特許第5732421号(P5732421)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ハイテクノロジーズの特許一覧

<>
  • 特許5732421-イオンミリング装置 図000002
  • 特許5732421-イオンミリング装置 図000003
  • 特許5732421-イオンミリング装置 図000004
  • 特許5732421-イオンミリング装置 図000005
  • 特許5732421-イオンミリング装置 図000006
  • 特許5732421-イオンミリング装置 図000007
  • 特許5732421-イオンミリング装置 図000008
  • 特許5732421-イオンミリング装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5732421
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】イオンミリング装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/20 20060101AFI20150521BHJP
   H01J 37/30 20060101ALI20150521BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   H01J37/20 A
   H01J37/30 Z
   G01N1/28 G
   G01N1/28 W
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-68582(P2012-68582)
(22)【出願日】2012年3月26日
(65)【公開番号】特開2013-201028(P2013-201028A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2014年10月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】上野 敦史
(72)【発明者】
【氏名】高須 久幸
(72)【発明者】
【氏名】武藤 宏史
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 徹
【審査官】 遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−201002(JP,A)
【文献】 特開2011−210400(JP,A)
【文献】 特開2010−257856(JP,A)
【文献】 特開2010−067468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/20
H01J 37/30
G01N 1/28
H01L 21/302
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料にイオンビームを照射するためのイオン源と、
真空チャンバ内に配置され、前記イオンビームが照射される試料の試料ステージを備えたイオンミリング装置において、
前記試料と、当該試料に対する前記イオンビームの照射を部分的に制限するマスクを保持する試料ホルダを備え、当該試料ホルダは前記イオンビームの通過軌道側に位置する試料の端面が接する第1の接面と、当該第1の接面より前記イオンビームから離間した位置に、前記マスクを位置させるように、前記マスクの端面に接する第2の接面を備えたことを特徴とするイオンミリング装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の接面と、第2の接面は階段状に形成されていることを特徴とするイオンミリング装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記第1の接面は、前記試料の異なる部位に接する2つの面からなり、当該2つの第1の接面間には、前記イオンビームが通過する通過開口が設けられていることを特徴とするイオンミリング装置。
【請求項4】
イオン源と、イオン源から放出されるイオンビームを試料に照射して、試料を加工するイオンミリング装置に搭載されるイオンミリング用試料台において、
試料とイオン源の間に試料に接触する位置に遮蔽板を配置させ、試料を固定するための試料台の試料を設置する面に、試料加工面の端面を保持するための突起構造と、遮蔽板端面を保持するための突起構造を有し、試料台の試料加工面端面を保持するための突起構造の一部に、試料を貫けたイオンビームが試料台に直接照射されない溝を有することを特徴とするイオンミリング用試料台。
