特許第5732163号(P5732163)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭化成エレクトロニクス株式会社の特許一覧

特許5732163ランダムノイズ動作モードへの管理された遷移を伴う位相ロックループ装置
<>
  • 特許5732163-ランダムノイズ動作モードへの管理された遷移を伴う位相ロックループ装置 図000003
  • 特許5732163-ランダムノイズ動作モードへの管理された遷移を伴う位相ロックループ装置 図000004
  • 特許5732163-ランダムノイズ動作モードへの管理された遷移を伴う位相ロックループ装置 図000005
  • 特許5732163-ランダムノイズ動作モードへの管理された遷移を伴う位相ロックループ装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5732163
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】ランダムノイズ動作モードへの管理された遷移を伴う位相ロックループ装置
(51)【国際特許分類】
   H03L 7/107 20060101AFI20150521BHJP
   H03L 7/093 20060101ALI20150521BHJP
   H03L 7/095 20060101ALI20150521BHJP
   H03L 7/08 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   H03L7/10 C
   H03L7/08 E
   H03L7/08 B
   H03L7/08 M
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-87276(P2014-87276)
(22)【出願日】2014年4月21日
(65)【公開番号】特開2014-217060(P2014-217060A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2014年4月21日
(31)【優先権主張番号】13305526.9
(32)【優先日】2013年4月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デービッド カナル
【審査官】 鬼塚 由佳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−130435(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0175682(US,A1)
【文献】 Song-Yu Yang, et al.,A 7.1 mW, 10 GHz All Digital Frequency Synthesizer With Dynamically Reconfigured Digital Loop Filter in 90 nm CMOS Technology,Solid-State Circuits, IEEE Journal of,米国,IEEE,2010年 3月,vol.45,No.3,pp.578 - 586
【文献】 Chao-Ching Hung, et al.,A 1.25GHz fast-locked all-digital phase-locked loop with supply noise suppression,VLSI Design Automation and Test (VLSI-DAT), 2010 International Symposium on ,米国,IEEE,2010年 4月26日,pp.237 - 240
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03L 7/107
H03L 7/08
H03L 7/093
H03L 7/095
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランダムノイズ動作モードへの管理された遷移を伴う位相ロックループ(PLL)装置であって、
基準周波数を有する基準信号を入力する第1の比較器入力、周波数変換後の信号を入力する第2の比較器入力、および、位相差に応じて、2つの離散的値のうちの1つを備えるエラー信号を生成するように適合される比較器出力を備えるバンバン非線形位相比較器と、
前記比較器出力に接続されるフィルタ入力、ならびに比例係数および積分係数のそれぞれの値を入力し、前記比例係数および積分係数について入力された前記値に従って、時間フィルタ処理されたエラー信号をフィルタ出力において生成するのに適した少なくとも1つの構成入力を備える比例積分型のループフィルタと、
制御信号が入力される少なくとも1つの制御入力、および前記制御信号に応じて変動するVCO周波数を有するVCO信号を生成するVCO出力を有する電圧制御発振器(VCO)モジュールと、
前記VCOモジュールの前記制御入力に前記フィルタ出力を接続するように構成され、その結果、前記制御信号は前記時間フィルタ処理されたエラー信号に基づく、少なくとも1つの制御接続と、
入力において前記VCO出力に接続され、前記VCO信号に基づいて前記周波数変換後の信号を変換器出力で生成するように適合され、前記変換器出力が前記第2の比較器入力に接続される周波数変換器と、
前記PLL装置の現動作中にロック条件が満たされるかどうかを示すロック信号、および前記基準信号に対する前記周波数変換後の信号について現存している位相時間シフトに関する2つの連続する符号反転間の持続時間を示す振動長値を生成するように構成されるロック検出器と
