特許第5732041号(P5732041)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5732041
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】モノマー、重合法およびポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20150521BHJP
   C07D 265/38 20060101ALI20150521BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   C08G61/12
   C07D265/38CSP
   H05B33/14 B
   H05B33/22 D
【請求項の数】20
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-505234(P2012-505234)
(86)(22)【出願日】2010年4月15日
(65)【公表番号】特表2012-524138(P2012-524138A)
(43)【公表日】2012年10月11日
(86)【国際出願番号】GB2010000801
(87)【国際公開番号】WO2010119275
(87)【国際公開日】20101021
【審査請求日】2013年4月3日
(31)【優先権主張番号】0906553.3
(32)【優先日】2009年4月16日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】597063048
【氏名又は名称】ケンブリッジ ディスプレイ テクノロジー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】230105223
【弁護士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】パウンズ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】マキャナン,メアリー
【審査官】 井津 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−165829(JP,A)
【文献】 特表2005−506419(JP,A)
【文献】 特開2008−280386(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0122346(US,A1)
【文献】 特表2011−529110(JP,A)
【文献】 New Ambipolar Organic Semiconductors. 2. Effects of ElectronAcceptor Strength on Intramolecular Charge Transfer Photophysics,Highly Efficient Electroluminescence, and Field-Effect ChargeTransport of Phenoxazine-Based Donor-Acceptor Materials,Chem. Mater,2008年,4212-4223
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/00−61/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(III):
【化1】

[式中、Xは、重合可能な基であり;
Arは置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリールのスペーサー基を表し;
Ar1およびAr2は各々独立して、置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール基を表し;
Ar1および/またはAr2は、一つの炭素炭素結合のみによって、そのそれぞれの隣接するAr基と結合し;
1は、Hまたは置換基を表し;
Zは、CR12、SiR12、PR1、NR1、OおよびSから選択される直接結合または二価の連結原子もしくは基を表し、R1およびR2は、水素;置換されていてもよいアルキル(ここで、1個以上の隣接していないC原子がO、S、N、C=Oおよび−COO−で置換されていてもよい);アルコキシ;アリール;アリールアルキル;ヘテロアリールおよびヘテロアリールアルキルからなる群より独立に選択される]
のモノマーを重合するステップを含む、ポリマーを形成する方法。
【請求項2】
Ar1およびAr2が、酸素原子によって結合されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Xが、金属挿入反応に関与可能な脱離基であり、重合が金属触媒の存在下で起こる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
Xが、ボロン酸、ボロン酸エステルおよびハロゲンからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
Ar、Ar1およびAr2が、各々独立に、炭素環式環を表す、請求項1から4のいずれかに記載のモノマー。
【請求項6】
Ar、Ar1およびAr2が、各々独立に、置換されていてもよいフェニルを表す、請求項5に記載のモノマー。
【請求項7】
式(III)のモノマーをコモノマーと反応させて共重合体を形成する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ポリマーが、フルオレン反復単位および式(III)のモノマーに由来する反復単位を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
式(II):
X−(Ar)p−Ar1−(NR−Ar2)n−(Ar)q−X(II)
[式中、各Arは独立に、置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール基を表し;
Yは、少なくとも1個のアリールまたはヘテロアリール基を含む基を表し;
pは、0または正の整数であり;
qは、少なくとも1であり;
Xは、重合可能な基であり;
ポリマーは、pおよびqが両方とも0である対応するポリマーよりも短い最大光輝波長を有し;
Ar1およびAr2は各々独立に、置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール基を表し、Ar1およびAr2が、酸素原子によって結合されており
Rは、Hまたは置換基であり;
nは、1以上である]
のモノマーを重合するステップを含む、ポリマーを形成する方法。
【請求項10】
