端部は、洗浄排液を回収する洗浄排液回収部44に接続されており、該洗浄排液回収部44の下流側には上流側環流ライン46が接続されており、上流側環流ライン46に第1環流ポンプ45が介設されている。
【0039】
上流側環流ライン46の送液側端部には、洗浄に用いられた過硫酸含有硫酸溶液、すなわち洗浄排液を一時的に貯留する分解貯留槽50が接続されている。分解貯留槽50には、下流側循環ライン52が接続されており、該下流側循環ライン52は、第2環流ポンプ51、冷却器53を順次介して送液先端側が前記電解液貯留槽20に接続されている。また、送液ライン22からは、前記洗浄開閉弁22aの上流側で分岐送液ライン47が分岐しており、分岐送液ライン47は、分岐開閉弁47aを介して分解貯留槽50に接続されている。
【0040】
上流側環流ライン46および下流側環流ライン52は、両者によって洗浄液環流ラインを構成している。
前記した洗浄開閉弁22a、分岐開閉弁47a、回収開閉弁41a、廃棄開閉弁42aの動作は、制御部60によって制御される。制御部60は、CPUおよびこれを動作させるプログラムを主構成としており、その他に、作業エリアとなるRAM、プログラムなどを格納するROM、制御パラメータなどを格納した不揮発メモリなどを備えている。
【0041】
次に、上記構成からなる過硫酸洗浄システムの動作について説明する。
電解液貯留槽20には、硫酸濃度90質量%以上(好適には94質量%以上)、96質量%以下(好適には95質量%以下)の硫酸溶液が貯留される。前記硫酸溶液は、第1循環ポンプ12により電解側循環ライン11を通じて送液され、電解装置1の入液側に導入される。電解装置1では、直流電源によって陽極1a、陰極1b間に通電され、電解装置1内に導入された硫酸溶液が電解される。なお、該電解によって電解装置1では、陽極側で過硫酸を含む酸化性物質が生成される。
【0042】
酸化性物質は、前記硫酸溶液と混在した状態で電解側循環ライン11を通じて電解液貯留槽20に返送される。硫酸溶液は、過硫酸を含んでおり、電解側循環ライン11を通じて、電解液貯留槽20に戻された後、繰り返し電解装置1に送られ、電解により過硫酸の濃度が高められ、過硫酸含有硫酸溶液が生成される。
【0043】
電解液貯留槽20内の過硫酸濃度は、過硫酸濃度測定器20aで測定され、電解液貯留槽20内の過硫酸濃度が所定の濃度となるように、電解装置1の電解条件や第1循環ポンプによる循環条件などが調整される。なお、過硫酸濃度測定器20aの構成は本発明としては特に限定されるものではなく、例えば既知のものを用いることができる。
なお、過硫酸濃度の測定は、洗浄液ノズル31に近い送液ライン22で測定するようにしてもよい。
【0044】
電解液貯留槽20内の過硫酸濃度が適度になると、電解液貯留槽20内の過硫酸含有硫酸溶液の一部は送液ポンプ21によって送液ライン22を通じて送液される。送液ライン22を流れる過硫酸含有硫酸溶液は、急速加熱器23に達して急速加熱され、さらに洗浄開閉弁22aを開けた送液ライン22を通じて洗浄装置30に送液される。
【0045】
急速加熱器23では、過硫酸含有硫酸溶液が流路を通過しながら近赤外線ヒータによって急速に加熱される。急速加熱器23では、洗浄装置30に送液されて洗浄液ノズル31の出口で70〜130℃の範囲の液温を有するように加熱される。急速加熱器23を洗浄装置30の近傍に配置することで、加熱温度を利用時の温度とほぼ同じにすることができる。送液ライン22には、前記したように温度計24が設けられており、急速加熱器23で加熱された過硫酸含有硫酸溶液の液温が測定され、洗浄時の液温が70℃以上130℃以下となるように、温度計24によって測定される液温の適正値を定めておく。この適正値が得られるように急速加熱器23での加熱条件や送液ポンプ21による送液条件を調整する。
【0046】
加熱された過硫酸含有硫酸溶液は、送液ライン22を通じて枚葉式の洗浄装置30に洗浄液として送液され、半導体ウエハ100の洗浄に使用される。このとき前記過硫酸含有硫酸溶液は、該溶液と半導体ウエハ100との接触時間が1秒以内になるように、流量等が調整されているのが望ましい。洗浄装置30では、送液ライン22により送液される過硫酸含有硫酸溶液が洗浄液ノズル31を通じて半導体ウエハ100に供給される。
