(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金属膜または導電性膜が形成された基板の近傍に配置されるセンサコイルと、該センサコイルに交流信号を供給して前記金属膜または導電性膜に渦電流を形成する信号源と、前記センサコイルの出力に基づいて前記金属膜または導電性膜に形成された渦電流を検出する検出回路とを備えた渦電流センサであって、
前記センサコイルは、前記信号源に接続された発振コイルと、前記金属膜または導電性膜に形成される渦電流を検出する検出コイルと、該検出コイルに直列に接続されるバランスコイルとを有し、
前記検出コイルは、列を基板に対して垂直方向、層を基板に対して平行方向と定義したときに、線材又は導電体を1列複数層に巻いたコイルを複数個直列に接続して構成されていることを特徴とする渦電流センサ。
前記発振コイルは、線材又は導電体を1列複数層に巻いたコイルまたは線材又は導電体を複数列1層または複数層に巻いたコイルからなることを特徴とする請求項1記載の渦電流センサ。
前記検出コイル、前記発振コイルおよび前記バランスコイルは、この順に基板側から配列していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の渦電流センサ。
前記残膜監視は、前記終点検出センサより感度が高い前記異なるセンサにより行い、前記異なるセンサのコイルには、線材又は導電体を1列複数層に巻いた前記コイルを用いることを特徴とする請求項10記載の研磨方法。
前記残膜監視は、前記終点検出センサの感度を切替えて行い、該感度の切替えは前記コイルの巻き数を切替えることにより行うことを特徴とする請求項10記載の研磨方法。
前記残膜監視は、前記終点検出センサより感度が高い前記異なるセンサにより行い、前記終点検出センサと前記異なるセンサは、基板上の膜に渦電流を形成するための発振コイルと基板上の膜に形成される渦電流を検出する検出コイルと該検出コイルに直列に接続されるバランスコイルを備えた渦電流センサであって、前記異なるセンサの前記発振コイル、前記検出コイルおよび前記バランスコイルには、線材又は導電体を1列複数層に巻いたコイルを用いることを特徴とする請求項10記載の研磨方法。
研磨面を有する研磨テーブルと、研磨対象の基板を保持するトップリングとを有し、回転する研磨テーブル上の研磨面に基板を押圧して基板上の膜を研磨する研磨装置において、
前記研磨テーブルに設置され、前記研磨テーブルの回転に伴って基板の被研磨面を走査する終点検出センサと、
前記基板の被研磨面の走査により得られた前記終点検出センサの出力を監視し、該終点検出センサの出力の変化から研磨終点を検出する制御装置とを備え、
前記終点検出センサは渦電流センサからなり、該渦電流センサにおいて基板上の膜に形成される渦電流を検出するコイルは、列を基板に対して垂直方向、層を基板に対して平行方向と定義したときに、線材又は導電体を1列複数層に巻いたコイルを複数個直列に接続して構成されていることを特徴とする研磨装置。
前記制御装置は、前記研磨終点を検出した後に、前記終点検出センサまたは異なるセンサの出力を監視し、基板上の一部に残った膜を検出する残膜監視を行うことを特徴とする請求項14記載の研磨装置。
前記残膜監視は、前記終点検出センサより感度が高い渦電流センサからなる前記異なるセンサにより行い、前記異なるセンサのコイルは、線材又は導電体を1列複数層に巻いたコイルからなることを特徴とする請求項15記載の研磨装置。
前記残膜監視は、前記終点検出センサの感度を切替えて行い、該感度の切替えは前記コイルの巻き数を切替えることにより行うことを特徴とする請求項15記載の研磨装置。
前記終点検出センサまたは前記異なるセンサは、基板上の膜に渦電流を形成するための発振コイルと基板上の膜に形成される渦電流を検出する検出コイルと該検出コイルに直列に接続されるバランスコイルとを有したセンサコイルを備えた渦電流センサからなることを特徴とする請求項14または15記載の研磨装置。
前記発振コイルは、線材又は導電体を1列複数層に巻いたコイルまたは線材又は導電体を複数列1層または複数層に巻いたコイルからなることを特徴とする請求項18記載の研磨装置。
前記検出コイル、前記発振コイルおよび前記バランスコイルは、この順に基板側から配列していることを特徴とする請求項18乃至23のいずれか1項に記載の研磨装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
先に提案した特願2009−167788号においては、半導体ウエハ等の基板上に形成されたCu等の金属膜に反応する渦電流センサを研磨テーブル内に配置し、基板の研磨中に、研磨テーブルの回転に伴い渦電流センサが基板の下方を通過している間基板の金属膜に反応して所定の電圧値を出力するので、この出力を監視して金属膜が除去されたことを検出するようにしている。この場合、研磨が進行して金属薄膜を検出するには、渦電流センサの発振周波数を上昇させること、渦電流センサの内部回路の増幅度を上げること、或いは渦電流センサの励磁電圧を上昇させることによって行っている。
しかしながら、渦電流センサの発振周波数を上昇させた場合にはコイル自身の静電容量によりコイル共振周波数が低くなってしまうという問題点がある。また、渦電流センサの内部回路の増幅度を上げた場合には回路ノイズの影響が大きくなるという問題がある。さらに渦電流センサの励磁電圧を上昇させた場合には特性の安定性に問題がある。
【0010】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、渦電流センサの発振周波数、内部回路の増幅度および励磁電圧を上昇させることなく、半導体ウエハ等の基板上の金属薄膜(または導電性薄膜)を検出することができる渦電流センサを提供することを目的とする。
また、本発明は、渦電流センサを用いて研磨中に基板上に金属膜(または導電性膜)の残膜があるか否かの検査を実施することにより検査時間を短縮することができ、残膜を検出した場合には、そのまま追加研磨を実施することにより処理時間を短縮することができる研磨方法および研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の渦電流センサは、金属膜または導電性膜が形成された基板の近傍に配置されるセンサコイルと、該センサコイルに交流信号を供給して前記金属膜または導電性膜に渦電流を形成する信号源と、前記センサコイルの出力に基づいて前記金属膜または導電性膜に形成された渦電流を検出する検出回路とを備えた渦電流センサであって、前記センサコイルは、前記信号源に接続された発振コイルと、前記金属膜または導電性膜に形成される渦電流を検出する検出コイルと、該検出コイルに直列に接続されるバランスコイルとを有し、前記検出コイルは、列を基板に対して垂直方向、層を基板に対して平行方向と定義したときに、線材又は導電体を1列複数層に巻いたコイル
を複数個直列に接続して構成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の渦電流センサによれば、渦電流センサにおける検出コイルを線材又は導電体を1列複数層に巻いたコイルで構成したので、検出コイルを基板に近づけることができ、また線間の容量成分が小さくできるため、センサ感度が良くなる。したがって、渦電流センサの発振周波数、内部回路の増幅度および励磁電圧を上昇させることなく、半導体ウエハ等の基板上の金属薄膜(または導電性薄膜)を検出することができる。前記検出コイルは、半導体ウエハ(基板)の金属膜(または導電性膜)が形成された面と平行に線材又は導電体をスパイラル状に複数層巻くことにより列方向に線材又は導電体の直径分しか厚さがなく偏平になっていてもよいし、線材又は導電体をスパイラル状に複数層巻く際に基板に次第に近づく(または遠ざかる)ように彎曲させることにより列方向に線材又は導電体の直径分より所定の厚みを持たせたものでもよい。
【0013】
本発明の好ましい態様によれば、前記発振コイルは、線材又は導電体を1列複数層に巻いたコイルまたは線材又は導電体を複数列1層または複数層に巻いたコイルからなることを特徴とする。
本発明によれば、渦電流センサにおける発振コイルを線材又は導電体を1列複数層に巻いたコイルで構成した場合、コイル共振周波数の発振周波数が向上されることから、発振周波数を上昇させても安定した薄膜検出が可能となる。
本発明の好ましい態様によれば、前記バランスコイルは、線材又は導電体を1列複数層に巻いたコイルからなることを特徴とする。
【0014】
本発明の好ましい態様によれば
、前記発振コイルおよび前記バランスコイルの少なくとも1つは、線材又は導電体を1列複数層に巻いた前記コイルを複数個直列に接続することにより構成されていることを特徴とする。
本発明によれば、線材又は導電体を1列複数層に巻いたコイルを列方向に複数個並べ、隣接するコイルが接触しないようにコイル間に隙間を空け、この隙間には透磁率の低い材料を配置する。これにより、1列複数層に巻いたコイルが複数列または多列になっても、センサコイルを基板に近づけることができるため、センサ感度が良くなる。
また、本発明によれば、1列複数層のコイルを複数個直列に接続することにより、コイルの合成インダクタンスは、コイル複数個分のインダクタンスと隣接するコイル間の相互インダクタンスの和になるため、コイルの合成インダクタンスの上昇に伴い、コイル全体のセンサ出力値は増加することになり、金属膜の検出を良好に行うことが可能となる。
【0015】
本発明の好ましい態様によれば、前記発振コイルは、半径方向外側にいくにつれて基板に近づくように彎曲して形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、発振コイルは、半径方向内側がバランスコイル側に凹んで、半径方向外側にいくにつれて検出コイル側に近づくように凹球面状に彎曲させて線材又は導電体を巻いたコイルである。このように、発振コイルを凹球面状に彎曲させて形成することにより、発振磁界を中央部に収束させることが可能になり、センサ感度を上げることができる。
【0016】
本発明の好ましい態様によれば、前記検出コイルと前記発振コイルとは、コイル外径に違いがあってもよい。
