(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記磁束発生手段が、前記移動方向にN極とS極が並んで着磁され、かつ垂直方向にN極とS極が2極ずつ並んで着磁された積層構造の磁石からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の位置検出装置。
前記磁束発生手段が、前記移動方向にN極とS極が並んで着磁され、かつ前記移動方向と直交する水平方向にN極とS極が2極ずつ並んで着磁された連接構造の磁石からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の位置検出装置。
請求項1乃至4のいずれかに記載の位置検出装置と、該位置検出装置からの出力信号が入力される手ブレ補正レンズの位置検出機構、若しくはオートフォーカス機構、若しくはズーム機構を備えていることを特徴とするアクチュエータ。
前記手ブレ補正レンズの位置検出機構、若しくはオートフォーカス機構、若しくはズーム機構は、デジタルカメラ又は携帯電話の手ブレ補正レンズの位置検出機構、若しくはオートフォーカス機構、若しくはズーム機構として用いられることを特徴とする請求項5に記載のアクチュエータ。
【背景技術】
【0002】
近年、様々の位置検出装置がいろいろな機器に搭載されている。例えば、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ、携帯電話のカメラモジュールに用いられる手ブレ補正装置やズームやAF(オートフォーカス)のためのレンズ位置検出装置では、瞬時に高精度な位置検出を行う機能が求められていると同時に、機器全体の小型化や薄型化、軽量化が求められている。
【0003】
このような要求をみたすために、磁気センサを用いた位置検出装置が広く知られている。この種の位置検出装置は、基板上に磁気センサを設け、その磁気センサのほぼ真上に、基板と平行な平面内に移動可能な磁石を設け、この磁石の移動に伴う磁束変化を磁気センサで検出して、その出力に基づいて磁石に取り付けられたレンズなどの位置を検出するものである。
【0004】
図1は、従来の位置検出装置を説明するための具体的な構成図で、特許文献1に開示されているものである。この特許文献1のものは、2物体の相対位置を検出する位置検出装置に関するもので、位置検出装置20は、1つの磁石(磁力発生体)21と、互いに離間して配置される2つのホール素子(言い換えれば、1組のホール素子対(磁気センサ対))22a,22bとを備えている。磁石21は、角柱形状を有しており、その上面側および下面側がそれぞれN極およびS極に磁化されている。ホール素子対22a,22bは、装置本体などの固定側の物体(固定部材)に取り付けられ、磁石21は、固定部材に対して移動する移動側の物体(移動部材)に取り付けられている。そして、移動部材に取り付けられた磁石1は、固定部材に取り付けられたホール素子対22a,22bに対して図の矢印AR1方向(X方向)に移動可能である。位置検出装置20は、磁石21のホール素子対22a,22bに対する相対位置を検出する。
【0005】
図2は、従来の位置検出装置を搭載したアクチュエータを説明するための構成図で、特許文献2に開示されているものである。積層基板35には、レンズを駆動する積層コイルが一体に配され、積層基板35は、フレキシブルプリント基板34を介して、ホール素子31が配されている。また、対向ヨーク33は、ホール素子31に対向する部位に、プレス加工により段付加工された凹部33aが形成されている。
【0006】
積層基板35のコイルに電流が流されると、マグネット30による磁界とコイルに流れる電流との作用で、電磁力が発生する。具体的には、マグネット30に対向配置されたコイルに流れる電流を制御することにより、レンズを光軸に対してほぼ直交するX方向及びY方向の2方向に移動させることができる。対向ヨーク33を段付加工して、ホール素子31に対向する部位に凹部33aを形成することにより、ホール素子31の周辺における積層基板35と対向ヨーク33との隙間を部分的に大きくすることができる。これにより、マグネット30と対向ヨーク33との隙間を小さくできるので、コイルの電磁力を大きくすることができるとともに、ホール素子31と対向ヨーク33との隙間を十分に確保することができる。この場合にも、ホール素子31とマグネット30とは対向ヨーク33に対して縦配列に配置されている。なお、符号32はバックヨークを示している。
【0007】
