(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5732685
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】結晶性膜、デバイス、及び、結晶性膜又はデバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/20 20060101AFI20150521BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20150521BHJP
C30B 33/00 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
H01L21/20
H01L21/205
C30B33/00
【請求項の数】16
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-503290(P2012-503290)
(86)(22)【出願日】2011年3月4日
(86)【国際出願番号】JP2011055085
(87)【国際公開番号】WO2011108710
(87)【国際公開日】20110909
【審査請求日】2012年9月12日
(31)【優先権主張番号】特願2010-49860(P2010-49860)
(32)【優先日】2010年3月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000240477
【氏名又は名称】並木精密宝石株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】会田 英雄
(72)【発明者】
【氏名】青田 奈津子
(72)【発明者】
【氏名】星野 仁志
(72)【発明者】
【氏名】古田 健次
(72)【発明者】
【氏名】浜元 友三郎
(72)【発明者】
【氏名】本庄 慶司
【審査官】
柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−016486(JP,A)
【文献】
特開2005−166728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/20
C30B 33/00
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みが300μm以上10mm以下の結晶性膜であり、内部にパルスレーザにより形成された改質領域パターンが形成されており、
前記結晶性膜の厚み方向の相対位置を、前記改質領域パターンが無い場合には凹状に反る側の面を0%と仮定し、前記改質領域パターンが無い場合には凸状に反る側の面を100%と仮定した際に、
前記改質領域パターンが、前記結晶性膜の厚み方向の3%以上50%未満の範囲内に設けられることを特徴とする結晶性膜。
【請求項2】
前記改質領域パターンが、前記結晶性膜の片側の面と平行に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の結晶性膜。
【請求項3】
前記改質領域パターンが前記結晶性膜の平面方向に対して、
ストライプ形状、格子形状、複数の多角形を配置した形状、複数個の同一形状および同一サイズの円または楕円を規則的に配置した形状、同心円状、らせん形状、前記結晶性膜の中心点を通る直線に対して略線対称又は略点対称な形状の何れかであることを特徴とする請求項1または2に記載の結晶性膜。
【請求項4】
前記改質領域パターンが前記結晶性膜の平面方向に対して、
ストライプ形状、格子形状、複数の多角形を配置した形状、同心円状の何れかであり、
前記改質領域パターンを構成するラインのピッチが、50μm以上2000μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の結晶性膜。
【請求項5】
前記ピッチが、100μm以上1000μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項4に記載の結晶性膜。
【請求項6】
前記結晶性膜は、直径が50mm以上300mm以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の結晶性膜。
【請求項7】
