(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0025】
以下、第1実施形態に係る正極活物質を説明する。
【0026】
前記正極活物質は微細空隙を含み、前記空隙の大きさは10〜60nmの平均直径を有してもよく、具体的には20〜40nmの平均直径を有してもよい。前記空隙が前記範囲の大きさを有する場合、正極活物質の粒子強度が高くなるに伴って圧延後の割れを防止して、電解液との熱安定性を向上できる。ここで、平均直径は、例えば各空隙の球相当径(直径)の算術平均値である。空隙率は、正極活物質の総体積に対する空隙の総体積の割合である。
【0027】
前記正極活物質は0.5〜20%の空隙率を有してもよく、具体的には1〜5%の空隙率を有してもよい。前記空隙率が前記範囲を有する場合、正極活物質の粒子強度が高くなるに伴って圧延後の割れを防止して、電解液との熱安定性を向上できる。
【0028】
前記空隙の大きさ(平均直径)及び空隙率は、BET法によって測定した結果として得られる値である。
【0029】
前記空隙を有する正極活物質は、下記化学式(1)で表されるリチウム金属酸化物を使用してもよい。
【0030】
【化4】
(前記化学式(1)において、MはAl、Mg、Ti、Zrまたはこれらの組み合わせであり、0.95≦a≦1.2、0.45≦x≦0.65、0.15≦y≦0.25、0.15<z≦0.35、0≦k≦0.1、x+y+z+k=1である。)
【0031】
前記正極活物質は具体的に、下記化学式(2)または化学式(3)で表されるリチウム金属酸化物を使用してもよい。
【0032】
【化5】
(前記化学式(2)において、0.95≦a≦1.10、0.55≦x≦0.65、0.15≦y≦0.25、0.15<z≦0.25、x+y+z=1である。)
【0033】
【化6】
(前記化学式(3)において、0.95≦a≦1.10、0.45≦x≦0.55、0.15≦y≦0.25、0.25<z≦0.35、x+y+z=1である。)
【0034】
前記リチウム金属酸化物は、ニッケル(Ni)含有量が前記範囲に含まれる場合に、高容量のリチウム二次電池を実現することができる。
【0035】
前記リチウム金属酸化物は、リチウム原料物質と、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)等の金属原料物質を粉末状態で混合して熱処理する固相法によって製造されてもよい。
【0036】
また、前記リチウム金属酸化物は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)等の金属原料物質を溶媒中で混合し、これに水酸化アンモニウム(NH
4OH)または水酸化ナトリウム(NaOH)を添加して共沈器で連続的に混合して沈殿物を生成した後、これにリチウム原料物質を混合して熱処理する共沈法によって製造されてもよい。
【0037】
この時、共沈反応は、pH10〜12、反応時間8〜10時間、反応温度35〜40℃、反応速度600〜800rpmの条件で行われてもよい。このように、前記共沈反応は、微細空隙を生成するために多少低い反応速度で行われるが、反応速度が極めて低い場合には粒子が大きくなり過ぎるため、正極活物質組成に応じて反応速度範囲を調節しなければならない。前記の共沈反応の条件範囲で行われる場合、第1実施形態に係る特定範囲の空隙平均大きさ及び空隙率を有する正極活物質の製造が容易になり、これによって粒子強度が高い正極活物質が得られる。
【0038】
前記沈殿物と前記リチウム原料物質を1:1乃至1:1.1の重量比で混合してもよい。前記範囲で混合する場合、粒子強度が高い正極活物質が得られる。
【0039】
このような製造方法のうち、望ましくは前記共沈法によって製造する。共沈法によって製造する場合、前記金属原料物質と前記リチウム原料物質との混合がさらによく行われ、微細空隙の形成もさらに有利となる。
【0040】
前記リチウム原料物質としては、例えば、炭酸リチウム、酢酸リチウム、水酸化リチウムなどが挙げられ、前記金属原料物質としては、例えば、金属含有アセテート、金属含有ナイトレート、金属含有ヒドロキシド、金属含有オキシド、金属含有サルフェートなどが挙げられるが、これに限定されるのではない。前記金属原料物質のうち、望ましくは金属含有サルフェートを使用してもよい。前記溶媒としては、水、エタノール、メタノール、アセトンなどを使用してもよい。
【0041】
前記熱処理は、前記固相法及び前記共沈法後の熱処理時に全て800〜950℃、具体的には800〜900℃未満の温度範囲で行われてもよく、8〜10時間行われてもよい。このように、前記熱処理は、微細空隙を生成するために多少低い温度で行われるが、熱処理温度が極めて低い場合には未反応物が増加するため、正極活物質組成に応じて温度範囲を調節しなければならない。前記熱処理が前記の温度及び時間の範囲内で行われる場合には、正極活物質の粒型(grain form)が優れて表面が滑らかで、電解液との熱安定性を向上することができ、高容量及び優れた効率のリチウム二次電池が得られる。