図3は、従来のレンズユニットの取り付けられるアクチュエータを説明するための構成図で、この種のアクチュエータには、駆動用磁石と磁気センサを備えた位置検出装置が設けられている。このアクチュエータ40は、実装基板41上に移動可能に配置されたレンズ46を保持したレンズバレル45と、このレンズバレル45に取り付けられたX軸駆動用磁石42Xと、実装基板41上に設けられ、X軸駆動用磁石42Xのほぼ真下に配置されたX軸駆動用コイル44X及びX軸用磁気センサ43Xとを備えている。また、レンズバレル45に取り付けられたY軸駆動用磁石42Yと、実装基板41上に設けられ、Y軸駆動用磁石42Yの真下に配置されたY軸駆動用コイル44Y及びY軸駆動用磁気センサ43Yとを備えている。
【0008】
このような構成により、レンズバレル45の移動すべき位置を指令する信号及びX軸用及びY軸用磁気センサ43X,43Yによって検出された位置信号に基づいて、X軸及びY軸駆動用コイル44X,44Yに流す駆動電流を制御している。この場合のX軸用及びY軸用磁気センサ43X,43Yは、X軸及びY軸駆動用磁石42X,42Yのほぼ真下で実装基板41に対して縦配列に配置されている。
【0009】
図4は、従来の位置検出装置を搭載したアクチュエータを説明するための構成図である。マグネット120には、肉厚部120aと肉薄部120bとが形成されている。肉厚部120aにアクチュエータのコイル(不図示)を対向させ、肉薄部120bに位置検出用のホール素子121を対向させる。ホール素子121は、フレキシブルプリント基板124を介して積層基板119の表面から突出して配置されているため、ホール素子121の一部が肉薄部120bによって形成された凹部内に配置される。よって、ヨーク125を小型及び薄型化することができる。また、マグネット120とコイルとの間隔及びマグネット120とホール素子121との間隔が、それぞれ最適な間隔にすることができ、小型及び薄型化しても、アクチュエータとしての推力が充分に得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一般的に、アクチュエータとは、電気などのエネルギーを物理的な運動に変換する装置で、従来からカメラのレンズ駆動部に用いられるアクチュエータは、駆動用磁石と駆動用コイルを用いるリニアモータが主流であった。駆動用磁石と駆動用コイルは、可能な限り近づけたほうが、高いトルクを得られるため、近づけることにより、駆動用磁石と駆動用コイルは小さくすることが可能であり、さらなる装置の小型化、薄型化、軽量化を図ることが出来る。しかしながら、
図1及び
図3に示した従来の位置検出装置は、磁気センサが、磁石のほぼ真下に配置されているため、磁気センサの厚み分だけ余計に基板と磁石とのギャップを必要とし、基板と磁石とのギャップを小さくしてさらなる装置の小型化、薄型化、軽量化を図ることができなかった。また、
図2及び
図4に示した従来の位置検出装置は、高さを低くする工夫がなされているが、基板もしくは磁石に加工が必要であり、汎用的な基板や磁石を使用することができなかった。さらに、
図4に示した従来の位置検出装置においては、マグネット120に肉薄部120bを形成するためには、短冊状に加工されたマグネットを、更に機械加工で一部を削り取る必要がある。このような工法でマグネット120を作成すると、マグネット120の一部を削り取る工程が必要であるため、加工コストが増加してしまうという問題点がある。また、マグネット120において削り取る部分が生じるために、同一体積のマグネットを形成するためにより多くの磁性材料の量が必要となり、相対的に磁石の材料コストが高くなってしまうという問題点がある。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、基板に対する磁気センサと磁石の配置構成の簡素化を図るとともに、検出精度を落とすことなく、汎用的な基板および磁石を用いた場合においても、基板と磁石とのギャップを小さくして装置の小型化、薄型化、軽量化を図るようにした位置検出装置及びそれを用いたアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、
本発明の一態様は、基板上に少なくとも1個以上の磁気センサが配置され、該磁気センサの感磁方向が前記基板に対して垂直とされた磁束検出手段と、前記基板に平行な平面内
で任意の一方向の移動方向に移動可能で
あり、
かつ、前記基板からの最近接部の距離が、前記磁気センサの