前記結晶性膜は、窒化物半導体結晶であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の結晶性膜。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の結晶性膜の少なくとも一部を備えることを特徴とするデバイス。
【請求項9】
単結晶基板の面上にエピタキシャル成長により厚み300μm以上10mm以下の結晶性膜を形成し、
次に、単結晶基板から結晶性膜を分離させ、
次に、単結晶基板からの分離後に反りが発生した結晶性膜の厚み方向の相対位置を、凹状に反っている側の面を0%と仮定し、凸状に反っている側の面を100%と仮定した際に、厚み方向の3%以上50%未満の範囲内の結晶性膜内部にパルスレーザを集光して走査し、パルスレーザによる多光子吸収を利用して改質領域パターンを形成することを特徴とする結晶性膜の製造方法。
【請求項10】
前記改質領域パターンを、前記結晶性膜の片側の面と平行に設けることを特徴とする請求項9に記載の結晶性膜の製造方法。
【請求項11】
前記改質領域パターンを前記結晶性膜の平面方向に対して、
ストライプ形状、格子形状、複数の多角形を配置した形状、複数個の同一形状および同一サイズの円または楕円を規則的に配置した形状、同心円状、らせん形状、前記結晶性膜の中心点を通る直線に対して略線対称又は略点対称な形状の、何れかに形成することを特徴とする請求項9又は10に記載の結晶性膜の製造方法。
【請求項12】
前記改質領域パターンを前記結晶性膜の平面方向に対して、
ストライプ形状、格子形状、複数の多角形を配置した形状、同心円状の何れかに形成し、 前記改質領域パターンを構成するラインのピッチを、50μm以上2000μm以下の範囲内とすることを特徴とする請求項9又は10に記載の結晶性膜の製造方法。
【請求項13】
前記ピッチを、100μm以上1000μm以下の範囲内とすることを特徴とする請求項12に記載の結晶性膜の製造方法。
【請求項14】
前記結晶性膜は、直径が50mm以上300mm以下であることを特徴とする請求項9〜13の何れかに記載の結晶性膜の製造方法。
【請求項15】
前記結晶性膜が、窒化物半導体結晶であることを特徴とする請求項9〜14のいずれかに記載の結晶性膜の製造方法。
【請求項16】
単結晶基板の面上にエピタキシャル成長により厚み300μm以上10mm以下の結晶性膜を形成し、
次に、単結晶基板から結晶性膜を分離させ、
次に、単結晶基板からの分離後に反りが発生した結晶性膜の厚み方向の相対位置を、凹状に反っている側の面を0%と仮定し、凸状に反っている側の面を100%と仮定した際に、厚み方向の3%以上50%未満の範囲内の結晶性膜内部にパルスレーザを集光して走査し、パルスレーザによる多光子吸収を利用して改質領域パターンを形成することにより結晶性膜を製造し、
更に、結晶性膜に対して少なくともパターニング処理を施すことにより、発光素子、光発電素子、半導体素子から選択される何れか1つの素子として機能する素子部分を作製する素子部分形成工程を少なくとも経て、
素子部分と前記素子部分に略対応するサイズを有する結晶性膜とを含むデバイスを製造することを特徴とするデバイス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピタキシャル成長用基板を用いて作製される結晶性膜、デバイス、及び結晶性膜又はデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)に代表される窒化物半導体は、バンドギャップが広く、青色系の発光が可能であることから、発光ダイオード(LED)や半導体レーザ(LD)等に広く用いられている。例えば、GaNを含む青色系LEDと黄色の発光体とを組み合わせた白色LEDは、携帯電話等の液晶ディスプレイ(LCD)のバックライトとして普及している。又、前記白色LEDは、低消費電及び長寿命などの利点を有しているので、蛍光灯や白熱灯に代わる環境性に優れた光源として期待されており、研究および開発が盛んに行われている。
【0003】
前記窒化物半導体の結晶性膜は、サファイヤ単結晶基板に代表されるエピタキシャル成長用基板(以下、「成長用基板」)の面上にエピタキシャル成長により成膜形成される。しかしながら、前記成長用基板と前記結晶性膜は格子定数や熱膨張係数が異なるため、前記結晶性膜を自立可能な厚さ(例えば、300μm以上)まで成長させることは非常に困難であった。
【0004】
