(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5732253
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】絶縁ゲートバイポーラ導電トランジスタ(IBCT)および関連する製作方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20150521BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20150521BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20150521BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20150521BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
H01L29/78 652E
H01L29/78 652T
H01L29/78 655A
H01L29/78 655G
H01L29/78 656A
H01L29/78 658E
【請求項の数】27
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2010-525798(P2010-525798)
(86)(22)【出願日】2008年7月14日
(65)【公表番号】特表2010-539728(P2010-539728A)
(43)【公表日】2010年12月16日
(86)【国際出願番号】US2008008574
(87)【国際公開番号】WO2009038610
(87)【国際公開日】20090326
【審査請求日】2010年5月17日
(31)【優先権主張番号】11/857,037
(32)【優先日】2007年9月18日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592054856
【氏名又は名称】クリー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CREE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン チンチュン
【審査官】
工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2004/0256659(US,A1)
【文献】
特表2000−509559(JP,A)
【文献】
特開平10−290011(JP,A)
【文献】
特開平05−259443(JP,A)
【文献】
特開平2−275675(JP,A)
【文献】
特表2003−530716(JP,A)
【文献】
特開2008−211178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/336
H01L27/04
H01L29/12
H01L29/739
H01L29/78−29/792
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ゲートバイポーラ導電トランジスタ(IBCT)であって、
第1の導電型を有するドリフト層と、
前記ドリフト層内にあり、前記第1の導電型とは反対の第2の導電型を有するエミッタウェル領域と、
前記ドリフト層内にあり、前記第2の導電型を有するウェル領域であって、前記エミッタウェル領域から離隔され、前記エミッタウェル領域とウェル領域の間の空間が、前記IBCTのJFET領域を定める、ウェル領域と、
前記ウェル領域内にあり、前記第1の導電型を有するエミッタ領域と、
前記ウェル領域内に前記エミッタ領域に隣接してあり、前記第2の導電型を有するコンタクト領域と、
前記エミッタウェル領域、前記ウェル領域、および前記JFET領域上にあり、前記第1の導電型を有する埋込みチャネル層と
を備えるIBCT。
【請求項2】
前記埋込みチャネル層は、エピタキシャル層を備える請求項1に記載のIBCT。
【請求項3】
前記埋込みチャネル層は、約1000Åから約3000Åの厚さを有する請求項2に記載のIBCT。
【請求項4】
前記埋込みチャネル層は、約5×1015から約1×1017cm−3のドーピング濃度を有する請求項3に記載のIBCT。
【請求項5】
前記ドリフト層は、10kVを上回る用途向けに、約2×1014cm−3から約6×1014cm−3のドーピング濃度、および約100μmから約120μmの厚さを有する請求項4に記載のIBCT。
【請求項6】
前記IBCTは、約8.0kVの阻止電圧、および約0.1mA/cm2未満の漏れ電流を有する請求項5に記載のIBCT。
【請求項7】
前記IBCTは、−16Vのゲートバイアス時に25℃で50mΩ・cm2の微分オン抵抗を有する請求項6に記載のIBCT。
【請求項8】
前記第2の導電型を有する基板をさらに備え、
前記ドリフト層は、前記基板内に設けられ、
前記基板は、オフアクシスn型炭化ケイ素基板を備え、
前記ドリフト層および前記埋込みチャネル層は、p型炭化ケイ素エピタキシャル層を備える請求項7に記載のIBCT。
【請求項9】
前記第1の導電型はn型を有し、前記第2の導電型はp型を有する請求項1に記載のIBCT。
【請求項10】
前記第1の導電型はp型を有し、前記第2の導電型はn型を有する請求項1に記載のIBCT。
【請求項11】
前記第2の導電型を有する基板であって、前記ドリフト層が前記基板内に設けられる基板と、
前記基板と前記ドリフト層の間にあり、前記第1の導電型を有するバッファ層と
をさらに備える請求項1に記載のIBCT。
【請求項12】
絶縁ゲートバイポーラ導電トランジスタ(IBCT)を形成する方法であって、
第1の導電型を有するドリフト層を設けるステップと、
前記ドリフト層内にあり、前記第1の導電型とは反対の第2の導電型を有するエミッタウェル領域を設けるステップと、
前記ドリフト層内にあり、前記第2の導電型を有するウェル領域を設けるステップであって、前記ウェル領域が、前記エミッタウェル領域から離隔され、前記エミッタウェル領域と前記ウェル領域の間の空間が、前記IBCTのJFET領域を定める、ステップと、
前記ウェル領域内にあり、前記第1の導電型を有するエミッタ領域を設けるステップと、