前記基板からの最遠隔部の距離よりも前記基板の近くに支持されるように前記磁束検出手段の近傍側部に配置され、
かつ、前記移動方向にN極とS極が並んで着磁された磁石からなる磁束発生手段と
、前記磁石に対向して前記基板上に配置されたコイルと、を備え、前記磁石を前記基板に投影した領域外に、前記磁気センサは配置されており、前記磁気センサを搭載した前記基板に対して、前記磁束発生手段を前記移動方向へ所定の距離だけ移動したときに、前記移動方向への移動距離に対応する前記磁気センサからの出力値を用いて位置検出を行うことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の他の態様は、前記最近接部の距離は、前記基板と垂直方向における、前記基板と前記磁石の下面との距離であり、前記最遠隔部の距離は、前記基板と垂直方向における、前記基板と前記磁石の上面との距離であることを特徴とする。
また、
本発明の他の態様は、
上記の発明において、前記磁束発生手段が、前記移動方向にN極とS極が並んで着磁され、かつ垂直方向にN極とS極が2極ずつ並んで着磁された積層構造の磁石からなることを特徴とする。
【0015】
また、
本発明の他の態様は、
上記の発明において、前記磁束発生手段が、前記移動方向にN極とS極が並んで着磁され、かつ前記移動方向と直交する水平方向にN極とS極が2極ずつ並んで着磁された連接構造の磁石からなることを特徴とする。
【0016】
また、
本発明の他の態様は、
上記の位置検出装置と、該位置検出装置からの出力信号が入力される手ブレ補正レンズの位置検出機構、若しくはオートフォーカス機構、若しくはズーム機構を備えていることを特徴とするアクチュエータである。
【0017】
また、
本発明の他の態様は、
上記の発明において、前記手ブレ補正レンズの位置検出機構、若しくはオートフォーカス機構、若しくはズーム機構は、デジタルカメラ又は携帯電話の手ブレ補正レンズの位置検出機構、若しくはオートフォーカス機構、若しくはズーム機構として用いられることを特徴とする。
【0018】
また、
本発明の他の態様は、
上記の発明において、前記磁石が、X軸駆動用磁石とY軸駆動用磁石とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基板には、穴や凹み等の特殊な加工を施す必要がなく、磁石が、基板に平行な平面内で、任意の一方向に移動可能で、基板からの最近接部の距離が、磁気センサの最遠隔部の距離よりも基板の近くに支持されるように磁気センサと同一面側に配置され、裏面との面が全て平行な6面体以外の特殊な形状に加工する必要もなく、移動方向にN極とS極が並んで着磁された磁石からなり、磁石を基板に対して投影した領域外に磁気センサが配置されるので、基板に対する磁気センサと磁石の配置構成の簡素化を図るとともに、検出精度を落とすことなく、基板と磁石とのギャップを小さくして装置の小型化、薄型化、軽量化を図るようにした位置検出装置及びそれを用いたアクチュエータを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】従来の位置検出装置を説明するための具体的な構成図で、(a)は断面図、(b)は上面図である。
【
図2】従来の位置検出装置を搭載したアクチュエータを説明するための構成図である。
【
図3】従来のレンズユニットの取り付けられるアクチュエータを説明するための構成図である。
【
図4】従来の位置検出装置を搭載したアクチュエータを説明するための構成図である。
【
図5】本発明の位置検出装置と対比するための説明図で、(a)は
図3におけるY軸用アクチュエータの構成図で、(b)は(a)のA−A’面断面図である。
【
図6】本発明の位置検出装置と対比するための側面図で、
図5における側面図である。
【
図7】本発明の位置検出装置と対比するための他の側面図である。
【
図8】本発明の位置検出装置と対比するためのさらに他の側面図である。
【
図9】本発明に係る位置検出装置を用いたアクチュエータを説明するための概略構成図で、Y軸用アクチュエータの側面図である。
【
図10】本発明に係る位置検出装置の実施例1を説明するための磁気センサと磁石の配置構成図で、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【
図11】
図10(a)乃至(c)における磁石のN極とS極の配列構造を説明するための斜視図である。
【
図12】従来及び本発明における、コイルと磁石との特に高さ関係における具体的な数値記載した図で、
図12(a)は
