(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、圧着端子と電線端末との接続部を樹脂封止することがワイヤハーネスの製造単価を増加させる要因となっている。これは使用される樹脂そのものが高価であることに加え、樹脂モールド処理或いはコーティング処理の工程で、樹脂の流し込みや硬化に時間を要することによる。
【0006】
そこで、圧着端子の電線接続部(圧着部)をプレス成型により筒状に曲げ加工し、その筒状に曲げ加工した部分にできる板材両端の2つの縁部を、レーザ溶接により接合して電線接続部を密閉構造にする試みがなされている。
【0007】
一方で、圧着端子の製造工程においては、プレス成型後の連鎖端子を、別途用意されたレーザ溶接機において溶接加工を行うが、この溶接加工処理を行うに当たっては、プレス成型された端子を、再度精密に位置決めする作業工程が必要であり、同期するプレス成型の速度の高速化を制限する原因になる。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、後工程で行っていたプレス加工と溶接加工とを、一つの装置の中で実行することで、溶接品質と製作速度の向上を図った溶接機を備えたプレス装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のプレス装置は、連続的に供給される板状体を中空状に折り曲げて、被覆導線の導体部分を収容して圧着可能な圧着部を有する連鎖端子を形成するプレス機と、前記圧着部の2つの縁部を近接させて、前記2つの縁部に沿ってレーザ光を照射して接合し密閉構造にするレーザ照射手段を備えた溶接機と、を備え、前記プレス機は、固定された下金型と前記下金型に対して離間移動可能に設けられた上金型とからなる金型と、前記上下金型の間で前記連鎖端子を順送り搬送する搬送機構と、を備え、前記上下金型のいずれかに、レーザ光を照射可能な貫通穴が、前記連鎖端子の搬送方向に直交する方向に形成され、前記レーザ照射手段は、前記貫通穴を通して前記2つの縁部にレーザ光を照射する。
【0010】
以上のような本発明によれば、プレス装置のなかに、レーザ溶接機を組み込むことによって、従来後工程で行っていたプレス加工と溶接加工とを、一つの装置の中で実行することができる。したがって、プレス成型を施した被加工対象物を一度ロール状に巻き取って次工程の溶接加工を行うような必要がなく、処理工程の減少による処理の高速化と、巻き取りによる端子の位置ずれ等に基づく溶接不良を防ぎ、高精度な端子製造を行うことができる。
【0011】
また、上下金型のいずれかに貫通穴を設け、この貫通穴を通じてレーザ光を照射できるので、金型によるプレス加工に影響を与えることなく、プレス加工と溶接加工とを一つの装置内で実現できる。
【0012】
本発明の他の態様では、前記貫通穴は、前記上金型に形成され、前記金型外部には、前記上金型に形成された前記貫通穴の開口部上方に延伸し、前記レーザ照射手段を支持する支持部材が固定される。
【0013】
この態様では、レーザ照射手段を、支持部材によって、金型外部に設置することで、溶接加工位置の直上に固定することができるので、レーザ照射手段によるレーザ照射が上金型の上下移動の影響を受けることない。
【0014】
また、他の態様では、前記貫通穴は、前記下金型に形成され、前記下金型を支持する基台には、前記下金型に形成された前記貫通穴の開口部下方から、前記レーザ光を照射可能なように、前記レーザ照射手段を設置する設置部が設けられる。
【0015】
以上の態様では、基台に設置部を設け、さらに下金型に貫通穴を設けるだけで、レーザ照射手段の設置が可能となる。すなわち、他の設置部材等を設けず、金型の加工だけでプレス装置に溶接機を組み込むことが可能となる。
【0016】
また、他の態様では、前記貫通穴は、前記上金型に形成され、前記レーザ照射手段は、前記金型外部に固定され、前記上金型に形成された前記貫通穴の開口部近傍には、前記レーザ照射手段からのレーザ光を前記貫通穴に向かって反射するミラーが設けられる。