前記ウェル領域内に前記エミッタ領域に隣接してあり、前記第2の導電型を有するコンタクト領域を形成するステップと、
前記エミッタウェル領域、前記ウェル領域、および前記JFET領域上にあり、前記第1の導電型を有する埋込みチャネル層を設けるステップと
を含む方法。
【請求項13】
前記エミッタウェル領域を設けるステップは、エピタキシャル成長を使用して前記エミッタウェル領域を設けるステップを含み、
前記ウェル領域を設けるステップは、エピタキシャル成長を使用して前記ウェル領域を設けるステップを含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記埋込みチャネル層を設けるステップは、前記ドリフト層と同じ極性を有するエピタキシャル再成長を使用して前記埋込みチャネル層を設けるステップを含む請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記埋込みチャネル層を設けるステップは、約1000Åから約3000Åの厚さを有する埋込みチャネル層を設けるステップを含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記埋込みチャネル層を設けるステップは、約5×1015から約1×1017cm−3のドーピング濃度を有する前記埋込みチャネル層を設けるステップを含む請求項14に記載の方法。
【請求項17】
オフアクシスn型炭化ケイ素基板を設けるステップをさらに含み、
前記ドリフト層を設けるステップは、p型炭化ケイ素エピタキシャルドリフト層を設けるステップを含み、
前記埋込みチャネル層を設けるステップは、p型炭化ケイ素エピタキシャルチャネル層を設けるステップを含む請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記ドリフト層を設けるステップは、約2×1014cm−3から約6×1014cm−3のドーピング濃度、および約100μmから約120μmの厚さを有する前記ドリフト層を設けるステップを含む請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記IBCTは、約8.0kVの阻止電圧、および約0.1mA/cm2未満の漏れ電流を有する請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記IBCTは、−16Vのゲートバイアス時に25℃で50mΩ・cm2の微分オン抵抗を有する請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の導電型はn型を有し、前記第2の導電型はp型を有する請求項12に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の導電型はp型を有し、前記第2の導電型はn型を有する請求項12に記載の方法。
【請求項23】
基板を設けるステップであって、前記ドリフト層を設けるステップは、前記ドリフト層を前記基板内に設けるステップを含む、ステップと、
前記基板と前記ドリフト層の間にバッファ層を設けるステップであって、前記バッファ層は前記第1の導電型を有する、ステップと
をさらに含む請求項12に記載の方法。
【請求項24】
炭化ケイ素絶縁ゲートバイポーラ導電トランジスタ(IBCT)であって、
n型導電性炭化ケイ素基板と、
前記炭化ケイ素基板上にあるp型炭化ケイ素ドリフト層と、
前記p型炭化ケイ素ドリフト層内にあるn型炭化ケイ素エミッタウェル領域と、
前記p型炭化ケイ素ドリフト層内にあるn型炭化ケイ素ウェル領域であって、前記n型炭化ケイ素エミッタウェル領域から離隔され、前記n型炭化ケイ素エミッタウェル領域と前記n型炭化ケイ素ウェル領域の間の空間が前記IBCTのJFET領域を定める、n型炭化ケイ素ウェル領域と、
前記ウェル領域内にあるp型炭化ケイ素エミッタ領域と、
前記ウェル領域内に前記エミッタ領域に隣接してあるn型コンタクト領域と、
前記エミッタウェル領域、前記ウェル領域、および前記JFET領域上にあるp型炭化ケイ素埋込みチャネル層と
を備える炭化ケイ素IBCT。
【請求項25】
集積回路基板をさらに備え、
前記ドリフト層は、前記集積回路基板上に設けられ、
前記埋込みチャネル層は、前記ドリフト層の前記集積回路基板とは反対側の表面上に設けられる請求項1に記載のIBCT。
【請求項26】
前記コンタクト領域は、約1×1018cm−3のドーピング濃度を有する請求項1に記載のIBCT。
【請求項27】
絶縁ゲートバイポーラ導電トランジスタ(IBCT)であって、
第1の導電型を有する半導体層と、
前記半導体層内にあり、前記第1の導電型とは反対の第2の導電型を有するエミッタウェル領域と、
前記半導体層内にあり、前記第2の導電型を有するウェル領域であって、前記エミッタウェル領域から離隔される、ウェル領域と、
前記ウェル領域内にあり、前記第1の導電型を有するエミッタ領域と、
前記ウェル領域内に前記エミッタ領域に隣接してあり、前記第2の導電型を有するコンタクト領域と
を備えるIBCT。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<特許に係る米国政府の言明>
本発明は、ONR/DARPAから授与された契約番号N00014−05−C−0202に基づいた米国政府の援助により行われた。米国政府は、本発明に対していくつかの権利を有する。
【0002】
本発明は、パワー半導体デバイスおよび関連するパワー半導体デバイス製作方法に関し、より詳細には、ハイパワーバイポーラトランジスタおよび関連するハイパワーバイポーラトランジスタ製作方法に関する。
【背景技術】
【0003】
炭化ケイ素(SiC)を用いて形成されたパワーデバイスは、SiCの高い臨界電場および広いバンドギャップにより、シリコン上の電力デバイスに比べて、高速用途、大電力用途、および/または高温用途に大きな利点を示すことが期待される。約5kVを上回る電圧など高電圧を阻止することのできるデバイスの場合、混入された少数キャリアによって生じる導電率変調を通じてドリフト層抵抗を低減させるために、バイポーラの動作をさせることが望ましい場合がある。しかし、炭化ケイ素内のバイポーラデバイスにとっての1つの技術的課題は、おそらくは炭化ケイ素の単結晶内に基底面転位(BPD)が存在することによる、経時的な順方向電圧劣化である。したがって、大電力用途には、SiCショットキーダイオードやMOSFETなどのユニポーラデバイスが一般に使用されている。