−Ar1−(NR−Ar2)n−が、単位1、2および3から選択される、請求項9に記載の方法:
【化3】

[式中、Ar3は、各出現で独立に、置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール基であり、任意のAr1、Ar2、Ar3は、直接結合または二価の連結原子もしくは基によって互いに結合してもよい]。
【請求項11】
n=1である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
Ar1およびAr2が、単結合またはCR12、SiR12、PR1、NR1、OおよびSから選択される二価の連結基によって結合され、R1およびR2が、水素;置換されていてもよいアルキル(ここで、1個以上の隣接していないC原子がO、S、N、C=Oおよび−COO−で置換されていてもよい);アルコキシ、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアリールアルキルから独立に選択される、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
隣接するAr基が、pおよび/またはqが1より大きい場合には、縮合する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
Xが、金属挿入反応に関与可能な脱離基である、請求項9から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
Xが、ボロン酸、ボロン酸エステルおよびハロゲンからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
Ar、Ar1およびAr2が、各々独立に、炭素環式環を表す、請求項9から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
Ar、Ar1およびAr2が、各々独立に、置換されていてもよいフェニルを表す、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
qが少なくとも1である、請求項9から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ポリマーが共重合体である、請求項9から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ポリマーが、フルオレン反復単位および式(II)のモノマーに由来する反復単位を含む、請求項9から19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノマーおよび有機電子デバイスのためのポリマーを形成する方法、特に、有機エレクトロルミネセンスデバイスのための電荷輸送および発光ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
あるクラスの光電気(opto−electrical)デバイスは、発光または検出のために有機材料を使用するものである。これらのデバイスの基本構造は、発光性有機層、例えば、有機層中に負電荷キャリア(電子)を注入するための陰極および正電荷キャリア(正孔)を注入するための陽極の間に挟まれた、ポリ(p−フェニレンビニレン)(「PPV」)またはポリフルオレンのフィルムである。電子および正孔は、光子を発生する有機層中で結合する。特許文献1では、有機発光性材料は、共役ポリマーである。特許文献2では、有機発光性材料は、(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(「Alq3」)などの小分子材料として知られているクラスのものである。実用的デバイスでは、電極の一方は、透明であり、光子がデバイスを脱出するのを可能にする。
【0003】
通常の有機発光性デバイス(「OLED」)は、インジウム−スズ−酸化物(「ITO」)などの透明な陽極でコーティングされたガラスまたはプラスチック基板上に組み立てられる。少なくとも1種のエレクトロルミネセント有機材料の薄いフィルムの層が、第1の電極を覆う。最後に、陰極が、エレクトロルミネセント有機材料の層を覆う。陰極は、通常、金属または合金であり、アルミニウムなどの単層またはカルシウムおよびアルミニウムなどの複数の層を含み得る。作動中は、正孔は、陽極を通ってデバイス中に注入され、電子は、陰極を通ってデバイス中に注入される。正孔および電子は、有機エレクトロルミネセンス層中で結合し、励起子を形成し、これが、次いで、放射崩壊を受けて光を生じる。
【0004】
これらのデバイスは、ディスプレイおよび照明アプリケーションにとって大きな可能性を有する。しかし、いくつか大きな問題がある。1つは、特に、その外部電力効率およびその外部量子効率によって測定される効率的なデバイスを作製することである。別のものとして、最大効率が得られる電圧を低下させることがある。別のものとして、デバイスの電圧特性を経時的に安定化することがある。別のものとして、デバイスの寿命を増大することがある。
【0005】
共役ポリマーは、金属錯体触媒の金属原子が、モノマーのアリール基と脱離基の間に挿入される「金属挿入」によって作用する、金属触媒による重合反応によって形成され得る。このプロセスによって、2個以上の反応性脱離基を含む芳香族モノマーが重合して、芳香族反復単位の鎖を形成し得る。このような重合技術の例として、例えば、特許文献3に記載されるスズキ重合および例えば、非特許文献1に記載されるヤマモト重合がある。ヤマモト重合の場合には、ニッケル錯体触媒が使用され;スズキ重合の場合には、パラジウム錯体触媒が使用される。
【0006】
例えば、ヤマモト重合による直鎖ポリマーの合成では、2個の反応性ハロゲン基を有するモノマーが使用される。同様に、スズキ重合の方法によれば、少なくとも1個の反応性基は、ボロン酸またはボロン酸エステルなどのホウ素誘導体基であり、その他の反応性基は、ハロゲンである。好ましいハロゲンは、塩素、臭素およびヨウ素であり、最も好ましくは、臭素である。
【0007】
スズキ重合を使用して、ホモポリマーおよびレジオレギュラー、ブロックおよびランダム共重合体を調製してもよい(本明細書において「共重合体」とは、2種以上の異なる反復単位を含むポリマーを意味する)。特に、ホモポリマーまたはランダム共重合体は、一方の反応性基がハロゲンであり、もう一方の反応性基がホウ素誘導体基である場合に調製され得る。あるいは、ブロックまたはレジオレギュラー、特に、AB、共重合体は、第1のモノマーの両反応性基が、ホウ素であり、第2のモノマーの両反応性基がハロゲンである場合に調製され得る。
【0008】