【0017】
以上の態様では、レーザ照射手段を外部に設置しているので、簡単な構造で、プレス装置に溶接機を設けることが可能となる。特に、レーザ照射手段をプレス機の内部に挿入することがないので、レーザ照射手段の防振及び防汚が容易である。
【0018】
また、他の態様では、前記ミラーは、前記上金型に固定されており、前記レーザ照射手段は、前記上金型の離間移動に合わせて移動する前記ミラーの反射光が前記2つの縁部に沿って移動するように、前記ミラーに向かって前記レーザ光を照射する。
【0019】
以上の態様では、上記態様と同様に、レーザ照射手段を外部に設置しているので、簡単な構造で、プレス装置に溶接機を設けることが可能となる。
【0020】
他の態様では、前記ミラーは、前記金型外部に固定された前記レーザ照射手段から前記上金型に形成された前記貫通穴の開口部上方に延伸して設けられたアームに固定されており、前記レーザ照射手段は、前記ミラーの反射光が前記2つの縁部に沿って移動するように、前記ミラーに向かって前記レーザ光を照射する。
【0021】
以上の態様では、上記態様と同様に、レーザ照射部を外部に設置しているので、簡単な構造で、プレス装置に溶接機を設けることが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
以上のような本発明によれば、後行程で行っていたプレス加工と溶接加工とを、一つの装置の中で実行することで、溶接品質と製作速度の向上を図ったレーザ溶接装置を備えたプレス装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について、実施形態ごとに図面を参照して説明する。
【0025】
[1.第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係るプレス装置1について、
図1〜
図4を参照して説明する。まず、本実施形態のプレス装置1の概略構成示す。
図1にプレス装置1の斜視図に示すように、プレス装置1は、プレス成型とその後の工程(本実施形態ではレーザ溶接)とを、プレス装置ひとつの中で実行する装置である。
【0026】
このプレス機10は、連続的に供給される板状体である銅条を、図示しない送り機構により間欠的に搬送しながら、打ち抜きや曲げ加工等のプレス成型を施して連鎖端子を形成する装置である。また、レーザ溶接機11は、連鎖端子に形成された圧着端子にレーザ光を照射して接合するものである。
【0027】
具体的には、
図2に示すように、ロール状から巻き出された銅条CS(
図2(a))に対して、一次プレスとして、打ち抜き加工を施すことによって、
図2(b)に示す連鎖端子TS1が形成される。この連鎖端子TS1は、プレス機10内において連鎖端子TS1を送り方向に搬送するためのキャリア部C1,C2が連鎖端子T1の上下に形成されている。このキャリア部C1,C2には、搬送時に位置決めを行うため図示しない送りピンを挿入する送り穴Hが所定ピッチで複数(ここでは圧着端子Tの位置に合わせて一つずつ)設けられている。キャリア部C1,C2の間には、後工程において個片の圧着端子STの筒状の圧着部Taを成す部分と、他の端子との接続部分となる箱状のコネクタ部Tbとが形成されている(
図3参照)。
【0028】
図2(c)は、二次プレスとして、曲げ加工を施すことによって、
図2(c)に示す連鎖端子T2が形成される。この連鎖端子T2では、キャリア部C2は除去されており、キャリア部C1のみを有する状態となる。また、圧着部Taとコネクタ部Tbとは、曲げ加工により、
図3に示すように、それぞれ筒状と箱状に形成された状態となる。この状態において、圧着部Taは、筒状の曲げ加工した部分にできる突き合わせ界面Tcが形成される。ここで、突き合わせ界面Tcとは、圧着部の一方の端部の側面と、もう一方の端部の側面を突き合わせて接触させた部分のことを言う。なお、本実施形態では、最適な例として突き合わせ溶接を示しているが、本発明は、このような突き合わせ溶接に限らず、例えば、板材両端を重ね合わせて密閉構造を形成することも可能である。この場合、突き合わせ溶接ではなく、重ね合わせ溶接が施される。