【0004】
10kVの阻止能力を有し、約100mΩ×cm
2のオン抵抗率を有するSiC DMOSFETデバイスが製作されている。DMOSFETデバイスは、DMOSFETデバイスの多数キャリアの性質により、例えば100ns未満の非常に速いスイッチング速度を示すことができる。しかし、デバイスの所望の阻止電圧が、例えば15kVまで、または15kVよりも大きく増大するとき、この増大に対応してドリフト層の厚さが増大するため、MOSFETデバイスのオン抵抗は大幅に増大し得る。この問題は、高温時に、バルク移動度が低下することにより悪化する恐れがあり、結果として過度の電力消費が生じ得る恐れがある。
【0005】
SiC結晶材料成長の進歩に伴い、BPD関連の問題を抑制するためのいくつかの手法が開発されてきた。例えば、非特許文献1に述べられている。こうした開発は、サイリスタ、GTOなどのSiCバイポーラデバイスの開発を促進し、かつ/または潜在的用途を増大する可能性がある。サイリスタおよび/またはGTOは、たとえこれらが小さな順方向電圧降下をもたらすことができても、ゲートの駆動および保護用に大きな整流回路を必要とすることがある。したがって、SiCバイポーラデバイスがゲートターンオフ能力を有することが望ましい場合がある。
【0006】
SiCデバイスは、従来型のシリコンデバイスのオン抵抗率よりも2桁小さなオン抵抗率をもたらすことができる。優れたオン状態特性、妥当なスイッチング速度、および/または優良な安全動作領域(SOA)により、4H−SiC絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が、パワースイッチング用途により適したものになりつつある。SiC IGBTは、例えば、特許文献1および特許文献2において論じられており、これらの開示は、これらの全体が記載されているのと同様に本明細書に組み込まれる。
【0007】
しかし、バイポーラデバイスの性質により、SiC IGBTは電流飽和能力を欠いていることがあり、またSiC内のp型ドーパントについて、高温時に、より高い活性化パーセンテージを有することがある。p型活性化パーセンテージが高いと、pチャネルIGBTのnウェル間のJFET効果がより低くなり得るか、またはnチャネルIGBTのp型コレクタからの少数混入効率がより高くなり得る。これらの状況はどちらも、負のオン抵抗温度係数をもたらすことがあり得る。
【0008】
SiC上でキャリア寿命が短いことにより、エミッタ側での多数キャリア変調が少なくなることがあり、その結果、IGBTの順方向電圧が高くなることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,831,288号明細書
【特許文献2】米国特許第6,121,633号明細書
【特許文献3】米国特許出願第11/711,383号明細書
【特許文献4】米国特許第5,972,801号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】B. Hull, M. Das, J. Sumakeris, J. Richmond, and S. Krishinaswami, "Drift-Free 10-kV, 20-A 4H-SiC PiN Diodes", Journal of Electrical Materials, Vol. 34, No. 4, 2005
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のいくつかの実施形態は、絶縁ゲートバイポーラ導電トランジスタ(IBCT)を提供する。IBCTは、第1の導電型を有するドリフト層を含む。ドリフト層内にエミッタウェル領域が設けられ、エミッタウェル領域は、第1の導電型とは反対の第2の導電型を有する。ドリフト層内にウェル領域が設けられ、ウェル領域は第2の導電型を有する。ウェル領域は、エミッタウェル領域から離隔される。エミッタウェル領域とウェル領域の間の空間が、IBCTのJFET領域を定める。ウェル領域内にエミッタ領域が設けられ、エミッタ領域は第1の導電型を有し、エミッタウェル領域、ウェル領域、およびJFET領域上に埋込みチャネル層が設けられ、埋込みチャネル層は第2の導電型を有する。
【0012】
本発明のさらなる実施形態では、埋込みチャネル層は、エピタキシャル層を含むことがある。埋込みチャネル層は、約1000Åから約3000Åの厚さ、および約5×10
15から約1×10
17cm
-3のドーピング濃度を有することがある。
【0013】
本発明のさらに別の実施形態では、基板を設けることがあり、基板は、オフアクシスn型炭化ケイ素基板とすることがあり、ドリフト層および埋込みチャネル層は、p型炭化ケイ素エピタキシャル層とすることがある。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態では、ドリフト層は、10kVを上回る用途向けに、約2×10
14cm
-3から約6×10
14cm
-3のドーピング濃度、および約100μmから約120μmの厚さを有することがある。
【0015】
本発明のさらなる実施形態では、IBCTは、約8.0kVの阻止電圧、および約0.1mA/cm
2未満の漏れ電流を有することがある。
【0016】
本発明のさらに別の実施形態では、IBCTは、−16Vのゲートバイアスにおいて25℃で50mΩ・cm
2の微分オン抵抗を有することがある。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、第1の導電型をn型とし、第2の導電型をp型とすることがある。ほかのいくつかの実施形態では、第1の導電型をp型とし、第2の導電型をn型とすることがある。
【0018】
本発明のさらなる実施形態では、基板とドリフト層の間にバッファ層を設けることがあり、この場合、バッファ層は第1の導電型を有する。
【0019】