【請求項5】
請求項4において、
試料加工面の端面を保持するための突起構造と、遮蔽板端面を保持するための突起構造の相対位置により、試料へのイオンビームの照射範囲が定まることを特徴とするイオンミリング用試料台。
【請求項6】
請求項4において、
試料台に試料および遮蔽板を固定するイオンミリング用試料台。
【請求項7】
請求項4において、
試料台に雰囲気を密閉できるキャップ構造を有するイオンミリング用試料台
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンミリング装置に係り、特に走査電子顕微鏡等の試料を作成するイオンミリング装置用の試料保持台、及び当該試料保持台に載置された試料を加工するイオンミリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イオンミリング装置は、アノード内で生成させたアルゴン等のイオンを(試料のダメージを小さくするため)10kV程度以下に加速させ、集束させずに試料に照射して試料表面から試料原子を弾き飛ばす物理スパッタ現象を利用して試料を無応力で平滑に削る装置である。
【0003】
イオンビームを試料に照射したときに削れる量は、試料の組成やイオンビームの照射角度、結晶方位、イオンの加速電圧などに依存するが、イオンビームの照射角度が90度になるよう試料をセットすると試料組成による削れる量の差異を小さくすることができ多組成の多層膜も平滑に加工できる。
【0004】
このとき試料へのイオンビーム照射は、イオンミリング目的位置以外へイオンビームが照射されることを防ぐため、加工目的位置の試料のイオンビーム照射方向(注:イオン源側=イオンガン側の意味)にイオンビームを遮蔽するための板(以下、遮蔽板、マスクとも言う)を配置させる。この遮蔽板から数百ミクロン程度以下試料を暴露させてイオンビームを照射させ、暴露された試料部分が物理的スパッタされて削れ、平滑な試料面を得ることができる。
【0005】
特許文献1には加工範囲(試料のイオンビームへの露出範囲)を正確に設定するために、マスク位置を調整するためのマイクロメーターを設けることが説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−245783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
イオンミリング加工の対象となる試料は例えば電子顕微鏡による観察試料であり、非常に微細なものが多い。特許文献1に開示されているようなマイクロメーターはこのような微細試料の加工範囲を設定する上で、有効なツールであると言えるが、対象試料が微細な分、構造も非常に複雑となる。更にマイクロスケール分、試料ホルダが大きくなるため、限られた空間内での作業が困難になる。
【0008】
以下に簡単な構造で且つ高精密な加工範囲の設定を目的とする試料ホルダを備えたイオンミリング装置について説明する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための一態様として、以下に試料にイオンビームを照射するためのイオン源と、真空チャンバ内に配置され、前記イオンビームが照射される試料の試料ステージを備えたイオンミリング装置であって、前記試料と、当該試料に対する前記イオンビームの照射を部分的に制限するマスクを保持する試料ホルダを備え、当該試料ホルダは前記イオンビームの通過軌道側に位置する試料の端面が接する第1の接面と、当該第1の接面より前記イオンビームから離間した位置に、前記マスクを位置させるように、前記マスクの端面に接する第2の接面を備えたイオンミリング装置を提案する。
【発明の効果】
【0010】
上記構成によれば、簡単な構造で且つ高精密な加工範囲の設定を目的とする試料ホルダを備えたイオンミリング装置の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】試料台の一例を示す図。
図2】試料台上に試料を取り付けた例を示す図。
図3】試料台上に試料と遮蔽材(マスク)を取り付けた試料ホルダの一例を示す図。
図4】試料ホルダの他の例を示す図。
図5】試料ホルダの詳細説明図。
図6】イオンミリング装置の概要を示す図(側視図)。
図7】イオンミリング装置の概要を示す図(上視図)。
図8】イオンミリング時のイオンビーム軌道、試料、及びマスクの位置関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