【0047】
半導体ウエハ100に供給された過硫酸含有硫酸溶液は、半導体ウエハ100の回転による遠心力を受けて、半導体ウエハ100の上面を周縁部に向けて拡がる。これによって、半導体ウエハ100の上面に過硫酸含有硫酸溶液が行き渡り、半導体ウエハ100の洗浄が行われる。過硫酸含有硫酸溶液は、半導体ウエハ100の回転による遠心力によって、その周縁から振り切られて側方に飛散し、処理カップ32内に落下する。処理カップ32の底壁に至る洗浄排液は、共通排液ライン40を通じて洗浄装置30外に取り出される。
【0048】
洗浄排液回収部44に回収された洗浄排液は、第1環流ポンプ45により上流環流ライン46を通じて分解貯留槽50に送液される。
分解貯留槽50の液滞留時間は10〜20分であり、枚葉式洗浄のインターバルに比較して長い。洗浄装置30に液を送っていない間(例えば、3分−1分=2分)は、洗浄開閉弁22aを閉じ、分岐開閉弁47aを開けて急速加熱器23からの液を分岐送液ライン47を通じて直接、分解貯留槽50に受け入れ、これを酸化剤として未分解レジストを酸化分解することができる。レジスト濃度が下がった洗浄排液は、第2環流ポンプ51により下流側環流ライン52を通じて電解液貯留槽20へ送り返される。この際には、冷却器53によって洗浄排液を電解に適した温度、例えば40〜90℃に冷却する。電解液貯留槽20に戻された洗浄排液は、電解側循環ライン11で循環しつつ電解装置1で、再度電解を行って過硫酸濃度を高め、洗浄液として再生し、洗浄に循環使用する。
【0049】
上記過硫酸洗浄工程とリンス洗浄工程の後、SC−1洗浄工程において、半導体ウエハをアンモニアと過酸化水素とを含む溶液に接触させて半導体ウエハを洗浄する(ステップs4)。SC−1洗浄工程における洗浄条件は、例えば、NH
4OH:H
2O
2:H
2O=1:(1〜2):5(容積比)、処理温度70〜80℃、処理時間10〜15分である。
【0050】
次いで、リンス工程により、SC−1洗浄工程で洗浄された半導体ウエハを純水などでリンスし(ステップs5)、続いて、乾燥工程により、リンス工程でリンスされた半導体ウエハを乾燥する(ステップs6)。
【0051】
(実施形態2)
次に、本発明の他の実施形態の半導体の洗浄方法を
図3に基づいて説明する。
図3は本実施形態の半導体の洗浄方法における過硫酸洗浄工程を実施するための洗浄システムを示す概略図である。なお、上記実施形態1と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略または簡略化する。
上記実施形態1では、過硫酸洗浄工程を実施する洗浄装置として枚葉式の洗浄装置30を用いる場合について説明したが、バッチ式の洗浄装置を用いてもよい。本実施形態の半導体の洗浄方法は、過硫酸洗浄工程を実施する洗浄装置として、枚葉式の洗浄装置30に代えてバッチ式の洗浄装置70を用いるものである。
【0052】
図3に示すように、バッチ式の洗浄装置70は、過硫酸含有硫酸溶液が満たされる洗浄槽70aと、洗浄槽70a内の底部に設置されたヒータ70bとを有している。
洗浄槽70aの出液側には、共通排液ライン71が接続されている。共通排液ライン71には、ポンプ72が介設されている。また、洗浄槽70aの入液側には、共通供給ライン73が接続されている。共通排液ライン71は下流端で二つのラインに分岐し、共通供給ライン73は上流端で二つのラインが合流しており、共通排液ライン71の分岐点71aと共通供給ライン73の合流点73aとに亘って、使用側循環用接続ライン74が接続されている。
上記共通排液ライン71、使用側循環用接続ライン74、共通供給ライン73によって使用側循環ラインが構成されている。
【0053】
また、共通排液ライン71の分岐点71aと共通供給ライン73の合流点73aには、使用側貯留部循環用接続ライン75が電解液貯留槽20を介して接続されて、洗浄装置70と電解液貯留槽20との間で過硫酸含有硫酸溶液の循環が可能になっている。共通排液ライン71、使用側貯留部循環用接続ライン75、共通供給ライン73によって使用側貯留部循環ラインが構成されている。
上記のように共通排液ライン71と共通供給ライン73とは、使用側循環ラインと使用側貯留部循環ラインとで共用されている。
【0054】