そこで、成長用基板面上にハイドライド気相成長法(HVPE法)により前記結晶性膜を気相成長させる方法が考案されている。HVPE法は、その他の結晶成長法である有機金属気相成長法(MOVPE法)や分子線エピタキシー法(MBE法)に比べて成長速度が大きいため、厚い結晶性膜を形成することが可能となる。
【0005】
しかし前記結晶性膜を自立可能な厚みまで成長させることが出来たとしても、結晶性膜から成長用基板を分離する過程で、成長用基板と窒化物半導体の結晶性膜との熱膨張係数差並びに格子定数差に起因する内部歪みが開放され、
図5に示すように結晶性膜100に反りが発生してしまうという課題があった。
図6に示すように、反った状態の結晶性膜100を研磨盤101にプレス接着で貼り付けて研磨を行おうとしても、反り量が大き過ぎるとプレス接着時の押圧力Fを大きくしなければならず、その結果、大きな押圧力Fでのプレスによる結晶性膜の破壊を招いてしまう虞があった。
【0006】
そこで
図7(a)に示すように、反った状態のままで結晶性膜100を研磨盤101に貼り付け、その状態で結晶性膜100表面を研磨し、更に同図(b)に示すように結晶性膜100のもう一方の面である凹面にも研磨を施す。両面に研磨加工が施された結晶性膜100’を同図(c)に示す。
【0007】
図7(c)に示された結晶性膜100’は、外観上は両面が平行に研磨加工された平行平板型に成形されているが、元々反った状態の結晶性膜100を研磨している。
図5に示すように、反った状態の結晶性膜100内部の結晶軸102は、結晶性膜100の中心部から端部に行くに従い、結晶軸102の角度のずれが大きくなっていく。従ってこの結晶軸102の角度ずれが保持されたまま結晶性膜100は両面研磨されるため、
図8に示すように研磨後の結晶性膜100’の結晶軸102もそれぞれの角度はばらばらに不均一になってしまう。
【0008】
結晶性膜100’が窒化物半導体の場合、結晶軸102の
角度のばらつきがあると、この窒化物半導体面上にエピタキシャル成長させた成長層の組成がばらつくことになる。具体的にはこのような結晶性膜100’を用いて、例えば発光デバイスを作製した場合、エピタキシャル層の組成のばらつきが原因で結晶性膜100’面内で発光波長がばらついてしまう。このため作製された発光デバイスは、同一の発光波長を持たずばらつきを有するという虞がある。
【0009】
そこで特許文献1に、凹状に反りが生じている結晶性膜において、凹型に反った側の表面を研削して加工変質層を形成することにより、結晶性膜の反りを低減する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−136167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1記載の結晶性膜の製造方法では、加工変質層が形成されている状態では結晶性膜の反りは低減されるが、デバイス作製時に結晶性膜から加工変質層を除去されると、結晶性膜は再び反り、結晶軸
の角度にばらつきが発生するという課題があった。
【0012】
また結晶性膜のばらつきにより、結晶性膜形成後にフォトリソグラフィやチップ分割などと云った後工程を行おうとしてもその実行が困難になってしまう。
【0013】
更に、デバイス作製の経済的な観点から2インチ(直径50mm)以上と云う大型の窒化物単結晶基板が望まれているが、基板の大型化を行うと反りにより基板特性の面内不均一が顕著になり、大面積化が無意味になってしまうという課題もあった。更に結晶軸の
角度のばらつきは、発光デバイスの活性層のInGaN組成を不均一にするため、発光デバイスを形成する場合、発光波長のばらつきを発生させてしまう。
【0014】
又、特許文献1記載の結晶性膜の製造方法では、加工変質層の形成を機械研削により行っているため、結晶性膜の反りを解消するためには、機械研削の度に反り量の減少度合いを確認しなければならず、確認のたびに研削工程を止めなければならないため手間が掛かっていた。
【0015】
本発明は上記各課題に基づいてなされたものであり、その目的は成長用基板から分離後に結晶軸の
角度のばらつきが解消された結晶性膜とその結晶性膜を備えることにより特性が改善されたデバイスの提供、及び結晶性膜とデバイスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題は以下の本発明により達成される。即ち、
本発明の結晶性膜は、厚みが300μm以上10mm以下であり、内部にパルスレーザにより形成された改質領域パターンが形成され
ており、結晶性膜の厚み方向の相対位置を、