ポリマーの反復単位は、ポリマーの電荷輸送およびエレクトロルミネセント特性を調整するよう選択してもよい。ある広く使用されるクラスの反復単位として、アミン、特に、例えば、特許文献4に開示されるようなトリアリールアミンがある。トリアリールアミン反復単位を使用して、青色発光および正孔輸送機能の両方を提供してもよいが、本発明者らは、トリアリールアミン含有モノマーの重合が、かなり遅いものであり得ることを見い出した。
【0009】
芳香族反復単位に芳香族基を結合することは、通常、ポリマー全域の単位の共役の伸長をもたらし、そして、反復単位の発光の色をより長い波長へと(または、言い換えれば、より小さいHOMO−LUMOバンドギャップへと)変える。例えば、特許文献5には、次式:
1−Ar1−[トリアリールアミン]−Ar2−X2
[式中、X1およびX2は、同一または異なる重合可能基であり、
Ar1およびAr2は、同一もしくは異なる、置換または非置換のアリールまたはヘテロアリール基である]
を有するモノマーを重合することによって形成されるポリマーが記載されている。特許文献5には、特に、得られたポリマーから、青色発光ではなく、緑色発光を得るための、Ar1およびAr2がチオフェンであるモノマーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO90/13148
【特許文献2】US4,539,507
【特許文献3】WO00/53656
【特許文献4】WO99/54385
【特許文献5】US7348428
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】T.Yamamoto、「Electrically Conducting And Thermally Stable pi−Conjugated Poly(arylene)s Prepared by Organometallic Processes」、Progress in Polymer Science 1993年、17、1153〜1205頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の一目的は、ポリマー、特に、長い半減期(すなわち、放射体の輝度が定電流で半分になるのにかかる時間)を有する青色ポリマーを提供することである。本発明のさらなる目的は、高効率を有するポリマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
当業者ならば、芳香族反復単位中の芳香族基の数を延ばすことは、その反復単位のバンドギャップを狭くすると予想されることは承知しているであろう。しかし、本発明者らは、驚くべきことに、実際には、芳香族基を反復単位のバンドギャップを増大するために利用できることを見い出した。
【0014】
さらに、本発明者らは、モノマー中にさらなる芳香族基を含めることによって、特に、電子の豊富なモノマーの場合には、そのモノマーの反応速度を増大できることを見い出した。
【0015】
本発明者らは、モノマー中にさらなる芳香族基を含めることは、得られたポリマーの寿命の増大につながり得ることをなおさらに見い出した。
【0016】
したがって、本発明は、第1の態様において、請求項1から7に定義されるモノマーを提供する。
【0017】
特定の実施形態では、モノマーは、式(III):
【0018】
【化1】
【0019】
[式中、Xは、重合可能な基であり;Ar、Ar1およびAr2は、各々独立して、置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール基を表し;R1は、Hまたは置換基を表し:Zは、直接結合または二価の連結原子もしくは基を表す]
を有する。
【0020】
任意に、Ar1およびAr2は、単結合またはCR12、SiR12、PR1、NR1、OおよびSから選択される二価の連結基によって結合し、ここで、R1およびR2は、水素;置換されていてもよいアルキル(ここで、1個以上の隣接していないC原子がO、S、N、C=Oおよび−COO−で置換されていてもよい);アルコキシ、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアリールアルキルから独立に選択される。
【0021】
任意に、Ar1およびAr2は、酸素原子によって結合されている。
【0022】
任意に、Ar1および/またはAr2は、そのそれぞれの隣接するAr基と縮合していてもよい。
【0023】
任意に、Ar1およびその隣接するAr基ならびに/またはAr2およびその隣接するAr基は、縮合してフルオレン単位を形成する。
【0024】
任意に、Xは、金属挿入反応に関与可能な脱離基である。
【0025】
任意に、Xは、ボロン酸、ボロン酸エステルおよびハロゲンからなる群から選択される。
【0026】
任意に、Ar、Ar1およびAr2は、各々独立に、炭素環式環、好ましくは、置換されていてもよいフェニルを表す。
【0027】
任意に、一方または両方のAr基は、モノマーの中心部分と同一面にない。特に、一方または両方のAr基は、例えば、置換基R1で置換され、従って、モノマー中にねじれを生じ得る。ねじれは、少なくとも45度であることが好ましい。
【0028】
本発明は、第2の態様では、本発明の第1の態様に従うモノマーを重合するステップを含むポリマーを形成する方法を提供する。
【0029】
任意に、モノマーをコモノマーと反応させ、共重合体を形成する。
【0030】
任意に、ポリマーは、フルオレン反復単位および式(III)のモノマーに由来する反復単位を含む。
【0031】
任意に、重合は、金属触媒の存在下で起こる。
【0032】
本発明は、第3の態様では、有機電子デバイス、任意に、本発明の第3の態様に従うポリマーを含むエレクトロルミネセントデバイスを提供する。
【0033】
本発明は、第4の態様では、式(I):
X−(Ar)p−Y−(Ar)q−X (I)
[式中、各Arは独立に、置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール基を表し;Yは、少なくとも1個のアリールまたはヘテロアリール基を含む基を表し;pは、0または整数であり;qは、少なくとも1であり;Xは、重合可能な基であり;ここで、ポリマーは、pおよびqが両方とも0である対応するポリマーよりも長い最大光輝波長を有する]
のモノマーを重合するステップを含む、ポリマーを形成する方法を提供する。
【0034】
任意に、モノマーは、式(II):
X−(Ar)p−Ar1−(NR−Ar2)n−(Ar)q−X (II)
[式中、Ar1およびAr2は各々独立に、置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール基を表し;Rは、Hまたは置換基であり;nは、少なくとも1である]
で示されるモノマーである。
【0035】
任意に、−Ar1−(NR−Ar2)n−は、単位1、2および3から選択される。