本発明のさらに別の実施形態は、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)部分および絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)部分を含むIBCTを提供する。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態は、炭化ケイ素絶縁ゲートバイポーラ導電トランジスタ(IBCT)を提供する。IBCTは、n型導電性炭化ケイ素基板と、炭化ケイ素基板上にp型炭化ケイ素ドリフト層とを含む。p型炭化ケイ素ドリフト層内にn型炭化ケイ素エミッタウェル領域が設けられ、p型炭化ケイ素ドリフト層内にあるn型炭化ケイ素ウェル領域が、n型炭化ケイ素エミッタウェル領域から離隔される。n型炭化ケイ素エミッタウェル領域とn型炭化ケイ素ウェル領域の間の空間が、IBCTのJFET領域を定める。ウェル領域内にp型炭化ケイ素エミッタ領域が設けられ、エミッタウェル領域、ウェル領域、およびJFET領域上に、p型炭化ケイ素埋込みチャネル層が設けられる。
【0021】
本発明の実施形態は、上記でデバイスの実施形態に関して論じられているが、方法の実施形態も本明細書で提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態に係る絶縁ゲートバイポーラ導電トランジスタ(IBCT)の断面図である。
【
図2A】本発明のいくつかの実施形態に係るIBCTを製作する際の処理ステップを示す断面図である。
【
図2B】本発明のいくつかの実施形態に係るIBCTを製作する際の処理ステップを示す断面図である。
【
図2C】本発明のいくつかの実施形態に係るIBCTを製作する際の処理ステップを示す断面図である。
【
図2D】本発明のいくつかの実施形態に係るIBCTを製作する際の処理ステップを示す断面図である。
【
図3】Aは、本発明のいくつかの実施形態に係るIBCTの連続したエミッタウェルを示すレイアウト図であり、Bは、本発明のいくつかの実施形態に係るIBCTの局所エミッタウェルを示すレイアウト図である。
【
図4】本発明のいくつかの実施形態に係るIBCTデバイスのオン状態J−V特性のグラフである。
【
図5】本発明のいくつかの実施形態に係る従来型の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)のオン状態J−V特性のグラフである。
【
図6】本発明のいくつかの実施形態に係る、JFETエリア内に追加のn
+領域を含む絶縁ゲートバイポーラ導電トランジスタ(IBCT)の断面図である。
【
図7】本発明のいくつかの実施形態に係るフローティングエミッタ(floating emitter)領域を有する絶縁ゲートバイポーラ導電トランジスタ(IBCT)の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態を、本発明の実施形態が示された添付の図面を参照して、以下に、より詳細に説明する。ただし本発明は、多くの異なる形で実施することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されるものと解釈すべきではない。これらの実施形態は、本開示が網羅的で完全なものとなるように、また本発明の範囲を当業者に十分に伝えるために、提供するものである。同じ数字は、全体を通じて同じ要素を表す。
【0024】
さまざまな要素を説明するために、本明細書において第1の、第2の、などの用語が使用されることがあるが、これらの要素は、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、ある要素と別の要素を区別するために使用されるにすぎない。例えば、本発明の範囲から逸脱することなく、第1の要素は第2の要素であってもよく、同様に、第2の要素は第1の要素であってもよい。本明細書では、「および/または」という用語は、列挙された関連する項目のうち1つまたは複数のあらゆる組合せを含む。
【0025】
本明細書において使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。本明細書では、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかに示す場合を除き、複数形も含むものとする。「comprises」、「comprising」、「includes」、および/または「including」という用語は、本明細書において使用されるとき、述べられた特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を妨げない。
【0026】
別段の定めがない限り、本明細書において使用される(技術用語および科学用語を含む)全ての用語は、本発明にふさわしい当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において使用される用語は、本明細書および関連技術の文脈におけるこの意味と一致する意味を有するものと解釈すべきであり、本明細書において明示的に定義されない限り、理想化されたまたは過度に形式的な意味に解釈されない。
【0027】
層、領域、または基板などの要素が、別の要素「上に」ある、または別の要素「上に」広がっているといわれる場合、この要素は、他の要素の直接上にあっても、他の要素の直接上に広がってもよく、または介在する要素が存在してもよい。対照的に、要素が別の要素の「直接上に」ある、または別の要素の「直接上に」広がっているといわれる場合、介在する要素は存在しない。要素が別の要素に「接続されている」または「結合されている」といわれる場合、この要素は、他の要素に直接接続されても結合されてもよく、または介在する要素が存在してもよい。対照的に、要素が別の要素に「直接接続されている」または「直接結合されている」といわれる場合、介在する要素は存在しない。
【0028】
図中に示す、ある要素、層、または領域の、別の要素、層、または領域との関係を説明するために、「下方の」、「上方の」、「高い方の」、「低い方の」、「水平の」、「横の」、または「垂直の」などの相対語が本明細書において使用されることがある。これらの用語は、図中に描かれた向きに加えて、デバイスのさまざまな向きを含むものである。
【0029】