イオンミリング装置の試料へのイオンビームの暴露量(加工範囲)は、試料台上に固定した試料と試料のイオンビーム照射側に配置させた遮蔽板を独立させた1方向(1軸)以上のマイクロメーター等の精密微動機工によって目的の暴露量を調整する調整法がある。しかしながら、試料ホルダの構造が複雑となり部品点数が増え外形寸法も大きくなり、試料ホルダに設置したままで走査電子顕微鏡等で観察(以下、試料ホルダの共有等と記す)することができないこと、および製造費用が高額となる。
【0013】
そのため本実施例では、試料を固定するための試料台の試料を設置する面に、試料加工面の端面を保持するための突起構造と、遮蔽板端面を保持するための突起構造を用い、各突起構造の相対位置は、試料へのイオンビーム照射が目的の試料暴露量となるよう予め寸法を定めた試料ホルダ構造を提案する。
【0014】
試料台の試料加工面端面を保持するための突起構造の一部に溝を有し、試料を貫けたイオンビームが試料台に直接照射されない構造とすることにより、遮蔽板は試料ホルダに直接固定でき、遮蔽板と試料台の間に試料を配置することが可能となる。
【0015】
また、試料ホルダを走査電子顕微鏡と共用できるよう外形は例えばφ70mm程度以下にすることにより用途によっては試料台に設置した試料を外気から密閉するためのキャップを装着できる。このときも、キャップを含めた試料ホルダ外形が走査電子顕微鏡と共用できるようφ70mm×60mm高さ程度以下の寸法とする。
【0016】
以上のような構成によれば、独立させた1方向(1軸)以上のマイクロメーター等の精密微動機工による遮蔽板の調整が不要となり、構造が単純で部品点数が少なく外形寸法を小さくできる。また、試料ホルダに設置したままで走査電子顕微鏡等と試料ホルダの共有が可能となる。
【0017】
より具体的な構造を以下に説明する。図1はイオンミリングの加工対象となる試料の試料ホルダの一例を示す図である。試料台1には予め試料端面の正確な位置付けを可能とするための試料端面設置用突起2と遮蔽板端面設置用突起3が設けられている。試料台1へ試料4を設置した実施例を図2に示す。試料台1の試料端面設置用突起2に試料4端面を密着させるように設置する。試料台1に試料4設置後の遮蔽板設置の実施例を図3に示す。試料台1に試料4を設置後、試料ホルダ5に予め設置した遮蔽板6の端面が試料台1の遮蔽板設置用突起4と密着するように試料台1を試料ホルダ5に固定する構造である。
【0018】
突起構造の相対位置は、試料へのイオンビーム照射が目的の試料暴露量となるよう予め寸法を定めることにより、様々な試料暴露量での試料設置が可能となる。また、試料暴露量が予め定められているため、遮蔽板を移動させる必要がなく、更に、導電テープまたはペースト等で、試料を試料台に固定する必要がなくなる。
【0019】
以上説明したように、第1の実施の形態は、イオンミリング装置の試料ホルダまたは試料ステージの独立した遮蔽板の微動機構を設けずに一定の試料暴露量で試料の設置が特徴である。
【0020】
次に第2の実施形態について、図4を用いで説明する。試料ホルダ5を外気から密閉するための実施例を図4に示す。試料ホルダ5にはキャップ7を搭載するための構造を設け、キャップ7にシール材8を組込みシール材8により試料ホルダ5の内部を外気から密閉することが可能であり、イオンミリング装置または走査型電子顕微鏡の真空排気された試料室または試料交換室でキャップ7を取り外すことにより試料を外気と接触させずに試料の加工および試料の観察を可能とする構造が特徴である。
【0021】
図6図7はイオンミリング装置の構成を示したものである。真空チャンバ606の側面にイオン源601、及び試料ステージ8が設置されている。図6は側面図であり、図7は上視図である。
【0022】
試料ユニットベース603には、試料ホルダ微動機構604が搭載される。搭載方法は、試料ホルダ微動機構604の下面と試料ユニットベース603の上面を接触させて、ネジ等で固定する。試料ホルダ微動機構604は、イオンビームの光軸(図6の場合、紙面垂直方向)に対して任意の角度に回転傾斜できるように構成されており、回転傾斜させる方向と傾斜角度は、図示しない制御装置によって制御される。試料ホルダ微動機構604を回転傾斜させることにより、試料ホルダ微動機構604上に設置する試料502をイオンビームの光軸に対して所定の角度に設定することができる。更に、試料ステージ605は、上記傾斜回転運動に加え、当該傾斜回転運動の回転軸に垂直であって、紙面に平行な方向に試料ホルダ501を傾斜させるために設けられている。試料ホルダ微動機構604の傾斜運動(図6の一点鎖線を回転軸とする傾斜)は主に、試料の断面を加工する断面加工モードの際に連続的に傾斜運動を行うためのものである。また、試料ホルダ微動機構604は、イオンビームの光軸に対して垂直方向の前後左右、すなわち、X方向とY方向に移動できるように構成される。