【0029】
レーザ溶接機11は、連鎖端子の曲げ加工した部分にできる突き合わせ界面Tcを、レーザ溶接により接合して電線接続部を密閉構造にする装置である。レーザ溶接機11は、また、圧着部Taとコネクタ部Tbとの接続部分に、導体部分への水の侵入を抑制するためにレーザ溶接を行い封止する装置でもある。具体的には、
図3の斜視図に示すように、個片の圧着端子Tにおける円筒状に曲げ加工された圧着部Taの上端部において、軸方向に向かって形成される突き合わせ界面Tcを、レーザ溶接する。また、圧着部Taとコネクタ部Tbとの接続部分を押し潰して接続部Tdを形成し、この部分に導体部分への水の侵入を抑制するために、封止部をレーザ溶接する。
【0030】
本実施形態では、被加工対象物を上述のように銅条CSとして、銅合金による板材を用いている。なお、被加工対象物の材料が銅合金に限定されないことはもちろんであり、例えばアルミニウム系材料が被加工対象物として用いられてもよい。本実施形態では、被加工対象物の板厚は、0.25mmまたは0.32mmのものが使用されているが、板厚がこれらに限定されないことはもちろんである。
【0031】
また、上述したレーザ溶接機11のレーザ溶接には、ファイバレーザ溶接が用いられている。ファイバレーザはビーム品質に優れ、集光性が高いため、従来のレーザよりも加工領域におけるエネルギー密度の高いレーザ溶接を実現することができる。このため、高速で材料を加工することが可能であり、熱影響が少なく、アスペクト比の高い深溶け込み溶接が可能であるから圧着部Taの強度低下や変形を抑制しつつ、曲げ加工した2つの縁部の突き合わせ又は重ね合わせ部と、接続部Tcの重ね合わせ部を適切に封止することができる。ファイバレーザは、連続発振、パルス発振、QCW発振、又はパルス制御された連続発振によって照射されてもよい。ファイバレーザはシングルモードまたはマルチモードファイバレーザでも構わない 。
【0032】
なお、本発明では、ファイバレーザ溶接に代えて、YAGレーザ、半導体レーザ、ディスクレーザ等のレーザビーム、又は電子ビームを用いてもよい。
【0033】
図1に戻って、プレス装置1の具体的な構成について説明する。プレス機10は、基台となるボルスタプレート15に固定された下金型13と下金型13に対して図中上下方向に離間移動可能にするスライド16に設けられた上金型14とからなる金型12と、上下金型12の間で連鎖端子TSを間欠的に順送り搬送する搬送機構(図示せず)と、を備える。なお、搬送機構は、銅条CSをローラによって搬送する従来プレス装置に用いられる公知の機構を用いるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0034】
下金型13は、上述のとおり、ボルスタプレート15上に保持されるとともに、中央に直線状に連鎖端子の搬送路TRを備える。一方、上金型14は、スライド16に支持されるとともに、図に示すように、スライド16に支持される柱14a,14bのうち一方の柱14bを切り欠いて形成した切欠14cを設けて、後述するレーザ照射部17を挿入する空間を設けている。また、上金型14の中央部分には、レーザ照射部17がレーザ光LBを照射可能な貫通穴THが、連鎖端子の搬送方向に直交する方向に形成されている。
【0035】
一方、レーザ溶接機11は、図示しないレーザ光源と、ボルスタプレート15に固定されたレーザ照射部17と、レーザ照射部17を支持するブラケット18(支持部材)を備える。
【0036】
レーザ照射部17は、図示しないレーザ光源から出力されたレーザ光を溶接加工位置Pに導くための光学装置である。レーザ照射部17は、ガルバノスキャナ17Aと、集光レンズ17Bと、を有している。