を少なくとも備えるPLL装置であって、
前記PLL装置は、前記ロック信号および前記振動長値を受信するために入力において接続され、前記ループフィルタの前記少なくとも1つの構成入力に出力において接続され、前記PLL装置の前記動作中に継続的に実行される分析に基づいて、前記比例係数および積分係数の前記値を出力で選択および生成するように適合されるループコントローラであって、前記分析は、
記ロック条件が満たされる場合、前記ループフィルタ内で現在使用されている前記比例係数および前記積分係数の前記それぞれの値を、前記比例係数および前記積分係数についてそれぞれ選択される新しい値で置き換える第1のステップであって、前記新しい値のそれぞれは、現在使用されている値よりも小さい、第1のステップと
記ロック条件が満たされず、前記位相時間シフトに関する2つの連続する符号反転間の前記持続時間が第1の持続時間しきい値よりも長い場合、前記ループフィルタ内で現在使用されている前記比例係数および前記積分係数の前記それぞれの値を、現在使用されている前記値が選択される前に前記比例係数および積分係数についてそれぞれ使用された前の値で置き換える第2のステップと
を含む、ループコントローラをさらに備えることを特徴とするPLL装置。
【請求項2】
前記エラー信号および前記時間フィルタ処理されたエラー信号がデジタル信号となるように、前記位相比較器および前記ループフィルタが適合されることを特徴とする請求項1に記載のPLL装置。
【請求項3】
前記エラー信号は、前記基準信号に対する前記周波数変換後の信号の前記位相時間シフトが正である限り、第1のエラー信号値に等しくなり、前記位相時間シフトが負である限り、前記第1のエラー信号値とは異なる第2のエラー信号値に等しくなるように、前記位相比較器が適合され、
前記ロック検出器が前記比較器出力に入力において接続されることを特徴とする請求項2に記載のPLL装置。
【請求項4】
前記ロック条件が、それぞれ第2の持続時間しきい値未満である連続する持続時間にわたってカウント数がしきい値数よりも大きく、前記持続時間が前記基準信号に対する周波数変換後の信号の前記位相時間シフトの2つの連続する符号反転間に存在するものであるように、前記ロック検出器が適合されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のPLL装置。
【請求項5】
前記比例係数および積分係数についてそれぞれ現在値が使用される間に前記第2のステップが実行されるとき、前記比例係数および前記積分係数について前記現在値よりもそれぞれ大きい他の値が使用される間に実行される前記第2のステップに比べて、前記第2のステップで使用される前記第1の持続時間しきい値が小さくなるように、前記ループコントローラがさらに適合されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のPLL装置。
【請求項6】
前記フィルタ出力と前記VCOモジュールのそれぞれの制御入力との間で並列に配置される少なくとも2つの制御接続を備え、すべての制御接続が、互いに異なるそれぞれのVCO利得値に関連付けられ、
前記ループコントローラが、前記VCOモジュールの前記対応する制御入力に、前記時間フィルタ処理されたエラー信号に基づく制御信号を出力するために、任意の時間に前記制御接続のうちの1つだけを選択すると共に、選択されない制御接続に対応する前記VCOモジュールの各制御入力に、それぞれの一定の制御信号が供給されるように適合され、 前記ループコントローラが、VCO利得値の降順に前記制御接続を次々に選択し、前記現在選択されている制御接続について前記ロック条件が満たされると、現在選択されているある制御接続から次の制御接続に切り換えるようにさらに適合され、
前記PLL装置は、最小のVCO利得値に関連付けられる制御接続以外の前記制御接続のうちの1つについて前記ロック条件が満たされるとき、前記時間フィルタ処理されたエラー信号に対応する平均値を求め、次いで、前記対応するVCO入力に前記平均値を前記一定の制御信号として常に供給すると共に、より小さいVCO利得値を有する前記制御接続がその後に選択されるように適合されるDCOセンタコードファインダをさらに備え、 前記最小のVCO利得値に関連付けられる前記制御接続が最後に選択されるとき、前記比例係数および前記積分係数の前記値が、前記第1及び第2のステップに基づいて選択されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のPLL装置。
【請求項7】
前記ループコントローラが、前記現在選択されている制御接続のそれよりも小さいVCO利得値に関連付けられる前記制御接続の1つに対応する前記VCOモジュールの各制御入力においてミッドレンジ制御信号を強制するようにさらに適合されることを特徴とする請求項6に記載のPLL装置。
【請求項8】
DCOセンタコードファインダが、2段シフトレジスタおよび平均化ユニットを備え、 前記基準信号に対する前記周波数変換後の前記信号の位相時間シフトのそれぞれの符号反転時に、前記時間フィルタ処理されたエラー信号を供給するために、前記シフトレジスタが接続され、
前記シフトレジスタの両方のステージ内にそれぞれ含まれる値に基づく平均値を前記ループコントローラに出力するために、前記平均化ユニットが接続されることを特徴とする請求項6または7に記載のPLL装置。
【請求項9】
PLL動作を実現するように接続された位相比較器、比例積分型のループフィルタ、電圧制御発振器(VCO)モジュール、および周波数変換器を少なくとも備えるPLL装置を操作するプロセスであって、
前記ループフィルタは、比例係数および積分係数のそれぞれの値に従ってエラー信号を時間フィルタ処理するのに適しており、