【0023】
試料ユニットベース603は、真空チャンバ606の容器壁の一部を兼ねるフランジ607に搭載されている試料ステージ605(回転機構)を介して配置されており、フランジ607をリニアガイド608に沿って引き出して真空チャンバ606を大気状態に開放した時に、試料ユニットベース603が真空チャンバの外部へ引き出されるように構成されている。このようにして、試料ステージ引出機構が構成される。イオンビーム加工時は、フランジ607は閉じられた状態にあり、真空排気系609による真空排気が行われる。
【0024】
図6図7は、断面ミリング加工と平面ミリング加工の両方を行うことのできるイオンミリング装置の構成を示したものである。真空チャンバ606の上面には加工観察窓610と開閉可能なシャッター611が設けられている。このシャッター611は、スパッタされた粒子が加工観察窓610に堆積することを防ぐために設置される。真空チャンバ606は、通常真空雰囲気を形成するための空間を形成する箱型形状、或いはそれに準ずる形状を為しているが、観察窓は箱の上方(重力のある環境で、重力場の向かう方向と反対の方向)に設けられ、イオン源は箱の側方壁面(箱の上方面に隣接する面であって、重力場の向かう方向と垂直な方向)に設けられる。即ち、加工観察窓は、試料ステージの傾斜軸と、イオンビームの照射軌道を含む平面に直交する方向であって、真空チャンバの壁面に設けられる。なお、後述するように、加工観察窓用の開口には、真空封止が可能な窓を設ける以外にも、光学顕微鏡や電子顕微鏡を設置することができる。
【0025】
図8は、断面加工時のイオンビーム光軸801、試料502、マスク503の位置関係を示す図である。回転軸802は、図6の一点鎖線に相当する。試料ホルダ微動機構604は、回転軸802を中心とした連続傾斜運動を行い、その状態にてイオンビームを照射することによって、断面加工を行う。
【0026】
試料ホルダ微動機構604上に搭載される試料ホルダ501の概要を、図5を用いて説明する。なお図5では図4の試料ホルダ5のフランジ部分等が省略されている。また、実際に試料ホルダ501を試料ホルダ微動機構604に取り付ける場合には、イオンビーム照射個所508が上になるように取り付けられる。試料ホルダ501はイオンミリングによる加工対象である試料502と遮蔽材であるマスク503を試料ホルダ501に押し付けるようにして固定するようになっている。マスク固定つまみ505には、ネジが切られており、つまみを回転することによって、マスク押圧部材504を下方に向かって押圧するように作用する。
【0027】
試料502はイオンビーム照射方向から見て、マスク503から一部露出するように位置付けられており、イオンビーム照射個所508にイオンビームが当たることによって、試料の断面加工が行われる。
【0028】
本実施例の試料ホルダ501には、試料接触部506と、マスク接触部507が設けられている。マスク503のイオンビーム通過軌道側端面より、試料502がイオンビーム光軸中心に近く位置付けられるように、試料との接面509(第1の接面)が、マスクとの接面510(第2の接面)より、イオンビーム通過軌道中心側に形成されている。2つの試料との接面509との間の空間はイオンビーム通過開口であり、試料502とマスク503の端部に接触しつつ、イオンビームの通過開口を確保するため、2つの接面509との間には間隙が設けられている。また、試料502が載置される試料台にはイオンビームが直接照射されないように、開口511(溝)が設けられている。
【0029】
このように試料のイオンビームが照射される側の端面と、マスクのイオンビームが照射される側の端面のそれぞれに接するような部位を設けつつ、イオンビームが通過する開口を確保するような構成によって、精密な位置調整を行うことなく、マスクと試料の設置が可能となる。特に本実施例の場合、試料の接面509とマスクの接面510との間には、イオンビームの照射方向に垂直な方向に、ギャップPが設けられており、精密な調整を必要とすることなく、ギャップP分の加工範囲を設定することができる。
【符号の説明】
【0030】
501 試料ホルダ
502 試料
503 マスク
504 マスク押圧部材
505 マスク固定つまみ
506 試料接触部
507 マスク接触部
508 イオンビーム照射個所
509、510 接面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8