本発明の実施形態を、本明細書では、本発明の理想化された実施形態(および中間構造)の概略断面図を参照して説明する。図面中の層および領域の厚さは、明瞭化するために誇張されていることがある。さらに、例えば製造技法および/または公差の結果として、図面の形状との違いが予想される。したがって、本発明の実施形態は、本明細書に示される領域の特定の形状に限定されるものと解釈すべきではなく、例えば製造によって生じる形状のずれを含む。例えば、長方形として図示される混入領域は一般に、丸いもしくは曲線状の外観を有し、かつ/または混入領域から非混入領域への不連続な変化ではなく、混入濃度の勾配をこの混入領域縁部に有する。同様に、混入によって形成される埋込み領域は、埋込み領域と、混入が行われる表面との間の領域内で、いくらかの混入を引き起こすことがある。したがって、図中に示した領域は、実際は概略であり、この形状は、デバイスの領域の実形状を図示するものではなく、本発明の範囲を限定するものではない。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態を、層および/または領域内の多数キャリア濃度を指す、n型またはp型などの導電型を有するものとして特徴付けられる半導体層および/または領域に関して説明する。すなわち、n型材料は、負に帯電した電子が大部分の平衡濃度を占め、p型材料は、正に帯電した正孔が大部分の平衡濃度を占める。一部の材料は、別の層または領域に比べて相対的により高い(「
+」)またはより低い(「
-」)多数キャリアの濃度を示すために、(n
+、n
-、p
+、p
-、n
++、n
--、p
++、p
--などのように)「+」または「−」付きで示されることがある。しかし、そのような表記は、層または領域内に、多数キャリアまたは少数キャリアの特定の濃度が存在することを示唆するものではない。
【0031】
本明細書において
図1から7に関してさらに論じるように、本発明のいくつかの実施形態は、大電力用途向けのSiC絶縁ゲートバイポーラ導電トランジスタ(IBCT)、およびこの製作方法を提供する。本発明のいくつかの実施形態によるIBCTは、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)構造と絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)構造の両方の要素を組み込む。本発明のいくつかの実施形態では、本発明の範囲から逸脱することなく、BJT部分のエミッタウェル領域をエミッタコンタクトに電気的に短絡させることができるか、またはフローティングにできる。本明細書において論じるように、IBCTのBJT部分上に金属酸化物半導体(MOS)チャネルを設けると、より複雑でないゲートドライバおよびあまり高い電力損失を要求することがある電圧駆動デバイスをもたらすことができる。さらに、本明細書において論じるように、エピタキシャル埋込みチャネルを設けると、先行するイオン注入プロセスによって引き起こされる表面粗さをなくすことができる。本明細書において論じるように、埋込みチャネルは、注入物を活性化するための高温アニール後に成長させるので、改善されたMOS界面を有するIBCTをもたらすことができる。
【0032】
次に、本発明のいくつかの実施形態を、
図1から7に関して論じる。まず
図1を参照しながら、本発明のいくつかの実施形態によるIBCT構造の単位セル100について論じる。本発明のいくつかの実施形態によれば、
図1の構造100を有するIBCTは、デバイス動作条件での電流飽和、および正のオン抵抗温度係数の減少を示すことができる。本発明のいくつかの実施形態では、負の温度係数を達成することができる。
【0033】
前置きとして述べておくと、
図1のデバイス100の断面は2つの半分部分を含む。デバイス100の第1の半分部分100Aは、従来型のBJTに類似の構造を有しているが、その中に金属半導体酸化物(MOS)チャネルを有する。デバイス100の第2の半分部分100Bは、従来型のIGBTに類似の構造を有する。
【0034】
図1を再度参照すると、
図1のデバイス10は、SiC半導体基板10を含む。本発明のいくつかの実施形態では、基板10は、n型4H SiCオフアクシス半導体基板であり、例えば8.0度オフアクシスである。基板10は、高導電性とすることができ、約200から約300μmの厚さを有することができる。基板10上に、p型バッファ層12およびp
-ドリフトエピタキシャル層14を設けることができる。p型バッファ層12は、約1.0から約2.0μmの厚さ、および約1×10
17cm
-3のドーピング濃度を有することができる。本発明のいくつかの実施形態では、p型バッファ層12を、パンチスルーの尤度を低減し、またはおそらくは防止できるためのチャネル(フィールド)ストップ層として設けることができる。p
-ドリフト層14は、約10kVの阻止能力をもたらすために、約100から約120μmの厚さ、および約2.0×10
14cm
-3から約6.0×10
14cm
-3のドーピング濃度を有することができる。
【0035】
図1にさらに示すように、デバイス100は、p
-ドリフト層14上にオプションのp型上部導電層24をさらに含むことができる。点線は、p型上部導電層がオプションであることを示す。p型上部導電層24は、約1.0μmの厚さ、および約1.0×10
16cm
-3のドーピング濃度を有することができる。このp型上部導電層24が存在することによって、JFET効果は低減し、またはおそらくはなくすことができ、また長いキャリア寿命を達成することができる。上記で論じたように、p型上部導電層24はオプションである。オプションのp型上部導電層24を含まないIBCTの断面が、
図6に示してある。
【0036】
図1にさらに示すように、p型上部導電層24内に、n型エミッタウェル領域19およびnウェル領域18が設けられる。上記で論じたように、本発明のいくつかの実施形態では、BJT部分のエミッタウェル領域19を、
図1に示すようにエミッタコンタクト28に電気的に短絡させることができる。しかし、本発明のいくつかの実施形態では、本発明の範囲から逸脱することなく、BJT部分のエミッタウェル領域19を、
図7に示すようにフローティングにできる。具体的には、
図7に示すように、エミッタウェル領域19とエミッタコンタクト28の間に酸化物領域35を設けることができる。
【0037】
p型上部導電層24が存在しない本発明の実施形態、例えば
図6に示す本発明の諸実施形態では、n型エミッタウェル領域19およびnウェル領域18が、p
