(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
活性層を有する半導体積層部を備え、前記半導体積層部は、前記活性層の一部を含む前記積層方向に延伸する非窓領域と、少なくともレーザ光出射側端面に隣接する領域に形成され、前記活性層の他の一部を含み、原子空孔が拡散されて前記非窓領域よりもバンドギャップエネルギーが高くされた前記積層方向に延伸する窓領域とを有する端面発光型の半導体レーザ素子であって、
前記半導体積層部の最表面と前記活性層との間に前記原子空孔拡散を抑制する機能を有する第1不純物と、前記原子空孔拡散を促進する機能を有する第2不純物を含み、
前記非窓領域は、前記第1不純物の含有量が、前記窓領域の前記第1不純物の含有量よりも多く、かつ、前記第2不純物を含むことを特徴とする半導体レーザ素子。
活性層を有する半導体積層部を備え、前記半導体積層部は、前記活性層の一部を含む前記積層方向に延伸する非窓領域と、少なくともレーザ光出射側端面に隣接する領域に形成され、前記活性層の他の一部を含み、原子空孔が拡散されて前記非窓領域よりもバンドギャップエネルギーが高くされた前記積層方向に延伸する窓領域とを有する端面発光型の半導体レーザ素子であって、
前記半導体積層部の最表面と前記活性層との間に前記原子空孔拡散を抑制する機能を有する第1不純物と、前記原子空孔拡散を促進する機能を有する第2不純物を含み、
前記窓領域は、前記第2不純物の含有量が、前記非窓領域の前記第2不純物の含有量よりも多く、かつ、前記第1不純物を含むことを特徴とする半導体レーザ素子。
前記半導体積層部の最表層領域に、前記第1不純物と、前記第2不純物とを含み、前記最表層領域において、前記第1不純物と前記第2不純物とのうち、拡散係数が小さい不純物の含有量が多いことを特徴とする請求項8〜16のいずれか一つに記載の半導体レーザ素子。
活性層を有する半導体積層部を備え、前記半導体積層部は、前記活性層の一部を含む非窓領域と、少なくともレーザ光出射側端面に隣接する領域に形成され、前記活性層の他の一部を含み、原子空孔が拡散されて前記非窓領域よりもバンドギャップエネルギーが高くされた窓領域とを有する端面発光型の半導体レーザ素子であって、
前記半導体積層部の非窓領域における最表層領域に、原子空孔拡散を抑制する機能を有する第1導電型の第1不純物と、原子空孔拡散を促進する機能を有する第1導電型の第2不純物とを含み、前記最表層領域において、前記第1不純物と前記第2不純物とのうち、拡散係数が小さい不純物の含有量が多いことを特徴とする半導体レーザ素子。
前記非窓領域において、前記第1不純物と前記第2不純物とのうち、拡散係数の大きい不純物は、最表面側から前記活性層に向かって減少する濃度分布を有し、前記非窓領域の最表層領域における前記拡散係数が大きい不純物と前記拡散係数が小さい不純物の含有量の総和が、前記窓領域の最表層領域における前記拡散係数が小さい不純物のドーピング量よりも多くなっていることを特徴とする請求項19に記載の半導体レーザ素子。
前記半導体積層部の最表層領域における不純物の含有量を、前記第1不純物と前記第2不純物とのうち、拡散係数の小さい不純物を多くする工程を含むことを特徴とする請求項24または25に記載の半導体光素子の製造方法。
前記半導体積層構造形成工程は、前記半導体積層構造の最表層に前記第1不純物と前記第2不純物とのうち、拡散係数の小さい不純物を含む不純物含有層を形成する工程と、該拡散係数の小さい不純物を含む不純物含有層の層上に拡散係数の大きい不純物を含む不純物含有層を形成する工程を含み、
前記熱処理工程後に前記形成した拡散係数の大きい不純物を含有する層を除去することによって、前記半導体積層部の前記最表層領域における拡散係数が小さい不純物の含有量を、拡散係数の大きい不純物の含有量よりも多くすることを特徴とする請求項26に記載の半導体光素子の製造方法。
活性層を有する半導体積層部を備え、前記半導体積層部は、前記活性層の一部を含む非窓領域と、少なくともレーザ光出射側端面に隣接する領域に形成され、前記活性層の他の一部を含み、原子空孔が拡散されて前記非窓領域よりもバンドギャップエネルギーが高くされた窓領域とを有する端面発光型の半導体レーザ素子の製造方法であって、
前記半導体積層部を形成する半導体積層部形成工程と、
前記半導体積層部に誘電体膜を形成する膜形成工程と、
前記窓領域において前記原子空孔を生成し拡散させる熱処理工程と、
を含み、
前記半導体積層部形成工程は、前記半導体積層部の最表層領域における不純物の含有量を、原子空孔拡散を抑制する機能を有する第1不純物と原子空孔拡散を促進する機能を有する第2不純物とのうち、拡散係数の小さい不純物を多くする工程を含むことを特徴とする半導体レーザ素子の製造方法。
前記半導体積層構造形成工程は、前記半導体積層構造の最表層に前記第1不純物と前記第2不純物とのうち、拡散係数の小さい不純物を含む不純物含有層を形成する工程と、該拡散係数の小さい不純物を含む不純物含有層の層上に拡散係数の大きい不純物を含む不純物含有層を形成する工程を含み、
前記熱処理工程後に前記形成した拡散係数の大きい不純物を含有する層を除去することによって、前記半導体積層部の前記最表層領域における拡散係数が小さい不純物の含有量を、拡散係数の大きい不純物の含有量よりも多くすることを特徴とする請求項29に記載の半導体レーザ素子の製造方法。
前記半導体積層構造形成工程は、前記第1不純物と前記第2不純物とのうち、拡散係数の大きい不純物を含む不純物含有層を形成する工程と、拡散係数の大きい不純物を含有する層上であって前記半導体積層部の最表層に拡散係数の小さい不純物を含む不純物含有層を形成する工程とを含み、該工程によって、前記半導体積層部の前記最表層領域における前記拡散係数が小さい不純物の含有量を、拡散係数の大きい不純物の含有量よりも多くすることを特徴とする請求項29に記載の半導体レーザ素子の製造方法。
前記第1熱処理準備工程は、前記半導体積層構造の一部をエッチングで除去することによって、原子空孔拡散を抑制する機能を有する第1不純物の量を前記第1領域より前記第2領域において少なくする、および/または、原子空孔拡散を促進する機能を有する第2不純物の量を前記第2領域より前記第1領域において少なくするように段差部を形成する工程を含むことを特徴とする請求項33または34に記載の半導体素子の製造方法。
前記第1熱処理準備工程において前記第1領域と前記第2領域の最表面のドーピング種とドーピング濃度を同一とする工程を含む請求項38に記載の半導体素子の製造方法。
前記第1熱処理準備工程において、前記第1領域の最表面の表面粗さと、前記第2領域の最表面の表面粗さとの差を、平均表面粗さとして2nm以上とすることを特徴とする請求項38または39に記載の半導体素子の製造方法。
前記半導体積層構造形成工程において、原子空孔拡散を抑制する機能を有する第1不純物または原子空孔拡散を促進する機能を有する第2不純物を添加し、かつ前記第1領域における前記半導体積層部の最表層として、前記第1不純物と前記第2不純物とのうち、拡散係数の小さい方の不純物を多く含有するコンタクト層を形成することを特徴とする請求項33〜40のいずれか1つに記載の半導体素子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図面を参照して本発明に係る半導体光素子、半導体レーザ素子、及びその製造方法、並びに半導体レーザモジュール及び半導体素子の製造方法の実施の形態を説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。また、図面は模式的なものであり、各層の厚みと幅との関係、各層の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0023】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1に係る半導体光素子について説明する。本実施の形態1に係る半導体光素子は、半導体レーザ素子であって、リッジ構造を有しており、これによって光の幅方向の閉じ込めと電流狭窄構造とを実現するものである。
【0024】
図1は、本実施の形態1に係る半導体レーザ素子の模式的な斜視図である。以下では、
図1に示すように、半導体の積層方向に垂直かつレーザ光の出射方向に垂直な方向をx軸、半導体の積層方向をy軸、レーザ光の出射方向をz軸とする。
図1に示すように、この半導体レーザ素子100は、素子本体1の光出射端面側に形成された反射率が例えば10%以下の低反射率膜2と、光出射端面側と対向する後端面側に形成された反射率が例えば90%以上の高反射率膜3とを有している。そして、半導体レーザ素子100は低反射率膜2を介してレーザ光Lを出射する。
【0025】
図2Aは、
図1に示す半導体レーザ素子のx−y面における断面図であり、
図2Bは、
図1に示す半導体レーザ素子のy−z面における断面図である。
図2Aに示すように、この半導体レーザ素子100は、n側電極である下部電極4を底面に形成したn型のGaAsからなる基板5と、基板5上に順次形成された、n型バッファ層6、n型クラッド層7、n型ガイド層8を有するn型半導体層領域9と、活性層10と、p型ガイド層11、p型クラッド層12、p型コンタクト層13を有するp型半導体層領域14とからなる半導体積層部15とを備えている。ここで、p型コンタクト層13は、p型コンタクト層13aとp型コンタクト層13bとの2層からなる。また、p型コンタクト層13は断面が台形であり、z軸方向に延伸したストライプ形状を有している。これによって半導体レーザ素子100はリッジ構造となっている。また、半導体レーザ素子100は、p型半導体層領域14上に形成された絶縁膜16と、絶縁膜16が形成されていないリッジ構造の台形の上底を介してp型コンタクト層13に接触するp側電極である上部電極17とを備えている。
【0026】
n型バッファ層6は、GaAsからなり、基板5上に高品質のエピタキシャル層の積層構造を成長するための緩衝層である。n型クラッド層7とn型ガイド層8とは、積層方向に対する所望の光閉じ込め状態を実現するように、屈折率と厚さが設定されたAlGaAsからなる。なお、n型ガイド層8のAl組成は、20%以上40%未満であることが望ましい。また、n型クラッド層7は、n型ガイド層8よりも屈折率が小さくなっている。また、n型ガイド層8の厚さは、50nm以上、たとえば1000nm程度であることが望ましい。n型クラッド層7の厚さは、1μm以上、3μm程度が望ましい。また、これらのn型半導体層領域9は、n型ドーパントとしてたとえば珪素(Si)を含む。
【0027】
活性層10は、下部バリア層10a、量子井戸層10b、上部バリア層10cを備え、単一の量子井戸(SQW)構造を有する。下部バリア層10aおよび上部バリア層10cは、量子井戸層10bにキャリアを閉じ込める障壁の機能を有し、故意にドーピングをしない高純度のAlGaAsからなる。量子井戸層10bは、故意にドーピングをしない高純度のInGaAsからなる。量子井戸層10bのIn組成および膜厚、下部バリア層10aおよび上部バリア層10cの組成は、所望の発光中心波長(たとえば0.98μm)に応じて設定される。なお、活性層10の構造は、量子井戸層10bとその上下に形成されたバリア層の積層構造を所望の数だけ繰り返した多重量子井戸(MQW)構造でもよいし、下部バリア層10aおよび上部バリア層10cの無いバルク構造としてもよい。また、上記では、故意にドーピングをしない高純度層での構成を説明したが、量子井戸層10b、下部バリア層10aおよび上部バリア層10cに故意にドナーやアクセプタが添加される場合もある。
【0028】
p型ガイド層11およびp型クラッド層12は、上述のn型クラッド層7およびn型ガイド層8と対になり、積層方向に対する所望の光閉じ込め状態を実現するように、屈折率と厚さが設定されたAlGaAsからなる。p型ガイド層11のAl組成は、20%以上40%未満であることが望ましい。p型クラッド層12はp型ガイド層11よりも屈折率が小さくなっている。層中の光のフィールドをn型クラッド層7の方向にずらして導波路損失を小さくするために、p型クラッド層12のAl組成はn型クラッド層7に比べて若干大きめに設定される。そして、p型ガイド層11のAl組成は、p型クラッド層12のAl組成に比べ小さく設定される。また、p型ガイド層11の厚さは、50nm以上、例えば1000nm程度であることが望ましい。p型クラッド層12の厚さは、1〜3μm程度が望ましい。また、これらのp型半導体層領域14は、p型ドーパントとして炭素(C)を含む。p型ガイド層11のC濃度は、例えば0.1〜1.0×10
17cm
−3に設定され、0.5〜1.0×10
17cm
−3程度が好適である。p型クラッド層12のC濃度は、例えば1.0×10
17cm
−3以上に設定される。
【0029】
p型コンタクト層13は、p型の不純物として、例えば1.0×10
17〜5.0×10
19〜5.0×10
20cm
−3程度のCがドーピングされたGaAsからなるp型コンタクト層13aと、p型の不純物として例えば1.0×10
17〜5.0×10
19〜5.0×10
20cm
−3程度の亜鉛(Zn)がドーピングされたGaAsからなるp型コンタクト層13bとからなる。なお、CおよびZnは製造過程におけるRTA(Rapid Thermal Anneal)による原子空孔の拡散を促進、または、抑制する機能を有する。また、CおよびZnそれ自体がRTAにより拡散される場合があるが、本実施の形態1において、RTAの温度や時間等の条件は、CおよびZnがRTAにより活性層10まで拡散されることがないように調整されている。また、絶縁膜16はたとえばSiN
xからなる。また、上部電極17は、p型コンタクト層13の半導体材料とオーミック接触する金属材料からなる。
【0030】
上部電極17は、絶縁膜16により窓領域15bにおいて、半導体積層部15の最表面であるp型コンタクト層13と離間している。これによって、半導体レーザ素子100は、非窓領域15a上へ選択的に電流注入領域が形成される。なお、絶縁膜16によらず、非窓領域15aの直上部に選択的に上部電極17を形成することによって、窓領域15bへの電流の注入を抑制してもよい。
さらに、この半導体レーザ素子100は、絶縁膜16により上部電極17とp型半導体層領域14の接触面積を制限することによって電流狭窄構造が実現されている。すなわち、上部電極17からp型半導体層領域14を介して注入されるホールキャリアは、その電流経路が半導体積層部15の最表面であるp型コンタクト層13に接する開口部16aにより狭窄された電流注入領域に限られ、電流密度が高められた状態で効率よく活性層10に注入され、レーザ光Lのレーザ発振に利用される。
【0031】
ここで、半導体積層部15は、非窓領域15aと、活性層10のバンドギャップエネルギーが非窓領域15aよりも大きい窓領域15bとを有している。非窓領域15aおよび窓領域15bは、半導体積層部15において、積層方向に延伸している2つの領域である。
図2Cは、
図1に示す半導体レーザ素子のx−z面における断面図である。
図2Cに示すように、窓領域15bは、非窓領域15aを囲むように、半導体レーザ素子100の四方の端面領域に形成されている。すなわち、非窓領域15aと窓領域15bとの境界は、半導体レーザ素子100における光の導波方向に対して、半導体レーザ素子100の中央部では光の導波方向に沿って形成され、半導体レーザ素子100の両端部では光の導波方向を横切って形成されている。なお、この窓領域15bは、RTAによる原子空孔の拡散によって十分に混晶化された領域であり、非窓領域15aよりも混晶度が大きい。これによって、窓領域15bの活性層10のバンドギャップエネルギーと非窓領域15aの活性層10のバンドギャップエネルギーとの差がたとえば10meV以上とされている。なお、1eVは約1.60×10
−19ジュールである。
【0032】
なお、窓領域とは、活性層の中央付近の、電流を注入されて発光するべき領域のバンドギャップエネルギーよりもバンドギャップエネルギーが大きい領域であって、十分に混晶化されている領域である。また、非窓領域とは、窓領域でない領域であって、混晶化が抑制された領域である。したがって、非窓領域と窓領域との原子空孔拡散による混晶度、および、バンドギャップエネルギーの差が大きいほど、窓領域におけるレーザ光の吸収が少なくなり、CODの発生が抑制される。
【0033】
さらに、半導体レーザ素子100は、電流注入領域と窓領域15bとが離間し、窓領域15bへの電流注入が抑制された構造である。窓領域15bに電流を注入してしまうと、注入された電流によって発熱が生じる。ここで、半導体については、一般に温度が上昇するとバンドギャップが狭くなることが知られている。したがって、窓領域15bに電流を注入すると、窓領域15bのバンドギャップが狭くなる。すると、活性層10の混晶化による窓領域15bと非窓領域15aとのバンドギャップエネルギーの差が小さくなってしまう場合がある。
本実施の形態1に係る半導体レーザ素子100は、半導体積層部15の非窓領域15aにおける最表面に位置し、かつ窓領域15bからは離間した電流注入領域を形成することで、窓領域15bと非窓領域15aとのバンドギャップエネルギー差の減少が防止されるので、より大きいバンドギャップエネルギー差を備えた半導体レーザ素子を実現している。
