特許第5730451号(P5730451)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730451
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】三次元座標測定機
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/008 20060101AFI20150521BHJP
   G01B 21/00 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   G01B5/008
   G01B21/00 E
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-1026(P2015-1026)
(22)【出願日】2015年1月6日
(62)【分割の表示】特願2014-254210(P2014-254210)の分割
【原出願日】2012年4月16日
(65)【公開番号】特開2015-92181(P2015-92181A)
(43)【公開日】2015年5月14日
【審査請求日】2015年1月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100119987
【弁理士】
【氏名又は名称】伊坪 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(72)【発明者】
【氏名】川上 哲司
(72)【発明者】
【氏名】大久保 信宏
(72)【発明者】
【氏名】房安 和久
(72)【発明者】
【氏名】五味 圭一郎
【審査官】 岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−296105(JP,A)
【文献】 特開平08−210837(JP,A)
【文献】 特開平08−247756(JP,A)
【文献】 特開平02−266209(JP,A)
【文献】 実開平06−051809(JP,U)
【文献】 特表平08−509292(JP,A)
【文献】 特開平09−145342(JP,A)
【文献】 米国特許第04741112(US,A)
【文献】 米国特許第06058618(US,A)
【文献】 米国特許第06272760(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0022033(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02219010(EP,A1)
【文献】 日刊工業新聞2012年4月13日第6面,2012年 4月13日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00−5/30
G01B 21/00−21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベースに設けられた移動機構と、
前記移動機構により移動される測定プローブと、を備え、前記プローブを用いて前記ベース上の被測定物を測定する三次元座標測定機であって、
前記移動機構は、
機械的なベアリングを用いたリニアガイドと、
前記測定プローブを挟んでリニアガイドの反対側に、前記ベースに対向して揺動可能な連結機構をもつエアー移動部を有するエアーベアリング機構と、を備えることを特徴とする三次元座標測定機。
【請求項2】
前記移動機構により移動される移動部の駆動点は、前記リニアガイド側に設けられ、前記エアーベアリング機構側には設けられない請求項1に記載の三次元座標測定機。
【請求項3】
前記エアーベアリング機構は、
前記リニアガイドと平行に設けられたエアーベアリング摺動案内部と、
前記エアーベアリング摺動案内部に沿って移動する前記エアー移動部と、を備え、
前記移動機構により移動される移動部は、一方が前記リニアガイドにより移動するリニア移動ユニットに取り付けられ、他方が前記エアー移動部に揺動可能に取り付けられる請求項1または2に記載の三次元座標測定機。
【請求項4】
前記移動部と前記エアー移動部の取り付け部は、球状の先端部と、少なくとも一部が円錐面である前記球状の先端部を受ける受け部と、を備える請求項3に記載の三次元座標測定機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元座標測定機に関し、特に三次元座標測定機の移動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