-ドリフト層14内に設けられる。nウェル領域18内には、p
+エミッタ領域20も設けられる。さらに示すように、デバイス100は、ウェル領域18内にn
+コンタクト領域22をさらに含む。n
+コンタクト領域22は、約1×10
18cm
-3のドーピング濃度を有することができる。本発明のいくつかの実施形態では、ガードリングベースの終端(図示せず)をデバイスの周囲を取り囲んで設けることができる。
【0038】
図1にさらに示すように、デバイスの表面上かつデバイス100のMOSチャネル領域内に、埋込みMOSチャネル25を設けることができる。埋込みMOSチャネルは、p型SiCとすることができ、約1×10
17のドーピング濃度を有することができ、約3000Åの厚さを有することができる。埋込みチャネル層25を形成し、かつ/または埋込みチャネル層25が存在することにより、イオン注入によって引き起こされる表面粗さをなくすことができ、より少ない結晶欠陥を示すことができ、これは以下にさらに論じるように、埋込みチャネル層25を形成する前に活性化アニールを実施できるためである。埋込みMOSチャネル25上に、例えば二酸化ケイ素を含む、フィールド酸化物30が、デバイスの活性領域を露出するように設けられる。フィールド酸化物30は、約1.0μmの厚さを有することができる。デバイス上にゲート酸化物層34を、最終のゲート酸化物の厚さが約400Åから約600Åになるように設けることもできる。
【0039】
結果として得られるデバイス上に、
図1に示すようにポリシリコンゲート32を設けることができる。オーミックコンタクト28および26がそれぞれ、エミッタコンタクト金属およびコレクタコンタクト金属となることができる。本発明のいくつかの実施形態では、エミッタコンタクト金属28は、アルミニウムおよびニッケル(Al/Ni)を含むことができ、コレクタコンタクト金属26はNiを含むことができる。
【0040】
したがって、上記で論じたように、本発明のいくつかの実施形態は、IGBTおよびBJTの要素を組み合わせるIBCTを提供する。本発明のいくつかの実施形態によるIBCTは、ベース電流をもたらすためにIGBT側にMOSチャネルを含み、それにより、従来型のIGBTデバイスとは異なり、電流感応デバイスで用いる電流飽和を可能にすることができる。さらに、本発明の実施形態によるデバイスは電圧駆動デバイスであり、したがって、比較的複雑でないドライバおよびずっと少ない電力損失を有することができ、すなわち、電圧が増大すると電流が飽和する。さらに、本発明のいくつかの実施形態によるJFET領域は、従来型のデバイスにおいてよりも幅広く、例えば従来型のデバイスにおいてよりも約5.0から約10.0μm幅広く、それにより、電流伝導を向上させ、電界を増大させることができる。
【0041】
次に、
図2Aから2Dを参照して、本発明のいくつかの実施形態によるIBCTを製作する際の処理ステップについて論じる。まず
図2Aを参照すると、SiC半導体基板10上に、p型バッファ層12およびp
-ドリフトエピタキシャル層14が形成される。本発明のいくつかの実施形態では、基板10は、n型4H SiCオフアクシス半導体基板であり、例えば8.0度オフアクシスである。基板10は、高導電性とすることができ、約200から約300μmの厚さを有することができる。p型バッファ層12は、約1.0から約2.0μmの厚さ、および約1×10
17cm
-3のドーピング濃度を有することができる。本発明のいくつかの実施形態では、p型バッファ層12を、パンチスルーの尤度を低減し、またはおそらくは防止できるためのチャネル(フィールド)ストップ層として設けることができる。約10kVの阻止能力を得るために、p
-ドリフト層14は約100から約120μmの厚さを有することができ、p
-ドリフト層14にp型ドーパントを約2.0×10
14cm
-3から約6.0×10
14cm
-3のドーピング濃度でドープすることができる。
【0042】
次に、
図2Bを参照すると、p
-ドリフト層14上に、オプションのp型上部導電層24を形成することができる。p型上部導電層24は、約1.0μmの厚さ、および約1.0×10
16cm
-3のドーピング濃度を有することができる。このp型上部導電層24が存在することによって、JFET効果を低減し、またはおそらくはなくすことができ、また長いキャリア寿命を達成することができる。p型上部導電層の形成を省略する本発明の実施形態は、
図6に示す本発明のいくつかの実施形態によるIBCTの断面内に示してある。
【0043】
p型上部導電層24は、例えば、p
-ドリフト層14内にアルミニウムを混入することによって形成することができる。p型上部導電層には、隣接するn型ウェル領域に由来するJFET抵抗を低減させるように、p型ドーパントを混入することができる。具体的には、JFET混入ドーズ量は、注入損傷を許容レベルに維持しながらJFET抵抗を低減させるものを選択することができる。いくつかの実施形態では、混入は、JFET領域内に約1.0×10
16cm
-3のドーパント濃度をもたらすのに十分なドーズ量で実施することができる。本発明のいくつかの実施形態では、p型上部導電層24をエピタキシャル成長プロセスによって形成することができ、それにより長いキャリア寿命を達成することができる。混入型上部導電層およびエピタキシャル上部導電層は、Zhangの、2007年2月27に出願されたInsulated Gate Bipolar Transistors Including Current Suppressing Layersという名称の、本願の譲受人に譲渡された同時係属の特許文献3において詳細に論じられており、その開示はここに、その全体が記載されているのと同様に参照により本明細書に組み込まれる。したがって、p型上部導電層に関するさらなる詳細は、本明細書においてこれ以上論じない。
【0044】
引き続き
図2Bを参照すると、p
-ドリフト層内、またはp型上部導電層24が存在するばあい、この中に、n型エミッタウェル領域19およびnウェル領域18が形成される。エミッタウェル領域19およびウェル領域18は、イオン注入またはエピタキシャル成長を使用して形成することができる。これらのn型領域には、窒素を使用して選択的に注入することができる。エピタキシャル成長を使用する本発明の諸実施形態では、エピタキシャル成長によって形成されたnまたはp型のウェルおよびエミッタウェルは、結晶損傷が減少し、また高い正孔キャリア濃度を達成することができる。さらに、本発明のいくつかの実施形態によれば、JFET領域内により多くの電流伝導経路をもたらすことによってIBCTのオン抵抗をさらに向上させるために、nまたはp型上部エミッタウェルを局所化することができる。このセルは直線状とすることができるが、他の形状を有することもできる。