【0042】
以下、前記正極活物質を含むリチウム二次電池について
図1を参照して説明する。
【0043】
図1は第1実施形態に係るリチウム二次電池を示した概略図である。
【0044】
図1を参照すると、第1実施形態に係るリチウム二次電池100は、正極114、正極114と対向する負極112、正極114と負極112との間に配置されているセパレータ113、そして正極114、負極112及びセパレータ113を含浸する電解液(図示せず)を含む電池セルと、前記電池セルを含む電池容器120及び前記電池容器120を密封する密封部材140を有する。
【0045】
前記正極114は、集電体及び前記集電体に形成される正極活物質層を含む。前記正極活物質層は、正極活物質、バインダー及び選択的に導電材を含む。
【0046】
前記集電体としてはAlを使用してもよいが、これに限定されるのではない。
【0047】
前記正極活物質としては、前述したような、空隙を含むリチウム金属酸化物を使用してもよい。前記リチウム金属酸化物を正極活物質として用いる場合、高容量のリチウム二次電池を実現することができ、正極活物質の粒子強度が高くなるに伴って圧延後の割れが防止されて、電解液との熱安定性を向上することができる。
【0048】
前記バインダーは、複数の正極活物質粒子を互いによく付着させ、また正極活物質を集電体によく付着させる役割を果たし、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエンラバー、アクリレート化されたスチレン−ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0049】
前記導電材は電極に導電性を与えるために使用されるものであり、構成される電池において、化学変化を起こさずに電子伝導性材料であれば何れのものを使用してもよく、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末、金属繊維などを使用してもよく、または、ポリフェニレン誘導体などの導電性材料を1種または1種以上を混合して使用してもよい。
【0050】
前記負極112は、負極集電体及び前記負極集電体上に形成されている負極活物質層を含む。
【0051】
前記負極集電体は銅箔を使用してもよい。
【0052】
前記負極活物質層は、負極活物質、バインダー及び選択的に導電材を含む。
【0053】
前記負極活物質は、リチウムイオンを可逆的に挿入/脱離することができる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムをドープ及び脱ドープすることができる物質、または遷移金属酸化物を含む。
【0054】
前記リチウムイオンを可逆的に挿入/脱離することができる物質は炭素物質であり、リチウム二次電池において一般的に使用する炭素系負極活物質は何れのものを用いてもよく、例えば、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらを共に使用してもよい。前記結晶質炭素の例としては、無定形、板状、鱗片状(flake)、球形または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛が挙げられ、前記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボン(soft carbon:低温焼成炭素)またはハードカーボン(hard carbon)、メゾフェースピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0055】
前記リチウム金属の合金としては、リチウム、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、Al及びSnからなる群より選択される金属の合金が用いられてもよい。
【0056】
前記リチウムをドープ及び脱ドープできる物質としては、Si、SiO
x(0<x<2)、Si−Y合金(前記Yはアルカリ金属、アルカリ土金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素及びこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Siではない)、Sn、SnO
2、Sn−Y(前記Yはアルカリ金属、アルカリ土金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素及びこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Snではない)などが挙げられ、またこれらの中の少なくとも一つとSiO
2を混合して使用してもよい。前記元素Yとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されてもよい。