【0036】
【化2】
【0037】
[式中、Ar3は、各出現で独立に、置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール基であり、任意のAr1、Ar2、Ar3は、直接結合または二価の連結原子もしくは基によって互いに結合していてもよい]
【0038】
任意に、n=1である。
【0039】
任意に、Ar1およびAr2は、単結合またはCR12、SiR12、PR1、NR1、OおよびSから選択される二価の連結基によって結合され、R1およびR2は、水素;置換されていてもよいアルキル(ここで、1個以上の隣接していないC原子がO、S、N、C=Oおよび−COO−で置換されていてもよい);アルコキシ、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアリールアルキルから独立に選択される。
【0040】
任意に、Ar1およびAr2は、酸素原子によって結合されている。
【0041】
任意に、Ar1および/またはAr2は、qが少なくとも1である場合には、そのそれぞれの隣接するAr基と縮合してもよい。
【0042】
任意に、Ar1およびその隣接するAr基ならびに/またはAr2およびその隣接するAr基は、縮合してフルオレン単位を形成する。
【0043】
任意に、隣接するAr基は、pおよび/またはqが1より大きい場合には、縮合してもよい。
【0044】
任意に、Xは、金属挿入反応に関与可能な脱離基である。
【0045】
任意に、Xは、ボロン酸、ボロン酸エステルおよびハロゲンからなる群から選択される。
【0046】
任意に、Ar、Ar1およびAr2は、各々独立に、炭素環式環、好ましくは、置換されていてもよいフェニルを表す。
【0047】
任意に、一方または両方のAr基は、モノマーの中心部分と同一面にない。特に、一方または両方のAr基は、例えば、置換基R1で置換され、従って、モノマー中にねじれを生じてもよい。ねじれは、少なくとも45度であることが好ましい。
【0048】
任意に、qは、少なくとも1である。
【0049】
任意に、ポリマーは、共重合体である。
【0050】
任意に、ポリマーは、フルオレン反復単位および式(I)のモノマーに由来する反復単位を含む。
【0051】
任意に、重合は、金属触媒の存在下で起こる。
【0052】
本発明は、さらなる態様では、反復単位:
【0053】
【化3】
【0054】
[式中、Ar、Ar1およびAr2は、各々独立に、置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール基を表し;R1は、Hまたは置換基を表し:Zは、直接結合または二価の連結原子もしくは基を表し、ここで、Ar1およびAr2は、単結合またはCR12、SiR12、PR1、NR1、OおよびSから選択される二価の連結基によって結合され、ここで、R1およびR2は、水素;置換されていてもよいアルキル(ここで、1個以上の隣接していないC原子がO、S、N、C=Oおよび−COO−で置換されていてもよい);アルコキシ、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアリールアルキルから独立に選択される]
を有するポリマーを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】スズキ重合において過剰の臭素化モノマーを使用することによって製造された低分子量ポリマーの低減した効率を示す図である。
図2】スズキ重合において過剰の臭素化モノマーを使用することによって製造された低分子量ポリマーの低減した寿命を示す図である。
図3】本発明のエレクトロルミネセントデバイスを提供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
電子の豊富なモノマー、例えば、少なくとも1個のアミン基を含むモノマーを使用して、ポリマーにおける正孔輸送を提供し得ることは有益である。また、これらのモノマーに由来する反復単位を使用して発光を提供し得る。しかし、これらのモノマーは、半導体ポリマーを形成するために使用される重合反応において、電子の乏しいモノマーよりも遅く反応する。本明細書において、電子の豊富なモノマーは、少なくとも1個の炭素原子が、置換された炭素原子より多い量の非共有価電子を有する原子または基によって置換されている炭化水素モノマーである。この結果、種々のモノマーがポリマー中に種々の速度で組み込まれ、電子の豊富なモノマーは、電子の乏しいモノマーよりも遅く組み込まれる。したがって、ポリマーの末端に向かって高い濃度の電子の豊富なポリマーが存在する。
【0057】
この効果は、ポリマーの分子量が、スズキ重合において過剰の臭素化モノマーを使用することによって制御される(または、少なくとも部分的に制御される)場合に明らかであるが、これは、低分子量ポリマー(すなわち、250,000未満のMwを有する)中に、相対的に多数の末端があると、ポリマーの末端に向かって位置される、電子の豊富なモノマーの割合が多くなるからである。結果として得られるポリマーの効率および寿命の喪失は、図1および2にそれぞれ示されており、これでは、Aは、1:1のジエステル:ジブロミド比を用いて製造された対照ポリマーであり、Bは、0.98:1のジエステル:ジブロミド比を用いて製造された低分子量ポリマーである。
【0058】
電子の豊富な基のこの不均等分布は、材料の寿命および効率の両方に有害であると考えられている。モノマー中に上記のAr基を提供することによって、電子の豊富な基がより均等に分布され、ポリマー鎖内の正孔輸送単位のより均等な分布につながると考えられている。
【0059】
本発明によって提供される利益はまた、重合速度以外の理由のために例えば、電子の乏しいモノマーに対して大きなパーセンテージの電子の豊富なモノマーが使用される場合に、または簡単に、重合反応に関与する機会のために、電子の豊富なモノマーが、ポリマーの主鎖または分岐の末端に向かって組み込まれる場合に、得られるはずである。
【0060】
本発明のモノマーの一方または両方のAr基が、互いにねじれている場合に、そのモノマーに由来する反復単位のバンドギャップは増大する。このようにして、単位の発光の色が調整され得る。あるいは、モノマーを使用して、別個の発光単位とともに電荷輸送単位を提供してもよく、この場合には、Ar基のねじれ度を、これらのAr基を含有する反復単位が、発光しないよう十分に高いバンドギャップを有することを確実にするよう制御してもよい。
【0061】