使用側貯留部循環用接続ライン75の往路側には、冷却器76が介設され、下流端で電解液貯留槽20に接続されている。
また、使用側貯留部循環用接続ライン75の復路側には、ポンプ77が介設されており、下流端が合流点73aに接続されている。
【0055】
また、電解液貯留槽20の他の出液側と他の入液側には、電解装置1を介して電解側循環ライン11が接続されて、電解液貯留槽20と電解装置1との間で硫酸溶液の循環が可能になっている。電解側循環ライン11の往路には、第1循環ポンプ12が介設されている。
【0056】
次に、上記
図3に示す過硫酸洗浄システムの動作について説明する。
洗浄槽70aには、硫酸溶液が満たされ、使用側循環ライン、使用側貯留部循環ラインおよび電解側循環ライン11を通じて硫酸溶液が循環される。この際に電解装置1で陽極1a、陰極1b間に通電がされ、電解装置1に通液される硫酸溶液が電解されて硫酸電解液が得られる。洗浄槽70aでは、硫酸溶液の循環によって上記所定の過硫酸濃度となった硫酸電解液で満たされ、該硫酸電解液は、ヒータ70bによって70〜130℃に加熱される。
こうして洗浄槽70aに満たされた上記所定の条件の過硫酸含有硫酸溶液に複数枚の半導体ウエハ101が浸漬されて、過硫酸洗浄工程が実施される。
【0057】
洗浄槽70a内の硫酸溶液は、上記循環に伴ってポンプ72により共通排液ライン71を通じて排液される。共通排液ライン71に排液された硫酸溶液は、硫酸溶液が分岐点71aへと至る。なお、共通排液ライン71にフィルタを介設して、該フィルタにより、硫酸溶液中のレジストなどの固形分を捕捉して該硫酸溶液から除去してもよい。
【0058】
分岐点71aでは、硫酸溶液の一部が使用側循環用接続ライン74に流入し、残部が使用側貯留部循環用接続ライン75の往路に流入する。
分岐点71aで使用側貯留部循環用接続ライン75の往路に適量流入した硫酸溶液は、冷却器76により強制冷却され、電解液貯留槽20の入液側に導入される。冷却器76では、例えば10〜80℃に硫酸溶液を強制冷却する。
また、電解液貯留槽20では、第1循環ポンプ12により電解側循環ライン11を通じて硫酸溶液が出液され、冷却器78で電解装置1における電解に好適な温度である、例えば30℃〜70℃に硫酸溶液を強制冷却する。
【0059】
電解装置1では、電源装置により通電された陽極1aと陰極1bとの間に硫酸溶液が通液されつつ電解されて、該硫酸溶液中に過硫酸が生成される。過硫酸を含む硫酸溶液は、電解装置1の排液側から排液され、電解側循環ライン11の復路を通じて電解液貯留槽20に戻される。これを繰り返すことにより電解液貯留槽20内の硫酸電解液における過硫酸濃度が高まる。
電解液貯留槽20内の硫酸電解液は、ポンプ77により使用側貯留部循環用接続ライン75の復路を通じて取り出され、合流点73aへと送液される。なお、使用側貯留部循環用接続ライン75の復路にフィルタを介設して、該フィルタにより、硫酸電解液中の微粒子や電解によって生じた硫黄析出物などの固形物を捕捉して該硫酸電解液から除去してもよい。
使用側貯留部循環用接続ライン75の復路を通して合流点73aに送液された硫酸電解液は、使用側循環用接続ライン74を通じて送液される硫酸溶液と合流点73aで合流した後、共通供給ライン73を通して洗浄槽70aに導入され、再度洗浄に用いられる。
【0060】
このように、枚葉式の洗浄装置30に代えて、複数枚の半導体ウエハ101を過硫酸含有硫酸溶液に浸漬して洗浄するバッチ式の洗浄装置70を用いて、過硫酸洗浄工程を実施することもできる。バッチ式の洗浄洗浄装置70を用いる場合にも、前記したように半導体ウエハ101と過硫酸含有硫酸溶液との接触時間は5分以内となるようにするのが望ましい。
【0061】
(実施形態3)
次に、本実施形態のさらに他の実施形態の半導体の洗浄方法を
図4に基づいて説明する。
図4は本実施形態の半導体の洗浄方法における過硫酸洗浄工程を実施するための洗浄システムを示す概略図である。なお、上記実施形態1および2と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略または簡略化する。