本発明によれば、検出コイルの外径(直径)を発振コイル(励磁コイル)の外径(直径)より小さくすることにより、ターゲットの金属膜の微細な検出が可能となる。
【0017】
本発明の好ましい態様によれば、前記検出コイル、前記発振コイルおよび前記バランスコイルは、この順に基板側から配列していることを特徴とする。
本発明によれば、センサコイルは、検出コイルとバランスコイルとにより、検出出力のゼロ点を自動的に調整可能とすることが好ましい。ゼロ点を調整することにより測定対象の金属膜(または導電性膜)の厚さに対する変化信号のみを増幅して検出することができる。
【0018】
本発明の好ましい態様によれば、前記検出コイル、前記発振コイルおよび前記バランスコイルは、同心円状に配列していることを特徴とする。
本発明によれば、検出コイル、発振コイルおよびバランスコイルを同心円状に配列することにより、センサコイル全体を基板に近づけて配置することができ、センサ感度が良くなる。
【0019】
本発明の好ましい態様によれば、前記センサコイルは、高透磁率材料によって形成された筒状部材内に収容されていることを特徴とする。
本発明によれば、センサコイルからの磁束は、センサコイルの周囲に位置する高透磁率材料の筒状部材内を通って測定対象の金属膜(または導電性膜)内を通過する経路(磁路)をとることができる。したがって、設置環境の部材内に磁束が通って減衰させてしまうことがなく、測定対象の金属膜(または導電性膜)の内部には、センサコイルによる渦電流を効率よく発生させることができ、金属膜(または導電性膜)を感度よく測定することができる。
【0020】
本発明の研磨方法は、回転する研磨テーブル上の研磨面に研磨対象の基板を押圧して基板上の膜を研磨する研磨方法において、前記基板の研磨中に、前記研磨テーブルの回転に伴い、該研磨テーブルに設置された終点検出センサにより基板の被研磨面を走査し、前記基板の被研磨面の走査により得られた前記終点検出センサの出力を監視し、該終点検出センサの出力の変化から研磨終点を検出し、前記研磨終点を検出した後に、前記終点検出センサまたは異なるセンサの出力を監視し、基板上の一部に残った膜を検出する残膜監視を行い、前記終点検出センサまたは異なるセンサには渦電流センサを用い、該渦電流センサにおいて基板上の膜に形成される渦電流を検出するコイ
ルは、列を基板に対して垂直方向、層を基板に対して平行方向と定義したときに、線材又は導電体を1列複数層に巻いたコイルを
複数個直列に接続して構成されていることを特徴とする。
【0021】
本発明の研磨方法によれば、終点検出センサは、研磨テーブルの回転に伴い基板の下方を通過している間、基板の金属膜(または導電性膜)等の膜に反応して所定の電圧値等を出力するので、この終点検出センサの出力を監視し、出力の変化が予め設定された膜クリアレベルになったら研磨終点を検出する。そして、研磨終点を検出した後に、終点検出センサまたは異なるセンサの出力を監視し、基板上の一部に残った膜を検出する残膜監視を行うことにより、研磨中に残膜の有無について検査を実施することができる。前記終点検出センサまたは前記異なるセンサには、線材又は導電体を1列複数層に巻いたコイルを用いることによりコイルを基板に近づけることができ、また線間の容量成分が小さくできるため、センサ感度が良くなり、研磨終点または残膜を確実に検出できる。
【0022】
本発明の好ましい態様によれば、前記残膜監視は、前記終点検出センサより感度が高い前記異なるセンサにより行い、前記異なるセンサのコイルには、線材又は導電体を1列複数層に巻いた前記コイルを用いることを特徴とする。
本発明によれば、研磨開始から研磨終点の検出および残膜監視まで所定の感度を有する終点検出センサのみを使用した場合、ターゲットの膜が薄くなった場合や膜の面積が小さくなった場合には、膜の検出が困難になる。一方、薄膜用のセンサのみを使用して研磨終点の検出を行う場合、初期膜が厚い場合には、出力がオーバーレンジ(測定範囲外)になってしまうため、研磨工程を監視することができない。そこで、本発明においては、感度が異なる2つのセンサを用い、研磨開始から終点検出センサの感度がなくなるまで出力を監視して研磨終点を検出し、研磨終点の検出を実施した後、異なるセンサに切替えを行い、基板上の残膜を確実に検出できる。
【0023】
本発明の好ましい態様によれば、前記残膜監視は、前記終点検出センサの感度を切替えて行い、該感度の切替えは前記コイルの巻き数を切替えることにより行うことを特徴とする。
本発明によれば、研磨開始から研磨終点の検出および残膜監視まで所定の感度を有する終点検出センサのみを使用した場合、ターゲットの膜が薄くなった場合や膜の面積が小さくなった場合には、膜の検出が困難になる。一方、薄膜用のセンサのみを使用して研磨終点の検出を行う場合、初期膜が厚い場合には、出力がオーバーレンジ(測定範囲外)になってしまうため、研磨工程を監視することができない。そこで、本発明においては、終点検出センサのセンサ感度を巻き数を切替えることによって高低の2段階の切替えを可能とし、研磨開始から研磨終点の検出までは低いセンサ感度として出力がオーバーレンジ(測定範囲外)になってしまうことを防止し、研磨終点の検出後は高いセンサ感度として基板上の残膜を確実に検出することができるようにしたものである。
【0024】
本発明の好ましい態様によれば、前記残膜監視は、前記終点検出センサより感度が高い前記異なるセンサにより行い、前記終点検出センサと前記異なるセンサは、基板上の膜に渦電流を形成するための発振コイルと基板上の膜に形成される渦電流を検出する検出コイルと該検出コイルに直列に接続されるバランスコイルを備えた渦電流センサであって、前記異なるセンサの前記発振コイル、前記検出コイルおよび前記バランスコイルには、線材又は導電体を1列複数層に巻いたコイルを用いることを特徴とする。
【0025】
本発明の研磨装置は、研磨面を有する研磨テーブルと、研磨対象の基板を保持するトップリングとを有し、回転する研磨テーブル上の研磨面に基板を押圧して基板上の膜を研磨する研磨装置において、前記研磨テーブルに設置され、前記研磨テーブルの回転に伴って基板の被研磨面を走査する終点検出センサと、前記基板の被研磨面の走査により得られた前記終点検出センサの出力を監視し、該終点検出センサの出力の変化から研磨終点を検出する制御装置とを備え、前記終点検出センサは渦電流センサからなり、該渦電流センサにおいて基板上の膜に形成される渦電流を検出するコイルは、列を基板に対して垂直方向、層を基板に対して平行方向と定義したときに、線材又は導電体を1列複数層に巻いたコイル
を複数個直列に接続して構成されていることを特徴とする。
本発明の研磨装置によれば、終点検出センサは、研磨テーブルの回転に伴い基板の下方を通過している間、基板の金属膜(または導電性膜)等の膜に反応して所定の電圧値等を出力するので、この終点検出センサの出力を監視し、出力の変化が予め設定された膜クリアレベルになったら研磨終点を検出する。前記終点検出センサのコイルを線材又は導電体を1列複数層に巻いたコイルで構成したのでコイルを基板に近づけることができるため、センサ感度が良くなり、研磨終点を確実に検出できる。
【0026】
本発明の好ましい態様によれば、前記制御装置は、前記研磨終点を検出した後に、前記終点検出センサまたは異なるセンサの出力を監視し、基板上の一部に残った膜を検出する残膜監視を行うことを特徴とする。
本発明によれば、研磨終点を検出した後に、終点検出センサまたは異なるセンサの出力を監視し、基板上の一部に残った膜を検出する残膜監視を行うことにより、研磨中に残膜の有無について検査を実施することができる。
【0027】
本発明の好ましい態様によれば、前記残膜監視は、前記終点検出センサより感度が高い渦電流センサからなる前記異なるセンサにより行い、前記異なるセンサのコイルは、線材又は導電体を1列複数層に巻いたコイルからなることを特徴とする。
本発明によれば、研磨開始から研磨終点の検出および残膜監視まで所定の感度を有する終点検出センサのみを使用した場合、ターゲットの膜が薄くなった場合や膜の面積が小さくなった場合には、膜の検出が困難になる。一方、薄膜用のセンサのみを使用して研磨終点の検出を行う場合、初期膜が厚い場合には、出力がオーバーレンジ(測定範囲外)になってしまうため、研磨工程を監視することができない。そこで、本発明においては、感度が異なる2つのセンサを用い、研磨開始から終点検出センサの感度がなくなるまで出力を監視して研磨終点を検出し、研磨終点の検出を実施した後、異なるセンサに切替えを行い、基板上の残膜を確実に検出できる。前記異なるセンサのコイルを線材又は導電体を1列複数層に巻いたコイルで構成したのでコイルを基板に近づけることができるため、センサ感度が良くなり、残膜を確実に検出できる。
【0028】
本発明の好ましい態様によれば、前記残膜監視は、前記終点検出センサの感度を切替えて行い、該感度の切替えは前記コイルの巻き数を切替えることにより行うことを特徴とする。
本発明によれば、研磨開始から研磨終点の検出および残膜監視まで所定の感度を有する終点検出センサのみを使用した場合、ターゲットの膜が薄くなった場合や膜の面積が小さくなった場合には、膜の検出が困難になる。一方、薄膜用のセンサのみを使用して研磨終点の検出を行う場合、初期膜が厚い場合には、出力がオーバーレンジ(測定範囲外)になってしまうため、研磨工程を監視することができない。そこで、本発明においては、終点検出センサのセンサ感度を巻き数を切替えることによって高低の2段階の切替えを可能とし、研磨開始から研磨終点の検出までは低いセンサ感度として出力がオーバーレンジ(測定範囲外)になってしまうことを防止し、研磨終点の検出後は高いセンサ感度として基板上の残膜を確実に検出することができるようにしたものである。
【0029】
本発明の好ましい態様によれば、前記終点検出センサまたは前記異なるセンサは、基板上の膜に渦電流を形成するための発振コイルと基板上の膜に形成される渦電流を検出する検出コイルと該検出コイルに直列に接続されるバランスコイルとを有したセンサコイルを備えた渦電流センサからなることを特徴とする。
【0030】