前記PLL装置は、前記PLL装置の前記動作中に継続的に分析を実行することによって選択される前記比例係数および前記積分係数に関する値を使用して動作し、前記分析は、
ック条件が満たされる場合、前記ループフィルタ内で現在使用されている前記比例係数および前記積分係数のそれぞれの値を、前記比例係数および積分係数についてそれぞれ選択される新しい値で置き換える第1のステップであって、前記新しい値のそれぞれは、現在使用されている値よりも小さい、第1のステップと、
記ロック条件が満たされず、前記基準信号に対する前記周波数変換後の信号について現存している位相時間シフトに関する2つの連続する符号反転間の持続時間が第1の持続時間しきい値よりも長い場合、前記ループフィルタ内で現在使用されている前記比例係数および前記積分係数の前記それぞれの値を、現在使用されている前記値が選択される前に前記比例係数および積分係数についてそれぞれ使用された前の値で置き換える第2のステップと
を含み、
前記位相時間シフトは、前記位相比較器によって受信される基準信号に対して、前記周波数変換器によって生成される周波数変換後の信号について存在することを特徴とするプロセス。
【請求項10】
少なくとも2つの制御接続が、前記ループフィルタのフィルタ出力と前記VCOモジュールのそれぞれの制御入力との間で並列に配置され、すべての制御接続が、互いに異なるそれぞれのVCO利得値に関連付けられる前記プロセスにおいて、
前記PLL装置の継続する動作中に、
前記VCOモジュールの前記対応する制御入力に、前記ループフィルタによって生成された時間フィルタ処理されたエラー信号に基づく制御信号を出力するために、任意の時間に前記制御接続のうちの1つだけを選択すると共に、選択されない制御接続に対応する前記VCOモジュールの各制御入力に、それぞれの一定の制御信号が供給される第3のステップと、
次いで、VCO利得値の降順に前記制御接続を次々に選択し、前記現在選択されている制御接続について前記ロック条件が満たされると、現在選択されているある制御接続から次の制御接続に切り換える第4のステップと、
最小のVCO利得値に関連付けられる制御接続以外の前記制御接続のうちの1つについて前記ロック条件が満たされるとき、前記時間フィルタ処理されたエラー信号に対応する平均値を求め、次いで、前記対応するVCO入力に前記平均値を前記一定の制御信号として常に供給すると共に、より小さいVCO利得値を有する前記制御接続がその後に選択される第5のステップと
をさらに含み、
前記最小のVCO利得値に関連付けられる前記制御接続が最後に選択されるとき、前記比例係数および前記積分係数の前記値が、前記第1及び第2のステップに基づいて選択されることを特徴とする請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
現在選択されている前記制御接続のVCO利得値よりも小さいVCO利得値に関連付けられる、選択されない制御接続に対応する前記VCOモジュールの各制御入力に供給される前記それぞれの一定の制御信号は、ミッドレンジ制御信号であることを特徴とする請求項10に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンバン非線形位相検出器と、ランダムノイズ動作モードへの管理された遷移とを有する位相ロックループ(PLL)装置に関する。本発明はまた、PLL装置を操作するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
PLL装置は、電子回路または無線送信ユニットで実装された周波数合成器用のコア要素である。次いで、ロック時間を短縮し、PLL装置の動作安定性を改善することが常に求められている。
【0003】
実際に、バンバン非線形位相検出器を備えるPLL装置は、初期開始から2つの連続する動作モードで動作する。第1の動作モードは、基準信号と周波数変換後の信号との間の位相誤差が前後に振動する緩和振動モードである。この緩和振動モードは、それ自体を、ロック状態にまだ達していないロック取得段階と、次いで、周波数変換後の信号の周波数が基準信号に対して近いまま、さらには非常には近いままとなるようにロック状態が継続的に維持されるロック段階とに分けられる。ロック状態が失われるのを回避するために動作安定性が必要であり、そうでなければ、ロック取得をやり直すべきであり、PLL装置によって生成されるクロック信号を再び使用することができるまで、時間が浪費される。PLLが生成したクロック信号の段階での低ノイズと共に動作安定性を得るために、PLL装置の開ループ利得を低減しなければならない。しかし、位相振動の大きさを低減し続けることにより、PLLが生成したクロック信号の周波数のループ制御内でノイズが取り込まれる。これは、十分な低減範囲だけPLL装置の開ループ利得を低減する間に、ロック状態が継続的に得られた後に生じるランダムノイズ動作モードである。このモードでは、アナログジッタ源が、位相検出器非線型性の十分なディザリングを生成し、この後者は、サンプリング周波数に対して無視できる、実際には10分1小さい周波数成分の信号に関する線形装置として振る舞う。PLL位相誤差はそのような信号である。
【0004】
次いで、ロック取得段階が開始した後に可能な限り迅速にランダムノイズ動作モードで動作することのできるPLL装置が求められている。
【0005】
さらに、ロック取得段階、ロック段階、およびランダムノイズ動作モードのそれぞれは、PLL装置で実装される比例積分ループフィルタに関する利得値を必要とし、それらは、最小のロック取得時間および改善された安定性を得るために、異なる。
【0006】