改質領域パターンが無い場合には凹状に反る側の面を0%と仮定し、
改質領域パターンが無い場合には凸状に反る側の面を100%と仮定した際に、改質領域パターンが、結晶性膜の厚み方向の3%以上50%未満の範囲内に設けられていることを特徴とする。
【0020】
更に本発明の結晶性膜の他の実施形態は、前記改質領域パターンが前記結晶性膜の片側の面と平行に設けられていることが好ましい。
【0021】
更に本発明の結晶性膜の他の実施形態は、前記改質領域パターンが前記結晶性膜の平面方向に対して、ストライプ形状、格子形状、複数の多角形を配置した形状、複数個の同一形状および同一サイズの円または楕円を規則的に配置した形状、同心円状、らせん形状、前記結晶性膜の中心点を通る直線に対して略線対称又は略点対称な形状の何れかであることが好ましい。
【0022】
更に本発明の結晶性膜の他の実施形態は、前記改質領域パターンが前記結晶性膜の平面方向に対して、ストライプ形状、格子形状、複数の多角形を配置した形状、同心円状の何れかであり、
前記改質領域パターンを構成するラインのピッチが、50μm以上2000μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0023】
更に本発明の結晶性膜の他の実施形態は、前記ピッチが100μm以上1000μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0024】
更に本発明の結晶性膜の他の実施形態は、直径が50mm以上300mm以下であることが好ましい。
【0025】
更に本発明の結晶性膜の他の実施形態は、窒化物半導体結晶であることが好ましい。
【0026】
又、本発明のデバイスは、本発明に係る結晶性膜を備えることを特徴とする。
【0027】
又、本発明の結晶性膜の製造方法は、
単結晶基板の面上にエピタキシャル成長により厚み300μm以上10mm以下の結晶性膜を形成し、
次に、単結晶基板から結晶性膜を分離させ、
次に、単結晶基板からの分離後に反りが発生した結晶性膜の厚み方向の相対位置を、凹状に反っている側の面を0%と仮定し、凸状に反っている
側の面を100%と仮定した際に、厚み方向の3%以上50%未満の範囲内の結晶性膜内部にパルスレーザを集光して走査し、パルスレーザによる多光子吸収を利用して改質領域パターンを形成することを特徴とする。
【0028】
更に本発明に係る結晶性膜の製造方法の一実施形態は、前記改質領域パターンを前記結晶性膜の片側の面と平行に設けることが好ましい。
【0029】
更に本発明に係る結晶性膜の製造方法の他の実施形態は、前記改質領域パターンを前記結晶性膜の平面方向に対して、
ストライプ形状、格子形状、複数の多角形を配置した形状、複数個の同一形状および同一サイズの円または楕円を規則的に配置した形状、同心円状、らせん形状、前記結晶性膜の中心点を通る直線に対して略線対称又は略点対称な形状の、何れかに形成することが好ましい。
【0030】
更に本発明に係る結晶性膜の製造方法の他の実施形態は、前記改質領域パターンを前記結晶性膜の平面方向に対して、
ストライプ形状、格子形状、複数の多角形を配置した形状、同心円状の何れかに形成し、
前記改質領域パターンを構成するラインのピッチを、50μm以上2000μm以下の範囲内とすることが好ましい。
【0031】
更に本発明に係る結晶性膜の製造方法の他の実施形態は、前記ピッチを100μm以上1000μm以下の範囲内とすることが好ましい。
【0032】
更に本発明に係る結晶性膜の製造方法の他の実施形態は、前記結晶性膜の直径が50mm以上300mm以下であることが好ましい。
【0033】
更に本発明に係る結晶性膜の製造方法の他の実施形態は、前記結晶性膜が窒化物半導体結晶であることが好ましい。
【0034】
又、本発明のデバイスの製造方法は、
単結晶基板の面上にエピタキシャル成長により厚み300μm以上10mm以下の結晶性膜を形成し、
次に、単結晶基板から結晶性膜を分離させ、
次に、単結晶基板からの分離後に反りが発生した結晶性膜の厚み方向の相対位置を、凹状に反っている側の面を0%と仮定し、凸状に反っている
側の面を100%と仮定した際に、厚み方向の3%以上50%未満の範囲内の結晶性膜内部にパルスレーザを集光して走査し、パルスレーザによる多光子吸収を利用して改質領域パターンを形成することにより結晶性膜を製造し、
更に、結晶性膜に対して少なくともパターニング処理を施すことにより、発光素子、光発電素子、半導体素子から選択される何れか1つの素子として機能する素子部分を作製する素子部分形成工程を少なくとも経て、