【0057】
前記遷移金属酸化物としては、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などが挙げられる。
【0058】
前記バインダーは、複数の負極活物質粒子を互いによく付着させ、また負極活物質を電流集電体によく付着させる役割を果たし、その代表的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエンラバー、アクリレート化されたスチレン−ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどがあるが、これに限定されるのではない。
【0059】
前記導電材は電極に導電性を与えるために使用されるものであり、構成される電池において、化学変化を起こさずに電子伝導性材料であれば何れのものを使用してもよく、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質、ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー、またはこれらの混合物を含む導電性材料を使用してもよい。
【0060】
前記負極112及び前記正極114は各々活物質、導電材及びバインダーを溶媒中で混合して活物質組成物を製造し、この組成物を集電体に塗布して製造する。
【0061】
このような電極製造方法は当該分野に広く知られた内容であるため、本明細書においては詳細な説明は省略する。前記溶媒としてはN−メチルピロリドンなどを使用してもよいが、これに限定されるのではない。
【0062】
前記電解液は非水性有機溶媒とリチウム塩を含む。
【0063】
前記非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質役割を果たす。前記非水性有機溶媒としては、カーボネート系、エステル系、エテル系、ケトン系、アルコール系及び非陽子性溶媒から選択されてもよい。
【0064】
前記カーボネート系溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)、ジプロピルカーボネート(dipropyl carbonate、DPC)、メチルプロピルカーボネート(methylpropyl carbonate、MPC)、エチルプロピルカーボネート(ethylpropyl carbonate、EPC)、メチルエチルカーボネート(methylethyl carbonate、MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethyl carbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)、ブチレンカーボネート(butylene carbonate、BC)などが使用されてもよい。
【0065】
特に、鎖状カーボネート化合物及び環状カーボネート化合物を混合して使用する場合、誘電率を高めると共に粘性が小さい溶媒として製造できるため望ましい。この場合、環状カーボネート化合物及び鎖状カーボネート化合物は、約1:1乃至1:9の体積比で混合して使用してもよい。
【0066】
また、前記エステル系溶媒としては、例えば、n−メチルアセテート、n−エチルアセテート、n−プロピルアセテート、ジメチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、γ−ブチロラクトン、デカノライド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)等が使用されてもよい。前記エテル溶媒としては、例えば、ジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどが用いられてもよく、前記ケトン系溶媒としては、シクロヘキサノンなどが用いられてもよい。また、前記アルコール系溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどが用いられてもよい。
【0067】
前記非水性有機溶媒は単独または一つ以上を混合して用いてもよく、一つ以上混合して使用する場合の混合比は、目的とする電池性能に応じて適切に調節してもよい。
【0068】
前記非水性電解液は、エチレンカーボネート、ピロカーボネートなどの過充電防止剤のような添加剤をさらに含んでもよい。
【0069】
前記リチウム塩は有機溶媒に溶解されて、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極の間のリチウムイオンの移動を促進する役割を果たす物質である。
【0070】
前記リチウム塩の具体的な例としては、LiPF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAsF
6、LiN(SO
3C
2F
5)
2、LiC
4F