【0045】
次に、
図2Cを参照すると、nウェル領域18内にp
+エミッタ領域20が形成される。このp型領域には、アルミニウムを使用して選択的に注入することができる。本発明のいくつかの実施形態では、本発明の範囲から逸脱することなく、p
+エミッタ領域20をエピタキシャル成長させることができる。ウェル領域18内に、p
+エミッタ領域20に隣接して、約1×10
18cm
-3のドーピング濃度を有するn
+コンタクト領域22を形成することができる。n+コンタクト領域22は、本発明の範囲から逸脱することなく注入し、またはエピタキシャル成長させることができる。注入物は全て、約1650から約1850℃の温度でアニールすることができる。
【0046】
図2Cにさらに示すように、デバイスの表面上に埋込みMOSチャネル25を設けることができる。埋込みMOSチャネル25は、p型SiCとすることができ、約1×10
17のドーピング濃度を有することができ、約3000Åの厚さを有することができる。埋込みチャネル層25を形成し、かつ/または埋込みチャネル層25が存在することにより、イオン注入によって引き起こされる表面粗さをなくすことができ、より少ない結晶欠陥を示すことができる。というのも、以下にさらに論じるように、埋込みチャネル層25を形成する前に活性化アニールを実施できるためである。
【0047】
埋込みチャネル層25は、イオン注入技法および/またはエピタキシャル再成長技法を使用して形成することができる。例えば、上記で論じた活性化アニールの後、埋込みチャネル層25をエピタキシャル再成長によって成長させることができる。本発明のこれらの実施形態では、埋込みチャネル25が、p型エミッタ注入物を埋込みチャネル再成長層まで持ち上げることによって、ラッチアップを防止することのできるディープnウェルの形成を可能にすることもできる。ディープnウェルは、nウェル抵抗をより小さくすることができ、デバイスのラッチアップ電流を増大させることができる。本発明の別の実施形態では、埋込みチャネルをイオン注入によって形成することができる。埋込みチャネルは、p型エピタキシャル成長によって形成することもでき、それにより、高チャネル移動度および/または長いキャリア寿命をもたらすことができる。
【0048】
上記で論じたように、注入したドーパントは全て、シリコン過剰圧力を用いて、かつ/または黒鉛被膜などカプセル化層で覆って、構造を約1650から約1850℃の温度でアニールすることによって活性化することができる。高温アニールは、炭化ケイ素エピタキシの表面に損傷を与える恐れがある。本発明のいくつかの実施形態では、そのような損傷を低減させるために、デバイスの表面上に黒鉛被覆を形成することができる。デバイスをアニールして注入したイオンを活性化する前に、アニール中に構造の表面を保護するために、構造の上面/前面に黒鉛被覆を付着させることができる。黒鉛被覆は、従来のレジスト被覆方法によって付着させることができ、約1.0μmの厚さを有することができる。黒鉛被覆を加熱して、p
-ドリフト層14上に結晶被覆を形成することができる。注入したイオンは、例えば不活性ガス中、約1600℃以上の温度で実施することができる熱アニールによって活性化することができる。具体的には、熱アニールは、アルゴン中、約1600℃の温度で約5分間実施することができる。黒鉛被覆が、高温アニール中にドリフト層14の表面を保護する助けとなることができる。
【0049】
次に、
図2Dを参照すると、次いで黒鉛被覆を、例えばアッシングおよび熱酸化によって除去することができる。注入アニール後、約1.0μmの厚さを有する二酸化ケイ素のフィールド酸化物30を堆積させ、デバイスの活性領域を露出させるようにパターン形成する。ゲート酸化物層34を、最終のゲート酸化物の厚さを約400Åから約600Åとして、ゲート酸化プロセスによって形成することができる。
【0050】
具体的には、ゲート酸化物は、例えば、その開示が全体として参照により本明細書に組み込まれる特許文献4に記載されているように、乾燥O
2中でのバルク酸化物の成長と、それに続いて湿潤O
2中でのバルク酸化物のアニールとを含む、乾式−湿式酸化プロセスによって成長させることができる。本明細書では、「湿潤O
2中での酸化物のアニール」とは、O
2と気化したH
2Oをどちらも含有する雰囲気中での酸化物のアニールを指す。アニールは、乾式酸化物成長と湿式酸化物成長の間に実施することができる。乾式O
2酸化物成長は、例えば、石英管内で、乾燥O
2中、約1200℃までの温度で少なくとも約2.5時間実施することができる。乾式酸化物成長は、バルク酸化物層を所望の厚さまで成長させるために実施される。乾式酸化物成長の温度は、酸化物成長速度に影響を及ぼすことができる。例えば、処理温度が高い方が、より速い酸化物成長速度をもたらすことができる。最大成長温度は、使用されるシステムに依存することがある。
【0051】
いくつかの実施形態では、乾式O
2酸化物成長を、乾燥O
2中、約1175℃の温度で約3.5時間実施することができる。得られた酸化物層を、不活性雰囲気中、約1200℃までの温度でアニールすることができる。具体的には、得られた酸化物層を、Ar中、約1175℃の温度で約1時間アニールすることができる。湿式O
2酸化物アニールは、約950℃以下の温度で少なくとも約1時間実施することができる。湿式O
2アニールの温度は、さらなる界面準位を導入する可能性があるSiC/SiO
2界面でのさらなる熱酸化物成長を妨げるために、制限することができる。具体的には、湿式O
2アニールは、湿潤O
2中、約950℃の温度で約3時間実施することができる。結果として得られるゲート酸化物層は、約500Åの厚さを有することができる。
【0052】
再度