素子部分と前記素子部分に略対応するサイズを有する結晶性膜とを含むデバイスを製造することを特徴とする
【発明の効果】
【0035】
以上に説明した本発明に依れば、自立可能な厚さを有する、両面研磨後の結晶性膜の反り形状を制御出来ると共に、反り量を精密に減少又は解消した結晶性膜を得ることが可能となる。従って、結晶性膜の平坦化を図ることで、後工程を容易化し、結晶性膜内部の結晶軸角度のばらつきを減少又は解消することが可能となる。
【0036】
更にパルスレーザを用いることにより、短い時間幅の中にエネルギーを集中させ、高いピーク出力を得ることが出来るため、改質領域パターンの形成により好ましく、パルスレーザの照射条件と照射位置により、反り量を一義的に制御することが出来るので、従来よりも反り量の減少又は解消工程を短縮させることが可能となる。
【0037】
更に、結晶性膜の厚み方向の相対位置を、結晶性膜の片側の面を基準の0%と仮定し、他方
側の面を100%と仮定した際に、改質領域パターンを結晶性膜の厚み方向の3%以上95%以下、更に3%以上50%未満に形成することにより、結晶性膜の表面に影響を与えることなく改質領域パターンを形成することが出来ると共に、両面研磨後の結晶性膜に生じる反り量を減少又は解消することが可能となる。又、結晶性膜の厚み方向に於いて、少なくとも3%以上50%未満の位置に改質領域パターンを形成すれば、後工程で結晶性膜の両面に研磨加工を施しても結晶性膜内部に改質領域パターンを残存させることが可能となる。従って、両面研磨後の結晶性膜の再度の反りの発生が防止され、結晶軸角度のばらつきの発生又は増加を防止することが出来る。
【0038】
更に、改質領域パターンを結晶性膜の片側の面と平行に設けることにより、反り量の減少又は解消の容易化と、結晶性膜形状の歪み発生の防止を図ることが出来る。
【0039】
更に、改質領域パターンを、格子形状,
複数の多角形を配置した形状,同心円状,らせん形状,複数個の同一形状および同一サイズの円または楕円を規則的に配置した形状,又は、結晶性膜の中心点を通る直線に対して略線対称又は略点対称とすることにより、両面研磨後の結晶性膜の、均一な反り量の減少、又は均一な反り量の解消が得られる。
【0040】
又、改質領域パターンをストライプ形状とすれば、両面研磨後の結晶性膜の反り量の減少又は解消に偏りを持たせることも可能となり、パルスレーザの照射工程をより容易化することが出来る。
【0041】
更に、改質領域パターンのピッチ間隔を50μm以上2000μm以下、更には100μm以上1000μm以下と設定することにより、両面研磨後の結晶性膜の反り量変化の確保と量産性の確保を両立することが可能となる。
【0042】
更に、成長用基板に直径50mm以上300mm以下という大口径の基板を用い、同サイズの大口径の結晶性膜を作製しても、反り量の減少又は解消により、両面研磨後の結晶性膜の結晶軸角度のばらつきが減少又は解消されるため、面内不均一化を防止することも可能となる。
【0043】
更に、本発明に係る結晶性膜を用いて各種デバイスを構成することにより、結晶軸角度のばらつきが減少又は解消された結晶性膜を用いるので、品質及びデバイス特性の向上した各種デバイスを提供することが出来る。更に、結晶性膜に窒化物半導体結晶を用いることで、窒化物半導体結晶により構成される各種デバイスの品質と特性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本実施形態に係る結晶性膜のエピタキシャル成長工程を示す模式図。
【
図2】エピタキシャル成長後に成長用基板から分離された結晶性膜を示す模式図。
【
図3】本実施形態に係る結晶性膜内部への改質領域パターン形成工程を示す模式図。
【
図4】本実施形態に係る改質領域パターンのパターン形状、ピッチを示す模式図。
【
図5】成長用基板から分離された結晶性膜と、結晶軸の状態を示す模式図。
【
図6】
図5に示す結晶性膜の研磨盤への貼付工程を示す模式図。
【
図8】両面に研磨加工が施された、従来の結晶性膜と結晶軸の状態を示す模式図。
【符号の説明】
【0045】
1 エピタキシャル成長用基板
2 低温バッファ層
3 結晶性膜
4 改質領域パターン
5 パルスレーザ
6 ピッチ
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下に、本発明に係る結晶性膜とデバイス、及びそれらの製造方法を