本発明の好ましい態様によれば、前記発振コイルは、線材又は導電体を1列複数層に巻いたコイルまたは線材又は導電体を複数列1層または複数層に巻いたコイルからなることを特徴とする。
本発明によれば、渦電流センサにおける発振コイルを線材又は導電体を1列複数層に巻いたコイルで構成した場合、コイル共振周波数の発振周波数が向上されることから、発振周波数を上昇させても安定した薄膜検出が可能となる。
本発明の好ましい態様によれば、前記バランスコイルは、線材又は導電体を1列複数層に巻いたコイルからなることを特徴とする。
【0031】
本発明の好ましい態様によれば
、前記発振コイルおよび前記バランスコイルの少なくとも1つは、線材又は導電体を1列複数層に巻いた前記コイルを複数個直列に接続することにより構成されていることを特徴とする。
本発明によれば、線材又は導電体を1列複数層に巻いたコイルを列方向に複数個並べ、隣接するコイルが接触しないようにコイル間に隙間を空け、この隙間には透磁率の低い材料を配置する。これにより、1列複数層に巻いたコイルが複数列または多列になっても、センサコイルを基板に近づけることができるため、センサ感度が良くなる。
また、本発明によれば、1列複数層のコイルを複数個直列に接続することにより、コイルの合成インダクタンスは、コイル複数個分のインダクタンスと隣接するコイル間の相互インダクタンスの和になるため、コイルの合成インダクタンスの上昇に伴い、コイル全体のセンサ出力値は増加することになり、金属膜の検出を良好に行うことが可能となる。
【0032】
本発明の好ましい態様によれば、前記発振コイルは、半径方向外側にいくにつれて基板に近づくように彎曲して形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、発振コイルは、半径方向内側がバランスコイル側に凹んで、半径方向外側にいくにつれて検出コイル側に近づくように凹球面状に彎曲させて線材又は導電体を巻いたコイルである。このように、発振コイルを凹球面状に彎曲させて形成することにより、発振磁界を中央部に収束させることが可能になり、センサ感度を上げることができる。
【0033】
本発明の好ましい態様によれば、前記検出コイルと前記発振コイルとは、コイル外径に違いがあってもよい。
本発明によれば、検出コイルの外径(直径)を発振コイル(励磁コイル)の外径(直径)より小さくすることにより、センサの検出端の大きさを小さくすることができ、ターゲットの金属膜の微細な検出が可能となる。
【0034】
本発明の好ましい態様によれば、前記検出コイル、前記発振コイルおよび前記バランスコイルは、この順に基板側から配列していることを特徴とする。
本発明によれば、センサコイルは、検出コイルとバランスコイルとにより、検出出力のゼロ点を自動的に調整可能とすることが好ましい。ゼロ点を調整することにより測定対象の金属膜(または導電性膜)の厚さに対する変化信号のみを増幅して検出することができる。
【0035】
本発明の好ましい態様によれば、前記検出コイル、前記発振コイルおよび前記バランスコイルは、同心円状に配列していることを特徴とする。
本発明によれば、検出コイル、発振コイルおよびバランスコイルを同心円状に配列することにより、センサコイル全体を基板に近づけて配置することができ、センサ感度が良くなる。
【0036】
本発明の好ましい態様によれば、前記センサコイルは、高透磁率材料によって形成された筒状部材内に収容されていることを特徴とする。
本発明によれば、センサコイルからの磁束は、センサコイルの周囲に位置する高透磁率材料の筒状部材内を通って測定対象の金属膜(または導電性膜)内を通過する経路(磁路)をとることができる。したがって、設置環境の部材内に磁束が通って減衰させてしまうことがなく、測定対象の金属膜(または導電性膜)の内部には、センサコイルによる渦電流を効率よく発生させることができ、金属膜(または導電性膜)を感度よく測定することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、以下に列挙する効果を奏する。
(1)渦電流センサにおける検出コイルを線材又は導電体を1列複数層に巻いたコイルで構成したので、検出コイルを基板に近づけることができ、また線間の容量成分が小さくできるため、センサ感度が良くなる。したがって、渦電流センサの発振周波数、内部回路の増幅度および励磁電圧を上昇させることなく、半導体ウエハ等の基板上の金属薄膜(または導電性薄膜)を検出することができる。
(2)渦電流センサにおける発振コイルを線材又は導電体を1列複数層に巻いたコイルで構成したので、コイル共振周波数の発振周波数が向上されることから、発振周波数を上昇させても安定した薄膜検出が可能となる。
(3)1列複数層のコイルを複数個直列に接続することにより、コイルの合成インダクタンスは、コイル複数個分のインダクタンスと隣接するコイル間の相互インダクタンスの和になるため、コイルの合成インダクタンスの上昇に伴い、コイル全体のセンサ出力値は増加することになり、金属膜の検出を良好に行うことが可能となる。
(4)研磨中に半導体ウエハ等の基板上に金属膜(または導電性膜)等の残膜があるか否かの検査を実施することにより、検査時間を短縮することができ、基板処理能力を向上させることができる。
(5)研磨中に基板上に金属膜(または導電性膜)等の残膜があるか否かの検査を実施し、残膜を検出した場合には、そのまま追加研磨を実施することにより処理時間を短縮することができる。
(6)研磨中の検査により残膜を検出した場合に、CMPプロセスの全体を管理する制御装置が追加研磨時間や残膜状況を管理することによって、次の研磨対象の研磨条件を最適なものに変更することが可能になる。
(7)半導体ウエハ等の基板を研磨面(研磨パッド)から離すことなく基板上に金属膜(または導電性膜)等の残膜があるか否かの検査を実施することができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明に係る研磨装置の実施形態について
図1乃至
図28を参照して詳細に説明する。なお、
図1から
図28において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0040】
図1は、本発明に係る研磨装置の全体構成を示す概略図である。
図1に示すように、研磨装置は、研磨テーブル100と、研磨対象物である半導体ウエハ等の基板を保持して研磨テーブル上の研磨面に押圧するトップリング1とを備えている。
研磨テーブル100は、テーブル軸100aを介してその下方に配置されるモータ(図示せず)に連結されており、そのテーブル軸100a周りに回転可能になっている。研磨テーブル100の上面には研磨パッド101が貼付されており、研磨パッド101の表面101aが半導体ウエハWを研磨する研磨面を構成している。研磨テーブル100の上方には研磨液供給ノズル102が設置されており、この研磨液供給ノズル102によって研磨テーブル100上の研磨パッド101上に研磨液Qが供給されるようになっている。
図1に示すように、研磨テーブル100の内部には、渦電流センサ50が埋設されている。
【0041】
トップリング1は、半導体ウエハWを研磨面101aに対して押圧するトップリング本体2と、半導体ウエハWの外周縁を保持して半導体ウエハWがトップリングから飛び出さないようにするリテーナリング3とから基本的に構成されている。
【0042】
トップリング1は、トップリングシャフト111に接続されており、このトップリングシャフト111は、上下動機構124によりトップリングヘッド110に対して上下動するようになっている。このトップリングシャフト111の上下動により、トップリングヘッド110に対してトップリング1の全体を昇降させ位置決めするようになっている。なお、トップリングシャフト111の上端にはロータリージョイント125が取り付けられている。
トップリングシャフト111およびトップリング1を上下動させる上下動機構124は、軸受126を介してトップリングシャフト111を回転可能に支持するブリッジ128と、ブリッジ128に取り付けられたボールねじ132と、支柱130により支持された支持台129と、支持台129上に設けられたACサーボモータ138とを備えている。サーボモータ138を支持する支持台129は、支柱130を介してトップリングヘッド110に固定されている。
【0043】
ボールねじ132は、サーボモータ138に連結されたねじ軸132aと、このねじ軸132aが螺合するナット132bとを備えている。トップリングシャフト111は、ブリッジ128と一体となって上下動するようになっている。したがって、サーボモータ138を駆動すると、ボールねじ132を介してブリッジ128が上下動し、これによりトップリングシャフト111およびトップリング1が上下動する。
【0044】
また、トップリングシャフト111はキー(図示せず)を介して回転筒112に連結されている。この回転筒112はその外周部にタイミングプーリ113を備えている。トップリングヘッド110にはトップリング用モータ114が固定されており、上記タイミングプーリ113は、タイミングベルト115を介してトップリング用モータ114に設けられたタイミングプーリ116に接続されている。したがって、トップリング用モータ114を回転駆動することによってタイミングプーリ116、タイミングベルト115、およびタイミングプーリ113を介して回転筒112およびトップリングシャフト111が一体に回転し、トップリング1が回転する。なお、トップリングヘッド110は、フレーム(図示せず)に回転可能に支持されたトップリングヘッドシャフト117によって支持されている。
【0045】
図1に示すように構成された研磨装置において、トップリング1は、その下面に半導体ウエハWなどの基板を保持できるようになっている。トップリングヘッド110はトップリングシャフト117を中心として旋回可能に構成されており、下面に半導体ウエハWを保持したトップリング1は、トップリングヘッド110の旋回により半導体ウエハWの受取位置から研磨テーブル100の上方に移動される。そして、トップリング1を下降させて半導体ウエハWを研磨パッド101の表面(研磨面)101aに押圧する。このとき、トップリング1および研磨テーブル100をそれぞれ回転させ、研磨テーブル100の上方に設けられた研磨液供給ノズル102から研磨パッド101上に研磨液を供給する。このように、半導体ウエハWを研磨パッド101の研磨面101aに摺接させて半導体ウエハWの表面を研磨する。