物体の外形の座標を測定するために三次元座標測定機が使用される。三次元座標測定機は、ベース上に、X軸、Y軸およびZ軸の直交する3軸方向に移動する移動機構を順次構成し、最終段の3軸方向に移動可能な部材(第3移動部)に変位量測定器を設け、変位量測定器のプローブを物体の外形に接触させた時の変位量と、その時の3軸方向の座標値を合わせて、物体の表面位置座標を算出する。各移動機構による移動位置座標は、測定する座標の基礎であり、移動座標について高精度であることが要求される。
【0003】
三次元座標測定機等の移動機構は、リニアガイドを用いて実現されるのが一般的である。
図1は、リニアガイドを示す図であり、(A)が外観を示す斜視図であり、(B)が断面図である。
【0004】
リニアガイドは、レール1と、レール1上をスライドして移動する移動ユニット2と、を有する。図1の(B)に示すように、移動ユニット2は、ベアリング球3を介してレール1に接触しており、移動時にはベアリング球3が回転する。図1の(A)に示すように、移動ユニット2がレール1に対して回転する3方向の回転成分P、YおよびRが存在する。Pはピッチング、Yはヨーイング、Rはローリングと呼ばれる。
【0005】
移動機構を構成する場合、上記の回転の影響を除くため、複数個のリニアガイドが使用される。例えば、同一のレール上を移動する2個の移動ユニットを同一の移動部に取り付ける。これにより、ピッチングPおよびヨーイングYの影響を低減できる。この場合、レールは1本であり、取り付けは比較的容易に行える。
【0006】
さらに、複数のレールと複数の移動ユニットを使用することも行われる。例えば、2本のレールを平行に配置し、それぞれのレール上に移動する2個の移動ユニットを同一の移動部に取り付ける。この場合、上記のように、各レールに2個の移動ユニットを取り付けることも行われ、その場合は4個の移動ユニットが使用されることになる。これにより、ピッチングPおよびヨーイングYに加えて、ローリングRの影響も低減できる。
【0007】
図2は、三次元座標測定機の移動機構の構成例を示す図である。この構成は、いわゆる片持ち方式と呼ばれるものである。
三次元座標測定機は、合成大理石等の石定盤で作られたベース11と、ベース11の一方の辺に設けられたYコラム21と、Yコラム21上に平行に設けられた2本のY軸レール22Aおよび22Bと、Y軸レール22Aおよび22B上を移動するY移動部31と、Y移動部31上に平行に設けられた2本のX軸レール32Aおよび32Bと、X軸レール32Aおよび32B上を移動するX移動部40と、X移動部40に固定された垂直方向に伸びるZコラム41と、Zコラム41上に平行に設けられた2本のZ軸レール42Aおよび42Bと、Z軸レール42Aおよび42B上を移動するZ移動部50と、を有する。Z移動部50には、変位測定器51が取り付けられ、変位測定器51の測定プローブを被測定物の表面に接触させる。片持ち方式の移動機構は、ベース11上に背面を除く方向からアクセス可能であるため、被測定物の配置や、測定プローブの接触位置の確認等が容易に行えるという利点がある。
【0008】
各レールにはそれぞれ2個の移動ユニットが配置されるので、Y移動部31、X移動部40およびZ移動部50には4個の移動ユニットが取り付けられる。図2の構成では、平行に設けられる2本のレールは、同一部材の同一面上に近接して配置されるので、比較的容易に高い平行度で配置することが可能である。
【0009】
しかし、図2の片持ち方式の移動機構では、Y移動部31は、たとえ2本のレール22Aおよび22Bと4個の移動ユニットで支持されているといっても、端に近い部分で支持されているため、撓みにより他方の端における変位が発生する。撓み量は、X移動部40の移動に伴ってモーメントが変化する。言い換えれば、Y移動部31の剛性が不十分である。
【0010】
上記の片持ち方式の移動機構の撓み(剛性)の影響を低減するために、Y移動部31の両端を支持することが行われる。
【0011】
図3は、三次元座標測定機の移動機構の別の構成例を示す図であり、Y移動部31を移動させる構成のみを示し、他の軸の移動機構は図示を省略している。ここでは、図3の形式の移動機構を、L型と称する。
図3の三次元座標測定機のL型の移動機構は、Y移動部31の一方の端部を、Yコラム21上に平行に設けられた2本のY軸レール22Aおよび22Bで支持することは、図2の構成と同じであるが、Y移動部31の反対側の端部を支持する支持部材60を設け、支持部材60の下面を、ベース11上に配置したサブガイド61で支持することが、図2の構成と異なる。サブガイド61は、例えばリニアガイドである。
【0012】
図3の構成では、サブガイド61の真直度が非常に高い精度で維持されていることが要求される。サブガイド61の真直度の誤差は、例えば、ベース11の面の高さ変動として表すことができる。サブガイド61におけるベース11の面の高さがΔ1変化すると、Y移動部31の反対側の端部の高さも変化するが、Y移動部31の一端はYコラム21の2本のリニアガイドにより支持されており、固定されているのと同等である。そのため、Y移動部31が撓んで(反って)反対側の端部の高さがΔ2変化して均衡することになる。Y移動部31にこのような撓みが発生すると、Z移動部50が傾き、変位測定器51の測定プローブの位置がΔ3変位することになり、座標測定誤差を発生する。