図1〜
図4を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る結晶性膜のエピタキシャル成長工程を示す模式図である。
【0047】
本発明の結晶性膜は、エピタキシャル成長用基板(以下、「成長用基板」と記す)にエピタキシャル成長により厚み300μm以上10mm以下で形成されて成長用基板から分離され、更に内部に改質領域パターンが形成されることを特徴とする。
【0048】
図1(a)に示す成長用基板1の結晶成長面の面上に、同図(b)に示すように低温バッファ層2をエピタキシャル成長させる。更に同図(c)に示すように結晶性膜3をエピタキシャル成長により成膜形成する。結晶性膜3の一例としては窒化物半導体結晶の膜が挙げられ、より詳しい例としてはGaNに代表されるIII族窒化物系化合物半導体が挙げられる。
【0049】
成長用基板1の材料としては、サファイヤ(Al
2O
3),Si,GaAs,水晶,Ga
2O
3の何れかの単結晶が前記窒化物半導体膜を形成可能な材料として好ましい。その中でもサファイヤは、結晶性膜3がGaNの場合、その格子定数がGaNの膜厚が増加するにつれて徐々に変化して緩和されていくので最も好ましい。
【0050】
成長用基板1の結晶成長面には、結晶性膜3をエピタキシャル成長させる前に予め研磨が施されており、この研磨は前記結晶成長面がエピタキシャル成長可能な程度まで平滑となるように行われれば良い。エピタキシャル成長可能な程度の目安としては、表面粗さRa=0.1nm以下に形成することが好ましい。
【0051】
更に、結晶性膜3を成膜形成するサファイヤの成長用基板1の結晶成長面として、好ましくはC面であるが、これに限定されずR面、M面、A面など、C面以外の面も使用可能である。
【0052】
更に、結晶成長面に研磨が施された成長用基板1のサーマルクリーニングを行い、続いて低温バッファ層2をエピタキシャル成長された後、その低温バッファ層2を介して結晶性膜3をエピタキシャル成長させる。結晶性膜3のエピタキシャル成長法としては、HVPE法が好ましい。その理由は、複雑な工程を行うことなく成膜可能であり、結晶性膜3がGaNの場合はMOCVD法やMBE法に比べて高い成長速度を達成できて厚いGaNを成長させることが出来ると共に、GaNの欠陥密度の減少と量産性に優れるからである。HVPE法により自立可能な厚さ300μm以上10mm以下の結晶性膜3が成長形成される(
図1(c)参照)。
【0053】
次に、
図2に示すように、結晶性膜3を成長用基板1から剥離して分離する。結晶性膜3を自立可能な厚みまで成長,成膜させることが出来たとしても、成長用基板1から結晶性膜3を分離,除去する過程で、成長用基板1と窒化物半導体結晶の結晶性膜3との熱膨張係数差並びに格子定数差に起因する内部歪みが開放されてしまう。その結果、
図2のように結晶性膜3に反りが発生してしまう。
【0054】
そこで次に結晶性膜3を試料ステージに載置し、
図3に示すように結晶性膜3の凸状に沿った面側を通して結晶性膜3の内部にパルスレーザ5を集光し、図示しない前記試料ステージを連続的に高速で走査する。この集光,走査の工程により、スポット状の改質領域が連続的に繋がったライン状の改質領域パターン4を、結晶性膜3内部に形成する。なおパルスレーザの入射は、凸形状に沿った面側とは逆側の、凹形状に沿った面側を通して行うことも可能である。
【0055】
改質領域パターン4の形成方法は特に限定されないが、本実施形態ではパルスレーザ5を照射する方法が用いられる。この場合、パルスレーザ照射された領域に存在する原子の多光子吸収により当該領域が局所的に加熱され、周囲の領域に対して結晶構造や結晶性の変化などの何がしかの変性が生じることで、前記改質領域が形成される。
【0056】
局所的に見ると、スポット状の改質領域は、パルスレーザが瞬間的に照射された部分にのみ形成され、その大きさは、パルスレーザ5のスポットサイズ,照射エネルギー,及びパルス幅に依存する。また、ライン状に形成されるスポット状の改質領域パターン4の距離は、パルスレーザの繰り返し周波数と試料ステージの走査速度に依存して形成される。
【0057】
パルスレーザ5の波長は、結晶性膜3の吸収端波長より長い、透明な波長域の波長が適している。パルス幅、照射エネルギーは結晶性膜3の材料の物性に合わせて、適宜選択する。
【0058】