【0046】
図2は、研磨テーブル100と渦電流センサ50と半導体ウエハWとの関係を示す平面図である。
図2に示すように、渦電流センサ50は、トップリング1に保持された研磨中の半導体ウエハWの中心Cwを通過する位置に設置されている。符号C
Tは研磨テーブル100の回転中心である。例えば、渦電流センサ50は、半導体ウエハWの下方を通過している間、通過軌跡(走査線)上で連続的に半導体ウエハWのCu層等の金属膜(導電性膜)を検出できるようになっている。
【0047】
次に、本発明に係る研磨装置が備える渦電流センサ50について、
図3から
図17を用いてより詳細に説明する。
図3は、渦電流センサ50の構成を示す図であり、
図3(a)は渦電流センサ50の構成を示すブロック図であり、
図3(b)は渦電流センサ50の等価回路図である。
図3(a)に示すように、渦電流センサ50は、検出対象の金属膜(または導電性膜)mfの近傍にセンサコイル60を配置し、そのコイルに交流信号源52が接続されている。ここで、検出対象の金属膜(または導電性膜)mfは、例えば半導体ウエハW上に形成されたCu,Al,Au,Wなどの薄膜である。センサコイル60は、検出用のコイルであり、検出対象の金属膜(または導電性膜)に対して、例えば1.0〜4.0mm程度の近傍に配置される。
【0048】
渦電流センサには、金属膜(または導電性膜)mfに渦電流が生じることにより、発振周波数が変化し、この周波数変化から金属膜(または導電性膜)を検出する周波数タイプと、インピーダンスが変化し、このインピーダンス変化から金属膜(または導電性膜)を検出するインピーダンスタイプとがある。即ち、周波数タイプでは、
図3(b)に示す等価回路において、渦電流I
2が変化することで、インピーダンスZが変化し、信号源(可変周波数発振器)52の発振周波数が変化すると、検波回路54でこの発振周波数の変化を検出し、金属膜(または導電性膜)の変化を検出することができる。インピーダンスタイプでは、
図3(b)に示す等価回路において、渦電流I
2が変化することで、インピーダンスZが変化し、信号源(固定周波数発振器)52から見たインピーダンスZが変化すると、検波回路54でこのインピーダンスZの変化を検出し、金属膜(または導電性膜)の変化を検出することができる。
【0049】
インピーダンスタイプの渦電流センサでは、信号出力X、Y、位相、合成インピーダンスZ、が後述するように取り出される。周波数F、またはインピーダンスX、Y等から、金属膜(または導電性膜)Cu,Al,Au,Wの測定情報が得られる。渦電流センサ50は、
図1に示すように研磨テーブル100の内部の表面付近の位置に内蔵することができ、研磨対象の半導体ウエハに対して研磨パッドを介して対面するように位置し、半導体ウエハ上の金属膜(または導電性膜)に流れる渦電流から金属膜(または導電性膜)の変化を検出することができる。
【0050】
渦電流センサの周波数は、単一電波、混合電波、AM変調電波、FM変調電波、関数発生器の掃引出力または複数の発振周波数源を用いることができ、金属膜の膜種に適合させて、感度の良い発振周波数や変調方式を選択することが好ましい。
【0051】
以下に、インピーダンスタイプの渦電流センサについて具体的に説明する。交流信号源52は、2〜8MHz程度の固定周波数の発振器であり、例えば水晶発振器が用いられる。そして、交流信号源52により供給される交流電圧により、センサコイル60に電流I
1が流れる。金属膜(または導電性膜)mfの近傍に配置されたセンサコイル60に電流が流れることで、この磁束が金属膜(または導電性膜)mfと鎖交することでその間に相互インダクタンスMが形成され、金属膜(または導電性膜)mf中に渦電流I
2が流れる。ここでR1はセンサコイルを含む一次側の等価抵抗であり、L
1は同様にセンサコイルを含む一次側の自己インダクタンスである。金属膜(または導電性膜)mf側では、R2は渦電流損に相当する等価抵抗であり、L
2はその自己インダクタンスである。交流信号源52の端子a,bからセンサコイル側を見たインピーダンスZは、金属膜(または導電性膜)mf中に形成される渦電流損の大きさによって変化する。
【0052】
図4(a),(b),(c)は、従来の渦電流センサのセンサコイルと本発明の渦電流センサのセンサコイルとを対比して示す図である。
図4(a)は従来の渦電流センサにおいて用いられているセンサコイルの構成例を示す概略図であり、
図4(b)は本発明の渦電流センサ50のセンサコイルの構成例を示す概略図であり、
図4(c)は本発明の渦電流センサ50の検出コイルを示す模式的平面図である。
【0053】
図4(a)に示すように、従来の渦電流センサのセンサコイル51は、金属膜(または導電性膜)に渦電流を形成するためのコイルと、金属膜(または導電性膜)の渦電流を検出するためのコイルとを分離したもので、ボビン71に巻回された3個のコイル72,73,74により構成されている。センサの感度を得るためには、コイルの巻き数を増加させる必要がある。そのため、センサコイル51における3個のコイル72,73,74は、列を半導体ウエハ(基板)Wに対して垂直方向、層を半導体ウエハ(基板)Wに対して平行方向と定義したときに、ボビン71の外周に線材lnをそれぞれ5列2層(10ターン)でソレノイド巻きしたコイルからなる。ここで中央のコイル72は、交流信号源52に接続される発振コイルである。この発振コイル72は、交流信号源52より供給される電圧の形成する磁界により、近傍に配置される半導体ウエハ(基板)W上の金属膜(または導電性膜)mfに渦電流を形成する。ボビン71の金属膜(または導電性膜)側には、検出コイル73が配置され、金属膜(または導電性膜)に形成される渦電流により発生する磁界を検出する。発振コイル72を挟んで検出コイル73の反対側にはバランスコイル74が配置されている。
【0054】
これに対して、本発明の渦電流センサ50のセンサコイル60は、
図4(b)に示すように、3個のコイル62,63,64により構成されており、ボビン61に巻き付ける方式を採っていない。センサコイル60の3個のコイル62,63,64は、列を半導体ウエハ(基板)Wに対して垂直方向、層を半導体ウエハ(基板)Wに対して平行方向と定義したときに、線材lnをそれぞれ1列N層巻きでスパイラル状に巻いたコイルである。より詳細にいうと、3個のコイル62,63,64は、列を半導体ウエハ(基板)Wの金属膜(または導電性膜)が形成された面に対して垂直方向、層を半導体ウエハ(基板)Wの金属膜(または導電性膜)が形成された面に対して平行方向と定義したときに、線材lnをそれぞれ1列N層巻きでスパイラル状に巻いたコイルである。Nは2以上の整数であり、例えば従来と同等以上の巻き数とすればNは10以上である。
図4(b)に示す例においては1列14層のコイルである。
【0055】
前記3個のコイル62,63,64のうち中央のコイル62は、交流信号源52に接続される発振コイルである。この発振コイル62は、交流信号源52より供給される電圧の形成する磁界により、近傍に配置される半導体ウエハW上の金属膜(または導電性膜)mfに渦電流を形成する。発振コイル62の金属膜(または導電性膜)側には、検出コイル63が配置され、金属膜(または導電性膜)に形成される渦電流により発生する磁界を検出する。発振コイル62を挟んで検出コイル63と反対側にはバランスコイル64が配置されている。発振コイル62と検出コイル63との間には発振コイル62と検出コイル63との間隔を一定に保つためのスペーサS1が配置されており、発振コイル62とバランスコイル64との間には発振コイル62とバランスコイル64との間隔を一定に保つためのスペーサS2が配置されている。そして、バランスコイル64に隣接してボビン61が配置されている。なお、発振コイル62と検出コイル63の間および発振コイル62とバランスコイル64の間は、距離さえ開いていればよく、特にスペーサを設けず空間だけでもよい。
【0056】
図4(c)に示すように、検出コイル63は、線材lnを1列N層巻きで半径方向にスパイラル状に巻いたコイルからなっている。検出コイル63は、半導体ウエハ(基板)の金属膜(または導電性膜)mfが形成された面と平行に線材lnをスパイラル状にN層巻くことにより列方向(
図4(c)において紙面と直交する方向)に線材lnの直径分しか厚さがなく偏平になっていてもよいし、線材lnをスパイラル状にN層巻く際に半導体ウエハ(基板)Wに次第に近づく(または遠ざかる)ように彎曲させることにより列方向に線材lnの直径分より所定の厚みを持たせたものでもよい。
図4(c)では検出コイル63を図示したが、発振コイル62およびバランスコイル64も
図4(c)と同一の形状になっている。
【0057】
また、センサコイル60における各コイル62,63,64は、線材lnを1列N層巻きでスパイラル状に巻いた
図4(c)に示すコイルをm個直列に接続して構成してもよい。ここでmは2以上の整数である。1列N層のコイルをm個直列に接続する場合、各コイル同士が接触すると、容量成分が増加するので、1列N層のコイルを列方向(基板に対して垂直方向)にm個並べ、隣接するコイル間に隙間を空けることが好ましい。なお、この隙間に透磁率の低い材料を設けてもよい。
【0058】
図5(a),(b)は、1列N層のコイルをm個直列に接続する態様を示す模式図である。
図5(a)に示す態様では、1列N層のコイルA,コイルBを直列に接続している。
図5(a)の態様では、コイル2列分のインダクタンスL
1A+L
1Bと、隣接するコイル間の相互インダクタンスMが得られる。隣接するコイル間の相互インダクタンスMは次式になる。
【数1】
ここで、kは結合係数、L
1A,L
1Bは自己インダクタンス[H]である。
したがって、
図5(a)に示す例では、合成インダクタンスは、L
0=L
1A+L
1B+2Mとなる。
図5(b)に示す態様では、1列N層のコイルA,コイルB,コイルCを直列に接続している。
図5(b)の態様では、コイル3列分のインダクタンスL