【0034】
つぎに、この半導体レーザ素子100の動作について説明する。まず、下部電極4と上部電極17の間に電圧を印加して、n型半導体層領域9とp型半導体層領域14とから活性層10にキャリアを注入する。このとき、上部電極17からp型半導体層領域14を介して注入されるホールキャリアは、その電流経路が絶縁膜16により開口部16aに狭窄されて、電流密度が高められた状態で効率よく活性層10に注入される。このとき、電流が注入される幅である開口部16aの幅を電流注入幅とする。電流を注入された活性層10は所定の発光中心波長を有する光を発光する。発光した光は、x軸方向はリッジ構造によって、y軸方向はガイド層とクラッド層との屈折率差によって、活性層10の近傍に閉じ込められて導波しながら、活性層10の光増幅作用と、低反射率膜2と高反射率膜3とが形成する光共振器によってレーザ発振する。これによって、
図1に示すように半導体レーザ素子100はレーザ光Lを出射する。
【0035】
なお、半導体レーザ素子100は、電流注入幅が、例えば6μmで500mW以上の光強度でシングルモード発振する構成であってよい。このとき、半導体レーザ素子100の電流注入幅1μmあたりの最大光出力は、80mW/μm以上となる。また、半導体レーザ素子100は、電流注入幅が、例えば100μmで11W以上の光強度でマルチモード発振する構成であってよい。このとき、半導体レーザ素子100の電流注入幅1μmあたりの最大光出力は、110mW/μm以上となる。このように、高出力なレーザにおいては、単位電流注入幅あたりの光出力が非常に大きくなるため、CODが発生しやすくなる。しかしながら、本実施の形態1に係る半導体レーザ素子100は、CODの発生が抑制されているため、このような高出力下においても信頼性の高い半導体レーザ素子を実現することができる。
【0036】
ここで、
図2Bに示すように、半導体レーザ素子100の窓領域15bにはp型コンタクト層13bが形成されていない。つまり、窓領域15bと非窓領域15aとの半導体積層部15の最表面と活性層10の間であるp型半導体層領域14の厚さが異なる。これは、非窓領域15aと窓領域15bとに一様にZnをドーピングしたp型コンタクト層13bを形成した後、RTAを行う前に窓領域15bにおけるp型コンタクト層13bを、エッチング等によって除去したためである。これによって、RTAを行った後においても、非窓領域15aのp型半導体層領域14におけるZnの含有量が、窓領域15bのp型半導体層領域14におけるZnの含有量よりも多い状態とすることができる。
また、Znは後述する理由により、Cとともにドーピングされた場合、活性層10の混晶化を抑制する機能を有する第1不純物である。したがって、非窓領域15aのp型半導体層領域14におけるZnの含有量が、窓領域15bのp型半導体層領域14におけるZnの含有量より多いことによって、非窓領域15aの混晶化が抑制され、非窓領域15aと窓領域15bとの原子空孔拡散による混晶度、および、バンドギャップエネルギーの差が大きくなり、端面におけるレーザ光の吸収が減少し、CODが抑制される。
ここで、上述したように、窓領域15bの活性層10のバンドギャップエネルギーと非窓領域15aの活性層10のバンドギャップエネルギーとの差は、たとえば10meV以上とされている。このような十分なバンドギャップエネルギーの差は、窓領域15bの第1不純物の含有量を、非窓領域15aの第1不純物の含有量よりも3.5×10
13cm
−2以上少なくする、または、窓領域15bの第2不純物の含有量を、非窓領域15aの第2不純物の含有量よりも3.5×10
13cm
−2以上多くすることによって実現することができる。なお、p型半導体層領域14における不純物含有量は、不純物を含有するp型ガイド層11〜p型コンタクト層13の不純物の総和であり、各不純物含有層のドーピング濃度と層厚との積分によって求められる。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態1に係る半導体レーザ素子100は、非窓領域15aのp型半導体層領域14におけるZnの含有量が、窓領域15bのp型半導体層領域14におけるZnの含有量よりも多いことによって、より大きいバンドギャップエネルギー差を備えた半導体レーザ素子を実現することができる。
【0038】
つぎに、この半導体レーザ素子100の製造方法の一例について説明する。
図3は、半導体レーザ素子の製造方法のフロー図である。
図3に示すように、本実施の形態1に係る半導体レーザ素子100の製造方法は、半導体積層部形成工程(ステップS101)と、促進膜形成工程(ステップS102)と、抑制膜形成工程(ステップS103)と、熱処理工程(ステップS104)と、リッジ構造形成工程(ステップS105)とを含むものである。
【0039】
以下、各工程について説明する。なお、各工程において示した数値は例示であり、本実施の形態1はこの数値に限定されるものではない。
(半導体積層部形成工程)
まず、ステップS101の半導体積層部形成工程について説明する。この工程では、はじめに、
図4に示すように、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法により、基板5上にn型バッファ層6、n型クラッド層7、n型ガイド層8、活性層10、p型ガイド層11、p型クラッド層12、p型コンタクト層13をエピタキシャル成長する。ここで、p型コンタクト層13aには、p型の第2不純物であるC(C21)がドーピングされており、p型コンタクト層13bには、p型の第1不純物であるZn(Zn22)がドーピングされている。
【0040】
つぎに、
図5および
図6に示すように、フォトリソグラフィ工程およびエッチング工程を行い窓領域15bに対応する領域のp型コンタクト層13bを除去する。さらに、
図7に示すように、フォトレジスト131を除去する。これによって、基板5からp型コンタクト層13によって構成される半導体積層部15が形成される。
【0041】
(促進膜形成工程)
つぎに、ステップS102の促進膜形成工程について説明する。この工程では、原子空孔拡散によって混晶化を行い、窓領域15bを形成するため、促進膜32を形成する。この方法は、IFVD法とも呼ばれる。まず、半導体積層部15の上面に、SiN絶縁膜である促進膜32を形成する。つぎに、
図8に示すように、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程を経て、非窓領域15aを形成すべき領域の促進膜32を除去する。これによって、窓領域15bとなる領域の上面に、促進膜32が形成される。
【0042】
(抑制膜形成工程)
つぎに、ステップS103の抑制膜形成工程について説明する。この工程では、
図9に示すように、SiN絶縁膜である抑制膜33を形成する。
ここで、促進膜32は、例えば屈折率が1.9の疎なSiN絶縁膜であり、抑制膜33は、例えば屈折率が2.0の緻密なSiN絶縁膜である。ただし、RTAの条件によって、促進膜32と抑制膜33とのうち、どちらが緻密なSiN絶縁膜で、どちらが疎なSiN絶縁膜であるかの関係が入れ替わることがあることに留意すべきである(特許文献5参照)。
また、本実施の形態1においては、促進膜を形成後、非窓領域15aを形成すべき領域の促進膜を除去し、抑制膜を形成したが、抑制膜を形成後、窓領域15bを形成すべき領域の抑制膜を除去し、促進膜を形成しても構わない。また、本実施の形態1において、促進膜または抑制膜として、SiN
xからなる膜を用いたが、促進膜または抑制膜として、SiO
x、ZnO
x、AlO
x、AlN
x、AlO
xN
y、TiO
x、TiN
x、TiO
xN
y、TaO
x、HfO
x等からなる膜を用いることができる。
【0043】
(熱処理工程)
つぎに、ステップS104の熱処理工程について説明する。この工程では、RTAにより短時間の熱処理を行う。ここで、RTAによる熱処理を行うと、
図10に促進膜32の場合について例示すように、促進膜32および抑制膜33によってGa原子24が吸収され、p型コンタクト層13a、13bの表面上に原子空孔23が発生する。この原子空孔23が拡散種として拡散し、各半導体層、特に活性層10が混晶化される。このとき、p型コンタクト層13aに接するように促進膜32が形成されている領域においては、疎な促進膜32によって活性層10の混晶化が促進され、
図11に示すように窓領域15bが形成される。
【0044】
これに対し、p型コンタクト層13bに接するように抑制膜33が形成されている領域においては、緻密な抑制膜33によって活性層10の混晶化が抑制され、
図11に示すように非窓領域15aが形成される。
【0045】
ここで、RTAによって、
図10に示す促進膜32および抑制膜33によるGa原子24の吸収による原子空孔生成過程と並行して、ドーピングされた不純物による混晶化を促進する過程と、ドーピングされた不純物による混晶化を抑制する過程とが進行する。混晶化を促進する過程は、ドーピングされた不純物が熱拡散により空孔拡散を増進させる、あるいは、ドーピングされた不純物が熱拡散してGa原子24のキックアウト現象を引き起こすことによると想定される。また、混晶化を抑制する過程は、ドーピングされた不純物が熱拡散して原子空孔23を埋めることによると想定される。これらの過程がRTAによって同時に進行するが、不純物の種類や濃度、不純物の組み合わせ、RTAの温度や時間、促進膜および抑制膜の条件等によって、どの過程による効果が支配的となるかが決まる。
【0046】
そこで、本実施の形態1において、不純物の種類や濃度、不純物の組み合わせ、RTAの温度や時間、促進膜および抑制膜の条件等は、窓領域15bの活性層10と、非窓領域15aの活性層10との混晶度の差が大きくなるように最適化されている。また、RTAの温度や時間等の条件は、不純物がRTAにより活性層10まで拡散しないように調整されている。これは、活性層10に不純物が導入され、不純物の光吸収により半導体レーザ素子の出力特性が劣化することを防止するためである。
【0047】
以下において、ドーピングすることによって原子空孔23の拡散、生成またはその両方を促進することにより混晶化を促進する第2不純物を促進種、ドーピングすることによって原子空孔23の拡散、生成またはその両方を抑制することにより混晶化を抑制する第1不純物を抑制種とする。このとき、p型半導体層領域14に含有される促進種の量を増やすにつれて、混晶化は促進され、混晶度、および、バンドギャップエネルギーはより増大する。一方、p型半導体層領域14に含有される抑制種の量を増やすにつれて、混晶化は抑制され、混晶度、および、バンドギャップエネルギーの増大も抑制される。
【0048】
本実施の形態1において、C21は促進種として機能し、Zn22は抑制種として機能する。このとき、エッチングによりp型コンタクト層13bが除去されることで抑制種であるZn22が減らされている窓領域15bにおいては、C21による混晶化の促進が顕著となる。一方で、抑制種であるZn22をより多く含む非窓領域15aにおいては、Zn22により混晶化が抑制される。このように非窓領域15aにおけるp型半導体層領域14に抑制種であるZn22がより多く含まれるように、不純物の含有量に差をつけることで、混晶度に差がつき、バンドギャップエネルギーの差も大きくなる。したがって、非窓領域15aと窓領域15bとにおいてZn22の含有量に差をつけない従来技術よりもCODの発生を抑制する効果が顕著となる。
【0049】
なお、本熱処理による活性層10の混晶化は、原子空孔拡散によって、SQWの組成が変わり、バンドギャップエネルギーが変わるのであって、熱処理によってCやZn等の不純物を活性層10に導入するわけではない。すなわち、故意にドーピングをしない高純度のInGaAsからなる量子井戸層10bは、AlGaAsからなる下部バリア層10aおよび上部バリア層10c等からの原子空孔拡散によって混晶化する。このように混晶度が増大すると、活性層10のバンドギャップエネルギーが増大する。
【0050】
図12は、熱処理を行う前後の半導体積層部の各層のC濃度を表す二次イオン質量分析(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)結果の図である。横軸は半導体積層部におけるスパッタリング時間を示しており、破線の位置が活性層の位置に対応する。また、縦軸において、1E+17は1×10
17を示している。
図12に示すように、熱処理(IFVDプロセス)によって活性層10のC濃度は変化しておらず、不純物が活性層10に導入されていないことがわかる。次に、
図13は、熱処理を行う前と、熱処理後の窓領域および非窓領域との半導体レーザ素子のフォトルミネッセンス波長(PL波長)を表すスペクトルである。
図13から、窓領域のPL波長が非窓領域のPL波長より短くなっていることが分かる。つまり
図13は、窓領域のバンドギャップエネルギーおよび混晶度が、非窓領域のバンドギャップエネルギーおよび混晶度より大きくなっていることを示す。なお、熱処理の前後でPL波長の半値幅は、熱処理前では16.4nm、熱処理後の非窓領域では16.5nm、熱処理後の窓領域では16.7nmとほとんど変化していない。たとえば、活性層10に不純物が導入された場合なら、不純物準位が形成されるため、そのPL波長の半値幅は広がるはずであるから、この結果からも活性層10に不純物が導入されていないことがわかる。つまり、
図12、
図13から、窓領域における活性層の混晶化は不純物拡散ではなく、原子空孔拡散により起きていると言える。
【0051】
(リッジ構造形成工程)
つぎに、ステップS105のリッジ構造形成工程について説明する。この工程では、
図14に示すように、促進膜32、抑制膜33を除去した後に、フォトリソグラフィ工程によってp型コンタクト層13上にレジストからなるリッジ構造形成のためのストライプパターンP1を形成する。つぎに、
図15に示すように、p型コンタクト層13を台形状にエッチングし、その後ストライプパターンP1を除去し、
図16に示すリッジ構造を形成する。さらに、絶縁膜16を形成し、フォトリソグラフィ工程およびエッチング工程を行って、
図17に示すように、上部電極17がp型コンタクト層13に接触するための開口部16aを形成する。
【0052】
その後、上部電極17と、基板5の底面の下部電極4とを形成し、基板5をへき開してそのへき開面に低反射率膜2と高反射率膜3とを形成し、さらに素子ごとにカッティングすることによって、半導体レーザ素子100が完成する。
【0053】
以上説明したように、本実施の形態1に係る半導体レーザ素子100は、p型コンタクト層13にドーピングする不純物の種類、濃度、さらには組み合わせによって、非窓領域15aのp型半導体層領域14における不純物の含有量と、窓領域15bのp型半導体層領域14における不純物の含有量とに差をつけることによって、より大きいバンドギャップエネルギー差を備えている。
【0054】
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2に係る半導体レーザ素子について説明する。
図18は、実施の形態2に係る半導体レーザ素子のy−z面における断面図である。本実施の形態2に係る半導体レーザ素子200は、実施の形態1に係る半導体レーザ素子100から、窓領域15bにおけるp型コンタクト層13aと、非窓領域15aにおけるp型コンタクト層13bとを除去した構造である。
【0055】
図19は、実施の形態2に係る半導体レーザ素子の製造方法の一例を説明する図である。
図19に示すように、本実施の形態2に係る半導体積層部15は、
図3に示した実施の形態1に係る半導体レーザ素子100の製造方法の一例において、熱処理工程を終えた後、さらにエッチングを行い、窓領域15bに対応する領域のp型コンタクト層13aと、非窓領域15aに対応する領域のp型コンタクト層13bとを除去している。その後、実施の形態1と同様に、リッジ構造形成工程等を施し、最終的な半導体レーザ素子200となる。
【0056】
ここで、本実施の形態2に係る半導体レーザ素子200においては、窓領域15bのp型コンタクト層13aと、非窓領域15aのp型コンタクト層13bとを除去する以前に、RTAによって、すでに活性層10の混晶化が行われている。したがって、p型コンタクト層13aにドーピングされたC21は促進種として、p型コンタクト層13bにドーピングされたZn22は抑制種として、すでにそれぞれの機能を果たしている。このとき、Zn22は拡散しやすいため、p型コンタクト層13bのZn22の濃度は低下している。そのため、p型コンタクト層13bが上部電極17と接すると、上部電極17から注入された電流に対する抵抗が高くなってしまう。これにより発光効率の悪化を招くこととなる。一方で、C21はZn22に比べ拡散しにくい原子であるため、RTAを行った後もp型コンタクト層13aにドーピングされたC21は、濃度がほとんど低下していない。そこで、エッチング等によりp型コンタクト層13bを除去し、p型コンタクト層13aを最表面に露出させ、上部電極17と接させることで、抵抗の増加を防いでいる。また、窓領域15bの表面は、p型コンタクト層13aとしてもよいが、AlGaAsから成る抵抗の高いp型クラッド層12とすることで、非窓領域15aへの電流注入効果を更に高めることができるのでより好ましい。