【0013】
Y移動部31の撓みは、Y軸方向の移動に伴って変化し、温度等によっても変化する。Y移動部31の撓みによる測定プローブの接触位置の誤差は、基準物体の測定結果に基づいて算出した補正式などによりある程度補正可能であるが、撓み量の変化による影響まで正確に補正するのは難しいという問題がある。
【0014】
図4は、三次元座標測定機の移動機構の構成例を示す図である。この構成は、いわゆるブリッジ方式と呼ばれるものである。
【0015】
図4のブリッジ方式の三次元座標測定機は、ベース11の対向する辺に2個のYコラム21Aおよび21Bを設け、Yコラム21A上に1本のY軸レール22Aを、Yコラム21B上に1本のY軸レール22Bを、それぞれ設ける。Y移動部31は、各レールに2個の移動ユニットが用いられる場合には、2本のレール22Aおよび22Bを移動する4個の移動ユニットが取り付けられる。他の部分は、図2の場合と同様である。
【0016】
図4のブリッジ方式の三次元座標測定機は、1組のレールを取り付ける2個のYコラム21Aおよび21Bのレール取り付け面の平行度および真直度を、非常に高い精度で加工した上で、レールを実装する必要があり、製造コストが非常に高くなるという問題がある。また、図4のブリッジ方式の三次元座標測定機は、ベース11上へのアクセスが制限されるため、被測定物の配置や、測定プローブの接触位置の確認等が難しくなるという問題がある。
【0017】
なお、Y移動部31を門のような形状とし、ベース上にY軸レール22Aと22Bを設けるいわゆる門型方式の三次元座標測定機も知られているが、門型のY移動部31の底面の平行度および真直度を、非常に高い精度で加工する必要があり、上記と同様の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2012−002715号公報
【特許文献2】特開2012−042267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
以上説明したように、片持ち方式の移動機構は剛性が不十分であり、ブリッジ方式およびそれに類似したL型の移動機構は、非常に高い加工精度が要求されるため、製造コストが増加するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するため、本発明の三次元座標測定機は、Y移動部に対応する第1移動部の一方の端部を1本のリニアガイドで支持し、他方の端部をこの1本のリニアガイドと平行に設けられたエアーベアリング摺動案内部に沿って移動するエアー移動部で支持することを特徴とする。
【0021】
すなわち、本発明の三次元座標測定機は、ベースと、前記ベースに設けられた第1の軸移動機構と、前記第1の軸移動機構により移動する第1移動部に設けられた第2の軸移動機構と、前記第2の軸移動機構により移動する第2移動部に設けられた第3の軸移動機構と、を備え、前記第1の軸移動機構は、機械的なベアリングを用いた1本のリニアガイドと、前記リニアガイドと平行に設けられたエアーベアリング摺動案内部と、前記エアーベアリング摺動案内部に沿って移動するエアー移動部と、を備え、前記第1移動部は、一方が前記リニアガイドにより移動するリニア移動ユニットに取り付けられ、他方が前記エアー移動部に揺動可能に取り付けられることを特徴とする。
【0022】
本発明の三次元座標測定機では、1本のリニアガイドとエアーベアリング摺動案内部との平行度・真直度が不十分で、移動位置によりリニアガイドとエアーベアリング摺動案内部の相対的な高さが変化した場合、エアーベアリングによりある程度高さ変化の差を吸収することができる。第1移動部の他方の端部の高さが変化すると、第1移動部は傾きが変化する、言い換えればローリングするが、これは第1移動部を1本のリニアガイドで支持しているので、図1の(A)に示したローリングRにより、吸収することができる。これにより、第1移動部の傾き、すなわちローリングは変化するが、第1移動部に撓みを発生することはない。撓みが無ければ、誤差変化に再現性があり、現在の補正技術を適用すれば、高精度の補正が可能であり、移動位置を高精度に制御できる。言い換えれば、本発明は、これまでできるだけ微小に抑制しようとしてきたローリングRを積極的に許容し、第1移動部の一方を1本のリニアガイドで支持し、他方をエアーベアリングにより支持し、第1移動部を支持する部分の相対的な高さ変化を、エアーベアリングにより吸収し、第1移動部の傾き変化を、1本のリニアガイドで許容されるローリングと揺動可能な連結部で吸収する。
【0023】