1A+L
1B+L
1Cと、隣接するコイル間の相互インダクタンスM
1AB,M
1BC,M
1ACが得られる。相互インダクタンスM
1AB,M
1BC,M
1ACは次式になる。
【数2】
ここで、k
0,k
1,k
2は結合係数、L
1A,L
1B,L
1Cは自己インダクタンスである。
したがって、
図5(b)に示す例では、合成インダクタンスは、L
0=L
1A+L
1B+L
1C+2M
1AB+2M
1BC+2M
1ACとなる。
図5(a),(b)においては、1列N層のコイルを2個又は3個直列接続する場合を示したが、1列N層のコイルをm個直列に接続する場合には、コイルの合成インダクタンスL
0は、m列分のインダクタンスとm列間の相互インダクタンスの和になるため、コイルの合成インダクタンスの上昇に伴い、コイル全体のセンサ出力値は増加することになり、検出を良好に行うことが可能となる。
【0059】
また、
図5(a),(b)に示す例においては、1列N層のコイル間に切替スイッチを設けることにより、直列接続されるコイル数を適宜選定できる。したがって、検出対象の金属膜や膜厚によって、検出コイル63,発振コイル(励磁コイル)62,バランスコイル(ダミーコイル)64のコイル数(列数)を切り替えて、最適な検出を行うことが可能となる。例えば、金属膜の膜厚が薄かったり、金属の抵抗値が低い場合にはコイル数(列数)を増やすことが可能となる。なお、
図5(a),(b)において、コイルA,コイルB,コイルC等のコイル間には、空間(隙間)は、なくてもよいが、設ける方が好ましい。この空間(隙間)に誘電率が低い材質のものを配置してもよい。
【0060】
図6は、従来の過電流センサのセンサコイル51および本発明の渦電流センサのセンサコイル60と半導体ウエハ(基板)との位置関係を示す模式的立面図である。
図6に示すように、従来のセンサコイル51の検出端51eと本発明の渦電流センサのセンサコイル60の検出端60eとを同一の高さ位置に配置する場合、本発明の渦電流センサ50のセンサコイル60は、従来の渦電流センサのセンサコイル51に比べて、半導体ウエハWに近づけて配置できることが特徴となっている。
センサの感度を得るためには、コイルの巻き数を増加させる必要がある。従来のソレノイド巻きのセンサコイル51は、ボビン(空芯含む)に線材lnを巻きつけていたため5列2層(10ターン)になり、センサコイル51における各コイル73,72,74と半導体ウエハWとの間の距離(L1,L2,L3)が遠くなる。
本発明のセンサコイル60は、ボビンに巻きつける方式ではなくてもよいため、各コイル62,63,64を1列N層巻きでスパイラル状に巻くことによって、各コイルの厚みが薄い状態で巻き数を多く取ることが可能となる。したがって、センサコイル60における各コイル63,62,64と半導体ウエハWとの間の距離(L1,L2,L3)を近づけることができるため、センサ感度が良くなる。そして、巻き数を大きく取ることによってL成分も上昇し、感度が向上する。
【0061】
従来のソレノイド巻きの方式では、巻き数が増加するとコイル共振周波数は低くなり、線間の容量成分は並列接続になり増加し、共振周波数は実際には高くできないため、コイルから発振する周波数を高くすることができなくなる。
これに対して、本発明のスパイラル巻きを実施した場合、1列N層巻きであるため、線間の容量成分は直列接続になり小さくできる。そして、巻き数を多く取ることが可能となり、L成分を高く保持したまま、共振周波数が上昇し、発振周波数を上昇させることが可能になる。
図4(b),(c)においては、スパイラル巻きのコイルを例示したが、スパイラル巻きだけではなく他の巻き方であっても、1列N層巻きであれば同様の効果が得られるものである。
【0062】
図7乃至
図9は、1列N層巻きのセンサコイルの他の巻き方を示す概略図である。
図7に示す例においては、線材lnを1列N層巻きで多角形状に巻くことにより検出コイル63を形成している。
図7に示すように、多角形は、半径方向内側から半径方向外側にいくにつれて、多角形の角数が増加するものであってもよいし、三角形や四角形のみからなって多角形の角数が同一のものであってもよい。
図8に示す例においては、線材lnを1列N層巻きで楕円状に巻くことにより検出コイル63を形成している。
図9に示す例においては、所定の基板BPに1列N層巻きでスパイラル状に印刷配線(printed wiring)PWを施すことにより、導電体1nを1列N層に巻いたパターンコイルからなる検出コイル63を形成している。なお、導電体1nを1列N層に巻いたパターンコイルは、印刷配線以外に、金属部材(Cu膜,Cu箔,Cu材等)をエッチング又はワイヤカット等の加工によって製作することが可能である。なお、金属部材は、Cu以外にAL等の他の材質のものでもよい。
図7乃至
図9に示す例においては、線材又は導電体lnの各種の巻き方を検出コイル63に適用した場合を示したが、発振コイル62およびバランスコイル64にも同様に適用できる。
【0063】
図10は、センサコイル60の3つのコイル62,63,64のうち発振コイル62の形状を凹球面状に形成した例を示す概略図である。
図10に示すように、発振コイル62は、半径方向内側がバランスコイル側に凹んで、半径方向外側にいくにつれて検出コイル側に近づくように凹球面状に彎曲させて線材を巻いたコイルである。このように、発振コイル62を凹球面状に彎曲させて形成することにより、発振磁界を中央部に収束させることが可能になり、センサ感度を上げることができる。
【0064】
図11は、
図4(b)に示すセンサコイルの周囲に高透磁率材料からなる筒状部材を配置した例を示す概略図である。
図11に示すように、センサコイル60のボビン61および3個のコイル62,63,64の周囲を高透磁率材料からなる筒状部材65により囲むようにしている。筒状部材65は、例えば、比透磁率μ=50の高透磁率材料(例えばフェライト、アモルファス、パーマロイ、スーパーマロイ、ミューメタル)を用いて製作することにより、センサコイルの周囲の環境が空気である場合よりも50倍の磁束を通過させることができる。言い換えると、セラミックス材料などの電気的に絶縁材料の周囲環境内に設置する場合よりも1/50の厚さ内に同等の磁束を通すことができる。
【0065】
図11に示すように、センサコイルの周囲に高透磁率材料からなる筒状部材65を配置することにより、研磨テーブル100がステンレス(SUS)材などの導電性材料により製作されている場合でも、筒状部材65内に配置されているセンサコイル60の発振コイル62に電流供給して形成する磁束は、研磨テーブル内に渦電流を発生させて測定に必要な大きさの磁束の経路(磁路)を小さくしてしまうことがなく、半導体ウエハWの金属膜に有効な渦電流を発生させる経路をとることができる。すなわち、筒状部材65は、センサコイル60の発振コイル62による磁束を研磨テーブル100の導電性の母材内に通すことなく、半導体ウエハW側の検出空間内に広げる経路として機能し、その磁束は、測定対象の金属膜(または導電性膜)mf内に大きな渦電流を発生させることができる。このため、研磨テーブル100が、ステンレス(SUS)などの導電性材料により製作されている場合でも、SiCなどのセラミックス材料(絶縁材料)により製作した場合と、同様の感度を確保することができる。
【0066】
図12は、渦電流センサ50のセンサコイル60の3個のコイル62,63,64についてソレノイド巻きとスパイラル巻きとを組み合わせた例を示す概略図である。検出コイル63を1列N層でスパイラル巻きとすることにより、検出コイル63をウエハに近づけることができ、また線間の容量成分が直列接続になり小さくできる等の理由から検出コイル63の性能を向上させることができる。そのため、検出コイル63の感度は向上することから、
図12に示すように、発振コイル62が従来のソレノイド巻きであっても従来のセンサより感度は良くなる。発振コイル62は、線材又は導電体lnをN列1層にソレノイド巻きしたコイルをM層にして構成してもよい。ここでMは2以上の整数である。N列1層のコイルをM層にする場合、各コイル同士が接触すると、容量成分が増加するので、N列1層のコイルを層方向(基板に対して平行方向)にM個並べ、隣接するコイル間に隙間を空けることが好ましく、この隙間に透磁率の低い材料を設けてもよい。なお、バランスコイル64は、検出コイル63とブリッジ回路(後述する)を構成するため、両コイル63,64は同一特性のものを使用することが好ましい。そのため、
図12に示すように、バランスコイル64はスパイラル巻きを採用している。
【0067】
次に、コイルの大きさ(直径)を小さくすることで金属膜の微細な検出を可能にする実施形態について説明する。
図13は、検出コイル63,発振コイル(励磁コイル)62,バランスコイル(ダミーコイル)64の直径(外径)を変えた実施形態を示す概略図である。
図13に示すように、検出コイル63,発振コイル62,バランスコイル64の直径(外径)は同一である必要はなく、発振コイル62と、検出コイル63およびバランスコイル64との直径が異なっていてもよい。
図13に示す例では、検出コイル63とバランスコイル64の直径を発振コイル62の直径より小さくすることにより、センサの検出端の大きさを小さくしている。これにより、ターゲットの金属膜の微細な検出が可能となる。
コイルの直径を小さくする手法としては、巻き数を少なくすること、および線材径(パターン幅),線材(パターン)間距離を小さくすることが考えられる。
コイルが小さくなるとセンサ出力が小さくなるので、構造的には、発振コイル(励磁コイル)を大きくしたり、多段にしたりする必要がでてくるが、励磁周波数を上げたり、励磁電流を上げることでも出力を改善することができる。
【0068】
図4乃至
図9に示すスパイラル巻き、多角形巻き、楕円巻き等の1列N層巻きの検出コイルは、該検出コイルとコンデンサーとを並列接続させコルピッツ回路を構成して励磁、検出機能をもたせ励磁周波数の周波数の変化から研磨終点を検出するセンサにも利用できる。
【0069】
図14は、渦電流センサ50のセンサコイル60の3個のコイル62,63,64を同心円状に配置した例を示す概略図である。