9SO
3、LiClO
4、LiAlO
2、LiAlCl
4、LiN(C
xF
2x+1SO
2)(C
yF
2y+1SO
2)(ここで、x及びyは自然数である)、LiCl、LiI、LiB(C
2O
4)
2(リチウムビスオキサレートボラート(lithiumbis(oxalato)borate、LiBOB)、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0071】
前記リチウム塩の濃度は、約0.1M〜約2.0Mの範囲で使った方がよい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解液が適切な電導度及び粘度を有するため、優れた電解液性能を有するようになって、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0072】
前記セパレータ113は単一膜または多層膜であってもよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニリデンフルオライドまたはこれらの組み合わせで生成されてもよい。
【0073】
前記リチウム二次電池は、4.3V、CC/CV mode及び0.1C rateにおける放電条件で170〜190mAh/gの放電容量を有し、具体的には175〜185mAh/gの放電容量を有してもよい。これによって熱安定性を改善すると同時に、高容量のリチウム二次電池を実現することができる。
【0074】
以下、本発明の具体的な実施例を提示する。但し、下記に記載された実施例は本発明を具体的に例示したり説明するためのものに過ぎず、本発明がこれに限定されるのではない。
【0075】
また、ここに記載されない内容は当業者であれば十分に技術的に推察できるため、その説明は省略する。
(正極活物質製造)
【実施例1】
【0076】
各々の濃度が約3MのNiSO
4、CoSO
4及びMnSO
4水溶液を各々6:2:2のモル比で混合し、これに約7MのNaOH水溶液及び約1MのNH
4OH水溶液を添加して共沈器で連続的に混合した。前記混合物をpH11で反応時間8時間、反応温度40℃、反応速度約800rpmで共沈させて(NiCoMn)OH
2前駆体を得た。前記前駆体を水洗して120℃のオーブンで乾燥させた後、前駆体とLi
2CO
3を約1:1.03の重量比になるように簡易混合器を利用して混合した。これから収得した混合物を焼成容器に入れて2℃/分の速度で860℃の温度で約10時間焼成して、リチウム金属酸化物LiNi
0.6Co
0.2Mn
0.2O
2を製造した。
【実施例2】
【0077】
各々の濃度が約3MのNiSO
4、CoSO
4及びMnSO
4水溶液を各々6:2:2のモル比で混合し、これに約7MのNaOH水溶液及び約1MのNH
4OH水溶液を添加して共沈器で連続的に混合した。前記混合物をpH11で反応時間8時間、反応温度40℃、反応速度約800rpmで共沈させて(NiCoMn)OH
2前駆体を得た。前記前駆体を水洗して120℃のオーブンで乾燥させた後、前駆体とLi
2CO
3を約1:1.03の重量比になるように簡易混合器を利用して混合した。これから収得した混合物を焼成容器に入れて2℃/分の速度で900℃の温度で約10時間焼成して、リチウム金属酸化物LiNi
0.6Co
0.2Mn
0.2O
2を製造した。
【実施例3】
【0078】
各々の濃度が約3MのNiSO
4、CoSO
4及びMnSO
4水溶液を各々5:2:3のモル比で混合し、これに約7MのNaOH水溶液及び約1MのNH
4OH水溶液を添加して共沈器で連続的に混合した。前記混合物をpH11で反応時間8時間、反応温度40℃、反応速度約800rpmで共沈させて(NiCoMn)OH
2前駆体を得た。前記前駆体を水洗して120℃のオーブンで乾燥させた後、前駆体とLi
2CO
3を約1:1.03の重量比になるように簡易混合器を利用して混合した。これから収得した混合物を焼成容器に入れて2℃/分の速度で860℃の温度で約10時間焼成して、リチウム金属酸化物LiNi
0.5Co
0.2Mn
0.3O
2を製造した。
【実施例4】
【0079】
各々の濃度が約3MのNiSO
4、CoSO
4及びMnSO
4水溶液を各々5:2:3のモル比で混合し、これに約7MのNaOH水溶液及び約1MのNH
4OH水溶液を添加して共沈器で連続的に混合した。前記混合物をpH11で反応時間8時間、反応温度40℃、反応速度約800rpmで共沈させて(NiCoMn)OH
2前駆体を得た。前記前駆体を水洗して120℃のオーブンで乾燥させた後、前駆体とLi
2CO
3を約1:1.03の重量比になるように簡易混合器を利用して混合した。これから収得した混合物を焼成容器に入れて2℃/分の速度で900℃の温度で約10時間焼成して、リチウム金属酸化物LiNi
0.5Co
0.2Mn
0.3O
2を製造した。
【0080】
[比較例1]
各々の濃度が約3MのNiSO
4、CoSO
4及びMnSO