また、メカ(機械的)ベアリングであるリニアガイドとエアーベアリングの併用により、摩擦面をメカベアリング摺動面の1ラインのみにで、駆動点を摩擦面に設置することにより、往復のヒステリシスを低減できる。
【0024】
第1移動部は、図3に示した1個のコラムを有するL型の構成でも、図4に示した2個のコラムを有するブリッジ型の構成でも、コラムを設けない門型の構成でもよい。
1個のコラムを有するL型の構成では、ベースの一辺に設けられたベース面に平行な載置面を有するコラムを設け、第1の軸移動機構の1本のリニアガイドは、コラムの載置面に設けられ、第1移動部の他方の端部に設けた支持部材にエアー移動部を取り付け、ベースに設けたエアーベアリング摺動案内部で支持する。
【0025】
第1移動部は、エアー移動部に揺動可能に取り付けられる必要があり、この連結部は、例えば、球状の先端部と、少なくとも一部が円錐面である球状の先端部を受ける受け部と、を有するように構成される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、高精度の三次元座標測定機を、簡単な構成で、低い製造コストで実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、リニアガイドを示す図である。
図2図2は、三次元座標測定機の片持ち方式の移動機構の構成例を示す図である。
図3図3は、三次元座標測定機のL型の移動機構の別の構成例を示す図である。
図4図4は、三次元座標測定機のブリッジ方式の移動機構の構成例を示す図である。
図5図5は、本発明の三次元座標測定機の基本構成を示す図であり、(A)は1個のコラムを有するL型に適用した場合を、(B)は門型のものに適用した場合を示す。
図6図6は、本発明をL型に適用した実施形態の三次元座標測定機の構成を示す図であり、(A)が正面図であり、(B)が側面図である。
図7図7は、連結機構の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図5は、本発明の三次元座標測定機の基本構成を示す図であり、(A)は1個のコラムを有するL型に適用した場合を、(B)は門型のものに適用した場合を示す。図5では、Y移動部を移動させる構成のみを示し、他の軸の移動機構は図示を省略している。
【0029】
図5の(A)に示すように、本発明を適用したL型の三次元座標測定機は、ベース11と、Yコラム21と、Yコラム21の上面を移動するY(第1)移動部31と、Y移動部31を支持する支持部材60と、を有する。Yコラム21は、ベース11の一方の辺に沿って設けられ、Yコラム21の上面は、ベース11の面と平行である。Y移動部31は、Yコラム21の上面に設けられた1本のリニアガイドのレールにリニア移動ユニットを介して接続され、リニアガイドにより移動する。図では、Y移動部31と1本のリニアガイドとの接続部を参照番号70で示している。Y移動部31には、X軸移動機構およびZ軸移動機構がさらに設けられ、Z移動部50に取り付けられた変位測定器51のプローブの位置座標が、3軸方向に移動する。
【0030】
Y移動部31の他方の端部は、支持部材60により支持される。支持部材60の下部は、エアー移動部に揺動可能に支持される。エアー移動部と、ベース11上にYコラム21の上面のリニアガイドと平行に設けられたエアーベアリング摺動案内部は、エアーベアリング機構80を構成する。エアーベアリング機構80により、リニアガイドとエアーベアリング摺動案内部の相対的な高さが変化した場合でも、エアーベアリング機構によりある程度高さ変化の差を吸収することができる。さらに、支持部材60の下部は、エアー移動部に揺動可能に支持されると共に、Y移動部31の傾きが変化しても、リニアガイドは1本であり、ある程度のローリングであれば吸収することができる。これにより、Y移動部31がローリングしても、Y移動部31に撓みを発生することはなく、補正により移動位置を高精度に制御できる。また、メカ(機械的)ベアリングであるリニアガイドとエアーベアリングの併用により、摩擦面をメカベアリング摺動面の1ラインのみにでき、駆動点を摩擦面に設置することにより、往復のヒステリシスを低減できる。
【0031】
図5の(A)に示したL型方式の移動機構は、リニアガイドをベース11の面より上部に持ち上げており、次に説明する門型の移動機構に比べて、Y移動部31の重心位置と駆動点(リニアガイド)との距離を短くでき、さらにY移動部31の重量を低減できる。これにより、加減速時のY移動部31のピッチングを低減でき、移動応答性を改善もしくは同じ移動応答性を実現するのに必要な駆動力を低減できる。また、ベース11上に背面を除く方向から容易にアクセス可能であるため、被測定物の配置や、測定プローブの接触位置の確認等が容易に行える。
【0032】
図5の(B)に示すように、本発明を適用した門型の三次元座標測定機は、Yコラム21を設けずに、Y移動部31を、平行部分61と、第1支持部材62と、第2支持部材63と、で構成した門型としたことが、図5の(A)のL型の場合と異なる。