本発明の方法によって形成されるポリマーは、例えば、Adv. Mater. 2000 12(23) 1737〜1750頁およびその中の参考文献に開示されるアリーレン反復単位から選択される反復単位を含むことが好ましい。例示的な第1の反復単位として、J.Appl.Phys.1996年、79、934頁に開示される1,4−フェニレン反復単位;EP0842208に開示されるフルオレン反復単位;例えば、Macromolecules 2000年、33(6)、2016〜2020頁に開示されるインデノフルオレン反復単位および例えば、EP0707020に開示されるスピロフルオレン反復単位が挙げられる。これらの反復単位の各々は、置換されていてもよい。置換基の例として、C1-20アルキルまたはアルコキシなどの可溶化基;フッ素、ニトロまたはシアノなどの電子求引基およびポリマーのガラス転移温度(Tg)を増大する置換基が挙げられる。
【0062】
特に好ましいポリマーは、置換されていてもよい2,7−結合しているフルオレン、最も好ましくは、式IV:
【0063】
【化4】
【0064】
[式中、R1およびR2は独立に、水素または置換されていてもよいアルキル(ここで、1個以上の隣接していないC原子がO、S、N、C=Oおよび−COO−で置換されていてもよい)、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアリールアルキルから選択される]
で示される反復単位を含む。R1およびR2の少なくとも一方は、置換されていてもよいC4−C20アルキルまたはアリール基を含むことがより好ましい。
【0065】
Rがアリールまたはヘテロアリールである場合には、好ましい任意選択の置換基として、1個以上の隣接していないC原子が、O、S、N、C=Oおよび−COO−で置換されていてもよいアルキル基が挙げられる。
【0066】
置換基R1およびR2以外のフルオレン単位の任意の置換基は、1個以上の隣接していないC原子がO、S、N、C=Oおよび−COO−で置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、フッ素、シアノおよびアリールアルキルからなる群から選択されることが好ましい。
【0067】
ポリマーは、上記のアリーレン反復単位およびアリールアミン反復単位、特に、反復単位V:
【0068】
【化5】
【0069】
[式中、Ar1およびAr2は、置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール基であり、nは、1以上であり、好ましくは、1または2であり、RはHまたは置換基、好ましくは、置換基である]
を含むことが好ましい。Rは、好ましくは、アルキルまたはアリールまたはヘテロアリールであり、最も好ましくは、アリールまたはヘテロアリールである。式1の単位中の任意のアリールまたはヘテロアリール基は、置換されていてもよい。好ましい置換基として、アルキルおよびアルコキシ基が挙げられる。式1の反復単位中の任意のアリールまたはヘテロアリール基は、直接結合または二価の連結原子もしくは基によって結合していてもよい。
【0070】
好ましい二価の連結原子および基として、O、S;置換されたN;および置換されたCが挙げられる。
【0071】
式1を満たす特に好ましい単位として、式1〜3の単位:
【0072】
【化6】
【0073】
[式中、Ar1およびAr2は、上記で定義のとおりであり;Ar3は、置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリールである]
が挙げられる。存在する場合には、Ar3の好ましい置換基として、アルキルおよびアルコキシ基が挙げられる。
【0074】
アリールアミン単位の好ましい濃度は、それを含有するポリマーの機能に応じて変わる。アリールアミン単位が、正孔輸送層において使用するためのポリマー中に存在する場合には、最大95mol%、好ましくは、最大70mol%の量で存在することが好ましい。アリールアミン単位が、発光層において使用するためのポリマー中に(発光ポリマーとしてまたは発光ドーパントのホストとして)存在する場合には、最大30mol%、好ましくは、最大20mol%の量で存在することが好ましい。これらのパーセンテージは、式Vの2種以上の反復単位が使用される場合には、ポリマー中に存在するアリールアミン単位の総数に当てはまる。
【0075】
ポリマーは、電荷輸送または発光のためのヘテロアリーレン反復単位を含み得る。好ましいヘテロアリーレン反復単位は、式7〜21:
【0076】
【化7】
【0077】
[式中、R6およびR7は、同一または異なり、各々独立に、水素、または置換基、好ましくは、アルキル、アリール、ペルフルオロアルキル、チオアルキル、シアノ、アルコキシ、ヘテロアリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルである]
から選択される。製造を容易にするために、R6およびR7は、同一であることが好ましい。それらは同一であり、各々フェニル基であることがより好ましい。
【0078】
【化8-1】
【化8-2】
【化8-3】
【0079】
エレクトロルミネセント共重合体は、例えば、WO00/55927およびUS6353083に開示されるように、エレクトロルミネセント領域および正孔輸送領域および電子輸送領域の少なくとも一方を含み得る。正孔輸送領域および電子輸送領域のうち一方のみが、提供される場合には、エレクトロルミネセント領域はまた、もう一方の正孔輸送および電子輸送機能を提供し得る。あるいは、エレクトロルミネセントポリマーは、正孔輸送材料および/または電子輸送材料とブレンドしてもよい。1種以上の正孔輸送反復単位、電子輸送反復単位および放出反復単位を含むポリマーは、ポリマー主鎖またはポリマー側鎖中に前記単位を提供し得る。
【0080】
このようなポリマー内の種々の領域は、US6353083のようにポリマー主鎖に沿って、またはWO01/62869のようにポリマー主鎖から垂下する基として提供され得る。
【0081】
本発明の方法によって形成されるポリマーは、エレクトロルミネセントデバイスにおいて使用され、使用されるデバイスの層および共反復単位(co−repeat units)の性質に応じて、正孔輸送、電子輸送および発光の機能のうち1以上を提供し得る。
【0082】
また、本発明の方法によって形成されるポリマーを、ポリマーと混合され得るか、ポリマーに結合され得る発光ドーパントのホスト材料として使用してもよい。この場合には、ポリマーは、ドーパントのものよりも高い励起状態エネルギーレベルを有するべきである。リン光性ドーパントの場合には、ポリマーのT1エネルギーレベルは、励起状態エネルギーがホストのT1エネルギーレベルから放射体のT1レベルに移されるほど十分に高いものであるべきである。好ましくは、ホストは、放射体のT1エネルギーレベル、特に、放射体のものよりも高いT1エネルギーレベルからのエネルギー逆移動を防ぐほど十分に高いT1エネルギーレベルを有することが好ましい。しかし、いくつかの場合には、ホストのT1エネルギーレベルは、放射体のものと同様またはそれよりも低い場合もある。