大きな位相誤差に関するPLL応答を線形化することを可能にし、その結果、ロック取得段階がより迅速に実施されるPLL装置が説明されている(例えば、特許文献1参照。)。このPLL装置は、位相誤差の2つの連続する符号反転間の持続時間を測定すること、およびエラー信号がループフィルタに供給される前に、測定された持続時間をエラー信号自体と組み合わせることを実装する。しかし、そのようなPLL装置は、ロック状態が実際に得られることを検出せず、それは、ランダムノイズ動作モードに達することができない。
【0007】
この状況から始めて、本発明の一目的は、信頼性が高く、迅速な方式で、ランダムノイズ音動作モードに達することのできるPLL装置を提供することにある。具体的には、本発明のPLL装置は、ロック取得段階を迅速に実施し、次いでランダムノイズ動作中を含めて可能な限りロック状態を維持すべきである。
【0008】
本発明の別の目的は、ロック状態が失われた場合、PLL装置がランダムノイズ動作モードを自動的に、可能な限り迅速に回復することができることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第8203369号明細書
【発明の概要】
【0010】
これらの目的またはその他のうちの少なくとも1つに対処するために、本発明の第1の態様は、ランダムノイズ動作モードへの管理された遷移を伴う位相ロックループ装置であって、
基準周波数を有する基準信号を入力する第1の比較器入力、周波数変換後の信号を入力する第2の比較器入力、および、位相差に応じて、2つの離散的値のうちの1つからなるエラー信号を生成するように適合される比較器出力を備えるバンバン非線形位相比較器と、
比較器出力に接続されるフィルタ入力、ならびに比例係数および積分係数のそれぞれの値を入力し、比例係数および積分係数について入力した値に従って、時間フィルタ処理されたエラー信号をフィルタ出力で生成するのに適した少なくとも1つの構成入力を備える比例積分型のループフィルタと、
制御信号が入力される少なくとも1つの制御入力、および制御信号に応じて変動するVCO周波数を有するVCO信号を生成するVCO出力を有する電圧制御発振器(VCO)モジュールと、
VCOモジュールの制御入力にフィルタ出力を接続するように構成され、その結果、制御信号が時間フィルタ処理されたエラー信号に基づく、少なくとも1つの制御接続と、
入力でVCO出力に接続され、VCO信号に基づいて周波数変換後の信号を変換器出力で生成するように適合され、変換器出力が第2の比較器入力に接続される周波数変換器と、
PLL装置の現動作中にロック条件が満たされるかどうかを示すロック信号、および基準信号に対する周波数変換後の信号について現存している位相時間シフトに関する2つの連続する符号反転間の持続時間を示す振動長値を生成するように構成されるロック検出器と
を少なくとも備える位相ロックループ装置を提案する。
【0011】
本発明によれば、PLL装置は、ロック信号および振動長値を受信するために入力で接続され、ループフィルタの少なくとも1つの構成入力に出力で接続されるループコントローラをさらに備える。ループコントローラは、PLL装置の動作中に継続的に実行される以下の分析に基づいて、比例係数および積分係数の値を出力で選択および生成するように適合される。
【0012】
本発明に係る位相ロックループ装置における分析は、ロック条件が満たされる場合、ループフィルタ内で現在使用されている比例係数および積分係数のそれぞれの値を、現在使用されている対応する値よりもそれぞれ小さいものとしてこれらの比例係数および積分係数についてそれぞれ選択される新しい値で置き換える第1のステップであって、新しい値のそれぞれは、現在使用されている値よりも小さい、第1のステップ、および
ック条件が満たされず、位相時間シフトに関する2つの連続する符号反転間の持続時間が第1の持続時間しきい値よりも長い場合、ループフィルタ内で現在使用されている比例係数および積分係数のそれぞれの値を、現在使用されている値が選択される前に比例係数および積分係数についてそれぞれ使用された前の値で置き換える第2のステップを含む。
【0013】
したがって、本発明のPLL装置の動作中、第1のステップは、ロック状態が維持されることを保証しながら、ループフィルタの比例係数および積分係数に関する値を徐々に低減することを可能にする。第2のステップは、ロック状態が再び自動的に追跡され、PLL動作の何らかの時間に失われた場合に回復されることを保証する。したがって、迅速なロック取得がまず実施されるように比例係数および積分係数の漸進的低減がもたらされる。次いで、ランダムノイズ動作モードまでの進行が、この進行の各ステージについて適切である比例係数および積分係数に関する値で達成される。したがって、ロック状態を失う危険を低減することができる。
【0014】
好ましくは、エラー信号および時間フィルタ処理されたエラー信号がデジタル信号となるように、位相比較器およびループフィルタが適合されうる。
【0015】
具体的には、エラー信号は、基準信号に対する周波数変換後の信号の位相時間シフトが正である限り、第1のエラー信号値に等しくなり、位相時間シフトが負である限り、第1のエラー信号値とは異なる第2のエラー信号値に等しくなるように、位相比較器が適合されうる。位相比較器のそのような実施形態は、単純で製造が容易であり、ロック検出器は、入力で比較器出力に接続されうる。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、ロック条件が、それぞれ第2の持続時間しきい値未満である連続する持続時間にわたってカウント数がしきい値数よりも大きく、これらの持続時間が基準信号に対する周波数変換後の信号の位相時間シフトの2つの連続する符号反転間に存在するものであるように、ロック検出器が適合されうる。ロック検出器のそのような実施形態は、単純で製造が容易である。