図2Dに戻ると、ゲート酸化物34の形成後、ポリシリコンゲート32を堆積させて、例えばホウ素をドープし、続いてゲート抵抗を低減させるためにメタライゼーションプロセスを行うことができる。p型オーミックエミッタコンタクト金属28としてAl/Niコンタクトを堆積させ、n型コレクタコンタクト金属26としてNiを堆積させることができる。全てのコンタクトを、急速熱アニーラ(RTA)内で焼結させることができ、厚いTi/Au層をパッド金属として使用することができる。
【0053】
したがって、本発明のいくつかの実施形態によれば、ドリフト層と同じ極性を有する埋込みチャネルエピタキシャル再成長を使用することによって、またはチャネル注入物を高温で、本明細書で論じたように黒鉛被膜などのカプセル化層ありまたはなしで活性化することによって、高チャネル移動度を達成することができる。さらに、イオン注入による結晶損傷を低減させ、また高い正孔キャリア濃度を達成するために、nまたはp型のウェルおよびエミッタウェルを、イオン注入ではなくエピタキシャル成長によって形成することができる。JFET領域内により多くの電流伝導経路をもたらすことによってIBCTのオン抵抗をさらに向上させるために、nまたはp型上部エミッタウェルを局所化することもできる。このセルは直線状および他の形状とすることができる。
【0054】
次に、
図3Aおよび3Bを参照して、本発明のいくつかの実施形態によるIBCTの(A)連続したエミッタウェル、および(B)局所エミッタウェルを示すレイアウト図について論じる。まず
図3Aを参照すると、本発明のいくつかの実施形態によるIBCTの50/50比レイアウトが示してあり、すなわち、ダイの半分(310)が、IBCTのBJT部分100Aに対応し、ダイの半分(310)が、IBCTのIGBT部分100Bに対応する。
【0055】
図3Bは、本発明のいくつかの実施形態によるIBCTの局所エミッタウェルダイレイアウトを示す。具体的には、ダイ上の各ブロック330が、本発明のいくつかの実施形態によるIBCTのBJT部分とIGBT部分をどちらも含む。具体的には、p
+360領域が、
図3Bに示すように、ブロックの中央にあるIGBT部分100Bのn
+350領域を取り囲む。さらに、ブロック330のコーナにBJT部分340が設けられる。
図3Bに示す本発明の実施形態では、
図6の断面に示すように、追加のn
+領域21を使用してJFETエリア内の電流減少を制御することができる。
【0056】
次に、
図1および3A〜5を参照して、本発明のいくつかの実施形態によるIBCTのシミュレーション結果例について論じる。本発明のいくつかの実施形態に従って、pチャネルIBCTを製作した。シミュレーションに使用する平面のIBCT構造の断面および型構造が、
図3Aおよび3Bに示してある。n型オフアクシス4H−SiC基板上に、p型バッファ層12およびドリフトエピ層14を成長させた。p型バッファ層12は、パンチスルーの尤度を低減し、またはおそらくは防止できるために、約1.0×10
17cm
-3ドーピング濃度を有していた。p
-ドリフト層14は、阻止定格に基づいて選択した。例えば、p−ドリフト層14は、約100μmの厚さ、および約2.0×10
14から約6.0×10
14cm
-3のドーピング濃度を有し、それにより10kVの阻止能力がもたらされた。JFET効果を低減し、またはおそらくはなくし、また長いキャリア寿命を達成するために、p
-ドリフト層14上に、1.0μm厚の厚さ、および約1.0×10
16cm
-3のドーピング濃度を有するp型上部導電層24を形成した。
【0057】
nウェル18、BJT部分のnエミッタ19、およびp
+エミッタ領域20に、窒素およびアルミニウムを選択的に注入した。しきい値電圧を修正し、反転チャネル移動度を向上させるために、p型埋込みチャネル25の概念を使用した。埋込みチャネル25は、本発明の範囲から逸脱することなく、成長したままの材料として形成することができ、または追加の層再成長によって形成することができる。再成長を使用して埋込みチャネル25を形成する本発明の実施形態では、高温注入活性化後に埋込みチャネルを成長させた。全ての注入物を、シリコン過剰圧力を用いて、または黒鉛被膜などのカプセル化層で覆って、高温で活性化した。デバイス上に、約1.0μmの厚さを有するSiO
2の層をフィールド酸化物30として堆積させた。デバイス上にMOS酸化物34を熱成長させ、MOS酸化物34は、約400Åから約600Åの厚さを有していた。その後、ポリシリコンゲート32を堆積させ、ホウ素をドープした。p型オーミックコンタクト28(エミッタコンタクト)としてAl/Niを使用し、n型コンタクト金属26(コレクタコンタクト)としてNiを使用した。全てのコンタクトを、RTAを使用してアニールし、厚いTi/Au層を塗布金属として使用した。実証したIBCTは、約0.4mm
2の活性面積を有する。
【0058】
上記で論じたように製作した本発明のいくつかの実施形態によるIBCTは、8.0kVの阻止電圧、および約0.1mA/cm
2未満の漏れ電流を実証した。本発明のいくつかの実施形態によるIBCTデバイスのオン状態J−V特性のグラフを示した
図4に示すように、−16Vのゲートバイアス時の50mΩ・cm
2の微分オン抵抗が25℃で達成され、それが200℃では約38mΩ・cm
2に減少した。
【0059】
比較のために、IBCTに関連して製作されたIGBTのオン状態特性が
図5に示してある。−16Vのゲートバイアス時の39mΩ・cm
2の微分オン抵抗が25℃で達成され、それが200℃では約23mΩ・cm
2に減少した。−16Vのゲートバイアス時に、IGBTの伝導電流はコレクタ電圧に伴って指数関数的に増大し続けるが、IBCTにおいては、明らかな電流飽和を観測することができる。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態を、n型基板およびp型ドリフト層を有し、ドリフト層に注入される少数キャリアが電子を含む炭化ケイ素IBCTデバイスに関して説明してきたが、本発明はそれに限定されず、p型基板および/またはn型ドリフト層を有するデバイスにおいて実施できる。
【0061】
以上、図面および明細書において、本発明の典型的な好ましい実施形態を開示してきた。特定の用語が使用されているが、それらは限定のためではなく、一般的で説明的な意味で使用されているにすぎない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲に記載される。