レーザの照射は前記改質領域が形成できるのであれば、如何様な照射条件で実施してもよいが、一般には、短い時間幅の中にエネルギーを集中させることが出来るため、高いピーク出力が得ることができるという点で、断続的にレーザ光を出すパルスレーザ5を用いることが好ましい。
【0059】
結晶性膜
3がGaNの場合、パルスレーザ5の波長は200nm以上5000nm以下、パルス幅はナノ秒〜フェムト秒、好ましくは10ns〜19ns又は200fs〜800fs、繰り返し周波数は50kHz〜500kHzが好ましい。レーザパワーは0.05〜0.8W、照射エネルギーは3〜20μJ、レーザのスポットサイズは0.5〜4μmが好ましい。試料ステージの走査速度は、量産性を考えると100〜1000mm/sが好ましい。
【0060】
更に
図4に示すように、改質領域パターン4のパターン形状、各ライン間のピッチ6、形成位置を最適化することによって、結晶性膜3全体の内部応力をコントロールし、結晶性膜3の反り形状及び/又は反り量を精密に制御することが出来る。なお本発明における反り量とは、結晶性膜3の厚み方向に於いて、結晶性膜3の周辺部と中心部との距離を指すものとする。
【0061】
改質領域パターン4のパターン形状としては例えば
図4に示すように、その平面形状が結晶性膜3の平面方向に対して、複数本のラインを結晶性膜3のオリフラ面に対して垂直又は平行に形成したストライプ形状(
図4(a),(b))、それら両方を組み合わせた格子形状(
図4(c))などが形成可能である。その他にも、複数の多角形を配置した形状(
図4(d)の例では六角形)、同心円状(
図4(e))、らせん形状、複数個の同一形状および同一サイズの円または楕円を規則的に配置した形状などが形成出来る。なお、前記多角形とは四角形を除く形状とする。
【0062】
パターン形状は、主に結晶性膜3の反り形状の対称性に影響するため、改質領域パターン4形成後に両面研磨加工を施した後の結晶性膜3の面内において、均一な反り量の減少又は均一な反り量の解消を得ようとすれば、その平面形状は、格子形状,
複数の多角形を配置した形状,同心円状,らせん形状,複数個の同一形状および同一サイズの円または楕円を規則的に配置した形状,又は、結晶性膜3の中心点を通る直線に対して略線対称又は略点対称であるような形状が好ましい。逆に、平面形状がストライプ形状であれば、改質領域パターン4形成後に両面研磨加工を施した後の結晶性膜3の反り量の減少又は解消に偏りを持たせることも可能である。更に、パルスレーザ走査が縦方向又は横方向の一方向のみで良く、パルスレーザ5の照射工程がより容易となる。
【0063】
更に、結晶性膜3に設ける改質領域パターン4の平面形状を格子形状とし、最終的にデバイスを形成した時のデバイスチップの分割線として格子形状の改質領域パターン4を用いることも可能である。その場合、結晶性膜3の両面研磨加工後に残る厚み分の中に、格子形状の改質領域パターン4が残るような厚み位置に形成することが望ましい。
【0064】
ストライプ形状,格子形状,複数の多角形を配置した形状,同心円状の何れかのパターンにおける各ライン間のピッチ6は、主に改質領域パターン4形成後の結晶性膜3の反り量の変化量に影響し、ピッチ6が小さくなるほど反り量の変化量は大きくなる。一方、ピッチ6を狭く設定するほど加工時間もかかるため、量産性を考慮するとピッチ6は50μm以上2000μm以下の範囲内が好ましく、100μm以上1000μm以下が更に好ましい。
【0065】
結晶性膜3の厚み方向に於ける改質領域パターン4の形成位置は、主に改質領域パターン4形成後の結晶性膜3の反り量の変化量に影響し、形成位置が表面に近いほど反り量の変化量は大きくなる。結晶性膜3の厚み方向の相対位置を、結晶性膜3の片側の面(凹状に反っている側の面。
図3の上側の面。)を基準の0%と仮定し、他方
側の面(凸状に反っている側の面。
図3の下側の面)を100%と仮定した際に、改質領域パターン4は結晶性膜3の厚み方向の3%以上95%以下、更に好ましくは3%以上50%未満に形成する。このような厚み方向の於ける位置に改質領域パターン4を形成することにより、改質領域パターン4の形成が結晶性膜3の表面に影響を与えないようにすることが可能となる。なお、複数の改質領域パターンを結晶性膜3の厚み方向の異なる位置に形成しても良い。
【0066】
厚み方向の於ける前記の形成位置に改質領域パターン4を形成することにより、結晶性膜3に生じる反り量が減少又は解消される。この場合、反り量を解消することで結晶性膜3をできるだけ平坦な状態に近づくことが基本的に望ましいが、反りの向きは同じままで、反り量が減少するだけでも良い。
