特許第5732322号(P5732322)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5732322
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】発振回路
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20150521BHJP
   H03B 5/36 20060101ALI20150521BHJP
   H03K 3/03 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   H03B5/32 J
   H03B5/36
   H03K3/03
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-130965(P2011-130965)
(22)【出願日】2011年6月13日
(65)【公開番号】特開2013-5006(P2013-5006A)
(43)【公開日】2013年1月7日
【審査請求日】2014年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】坂田 大輔
【審査官】 畑中 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−300605(JP,A)
【文献】 特開2008−294904(JP,A)
【文献】 特開平05−014054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/32
H03B 5/36
H03K 3/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械振動子と、該電気機械振動子に並列に接続した発振増幅器と、前記電気機械振動子の負荷容量を構成する負荷コンデンサとを備えた発振部と、該発振部に一端を接続し、所定の電圧レベルにレベルシフトする結合コンデンサとを備え、該結合コンデンサの他端側から信号を出力する構成とした発振回路において、
一端を前記電気機械振動子および前記発振増幅器に接続し、他端を交流接地電位に接続し、前記負荷コンデンサおよび前記結合コンデンサとして機能するコンデンサを備え、該コンデンサの他端側から信号を出力することを特徴とする発振回路。
【請求項2】
請求項1記載の発振回路において、
前記コンデンサの他端を、反転増幅器の反転入力に接続し、該反転増幅器の出力と前記反転入力の間に帰還抵抗を接続し、該帰還抵抗の抵抗値を調整することで、前記コンデンサの他端を交流接地電位とすることを特徴とする発振回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動子などの電気機械振動子を用いた発振回路に関し、特に小型化に好適な発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発振機能を内蔵した半導体集積回路では、水晶振動子などの電気機械振動子を用いた発振部の動作を安定化させたり、消費電流を低減させるため、発振部の電源電圧とその後段の回路部の電源電圧が異なる構成とする場合が増えている。
【0003】
一例として特許文献1(図4参照)には、この種の発振回路が開示されている。図3に特許文献1に開示されている従来の発振回路を示す。図3に示すように、水晶振動子21、その水晶振動子21と並列に接続され、水晶振動子21の発振を増幅する発振増幅器22、その発振を安定化させる抵抗素子23およびコンデンサ24、25とにより発振部2が構成されている。ここで発振増幅器22は、電源電圧Vddよりも低い電圧の定電圧源LDO1により駆動されている。このように構成することで、発振部2を低電圧で動作させ、消費電流を減らすとともに、電源電圧の変動による周波数変動を少なくしている。
【0004】
発振部2の出力側には、結合コンデンサ3が接続されている。この結合コンデンサ3は、電源電圧より低い電圧の振幅で発振している波形を電源電圧まで引き上げるレベルシフタとして動作している。
【0005】
結合コンデンサ3の出力側には、バイアス点を定めるインバータ回路41と抵抗素子42で構成されたバイアス決定回路4が接続されており、抵抗素子42とインバータ回路41の自己バイアスにより、結合コンデンサ3から出力される波形のバイアス点が決定される。そして、このバイアス決定回路4の出力に波形整形回路5が接続され、波形を方形波に整形し、電源電圧で振幅する信号が出力される構成となっている。
【0006】
このように、発振部2の電源電圧と、その後段の回路部の電源電圧とが異なる構成となっている発振回路では、発振部2の発振増幅器22からみて、結合コンデンサ3は、発振部2の周波数条件とは無関係とする必要があり、a点のインピーダンスは、発振周波数に対して十分高いインピーダンスに設定される。このため、抵抗素子42は高抵抗に設定され、波形整形回路5のバイアス点の決定のみに用いられることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−294904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の発振回路では、発振部の出力側には、発振を安定化させるためのコンデンサ25と、レベルシフタとして機能する結合コンデンサ3が接続されており、それぞれ独立に機能する構成となっている。一般的に、コンデンサを半導体集積回路上に形成する場合、占有面積が大きくなる。そのため、図3に示すように2つのコンデンサを備える構成とすることは、発振回路の小型化の妨げとなっていた。
【0009】
本発明は、上記実状に鑑み、専有面積の大きいコンデンサを削減することができる発振回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本願請求項1に係る発明は、電気機械振動子と、該電気機械振動子に並列に接続した発振増幅器と、前記電気機械振動子の負荷容量を構成する負荷コンデンサとを備えた発振部と、該発振部に一端を接続し、所定の電圧レベルにレベルシフトする結合コンデンサとを備え、該結合コンデンサの他端側から信号を出力する構成とした発振回路において、一端を前記電気機械振動子および前記発振増幅器に接続し、他端を交流接地電位に接続し、前記負荷コンデンサおよび前記結合コンデンサとして機能するコンデンサを備え、該コンデンサの他端側から信号を出力することを特徴とする。