図1に示したように、レーザ光源と光学装置を分離するためには、ミラーによる伝送かファイバケーブルを用いた伝送がある。ミラー伝送は振動に弱く、定期的なアライメントが必要であるのに対して、ファイバ伝送はレーザ光をファイバ内に伝送させることが可能なため、振動に強くかつアライメントフリーである。このようなファイバ伝送可能なレーザとして、上述した例のように、ファイバレーザやYAGレーザがある。
【0037】
ガルバノスキャナ17Aは、2軸(XY)式または3軸(XYZ)式ガルバノスキャナであり、レーザ光源からのレーザ光を互いに直交する軸周りに互いに同期して角度制御される2つのミラー17X,17Yで順次反射させることにより、溶接加工位置Pに停止している圧着端子Tの突き合わせ界面Tcにレーザ光LBを掃引照射する。ガルバノスキャナ17Aは、ガルバノ制御装置により駆動制御される。レーザ光LBの水平面内における照射位置は、ミラー17X,17Yの角度を制御することにより、レーザ光LBの掃引速度はミラー17X,17Yの回動速度を制御することにより、各々調節することができる。
【0038】
集光レンズ17Bは、ガルバノスキャナ17Aからのレーザ光を圧着端子Tの突き合わせ界面Tcの位置に集光させる光学レンズである。集光レンズ17Bには、テレセントリックレンズ又はf−θレンズが用いられる。
【0039】
なお、本実施形態では、圧着端子のレーザ加工領域が3次元構造であるため、ガルバノスキャナ17Aには3軸式を用いる必要がある。ただし、加工する端子表面が2次元形状の場合には、レーザ光が垂直入射になり、焦点補正が不要であることから、ガルバノスキャナ17Aには2軸式を用いることができる。
【0040】
ブラケット18は、下金型13と同様に、ボルスタプレート15には、上金型14に形成された貫通穴の開口部上方に延伸して、レーザ照射部17を支持する部材である。より具体的には、ブラケット18は、側面視L字状で形成され、ボルスタプレート15から鉛直方向に立ち上がる柱部18aと、金型12外部から水平方向に延びてレーザ照射部17を搭載する梁部18bとから構成される。
【0041】
なお、ブラケット18は、理想的には図に示すように金型12から距離が離れておらず、処理対象である圧着端子Tと振動成分を同じくできるボルスタプレート15に設けるのが好ましいが、上金型14の上下動を共にしない限りは、他の箇所に固定しても構わない。
【0042】
以上のような構成のプレス装置1では、
図4(a)〜(c)の模式図に示すように、矢印方向に間欠的に搬送される銅条CSに対して、上金型14が複数回の上下移動を繰り返すことにより、連鎖端子TS上に
図3に示した圧着端子Tが形成されるようになる。すなわち、
図4(c)に示すように、搬送方向上流側より、前段プレスゾーンとして3工程、後段プレスゾーンとして3工程のプレス成型を行う間に、レーザ溶接機11によるレーザ溶接ゾーンを設け、連鎖端子TSにレーザ溶接を施す。なお、
図4(c)では、
図2及び3に示した圧着端子Tのうち、圧着部Taに対する加工のみを取り出して示している。
【0043】
より具体的には、前段プレスゾーンにおいて、まず、銅条CSを打ち抜き(
図4(a)の(1))、続いて、打ち抜いた板状体を半円状に曲げ加工し(
図4(a)の(2))、さらに、次の工程で円管状に曲げ加工して圧着端子Tの形状を形成する(
図4(a)の(3))。続く工程では、円管状の圧着部Taとコネクタ部Tbとの接続部分を押し潰して接続部Tdを形成される(
図4(a)の(4))。続いて、連鎖端子TSの圧着端子Tが、溶接加工位置Pに搬送されてくると、
図4(b)に示すように、レーザ照射部17によって、溶接加工位置Pに停止している圧着端子Tの突き合わせ界面Tc及び封止部にレーザ光LBが掃引照射される(
図4(a)の(5))。これにより、
図3の斜視図に示すような圧着部Taが形成される(
図4(a)の(6))。
【0044】
以上のような本実施形態のプレス装置1によれば、プレス装置1のなかに、レーザ溶接機11を組み込むことによって、従来別ラインで行っていたプレス加工と溶接加工とを、一つの装置の中で実行することができる。したがって、プレス加工後、溶接加工を行うに当たってプレス成型された端子を再度精密に位置決めする作業工程が省略できるので、処理工程の減少による処理の高速化を実現できる。