【0017】
有利には、比例係数および積分係数についてそれぞれ現在値が使用される間にこの第2のステップが実行されるとき、比例係数および積分係数について現在値よりもそれぞれ大きい他の値が使用される間に実行される第2のステップに比べて、第2のステップで使用される第1の持続時間しきい値が小さくなるように、ループコントローラがさらに適合されうる。したがって、PLL装置のランダムノイズ動作中に、ロック状態の喪失への迅速な反応が達成されうる。
【0018】
本発明のPLL装置の改善は、例えばマルチスケールレンジ構造の間のVCO周波数範囲を選択するための、いくつかの制御入力を備えるVCOモジュールに関する。この目的で、PLL装置は、フィルタ出力とVCOモジュールのそれぞれの制御入力との間で並列に配置される少なくとも2つの制御接続を備えることができる。すべての制御接続は、互いに異なるそれぞれのVCO利得値に関連付けられる。次いで、VCOモジュールの対応する制御入力に、時間フィルタ処理されたエラー信号に基づく制御信号を送信するために、任意の時間にこれらの制御接続のうちの1つだけを選択すると共に、選択されない制御接続に対応するVCOモジュールの各制御入力に、それぞれの一定の制御信号が供給されるように、ループコントローラが適合されうる。ループコントローラはさらに、VCO利得値の降順に制御接続を次々に選択し、現在選択されている制御接続についてロック条件が満たされると、現在選択されているある制御接続から別の制御接続に切り換えるように適合される。さらに、PLL装置はまた、最小のVCO利得値に関連付けられるもの以外の制御接続のうちの1つについてロック条件が満たされるとき、時間フィルタ処理されたエラー信号に対応する平均値を求め、次いで、対応するVCO入力にこの平均値を一定の制御信号として常に供給すると共に、より小さいVCO利得値を有する制御接続がその後に選択されるように適合されるデジタル制御発振器(DCO)センタコードファインダをも備える。最後に、最小のVCO利得値に関連付けられる制御接続が最後に選択されるとき、比例係数および積分係数の値が、第1及び第2のステップに基づいて選択される。
【0019】
好ましくは、現在選択されている制御接続のそれよりも小さいVCO利得値に関連付けられる1つの制御接続に対応するVCOモジュールの各制御入力でミッドレンジ制御信号を強制するように、ループコントローラが適合されうる。
【0020】
単純で製造が容易なDCOセンタコードファインダの実施形態によれば、この後者は、2段シフトレジスタおよび平均化ユニットを備えることができる。次いで、基準信号に対する周波数変換後の信号の位相時間シフトのそれぞれの符号反転時に、時間フィルタ処理されたエラー信号を供給するために、シフトレジスタが接続される。シフトレジスタの両方のステージ内にそれぞれ含まれる値に基づく平均値をループコントローラに送信するために、平均化ユニットが接続される。
【0021】
本発明の第2の態様は、PLL動作を提供するように接続された位相比較器、比例積分型のループフィルタ、VCOモジュール、および周波数変換器を少なくとも備えるPLL装置を操作するプロセスを提案する。ループフィルタは、比例係数および積分係数のそれぞれの値に従ってエラー信号を時間フィルタ処理するのに適している。本発明によれば、PLL装置は、PLL装置の動作中に継続的に第1及び第2のステップを実行することによって選択される比例係数および積分係数に関する値を使用して動作する。第2のステップに関係する位相時間シフトは、位相比較器によって受信される基準信号に対して、周波数変換器によって生成される周波数変換後の信号について存在するものである。そのような動作プロセスは、第1の発明の態様によるPLL装置を使用して実装されうる。
【0022】
VCOモジュールがいくつかの制御入力を備えるとき、少なくとも2つの制御接続が、フィルタ出力とVCOモジュールのそれぞれの制御入力との間で並列に配置されうる。すべての制御接続を、互いに異なるそれぞれのVCO利得値に関連付けることができる。次いで、プロセスは、PLL装置の継続する動作中に、
VCOモジュールの対応する制御入力に、ループフィルタによって生成された時間フィルタ処理されたエラー信号に基づく制御信号を送信するために、任意の時間に制御接続のうちの1つだけを選択すると共に、選択されない制御接続に対応するVCOモジュールの各制御入力に、それぞれの一定の制御信号が供給される第3のステップ
したがって、VCO利得値の降順に制御接続を次々に選択し、現在選択されている制御接続についてロック条件が満たされると、現在選択されているある制御接続から別のものに切り換える第4のステップ、および
最小のVCO利得値に関連付けられる制御接続以外の制御接続のうちの1つについてロック条件が満たされるとき、時間フィルタ処理されたエラー信号に対応する平均値を求め、次いで、対応するVCO入力にこの平均値を一定の制御信号として常に供給すると共に、より小さいVCO利得値を有する制御接続がその後に選択される第5のステップ
をさらに含むことができる。
【0023】
最後に、最小のVCO利得値に関連付けられる制御接続が最後に選択されるとき、比例係数および積分係数の値が、第1及び第2のステップに基づいて選択される。
【0024】
好ましくは、現在選択されている制御接続のそれよりも小さいVCO利得値に関連付けられる、選択されない制御接続に対応するVCOモジュールの各制御入力に供給されるそれぞれの一定の制御信号は、ミッドレンジ制御信号である。
【0025】