図14に示すように、渦電流センサ50のセンサコイル60の3個のコイル62,63,64は同心円状に配置されている。3個のコイル62,63,64のうち検出コイル63は最外周に配置され、コイル62は中間部に配置され、バランスコイル64は最内周に配置されている。3個のコイル62,63,64は、いずれも線材又は導電体lnをそれぞれ1列N層巻きでスパイラル状に巻いたコイルであり、印刷配線(printed wiring)で一体に形成することができる。
図14に示すような、3個のコイル62,63,64を同心円状に配置したセンサコイル60によれば、センサコイル全体を
図5に示す半導体ウエハ(基板)Wからの距離L1の位置に近づけて配置することができ、センサ感度が良くなる。
【0070】
図15は、センサコイルにおける各コイルの接続例を示す概略図である。
図15(a)に示すように、コイル62,63,64は、1列N層でスパイラル巻きのコイルにより形成され、検出コイル63とバランスコイル64とは互いに逆相に接続されている。
検出コイル63とバランスコイル64とは、上述したように逆相の直列回路を構成し、その両端は可変抵抗76を含む抵抗ブリッジ回路77に接続されている。発振コイル62は交流信号源52に接続され、交番磁束を生成することで、近傍に配置される金属膜(または導電性膜)mfに渦電流を形成する。可変抵抗76の抵抗値を調整することで、コイル63,64からなる直列回路の出力電圧が、金属膜(または導電性膜)が存在しないときにはゼロとなるように調整可能としている。コイル63,64のそれぞれに並列に入る可変抵抗76(VR
1,VR
2)でL
1,L
3の信号を同位相にするように調整する。即ち、
図15(b)の等価回路において、
VR
1-1×(VR
2-2+jωL
3)=VR
1-2×(VR
2-1+jωL
1) (1)
となるように、可変抵抗VR
1(=VR
1-1+VR
1-2)およびVR
2(=VR
2-1+VR
2-2)を調整する。これにより、
図15(c)に示すように、調整前のL
1,L
3の信号(図中点線で示す)を、同位相・同振幅の信号(図中実線で示す)とする。
【0071】
そして、金属膜(または導電性膜)が検出コイル63の近傍に存在する時には、金属膜(または導電性膜)中に形成される渦電流によって生じる磁束が検出コイル63とバランスコイル64とに鎖交するが、検出コイル63のほうが金属膜(または導電性膜)に近い位置に配置されているので、両コイル63,64に生じる誘起電圧のバランスが崩れ、これにより金属膜(または導電性膜)の渦電流によって形成される鎖交磁束を検出することができる。即ち、交流信号源に接続された発振コイル62から、検出コイル63とバランスコイル64との直列回路を分離して、抵抗ブリッジ回路でバランスの調整を行うことで、ゼロ点の調整が可能である。従って、金属膜(または導電性膜)に流れる渦電流をゼロの状態から検出することが可能になるので、金属膜(または導電性膜)中の渦電流の検出感度が高められる。これにより、広いダイナミックレンジで金属膜(または導電性膜)に形成される渦電流の大きさの検出が可能となる。
【0072】
図16は、渦電流センサの同期検波回路を示すブロック図である。
図16は、交流信号源52側からセンサコイル60側を見たインピーダンスZの計測回路例を示している。
図16に示すインピーダンスZの計測回路においては、膜厚の変化に伴う抵抗成分(R)、リアクタンス成分(X)、振幅出力(Z)および位相出力(tan
−1R/X)を取り出すことができる。
【0073】
上述したように、検出対象の金属膜(または導電性膜)mfが成膜された半導体ウエハW近傍に配置されたセンサコイル60に、交流信号を供給する信号源52は、水晶発振器からなる固定周波数の発振器であり、例えば、2MHz,8MHzの固定周波数の電圧を供給する。信号源52で形成される交流電圧は、バンドパスフィルタ82を介してセンサコイル60に供給される。センサコイル60の端子で検出された信号は、高周波アンプ83および位相シフト回路84を経て、cos同期検波回路85およびsin同期検波回路86からなる同期検波部により検出信号のcos成分とsin成分とが取り出される。ここで、信号源52で形成される発振信号は、位相シフト回路84により信号源52の同相成分(0゜)と直交成分(90゜)の2つの信号が形成され、それぞれcos同期検波回路85とsin同期検波回路86とに導入され、上述の同期検波が行われる。
【0074】
同期検波された信号は、ローパスフィルタ87,88により、信号成分以上の不要な高周波成分が除去され、cos同期検波出力である抵抗成分(R)出力と、sin同期検波出力であるリアクタンス成分(X)出力とがそれぞれ取り出される。また、ベクトル演算回路89により、抵抗成分(R)出力とリアクタンス成分(X)出力とから振幅出力(R
2+X
2)
1/2が得られる。また、ベクトル演算回路90により、同様に抵抗成分出力とリアクタンス成分出力とから位相出力(tan
−1R/X)が得られる。ここで、測定装置本体には、各種フィルタがセンサ信号の雑音成分を除去するために設けられている。各種フィルタは、それぞれに応じたカットオフ周波数が設定されており、例えば、ローパスフィルタのカットオフ周波数を0.1〜10Hzの範囲で設定することにより、研磨中のセンサ信号に混在する雑音成分を除去して測定対象の金属膜(または導電性膜)を高精度に測定することができる。
【0075】
図17は、渦電流センサ50を備えた研磨装置の要部構成を示す図であり、
図17(a)は渦電流センサ50の制御部を含む全体構成を示す図であり、
図17(b)は渦電流センサ部分の拡大断面図である。
図17(a)に示すように、研磨装置の研磨テーブル100は矢印で示すようにその軸心まわりに回転可能になっている。この研磨テーブル100内には、交流信号源および同期検波回路を含むプリアンプ一体型のセンサコイル60が埋め込まれている。センサコイル60の接続ケーブルは、研磨テーブル100のテーブル軸100a内を通り、テーブル軸100aの軸端に設けられたロータリジョイント150を経由して、ケーブルによりメインアンプ55を介して制御装置(コントローラ)56に接続されている。なお、センサコイル60はメインアンプ55を一体に備えている場合もある。
【0076】
ここで、制御装置56には、各種フィルタがセンサ信号の雑音成分を除去するために設けられている。各種フィルタは、それぞれに応じたカットオフ周波数が設定されており、例えば、ローパスフィルタのカットオフ周波数を0.1〜10Hzの範囲で設定することにより、研磨中のセンサ信号に混在する雑音成分を除去して測定対象の金属膜(または導電性膜)を高精度に測定することができる。
【0077】
図17(b)に示すように、研磨テーブル100に埋め込まれた渦電流センサ50の研磨パッド側の端面には4フッ化エチレン樹脂などのフッ素系樹脂のコーティングCを有することで研磨パッドをはがす場合に、研磨パッドと渦電流センサが共にはがれてこないようにできる。また渦電流センサの研磨パッド側の端面は研磨パッド101近傍のSiCなどの材料で構成された研磨テーブル100の面(研磨パッド側の面)からは0〜0.05mm凹んだ位置に設置され、研磨時にウエハに接触することを防止している。この研磨テーブル面と渦電流センサ面の位置の差はできる限り小さい方が良いが実際の装置では0.02mm前後に設定することが多い。またこの位置調整にはシム(薄板)151mによる調整やネジによる調整手段が取られる。
【0078】
ここで、センサコイル60と制御装置56を接続するロータリジョイント150は、回転部においても信号を伝送することはできるが、伝送する信号線数に制限がある。このことから、接続する信号線は、8本に制限され、DC電圧源、出力信号線、および各種制御信号の伝送線のみに限られる。なお、このセンサコイル60は、発振周波数が、2から8MHzで切り替え可能となっていて、プリアンプのゲインも研磨対象の膜質に応じて切り替え可能となっている。
【0079】
次に、
図1乃至
図17に示すように構成された渦電流センサを備えた研磨装置において、研磨中の半導体ウエハ上の金属膜(または導電性膜)を検出してモニタする方法について説明する。
図18(a)は、渦電流センサ50が半導体ウエハWの表面(被研磨面)を走査(スキャン)するときの軌跡と渦電流センサ50の出力との関係を示す。
図18(a)に示すように、渦電流センサ50は、研磨テーブル100の回転に伴い半導体ウエハWの下方を通過している間、半導体ウエハWの金属膜(または導電性膜)mfに反応して所定の電圧値(V)を出力するようになっている。
図18(b)は、正常な半導体ウエハWの場合の渦電流センサ50の出力を示す図である。
図18(b)において、横軸は研磨時間(t)であり、縦軸は渦電流センサ50の出力値(電圧値)(V)である。
図18(b)に示すように、正常な半導体ウエハWの場合には、渦電流センサ50は、半導体ウエハ上の金属膜(または導電性膜)mfに反応した概略方形パルス状の出力(電圧値)を得ることができる。
【0080】
図19(a)は、半導体ウエハWの研磨を開始してから半導体ウエハW上の金属膜(または導電性膜)mfがクリアされる(無くなる)までの研磨工程と渦電流センサ50の出力との関係を示す図である。
図19(a)に示すように、半導体ウエハWの研磨開始直後は、金属膜(または導電性膜)mfが厚いため、渦電流センサ50の出力は高くなるが、研磨が進行するにつれて金属膜mfが薄くなるため、渦電流センサ50の出力が低下していく。そして、金属膜mfがクリアされる(無くなる)と、渦電流センサ50の出力値がなくなる。
【0081】
図19(b)は、半導体ウエハWの研磨を開始してから半導体ウエハW上の金属膜(または導電性膜)mfがクリアされる(無くなる)までの研磨時間(t)と渦電流センサ50の出力値の変化の関係を示す図である。研磨テーブル100が1回転して、渦電流センサ50が半導体ウエハWの表面(被研磨面)を走査(スキャン)すると、渦電流センサ50は略方形パルス状の出力を出す。制御装置56(