【0045】
本実施形態では、また、上金型14に貫通穴THを設け、この貫通穴THを通じてレーザ光LBを照射できるので、金型12によるプレス加工に影響を与えることなく、プレス加工と溶接加工とを一つの装置内で実現できる。
【0046】
また、レーザ照射部17を、ブラケット18によって、金型12外部であって、下金型13を支持するボルスタプレート15に設置することで、溶接加工位置Pの直上に固定することができるので、レーザ照射部17によるレーザ照射が上金型14の上下移動の影響を受けることない。
【0047】
レーザ照射部17は、上金型14の柱14bに切欠14cを設けるとともに、上金型14に貫通穴THを設けることで金型12に対して設置できるので、従来のプレス装置の改良によって実現可能である。
【0048】
以上の本実施形態では、高速高精度のプレス加工及び溶接加工が可能となった溶接機を備えたプレス装置を提供することができる。
【0049】
[2.第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係るプレス装置2について、
図5を参照して説明する。プレス装置2は、第1の実施形態におけるプレス装置1のレーザ照射部17の設置位置に変更を加えたものである。以下、この点について説明し、第1の実施形態と共通の構成については、説明を省略する。
【0050】
図5に示すように、プレス装置2は、レーザ照射部17を、下金型13の下部に設けたものである。より具体的には、下金型13を支持するボルスタプレート15に、レーザ照射部17を収納する設置穴15Aと、レーザ照射部17と図示しないレーザ光源とを接続するケーブルCAを収納する収納溝15Bを形成して、レーザ照射部17を収納したものである。
【0051】
また、下金型13には、レーザ照射部17からのレーザ光LBが下金型13に設けた搬送路TR上を搬送する連鎖端子TSに照射されるように形成された貫通穴THが設けられている。
【0052】
さらに、設置穴15Aの上側には、貫通穴THを横切るように、エア流路ARが設けられている。このエア流路ARには、外部に図示しないエア噴射機と、吸引機とが接続されている。このエア噴射機と吸引機により、エア流路ARには、図に矢印で示す方向にプッシュプル方式のエアフローが形成されている。このようなエアフローにより、下部にレーザ照射部17を設けた場合であっても、圧着部Taの溶接対象部位からスパッタが下方に飛散した場合でも、スパッタがレーザ照射部17に積もることなく、吸引機側に吸引することが可能である。
【0053】
なお、この実施形態では、上金型14については、第1の実施形態と同様の符号を付しているが、第1の実施形態の上金型14の柱14a,14bは形成されず、上金型14の全面を支持する支持部材14dが設けられている。
【0054】
また、上述のように、下金型13の下方から連鎖端子TSの圧着端子Tにレーザ照射を行うため、圧着端子Tの圧着部Taにおける突き合わせ界面Tcは、レーザ照射側である下側を向いている必要があり、曲げ加工のプレス成型も第1の実施形態とは、反対の面に向かって行う。
【0055】
また、本実施形態においても、第1の実施形態と同様、端子のレーザ加工を行う部分が3次元構造であるため、ガルバノスキャナ17Aには3軸式を用いる必要がある。また、端子のレーザ加工を行う部分が2次元構造である場合には、レーザ光が垂直入射になるので、ガルバノスキャナ17Aには2軸式を用いることができる。
【0056】
以上のようなプレス装置2によれば、第1の実施形態の効果のほか、ボルスタプレート15に設置穴15Aと収納溝15Bとからなる設置部を設け、さらに下金型13に貫通穴THを設けるだけで、レーザ照射部17の設置が可能となる。すなわち、他の設置部材等を設けず、金型の加工だけでプレス装置に溶接機を組み込むことが可能となる。
【0057】