次に、本発明の好ましいが非限定的な実施形態に関する添付の図を参照しながら、本発明のこれらおよび他の特徴を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態によるPLL装置のブロック図である。
図2図1のPLL装置の動作に関するダイアグラムであり、(a)はPLLが生成した信号のエラー信号に関する時間変動を示す、図1のPLL装置の動作に関するダイアグラムであり、(b)は、PLLが生成した信号の周波数に関する時間変動を示す、図1のPLL装置の動作に関するダイアグラムである。
図3図1のPLL装置で実装される動作ステップを示すブロック図である。
図4図1に対応するが、発明の改善を含む図である。
【0027】
これらの図のうちの相異なる図に示される同一の参照番号は、同一の機能を有する要素の同一の要素を示す。さらに、周知の機能および動作を有するが本発明の特徴に直接的に結びつけられない構成要素は、詳細には説明されない。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1を参照すると、その中で示される参照番号は以下の意味を有する。
1 1aおよび1bとそれぞれ符号が付けられる入力と、出力1cとを有する、位相検出器と表される位相比較器
2 信号入力2a、構成入力2bおよび2c、ならびに信号出力2dを有する、PI_FILTERと表されるループフィルタ
3 制御信号の入力専用の制御入力3aと、VCO信号を生成する出力3bとを有する電圧制御発振器(VCO)モジュール
4 入力4aおよび出力4bを有する、N−DIVと表される周波数変換器
5 基準周波数FREFを有する基準信号を供給する、REF_CLOCKと表される基準クロック
6.6aおよび6bとそれぞれ符号が付けられる検出器入力と、出力6cおよび6dとを有するロック検出器
7 LOOP_CTRLと表されるループコントローラ
8 フィルタ出力2dからVCOモジュール3の制御入力3aまで延びる制御接続
100 PLLが生成した信号を送達する、PLL装置の出力
基準クロック5は、その基準周波数FREFが正確に周波数であることを条件として、任意のタイプでよい。基準クロック5は、位相比較器1の入力1aに基準信号を供給するように接続される。
【0029】
位相比較器1は、入力1aで受信した基準信号と、他方の比較器入力1bに供給される別の周期的信号との位相差の符号を表すエラー信号を出力1cで生成する。この位相差は、位相比較器1に入力される両方の信号のそれぞれの位相間の時間シフトである。
【0030】
ループフィルタ2は比例積分型である。それは、入力2aに供給されるエラー信号に基づく時間フィルタ処理されたエラー信号を出力2dで生成する。エラー信号は、実際に使用される位相比較器1およびループフィルタ2のタイプに対応して、アナログでもよいが、デジタルのほうが好ましい。当業者には周知であるように、任意のフィルタをそのパルス応答を使用して解析することができる。次いで、比例積分フィルタが、1つの極および1つのゼロ値を有するそのパルス応答のラプラス変換を伴うフィルタと定義される。そのようなループフィルタの動作は、2つの係数、すなわち比例係数Kおよび積分係数Kを、ループフィルタ2の構成入力2bおよび2cに供給されるそれぞれの値で実装する。
【0031】
VCOモジュール3は、入力3aで入力される制御信号によって決定される周波数を有するVCO信号を出力3bで生成する。FVCOと表されるこの周波数は、制御信号に応じて変動する。
【0032】
制御信号は、制御接続8内の時間フィルタ処理されたエラー信号から得られる。VCOモジュール3の入力3aに応じて、制御接続8は、デジタル−アナログ変換器80と、恐らくは低域フィルタ(図示せず)などの別の構成要素とを含むことができる。
【0033】
周波数変換器4は、入力4aで受信したVCO信号に基づく周波数変換後の信号を出力4bにおいて生成するように構成された周波数分割器でよい。Nは、周波数変換器4内で実装されるゼロでない除数を表し、したがって周波数変換後の信号は、VCO信号の周波数FVCOをNで割ることによってVCO信号から得られる。よって、得られた周波数変換後の信号が、位相比較器1の入力1bに供給される。
【0034】
位相比較器1、ループフィルタ2、VCOモジュール3、および周波数変換器4は、通常のPLLループを形成し、周波数上昇後の信号が出力100において送達される。PLLループ動作では、VCO周波数FVCOを同調するために使用される制御信号が、ループフィルタによって実施される時間フィルタ処理によってエラー信号から導出される。したがって、時間フィルタ処理されたエラー信号および制御信号はそれぞれ、VCOモジュール3によって現在合成されているVCO周波数FVCOを表す。
【0035】
図2(a)および(b)のダイアグラムは、図1のPLL装置の動作での完璧な進行を示す。そのような進行は理想化され、目標の動作と解釈されるからである。PLLロック状態は、PLL装置の継続する動作に対応し、周波数変換後の信号と基準信号のそれぞれの周波数間の差は、定常またはほぼ定常のシーケンスに従って変動する。これは、示されるロック段階に対応する。ロック状態が得られる前に、PLLループは、周波数変換後の信号と基準信号との周波数差を低減するために動作し、緩和前の周波数差の可能な振動により、ロック状態に至る。この初期動作は一般にロック取得段階と呼ばれ、ロック段階の最初の部分と共に緩和振動動作を形成する。
【0036】