図6の具体的な数値を記載した構成図であり、
図12(b)は
図9の具体的な数値を記載した構成図である。
【
図13】
図12(a)、(b)の構成において、コイルに0.1mA印加した場合に、高さ方向におけるコイルの中央からの距離と、コイルから得られる磁束密度の関係をプロットしたグラフである。
【
図14】
図10における位置検出が不可能になる磁気センサと磁石の配置関係を説明するための配置構成図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【
図15】本発明に係る位置検出装置の実施例2を説明するための磁気センサと磁石の配置構成図で、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【
図16】
図15(a)乃至(c)における磁石のN極とS極の配列構造を説明するための斜視図である。
【
図17】本発明に係る位置検出装置の実施例3を説明するための磁気センサと磁石の配置構成図で、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【
図18】
図17(a)乃至(c)における磁石のN極とS極の配列構造を説明するための斜視図である。
【
図19】
図17における位置検出が不可能になる磁気センサと磁石の配置関係を説明するための配置構成図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【
図20】比較例1を示す説明図で、(a)は磁石サイズ(高さa、奥行きb、幅L)及び磁石と磁気センサとのギャップ(GAP)、磁石の移動方向を示す図で、(b)は磁石サイズなどの設定条件を示している。
【
図21】
図20(a),(b)における特性図で、(a)はストローク(磁石移動距離)に対する磁束密度の関係を示し、(b)はストロークに対する精度の関係を示す図である。
【
図22】本発明におけるシミュレーションを示す説明図で、(a)は磁石サイズ(高さa、奥行きb、幅L)及び磁石と磁気センサとのギャップ(GAP)、磁石の移動方向を示す図で、(b)は磁石サイズなどの設定条件を示している。
【
図23】
図22(a),(b)における特性図で、(a)はストローク(磁石移動距離)に対する磁束密度の関係を示し、(b)はストロークに対する精度の関係を示す図である。
【
図24】本発明に係る位置検出装置を用いたアクチュエータを説明するための具体的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
まず、本発明の各実施例を説明する前に、本発明と比較するために
図3において説明したY軸用アクチュエータにおける位置検出装置について説明する。
【0022】
図5(a),(b)は、本発明の位置検出装置と対比するための説明図で、
図5(a)は
図3におけるY軸用アクチュエータの構成図で、
図5(b)は
図5(a)のA−A’面断面図である。レンズバレル45に取り付けられたY軸駆動用磁石42Yと、実装基板41上に設けられ、Y軸駆動用磁石42Yの真下に配置されたY軸駆動用コイル44Y及びY軸用磁気センサ43Yとを備えている。
図5(a)から分かるように、Y軸用磁気センサ43Yは、Y軸駆動用磁石42Yのほぼ真下で実装基板41に対して縦配列に配置されている。
【0023】
図6は、本発明の位置検出装置と対比するための側面図で、
図5における側面図である。Y軸用磁気センサ43Yは、Y軸駆動用磁石42Yのほぼ真下で実装基板41に対して縦配列に配置されている。
【0024】
Y軸駆動用磁石42YとY軸駆動用コイル44Yとの関係は、トルクを上げるためには近づけたいが、Y軸用磁気センサ43Yがあるので近づけるのに制約がある。また、Y軸駆動用磁石42YとY軸用磁気センサ43Yの関係は、離れている方が、リニアリティが良くなるので離したいが、離れるとY軸駆動用磁石42YとY軸駆動用コイル44Yのトルクが弱くなるので制約がある。結果的に、トルク対リニアリティのトレードオフの関係で、Y軸駆動用磁石42Yの実装基板41に対向した面の逆の面と実装基板との距離(=高さ)がある程度必要となる。
【0025】
図7は、本発明の位置検出装置と対比するための他の側面図で、
図4に示した駆動用磁石と磁気センサの配置関係を示した図である。Y軸用磁気センサ43Yは、Y軸駆動用磁石42Yのほぼ真下で実装基板41に対して縦配列に配置されている。Y軸駆動用磁石42YとY軸駆動用コイル44Yを近づけ、さらにY軸駆動用磁石42Yと磁気センサ43Yとを離すためにY軸駆動用磁石42Yに切り欠きを設けている。駆動用磁石が汎用品では無いので作製するのに手間がかかるという問題がある。