図17参照)は、渦電流センサ50が半導体ウエハWの表面を1回走査する毎に、通過軌跡(走査線)上の各測定点の出力値を平均した平均値を出力値として出力する。そして、制御装置56は、研磨テーブル100が1回転する毎に渦電流センサ50の各測定点の平均値としての出力値を監視し、渦電流センサ50の出力値が無くなるまで監視し続ける。
図19(b)は研磨時間による渦電流センサ50の出力値(平均値)の変化を示す。
図19(b)に示すように、渦電流センサ50の出力値の監視を行うことにより、金属膜が一様にクリアされた状態を検出できる。
【0082】
図20は、半導体ウエハW上の金属膜(または導電性膜)の研磨工程および監視工程の手順を示すフローチャートである。
図20に示すように、研磨装置は、ウエハカセットから半導体ウエハWを取り出してトップリング1に受け渡し、トップリング1により半導体ウエハWを研磨テーブル100上の研磨面101aに押圧して研磨を開始する。研磨を開始した後に、制御装置56は渦電流センサ50の出力値を監視し、研磨終点の検出までは研磨を続行し、渦電流センサ50の出力値の監視工程を続行する。研磨終点の検出は、渦電流センサ50の出力値が金属膜クリアレベルになったことを検出して半導体ウエハW上に一様に金属残膜がないことを検出することである。研磨終点を検出したら、半導体ウエハWを研磨面(研磨パッド)から離すことなく、残膜監視に移行する。
残膜監視は、以下の方法を任意に選択することにより行う。
(1)渦電流センサのセンサ感度の切替え
(2)監視手段の切替え
なお、上記(1)(2)の残膜監視方法については後述する。
【0083】
次に、残膜監視によって得た情報をCMPプロセスの全体を制御する制御装置(プロセスコントローラ(図示せず))に伝達する。なお、CMPプロセスの全体を制御する制御装置(プロセスコントローラ)は、前記制御装置56を含んだ単一の制御装置でもよく、制御装置56とは別の制御装置でもよい。制御装置(プロセスコントローラ)は、残膜監視の情報に基づいて追加研磨の実施が必要か否かを判定する。そして、追加研磨の実施が必要と判定した場合には、追加研磨を実施し、残膜監視を行って、残膜がないことを確認した後に、洗浄プロセスに移行する。一方、CMPのプロセスに異常をきたしていると判定した場合には、追加研磨の実施ではなく、研磨プロファイル異常通知を行った後に、洗浄プロセスに移行する。洗浄プロセスは、研磨済の半導体ウエハをトップリング1から取り外した後に研磨装置内の洗浄機によりスクラブ洗浄、純水洗浄、乾燥等を行う。そして、洗浄プロセスが終了したら、研磨済の半導体ウエハWのウエハカセットへの回収を行う。
【0084】
次に、
図20に示すフローチャートにおける残膜監視および追加研磨について更に説明する。
残膜監視は、ウエハの本研磨処理後の水ポリッシング中またはオーバポリッシュ中に実施する。ここで、水ポリッシングとは、研磨面に純水(水)を供給しながらウエハに加える面圧を小さくしてポリッシングを行うことを云う。また、オーバポリッシュとは、特徴点検出後に研磨面にスラリを供給しながらポリッシングを行う方法を云う。
残膜監視として、以下の方法を用いる。
(1)金属薄膜検出を目的としたセンサ感度を上げて実施する方法
(2)局所的な残膜を検出するために監視を行う範囲を点データの集積値の平均から点データによる検出方法
残膜監視方法として、(1)、(2)を任意に組合わせて実施する。この場合、(1)と(2)の方法を組合せることによって、局部的な金属薄膜の検出が可能になる。
【0085】
また、残膜を検出した場合の追加研磨は以下のように行う。
追加研磨の実施手段として、オーバポリッシュ中に残膜を検出した場合には、オーバポリッシュの研磨時間を変更する。また、残膜監視によりウエハの特定の箇所に残膜があることを検出した場合には、検出した特定の箇所のトップリングの圧力を変化させることで追加研磨を行い、或いは専用の研磨条件にて追加研磨を行う。追加研磨条件は、次の半導体ウエハ以後を研磨する際の研磨条件にフィードバックする。
【0086】
次に、上述した残膜監視方法のうち、金属薄膜検出を目的としたセンサ感度を上げて実施する方法について説明する。
研磨開始からターゲットの金属膜クリアまで所定の感度を有するセンサ(センサA)のみを使用した場合、ターゲットの金属膜が薄くなった場合や金属膜の面積が小さくなった場合には、金属膜の検出が困難になる。一方、薄膜用のセンサ(センサB)のみを使用して研磨終点の検出を行う場合、初期金属膜が厚い場合には、出力がオーバーレンジ(測定範囲外)になってしまうため、研磨工程を監視することができない。
そこで、本発明においては、感度が異なる2つのセンサA,Bを用い、研磨開始からセンサAの感度がなくなるまで出力を監視し、研磨終点の検出を実施した後、センサBに切替えを行い、ウエハ上に金属残膜がないことを確認する。この場合、センサAには、
図4(a)に示すソレノイド巻きの3つのコイル72,73,74を備えた渦電流センサを用い、センサBには、
図4(b)に示すスパイラル巻きの3つのコイル62,63,64を備えた渦電流センサを用いる。これにより、センサAをセンサ感度が低いセンサとし、センサBをセンサ感度が高いセンサとすることができる。
【0087】
また、
図4(b),
図7,
図8,
図9等に示すスパイラル巻き,多角形巻き,楕円巻き等の1列N層巻きの3つのコイル62,63,64を備えた渦電流センサを1個用いてコイルの巻き数を切替えることにより、感度が異なる2つのセンサAとセンサBとを構成することもできる。
図21(a),(b)は、スパイラル巻きの3つのコイルを備えた渦電流センサを用いてコイルの巻き数を切替えて感度が異なる2つのセンサA,Bを構成する方法を示す模式的平面図である。
図21(a),(b)においては検出コイル63の巻き数を切替える方法について示すが、発振コイル62およびバランスコイル64の場合も同様の切替え方法である。
図21(a)に示すように、スパイラル巻きの検出コイル63に通電するための入力端子T1,T2が設けられており、入力端子T1は検出コイル63の外周側端部63oeに接続され、入力端子T2は切替スイッチSWに接続されている。一方、検出コイル63の内周側端部63ieは切替用端子TS1に接続され、検出コイル63の中間部63m1,63m2はそれぞれ切替用端子TS2,TS3に接続されている。
図21(b)に示すように、スパイラル巻きの検出コイル63に通電するための入力端子T1,T2が設けられており、入力端子T1は検出コイル63の内周側端部63ieに接続され、入力端子T2は切替スイッチSWに接続されている。一方、検出コイル63の外周側端部63oeは切替用端子TS1に接続され、検出コイル63の中間部63m1,63m2はそれぞれ切替用端子TS2,TS3に接続されている。
【0088】
図21(a),(b)に示すように構成された検出コイル63において、切替スイッチSWを切替用端子TS1に接続することにより、入力端子T1,T2から検出コイル63の内周端端部63ieと外周側端部63oeとの間に通電可能となり、コイルの巻き数は最大となる。また、切替スイッチSWを切替用端子TS2またはTS3に接続することにより、入力端子T1,T2から検出コイル63の中間部63m1または63m2と外周側端部63oe(または内周側端部63ie)との間に通電可能となり、コイルの巻き数は少なくなる。このようにして、コイルの巻き数を2段階または3段階に変化させることにより、センサ感度を変えることができ、単一の検出コイル63を用いてコイルの巻き数を切替えることによりセンサAとセンサBとを構成することができる。
【0089】
また、
図12に示すように検出コイル63とバランスコイル64とをスパイラル巻きとし、発振コイル62をソレノイド巻きで構成したセンサコイル60を備えた渦電流センサをセンサAとして用い、
図4(b)に示すスパイラル巻きの3つのコイル62,63,64を備えた渦電流センサをセンサBとして用いることもできる。
【0090】
図22は、金属薄膜検出を目的としたセンサ感度を上げて実施する方法においてセンサの切替えを行うタイミングを示す模式図である。
図22に示すように、半導体ウエハWの研磨開始時には、金属膜(または導電性膜)mfが厚いため、センサAの出力は高くなるが、研磨が進行するにつれて金属膜mfが薄くなるため、センサAの出力が低下していく。そして、「ウエハ中心部金属膜クリア/ウエハ端部金属残膜あり」の状態になると、センサAはセンサ感度なしの状態になる。したがって、センサAは研磨終点の検出を実施する。センサAが研磨終点の検出を実施した後、センサBに切替えを行う。センサBは、センサAより感度が高く設定されているため、ウエハ端部側の出力値が山形状に大きくなり、「ウエハ中心部金属膜クリア/ウエハ端部金属残膜あり」の状態を検出できる。
【0091】
次に、上述した残膜監視方法のうち、ウエハ上の局所的な残膜の検出を目的に監視手法を変更する方法について説明する。
残膜発生位置、残膜の大きさ・膜厚に関する情報を得るために、研磨終点の検出に使用した、1回の走査で得られた全ての測定点のデータを平均した出力値による監視から、各測定点の出力値による監視に切替える。残膜の位置が全周に渡らず、局所的な場合には、センサの軌跡上を残膜が通過した場合に、出力値が変化する。この出力値の変化をとらえてウエハの端部(または中心)からの距離を把握することができる。この場合、センサ感度を切替えることにより、金属薄膜の監視も可能になる。
【0092】
図23は、ウエハ上の局所的な残膜の検出を目的に監視手法を変更する方法を示す図である。
図23(a)は、1回の走査で得られたセンサ軌跡上の全ての測定点のデータを平均した出力値を用いる監視手法を示し、
図23(b)は、1回の走査で得られたセンサ軌跡上の各測定点の出力値を用いる監視手法を示し、
図23(c)は
図23(a)に示す監視手法から
図23(b)に示す監視手法に切替える場合を示すグラフである。
図23(c)において、横軸は研磨時間(t)であり、縦軸は渦電流センサの出力値である。
図23(a)に示すように、渦電流センサ50が半導体ウエハの表面を1回走査するごとに、全ての測定点において測定されたデータを平均した出力値を用いて監視する。そして、