4水溶液を各々5:2:3のモル比で混合し、ここに約7MのNaOH水溶液及び約1MのNH
4OH水溶液を添加して共沈器で連続的に混合した。前記混合物をpH11で反応時間8時間、反応温度40℃、反応速度約1000rpmで共沈させて(NiCoMn)OH
2前駆体を得た。前記前駆体を水洗して120℃のオーブンで乾燥させた後、前駆体とLi
2CO
3を約1:1.03の重量比になるように簡易混合器を利用して混合した。これから収得した混合物を焼成容器に入れて2℃/分の速度で970℃の温度で約15時間焼成して、リチウム金属酸化物LiNi
0.5Co
0.2Mn
0.3O
2を製造した。
【0081】
[比較例2]
各々の濃度が約3MのNiSO
4、CoSO
4及びMnSO
4水溶液を各々5:2:3のモル比で混合し、これに約7MのNaOH水溶液及び約1MのNH
4OH水溶液を添加して共沈器で連続的に混合した。前記混合物をpH11で反応時間8時間、反応温度40℃、反応速度約1000rpmで共沈させて(NiCoMn)OH
2前駆体を得た。前記前駆体を水洗して120℃のオーブンで乾燥させた後、前駆体とLi
2CO
3を約1:1.03の重量比になるように簡易混合器を利用して混合した。これから収得した混合物を焼成容器に入れて2℃/分の速度で1050℃の温度で約15時間焼成して、リチウム金属酸化物LiNi
0.5Co
0.2Mn
0.3O
2を製造した。
【0082】
[比較例3]
各々の濃度が約3MのNiSO
4、CoSO
4及びMnSO
4水溶液を各々5:2:3のモル比で混合し、ここに約7MのNaOH水溶液及び約1MのNH
4OH水溶液を添加して共沈器で連続的に混合した。前記混合物をpH11で反応時間8時間、反応温度40℃、反応速度約1000rpmで共沈させて(NiCoMn)OH
2前駆体を得た。前記前駆体を水洗して120℃のオーブンで乾燥させた後、前駆体とLi
2CO
3を約1:1.03の重量比になるように簡易混合器を利用して混合した。これから収得した混合物を焼成容器に入れて2℃/分の速度で750℃の温度で約15時間焼成して、リチウム金属酸化物LiNi
0.5Co
0.2Mn
0.3O
2を製造した。
【0083】
[比較例4]
各々の濃度が約3MのNiSO
4、CoSO
4及びMnSO
4水溶液を各々6:2:2のモル比で混合し、ここに約7MのNaOH水溶液及び約1MのNH
4OH水溶液を添加して共沈器で連続的に混合した。前記混合物をpH11で反応時間8時間、反応温度40℃、反応速度約1000rpmで共沈させて(NiCoMn)OH
2前駆体を得た。前記前駆体を水洗して120℃のオーブンで乾燥させた後、前駆体とLi
2CO
3を約1:1.03の重量比になるように簡易混合器を利用して混合した。これから収得した混合物を焼成容器に入れて2℃/分の速度で970℃の温度で約15時間焼成して、リチウム金属酸化物LiNi
0.6Co
0.2Mn
0.2O
2を製造した。
【0084】
[比較例5]
各々の濃度が約3MのNiSO
4、CoSO
4及びMnSO
4水溶液を各々6:2:2のモル比で混合し、ここに約7MのNaOH水溶液及び約1MのNH
4OH水溶液を添加して共沈器で連続的に混合した。前記混合物をpH11で反応時間8時間、反応温度40℃、反応速度約1000rpmで共沈させて(NiCoMn)OH
2前駆体を得た。前記前駆体を水洗して120℃のオーブンで乾燥させた後、前駆体とLi
2CO
3を約1:1.03の重量比になるように簡易混合器を利用して混合した。これから収得した混合物を焼成容器に入れて2℃/分の速度で750℃の温度で約15時間焼成して、リチウム金属酸化物LiNi
0.6Co
0.2Mn
0.2O
2を製造した。
【0085】
実験例1:正極活物質の空隙大きさ及び空隙率評価
前記実施例1〜4と比較例1〜5で各々製造された正極活物質の空隙の大きさ及び空隙率を測定するためにBET装置(Micrometrics社製、ASAP2020)を利用して、その結果を
図2及び下記表1に示した。
【0086】
前記BET装置の空隙大きさの測定範囲は1.7〜300nmである。
【0087】
図2はBET法によって測定した実施例1に係る正極活物質の空隙大きさ(直径)の分布を示したグラフである。即ち、
図2は、空隙の平均直径と、各空隙の量(空隙量)との対応関係を示すグラフである。
図2を参照すると、実施例1に係る正極活物質は20〜46nmの空隙平均直径を有し、2.53%の空隙率を有することが分かる。
【0088】
【表1】
【0089】
図3は水銀圧入法によって測定した実施例1に係る正極活物質の空隙大きさ(直径)の分布を示したグラフである。即ち、
図3は、空隙の平均直径と、各空隙の量(空隙量)との対応関係を示すグラフである。
図3を参照すると、実施例1に係る正極活物質は、BET法によって測定した
図2のグラフと類似する空隙大きさの分布を有することが確認できる。
【0090】
実験例2:正極活物質の集束イオンビーム(focus ion beam、FIB)分析写真評価