【0057】
(実施の形態3)
つぎに、本発明の実施の形態3に係る半導体レーザ素子について説明する。
図20は、実施の形態3に係る半導体レーザ素子のy−z面における断面図である。本実施の形態3に係る半導体レーザ素子300は、実施の形態1に係る半導体レーザ素子100において、窓領域15bのp型コンタクト層13bが除去された構造とは異なり、非窓領域15aのp型コンタクト層313bが除去された構造である。なお、p型コンタクト層313bは、p型コンタクト層313aとともにp型コンタクト層313を構成している。また、p型コンタクト層313aにはZn22がドーピングされ、p型コンタクト層313bにはC21がドーピングされている。半導体レーザ素子300は、RTAを行う前に非窓領域15aのp型コンタクト層313bを除去することで、窓領域15bのp型半導体層領域14におけるC21の含有量を、非窓領域15aのp型半導体層領域14におけるC21の含有量よりも多くしている。
【0058】
ここで、本実施の形態3に係る半導体レーザ素子300においては、非窓領域15aに対応する領域も含め一様にC21がドーピングされたp型コンタクト層313bを形成した後、RTAを行う前に非窓領域15aに対応する領域におけるp型コンタクト層313bを、エッチング等によって除去している。これによって、RTAによりC21が拡散された後においても、窓領域15bのp型半導体層領域14におけるC21の含有量が、非窓領域15aのp型半導体層領域14におけるC21の含有量よりも多い状態とすることができる。
また、C21はZn22とともにドーピングされることにより、活性層10の混晶化を促進する促進種として機能する。したがって、窓領域15bのC21の含有量が多いことによって、窓領域15bの混晶化が促進され、非窓領域15aと窓領域15bとの混晶度、および、バンドギャップエネルギーの差が大きくなり、端面におけるレーザ光の吸収が減少し、CODが抑制される。
【0059】
図21〜
図24は、実施の形態3に係る半導体レーザ素子の製造方法の一例を説明する図である。はじめに、
図21に示すとおり、実施の形態1における半導体積層部形成工程において、実施の形態1と逆に、p型コンタクト層313aにZn22をドーピングし、p型コンタクト層313bにC21をドーピングしている。ここで、
図22に示すとおり、窓領域15bに対応する領域にフォトレジスト131を形成する。つぎに、
図23に示すとおり、エッチングによって非窓領域15aに対応する領域のp型コンタクト層313bを除去する。その後、
図24に示すとおり、実施の形態1と同様に、促進膜形成工程と抑制膜形成工程とによって、促進膜32と抑制膜33とを形成する。そして、実施の形態1と同様に、熱処理工程とリッジ構造形成工程との工程を行い、最終的な半導体レーザ素子300となる。
【0060】
(実施の形態4)
つぎに、本発明の実施の形態4に係る半導体レーザ素子について説明する。
図25は、実施の形態4に係る半導体レーザ素子のy−z面における断面図である。本実施の形態4に係る半導体レーザ素子400において、p型コンタクト層413は積層方向には1層のみで形成されているが、非窓領域15aのp型コンタクト層413aにおいてはZn22を多く含有し、窓領域15bのp型コンタクト層413bにおいてはC21を多く含有する構造である。
【0061】
ここで、本実施の形態4に係る半導体レーザ素子400においては、非窓領域15aで含有量の多いZn22は抑制種として機能し、窓領域15bで含有量の多いC21は促進種として機能する。したがって、非窓領域15aの混晶化が抑制され、かつ、窓領域15bの混晶化が促進され、非窓領域15aと窓領域15bとの混晶度、および、バンドギャップエネルギーの差が大きくなり、端面におけるレーザ光の吸収が減少し、CODが抑制される。
【0062】
図26〜30は、実施の形態4に係る半導体レーザ素子の製造方法の一例を説明する図である。はじめに、
図26に示すとおり、実施の形態1における半導体積層部形成工程において、C21をドーピングしたp型コンタクト層413bを、非窓領域15aと窓領域15bとの両方に対応する領域に一様に形成する。つぎに、
図27に示すとおり、窓領域15bに対応する領域にフォトレジスト131を残す。つぎに、
図28に示すとおり、エッチングによって非窓領域15aに対応する領域のp型コンタクト層413bを除去し、窓領域15bに対応する領域のみにp型コンタクト層413bを形成する。さらに、
図29に示すとおり、フォトレジスト131をマスクとして用いて、エッチングした非窓領域15aに対応する領域のみにZn22をドーピングしたp型コンタクト層413aを形成する。その後、
図30に示すとおり、実施の形態1と同様に、促進膜形成工程と抑制膜形成工程とによって、促進膜32と抑制膜33とを形成する。そして、実施の形態1と同様に、熱処理工程とリッジ構造形成工程との工程を行い、最終的な半導体レーザ素子400となる。
【0063】
(実施の形態5)
つぎに、本発明の実施の形態5に係る半導体レーザ素子について説明する。
図31は、実施の形態5に係る半導体レーザ素子のy−z面における断面図である。本実施の形態5に係る半導体レーザ素子500は、p型コンタクト層513aにおいて、窓領域15bにC21を多く含有し、p型コンタクト層513bにおいて、非窓領域15aにZn22を多く含有する構造である。ただし、本実施の形態5は、実施の形態4と異なり、イオン注入によってC21およびZn22の含有量に差をつけている。
【0064】
ここで、本実施の形態5に係る半導体レーザ素子500においては、実施の形態4と同様に、非窓領域15aで含有量の多いZn22は抑制種として機能し、窓領域15bで含有量の多いC21は促進種として機能する。したがって、非窓領域15aの混晶化が抑制され、かつ、窓領域15bの混晶化が促進され、非窓領域15aと窓領域15bとの混晶度、および、バンドギャップエネルギーの差が大きくなり、端面におけるレーザ光の吸収が減少し、CODが抑制される。
【0065】
図32は、実施の形態5に係る半導体レーザ素子の製造方法の一例を説明する図である。はじめに、
図32に示すとおり、実施の形態1における半導体積層部形成工程において、不純物をドーピングしていないGaAs層としてp型コンタクト層513となる層をp型クラッド層12上に形成する。つぎに
図33に示すとおり、非窓領域15aに対応する領域のp型コンタクト層513bとなる部分にZn22を、窓領域15bに対応する領域のp型コンタクト層513aとなる部分にC21を、それぞれイオン注入することによって選択的にドーピングする。これによって、p型コンタクト層513が形成される。その後、
図34に示すとおり、実施の形態1と同様に、促進膜形成工程と抑制膜形成工程とによって、促進膜32と抑制膜33とを形成する。そして、実施の形態1と同様に、熱処理工程とリッジ構造形成工程との工程を行い、最終的な半導体レーザ素子500となる。
【0066】
以上の実施の形態によって説明したように、本発明の実施の形態に係る半導体レーザ素子は、窓領域15bのp型半導体層領域14に促進種の不純物を多く含有させ、非窓領域15aのp型半導体層領域14に抑制種の不純物を多く含有させることによって、非窓領域15aと窓領域15bとの混晶度、および、バンドギャップエネルギーの差を大きくしている。これによって、従来技術より大きいバンドギャップエネルギー差を備えCODの発生を抑制する効果が顕著となり、信頼性の高い半導体レーザ素子が実現できる。
【0067】
ここで、本実施の形態によって、非窓領域15aと窓領域15bとのp型半導体層領域14における不純物含有量を変化させた場合に、非窓領域15aと窓領域15bとのバンドギャップエネルギーがどのように変化するかを、概略図によって説明する。
【0068】
図35は、p型半導体層領域14における促進種および抑制種の含有量を変化させた場合の、熱処理によるバンドギャップエネルギー(Eg)の変化を表す概略図である。
図35に示すとおり、促進種はp型半導体層領域14におけるその含有量を増やす(紙面右方向)とEgシフト量が増大し、バンドギャップエネルギーが増大(紙面上方向)する。一方、抑制種はp型半導体層領域14におけるその含有量を増やす(紙面右方向)とEgシフト量が減少し、バンドギャップエネルギーが減少(紙面下方向)する。
【0069】
図36は、非窓領域15aと窓領域15bとのp型半導体層領域14における促進種の含有量を変化させた場合の、熱処理によるバンドギャップエネルギーの変化を表す概略図である。抑制膜によって混晶化が抑制され、Egシフト量が小さい方が非窓領域15a、促進膜によって混晶化が促進され、Egシフト量が大きい方が窓領域15bである。
図36に示すとおり、非窓領域15aと窓領域15bとのp型半導体層領域14における促進種の含有量を変化させると、それぞれ含有量を増やすほどEgシフト量が増大する。ここで、従来技術に係る半導体レーザ素子においては、非窓領域15aと窓領域15bとの不純物含有量が同じであるので、ΔEgA1またはΔEgA2が非窓領域15aと窓領域15bとのバンドギャップエネルギーの差(ΔEg)であった。一方、本発明の実施の形態の一つに係る半導体レーザ素子においては、非窓領域15aの促進種の含有量を小さくし、窓領域15bの促進種の含有量を大きくしているので、ΔEgをΔEgA1またはΔEgA2より大きいΔEgA3とすることができる。したがって、本実施の形態により、従来技術より非窓領域15aと窓領域15bとのバンドギャップエネルギーの差を大きくし、CODの発生をより顕著に抑制することができる。
【0070】
また、
図37は、非窓領域15aと窓領域15bとのp型半導体層領域14における抑制種の含有量を変化させた場合の、熱処理によるバンドギャップエネルギーの変化を表す概略図である。
図37が示すように、非窓領域15aと窓領域15bとのp型半導体層領域14における抑制種の含有量を変化させると、それぞれ含有量を増やすほどEgシフト量が減少する。ここで、従来技術に係る半導体レーザ素子においては、非窓領域15aと窓領域15bとの不純物含有量が同じであるので、ΔEgB1またはΔEgB2が非窓領域15aと窓領域15bとのバンドギャップエネルギーの差(ΔEg)であった。一方、本発明の実施の形態の一つに係る半導体レーザ素子においては、非窓領域15aの抑制種の含有量を大きくし、窓領域15bの抑制種の含有量を小さくしているので、ΔEgをΔEgB1またはΔEgB2より大きいΔEgB3とすることができる。
【0071】
さらに、本発明の実施の形態の一つに係る半導体レーザ素子においては、非窓領域15aと窓領域15bとのp型半導体層領域14における不純物の含有量を適宜変化させている。したがって、例えば、促進種をドーピングした場合のEgシフト量が、抑制種をドーピングした場合のEgシフト量よりも大きい場合、
図36と
図37とから、
図38の関係図となる。このとき、窓領域15bのp型半導体層領域14に促進種が多く含有されており、非窓領域15aのp型半導体層領域14に抑制種が多く含有されているとすると、窓領域15bと非窓領域15aとのバンドギャップエネルギーの差をΔEgCとすることができる。このように、窓領域15bのp型半導体層領域14と非窓領域15aのp型半導体層領域14において、促進種および抑制種の両方の含有量を変化させることによって、窓領域15bと非窓領域15aとのバンドギャップエネルギーの差をさらに大きくすることができる。
【0072】
このように、促進種および抑制種のp型半導体層領域14における含有量に差をつけることで、非窓領域15aと窓領域15bとのバンドギャップエネルギーの差を大きくすることができる。これによって、本実施の形態における半導体レーザ素子は、より大きいバンドギャップエネルギー差を備え、端面におけるレーザ光の吸収を減少させ、CODを抑制し、より高い信頼性を有する半導体レーザ素子とすることができる。
【0073】
なお、上記実施の形態において、半導体積層部は、半導体層の積層方向に延伸している窓領域と非窓領域との2つの領域としたが、非窓領域内において、原子空孔拡散による混晶度と、バンドギャップエネルギーとが異なる少なくとも2つの活性層を備えていてもよい。このとき、半導体レーザ素子は、上記少なくとも2つの活性層から少なくとも2つの互いに異なる波長のレーザ光を発振することができる。すなわち、上記の実施の形態において、混晶化は半導体レーザ素子の発振波長に対する窓領域の透明化を目的としているが、非窓領域の混晶化によって、半導体レーザ素子の発振波長を変化させることができる。これによって、複数の領域の原子空孔による混晶度を互いに異なる値とし、複数の領域のバンドギャップエネルギーに差をつけると、複数の発光波長(およびレーザ発振波長)を有する半導体レーザ素子を実現することができる。
【0074】
例えば、非窓領域を、積層方向に延伸するn個の領域(面方向領域)とする場合、第1面方向領域から第n面方向領域までの各領域のエッチング量を変えることで、n個の波長のレーザ光を発振することができる波長可変半導体レーザ素子を製造することができる。また、n個の領域にm種類の組成や材料の異なる誘電体膜を形成し熱処理することで、最大でn×m個の波長のレーザ光を発振することができる波長可変半導体レーザ素子を実現することができる。なお、ここで、n、および、mは1以上の整数である。
【0075】
したがって、例えば、8個のレーザ発振波長を有した波長可変半導体レーザ素子は、促進種、抑制種、または、その両方の含有量が互いに異なる2つの領域にそれぞれ材料や屈折率等の異なる4種類の誘電体膜をつける、または、促進種、抑制種、または、その両方の含有量がそれぞれ異なる4つの領域にそれぞれ材料や屈折率等の異なる2種類の誘電体膜をつける、または、促進種、抑制種、またはその両方の含有量がそれぞれ異なる8つの領域に1種類の誘電体膜をつけることにより実現する。
【0076】
また、上記実施の形態において、半導体レーザモジュールの光導波方向の光の閉じ込めをリッジ構造によって実現しているが、本発明はこれに限られない。埋め込み型のレーザ構造であってもよく、たとえば、自己整合構造(SAS: Self Aligned Structure)構造であってよい。ただし、本明細書において、SAS構造等では、内部の電流を狭窄している領域の幅を電流注入幅とする。
【0077】
つぎに、本発明の実施例に係る半導体レーザ素子として、非窓領域15aと窓領域15bとのp型半導体層領域14におけるCまたはZnの含有量を変化させた場合のバンドギャップエネルギーのシフト量を測定した結果の一例について説明する。
【0078】
(実施例1)
図39は、実施例1に係る半導体レーザ素子の構造を説明する概略図である。本実施例1に係る半導体レーザ素子において、p型ガイド層611、p型クラッド層612、p型コンタクト層613aには、Cがドーピングされている。p型コンタクト層613bは、Znが均一にドーピングされた層である。なお、
図39以降では、半導体レーザ素子の構造において、活性層10やn型半導体層領域9など、p型半導体層領域以外の構造は、半導体レーザ素子100と同様の構造をしているので、省略して記載している。
【0079】
本実施例1では、実施の形態1における半導体積層部形成工程において、実施の形態1のようにp型コンタクト層13bを全て除去するのではなく、
図39に示すように、p型コンタクト層613bの一部のみをエッチングにより除去した。そして、
図39のエッチング量Dを変化させることにより、窓領域15bのp型半導体層領域14におけるZn含有量を変化させた。また、RTAは835℃で30秒間行った。
【0080】
図40は、p型半導体層領域にCおよびZnの2種類が含有される場合の窓領域のp型半導体層領域におけるZn含有層のエッチング量とバンドギャップエネルギーのシフト量との関係を示す図である。本実施例1では、エッチング量Dを変化させた実施例1−1〜1−3と、エッチングをしていない比較例1とのバンドギャップエネルギーのシフト量を測定した。
【0081】
図40に示すとおり、窓領域15bにおけるp型コンタクト層613bのエッチング量を増やすと、p型半導体層領域14のZn含有量は小さくなり、バンドギャップエネルギーのシフト量は増加した。したがって、このときZnは抑制種として機能していることがわかる。また、p型コンタクト層613bの最表層のZn濃度は一定であるが、バンドギャップエネルギーのシフト量がエッチング量により変化している。つまり、バンドギャップエネルギーのシフト量は、Zn濃度ではなく、Zn含有量に依存している。このように、窓領域の最表層のZn濃度と非窓領域の最表層のZn濃度が一定であってもバンドギャップエネルギーの差が得られる。
【0082】
(実施例2)
図41は、実施例2に係る半導体レーザ素子の構造を説明する概略図である。本実施例2に係る半導体レーザ素子は、Cをドーピングしたp型ガイド層711および、p型クラッド層712を積層した後、Znをドーピングしたp型コンタクト層713aを積層した。さらに、