図23(c)に示すように、センサAの軌跡上の全ての測定点のデータを平均した出力値を監視することにより研磨終点の検出を行う。センサAにより研磨終点を検出した時点では、金属膜クリアレベルになっている。この場合、局所的な面積が小さい金属薄膜は、その部分の出力値が平均化処理されてしまうために検出することはできない。
【0093】
そのため、研磨終点を検出した後に、感度が高いセンサBに切替えを行う。
図23(b)に示すように、センサBは、センサが半導体ウエハの表面を1回走査するごとに、各測定点において測定された出力値を出力する。そのため、残膜が発生している場合には、センサBの出力値は、
図23(b)の下部に示すように山形状の出力値になり、金属薄膜の検出が可能になる。また、残膜が発生している箇所の把握も可能になる。すなわち、
図23(c)に示すように、センサAの平均化処理された出力値を監視して研磨終点を検出した後に、感度が高いセンサBに切替え、センサBにおける平均化処理されない各測定値の出力値を監視することにより、局所的な面積が小さい残膜の発生を検出できる。
【0094】
図24は、センサBにより得た各測定値の出力値を監視することにより局所的な残膜の発生を検出する場合に、ウエハの下層にある金属配線等の影響について示す図である。
図24(a)は、ウエハの下層の影響を受けない場合を示し、
図24(b)は、ウエハの下層にある金属配線等の影響を受ける場合を示す。
上述したように、センサAを用い、ウエハ面内を通過するセンサの軌跡上の出力を平均化することによって、金属膜の下層にある金属配線の影響を回避することができる。一方、センサBは各測定点において測定された出力値を出力するため、
図24(a)に示すように、センサBの平均化処理されない各測定値の出力値を監視することにより、局所的な面積が小さい残膜の発生を検出できる。しかしながら、センサBの出力値は、各測定点の出力値であるため、金属膜の下層にある金属配線等の影響を受ける可能性がある。そのため、
図24(b)に示すように、出力が上昇している点が多い場合には、残膜ではなく、ウエハの下層による影響と判断する。
【0095】
次に、
図20に示すフローチャート中の残膜監視において残膜を検出した場合に、CMPにより追加研磨を実施する場合と研磨プロファイルの異常を通知する場合の方式を選択可能としている点について説明する。
残膜監視において残膜を検出した場合に、通常、追加研磨を実施して金属薄膜を除去する。しかしながら、追加研磨によってウエハの平坦性が保たれた場合でも、CMPのプロセスに異常をきたしている場合があるため、研磨プロファイルの異常を研磨装置の制御装置に通知することができるようにしている。
【0096】
次に、渦電流センサ50が半導体ウエハの表面を走査するときの軌跡(走査線)について説明する。
本発明では、所定の時間内(例えば、移動平均時間内)に渦電流センサ50が半導体ウエハW上に描く軌跡が半導体ウエハWの表面の全周にわたってほぼ均等に分布するようにトップリング1と研磨テーブル100の回転速度比を調整する。
図25は、渦電流センサ50が半導体ウエハW上を走査する軌跡を示す模式図である。
図25に示すように、渦電流センサ50は、研磨テーブル100が1回転するごとに半導体ウエハWの表面(被研磨面)を走査するが、研磨テーブル100が回転すると、渦電流センサ50は概ね半導体ウエハWの中心Cw(トップリングシャフト111の中心)を通る軌跡を描いて半導体ウエハWの被研磨面上を走査することになる。トップリング1の回転速度と研磨テーブル100の回転速度とを異ならせることにより、半導体ウエハWの表面における渦電流センサ50の軌跡は、
図25に示すように、研磨テーブル100の回転に伴って走査線SL
1,SL
2,SL
3,…と変化する。この場合でも、上述したように、渦電流センサ50は、半導体ウエハWの中心Cwを通る位置に配置されているので、渦電流センサ50が描く軌跡は、毎回半導体ウエハWの中心Cwを通過する。
【0097】
図26は、研磨テーブル100の回転速度を70min
−1、トップリング1の回転速度を77min
−1として、移動平均時間(この例では5秒)内に渦電流センサ50が描く半導体ウエハ上の軌跡を示す図である。
図26に示すように、この条件下では、研磨テーブル100が1回転するごとに渦電流センサ50の軌跡が36度回転するので、5回走査するごとにセンサ軌跡が半導体ウエハW上を半周だけ回転することになる。センサ軌跡の湾曲も考慮すると、移動平均時間内に渦電流センサ50が半導体ウエハWを6回走査することにより、渦電流センサ50は半導体ウエハW上をほぼ均等に全面スキャンすることになる。
【0098】
上述した例では、トップリング1の回転速度が研磨テーブル100の回転速度よりも速い場合を示したが、トップリング1の回転速度が研磨テーブル100の回転速度よりも遅い場合(例えば、研磨テーブル100の回転速度が70min
−1、トップリング1の回転速度が63min
−1)も、センサ軌跡が逆方向に回転するだけであり、所定の時間内に渦電流センサ50が半導体ウエハWの表面に描く軌跡を半導体ウエハWの表面の全周にわたって分布させる点では上述の例と同じである。
【0099】
また、上述の例では、トップリング1と研磨テーブル100の回転速度比が1に近い場合を述べたが、回転速度比が0.5や1.5、2など(0.5の倍数)に近い場合も同様である。即ち、トップリング1と研磨テーブル100の回転速度比が0.5の場合、研磨テーブル100が1回転するごとにセンサ軌跡が180度回転し、半導体ウエハWから見れば渦電流センサ50が一回転ごとに逆方向から同一軌跡上を移動することになる。
【0100】
そこで、トップリング1と研磨テーブル100の回転速度比を0.5から少しずらして(例えば、トップリング1の回転速度を36min
−1、研磨テーブル100の回転速度を70min
−1とする)、研磨テーブル100が1回転するごとにセンサ軌跡が(180+α)度回転するようにすれば、センサ軌跡が見かけ上α度ずれるようにできる。したがって、移動平均時間内にセンサ軌跡が半導体ウエハWの表面上を約0.5回、または約N回、または約0.5+N回(言い換えれば、0.5の倍数、すなわち0.5×N回(Nは自然数))だけ回転するようにαを設定(即ち、トップリング1と研磨テーブル100の回転速度比を設定)すればよい。
【0101】
移動平均時間内に渦電流センサ50が半導体ウエハWの表面に描く軌跡が全周にわたって略均等に分布するようにすることは、移動平均時間の調整も考慮すると広い範囲において回転速度比の選択を可能とする。したがって、研磨液(スラリ)の特性などによりトップリング1と研磨テーブル100の回転速度比を大きく変える必要がある研磨プロセスにも対応できる。
【0102】
ところで、一般に、トップリング1の回転速度が研磨テーブル100の回転速度の丁度半分である場合を除いて、渦電流センサ50が半導体ウエハW上に描く軌跡は
図26に示すように湾曲する。したがって、所定の時間内(例えば移動平均時間内)に渦電流センサ50が半導体ウエハW上に描く軌跡が半導体ウエハWの全周にわたって分布したとしても、センサ軌跡が必ずしも厳密な意味で周方向に均等に分布する訳ではない。センサ軌跡を半導体ウエハWの周方向に厳密に均等に分布させるには、所定時間毎にセンサ軌跡が半導体ウエハWの周上をちょうどN回(Nは自然数)だけ回転するようにする必要がある。この間に、渦電流センサ50は、半導体ウエハWの表面を全周にわたり周方向に均等な方向・向きに走査する。これを実現するためには、例えば研磨テーブル100が所定の回数(自然数)だけ回転する間に、トップリング1がちょうど研磨テーブル100の回転回数とは異なる回数(自然数)だけ回転するように、研磨テーブル100とトップリング1の回転速度を定めればよい。この場合においても、上述のようにセンサ軌跡は湾曲するため、センサ軌跡が周方向に等間隔に分布するとはいえないが、センサ軌跡を2本ずつ対にして考えれば、センサ軌跡は任意の半径位置において周方向に均等に分布しているものと見なすことができる。
図27はこれを示す例であり、
図26と同一の条件で研磨テーブル100が10回回転する間の半導体ウエハW上のセンサ軌跡を示した図である。以上より、渦電流センサ50は、上述の例に比べて半導体ウエハWの全面をより平均的に反映したデータを取得することができる。
【0103】
図28は、本発明の研磨装置において好適に使用できる複数の圧力室を備えたトップリングを示す模式的断面図である。トップリング1は、半導体ウエハWに当接する円形の弾性パッド142と、弾性パッド142を保持するチャッキングプレート144とを有している。弾性パッド142の上周端部はチャッキングプレート144に保持され、弾性パッド142とチャッキングプレート144との間には、4つの圧力室(エアバッグ)P1,P2,P3,P4が設けられている。圧力室P1,P2,P3,P4にはそれぞれ流体路152,153,154、155を介して加圧空気等の加圧流体が供給され、あるいは真空引きがされるようになっている。中央の圧力室P1は円形であり、他の圧力室P2,P3,P4は環状である。これらの圧力室P1,P2,P3,P4は、同心上に配列されている。
【0104】
圧力室P1,P2,P3,P4の内部圧力は図示しない圧力調整部により互いに独立して変化させることが可能であり、これにより半導体ウエハWの4つの領域、すなわち、中央部、内側中間部、外側中間部、および周縁部に対する押圧力を独立に調整することができる。この例では、圧力室P1,P2,P3,P4は、互いに独立して半導体ウエハWを押圧する押圧機構を構成する。研磨中の半導体ウエハWの金属膜(または導電性膜)mfの膜厚は、研磨テーブル100に設けられた渦電流センサ50(
図1参照)によって測定され、半導体ウエハWの径方向の膜厚分布が制御装置56(
図17参照)によって取得される。制御装置56は、膜厚分布に応じて圧力室P1,P2,P3,P4の内部圧力を制御し、例えば、半導体ウエハW上の金属膜(または導電性膜)mfの中央部の膜厚が周縁部の膜厚より厚い場合は圧力室P1の圧力を圧力室P4の圧力より高めて金属膜(または導電性膜)mfの中央部の研磨圧力を周縁部の研磨圧力を高めて研磨を行い、所望の研磨プロファイルを達成する。
【0105】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。