図2(a)および(b)のダイアグラムは、垂直方向の位置合せに沿って互いに対応する。共通のx軸は時間であり、tと表される。図2(a)のy軸は、位相比較器1によって出力されるエラー信号である。ここでは、2状態位相比較器が例示のために使用され、周波数変換後の信号の位相が基準信号に対する時間リードを有するとき、出力される値が−0.5ボルトに等しく、周波数変換後の信号の位相が基準信号に対する遅延を有するとき、+0.5ボルトに等しい。第1の状況では、VCOモジュール3の入力3aに供給される制御信号のために、FVCO周波数が低減され、第2の状況では、FVCO周波数が増大される。図2(b)は、FVCOがN×FREFにほぼ等しいロック状態が得られる前の、FVCO周波数の2つの振動を示す。
【0037】
やはり一般に知られているように、ロック取得段階の持続時間、ロック状態の安定性、およびFVCO周波数の残留振動が、実際に実装される比例係数Kおよび積分係数Kの値に依存する。FVCO/NとFREFとの間の差の急激な低減を可能にするために、K値およびK値は、緩和振動モードの始まりでは高くなるべきである。その後で、継続する振動を回避し、急激な緩和を可能にするために、係数KおよびKは低減されるべきである。
【0038】
しかし、1つの問題は、周波数変換後の信号と基準信号との間の位相差がランダムノイズの振幅と同じ順序であるときであっても、FREFに可能な限り近いFVCO/Nにおいてロック状態を維持することである。これは、ランダムノイズ動作モードに対応し、PLLが生成した信号のFVCO周波数が、ランダム振動持続時間で基準周波数FREFを約N回振動する(図2(a)および(b)の右側参照)。PLLノイズの増大を回避することは、制御信号に関する小さい値を処理することを必要とする。この目的のために、K値およびK値を再び低減すべきであるが、次いで、時にはロック状態が失われることがある。図3に示される本発明のプロセスは、PLL動作の迅速な進行を提供し、次いでランダムノイズ動作モードで動作することに関するこれらの問題を組み合わせる。
【0039】
図3では、符号Tは、ロック取得段階とロック段階との間の遷移に対応するロック条件テストを表す。比例係数Kおよび積分係数Kに関して(K、Kと表される値の対は、ロック取得段階で最初に使用される値に対応する。ロック条件が満たされると、ロック状態が誤って失われるのでない限り、K値およびK値が段階的に低減される。次いで、最後の低減の前のKおよびKについて使用された前の値が、帯域幅BWと符号が付けられる後進ステップで再び取られ、回復されたこの構成から、低減プロセスが再び続行される。
【0040】
ステップTおよびRn+1が、実装される係数低減プロセスの反復シーケンスを形成する。(K、Kと表される値の対が、ループフィルタ2内実装されており、nが1以上の整数であると仮定する。ロック条件が制御ステップTで肯定的に検出される場合、低減ステップRn+1により、値の対(K、Kn+1がその時から実装される。制御ステップTでロック条件が満たされないように見える場合、エラー信号の振動長が分析される。TH1と表される持続時間しきい値よりも大きい振動長値は、ロック状態が実際に失われることを確証する。この状況では、プロセスは、現在のものの前に使用されたK値およびK値に変更するステップBW、すなわちテストステップTn−1が以前に肯定的にチェックされ、現在のK値およびK値を生成した低減ステップRに至る前に使用された値の対(K、Kn−1に変更するステップBWにおいて継続する。振動長値が持続時間しきい値TH1以下であることは、値の対(K、Kを用いた、PLL装置のさらに継続する動作が、ロック状態が実際に継続中であるか、それとも失われているかを述べるためにさらに必要であることを意味する。K値およびK値を低減するそのようなプロセスを、ランダムノイズ動作モードに入るまで続行することができ、PLL動作がこのモードでさらに続行される。以下の表は、本発明を実装するための可能な値の対(K、Kを、第1の持続時間しきい値TH1に関する値と共に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
低減ステップ時または低減ステップ後にロック状態を失う確率を低減するように、具体的にはK値およびK値のスムーズな低減を生み出すために、整数nの最大値は決まらない。持続時間しきい値TH1は、2つの連続するn値について一定であることがあり、または減少していることがある。
【0043】
ロック条件をチェックすることが、ロック検出器6(図1)によって継続的に実行され、ロック検出器6は、現PLL状態がロックされるか、ロック解除されるかを示すロック信号を生成する。振動長値もロック検出器6において提供することができる。全体のプロセスは、ループコントローラ7によって制御され、ループコントローラ7は、ロック検出器6によってロック信号および振動長値が供給される。この目的で、位相比較器1によって生成されるエラー信号が、ロック検出器6の入力6aに供給され、エラー信号内に存在するそれぞれの一定符号セグメントの時間長を測定するためのベースクロックとして基準信号が、入力6bに供給される。図4は、いくつかの発明改善による、本発明PLLの可能な実施形態を示す。
【0044】
図4のボックス6の内部が、ロック検出器のための可能な機能スキームを示す。符号変更検出器と表される検出器11が、検出器入力6aにおいて受信されるエラー信号の符号変化を識別する。REF_CYCLESカウンタと表されるカウンタ12が、基準クロック5から検出器入力6bで受信した基準信号中の連続するクロックサイクルをカウントする。検出器11が符号変化を識別するごとに、カウンタ12がゼロにリセットされ、その結果、カウンタ12は、エラー信号内で現在継続中の一定符号セグメントの持続時間に関する値を出力で生成する。この持続時間は、次の符号変化が生じた後の振動長値であり、検出器出力6dを介してループコントローラ7に送られる。
【0045】