図41に示すように、窓領域15bのみにCをドーピングしたp型コンタクト層713bを選択的に積層させた。これによって、非窓領域15aと窓領域15bとのp型半導体層領域におけるC含有量に差をつけた。また、RTAは850℃で30秒間行った。
【0083】
図42は、p型半導体層領域にCおよびZnの2種類が含有される場合の窓領域のp型半導体層領域におけるC含有量とバンドギャップエネルギーのシフト量との関係を示す図である。ここでは、本実施例2と、非窓領域15aおよび窓領域15bとのいずれにもp型コンタクト層713bを積層していない比較例2とのバンドギャップエネルギーのシフト量を測定した。
【0084】
図42に示すとおり、窓領域15bにおけるp型半導体層領域のC含有量を増やすと、バンドギャップエネルギーのシフト量は増加した。したがって、このときCは促進種として機能していることがわかる。
【0085】
(実施例3)
図43は、実施例3に係る半導体レーザ素子の構造を説明する概略図である。本実施例3に係る半導体レーザ素子は、p型半導体層領域を構成するp型ガイド層811〜p型コンタクト層813の全てにZnのみをドーピングし、Cはドーピングしていない。また、実施例1と同様に、p型コンタクト層813のエッチング量Dを変化させることにより、p型半導体層領域におけるZn含有量を変化させている。ただし、本実施例3は、非窓領域15aにおけるエッチング量を変化させている点で、窓領域15bをエッチングした実施例1と異なる。これによって、非窓領域15aのp型半導体層領域14におけるZn含有量を変化させている。また、RTAは825℃で30秒間行った。本実施例3では、エッチング量Dを変化させた実施例3−1、3−2と、エッチングをしていない比較例3とのバンドギャップエネルギーのシフト量を測定した。
【0086】
図44は、p型半導体層領域にZnのみが含有され、Znが促進種として機能する場合の非窓領域のp型半導体層領域におけるZn含有量とバンドギャップエネルギーのシフト量との関係を示す図である。
図44に示すとおり、非窓領域15aにおけるp型半導体層領域14のZn含有量を増やすと、バンドギャップエネルギーのシフト量は増加した。したがって、このときZnは促進種として機能していることがわかる。
【0087】
(実施例4)
実施例4は実施例3と同様に、
図43に示す構造によって、非窓領域15aのp型半導体層領域におけるZn含有量を変化させている。RTAは830℃で30秒間行った。ただし、実施例3における抑制膜であるSiNの屈折率は1.9であるのに対し、本実施例4における抑制膜であるSiNの屈折率は2.0とより緻密な膜である。本実施例4では、エッチング量Dを変化させた実施例4−1、4−2と、エッチングをしていない比較例4とのバンドギャップエネルギーのシフト量を測定した。
【0088】
図45は、p型半導体層領域にZnのみが含有され、Znが抑制種として機能する場合の非窓領域のp型半導体層領域におけるZn含有量とバンドギャップエネルギーのシフト量との関係を示す図である。
図45に示すとおり、非窓領域15aにおけるp型半導体層領域14のZn含有量を増やすと、バンドギャップエネルギーのシフト量は減少した。したがって、このときZnは抑制種として機能していることがわかる。このようにZnの1種類のみを不純物としてドーピングした場合でも、抑制膜の条件によって促進種として機能するか、抑制種として機能するか、その機能が変わることがある。また、不純物の種類と濃度、促進膜および抑制膜の密度および屈折率の他に、RTAの温度や時間等も、不純物の機能に影響を与えることがある。
【0089】
(実施例5)
図46は、実施例5に係る半導体レーザ素子の構造を説明する概略図である。本実施例5に係る半導体レーザ素子は、実施例3および4と逆に、p型半導体層領域14を構成するp型ガイド層911、p型クラッド層912、p型コンタクト層913の全てにCのみをドーピングし、非窓領域15aにおけるp型コンタクト層913のエッチング量Dを変化させている。これによって、非窓領域15aのp型半導体層領域14におけるC含有量を変化させている。また、RTAは825℃で30秒間行った。本実施例5では、エッチング量Dを変化させた実施例5−1、5−2と、エッチングをしていない比較例5とのバンドギャップエネルギーのシフト量を測定した。
【0090】
図47は、p型半導体層領域にCのみが含有される場合の非窓領域のp型半導体層領域におけるC含有量とバンドギャップエネルギーのシフト量との関係を示す図である。
図47に示すとおり、非窓領域15aにおけるp型半導体層領域14のC含有量を増やすと、バンドギャップエネルギーのシフト量は増加した。したがって、このときCは促進種として機能していることがわかる。
【0091】
なお、本実施例1〜5では、p型コンタクト層のエッチング量または不純物含有層を選択的に積層させることによって、非窓領域15aと窓領域15bとのp型半導体層領域14における不純物含有量に差をつけたが、不純物含有層を選択的に濃度を変えて積層させる方法や、拡散源により選択的に不純物を拡散させる方法、イオン注入により選択的に不純物を注入する方法等によって、非窓領域15aと窓領域15bとのp型半導体層領域14の不純物含有量に差をつけることもできる。
【0092】
以上の実施例が示すように、p型半導体層領域に含有される不純物の種類、ドーピング量、組み合わせ、誘電体膜の密度および屈折率等によって、その不純物が促進種として機能するか、抑制種として機能するかが決まる。したがって、適宜促進種と抑制種とを組み合わせ、促進種はp型半導体層領域の窓領域15bにおける含有量を多くし、抑制種はp型半導体層領域の非窓領域15aにおける含有量を多くすることで、非窓領域15aと窓領域15bとの混晶度、および、バンドギャップエネルギーの差を大きくすることができ、端面におけるレーザ光の吸収が減少し、CODを抑制することができる。
【0093】
また、上記の窓領域、非窓領域のように、混晶度およびバンドギャップエネルギーが異なる2つ以上の領域がある場合に、2つ以上の領域のうち、少なくとも1つの領域が、第1不純物と第2不純物の両方を含み、かつ2つの不純物のうち、少なくとも一方の含有量が異なることが好ましい。これによって、単に2つ以上の領域の混晶度のみに差を付けた場合や、不純物を1種類のみとし、その含有量に差を付けた場合と比較して、非常に大きいエネルギーバンドギャップ差を得ることができる。その理由は、上述したように抑制種、例えばZnが、熱拡散して原子空孔を埋めることにより混晶化を抑制すると想定されるので、有る程度空孔が存在する方が、その抑制効果を発揮できる。したがって、促進種としてたとえばCも含むことにより、抑制種の抑制効果を高めることができる。
【0094】
なお、2つ以上の領域のうち、少なくとも1つの領域が、第1不純物と第2不純物の両方を含み、かつ2つの不純物のうち、少なくとも一方の含有量が異なるという条件を実現するには、たとえば、以下のようにすればよい。すなわち、窓領域となる領域と非窓領域となる領域にZnとCの両方を含有させ、かつ、2つの領域でZn、Cまたはその両方の含有量に差を付ければよい。このとき、領域間でバンドギャップエネルギーの差が大きくなるように差をつけることが好ましい。
【0095】
なお実施の形態1では、
図6のように窓領域となる領域においてコンタクト層13bのみが完全に除去されているが、窓領域となる領域においてコンタクト層13bがわずかに残ったり、非窓領域となる領域におけるコンタクト層13aがわずかにエッチングされてもよい。ただし、
図40と
図47からわかるように、含有量に対するバンドギャップエネルギーのシフト量の変化はCよりZnの方が大きいので、コンタクト層13aがわずかにエッチングされた方が、コンタクト層13bのみが完全に除去されている場合に近い大きなバンドギャップエネルギー差が得られやすい。
【0096】
また実施の形態3では、
図23のように非窓領域となる領域においてコンタクト層313bのみが完全に除去されているが、非窓領域となる領域においてコンタクト層313bがわずかに残ったり、窓領域となる領域におけるコンタクト層313aがわずかにエッチングされてもよい。ただし、
図40と
図47からわかるように含有量に対するバンドギャップエネルギーのシフト量の変化はCよりZnの方が大きいので、コンタクト層313bがわずかに残っている方が、コンタクト層313bのみが完全に除去されている場合に近い大きなバンドギャップエネルギー差が得られやすい。
【0097】
なお、上記実施の形態において説明した半導体レーザ素子を、制御装置や光学素子等とともにパッケージ上に搭載し、半導体レーザモジュールとすることができる。ここで、半導体レーザモジュールは、通常は半導体レーザ素子の温度を適正な温度に制御するための冷却または加熱を行う温度調整機構を備えている。しかしながら、上記実施の形態の半導体レーザ素子は、より大きいバンドギャップエネルギー差を備え、CODを抑制し、より高い信頼性を有する半導体レーザ素子であるため、温度を調整せずに安定して動作させることもできる。そのため、半導体レーザモジュールは必ずしも半導体レーザ素子の温度調整をするための温度調整機構を備える必要がない。このため、簡易な構成でありかつ低コストなアンクールの半導体レーザモジュールを実現できる。
【0098】
(実施の形態6)
次に、本発明の実施の形態6に係る半導体レーザモジュールについて説明する。実施の形態6に係る半導体レーザモジュールは、たとえば実施の形態1〜5及び後述する実施の形態のいずれか1つに記載のCODを抑制し、より高い信頼性を有する半導体レーザ素子を搭載した半導体レーザモジュールである。
図48は、実施の形態6に係る半導体レーザモジュールの筐体を切り欠いて示した側面図の一例である。半導体レーザモジュール1000は、たとえば、本実施形態1に係る半導体レーザ素子100と同一の半導体レーザ素子1001を搭載し、半導体レーザ素子1001が出力するレーザ光を光ファイバ1008から出力させる。半導体レーザモジュール1000は、筐体1002と、底板部1003と、筒状孔部1004と、ベース部1005と、マウント部1006と、ファイバ固定部1007と、光ファイバ1008と、スリーブ部1009と、受光部1010とを備える。
【0099】
筐体1002、底板部1003、および筒状孔部1004は、金属で形成される。筐体1002、底板部1003、および筒状孔部1004は、一例として、アルミニウム(Al)で形成され、内部を密封する。筐体1002、底板部1003、および筒状孔部1004は、バタフライ型のパッケージを形成してよい。
【0100】
ベース部1005は、窒化アルミニウム(AlN)、銅タングステン(CuW)、Si、またはダイヤモンドを含む材料から形成されてよい。マウント部1006は、ベース部1005と同じ材料で形成されてよい。
【0101】
ファイバ固定部1007は、ベース部1005の上面に載置され、光ファイバ1008を固定する。ファイバ固定部1007は、樹脂、低融点ガラス、または接着剤等を用いて光ファイバ1008を固定してよい。
【0102】
光ファイバ1008は、筐体1002の外部より筒状孔部1004を介して筐体1002内に挿入される。光ファイバ1008は、図中のLで示した一端が非球面状に加工されて集光レンズを形成したレンズドファイバでよく、当該一端が半導体レーザ素子1001の光出力端面の近傍に固定されて半導体レーザ素子1001の光出力を集光する。これによって、光ファイバ1008は、半導体レーザ素子1001の光出力を、筐体1002の外部へと伝送することができる。
【0103】
スリーブ部1009は、筐体1002と光ファイバ1008の間に設けられ、光ファイバ1008を筐体1002に固定する。スリーブ部1009は、樹脂、低融点ガラス、または接着剤等を用いて光ファイバ1008を固定してよい。
【0104】
受光部1010は、光ファイバ1008と対向する側とは反対側からの半導体レーザ素子1001の光出力を受光して、半導体レーザ素子1001の光出力をモニタする。受光部1010は、半導体レーザ素子1001の高反射膜側に設けられてよい。受光部1010は、フォトダイオードでよい。以上の本実施形態6に係る半導体レーザモジュール1000によれば、半導体レーザ素子1001がCODの発生を抑制した発熱の生じにくい構成であるため、温度調整機構を備えず、温度調整をせずに安定した動作させることができる半導体レーザモジュールを実現することができる。
【0105】
(実施の形態7)
つぎに、本発明の実施の形態7に係る半導体光素子について説明する。
図49は、実施の形態7に係る半導体光素子の模式的な斜視図である。
図49に示すとおり、本実施の形態7に係る半導体光素子1100は、素子本体1101からなり、低反射率膜および高反射率膜からなる共振構造を有さず、入射された光を閉じ込めながらz軸方向に導波させる半導体光導波路として機能する。
【0106】
図50は、
図49に示す半導体光素子のx−y面における断面図である。半導体光素子1100は、基板1105と、基板1105上に順次形成された、例えばInPからなる下部クラッド層1107、コア層1110と、上部クラッド層1112とからなる半導体積層部1115とを備えている。さらに、半導体積層部1115は、混晶化抑制領域1115aと、混晶化促進領域1115bとからなる。
【0107】
半導体光素子1100は、コア層1110と、コア層1110を挟みコア層より屈折率の小さい半導体からなる下部クラッド層1107および上部クラッド層1112とによって、y軸方向で光を閉じ込める構造である。さらに、半導体光素子1100は、混晶化抑制領域1115aと、混晶化抑制領域1115aを挟み、混晶化されたことにより混晶化抑制領域1115aより屈折率が小さい混晶化促進領域1115bとによって、x軸方向で光を閉じ込める構造である。したがって、この半導体光素子1100は、光をz軸方向に導波させる半導体光導波路として機能する。
【0108】
つぎに、この半導体光素子1100の製造方法の一例について説明する。本実施の形態7に係る半導体光素子1100の製造方法は、実施の形態1と同様に、
図3に示すように、半導体積層部形成工程と、促進膜形成工程と、抑制膜形成工程と、熱処理工程とを含むものである。
【0109】
(半導体積層部形成工程)
まず、半導体積層部形成工程について説明する。この工程では、はじめに、
図51に示すように、MOCVD法により、基板1105上に下部クラッド層1107と、コア層1110と、上部クラッド層1112とを積層し、さらに、促進種として、たとえば、C21をドーピングした促進種含有層1113aと、抑制種として、たとえば、Zn22をドーピングした抑制種含有層1113bとを備える不純物含有層1113を積層する。
【0110】
つぎに、
図52および
図53に示すように、フォトリソグラフィ工程およびエッチング工程を行い、フォトレジスト131を用いて混晶化促進領域1115bに対応する第2領域1125bの抑制種含有層1113bを除去する。一方で、混晶化抑制領域1115aに対応する第1領域1125aの抑制種含有層は除去しない。つぎに、
図54に示すように、フォトレジスト131を除去する。これによって、基板1105から不純物含有層1113によって構成される半導体積層構造1125が形成される。
【0111】
(促進膜形成工程)
つぎに、促進膜形成工程について説明する。この工程では、原子空孔拡散によって混晶化を行い、混晶化促進領域1115bを形成するため、第2領域1125bの上面に促進膜32を形成する。まず、半導体積層構造1125の上面に、SiN絶縁膜である促進膜32を形成する。つぎに、
図55に示すように、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程を経て、混晶化抑制領域1115aを形成すべき領域の促進膜32を除去する。これによって、第2領域1125bの上面に、促進膜32が形成される。
【0112】
(抑制膜形成工程)
つぎに、抑制膜形成工程について説明する。この工程では、
図56に示すように、SiN絶縁膜である抑制膜33を形成する。
【0113】
(熱処理工程)
つぎに、熱処理工程について説明する。この工程では、たとえば、850℃、30秒間のRTAを行う。ここで、RTAによる熱処理を行うと、促進膜32および抑制膜33によって、原子空孔が半導体層中に拡散し、各半導体層が混晶化される。これによって、
図57に示す通り、混晶度の異なる混晶化抑制領域1115aと混晶化促進領域1115bとが形成される。混晶化抑制領域1115aと混晶化促進領域1115bとは、互いに実効屈折率が異なる。その後、不純物含有層1113をエッチング等によって除去し、最終的な半導体光素子1100が完成する。
【0114】
以上説明したように、本実施の形態7に係る半導体光素子1100により、より大きいバンドギャップエネルギー差を備えた半導体光素子を実現することができる。このように、本発明は実施の形態1のような半導体レーザ素子だけでなく、本実施の形態7のような半導体光導波路にも適用することができる。
【0115】
ここで、一般に、半導体材料のバンドギャップエネルギーと屈折率とには相関がある。したがって、本実施の形態7では、より大きいバンドギャップエネルギー差を得ることが可能なので、選択・設定可能な屈折率差の範囲が広がることとなる。これにより、所望の屈折率差を実現するための材料や導波路構造等の選択肢が増え、光導波路設計の自由度を増大させることができる。