【0011】
本願請求項2に係る発明は、請求項1記載の発振回路において、前記コンデンサの他端を、反転増幅器の反転入力に接続し、該反転増幅器の出力と前記反転入力の間に帰還抵抗を接続し、該帰還抵抗の抵抗値を調整することで、前記コンデンサの他端を交流接地電位とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発振部の出力側には、発振を安定化させる機能と、レベルシフト機能とを、1つのコンデンサで実現することができるので、コンデンサの数を削減することが可能となる。特に発振回路を半導体集積回路で構成した場合、コンデンサの数を削減することは、コンデンサが占有していた面積を削減することが可能となり、好適である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施例の発振回路の説明図である。
図2】本発明の第2の実施例の発振回路の説明図である。
図3】従来の発振回路の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、発振部と後段に接続される発振信号を取り出すための回路との間に、コンデンサを接続するとともに、コンデンサと後段に接続される回路との接続点が交流接地点となるように構成している。このように構成することで、発振を安定化させるためのコンデンサと、レベルシフトのためのコンデンサを1個のコンデンサで兼用することが可能となる。以下、具体的な回路構成について説明する。
【実施例1】
【0015】
図1に本発明の第1の実施例の発振回路を示す。図1に示すように、本実施例の発振回路は、発振増幅器12の入出力間に、水晶振動子11と抵抗素子13とが、それぞれ並列に接続され、発振増幅器12の入力側と接地電位との間にコンデンサ14が接続した構成となっている点は、従来例で説明した発振回路と同様である。一方、発振増幅器12の出力側には、接地電圧との間にコンデンサを備えていない点で、従来例で説明した発振回路と相違している。この発振部は、電源電圧Vddよりも低い電圧の定電圧源(図示しない)により駆動されている。発振部を低電圧で動作させることにより、消費電流を減らすとともに、電源電圧の変動による周波数動作を少なくしている。
【0016】
発振部の出力側には、コンデンサ15の一端が接続されている。一方コンデンサ15の他端側は、反転増幅器16の反転入力に接続され、この反転入力と反転増幅器16の出力との間を、抵抗素子17で接続することで、発振時には、コンデンサ15に流れる交流電流を電圧信号として出力する構成としている。
【0017】
ここで、抵抗素子17の抵抗値を、反転増幅器16の出力が飽和しないように設定することで、図1に示すb点を、発振周波数において交流接地点とすることができる。
【0018】
その結果、発振時には、コンデンサ15に発振周波数に伴う交流電流が流れることになる。この交流電流は、コンデンサ15で接続した後段の反転増幅回路17により、電流電圧変換され、電圧信号として発振信号が取り出されることになる。
【0019】
一方発振部からみると、コンデンサ15は、発振のためのコンデンサとして交流接地されているように見えるので、従来例で説明したコンデンサ25に相当するコンデンサをなくすことが可能となっている。
【0020】
このように本実施例によれば、占有面積の大きいコンデンサの数を削減することができ、半導体集積回路で構成する場合に好適となる。
【実施例2】
【0021】
次に、本発明の第2の実施例の発振回路について説明する。図2に示すように、本実施例の発振回路は、発振増幅器12の入出力間に、水晶振動素子11と抵抗素子13とが、それぞれ並列に接続され、発振増幅器12の出力側と接地電位との間にコンデンサ1が接続した構成となっている。一方、発振増幅器12の入力側に、接地電位との間にコンデンサを設けていない構成となっている。この発振部は、電源電圧Vddよりも低い電圧の定電圧源(図示しない)により駆動されている。発振部を低電圧で動作させることにより、消費電流を減らすとともに、電源電圧の変動による周波数動作を少なくしている。
【0022】
発振部の入力側には、コンデンサ14の一端が接続されている。一方コンデンサの14の他端側は、反転増幅器16の反転入力に接続され、この反転入力と反転増幅器16の出力との間を、抵抗素子17で接続されることで、発振時には、コンデンサ14に流れる交流電流を電圧信号として出力する構成としている。
【0023】
ここで、抵抗素子17の抵抗値を、反転増幅器16の出力が飽和しないように設定することで、図2に示すc点は、発振周波数において交流接地点とすることができる。
【0024】
その結果、発振時には、コンデンサ14に発振周波数に伴う交流電流が流れることになる。この交流電流は、コンデンサ14で接続した後段の反転増幅回路17により、電流電圧変換され、電圧信号として発振信号が取り出されることになる。
【0025】
一方発振部からみると、コンデンサ14は、発振のためのコンデンサとして交流設定されているように見えるので、従来例で説明したコンデンサ24に相当するコンデンサをなくすことが可能となる。
【0026】
このように本実施例においても、占有面積の大きいコンデンサの数を削減することができ、半導体集積回路で構成する場合に好適である。
【0027】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、例えば、水晶振動子の他、圧電振動子、SAWデバイス、MEMS振動子等の電気機械振動子を用いることができる。
【0028】
また、本発明の発振回路は、発振部が電源電圧Vddよりも低い電圧の定電圧源により駆動されている場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、発振部が電源電圧Vddで駆動する構成としている場合でも、発振部と後段の増幅器のそれぞれの回路設定によっては、直流的なバイアス電圧が異なり、レベルシフトが必要となる場合がある。このような場合にも、本発明を採用することは、コンデンサの数を減らすことができ、好適である。
【符号の説明】
【0029】
11:水晶振動子、12:発振増幅器、13:抵抗素子、14:コンデンサ、15:コンデンサ、16:反転増幅器、17:抵抗素子
図1
図2
図3