上記実施形態1では、過硫酸含有硫酸溶液として、硫酸溶液を電気分解して得られた硫酸電解液を用いる場合について説明したが、過硫酸含有硫酸溶液は、他の方法により得たものであってもよい。本実施形態の半導体の洗浄方法は、過硫酸含有硫酸溶液として、硫酸溶液にオゾンを含有させて、硫酸とオゾンとの反応により過硫酸を生成させて得たものを用いる。このため、本実施形態の半導体の洗浄方法は、電解装置1に代えて、硫酸溶液にオゾンを含有させて過硫酸含有硫酸溶液を生成する過硫酸含有硫酸溶液生成装置80を用いる。
【0062】
図4に示すように、電解液貯留槽20に代えて、貯留槽83が設けられている。貯留槽83には、上記と同様に送液ライン22および下流側循環ライン52が接続されている。
また、貯留槽83には、前記各実施形態と同様に貯留槽83内の過硫酸濃度を測定する過硫酸濃度測定器83aが設けられている。また、貯留槽83には、貯留槽83内の硫酸溶液にオゾンガスを吹き込むオゾン吹込部82aが設けられている。
【0063】
過硫酸含有硫酸溶液生成装置80は、硫酸濃度が90質量%以上96質量%以下の硫酸溶液にオゾンを溶解するオゾン溶解部81と、オゾン溶解部81内の硫酸溶液にオゾンガスを吹き込むオゾン吹込部82bとを有している。オゾン溶解部81には、貯留槽83が循環ライン84を介して循環通液可能に接続されている。送り側の循環ライン84には、硫酸溶液を循環させる第1循環ポンプ12が介設されている。
【0064】
過硫酸含有硫酸溶液生成装置80では、次のようにして過硫酸含有硫酸溶液が生成される。貯留槽83に貯留された硫酸溶液が第1循環ポンプ12により循環ライン84を通じてオゾン溶解部81に送液され、オゾン吹込部82bによりオゾンガスが吹き込まれる。これにより、硫酸溶液にオゾンが溶解し、硫酸とオゾンとの反応により過硫酸が生成される。オゾン溶解部81内の過硫酸を含む硫酸溶液は、循環ライン84を通じて、貯留槽83に戻された後、繰り返し過硫酸含有硫酸溶液生成装置80に送られ、オゾンガスの吹き込みにより過硫酸の濃度が高められる。こうして、過硫酸含有硫酸溶液が生成される。
貯留槽83内の過硫酸濃度は過硫酸濃度測定器83aで測定されている。過硫酸濃度が適度になると、貯留槽83内の過硫酸含有硫酸溶液の一部は送液ポンプ21によって送液ライン22を通じて送液され、洗浄装置30において洗浄液として用いられる。この際に、洗浄時に適温が得られるように温度計24で過硫酸含有硫酸溶液の温度が測定されている。
なお、貯留槽83内の過硫酸含有硫酸溶液には、オゾン吹込部82aにより継続的にまたは断続的にオゾンガスが吹き込まれてオゾンが溶解される。これにより、貯留槽83内の過硫酸含有硫酸溶液の過硫酸濃度を一定に維持することができる。
【0065】
洗浄装置30において生じた洗浄排液は、上記実施形態1と同様に、回収ライン41を通して洗浄排液回収部44に回収され、または廃棄ライン42を通して系外に排出される。洗浄排液回収部44に回収された洗浄排液は、上記実施形態1と同様に分解貯留槽50に送液されて未分解レジストの酸化分解が行われ、その後、第2環流ポンプ51により下流側環流ライン52を通じて貯留槽83へ送り返される。貯留槽83に戻された洗浄排液は、循環ライン84で循環しつつ過硫酸含有硫酸溶液生成装置80で、再度オゾンガスの吹き込みを行って過硫酸濃度を高め、洗浄液として再生し、洗浄に循環使用する。
【実施例】
【0066】
(実験例1)
過硫酸含有硫酸溶液の硫酸濃度とメタルゲート材料のエッチング速度との関係を求めるべく以下の実験を行った。
実験では、メタルゲート材料の1種であるTiN膜を半導体ウエハ上に形成したものを供試材とし、この供試材を硫酸濃度の異なる硫酸電解液に浸漬して処理し、TiN膜のエッチング速度を測定した。なお、硫酸電解液の液温度は130℃、過硫酸濃度は15〜21mM as Oとし、処理時間は5分とした。この硫酸電解液の過酸化水素濃度は16mM as O以下である。
また、エッチング速度は、分光エリプソメーターでTiN膜の変化を求め、その減少膜厚を処理時間5分で割って求めた。
【0067】
上記実験結果を表1および
図5に示す。
上記表1および
図5に示す実験結果から明らかなように、硫酸電解液の硫酸濃度が90質量%以上であれば、TiN膜のエッチング速度が10nm/min以下になり、94質量%以上であれば5nm/min以下となることが分かる。