【0116】
なお、本実施の形態7において、半導体層の積層方向に延伸している第1領域1125aと第2領域1125bとの混晶度に差をつけることによって、x軸方向の光の閉じ込め構造を実現したが、第2領域1125bの外側に、さらに混晶度の異なる第3領域を形成し、x軸方向の光の閉じ込めを改善してもよい。また、例えば第1領域の厚さを、x軸方向に連続的に変化させることによって、混晶度が連続的に変化する構成としてもよい。このような場合にも、本実施の形態7と同様の作用によって、より大きいバンドギャップエネルギー差を備えた半導体光素子を実現することができる。
【0117】
また、実施の形態7において、第1領域1125aと第2領域1125bとの境界は、光の導波方向に沿って形成されているが、各領域の境界は、光の導波方向を横切って形成されていてもよい。例えば、光の導波方向において屈折率の異なる層を交互に形成して、グレーティング構造を作製してもよい。
【0118】
また、実施の形態7は、実施の形態1〜5の半導体レーザ素子と組み合わせて適用してもよい。その場合は、各領域ごとに混晶度、またはバンドギャップエネルギーが異なってもよい。
【0119】
また、実施の形態7は、アクティブデバイスの活性層を混晶化させ、パッシブ導波路を作製してもよく、アクティブデバイスとパッシブ導波路のモノリシック集積化にも適用できる。
【0120】
以上の結果が示すように、本発明の実施の形態に係る半導体光素子は、混晶度の異なる領域を形成することにより、より大きいバンドギャップエネルギー差を備えた半導体光素子を実現できることが実証された。
【0121】
(実施の形態8)
つぎに、本発明の実施の形態8に係る半導体レーザ素子について説明する。
【0122】
図58Aは、実施の形態8に係る半導体レーザ素子のx−y面における断面図であり、
図58Bは、本発明の実施の形態8に係る半導体レーザ素子のy−z面における断面図である。
図58Aに示すように、この半導体レーザ素子2100は、下部電極4を底面に形成した基板5と、基板5上に順次形成された、n型バッファ層6、n型クラッド層7、n型ガイド層8を有するn型半導体層領域9と、活性層10と、p型ガイド層11、p型クラッド層12、p型コンタクト層2013を有するp型半導体層領域14とからなる半導体積層部15とを備えている。また、p型コンタクト層2013は断面が台形であり、z軸方向に延伸したストライプ形状を有している。これによって半導体レーザ素子2100はリッジ構造となっている。また、半導体レーザ素子2100は、p型半導体層領域14上に形成された絶縁膜16と、絶縁膜16が形成されていないリッジ構造の台形の上底を介してp型コンタクト層2013に接触するp側電極である上部電極17とを備えている。
【0123】
上部電極17と接触する半導体積層部15の最表層領域を含むp型コンタクト層2013は、原子空孔の拡散を促進する機能を有するp型の第2不純物として、Cを含有する。さらに、p型コンタクト層2013は、原子空孔の拡散を抑制する機能を有するp型の第1不純物として、亜鉛(Zn)を含有する。
【0124】
また、半導体積層部15は、非窓領域15aと、活性層10のバンドギャップエネルギーが非窓領域15aよりも大きい窓領域15bとを有している。
【0125】
窓領域のバンドギャップエネルギーは混晶化によって高くなる方が好ましく、非窓領域のバンドギャップエネルギーは混晶化によって高くならない方が好ましい。このため、窓領域および非窓領域に混晶化を促進または抑制する不純物が、適宜濃度を選択してドーピングされている。
【0126】
本実施の形態8においてはCが促進種として機能し、Znが抑制種として機能するが、不純物が促進種または抑制種のどちらとして機能するかは、不純物の種類や濃度、組み合わせ、さらにRTAの温度や時間などの条件によって決まる。
【0127】
ここで、最表層領域とは、半導体積層部15の最表層の領域であって、上部電極17と接触して最初に電流が注入される領域であり、半導体積層部15の最表面から注入電流に対するコンタクト抵抗に影響を及ぼす深さまでを表す領域である。また、最表層領域は、ほぼ同一条件でエピタキシャル成長された、例えば最表層から0〜200nm程度の深さの領域である。ただし、最表層領域の成長中にドーピングされる不純物は、成長中に変更されてもよい。本実施の形態8では、最表層領域とは、p型コンタクト層2013のことを意味する。また、不純物含有量は、表面からの深さとその深さでの不純物濃度との積分によって求められる。
本実施の形態8に係る半導体レーザ素子2100において、上部電極17と接する半導体積層部15の最表層領域は、Cをドーピングされたp型コンタクト層2013からなる。上部電極と接する半導体積層部の最表層領域が、Znをドーピングされたp型コンタクト層からなる場合と、Cに比べて拡散係数の大きいZnは、活性層を混晶化するためのRTAによって、p型コンタクト層からp型半導体層領域内に拡散する。これによって、p型コンタクト層において、Znの濃度が減少する。そして、Znが減少したp型コンタクト層と、上部電極とが接触させられると、オーミック接触においてアクセプタとなるZnが少ないためにコンタクト抵抗が高くなる。コンタクト抵抗が高くなると、投入電力に対する電力変換効率が低くなるので、半導体レーザ素子の性能を下げる直接的な原因となる。
【0128】
本実施の形態8に係る半導体レーザ素子2100は、Cを含有するp型コンタクト層2013と上部電極17とを接触させる構造とした。CはZnより拡散係数が小さく、熱によって拡散しにくいからである。このとき、上部電極17は、アクセプタであるCの濃度がほとんど減少していないp型コンタクト層2013とオーミック接触する。これによって、本実施の形態8に係る半導体レーザ素子2100は、RTAによりコンタクト抵抗が高くなることを抑制している。さらに、本実施の形態8に係る半導体レーザ素子2100の最表層領域には、製造過程におけるRTAによって拡散されたZnも含有されている。これによって、コンタクト抵抗はさらに減少する。
【0129】
以上説明したように、本実施の形態8に係る半導体レーザ素子2100は、上部電極17と拡散係数の小さいCを含有するp型コンタクト層2013とを接触させることにより、RTAによってコンタクト抵抗が高くなることを抑制している。さらに、RTAによって拡散されたZnによってコンタクト抵抗を下げている。したがって、RTAによる窓領域における活性層の混晶化によってCODの発生を抑制し、信頼性が高く、かつ、コンタクト抵抗が低いため、電力変換効率の高い半導体レーザ素子を実現することができる。
【0130】
つぎに、この半導体レーザ素子2100の製造方法の一例について説明する。
図59は、半導体レーザ素子の製造方法のフロー図である。
図59に示すように、本実施の形態8に係る半導体レーザ素子2100の製造方法は、半導体積層構造形成工程(ステップS2101)と、促進膜形成工程(ステップS2102)と、抑制膜形成工程(ステップS2103)と、熱処理工程(ステップS2104)と、不純物拡散層除去工程(ステップS2105)と、リッジ構造形成工程(ステップS2106)とを含むものである。
【0131】
以下、各工程について説明する。なお、各工程において示した数値は例示であり、本実施の形態はこの数値に限定されるものではない。
(半導体積層構造形成工程)
まず、ステップS2101の半導体積層構造形成工程にこの工程では、はじめに、
図60に示すように、MOCVD法により、基板5上にn型バッファ層6、n型クラッド層7、n型ガイド層8、活性層10、p型ガイド層11、p型クラッド層12、p型コンタクト層2013をエピタキシャル成長する。ここで、p型コンタクト層2013には、混晶化を促進する機能を有する促進種であり第1導電型の第2不純物であるC(C21)が、例えば1.0×10
17〜5.0×10
19〜5×10
20cm
−3程度ドーピングされている。好ましくは、1.0×10
19cm
−3より多くドーピングされている方がよい。さらに、
図61に示すように、半導体積層部15上に、不純物拡散層31を形成し、半導体積層構造を形成する。不純物拡散層31は、GaAsからなり、活性層10の混晶化を抑制する機能を有する抑制種であり第1導電型の第1不純物であるZn(Zn22)が、例えば1.0×10
17〜5.0×10
19〜5×10
20cm
−3程度ドーピングされている。
【0132】
(促進膜形成工程)
つぎに、ステップS2102の促進膜形成工程について説明する。この工程では、原子空孔拡散によって混晶化を行い、窓領域15bを形成するため、促進膜32を形成する。この方法は、IFVD法とも呼ばれる。まず、半導体積層部15の上面に、SiN絶縁膜である促進膜32を形成する。つぎに、
図62に示すように、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程を経て、非窓領域15aを形成すべき領域の促進膜32を除去する。これによって、窓領域15bとなる領域の上面に、促進膜32が形成される。
【0133】
(抑制膜形成工程)
つぎに、ステップS2103の抑制膜形成工程について説明する。この工程では、
図63に示すように、SiN絶縁膜である抑制膜33を形成する。
【0134】
(熱処理工程)
つぎに、ステップS2104の熱処理工程について説明する。この工程では、RTAにより短時間の熱処理を行う。これにより、p型コンタクト層2013に接するように促進膜32が形成されている領域においては、促進膜32によって活性層10の混晶化が促進され、
図64に示すように、窓領域15bが形成される。p型コンタクト層13に接するように抑制膜33が形成されている領域においては、抑制膜33によって活性層10の混晶化が抑制され、
図64に示すように非窓領域15aが形成される。
【0135】
C21とZn22とが併せてドーピングされている本実施の形態8においては、C21が活性層10の混晶化を促進する機能を有する第2不純物として機能し、Zn22が活性層10の混晶化を抑制する機能を有する第1不純物として機能する。C21とZn22とが、それぞれ促進種または抑制種として機能することで、非窓領域15aと窓領域15bとのバンドギャップエネルギーの差を大きくすることができ、CODの発生を抑制することができる。
【0136】
ここで、RTAによって、拡散係数の大きいZn22はp型半導体層領域14内に拡散され、不純物拡散層31におけるZn22の濃度は大幅に減少している。一方で、C21は拡散係数が小さいため、p型コンタクト層2013のC21の濃度はほとんど減少していない。
【0137】
(不純物拡散層除去工程)
つぎに、ステップS2105の不純物拡散層除去工程について説明する。この工程では、
図65に示すように、不純物拡散層31をエッチングによって除去する。
【0138】
ここで、RTAによるp型半導体層領域14の各層におけるC21およびZn22の含有量の変化について説明する。
図66A、66B、66Cは、RTAの前後におけるCおよびZnの含有量の変化を説明する概略図である。
図66A、66B、66Cの横軸は、C21およびZn22の各層における含有量を表している。RTAを行う前は、各層へのC21およびZn22のドーピングにより、
図66Aに示すような濃度分布であるとする。つぎに、RTAを行うと、拡散係数の大きい不純物であるZn22は多量に拡散され、
図66Bのように、最表面側から内側に向かって減少する濃度分布を有する。このとき、拡散係数は、例えば900℃においてZn22が10
−8cm
2/s程度であるのに対し、C21は10
−15cm
2/s程度であり、C21の拡散係数は、Zn22の拡散係数に対して無視できるほど小さい。したがって、RTAによる拡散後のC21およびZn22の含有量の総和は、
図66Cのようになる。
【0139】
RTA後において、
図66Cに示すように、不純物拡散層31の最表層領域はZn22の濃度が低下しており、ここに上部電極17を接触させるとコンタクト抵抗が大きい。そこで、本実施の形態8に係る半導体レーザ素子においては、不純物拡散層31を除去し、p型コンタクト層2013を上部電極17と接触させている。このとき、拡散係数の大きい不純物であるZn22と拡散係数の小さい不純物であるC21との含有量の総和が、拡散係数が小さい不純物であるC21のドーピング量より多くなっている。これによって、オーミック接触においてアクセプタとなる原子が、RTA後の不純物拡散層31の最表層領域よりも大きくなるだけでなく、p型コンタクト層2013のC21のドーピング量よりも大きくなる。したがって、C21を含有するp型コンタクト層2013のみを形成し、不純物拡散層31によるZn22の拡散を行わない場合よりも、コンタクト抵抗を小さくすることができる。
【0140】
たとえば、設計において、不純物拡散層31のZn濃度を1.0×10
19cm
−3とし、その下層のp型コンタクト層2013のC濃度を2.0×10
19cm
−3とする。このとき、RTA熱処理によって拡散したZnは、不純物拡散層31のエッチング後、p型コンタクト層2013の表層からの深さが100〜200nm程度の領域に、設計における不純物拡散層31のZn濃度の約10%程度存在することが実験的にわかっている。したがって、このときのp型コンタクト層2013のC濃度とZn濃度の総和は2.1×10
19cm
−3程度である。
【0141】
(リッジ構造形成工程)
ステップS2106のリッジ構造形成工程については、実施の形態1の場合と同様の手順で行うことができる。さらに、絶縁膜16を形成し、開口部16aを形成する。その後、上部電極17と下部電極4とを形成し、基板5をへき開してそのへき開面に低反射率膜2と高反射率膜3とを形成し、さらに素子ごとにカッティングすることによって、半導体レーザ素子2100が完成する。
【0142】
以上説明したように、本実施の形態8に係る半導体レーザ素子2100は、拡散係数が小さくRTAによって濃度がほとんど減少しないC21をドーピングしたp型コンタクト層13と上部電極17とを接触させることで、RTAによってコンタクト抵抗が高くなることを抑制している。さらに、本実施の形態8に係る半導体レーザ素子2100は、RTAによって拡散されたZn22が最表層領域に含有されることで、コンタクト抵抗が低くなる。これによって、信頼性が高く、さらに、電力変換効率の高い半導体レーザ素子2100を実現することができる。
【0143】
(実施例6)
つぎに、本実施の形態8に係る実施例として、半導体レーザ素子2100の電流−電圧特性と電流−光出力特性を測定した。
【0144】
実施例6は、実施の形態8に係る半導体レーザ素子2100を、ヒートシンク上に半田で接合し、さらに、半導体レーザ素子2100を載置したヒートシンクをCuWからなるサブマウント上に、半田で接合した。半田は、Sn−Pb半田であってよく、Au−Sn半田であってもよい。ここに、下部電極4と上部電極17とから電流を注入し、注入した電流は電流計で、印加した電圧は電圧計で測定した。また、光出力は、フォトダイオードで検出した。なお、光出力は、CCD等で検出してもよい。
【0145】
また比較例6として、実施の形態8に係る半導体レーザ素子2100の製造方法において、熱処理工程の後にZnをドーピングした不純物拡散層31を除去する不純物拡散層除去工程を行わず、そのままリッジ構造形成工程を行い、不純物拡散層31上に上部電極を形成した半導体レーザ素子についても、同様の測定を行った。なお、比較例6に係る半導体レーザ素子において、不純物拡散層31を除去していないこと以外の、各層の厚さやドーピングした不純物の濃度、RTAの条件は実施例1に係る半導体レーザ素子2100と同一である。
【0146】
図67は、実施例6に係る半導体レーザ素子と比較例6に係る半導体レーザ素子との電流−電圧特性を示す図である。ここで、オームの法則より電圧E[V]、抵抗R[Ω]、電流I[A]の関係は、次式のとおりである。
E=R×I・・・(1)
したがって、
図67の傾きである抵抗Rについて、実施例6に係る半導体レーザ素子2100の抵抗Rは、比較例6に係る半導体レーザ素子の抵抗Rより小さいことがわかる。
【0147】
図68は、実施例6に係る半導体レーザ素子と比較例6に係る半導体レーザ素子との電流−光出力特性を示す図である。
図68に示すように、電流が大きくなると、本実施例1に係る半導体レーザ素子2100は、比較例6にかかる半導体レーザ素子よりも光出力が高いことがわかる。
【0148】
つぎに、半導体レーザ素子に対する投入電力P
E[W]は、次式によって求められる。
P
E=E×I・・・(2)
【0149】
さらに、半導体レーザ素子の投入された電力に対する光出力である電力変換効率E
f[%]は、規格化した光出力をP
Oとすると、次式で求められる。なお、光出力は、LD駆動電流として20[A]の電流を注入したときの、フォトダイオードで検出した値を1として規格化している。
E
f=(P
O/P
E)×100%・・・(3)
【0150】
これにより、電力変換効率E
fを算出することができる。例えばLD駆動電流が16[A]において、実施例6の電力変換効率E