【0033】
第1支持部材62の下部は、ベース11の一方の辺に沿って設けられた1本のリニアガイドとの接続部70により支持される。第2支持部材63の下部は、図5の(A)の支持部材60と同様に、エアーベアリング機構80により支持される。
【0034】
図5の(B)に示した門型の移動機構は、リニアガイド70およびエアーベアリング機構80のエアーベアリング摺動案内部の両方を、ベース11の上面に設けるので、リニアガイド70とエアーベアリング摺動案内部の平行度を高精度に維持するのが容易である。一方、門型のY移動部31は、図5の(A)に示したL型に比べて、大重量になり、ピッチ誤差の影響を受けやすいという問題がある。
【0035】
なお、図5では、L型と門型の例を説明したが、ブリッジ型等他の形式にも同様に適用可能である。
【0036】
図6は、本発明をL型に適用した実施形態の三次元座標測定機の構成を示す図であり、(A)が正面図であり、(B)が側面図である。なお、図6では、Y移動部以外は従来例と同じであるので、Y移動部を移動させる構成のみを示し、他の軸の移動機構は図示を省略している。
【0037】
実施形態の三次元座標測定機は、合成大理石等の石定盤で作られたベース11と、ベース11の一方の辺に設けられた中空のYコラム21と、Yコラム21上に平行に設けられた1本のY軸レール22と、Y軸レール22上を移動する2個のY移動ユニット23Aおよび23Bと、Y移動ユニット23Aおよび23Bに取り付けられたY移動部31と、Y移動部31上に平行に設けられた2本のX軸レールと、2本のX軸レール上を移動する合計4個のX移動ユニット33AA、33AB、33BAおよび33BBと、を有する。この上にX移動部等が構成されるが、図示および説明は省略する。
【0038】
Y移動部31のYコラム21により支持される側を反対側の端部には、円柱状の支持部材60が取り付けられる。支持部材60の下部は、連結機構81によりエアー移動部82に揺動可能に支持される。ベース11上のエアー移動部82と対向する辺に沿って、エアーベアリング摺動案内部83が設けられる。エアーベアリング摺動案内部83は、例えば、Y軸方向に伸びるエアー移動部82の幅を有する溝である。エアー移動部82は、外部から供給されるエアーをエアーベアリング摺動案内部83の表面に噴出し、一定間隔で浮上した状態でY軸方向に移動可能である。言い換えれば、エアー移動部82は、Y軸方向に移動可能であるが、X軸方向には変位せず、Z軸方向は微小量変位可能である。ここでは、エアー移動部82とエアーベアリング摺動案内部83により構成される部分をエアーベアリング機構80と称する。
【0039】
図7は、連結機構81の構成例を示す図である。図7に示すように、ベース11の上面のエアーベアリング摺動案内部83の表面に対向してエアー移動部82が配置される。エアー移動部82は、少なくとも一部が円錐状の穴を有する受け部92を有する。支持部材60の先端には半球状の先端部91が設けられており、受け部92の円錐状の穴に接触する。ここでは、先端部91は、第1移動部31およびその上に構成されるXおよびZ軸機構および支持部材60等の重量により受け部92の円錐状の穴に押し付けられる。これにより、支持部材60(Y移動部31)は、エアー移動部82に揺動可能に支持される。
【0040】
Yコラム21の上面、すなわち1本のリニアガイドのレール22と、エアーベアリング摺動案内部83の表面の相対的な高さは一定であることが望ましいが、製造上若干の誤差が避けられない。実施形態では、エアーベアリング機構80により、リニアガイドのレール22とエアーベアリング摺動案内部83の相対的な高さが変化した場合でも、エアーベアリング機構80によりある程度高さ変化の差を吸収することができる。さらに、支持部材60の下部は、エアー移動部に揺動可能に支持され、Y移動部31の傾きが変化しても、リニアガイドは1本であり、ある程度のローリングであれば吸収することができる。これにより、Y移動部31がローリングしても、Y移動部31に撓みを発生することはなく、Y移動部31が傾くだけであり、その傾き量は再現性があるので補正により移動位置を高精度に制御できる。
【0041】
以上、本発明の実施形態を説明したが、各所の変形例が可能であるのはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、三次元座標測定機に適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
11 ベース
21 Yコラム
31 Y移動部
60 支持部材
70 1本のリニアガイド
80 エアーベアリング機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7