振動長値が第2の持続時間しきい値TH2未満であるとき、比較器13は正の信号を出力する。次いで、パターンカウンタ14は、次々に検出される、TH2より短いそのような振動長の数を出力する。それは、持続時間しきい値TH2を超過する1つの振動長がカウンタ12によって測定された後に、ゼロにリセットされる。比較器13およびパターンカウンタ14の更新が、検出器11によって示される各符号変化時にトリガされる。パターンカウンタ14によって出力される、TH2未満であると測定された振動長の数が、比較器15によってしきい値数TH0と比較される。数がしきい値TH0を超過する場合、比較器15は、現在継続中のPLL動作に関するロック状態に対応する値を有するロック信号を出力する。そうでない場合、PLL動作に関するロック解除状態を示す値を有するロック信号が出力される。例えば、しきい値数TH0は4に等しくてよく、第2の持続時間しきい値TH2は30に等しくてよい。
【0046】
ループコントローラ7は、プロセスが本明細書によって与えられた後の当業者の範囲内の方式で、図3のプロセスに対応するアルゴリズムを実装するように適合される。
【0047】
図4のボックス2の内部は、比例係数Kと積分係数Kの両方の役割を示す、比例積分フィルタの通常の表現である。符号z−1は、処理された以前の値を保持すること、したがって現在値との加算による時間積分機能を生成することを示す。
【0048】
参照番号81〜83は、いくつかの制御接続、この実施形態では3つの制御接続を表し、それぞれのフィルタ出力2dをVCOモジュール3のそれぞれの別々の制御入力31a〜33aに接続する。例示のために、各制御接続81〜83は、それぞれのデジタル−アナログ変換器81b〜83bを備えることができる。各制御接続81〜83がそれぞれのVCO利得値に関連付けられ、関連付けられたVCO利得値は、制御接続のうちの任意の他の制御接続のVCO利得値とは異なると仮定される。例えば、VCO利得は、制御接続81について高く、制御接続82について中間であり、制御接続83について小さい。ループコントローラ7によって生成される時間フィルタ処理されたエラー信号または一定の信号を各制御接続に入力するために、制御接続81〜83のそれぞれの入口にマルチプレクサ81a〜83aを配置することができる。マルチプレクサ81a〜83aは、現在継続中であるPLL動作ステップに応じて、ループフィルタ7によってそれ自体で制御され、したがって一度にマルチプレクサ81a〜83aのうちの1つだけが、フィルタ出力2dに接続される。
【0049】
DCOセンタコードファインダ90は、最後の振動ジャンプにわたる時間フィルタ処理されたエラー信号の平均値を計算するのに適したモジュールを表す。エラー信号の符号変化によってそれを刻時することもできる。モジュール90に関する単純な設計によれば、それは、それぞれREG1およびREG2と表される2つのステージ91および92を備えるシフトレジスタを備えることができる。したがって、時間フィルタ処理されたエラー信号の連続する値が、まずステージ91にプッシュされ、次いでステージ92にプッシュされる。時間フィルタ処理されたエラー信号の2つの最後の値の平均値を出力するように、平均化ユニット93では入力において両方のステージ91および92の内容が供給される。この平均値がループコントローラ7に送られ、以下で説明するように、この2つの最後の値の平均値がそれをマルチプレクサ81a〜83aに適切に転送する。
【0050】
PLL装置がVCOモジュール3に対するいくつかの制御接続を備えるとき、周波数FVCOに関する範囲の設定が、VCO利得値の中で最高の利得値を有する制御接続、すなわちこの例では制御接続81と共に開始される。この第1のPLL動作ステップの間、ループコントローラ7は、制御接続82および83によってそれぞれ送信される制御信号を、固定の初期値、例えばそれぞれのミッドレンジ値に設定する。この目的で、ループコントローラ7の対応する出力に制御入力32aおよび33aを接続するように、マルチプレクサ82aおよび83aがループコントローラ7によって制御される。マルチプレクサ81aは、VCOモジュール3の制御入力31aにフィルタ出力2dを同時に接続する。それはまた、ループフィルタ2の比例係数および積分係数を、高いVCO利得値に対して適切な値に設定する。例えば、K値を50に設定し、Kを0.5に設定することができる。次いで、PLL動作がロック状態に至り、制御接続81によって送信される時間フィルタ処理されたエラー信号についてモジュール90によって計算される平均値に収束する。この平均値が、ロック状態に達した後に合成される平均FVCO周波数に対応する。次いで、それが、制御接続81に対応するVCO制御入力31aでループコントローラ7によって明確に設定される。
【0051】
この周波数範囲設定が制御接続82について再現される。制御接続81によって送信される制御信号が、ループコントローラ7によって前に決定された平均値に従って維持される。制御接続83によって送信される制御信号が、再びその固定の初期値に維持される。次に、PLL動作が、制御接続82によって送信される時間フィルタ処理されたエラー信号に関する別の平均値に至る。この別の平均値が、制御接続82に対応するVCO制御入力32aにおいてループコントローラ7によって明確に設定される。
【0052】
したがって、制御接続81および82によって送信される両方の制御信号が設定されると、ループコントローラ7は、フィルタ出力2dを制御接続83の入口に接続する。PLL動作は、最小のVCO利得値に関連付けられる制御接続がこうしてアクティブとすることを続ける。この最後の動作ステップは、図3を参照しながら先に説明したものである。
【0053】
明らかに、VCOモジュールに提供される複数の制御接続について説明したばかりの本発明の改善を、任意の数の制御接続に拡張することができる。
図1
図2
図3
図4