【0026】
図8は、本発明の位置検出装置と対比するためのさらに他の側面図で、
図2に示した駆動用磁石と磁気センサの配置関係を示した図である。Y軸用磁気センサ43Yは、Y軸駆動用磁石42Yのほぼ真下で実装基板41に対して縦配列に配置されている。Y軸駆動用磁石42YとY軸駆動用コイル44Yを近づけ、さらにY軸駆動用磁石42Yと磁気センサ43Yを離すために、実装基板41に穴を空けて、その中に磁気センサ43Yを入れ込んでいる。この場合も実装基板41が汎用品では無いので作製するのに手間がかかるという問題がある。
【0027】
以下、図面を参照して本発明に係る各実施例について説明する。
図9は、本発明に係る位置検出装置を用いたアクチュエータを説明するための概略構成図で、Y軸用アクチュエータの側面図を示している。図中符号51は実装基板(以下単に基板という)、52は駆動用磁石(磁束発生手段;以下単に磁石という)、53は磁気センサ(磁束検出手段)、54は駆動用コイル(以下単にコイルという)を示している。また、符号Aは垂直方向における基板51と磁石52の下面との距離(ギャップ)を示し、基板51からの磁石52の最近接部との距離を示している。また、符号Bは垂直方向における基板51と磁気センサ53の上面との距離を示し、基板51からの磁気センサ53の最遠隔部との距離を示している。
【0028】
本発明のアクチュエータは、基板51と、この基板51上に設けられた磁気センサ53と、この磁気センサ53の近傍側部で、かつ基板51とにギャップを介して設けられた磁石52と、この磁石52のほぼ真下で基板51上に設けられたコイル54とから構成されている。基板51上に設けられた磁気センサ53は、基板51上のコイル54とその上に設けられた磁石52の近傍側部、つまり、横配列に配置されている。つまり、磁石52とコイル54とを近づけられるし、近づけた分トルクが上がるので、磁石52もしくはコイル54を小さく出来る。リニアリティは、磁気センサ53を磁石52から最適位置(
図9に向かって左右方向)に配置すればよい。
【0029】
したがって、基板に対する磁気センサと磁石の配置構成の簡素化を図るとともに、検出精度を落とすことなく、汎用的な基板および磁石を用いた場合においても、基板と磁石とのギャップを小さくして装置の小型化、薄型化、軽量化を図るようにした位置検出方法及び位置検出装置を用いたアクチュエータを実現することができる。
【実施例1】
【0030】
図10(a)乃至(c)は、本発明に係る位置検出装置の実施例1を説明するための磁気センサと磁石の配置構成図で、
図10(a)は上面図、
図10(b)は正面図、
図10(c)は側面図を示している。また、
図11は、
図10(a)乃至(c)における磁石のN極とS極の配列構造を説明するための斜視図である。なお、
図9と同じ機能を有する構成要素には同一の符号を付してある。また、N(S)の表記はN極の背後にS極が存在することを意味している。また、磁石内の矢印は着磁の方向を示し、磁石外の矢印は移動方向を示している。
【0031】
本発明の実施例1に係る位置検出装置は、
図9にも示したように、基板51と、この基板51上に設けられた磁気センサ53と、この磁気センサ53の近傍側部で、かつ基板51とにギャップを介して設けられた磁石52とから構成されている。
【0032】
磁気センサ53は、基板51上に少なくとも1個以上が配置され、磁気センサ53の感磁方向が基板51に対して垂直である。また、磁石52は、基板51に平行な平面内で、任意の一方向に移動可能で、基板51からの最近接部の距離Aが、磁気センサ53の最遠隔部Bの距離よりも基板51の近くに支持されるように磁気センサ53の近傍側部に配置され、移動方向にN極とS極が並んで着磁された磁石である。
【0033】
磁気センサ53を搭載した基板51に対して、磁石52を移動方向へ所定の距離だけ移動したときに、移動方向への移動距離に対応する磁気センサ53からの出力値を用いて位置検出を行う。
【0034】
また、本発明の位置検出方法は、磁気センサ53を搭載した基板51に対して、磁石52を移動方向へ所定の距離だけ移動したときに、移動方向への移動距離に対応する磁気センサ53からの出力値を用いて磁石52の位置検出を行うもので、磁気センサ53の感磁方向が基板51に対して垂直となるように、基板51上に少なくとも1個以上の磁気センサ53を配置し、基板51からの最近接部の距離が、磁気センサ53の最遠隔部の距離よりも基板51の近くに支持されるように、移動方向にN極とS極が並んで着磁された磁石52を、基板51に平行な平面内で、任意の一方向に移動可能に磁気センサ53の近傍側部に配置して、位置検出を行うものである。