【0083】
金属錯体
エレクトロルミネセントデバイスにおいて蛍光性またはリン光性ドーパントとして使用してもよい材料として、式(VI):
【0084】
【化9】
【0085】
[式中、Mは金属であり;L1、L2およびL3は各々、配位基であり;qは、整数であり;rおよびsは、各々独立に、0または整数であり;(a.q)+(b.r)+(c.s)の合計は、M上の利用可能な配位部位の数に等しく、aは、L1上の配位部位の数であり、bは、L2上の配位部位の数であり、cは、L3上の配位部位の数である]
の置換されていてもよい錯体を含む金属錯体が挙げられる。
【0086】
重元素Mは、強いスピン軌道結合を誘発して、迅速なシステム間架橋および三重項以上の状態からの発光(リン光)を可能にする。適した重金属Mとして:
−セリウム、サマリウム、ユウロピウム、テルビウム、ジスプロシウム、ツリウム、エルビウムおよびネオジムなどのランタニド金属;
−d−ブロック金属、特に、2列および3列のもの、すなわち、元素39〜48および72〜80、特に、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金および金
が挙げられる。
【0087】
f−ブロック金属の適した配位基として、カルボン酸、1,3−ジケトナート、ヒドロキシカルボン酸、アシルフェノールおよびイミノアシル基をはじめとするシッフ塩基などの酸素または窒素ドナーシステムが挙げられる。公知のように、発光性ランタニド金属錯体は、金属イオンの第1励起状態より高い三重項励起エネルギーレベルを有する増感基(単数または複数)を必要とする。発光は、金属のf−f転移からであり、そのため、発光色は、金属の選択によって決定される。鋭い発光は、通常、狭く、ディスプレイアプリケーションにとって有用な純粋色発光をもたらす。
【0088】
d−ブロック金属は、三重項励起状態からの発光にとって特に適している。これらの金属は、式(VII):
【0089】
【化10】
【0090】
[式中、Ar4およびAr5は、同一であっても異なっていてもよく、置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリールから独立に選択され;X1およびY1は、同一であっても異なっていてもよく、炭素または窒素から独立に選択され;Ar4およびAr5は一緒になって縮合されていてもよい]
のポルフィリンまたは二座配位子などの炭素または窒素ドナーを含む有機金属錯体を形成する。X1が炭素であり、Y1が窒素である配位子が、特に好ましい。
【0091】
二座配位子の例は以下に例示される:
【0092】
【化11】
【0093】
Ar4およびAr5は各々、1個以上の置換基を保持し得る。これらの置換基のうち2個以上が結合して環、例えば、芳香環を形成してもよい。特に好ましい置換基として、WO02/45466、WO02/44189、US2002−117662およびUS2002−182441に開示される、錯体の発光をブルーシフトするよう使用され得るフッ素またはトリフルオロメチル;JP2002−324679に開示されるアルキルまたはアルコキシ基;WO02/81448に開示される、発光材料として使用される場合に錯体への正孔輸送を補助するよう使用され得るカルバゾール;WO02/68435およびEP1245659に開示されるさらなる基の結合のための配位子を官能基付与するのに役立ち得る臭素、塩素またはヨウ素;WO02/66552に開示される金属錯体の溶液処理性を得るまたは増強するよう使用され得るおよびデンドロンが挙げられる。
【0094】
発光デンドリマーは、通常、1個以上のデンドロンと結合している発光コアを含み、ここで、各デンドロンは、分岐点および2以上の樹状分岐を含む。好ましくは、デンドロンは、少なくとも部分的にコンジュゲートしており、少なくともコアおよび樹状分岐の1つは、アリールまたはヘテロアリール基を含む。
【0095】
d−ブロック元素とともに使用するのに適したその他の配位子として、ジケトナート、特に、アセチルアセトナート(acac);トリアリールホスフィンおよびピリジンが挙げられ、それらの各々は、置換されていてもよい。
【0096】
主な基金属錯体は、配位子ベースの、または電荷移動発光を示す。これらの錯体については、発光色は配位子ならびに金属の選択によって決定される。
【0097】
ホスト材料および金属錯体は、物理的ブレンドの形態で組み合わされ得る。あるいは、金属錯体は、ホスト材料と化学的に結合され得る。ポリマー性ホストの場合には、金属錯体は、例えば、EP1245659、WO02/31896、WO03/18653およびWO03/22908に開示されるように、ポリマー主鎖中の反復単位として組み込まれる、またはポリマーの末端基として提供されるポリマー主鎖と結合している置換基として化学的に結合され得る。
【0098】
さまざまな蛍光性低分子量金属錯体が公知であり、有機発光デバイスにおいて実証されている[例えば、Macromol.Sym.125(1997年)1〜48頁、US−A5,150,006、US−A6,083,634およびUS−A5,432,014参照のこと]。二価または三価金属の適した配位子として:例えば、酸素−窒素または酸素−酸素供与原子を含むオキシノイド、通常、置換基酸素原子または置換基窒素原子を含む環窒素原子または置換基酸素原子を含む酸素原子、例えば、8−ヒドロキシキノラートおよびヒドロキシキノキサリノール−10−ヒドロキシベンゾ(h)キノリナート(II)、ベンザゾール(III)、シッフ塩基、アゾインドール、クロモン誘導体、3−ヒドロキシフラボンおよびサリチラトアミノカルボキシラートおよびエステルカルボキシラートなどのカルボン酸が挙げられる。任意選択の置換基として、発光色を改変し得る、(ヘテロ)芳香環上のハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、アミノ、アミド、スルホニル、カルボニル、アリールまたはヘテロアリールが挙げられる。
【0099】
図4に関連して、本発明のエレクトロルミネセントデバイスの構造は、透明なガラスまたはプラスチック基板1、陽極2および陰極4を含む。エレクトロルミネセント層3は、陽極2と陰極4の間に提供される。
【0100】
実用的デバイスでは、少なくとも一方の電極は、光が放出され得るよう半透明である。陽極が透明である場合には、通常、インジウムスズ酸化物を含む。
【0101】
電荷輸送、電荷注入または電荷遮断層などのさらなる層は、陽極2と陰極3の間に位置され得る。
【0102】
重合法