[3.第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係るプレス装置3について、
図6及び7を参照して説明する。プレス装置3は、第1の実施形態におけるプレス装置1のレーザ照射部17の設置位置に変更を加えたものである。以下、この点について説明し、第1の実施形態と共通の構成については、説明を省略する。
【0058】
図6に示すように、プレス装置3は、レーザ照射部17を、金型12の外部に設けるとともに、上金型14の貫通穴THの開口部PEに、外部に設けられたレーザ照射部17からのレーザ光LBを、下金型13上の溶接加工位置Pに向けて反射するミラー17Cを設けて構成される。
【0059】
外部に設けられるレーザ照射部17は、基台となるボルスタプレート15に設けられたブラケット18上に載置され、集光レンズ17Bの光軸をミラー17C方向に向けるように設置されている。
【0060】
以上のようなプレス装置3では、上金型14の一回の昇降ストロークの間に、圧着端子Tの圧着部Taの突き合わせ界面Tcにレーザ光LBを掃引照射するに当たって、ミラー17Cが上金型14の移動に伴って移動するため、レーザ照射部17からミラー17Cに向けて照射するレーザ光LBの光軸を変更する必要がある。この点について、
図7を用いて説明する。
【0061】
図7(a)は、上金型14の昇降動作を示すストローク曲線であり、縦軸に位置を、横軸に上金型14を昇降させるモータの回転角度を表す。
図7(b)は、同図(a)に示す曲線で昇降動作を行う上金型14の移動を5つの局面をピックアップし、これにレーザ照射部17からミラー17Cに向けてレーザ光LBを照射方向とミラー17Cにおける反射を模式的に示したものである。
【0062】
図7(b)の(1)と(5)は、上金型14が上昇した位置を示しており、この局面は、それぞれレーザ照射部17からのレーザ光LBの照射が開始される位置と、終了する位置である。
図7(b)の(1)から(2)までの局面は、レーザ照射部17から圧着部Taの突き合わせ界面Tcの端部から、この界面に沿ってレーザ光LBが照射すべく、レーザ照射部17からミラー17Cに向けてレーザ光LBを照射する局面であり、(2)の段階で突き合わせ界面Tcへの溶接を終えている。
【0063】
図7(b)の(3)は、上金型14が下降し、下金型13と当接した上金型14を駆動するモータの回転角が180度の局面であり、ここでは、同図に示すように、圧着部Taの接続部Tdに形成される封止部の溶接を行う局面であり、図に示す封止部のレーザ溶接を行う基点にレーザ光LBが照射されるように、レーザ照射部17からミラー17Cに向けて水平方向にレーザ光LBを照射する。
【0064】
図7(b)の(4)は、接続部Tdに形成される封止部のレーザ溶接が終了した局面を示すものであり、同図に示すように、圧着部Taの接続部Tdに形成される封止部のレーザ溶接が完了した段階にある。なお、
図7における(3)〜(4)の局面((3)〜(3)も同様。)は、同図(a)に示すように、上金型14の下降速度が減速され、(3)の180°の時点で0になり、再び加速する局面である。したがって、単位時間当たりの上金型のストロークが、(1)〜(2)や(4)〜(5)に比較して短い局面である。そこで、(3)〜(4)の局面において、接続部Tdに形成する封止部にレーザ溶接を行うことで制御を容易にすることが可能である。
【0065】
このように、
図7(b)の模式図に示すように、上金型14に固定設置したミラー17Cが、上金型14の昇降に沿って移動した場合でも、圧着部Taの突き合わせ界面Tcに対して、レーザ光LBを掃引照射することが可能となる。
【0066】
以上のようなプレス装置3によれば、レーザ照射部17を外部に設置しているので、簡単な構造で、プレス装置に溶接機を設けることが可能となる。特に、レーザ照射部17をプレス機10の内部に挿入することがないので、レーザ照射部17の防振及び防汚が容易である。
【0067】