【0035】
このように、本発明に係る位置検出装置は、磁石52が、基板51に平行な平面内で、任意の一方向に移動可能で、基板51からの最近接部Aの距離が、磁気センサ53の最遠隔部の距離Bよりも基板の近くに支持されるように磁気センサ53の近傍側部に配置され、つまり、磁気センサ53と磁石52とが基板51に対して横配列に配置されているので、基板に対する磁気センサと磁石の配置構成の簡素化を図るとともに、検出精度を落とすことなく、基板と磁石とのギャップを小さくして装置の小型化、薄型化、軽量化を図るようにした位置検出方法及び位置検出装置を実現することができる。
【0036】
なお、磁石52が、基板51からの最近接部の距離Aが、磁気センサ53の最遠隔部Bの距離よりも基板51の近くに支持されるように磁気センサ53の近傍側部に配置されていることにより、
図9におけるコイル54と磁石52を近づけることが可能であり、基板からの高さを低く出来るという効果がある。以下、
図12及び
図13で説明する。
【0037】
図12(a)は、
図6の具体的な数値を記載した構成図であり、
図12(b)は、
図9の具体的な数値を記載した構成図である。従来、磁気センサのリニアリティを向上させるために、磁石と磁気センサを離す必要があった。例えば、0.3mm程度であり、さらに磁気センサの厚さが0.38mmであるため、基板から磁石までの距離は0.68mmであった。しかしながら、磁石を基板に投影した領域内に磁気センサを配置しない本発明では、磁石とコイルを近づけることが可能であり、従来と同等のトルクを得られれば良いため、コイルを小さくすることが可能となる。
【0038】
図13には、
図12(a)と(b)の状態におけるコイルから得られる磁束密度を、コイル中央での高さ方向における距離毎に示してある。具体的には、
図12(a)のコイル厚さは0.3mmで、巻き数は30ターンとし、通電する電流を0.1mAとし、
図12(b)のコイル厚さは0.15mmで、巻き数は15ターンとし、通電する電流は同じ0.1mAとしている。
図12(a)の構成において、基板から0.68mm、つまりコイルから0.38mmにおける、コイルの中央からの磁束は1.151mTである。
図12(b)の構成において、1.151mT以上の磁束が得られる、コイルからの高さ方向の距離は、0.09mmである。従って、
図12(b)の構成において、基板から磁石までの距離は、0.24mmとなる。つまり、
図12(a)の構成よりも、
図12(b)の構成では、磁石は0.68mm−0.24mm=0.44mm基板に近づけることが可能となる。0.44mmというのは、全体の高さが4mm程度を求められている携帯電話のカメラモジュールにおいては、11%程度の低背化となり、有用な効果であることは言うまでもない。
【0039】
図14(a),(b)は、
図10における位置検出が不可能になる磁気センサと磁石の配置関係を説明するための配置構成図で、
図14(a)は正面図、
図14(b)は側面図である。図中符号53aは磁気センサ53の感磁部を示している。本実施例1においては、磁石52と磁気センサ53の高さ方向の位置関係に制約がある。つまり、磁石52の高さの中心と、磁気センサ53の磁場を感じる感磁面53aの高さが同じ場合には、ホール素子に印加される磁場において、垂直成分が無いため、磁石52の位置検出は出来ない。言い換えれば、磁石52の高さの中心と磁気センサ53の感磁面の高さが異なれば位置検出が可能となる。
【実施例2】
【0040】
図15(a)乃至(c)は、本発明に係る位置検出装置の実施例2を説明するための磁気センサと磁石の配置構成図で、
図15(a)は上面図、
図15(b)は正面図、
図15(c)は側面図を示している。また、
図16は、
図15(a)乃至(c)における磁石のN極とS極の配列構造を説明するための斜視図である。図中符号61は基板、62は磁石(磁束発生手段)、63は磁気センサ(磁束検出手段)を示している。なお、S(N)の表記はS極の背後にN極が存在することを意味しており、N(S)の表記はN極の背後にS極が存在することを意味している。
【0041】
本発明の実施例2に係る位置検出装置は、上述した実施例1と磁石のN極及びS極の配列構造を異にしており、その他の磁気センサなどの構成は同じである。つまり、磁石62は、移動方向にN極とS極が並んで着磁され、かつ垂直方向にN極とS極が2極ずつ並んで着磁された積層構造の磁石である。