本発明の方法は、金属錯体触媒の金属原子が、モノマーのアリール基および脱離基の間に挿入される金属挿入によって作用する、金属触媒による重合反応、特に、例えば、WO00/53656に記載されるスズキ重合および例えば、T.Yamamoto、「Electrically Conducting And Thermally Stable π:−Conjugated Poly(arylene)s Prepared by Organometallic Processes」、Progress in Polymer Science 1993年、17、1153〜1205頁に記載されるヤマモト重合を必要とし得る。
【0103】
ヤマモト重合の場合には、ニッケル錯体触媒が使用され、モノマーは、少なくとも2つの反応性ハロゲン基を含む。スズキ重合の場合には、塩基の存在下でパラジウム錯体触媒が使用され;少なくとも1つの反応性基は、ボロン酸またはボロン酸エステルなどのホウ素誘導体基であり;その他の反応性基は、ハロゲンである。
【0104】
好ましいハロゲンとして、塩素、臭素およびヨウ素があり、最も好ましくは、臭素である。ハロゲンの代わりに使用してもよいその他の反応性脱離基として、スルホン酸のエステル、例えば、メシラートおよびトリフラート基が挙げられる。
【0105】
ポリマーは、末端キャップされていることが好ましい。末端キャップ化試薬は、重合の最後に添加してもよい。しかし、いくつかの場合には、例えば、ポリマーの分子量を制御するために、末端キャップ化試薬を重合の間または重合の開始時に添加することが有益であり得る。
【0106】
種々のモノマーがほぼ同一の反応性を有する重合混合物を提供することによって、ポリマー鎖に沿った反復単位の分布は、モノマーが異なる反応性を有する混合物と比較してより均等である。反復単位の分布をさらに制御するために、異なるモノマーが、重合反応の間の異なる時間で添加されるブロック重合技術を使用してもよい。
【0107】
電荷注入層
陽極から半導体ポリマーの層または複数の層への正孔注入を補助するよう、陽極2とエレクトロルミネセント層3の間に提供される、導電性有機または無機材料から形成され得る導電性正孔注入層を提供することが特に望ましい。ドープされた有機正孔注入材料の例として、EP0901176およびEP0947123に開示される、ドープされたポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDT)、特に、スルホン酸ポリスチレン(PSS)などの電荷平衡性ポリ酸でドープされたPEDT、US5723873およびUS5798170に開示される、ポリアクリル酸またはフッ素化スルホン酸、例えば、Nafion(登録商標);ポリアニリンおよび置換されていてもよいポリチオフェンまたはポリ(チエノチオフェン)が挙げられる。導電性無機材料の例として、Journal of Physics D: Applied Physics (1996)、29(11)、2750〜2753頁に開示される、VOX MoOxおよびRuOxなどの遷移金属酸化物が挙げられる。
【0108】
エレクトロルミネセントおよび電荷輸送層
存在する場合には、陽極2とエレクトロルミネセント層3の間に位置する正孔輸送層は、好ましくは5.5eV以下、より好ましくは、約4.8〜5.5eVのHOMOレベルを有する。HOMOレベルは、例えば、サイクリック・ボルタンメトリーによって測定され得る。
【0109】
存在する場合には、エレクトロルミネセント層3と陰極4の間に位置する電子輸送層は、約3〜3.5eVのLUMOレベルを有することが好ましい。
【0110】
エレクトロルミネセント層3は、エレクトロルミネセント材料単独であってもよく、エレクトロルミネセント材料と1種以上のさらなる材料と組み合わせて含んでもよい。特に、エレクトロルミネセント材料は、例えば、WO99/48160に開示される正孔および/または電子輸送材料とブレンドされてもよく、または半導体ホストマトリクス中に発光性ドーパントを含み得る。あるいは、エレクトロルミネセント材料は、電荷輸送材料および/またはホスト材料と共有結合され得る。
【0111】
エレクトロルミネセント層3はパターン化されていても、パターン化されていなくてもよい。例えば、パターン化されていない層を含むデバイスを照明光源として使用してもよい。この目的には、白色発光デバイスが特に適している。パターン化された層を含むデバイスは、例えば、アクティブマトリクスディスプレイまたはパッシブマトリクスディスプレイであり得る。アクティブマトリクスディスプレイの場合には、パターン化されたエレクトロルミネセント層は、通常、パターン化された陽極層およびパターン化されていない陰極と組み合わせて使用される。パッシブマトリクスディスプレイの場合には、陽極層は、陽極材料の平行な縞から形成され、エレクトロルミネセント材料の平行な縞および陰極材料は、陽極材料と垂直に配置され、エレクトロルミネセント材料および陰極材料の縞は、通常、フォトリソグラフィーによって形成される絶縁材料の縞(「陰極セパレータ」)によって分離されている。
【0112】
層3に使用するのに適した材料として、小分子、ポリマー性およびデンドロマー性材料およびその組成物が挙げられる。層3に使用するのに適したエレクトロルミネセントポリマーとして、ポリ(p−フェニレンビニレン)などのポリ(アリーレンビニレン)およびポリアリーレン、例えば、ポリフルオレン、特に、2,7−結合型9,9ジアルキルポリフルオレンまたは2,7−結合型9,9ジアリールポリフルオレン;ポリスピロフルオレン、特に、2,7−結合型ポリ−9,9スピロフルオレン;ポリインデノフルオレン、特に、2,7−結合型ポリインデノフルオレン;ポリフェニレン、特に、アルキルまたはアルコキシ置換ポリ−1,4−フェニレンが挙げられる。例えば、Adv. Mater. 2000年 12(23) 1737〜1750頁およびその中の参考文献に開示されるこのようなポリマー。層3に使用するのに適したエレクトロルミネセントデンドリマーとして、例えば、WO02/066552に開示されるデンドリマー性基を有するエレクトロルミネセント金属錯体が挙げられる。
【0113】
陰極
陰極4は、エレクトロルミネセント層への電子の注入を可能にする仕事関数を有する材料から選択される。陰極およびエレクトロルミネセント材料間の有害な相互作用の可能性などのその他の因子が、陰極の選択に影響を及ぼす。陰極は、アルミニウムの層などの単一材料からなっていてもよい。あるいは、複数の金属、例えば、WO98/10621に開示されるカルシウムおよびアルミニウムなどの低仕事関数材料および高仕事関数材料の二層;WO98/57381、Appl.Phys.Lett.2002年、81(4)、634およびWO02/84759に開示される元素バリウム;または電子注入を補助するための、金属化合物、特に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物またはフッ化物の薄層、例えば、WO00/48258に開示されるフッ化リチウム;Appl.Phys.Lett.2001年、79(5)、2001頁に開示されるフッ化バリウム;および酸化バリウムを含んでもよい。デバイスへの電子の効率的な注入を提供するために、陰極は、好ましくは3.5eV未満、より好ましくは、3.2eV未満、最も好ましくは、3eV未満の仕事関数を有する。金属の仕事関数は、例えば、Michaelson,J.Appl.Phys.48(11)、4729頁、1977年に見い出すことができる。