なお、本態様では、集光レンズ17Bとしてスキャンエリア内にて垂直照射が可能なテレセントリックレンズを用い、ガルバノスキャナ17Aには3軸式を用いるのが好ましい。
【0068】
[4.第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態に係るプレス装置4について、
図8及び9を参照して説明する。プレス装置4は、第1の実施形態におけるプレス装置1のレーザ照射部17の設置位置に変更を加えたものである。以下、この点について説明し、第1の実施形態と共通の構成については、説明を省略する。
【0069】
図8に示すように、プレス装置4は、レーザ照射部17を、第3の実施形態と同様の位置である金型12の外部に設けるとともに、上金型14の貫通穴THの開口部PE上方に、ミラーブラケット18cを外部から内部に延伸して設けた。ミラー17Cは、このミラーブラケット18cにより、開口部PE直上に位置させ、外部に設けられたレーザ照射部17からのレーザ光LBを、下金型13上の溶接加工位置Pに向けて反射するように構成している。
【0070】
以上のようなプレス装置4では、圧着端子Tの圧着部Taの突き合わせ界面Tcにレーザ光LBを掃引照射するに当たって、上金型14の一回の昇降ストロークの間に、レーザ照射部17からミラー17Cに向けて照射するレーザ光LBの光軸を変更する必要がある。この点について、
図9を用いて説明する。
【0071】
図9(a)は、第3の実施形態における
図7(a)と同様に、上金型14の昇降動作を示すストローク曲線であり、縦軸に位置を、横軸に上金型14を昇降させるモータの回転角度を表す。
【0072】
図9(b)は、同図(a)に示す上金型14の移動と、レーザ照射部17からミラー17Cに向けてレーザ光LBを照射方向とミラー17Cにおける反射方向について、5つの局面をピックアップし模式的に示したものである。
【0073】
図9(b)の(1)と(5)は、上金型14が上昇した位置を示しており、この局面では、それぞれレーザ照射部17からのレーザ光LBの照射が開始される位置と、終了する位置である。
図9(b)の(1)から(2)までの局面は、レーザ照射部17から圧着部Taの突き合わせ界面Tcの端部から、この界面に沿ってレーザ光LBが照射すべく、レーザ照射部17からミラー17Cに向けてレーザ光LBを照射する局面であり、(2)の段階で突き合わせ界面Tcへの溶接を終えている。
【0074】
図9(b)の(3)は、上金型14が下降し、下金型13と当接した上金型14を駆動するモータの回転角が180度の局面であり、ここでは、同図に示すように、圧着部Taの接続部Tdに形成される封止部の溶接を行う局面であり、図に示す封止部のレーザ溶接を行う基点にレーザ光LBが照射されるように、レーザ照射部17からミラー17Cに向けて水平方向にレーザ光LBを照射する。
【0075】
図9(b)の(4)は、接続部Tdに形成される封止部のレーザ溶接が終了した局面を示すものであり、同図に示すように、圧着部Taの接続部Tdに形成される封止部のレーザ溶接が完了した段階にある。なお、
図7における(3)〜(4)の局面((3)〜(3)も同様。)は、同図(a)に示すように、上金型14の下降速度が減速され、(3)の180°の時点で0になり、再び加速する局面である。したがって、単位時間当たりの上金型のストロークが、(1)〜(2)や(4)〜(5)に比較して短い局面である。そこで、(3)〜(4)の局面において、接続部Tdに形成する封止部にレーザ溶接を行うことで制御を容易にすることが可能である。
【0076】
このように、
図9(b)の模式図に示すように、上金型14の昇降に合わせて、圧着部Taの突き合わせ界面Tcに対して、レーザ光LBを掃引照射することが可能となる。以上のようなプレス装置4によれば、第3の実施形態と同様に、レーザ照射部17を外部に設置しているので、簡単な構造で、プレス装置に溶接機を設けることが可能となる。
【0077】
[5.他の実施形態]
本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。