【0042】
また、本発明の実施例2に係る位置検出方法は、磁石62が、移動方向にN極とS極が並んで着磁され、かつ垂直方向にN極とS極が2極ずつ並んで着磁された積層構造の磁石を用いる位置検出方法である。
【0043】
このように構成することにより、上述した実施例1と同様な効果を奏する。また、積層構造の磁石を用いたので、磁気センサおよびコイルに印加される磁束密度を、実施例1の略2倍にすることが可能であるという効果を奏する。
【実施例3】
【0044】
図17(a)乃至(c)は、本発明に係る位置検出装置の実施例3を説明するための磁気センサと磁石の配置構成図で、
図17(a)は上面図、
図17(b)は正面図、
図17(c)は側面図を示している。また、
図18は、
図17(a)乃至(c)における磁石のN極とS極の配列構造を説明するための斜視図である。図中符号71は基板、72は磁石(磁束発生手段)、73は磁気センサ(磁束検出手段)を示している。なお、S(N)の表記はS極の背後にN極が存在することを意味しており、N(S)の表記はN極の背後にS極が存在することを意味している。
【0045】
本発明の実施例3に係る位置検出装置は、上述した実施例1と磁石のN極及びS極の配列構造を異にしており、その他の磁気センサなどの構成は同じである。つまり、磁石72は、移動方向にN極とS極が並んで着磁され、かつ移動方向と直交する水平方向にN極とS極が2極ずつ並んで着磁された連接構造の磁石である。
【0046】
また、本発明の実施例3に係る位置検出方法は、磁石72が、移動方向にN極とS極が並んで着磁され、かつ移動方向と直交する水平方向にN極とS極が2極ずつ並んで着磁された連接構造の磁石を用いる位置検出方法である。
【0047】
このように構成することにより、上述した実施例1と同様な効果を奏する。また、連接構造の磁石を用いたので、磁気センサに印加される磁束密度を高くすることが可能であるという効果を奏する。
【0048】
図19(a),(b)は、
図17における位置検出が不可能になる磁気センサと磁石の配置関係を説明するための配置構成図で、
図19(a)は正面図、
図19(b)は側面図である。図中符号73aは磁気センサ73の感磁部を示している。本実施例3においては、磁石72と磁気センサ73の高さ方向の位置関係に制約がある。つまり、磁石72の高さの中心と、磁気センサ73の磁場を感じる感磁面73aの高さが同じ場合には、ホール素子に印加される磁場において、垂直成分が無いため、磁石72の位置検出は出来ない。言い換えれば、磁石72の高さの中心と磁気センサ73の感磁面の高さが異なれば位置検出が可能となる。
【0049】
次に、本発明の位置検出装置と従来の位置検出装置との比較、特に、基板に対する磁気センサと磁石の配置関係に基づく検出精度について説明する。
【0050】
図20(a),(b)は、比較例1を示す説明図で、
図20(a)は磁石サイズ(高さa、奥行きb、幅L)及び磁石下面と磁気センサ上面とのギャップ(GAP)、磁石の移動方向を示す図で、
図20(b)は磁石サイズなどの設定条件である。また、
図21(a),(b)は、
図20(a),(b)における特性図で、
図21(a)はストローク(磁石移動距離)に対する磁束密度の関係を示し、
図21(b)はストロークに対する精度の関係を示す図である。
【0051】
比較例1においては、磁石サイズaは1mm、bは1.4mm、Lは3.2mmで、ギャップが1.2mmなど、
図20(b)に示した設定条件で磁石を基板上で平行に移動させた場合の磁束密度及び精度は
図21(a),(b)のように示される。つまり、磁石のN極とS極の境目が磁気センサの真上に存在する状態から、磁石の移動方向に±0.5mm移動した場合、磁気センサに印加される磁束密度が
図21(a)のグラフである。両端点、すなわち+0.5mmと−0.5mmの2点間を結んだ直線を理想直線として、この理想直線と実際に印加される磁束密度の差を距離に換算したものが、21(b)のグラフである。理想直線からの乖離が最も大きな値が、最大位置検出誤差であるが、21(b)を見ると、最大位置検出誤差は0.92μmであることがわかる。また、基板から磁石上面までの距離は磁石の高さ(a)+GAP+磁気センサの厚さとなり、1.0+1.2+0.38=2.58mmとなる。
【0052】
図22(a),(b)は、本発明におけるシミュレーションを示す説明図で、