前記実施例1及び比較例1で各々製造された正極活物質の内部構造をFIB装置(FEI社製、DB235)を利用して分析して、その結果を
図4及び
図5に各々示した。
【0091】
図4は実施例1に係る正極活物質のFIB分析写真であり、
図5は比較例1に係る正極活物質のFIB分析写真である。
図4から第1実施形態に係る正極活物質の空隙の大きさ及び空隙率を断面的に確認できる。
図5を参照すると、正極活物質の空隙大きさと空隙率が大きいことが確認できる。
【0092】
実験例3:正極活物質の粒度分析グラフ評価
前記実施例1と比較例1で各々製造された正極活物質の圧延後の割れ防止効果を分析するために粒度分析器(Beckman coulter社製、LSI3 320)を利用して測定して、その結果を
図6及び
図7に示した。
【0093】
前記粒度分析器の測定条件は下記表2の通りである。
【0094】
【表2】
【0095】
図6は実施例1に係る正極活物質の粒度分析グラフであり、
図7は比較例1に係る正極活物質の粒度分析グラフである。即ち、
図6は、実施例1に係る正孔活物質の粒子サイズと、各正孔活物質粒子の存在比との対応関係を示すグラフである。
図7は、比較例1に係る正孔活物質の粒子サイズと、各正孔活物質粒子の存在比との対応関係を示すグラフである。ここで、粒子サイズは例えば平均直径である。平均直径の定義は空隙の平均直径と同様である。各正孔活物質の存在比は、例えば、全正孔活物質粒子数に対する、各正孔活物質の数の比である。
図6を参照すると、第1実施形態によって、特定範囲の空隙大きさ及び空隙率を有する正極活物質の場合、圧延後の粒度分布の変化が大きくないために割れ防止の効果が大きいことが確認でき、これにより第1実施形態に係る正極活物質は粒子強度が高いことが分かる。
図7から圧延後の粒度分布の変化が大きいことを確認できるが、これにより、第1実施形態に係る空隙大きさの範囲及び空隙率の範囲を全て逸脱した正極活物質の場合には粒子強度が低くて割れが発生し、このために電解液との反応によって安定性が低下する。
【0096】
実験例4:正極活物質のDSCグラフ評価
前記実施例1と比較例1で各々製造された正極活物質の熱安定性をDSC測定器(TA Instrument.Inc社製、DSC Q20)を利用して測定して、その結果を
図8に示した。
【0097】
図8は実施例1及び比較例1に係る各々の正極活物質のDSCグラフである。即ち、
図8は、温度と熱流量との対応関係を実施例1及び比較例1のそれぞれについて示すグラフである。
【0098】
図8を参照すると、第1実施形態によって、特定範囲の空隙大きさ及び空隙率を有する正極活物質の場合、前記空隙大きさ及び空隙率範囲を全て逸脱した正極活物質の場合と比較して、主なピークがより高い温度に移動することが確認でき、これから熱安定性がより優れていることが分かる。
【0099】
<リチウム二次電池製作>
前記実施例1〜4と比較例1〜5で各々製造された正極活物質96重量%、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)2重量%、及びアセチレンブラック2重量%を混合した後、N−メチル−2−ピロリドンに分散させてスラリーを製造した。次に、ガラス板(plate)上に前記スラリーを塗布して正極活物質層を製造した。次に、60μmの厚さのアルミニウム箔上に前記正極活物質層を塗布した後、135℃で3時間以上乾燥させた後に圧延して正極を製造した。
【0100】
前記正極の対極(counter electrode)としては金属リチウムを使ってコインタイプの半電池を製作した。この時の電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の混合体積比が3:7の混合溶液に1.3M濃度のLiPF
6が溶解されたものを使った。
【0101】
実験例5:リチウム二次電池の充放電特性評価
前記実施例1〜4と比較例1〜5で各々製造された正極活物質を利用して製作された各々のリチウム二次電池の充放電特性を次の方法によって測定し、その結果を下記の表3に示した。
【0102】
0.1C rateで充電した後、10分レスト(rest)後に0.1C rateで放電させる。その後、0.2Crate、0.5C rate、1.0C rateも同様な方法によって充放電させる。充電及び放電は各々4.3VにCC/CV modeで行って、下記結果は0.1C rateにおける初期容量を示したものである。効率(%)は、0.1C rateにおける初期充電容量に対する初期放電容量の百分率の値である。
【0103】
【表3】
【0104】
前記表3により、第1実施形態によって、特定範囲の空隙大きさ及び空隙率を有する正極活物質の場合、高容量のリチウム二次電池が実現可能で、電池効率が優れていることを確認できる。
【0105】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。