fは2.90[%/W]となる。同様にLD駆動電流が16[A]において、比較例6の電力変換効率E
fは、2.54[%/W]となる。したがって、本実施例6は比較例6に比べ、電力変換効率E
fが14[%]程度改善している。同様に、LD駆動電流が20[A]においては、実施例6の電力変換効率E
fが2.61[%/W]、比較例6の電力変換効率E
fが2.13[%/W]であり、23[%]程度改善している。
【0151】
以上により、本実施例6に係る半導体レーザ素子2100は、Cをドーピングしたp型コンタクト層2013と上部電極17とを接触させることにより、コンタクト抵抗が高くなることを抑制し、電力変換効率の高い半導体レーザ素子であることが実証できた。
【0152】
(実施の形態9)
つぎに、本発明の実施の形態9に係る半導体レーザ素子について説明する。
図69は、実施の形態9に係る半導体レーザ素子のy−z面における断面図である。本実施の形態9に係る半導体レーザ素子2200は、実施の形態8に係る半導体レーザ素子2100と異なり、p型コンタクト層2213が、p型コンタクト層2213aとp型コンタクト層2213bとの2層からなる。また、p型コンタクト層2213aにZnをドーピングし、p型コンタクト層2213bにCをドーピングした構造である。
【0153】
本実施の形態9に係る半導体レーザ素子2200は、拡散係数の小さいCがドーピングされたp型コンタクト層2213bが、半導体積層部15の最表層領域に形成されている。このため、実施の形態8のように、熱処理工程の後にZnをドーピングした不純物拡散層31を除去する不純物拡散層除去工程は行わなくても、拡散係数の小さいCがドーピングされたp型コンタクト層2213bと上部電極17とを接触させることができる。これによって、RTAによるコンタクト抵抗が高くなることを抑制することができる。
【0154】
図70は、実施の形態9に係る半導体レーザ素子の製造方法の一例を説明する図である。
図70に示すように、本実施の形態9に係る半導体積層構造は、実施の形態8に係る半導体レーザ素子2100の製造方法の一例の半導体積層構造形成工程において、p型コンタクト層を2層とし、下層のp型コンタクト層2213aにZn22をドーピングし、上層のp型コンタクト層2213bにC21をドーピングしている。一方で、不純物拡散層31は形成しない。その後、実施の形態8と同様に、促進膜形成工程によって、促進膜を形成する。さらに、抑制膜形成工程によって、抑制膜を形成する。そして、熱処理工程を行い混晶化によって非窓領域15aと窓領域15bとを形成する。その後、不純物拡散層除去工程は行わず、リッジ構造形成工程を行い、最終的な半導体レーザ素子2200となる。
【0155】
(実施例7)
実施例7として、本実施の形態9に係る半導体レーザ素子2200の構造を有する半導体レーザ素子を製造し、実施例6と同様に、電流、電圧、光出力を測定した。これを、比較例6に係る半導体レーザ素子の電力変換効率を比較したところ、本実施例7に係る半導体レーザ素子において、比較例6より電力変換効率が高いことを確認することができた。
【0156】
(実施の形態10)
つぎに、本発明の実施の形態10に係る半導体レーザ素子について説明する。
図71は、実施の形態10に係る半導体レーザ素子のy−z面における断面図である。本実施の形態10に係る半導体レーザ素子2300は、実施の形態8に係る半導体レーザ素子2100から、窓領域15bのp型コンタクト層(p型コンタクト層313)が除去された構造である。
【0157】
図72〜
図77は、実施の形態10に係る半導体レーザ素子の製造方法の一例を説明する図である。はじめに、実施の形態8における半導体積層構造形成工程と同様に、基板5上にp型クラッド層12までを形成し、さらに、C21をドーピングしたp型コンタクト層2313を形成する。つぎに、
図72に示すように、Zn22をドーピングした不純物拡散層31を形成する。ここで、実施の形態1に係る半導体レーザ素子100の製造方法と異なり、非窓領域15aに対応する領域に抑制膜33を形成する。そして、
図73に示すように、抑制膜33をマスクとして、エッチングによって窓領域15bに対応する領域の不純物拡散層31を除去する。これによって、第1不純物であるZn22を、窓領域15bよりも非窓領域15aに多く含有させている。その後、
図74に示すように、促進膜32を形成する。つぎに、
図75に示すように、RTAによって、活性層10が混晶化された窓領域15bと、活性層の混晶化が抑制された非窓領域15aとを形成する。つぎに、
図76に示すように、促進膜32と抑制膜33とを除去する。さらに、
図77に示すように、エッチングにより窓領域15bのp型コンタクト層313と、非窓領域15aの不純物拡散層31とを除去する。そして、実施の形態8と同様に、リッジ構造形成工程等を行い、最終的な半導体レーザ素子2300となる。
【0158】
ここで、本実施の形態10に係る半導体レーザ素子2300は、RTAの前に窓領域15bに対応する領域の不純物拡散層31を除去することで、第1不純物であるZn22を、窓領域15bのp型半導体層領域14よりも非窓領域15aのp型半導体層領域14に多く含有させている。また、ZnはCとともにドーピングされることによって、混晶化を抑制する抑制種として機能する。これによって、p型半導体層領域14におけるZnの含有量が多い非窓領域15aでは混晶化が抑制され、p型半導体層領域14におけるZnの含有量が少ない窓領域15bでは混晶化が抑制されない。したがって、非窓領域15aと窓領域15bとのバンドギャップエネルギーの差が大きくなり、端面によるレーザ光吸収が抑制され、CODの発生が抑制される。
【0159】
さらに、本実施の形態10に係る半導体レーザ素子2300は、RTA後に窓領域15bのp型コンタクト層2313と、非窓領域15aの不純物拡散層31とを除去している。これによって、拡散係数の大きいZnがドーピングされた不純物拡散層31を除去し、拡散係数の小さいCがドーピングされたp型コンタクト層2313を上部電極17と接触させている。その結果、RTAによりコンタクト抵抗が高くなることを抑制することができる。また、抑制種である第1不純物の拡散係数が、第2不純物の拡散係数より大きいことで、非窓領域15aにおける混晶化の抑制と、コンタクト抵抗の低減とを同時に実現できるので、より好ましい。また、窓領域15bの表面は、p型コンタクト層2313aとしてもよいが、AlGaAsから成る抵抗の高いp型クラッド層12とすることで、非窓領域15aへの電流注入効果を更に高めることができるのでより好ましい。また、非窓領域の最表層領域における不純物の含有量の総和が、窓領域の最表層領域における不純物のドーピング量よりも多くなっていることで、電流注入効果を更に高めることができるのでより好ましい。
【0160】
非窓領域15aと窓領域15bの最表層領域における不純物濃度の関係を整理すると、RTA前は非窓領域15aの最表層領域における不純物濃度が、窓領域15bの最表層領域における不純物濃度より小さいが、RTA後は窓領域15bのp型コンタクト層2313と、非窓領域15aの不純物拡散層31とを除去することによって、非窓領域15aの最表層領域における不純物濃度が窓領域15bの最表層領域における不純物濃度より大きくなる。
【0161】
(実施例8)
実施例8として、本実施の形態10に係る半導体レーザ素子2300の構造を有する半導体レーザ素子を製造し、実施例6と同様に、電流、電圧、光出力を測定した。これを、比較例に係る半導体レーザ素子の電力変換効率を比較したところ、本実施例8に係る半導体レーザ素子において、比較例より電力変換効率が高いことを確認することができた。
【0162】
(実施の形態11)
つぎに、本発明の実施の形態11に係る半導体レーザ素子について説明する。
図78は、実施の形態11に係る半導体レーザ素子のy−z面における断面図である。本実施の形態11に係る半導体レーザ素子2400において、p型コンタクト層2413は積層方向には1層のみで形成されているが、p型コンタクト層2413には、CとZnとが両方ドーピングされている。
【0163】
図79は、実施の形態11に係る半導体レーザ素子の製造方法の一例を説明する図である。
図79に示すように、実施の形態11に係る半導体レーザ素子2400は、半導体積層構造形成工程において、p型コンタクト層2413にC21とZn22との、両方をドーピングする。また、不純物拡散層31は形成しない。その後、実施の形態8と同様に、促進膜形成工程〜リッジ構造形成工程の工程等を行い(ただし、不純物拡散層除去工程は行わない。)、最終的な半導体レーザ素子2400となる。
【0164】
ここで、実施の形態11に係る半導体レーザ素子2400のp型コンタクト層2413において、RTAによって、拡散係数の大きいZnは濃度が著しく減少するが、拡散係数の小さいCは濃度があまり減少しない。したがって、Znのみをドーピングしたp型コンタクト層が上部電極と接触する構造に比べ、コンタクト抵抗が高くなりにくい構造である。
【0165】
(実施例9)
本実施例9として、本実施の形態11に係る半導体レーザ素子2400の構造を有する半導体レーザ素子を製造し、実施例6と同様に、電流、電圧、光出力を測定した。これを、比較例に係る半導体レーザ素子の電力変換効率を比較したところ、本実施例6に係る半導体レーザ素子において、比較例より電力変換効率が高いことを確認することができた。
【0166】
以上の結果が示すように、本実施例に係る半導体レーザ素子は、RTAによるコンタクト抵抗の上昇を抑制することができ、発光効率の高い半導体レーザ素子を実現することができる。
【0167】
なお、上記実施の形態では、p型コンタクト層に半導体積層部の最表層領域が含まれるものとしたが、半導体積層部の最表層領域は、上部電極と接しコンタクト抵抗に影響する領域のことであって、最表層領域がp型クラッド層およびそれより下の層までを指す場合もある。
【0168】
また、上記実施の形態では、第1導電型がp型である場合、p型の第1不純物または第2不純物として、CおよびZnを例に説明したが、MgやBe等であってもよく、2以上の複数の不純物をドーピングしてもよい。ここで、拡散係数の大きさは、Zn>Be>Mg>Cの順番であるので、適宜最表層領域に含有される不純物を選択することができる。なお、上述したように、拡散係数は、例えば900℃においてZnが10
−8cm
2/s程度、Cは10
−15cm
2/s程度である。拡散係数は半導体の結晶の種類や構成原子によっても異なるが、拡散係数が大きい不純物として使用するものの拡散係数は、10
−6〜10
−10cm
2/sの範囲であることが好ましい。拡散係数が小さい不純物として使用するものの拡散係数は、10
−11〜10
−16cm
2/sの範囲であることが好ましい。また、拡散係数が小さい不純物と大きい不純物とでの拡散係数の差は、10
1cm
2/s以上であることが好ましい。
【0169】
また、第1導電型がn型である場合、n型の第1不純物または第2不純物として、Si、C、Ge、Sn、S、Se等であってもよく、2以上の複数の不純物をドーピングしてもよい。このとき、半導体積層部15の最表層領域において拡散係数の小さい不純物の含有量を多くすることによって、RTAによるコンタクト抵抗の上昇を抑制することができる。ここで、拡散係数の大きさは、Sn>Si、Ge、S>Se>Cの順番であるので、適宜最表層領域に含有される不純物を選択することができる。
【0170】
(実施の形態12)
図80Aは、本発明の実施の形態12に係る半導体素子の製造方法で製造することができる半導体素子である半導体レーザ素子のx−y面における断面図である。また、
図80Bは、実施の形態12に係る半導体素子の製造方法で製造することができる半導体素子のy−z面における断面図である。
図80Aに示すとおり、この半導体素子3100は、下部電極4を底面に形成した基板5と、基板5上に順次形成された、n型バッファ層6、n型クラッド層7、n型ガイド層8を有するn型半導体層領域9と、活性層10と、p型ガイド層11、p型クラッド層12、p型コンタクト層3013を有するp型半導体層領域14とからなる半導体積層部15とを備えている。また、p型コンタクト層3013は断面が台形であり、z軸方向に延伸したストライプ形状を有している。これによって半導体素子3100はリッジ構造となっている。また、半導体素子3100は、p型半導体層領域14上に形成された絶縁膜16と、絶縁膜16が形成されていないリッジ構造の台形の上底を介してp型コンタクト層3013に接触するp側電極である上部電極17とを備えている。
【0171】
p型コンタクト層3013は、例えば1.0×10
17〜5.0×10
19〜5×10
20cm
−3程度のCがドーピングされたGaAsからなるp型コンタクト層3013aと、例えば1.0×10
17〜5.0×10
19〜5×10
20cm
−3程度のZnがドーピングされたGaAsからなるp型コンタクト層3013bとからなる。ただし、CおよびZnは製造過程におけるRTAにより、p型半導体層領域14内に拡散されている。
【0172】
なお、本実施の形態12においてはCが促進種として機能し、Znが抑制種として機能する。
【0173】
半導体素子3100は、レーザ光が出射する端面が窓領域として混晶化されているため、窓領域のバンドギャップエネルギーが非窓領域のバンドギャップエネルギーより大きく、窓領域が発光波長に対して透明化され、レーザ光の吸収が抑制される。したがって、CODの発生が抑制された、信頼性の高い半導体レーザ素子となる。
【0174】
次に、本実施の形態12として、この半導体素子3100の製造方法について説明する。
図81は、半導体素子の製造方法のフロー図である。
図81に示すとおり、本実施の形態12に係る半導体素子3100の製造方法は、半導体積層構造形成工程(ステップS3101)と、第1熱処理準備工程(ステップS3102)と、第2熱処理準備工程(ステップ3103)と、熱処理工程(ステップS3104)と、リッジ構造形成工程(ステップS3105)とを含むものである。
【0175】
以下、各工程について説明する。なお、各工程において示した数値は例示であり、本実施の形態はこの数値に限定されるものではない。
(半導体積層構造形成工程)
まず、ステップS3101の半導体積層構造形成工程について説明する。この工程では、はじめに、
図82に示すとおり、MOCVD法により、基板5上にn型バッファ層6、n型クラッド層7、n型ガイド層8、活性層10、p型ガイド層11、p型クラッド層12、p型コンタクト層3013をエピタキシャル成長する。ここで、p型コンタクト層3013aには、C21がドーピングされており、p型コンタクト層3013bには、Zn22がドーピングされている。半導体積層構造25のうち、非窓領域15aとなる領域を第1領域25a、窓領域15bとなる領域を第2領域25bとする。これによって、活性層10を有する半導体積層構造25が形成される。
【0176】
(第1熱処理準備工程)
次に、ステップS3102の第1熱処理準備工程について説明する。この工程では、半導体積層構造25の一部をエッチングで除去することによって、原子空孔拡散を抑制する機能を有する第1不純物であるZn22の量を、第1領域25aよりも、第2領域25bの方が少ない状態とする。好ましくは、第2領域25bにおいて、Znを含むp型コンタクト層3013bを完全に除去する。これによって、後で行う熱処理の際に、半導体積層構造25のうち、非窓領域15aとなる第1領域25aよりも、窓領域15bとなる第2領域25bにおいて、活性層10が混晶化されやすい状態となる。
【0177】
まず、
図83に示すとおり、フォトリソグラフィ工程によって、半導体積層構造25の第1領域25aの上面に、フォトレジスト131を形成する。次に、
図84に示すとおり、エッチングによって第2領域25bのp型コンタクト層3013bを除去する。ここで、第1領域25aと第2領域25bとの境界は、
図84のようにy軸に対して傾斜を有する傾斜面Sが形成されていることが望ましい。この境界の傾斜面Sは、半導体積層構造25の積層方向であるy軸に対して、30度以上の傾きを有することがより好適である。30度以上の傾きとすることで、傾斜面Sに対して、平面に対するものと同等の膜質、膜厚の誘電体膜が形成可能となる。なお、エッチングレートを小さくするほど、y軸に対する傾斜を大きくすることができる。特に、エッチングレートを3nm/secよりも小さくすることで、第1領域25aと第2領域25bとの境界のy軸に対する傾きを30度以上とすることができる。
【0178】
その後、フォトレジスト131を除去する。このとき、混晶化を抑制するZn22は、第1領域25aよりも第2領域25bにおいて少ない状態となる。また、後述するように、第1領域25aよりも、第2領域25bの方が、熱処理によって活性層10が混晶化されやすい状態となる。
【0179】
(第2熱処理準備工程)
次に、ステップS3103の第2熱処理準備工程について説明する。この工程では、第1領域25aの最表面と第2領域25bの最表面とを、一様な媒質に接触させる。すなわち、