【0114】
陰極は、不透明であっても、透明であってもよい。透明陰極は、アクティブマトリクスデバイスにとって特に有利である。なぜならこのようなデバイスにおいては透明陽極を通る発光が、発光ピクセルの下部に位置するドライブ回路によって少なくとも部分的に遮断されるからである。透明陰極は、透明であるほど十分に薄い電子注入材料の層を含む。通常、この層の側部導電性は、その薄さの結果として低くなる。この場合には、電子注入材料の層を、より厚い層のインジウムスズ酸化物などの透明導電性材料と組み合わせて使用する。
【0115】
当然のことながら、透明陰極デバイスは、透明陽極を有する必要はなく(もちろん、完全に透明なデバイスが望まれない限り)、そのため、底部発光デバイスに使用される透明陽極を、アルミニウムの層などの反射性材料の層で置き換え、または補完してもよい。透明陰極デバイスの例は、例えば、GB2348316に開示されている。
【0116】
封入
光学デバイスは、湿気および酸素に対して感受性が高い傾向がある。したがって、基板は、デバイスへの湿気および酸素の進入を防ぐための良好なバリア特性を有することが好ましい。基板は、一般にはガラスであるが、特に、デバイスの柔軟性が望まれる場合には代替基板を使用してもよい。例えば、基板は、代替のプラスチックおよびバリア層の基板を開示するUS6268695におけるように、プラスチックを、またはEP0949850に開示される薄いガラスおよびプラスチックの積層板を含んでもよい。
【0117】
デバイスは、湿気および酸素の進入を防ぐために封止剤(示されていない)を用いて封入されることが好ましい。適した封止剤として、例えば、WO01/81649に開示されるポリマーおよび誘電体の交互積層または例えば、WO01/19142に開示される気密容器などの、適したバリア特性を有するガラスのシート、フィルムが挙げられる。基板または封止剤を通して浸透し得る、大気中水分および/または酸素をいずれも吸収するためのゲッタ材料を、基板と封止剤の間に配置してもよい。
【0118】
図4の実施形態は、基板上に陽極を最初に形成することと、続いて、エレクトロルミネセント層および陰極を蒸着することによって形成されるデバイスを示すが、当然のことながら、本発明のデバイスは、基板上に陰極を最初に形成することと、続いて、エレクトロルミネセント層および陽極を蒸着することによっても形成され得る。
【0119】
溶液処理
単一ポリマーまたは複数のポリマーを溶液から蒸着して、層3を形成してもよい。ポリアリーレン、特に、ポリフルオレンに適した溶媒として、トルエンおよびキシレンなどのモノ−またはポリ−アルキルベンゼンが挙げられる。印刷およびコーティング技術、好ましくは、スピンコーティングおよびインクジェット印刷をはじめとする特に好ましい溶液蒸着技術。
【0120】
スピンコーティングは、例えば、照明アプリケーションまたは単一モノクロセグメント化ディスプレイのためのものなど、エレクトロルミネセント材料のパターン化が必要でないデバイスに特に適している。
【0121】
インクジェット印刷は、高情報量ディスプレイ、特に、フルカラーディスプレイに特に適している。デバイスは、第1の電極上にパターン化された層を提供することおよび一色(モノクロデバイスの場合には)または複数色(マルチカラー、特に、フルカラーデバイスの場合には)を印刷するためのウェルを定義することによってインクジェット印刷され得る。例えば、EP0880303に記載されるように、パターン化された層は、通常、ウェルを定義するようパターン化されたフォトレジストの層である。
【0122】
ウェルの代替物として、インクをパターン化された層内の定義されたチャンネル中に印刷してもよい。特に、フォトレジストをパターン化して、ウェルとは異なって、複数のピクセルにわたって延びる、チャンネル末端が閉じていても、解放していてもよいチャンネルを形成し得る。
【0123】
その他の溶液蒸着技術として、ディップコーティング、ロール印刷およびスクリーン印刷が挙げられる。
【0124】
溶液処理によってデバイスの複数層が形成される場合には、当業者ならば、例えば、1つの層を架橋し、その後、後続の層を蒸着することまたはこれらの層の第1のものが形成される材料が、第2の層を蒸着するために使用される溶媒に可溶性でないように、隣接する層の材料を選択することによって、隣接する層が混ざるのを防ぐ技術は承知しているであろう。
【実施例】
【0125】
【実施例1】
【0126】
モノマーを以下のスキームのように調製した。
【化12】
【0127】
モノマー1は、2,7−ジボロン酸−9,9−ジオクチルフルオレンのエステルを用いるスズキ重合を受けた。
【0128】
比較例1
ポリマーは、モノマー1の代わりに以下のモノマーを使用した点を除いて、実施例1のように調製した。
【0129】
【化13】
【0130】
ポリマーは、ポリマー鎖末端にアミン基を含むことがわかった。いずれかの理論に拘束されようとは思わないが、アミンベースのモノマーの電子の豊富な性質は、その他の、重合に使用されるより電子が不足したモノマーと比較して、その反応性を低下させる傾向があることが考えられる。この結果、アミン基がポリマー鎖の末端に位置し、そしてそれが、ポリマー鎖内の電荷輸送アミン基の不均等分布につながる。
【0131】
しかし、本発明者らは、モノマーの反応性が、反応に使用されるその他のモノマーの反応性と同様であるよう、アミンと反応性脱離基の間に少なくとも1個のAr基を提供することによって、モノマーの反応性が増大され得ることを見い出した。このようにして、ポリマー主鎖に沿った反復単位は、より均等に分布され、これは、次いで、ポリマーの効率および寿命の増大につながる。
【0132】
反応性を増大することに加え、Ar基は、ポリマー鎖中でアミン単位を互いに分離するための「スペーサー」として役立ち、これもやはり、ポリマー主鎖内のアミン単位のより均等な分布を提供する効果を有する。
【0133】
さらに、アミンが、エレクトロルミネセントポリマーの発光単位である場合には、ポリマーの発光色は、Ar基を適宜選択することによって調整し得る。これは、反復単位のバンドギャップ(Eg)に対する種々のAr基の効果を示す以下の表からわかり得る。
【0134】
【表1】
図1
図2
図3