図22(a)は磁石サイズ(高さa、奥行きb、幅L)及び磁石下面と磁気センサ上面とのギャップ(GAP)、磁石の移動方向を示す図で、
図22(b)は磁石サイズなどの設定条件である。また、
図23(a),(b)は、
図22(a),(b)における特性図で、
図23(a)はストローク(磁石移動距離)に対する磁束密度の関係を示し、
図23(b)はストロークに対する精度の関係を示す図である。
【0053】
本発明においては、磁石aは1mm、bは2.5mm、Lは2mmで、ギャップが−0.38mmなど、
図22(b)に示した設定条件で磁石を基板上で平行に移動させた場合の磁束密度及び精度は
図23(a),(b)のように示される。つまり、磁石のN極とS極の境目が磁気センサの真横に存在する状態から、磁石の移動方向に±0.5mm移動した場合、磁気センサに印加される磁束密度が
図23(a)のグラフである。両端点、すなわち+0.5mmと−0.5mmの2点間を結んだ直線を理想直線として、この理想直線と実際に印加される磁束密度の差を距離に換算したものが、23(b)のグラフである。理想直線からの乖離が最も大きな値が、最大位置検出誤差であるが、23(b)を見ると、最大位置検出誤差は0.95μmであることがわかる。また、基板から磁石上面までの距離は磁石の高さ(a)+GAP+磁気センサの厚さとなり、1.0+(−0.38)+0.38=1.0mmとなる。
【0054】
このように、従来の位置検出装置に比べて本発明における位置検出装置は、同等の最大位置検出誤差を保ちながら、基板から磁石上面までの距離を著しく小さくすることが可能となる点ですぐれており、本発明の初期の目的である装置の小型化、薄型化、軽量化を図ることができる。
【0055】
図24は、本発明に係る位置検出装置を用いたアクチュエータを説明するための具体的な構成図で、上述した本発明に係る実施例1乃至3の位置検出装置を組み入れたアクチエータの構成図である。図中符号80はアクチュエータ、81は実装基板、82XはX軸駆動用磁石、82YはY軸駆動用磁石、83XはX軸用磁気センサ、83YはY軸用磁気センサ、84XはX軸駆動用コイル、84YはY軸駆動用コイル、85はレンズバレル、86はレンズを示している。
【0056】
本発明のアクチュエータには、駆動用磁石と磁気センサを備えた位置検出装置が設けられている。このアクチュエータ80は、実装基板81上に移動可能に配置されたレンズ86を保持したレンズバレル85と、このレンズバレル85に取り付けられたX軸駆動用磁石82Xと、実装基板81上に設けられ、X軸駆動用磁石82Xのほぼ真下に配置されたX軸駆動用コイル84と、実装基板81上に設けられ、X軸駆動用磁石82Xの真下を避けた移動方向と平行で実装基板に対してX軸駆動用コイル84Xに横配置されたX軸用磁気センサ83Xとを備えている。
【0057】
また、レンズバレル85に取り付けられたY軸駆動用磁石82Yと、実装基板81上に設けられ、Y軸駆動用磁石82Yの真下に配置されたY軸駆動用コイル84Yと、実装基板81上に設けられ、Y軸駆動用磁石82Yの真下を避けた移動方向と平行で実装基板に対してY軸駆動用コイル84Yに横配列に配置されたY軸用磁気センサ83Yとを備えている。
【0058】
このような構成により、レンズバレル85の移動すべき位置を指令する信号及びX軸用及びY軸用磁気センサ83X,83Yによって検出された位置信号に基づいて、X軸及びY軸駆動用コイル84X,84Yに流す駆動電流を制御している。この場合に、X軸用及びY軸用磁気センサ83X,83Yは、X軸及びY軸駆動用磁石82X,82Yの真下を避けた移動方向と平行で実装基板に対してX軸及びY軸駆動用コイル84X,84Yと横配列に配置されている。
【0059】
また、本発明のアクチュエータは、上述した本発明の位置検出装置と、この位置検出装置からの出力信号が入力される手ブレ補正レンズの位置検出機構、若しくはオートフォーカス機構、若しくはズーム機構を備えている。また、手ブレ補正レンズの位置検出機構、若しくはオートフォーカス機構、若しくはズーム機構は、デジタルカメラ又は携帯電話の手ブレ補正レンズの位置検出機構、若しくはオートフォーカス機構、若しくはズーム機構として用いることができる。
【0060】
このように構成することにより、基板に対する磁気センサと磁石の配置構成の簡素化を図るとともに、検出精度を落とすことなく、汎用的な基板および磁石を用いた場合においても、基板と磁石とのギャップを小さくして装置の小型化、薄型化、軽量化を図るようにした位置検出装置を用いたアクチュエータを実現することができる。