図85に示すとおり、一部がエッチングされた半導体積層構造25の最表面に、SiN絶縁膜からなる誘電体膜34を一様に形成する。ただし、第1領域の最表面および第2領域の最表面以外の領域は、必ずしも一様な媒質に接触している必要はない。なお、誘電体膜34の形成前に、表面付着物を除去するために硫酸等によって表面を洗浄しておくことが好ましい。
【0180】
(熱処理工程)
次に、ステップS3104の熱処理工程について説明する。この工程では、RTAによる短時間の熱処理を行う。RTAは、例えば、850℃で30秒間行う。ここで、RTAによる熱処理を行うと、誘電体膜34によってGa原子が吸収され、p型コンタクト層3013の表面上に原子空孔が発生する。この原子空孔が拡散種として拡散し、各半導体層、特に活性層10が混晶化される。
【0181】
本実施の形態12において、C21が促進種である第2不純物として機能し、Zn22が抑制種である第1不純物として機能する。このとき、第1領域25aにおいては、C21が活性層10の混晶化を促進するとともに、Zn22が活性層10の混晶化を抑制する。一方で、第2領域25bにおいては、C21が活性層10の混晶化を促進するが、Zn22による活性層10の混晶化が抑制される過程は生じない。したがって、Zn22によって活性層10の混晶化が抑制された第1領域25aと、Zn22を含まない第2領域25bとの活性層10の混晶度に差がつく。具体的には、第2領域25bの混晶度が第1領域25aの混晶度よりも大きくなる。その結果、第1領域25aから形成される非窓領域15aと第2領域25bから形成される窓領域15bとの活性層10のバンドギャップエネルギーに差をつけることができる。
【0182】
したがって、本実施の形態12に係る半導体素子の製造方法において、誘電体膜34は第1領域25aと第2領域25bとに一様に形成されているが、非窓領域15aに対し窓領域15bが透明化され、CODの発生を抑制した半導体レーザ素子を実現することができる。これによって、
図86に示すとおり、非窓領域15aと窓領域15bとが形成される。その後、誘電体膜34を除去する。
【0183】
ここで、非窓領域と窓領域とを形成する際に、誘電体膜等からなる抑制膜と促進膜と形成する方法を用いる場合は、組成の異なる2枚の膜を形成する必要がある。
【0184】
これに対して、本実施の形態12に係る半導体素子の製造方法においては、半導体積層構造25の第1領域25aと第2領域25bとに所定の差をつける。これによって、第1領域25aと第2領域25bとに対して形成する膜が、第1領域25aの最表面に接触する領域と第2領域25bの最表面に接触する領域とで組成が一様な誘電体膜34の1枚のみであっても、非窓領域15aと窓領域15bとを形成することができる。したがって、本実施の形態12に係る半導体素子の製造方法は、組成の異なる2枚の膜を形成する方法に比べ、製造工程にかかる手間を大幅に削減することを可能とした。
【0185】
また、平面的な半導体積層構造上に抑制膜と促進膜との2枚の膜を形成すると、抑制膜と促進膜との境界に段差が生じ、誘電体膜が連続でない破断部が形成される。その結果、破断部の直下では半導体積層構造の最表面が誘電体膜で覆われない領域が生じる場合がある。この状態で熱処理を行うと、半導体積層構造の破断部の直下の最表面に表面荒れが生じる。これによって、製造された半導体素子の性能が悪化する場合がある。
【0186】
本実施の形態12に係る半導体素子の製造方法においては、誘電体膜34を1枚のみ作製することで、半導体積層構造の表面を隙間無く覆うことができる連続的な膜を容易に形成することができる。したがって、熱処理を施しても、誘電体膜34で覆われていない、破断部直下の表面から半導体の組成元素が蒸発して表面荒れが生じるおそれが少ない。このように、実施の形態12に係る半導体素子の製造方法は、熱処理による表面荒れの発生を防止または抑制することができる。なお、第1領域25aと第2領域25bとの境界の斜面が緩やかでないと、誘電体膜34が1枚のみであっても、破断部が生じる場合がある。このため、この境界の傾斜は、半導体積層構造25の積層方向であるy軸に対して、30度以上の傾きを有することが好ましい。
【0187】
また、促進膜と抑制膜とを用いる場合は、たとえば半導体積層構造の最表面にまず促進膜を一様に形成し、第1領域の最表面の促進膜をフォトリソグラフィ工程およびエッチング工程によって除去し、その上に抑制膜を形成する。このとき、促進膜がエッチングにより完全に除去されずに残存する場合がある。この場合、残存した促進膜の上に抑制膜を形成すると、抑制膜は活性層の混晶化を抑制する効果を十分に発揮することができない。そのため、非窓領域と窓領域とのバンドギャップエネルギーに十分な差をつけることができず、CODの発生を抑制することができなくなる場合がある。
【0188】
これに対して、本実施の形態12に係る半導体素子の製造方法においては、熱処理の前に誘電体膜を除去する工程を含まないことができる。このため、不十分なエッチングによって、十分にCODの発生を抑制できないことが生じることを防止または抑制できる。
【0189】
(リッジ構造形成工程)
ステップS3105のリッジ構造形成工程については、実施の形態1の場合と同様の手順で行うことができる。さらに、絶縁膜16を形成し、開口部16aを形成する。
【0190】
その後、上部電極17と下部電極4とを形成し、基板5をへき開してそのへき開面に低反射率膜2と高反射率膜3とを形成し、さらに素子ごとにカッティングすることによって、半導体素子3100が完成する。
【0191】
以上説明したように、本実施の形態12に係る半導体素子3100の製造方法は、より簡易な工程で混晶度の異なる領域を形成することができる。
【0192】
(実施例10)
次に、本実施の形態12に係る製造方法による半導体素子3100の実施例10として、第2領域25bのp型コンタクト層3013bのエッチング量と、活性層10の混晶度との関係性を測定した。
図87は、実施例10における第2領域のp型コンタクト層のエッチング量とバンドギャップエネルギーのシフト量との関係を表す図である。第2領域25bのp型コンタクト層3013bをエッチングにより除去すると、第2領域25bに含まれる混晶化を抑制する機能を有する抑制種であるZn22の含有量が減少し、エッチングしない状態よりも活性層10が混晶化される。したがって、
図87に示すとおり、バンドギャップエネルギーのシフト量が大きくなる。なお、p型コンタクト層3013bにおけるZn22の含有量は、ドーピング濃度と層厚との積分によって求められる。
【0193】
一方で、非窓領域15aとなる第1領域25aは、エッチングされていないため、第2領域25bのp型コンタクト層3013bのエッチング量が大きくなるほど、非窓領域15aと窓領域15bとのバンドギャップエネルギーの差ΔEg1が大きくなる。特に、第2領域25bを120nmエッチングした場合、非窓領域15aと窓領域15bとのバンドギャップエネルギーの差ΔEg1は90meV以上となり、十分にCODの発生を抑制することができることが実証された。
【0194】
さらに、本実施の形態12に係る実施例10において、誘電体膜34に破断部が生じていないことを確認した。これは、実施例10においては破断部直下の表面荒れの問題が発生しないことを意味する。
図88は、実施の形態10に係る半導体積層構造の第1領域の最上面と第2領域の最上面との上に、一様に誘電体膜が形成されている様子を表す断面の走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Erectron Microscopy)写真である。
図88の傾斜は、高さ200nm、幅400nmであり、半導体積層構造25の積層方向であるy軸に対して、60度の傾きを有する。また、半導体積層構造25の上に、誘電体膜34として、厚さ30nmのSiN膜が形成されている。
図88の断面SEM写真から、誘電体膜34が破断部を有さず、一様に形成されていることを確認できる。このように、本実施の形態10に係る半導体素子の製造方法は、誘電体膜34に破断部がないことによって、表面荒れが生じないことが実証できた。
【0195】
(変形例1)
次に、本実施の形態12の変形例1に係る半導体素子の製造方法について説明する。
【0196】
変形例1に係る製造方法による半導体素子3200は、
図89に示すとおり、熱処理後にZn22が減少したp型コンタクト層3213bをエッチングによって除去した構造である。本変形例1に係る半導体素子3200の製造方法は、熱処理工程まで実施の形態12と同一の工程である。その後、
図90に示すとおり、実施の形態12に係る半導体素子3100の製造方法のリッジ構造形成工程と同様に、誘電体膜34を除去した後、さらにエッチングによって、p型コンタクト層3213bを除去する。その後の工程は実施の形態12に係る半導体素子3100の製造方法と同一である。これによって、拡散係数の小さいC21がドーピングされたp型コンタクト層3213aが上部電極17と接触し、最終的な半導体素子3200となる。
【0197】
(変形例2)
次に、本実施の形態12の変形例2に係る半導体素子の製造方法について説明する。はじめに、本変形例2に係る半導体素子の製造方法で製造することができる半導体素子について説明する。
図91は、変形例2に係る製造方法による半導体素子のy−z面における断面図である。
図91に示すとおり、本変形例2に係る製造方法による半導体素子3300は、実施の形態12に係る半導体素子3100と異なり、p型コンタクト層がZn22をドーピングされたp型コンタクト層3313の1層からなる構造である。このように、p型コンタクト層3313が1層であっても、第1領域25aと第2領域25bとにおける抑制種として機能するZn22の含有量を変えることによって、1枚の誘電体膜34で混晶度の異なる領域を形成することができる。
【0198】
次に、本変形例2に係る半導体素子3300の製造方法について説明する。
図92および
図93は、変形例2に係る半導体素子の製造方法を説明する図である。
図93に示すとおり、本変形例2に係る半導体素子3300の製造方法は、半導体積層構造として、p型クラッド層12の上にZn22をドーピングしたp型コンタクト層3313の1層のみが形成される。そして、実施の形態12と同様にフォトレジスト工程およびエッチング工程により、第2領域25bのp型コンタクト層3313を除去する。さらに、その上にSiNxからなる誘電体膜34を一様に形成し、熱処理することによって、
図93に示すとおり、混晶度の異なる非窓領域15aと窓領域15bとを形成し、その後、実施の形態12と同様に、リッジ構造形成工程を行い、最終的な半導体素子3300となる。
【0199】
(変形例3)
次に、本実施の形態12の変形例3に係る半導体素子の製造方法について説明する。はじめに、本変形例3に係る半導体素子の製造方法で製造することができる半導体素子について説明する。
図94は、変形例3に係る製造方法による半導体素子のy−z面における断面図である。
図94に示すとおり、本変形例3に係る半導体素子3400は、実施の形態12に係る半導体素子3100と同様に、p型コンタクト層3413が2層からなる構造である。しかしながら、本変形例3に係る半導体素子3400は、実施の形態12に係る半導体素子3100と異なり、p型コンタクト層3413aにはZn22がドーピングされており、p型コンタクト層3413bにはC21がドーピングされている。さらに、窓領域15bのp型コンタクト層3013bがエッチングされた実施の形態12と異なり、非窓領域15aのp型コンタクト層3413bが、エッチングにより除去されている。
【0200】
ここで、CODの発生を抑制するためには、非窓領域15aの活性層10と窓領域15bの活性層10との混晶度に差をつけ、非窓領域15aのバンドギャップエネルギーより窓領域15bのバンドギャップエネルギーを大きくすればよい。したがって、原子空孔拡散を抑制する機能を有する第1不純物であるZn22の量を第1領域25aより第2領域25bにおいて少なくする工程、または、原子空孔拡散を促進する機能を有する第2不純物であるC21の量を第2領域25bより第1領域25aにおいて少なくする工程を含み、その後熱処理を行えばよい。このうち、実施の形態12は原子空孔拡散を抑制する機能を有する第1不純物であるZn22の量を第1領域25aより第2領域25bにおいて少なくする工程を含むが、本変形例3は原子空孔拡散を促進する機能を有する第2不純物であるC21の量を第2領域25bより第1領域25aにおいて少なくする工程を含む。これによって、本変形例3においても、1枚の誘電体膜34で混晶度の異なる領域を形成することができる。
【0201】
次に、本変形例3に係る半導体素子3400の製造方法について説明する。
図95〜
図97は、変形例3に係る半導体素子の製造方法を説明する図である。
図95に示すとおり、本変形例3に係る半導体素子3400の製造方法のp型コンタクト層3413は、Zn22がドーピングされたp型コンタクト層3413aと、C21がドーピングされたp型コンタクト層3413bとからなる。次に、
図96に示すとおり、フォトリソグラフィ工程によって、半導体積層構造25の第2領域25bの上面に、フォトレジスト131を形成する。そして、エッチングによって、第1領域25aのp型コンタクト層3413bを除去し、その上に誘電体膜34を一様に形成し、
図97の状態とする。この状態で熱処理を行うと、促進種であるC21を含むp型コンタクト層3413bを有する第2領域25bにおいて、活性層10の混晶化が促進される。これにより、窓領域15bのバンドギャップエネルギーは、p型コンタクト層3413bを除去された非窓領域15aのバンドギャップエネルギーより大きくなる。したがって、1枚の誘電体膜34によって、混晶度の異なる非窓領域15aと窓領域15bとが形成され、その後、実施の形態12と同様に、リッジ構造形成工程等を行い、最終的な半導体素子3400となる。
【0202】
(変形例4)
次に、本実施の形態12の変形例4に係る半導体素子の製造方法について説明する。はじめに、本変形例4に係る半導体素子の製造方法で製造することができる半導体素子について説明する。
図98は、変形例4に係る製造方法による半導体素子のy−z面における断面図である。
図98に示すとおり、本変形例4に係る半導体素子3500は、実施の形態12に係る半導体素子3100と異なり、p型コンタクト層3513は、非窓領域15aにZn22がドーピングされたp型コンタクト層3513aが形成され、窓領域15bにC21がドーピングされたp型コンタクト層3513bが形成されている。これによって、非窓領域15aはZn22によって活性層10の混晶化が抑制され、窓領域15bにC21によって活性層10の混晶化が促進されるため、実施の形態12と変形例3とを合わせた効果が期待できる。
【0203】
次に、本変形例4に係る半導体素子3500の製造方法について説明する。
図99は、変形例4に係る半導体素子の製造方法を説明する図である。本変形例4に係る半導体素子3500の製造方法は、はじめに、Zn22がドーピングされたp型コンタクト層3513aを形成し、フォトグラフィ工程およびエッチング工程によって、第2領域25bのp型コンタクト層3513aを除去する。つぎに、第2領域25bにC21がドーピングされたp型コンタクト層3513bを選択的に再成長させる。そして、その上に誘電体膜34を一様に形成し、
図99の状態とする。この状態で実施の形態12と同様に、熱処理工程およびリッジ構造形成工程等を行い、最終的な半導体素子3500となる。
【0204】
(変形例5)
次に、本実施の形態12の変形例5に係る半導体素子の製造方法について説明する。はじめに、本変形例5に係る半導体素子の製造方法で製造することができる半導体素子について説明する。
図100は、変形例5に係る半導体素子のy−z面における断面図である。
図100に示すとおり、本変形例5に係る半導体素子3600は、実施の形態12に係る半導体素子3100と同様に、p型コンタクト層3613は、C21がドーピングされたp型コンタクト層3613aと、Zn22がドーピングされたp型コンタクト層3613bとからなる。
【0205】
次に、本変形例5に係る半導体素子3600の製造方法について説明する。
図101は、変形例5に係る半導体素子の製造方法の一例を説明する図である。本変形例5に係る半導体素子3600の製造方法は、p型コンタクト層3613として、不純物をドーピングしていない状態のp型コンタクト層3613aおよびp型コンタクト層3613bを積層させる。次に、イオン注入によって、p型コンタクト層3613aにC21を、p型コンタクト層3613bにZn22をドーピングする。このとき、抑制種であるZn22は、第1領域25aに多く含まれるように選択的にドーピングし、促進種であるC21は、第2領域25bに多く含まれるように選択的にドーピングする。そして、その上に誘電体膜34を一様に形成し、
図101の状態とする。この状態で実施の形態12と同様に、熱処理工程およびリッジ構造形成工程等を行い、最終的な半導体素子3600となる。なお、イオン注入は同一の層にC21およびZn22の2種類をドーピングしてもよい。
【0206】