そこで、本発明では、過硫酸含有硫酸溶液の硫酸濃度を90質量%以上に設定する。なお、硫酸濃度が高すぎると、電解による過硫酸の生成効率が悪化するため、硫酸濃度は96質量%以下に設定する。
【0068】
【表1】
【0069】
(実験例2)
次に、過硫酸含有硫酸溶液の液温度とメタルゲート材料のエッチング速度との関係を実験的に求めた。実験では、上記と同様の供試材を液温度の異なる硫酸電解液に浸漬して処理し、TiN膜のエッチング速度を測定した。なお、硫酸電解液の硫酸濃度は92質量%、過硫酸濃度は15〜21mM as Oとし、処理時間は5分とした。また、エッチング速度は上記と同様にして求めた。この硫酸電解液の過酸化水素濃度は16mM as O以下である。
【0070】
上記実験結果を表2および
図6に示す。
上記表2および
図6に示す実験結果から明らかなように、硫酸電解液の液温度が130℃以下であれば、TiN膜のエッチング速度が10nm/min以下となり、125℃以下であれば5nm/min以下となることが分かる。
そこで、本発明では、過硫酸含有硫酸溶液の液温度を130℃以下に設定する。なお、液温度が低すぎると、レジスト剥離性能が不十分となるため、液温度は70℃以上に設定する。
【0071】
【表2】
【0072】
(実験例3)
次に、過硫酸含有硫酸溶液の過硫酸濃度とメタルゲート材料のエッチング速度との関係を実験的に求めた。実験では、上記と同様の供試材を過硫酸濃度の異なる硫酸電解液に浸漬して処理し、TiN膜のエッチング速度を測定した。なお、硫酸電解液の硫酸濃度は92質量%、液温度は130℃とし、処理時間は5分とした。また、エッチング速度は上記と同様にして求めた。この硫酸電解液の過酸化水素濃度は16mM as O以下である。
【0073】
上記実験結果を表3および
図7に示す。
上記表3および
図7に示す実験結果から明らかなように、過硫酸濃度が25mM as O以下であれば、TiN膜のエッチング速度が10nm/min以下となり、16mM as O以下であれば5nm/min以下となることが分かる。
そこで、本発明では、過硫酸含有硫酸溶液の過硫酸濃度を25mM as O以下に設定する。なお、過硫酸濃度が低すぎると、レジスト剥離性能が不十分となるため、過硫酸濃度は0.50mM as O以上に設定する。
【0074】
【表3】
【0075】
洗浄処理を行う供試材として、TiN膜からなるメタルゲートを形成した後、アッシング処理を行ってレジストを灰化したウエハを用意した。用意したウエハに対して、洗浄処理を所定の処理条件で行い、ウエハ上のレジスト残渣の残留の程度、およびエッチングによるTiN膜のロスの有無を観察した。なお、洗浄処理では、過硫酸含有硫酸溶液として硫酸電解液(過酸化水素濃度5〜16mM as O)を用いた過硫酸洗浄工程もしくはSC−1洗浄工程を行い、または両工程を順次行った。実施例1〜8および比較例1〜5の洗浄処理の処理条件、ならびに処理結果は以下の表4に示すとおりである。
【0076】
【表4】
【0077】
上記表4に示されるように、液温度70〜130℃、硫酸濃度90質量%以上、過硫酸濃度0.52〜25mM as Oがレジスト残渣除去と膜ロスの観点で好ましいことが分かった。
レジスト残渣は、目視、光学顕微鏡またはレーザー顕微鏡を用い、落斜照明法でも確認されないときは「微」、肉眼では認められないが落斜照明法では観察されるときは「僅か」、肉眼で認められるときは「少」、肉眼で相当量認められるときは「中」と判定した。また、膜ロスについては分光エリプソメーターを用いて、エッチング量が1.0nm未満は「微」、1.0nm以上2.5nm未満は「僅か」、2.5nm以上5.0nm未満は「少」、5.0nm以上は「中」と判定した。
総合の判定では、レジスト残渣と膜ロスが共に「微」となったものを◎とし、レジスト残渣と膜ロスの一方が「微」、他方が「僅か」となったものを○、レジスト残渣と膜ロスが共に「僅か」となったものを△、それ以外の組合せのものを×とした。
上記実施例1〜8、比較例1〜5の過硫酸含有硫酸溶液として硫酸溶液にオゾンを溶解させた溶液(過酸化水素濃度5〜16mM as O)を用いた実施例9〜16、比較例6〜9の洗浄処理の処理条件、ならびに処理結果は以下の表5に示すとおりである。
レジスト残渣、膜ロス、および総合の判定については上記表4の結果と同様に行った。
【0078】
【表5】