【0067】
更に改質領域パターン4が、結晶性膜3の厚み方向に於いて、偏った位置に設けられたり、不規則に配置されたり、非対称的に配置されたりすると、反り量を減少又は解消することが困難となったり、結晶性膜3の形状が歪んでしまう虞がある。このような問題を回避するために、結晶性膜3の厚み方向に於いて、改質領域パターン4を結晶性膜3の少なくとも片側の面と平行に設けることが好ましい。
【0068】
以上、本発明に依れば、上述したように結晶性膜3内部に改質領域パターン4を形成して、反り形状を制御すると共に、反り量を精密に減少又は解消した結晶性膜3を得ることが出来る。これにより、結晶性膜3の平坦化を図ることで、後工程を容易化し、改質領域パターン4形成後に両面研磨を施した後の結晶性膜3内部の結晶軸角度のばらつきを減少又は解消することが可能となる。更に、パルスレーザ5を用いれば、パルスレーザ5を結晶性膜3に照射しながら反り量の減少度合いも確認できるので、反り量の減少又は解消工程を従来よりも短縮させることが可能となる。
【0069】
更に、結晶性膜3の厚み方向に於いて、少なくとも3%以上50%未満の位置に改質領域パターン4を形成すれば、後工程で結晶性膜3の両面に研磨加工を施しても結晶性膜3内部に改質領域パターン4を残存させることが可能となる。従って、結晶性膜3の再度の反りの発生が防止され、結晶軸角度のばらつきの発生又は増加を防止することが出来る。
【0070】
更に、成長用基板1に直径50mm以上300mm以下という大口径の基板を用い、同サイズの大口径の結晶性膜3を作製しても、改質領域パターン4形成後に両面研磨を施した後の結晶性膜3における反り量の減少又は解消により、結晶軸角度のばらつきが減少又は解消されるため、面内不均一化を防止することも可能となる。
【0071】
更に上記のような結晶性膜3を用いて、例えばGaN系化合物半導体を用いた発光素子(例えば、LED)デバイスを製造する場合には、結晶性膜3,n-GaN系層,In-GaN系活性層、p-GaN系層を順次積層し、表面を適宜エッチングした後、表面にn型電極とp型電極とを形成する。その後、1チップの発光素子毎に切断する。
【0072】
その他にも面発光レーザなどに用いる発光デバイス、光センサや太陽電池などに用いる受光デバイス、電子回路などに用いる半導体デバイスなどの各種の窒化物半導体を利用したデバイスが考えられる。
【0073】
以上に説明した製造方法及び両面研磨を経て作製された本実施形態の結晶性膜3に対し、更に各種の後工程を実施することにより各種デバイスを作製することが出来る。この場合後工程において、結晶性膜3に対して少なくともパターニング処理を施すことにより、発光素子、光発電素子、半導体素子から選択される何れか1つの素子として機能する素子部分を作製する素子部分形成工程を少なくとも経て、素子部分と当該素子部分に略対応するサイズを有する結晶性膜とを含むデバイスを製造することが出来る。又、デバイスの製造に際して、後工程として素子部分形成工程以外に、研磨工程、分割予定ライン形成工程および分割工程をこの順に実施しても良い。
【0074】
この場合、本実施形態の結晶性膜3を用いたデバイス製造方法は、具体的には以下の(1)〜(4)に示す工程を少なくとも順次実施することで、素子部分と当該素子部分に略対応するサイズを有する結晶性膜とを含むデバイスを作製することが出来る。
(1)本実施形態の結晶性膜3をパターニングして個々の素子部分を形成する素子部分形成工程
(2)素子部分が片面に形成された素子部分付き結晶性膜3の、素子部分が形成されていない面を、改質領域パターン4が完全に除去されないように研磨する研磨工程
(3)研磨工程において研磨された面側から、個々の素子部分の境界ラインに沿って、レーザを照射することで分割予定ラインを形成する分割予定ライン形成工程
(4)分割予定ライン形成工程において形成された分割予定ラインに沿って外力を加えることで、素子部分付きの結晶性膜3を素子部分単位で分割する分割工程
【0075】
以上により、本発明の結晶性膜3の少なくとも一部を備えた各種デバイスを得ることが可能となるため、結晶軸角度のばらつきが減少又は解消された結晶性膜3を用いてLED等の発光デバイスや、電子デバイス、受光素子の何れかのデバイスを得ることが出来る。結晶軸角度のばらつきが減少又は解消された結晶性膜3を用いることで、品質及びデバイス特性の向上した各種デバイスを提供することが出来る。