なお、本実施の形態12において、不純物を含有する半導体層をエッチング等によって選択的に除去すること、所望の不純物を含む不純物含有層を選択的に再成長させること、選択的にイオン注入することによって、非窓領域15aと窓領域15bとの混晶度に差をつけた。しかしながら、本発明の実施の形態はこれに限らず、半導体積層構造25の上に、抑制種または促進種の元素の単体、または、抑制種または促進種を含有する化合物を、選択的に堆積し、熱処理で拡散させること等によって、非窓領域15aと窓領域15bとの混晶度に差をつけることもできる。
【0207】
(実施の形態13)
次に、本実施の形態13に係る半導体素子の製造方法について説明する。はじめに、本発明の実施の形態13に係る製造方法で製造することができる半導体素子について説明する。
図102に示すように、本実施の形態13に係る製造方法で製造することができる半導体素子3700は、p型コンタクト層3713を除いて、実施の形態12に係る半導体素子3100と同一の構造である。p型コンタクト層3713は、半導体素子3100と同様に、C21をドーピングされたp型コンタクト層3713aとZn22をドーピングされたp型コンタクト層3713bとからなるが、半導体素子3100と異なり、窓領域15bのp型コンタクト層3713bはエッチングにより除去されていない。さらに、窓領域15bのp型コンタクト層3713bの最表面は、非窓領域15aのp型コンタクト層3713bの最表面より、表面粗さが大きくされている。なお、この半導体素子3700の動作は、半導体素子3100と同様であり、CODの発生が抑制された半導体レーザ素子として動作する。
【0208】
次に、この半導体素子3700の製造方法の一例について説明する。本実施の形態13に係る半導体素子3700の製造方法は、実施の形態12と同様に、
図81に示す半導体積層構造形成工程と、第1熱処理準備工程と、第2熱処理準備工程と、熱処理工程と、リッジ構造形成工程とを含むものである。
【0209】
(半導体積層構造形成工程)
まず、半導体積層構造形成工程について説明する。この工程では、はじめに、
図103に示すとおり、MOCVD法により、活性層10を有する半導体積層構造25を形成する。半導体積層構造25は、半導体素子3100の半導体積層構造25と同一であり、p型コンタクト層3713aには、C21がドーピングされており、p型コンタクト層3713bには、Zn22がドーピングされている。半導体積層構造25のうち、非窓領域15aとなる領域を第1領域25a、窓領域15bとなる領域を第2領域25bとする。
【0210】
(第1熱処理準備工程)
次に、第1熱処理準備工程について説明する。この工程では、第1領域25aの最表面の表面粗さと、第2領域25bの最表面の表面粗さとに差をつける。誘電体膜34と接する半導体積層構造25の最表面の表面粗さが大きいと、熱処理の際に、半導体積層構造25の誘電体膜34との界面に原子空孔が生じ易くなり、活性層10の混晶化が促進される。
【0211】
まず、
図104に示すとおり、フォトリソグラフィ工程によって、半導体積層構造25の第1領域25aの上面に、フォトレジスト131を形成する。次に、表面粗さを大きくする表面処理として、RIE(Reactive Ion Etching)等のプラズマ処理によって、第2領域25bのp型コンタクト層3713bの最表面を選択的にエッチングする。RIEのエッチングガスは、例えばプラズマ化したO
2ガスであるO
2プラズマを用いることができる。これによって、第2領域25bのp型コンタクト層3713bの最表面の表面粗さを、例えば平均表面粗さとして3nm以上まで増大させる。一方、フォトレジスト131のマスクによって、エッチングを受けない第1領域25aのp型コンタクト層3713bの最表面の表面粗さは平均表面粗さとして1nm程度である。
【0212】
次に、フォトレジスト131を除去する。これによって、第1領域25aの最表面よりも第2領域25bの最表面の表面粗さを大きくすることができる。このとき、第1領域25aよりも第2領域25bの方が、熱処理によって活性層10が混晶化されやすい状態となる。このように第1領域25aの最表面よりも第2領域25bの最表面の表面粗さを大きくすることで、第2領域25bのp型コンタクト層3713bを大きくエッチングしなくてもバンドギャップエネルギー差を得ることができる。このとき第2領域25bのp型コンタクト層3713bは残っていてもよい。これにより、実施の形態12より第1領域25aと第2領域25bの境界の被覆性が向上する。なお、フォトレジストが付いた試料を導入できない装置を使用する場合や、フォトレジストが変質してしまう工程を行う場合に、フォトレジスト131に代えて誘電体膜をマスクとして使用することができる。また、表面粗さは、AFM(Atomic Force Microscope)、X線反射率測定法等によって測定することができる。
【0213】
(第2熱処理準備工程)
次に、第2熱処理準備工程について説明する。この工程では、
図105に示すとおり、半導体積層構造25の最表面に一様な誘電体膜34を形成する。ここで、表面付着物を除去するため、誘電体膜34を形成する前に、硫酸等によって表面を洗浄することが好ましい。ただし、第1領域25aおよび第2領域25bの表面粗さに影響を与えないように留意する。
【0214】
(熱処理工程)
次に、熱処理工程について説明する。この工程は、実施の形態12と同様に、例えば、850℃、30秒間のRTAを行う。RTAによって、表面粗さの大きい第2領域25bは活性層10の混晶化が促進され、窓領域15bとなり、表面粗さの小さい第1領域25aは非窓領域15aとなる。
【0215】
(リッジ構造形成工程)
リッジ構造形成工程については、実施の形態12の場合と同様の手順で行うことができる。さらに、絶縁膜16、開口部16a、下部電極4、上部電極17を形成する。その後、基板5をへき開してそのへき開面に低反射率膜2と高反射率膜3とを形成し、さらに素子ごとにカッティングすることによって、半導体素子3700が完成する。
【0216】
以上説明したように、本実施の形態13に係る半導体素子3700の製造方法は、より簡易な工程で混晶度の異なる非窓領域と窓領域とを形成することができる。
【0217】
(実施例11)
次に、本実施の形態13に係る製造方法による半導体素子3700の実施例11として、第2領域25bのp型コンタクト層3713bの表面粗さと、活性層10の混晶度との関係性を測定した。
図106は、実施例11における第2領域の平均表面粗さとバンドギャップエネルギーのシフト量との関係を表す図である。
図106が示すとおり、第2領域25bのp型コンタクト層3713bの最上面の表面粗さを増大させると、活性層10の混晶化が促進され、バンドギャップエネルギーのシフト量が大きくなることがわかる。
【0218】
一方で、非窓領域15aとなる第1領域25aは、エッチングされず表面粗さが変わらないため、第2領域25bのp型コンタクト層13bの表面粗さが大きくなるほど、第1領域25aの表面粗さと第2領域25bの表面粗さとの差が大きくなり、非窓領域15aと窓領域15bとのバンドギャップエネルギーの差ΔEg2は大きくなる。そして、第1領域25aの平均表面粗さが1.0nm、第2領域25bの平均表面粗さを3.0nm以上として、第1領域25aの平均表面粗さと第2領域25bの平均表面粗さとの差を2.0nm以上とした場合、非窓領域15aと窓領域15bとのバンドギャップエネルギーの差ΔEg2は60meV以上となり、十分にCODの発生を抑制することができる。特に、第2領域25bの平均表面粗さが4.5nmで、第1領域25aの平均表面粗さと第2領域25bの平均表面粗さとの差を3.5nmとした場合、ΔEg2は85meV以上となり、よりいっそうCODの発生を抑制することができることが実証された。
【0219】
なお、本実施の形態13における表面処理として、O
2プラズマを用いたRIEを例示したが、硫酸、過酸化水素、クエン酸等によるウェットエッチング、硫酸、塩酸、フッ酸、リン酸、酒石酸等による酸処理、アンモニア、現像液(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等)等によるアルカリ処理、アセトン、エタノール、メタノール、メチルエチルケトン、IPA(Isopropyl Alcohol)等による有機洗浄、研磨等による機械的な処理、レーザ加工、電子ビーム照射等による物理的な処理によって、第1領域と第2領域との表面粗さに差をつけることができる。さらに、本発明の実施の形態はこれに限らず、表面処理によって、第1領域と第2領域との表面粗さに差をつける方法であれば、1枚の誘電体膜で混晶度の異なる領域を形成することができる。
【0220】
(実施の形態14)
次に、本実施の形態14に係る半導体素子の製造方法について説明する。本発明の実施の形態14に係る製造方法によれば、実施の形態7と同様の構成の半導体素子を製造することができる。
【0221】
図107は、本実施の形態14に係る製造方法で製造することができる半導体素子のx−y面における断面図である。半導体素子3800は、基板3805と、基板3805上に順次形成された、例えばGaAsからなる下部クラッド層3807、コア層3810と、上部クラッド層3812とからなる半導体積層部3815とを備えている。さらに、半導体積層部3815は、混晶化抑制領域3815aと、混晶化促進領域3815bとからなる。
【0222】
半導体素子3800は、コア層3810と、コア層3810を挟みコア層より屈折率の小さい半導体からなる下部クラッド層3807および上部クラッド層3812とによって、y軸方向に光を閉じ込める構造である。さらに、半導体素子3800は、混晶化抑制領域3815aと、混晶化抑制領域3815aを挟み混晶化され混晶化抑制領域3815aより屈折率が小さい混晶化促進領域3815bとによって、x軸方向に光を閉じ込める構造である。したがって、この半導体素子3800は、光をz軸方向に導波させる半導体光導波路として機能する。
【0223】
次に、この半導体素子3800の製造方法の一例について説明する。本実施の形態14に係る半導体素子3800の製造方法は、実施の形態12と同様に、
図81に示す半導体積層構造形成工程と、第1熱処理準備工程と、第2熱処理準備工程と、熱処理工程とを含むものである。
【0224】
(半導体積層構造形成工程)
この工程では、はじめに、
図108に示すとおり、MOCVD法により、基板3805上に、下部クラッド層3807と、コア層3810と、上部クラッド層3812とを積層し、さらに、促進種をドーピングした促進種含有層3813aと、抑制種をドーピングした抑制種含有層3813bとを備える不純物含有層3813を積層し、半導体積層構造3825を形成する。
【0225】
(第1熱処理準備工程)
この工程では、半導体積層構造3825の第2領域3825bにおける抑制種含有層3813bをエッチングで除去することによって、抑制種が第1領域3825aよりも、第2領域3825bの方が少ない状態とする。これによって、後で行う熱処理の際に、半導体積層構造3825のうち、混晶化抑制領域3815aとなる第1領域3825aよりも、混晶化促進領域3815bとなる第2領域3825bにおいて、混晶化されやすい状態となる。
【0226】
まず、フォトリソグラフィ工程によって、半導体積層構造3825の第1領域3825aの上面に、フォトレジスト131を形成する。次に、
図109に示すとおり、エッチングによって第2領域3825bの抑制種含有層3813bを除去する。
【0227】
さらに、フォトレジスト131を除去する。これによって、抑制種が、第1領域3825aよりも第2領域3825bにおいて少ない状態となる。このとき、第1領域3825aよりも、第2領域3825bの方が、熱処理によって半導体積層部3815が混晶化されやすい状態となる。なお、第1領域3825aと第2領域3825bとの境界は、図のように傾斜面を有していてもよいが、傾斜面を有していなくてよい。なぜなら、不純物含有層3813は、後の行程にて除去されるため、半導体積層構造3825は熱処理による表面荒れの影響をほとんど受けないからである。
【0228】
(第2熱処理準備工程)
この工程では、
図110に示すとおり、半導体積層構造3825の最表面に一様な誘電体膜34を形成する。ここで、表面付着物を除去するため、誘電体膜34を形成する前に、硫酸等によって表面を洗浄することが好ましい。
【0229】
(熱処理工程)
この工程は、実施の形態12と同様に、例えば、850℃、30秒間のRTAを行う。ここで、RTAによる熱処理を行うと、誘電体膜34によってGa原子が吸収され、不純物含有層3813の表面上に原子空孔が発生する。この原子空孔が拡散種として拡散し、各半導体層が混晶化される。これによって、混晶度の異なる混晶化抑制領域3815aと混晶化促進領域3815bとが形成される(
図107参照)。その後、不純物含有層3813をエッチング等によって除去し、最終的な半導体素子3800が完成する。
【0230】
以上説明したように、本実施の形態14に係る製造方法は、より簡易な工程で混晶度の異なる領域を形成することができる。このように、本発明は実施の形態12および13のような半導体レーザ素子、他の実施の形態の半導体レーザー素子や半導体素子だけでなく、本実施の形態14のような半導体光導波路にも適用することができる。
【0231】
なお、本実施の形態14において、実施の形態7の場合と同様に、第2領域の外側に、さらに混晶度の異なる第3領域を形成し、x軸方向の光の閉じ込めを改善してもよい。また、例えば抑制種含有層の厚さを、x軸方向に連続的に変化させることによって、混晶度が連続的に変化する構成としてもよい。このような場合にも、上記の実施の形態と同様に、1枚の誘電体膜で混晶度の異なる領域を形成することができる。
【0232】
以上の結果が示すように、本発明の実施の形態に係る半導体素子の製造方法は、1枚の誘電体膜で混晶度の異なる領域を形成することができ、製造工程が簡易であるだけでなく、さらに、十分にCODの発生を抑制することができることが実証された。
【0233】
なお、上記実施の形態において、半導体素子として半導体レーザ素子および半導体光導波路を製造する場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、トランジスタやダイオードなどの電子デバイスとしての半導体素子の製造にも適用可能である。
【0234】
また、上記実施の形態においては、熱処理を行う際に、半導体積層構造の最表面を一様なSiNxである誘電体膜と接触させたが、本発明はこれに限らず、半導体積層構造の最表面に、誘電体膜として、SiOx、ZnOx、AlOx、AlNx、AlOxNy、TiOx、TiNx、TiOxNy、TaOx、HfOx等、金属膜として、Ti、Ta、Al、Au、Ni、Zn、Pt等、半導体膜として、Si、Ge、GaAs、AlGaAs、GaN、AlGaN、ZnSe等を一様に形成して熱処理を行うことによっても、半導体積層構造に混晶度に差をつけた領域を形成することができる。さらに、本発明は、一様な媒質は一様な膜に限らず、N
2、As、アルシン等のAs化合物、Ar等の一様な気体雰囲気に半導体積層構造の最表面を接触させ、その気体雰囲気中で熱処理することによっても、半導体積層構造に混晶度に差をつけた領域を形成することができる。
【0235】
また、実施の形態12および実施の形態14においては、不純物含有層の選択的なエッチングによって、第1領域よりも、第2領域において、熱処理によって活性層が混晶化されやすい状態とし、実施の形態13においては、半導体積層構造の誘電体膜と接する最表面の表面粗さに差をつけることによって、第1領域よりも、第2領域において、熱処理によって活性層が混晶化されやすい状態とした。しかしながら、実施の形態12および実施の形態14のような選択的なエッチングと実施の形態13のような表面粗さに差をつけることの両方を行うことによって、より半導体積層構造に混晶度に差をつけた領域を形成でき、たとえばCODの発生が抑制された半導体レーザ素子を実現することができる。
【0236】
また、上記実施の形態では、p型の不純物としてCおよびZnを例に説明したが、第1不純物は、MgやBe等であってもよく、第2不純物は、Si、Ge、Sn、S、Se等であってもよく、それぞれ2以上の複数の不純物をドーピングしてもよい。
【0237】
また、上記実施の形態においては、リッジ構造を有する半導体レーザ素子を例に説明したが、もちろん、リッジ構造を有する半導体レーザ素子に限らず、適用可能である。上述の実施の形態では、基板5上にn型バッファ層6、n型クラッド層7、n型ガイド層8、活性層10、p型ガイド層11、p型クラッド層12、p型コンタクト層13を形成した構造を説明してきたが、基板5上に順次、p型バッファ層、p型クラッド層、p型ガイド層、活性層、n型ガイド層、n型クラッド層、n型コンタクト層を形成した構造であってもよい。この場合には、n型のドーパントについて非窓領域15aと窓領域15bとのn型半導体層領域における不純物の含有量に差をつけてもよい。n型のドーパントとしてはSi、C、Ge、Sn、S、Se等を用いることができる。
また所望の発振波長に応じてInP等の他の材料の基板や、他の材料系から積層構造を構成することもできる。
【0238】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。