(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材上における少なくとも一部に印刷領域が形成され、前記印刷領域は複数の中心領域、複数の第一の領域、複数の第二の領域及び複数の第三の領域から成り、前記第一の領域に囲まれるように一つの中心領域が配置され、前記中心領域は、前記第一の領域よりも小さい面積であり、かつ、前記第一の領域の外周に沿って配置され、前記第二の領域及び前記第三の領域は、前記第一の領域及び/又は前記第一の領域と隣接する前記中心領域内に配置され、前記中心領域は、前記第二の領域及び前記第三の領域の少なくとも一つから成り、前記第一の領域、前記第二の領域及び前記第三の領域は、それぞれが網点部及び背景部から成り、前記複数の第一の領域、前記複数の第二の領域及び前記複数の第三の領域に配置された、それぞれ複数の網点部により、第一の画像、第二の画像及び第三の画像がそれぞれ形成され、前記第一の画像に、前記第二の画像及び前記第三の画像が埋め込まれ、前記第一の領域、第二の領域及び第三の領域における網点部は、すべて異なる観察条件である第一の観察条件、第二の観察条件及び第三の観察条件により視認可能な異なる特性を有する材料で形成され、前記第一の画像、第二の画像及び第三の画像は、前記材料の異なる特性に対応した観察条件において視認可能な潜像画像を有する網点印刷物の作製方法であって、
前記第一の画像、第二の画像及び第三の画像の基となる各原画像において、共通する任意の少なくとも三つの点を、各原画像における基準点に設定し、
i)前記各原画像から、前記各原画像の基準点に対応する基準点を有し、複数の画素から成る各画素画像を生成する画像生成工程、又は、
ii)前記各原画像から、前記各原画像の基準点に対応する基準点を有し、複数の画素から成る各画素画像及びグレー画像を生成する画像生成工程と、
前記画像生成工程が、前記i)の場合、前記複数の第一の領域、前記複数の第二の領域及び前記複数の第三の領域の配置箇所が設定された、複数の画素から成るフォーマット画像を用いて、前記フォーマット画像における、複数の第二の領域の配置箇所の画素のみ及び複数の第三の領域の配置箇所の画素のみを黒画素とし、他の領域の配置箇所の画素を白画素とした、前記各原画像の基準点に対応する基準点を有する各マスク画像を生成するマスク画像生成工程、又は、
前記画像生成工程が、前記ii)の場合、前記グレー画像を構成する画素の明度に対応した最低閾値及び/又は最高閾値を、前記複数の第一の領域、前記複数の第二の領域及び前記複数の第三の領域の配置箇所が設定された、複数の画素から成るフォーマット画像を用いて、前記フォーマット画像における、複数の第二の領域の配置箇所の画素のみ及び複数の第三の領域の配置箇所の画素のみを黒画素とし、他の領域の配置箇所の画素を白画素とした、前記各原画像の基準点に対応する基準点を有する各マスク画像をそれぞれ生成するマスク画像生成工程と、
前記各マスク画像の基準点と、前記各マスク画像と対応する前記第二画素画像及び第三画素画線の基準点とをそれぞれ合わせて、同じ位置となる二つの画素のうち、前記各マスク画像を構成する画素が黒画素ならば、前記第二画素画像及び第三画素画像を構成する画素を残し、前記各マスク画像を構成する画素を構成する画素が白画素ならば前記第二画素画像及び第三画素画像を構成する画素を白画素とすることで、前記各原画像の基準点に対応する基準点を有し、複数の網点部から成る第二の画像及び第三の領域の画像をそれぞれ生成するマスク処理工程と、
前記各網点部を形成する、前記各観察条件により視認可能な異なる特性を有する材料及び色を設定し、前記第一の画像、前記第二の画像及び前記第三の画像における黒画素を、設定した前記各網点部を形成する色に置き換え、
前記各背景部を形成する、前記各網点部を形成する前記各観察条件により視認可能な異なる特性を有する材料とは異なる特性を有する材料と、前記各観察条件を除く観察条件において前記各網点部と等色となる色をそれぞれ設定し、前記各マスク画像における黒画素を、設定した前記各背景部を形成する色に置き換え、
前記第一画素画像と、前記マスク処理工程において生成された前記複数の網点部から成る第二の画像及び第三の画像と、前記各マスク画像とを、それぞれの基準点を合わせて合成し、合成画像を生成する画像合成工程と、
前記合成画像を、前記基材に所定の方法により施す工程から成る前記網点印刷物の作製方法。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機の高機能化及び高画質化により、銀行券、旅券、有価証券等の貴重印刷物の偽造製品が出回り、深刻な問題となっている。そのため、従来から貴重印刷物には、複写機で色、光沢、発光等の再現が困難な機能性インキが多く用いられている。機能性インキには、複写機で色や光沢の再現が困難な金インキ、銀インキ、パールインキ等の金属光沢インキ、赤外線領域において吸収特性を示す赤外線吸収インキ等がある。
【0003】
赤外線吸収インキを用いた印刷物を真偽判別する際には、赤外線カメラ等の鑑定装置を必要とする。反対に、金属光沢インキを用いた印刷物を真偽判別する際には、色や光沢の変化に留意するだけでよく、鑑定装置を用いなくても簡単に目視で判別することができる。このことから、多くの貴重印刷物には、異なるインキ特性を有する機能性インキを複数併用して利用されている。
【0004】
例えば、本出願人が先に出願した特許文献1には、二つの異なる画像を同一平面上に網点画像として均等に配置する場合において、一般の商業印刷で使用されているシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)の基本インキを用いて、可視画像及び潜像画像を生成した網点印刷物が開示されている。一般の商業印刷で使用されているシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)は、赤外線吸収しない。よって、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)を重ね合わせた混色ブラックは、赤外線を吸収することがない。これに対し、ブラック(K)は、カーボンブラックを主体としており、紫外線領域から赤外線領域まで全域にわたり吸収を示す。
【0005】
この特性を用いて、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)及び混色ブラックを用いて所定の配置規則に基づき印刷された網点印刷物は、可視光源下で視認できる可視画像内に、赤外線カメラ等の鑑定装置を用いて観察可能な潜像画像を埋め込むことができる。作製した網点印刷物は、特殊なインキを用いる必要がないため、安価に作製が可能であり、現在の写真製版装置での複製が不可能であることから、偽造防止効果に優れる。
【0006】
図1(a)は、特許文献1における印刷物の網点構成を示す図の一例であり、第一の領域(1)及び第二の領域(2)が、互いに重なり合うことなく複数組配置されている。第一の網点部(1a)は、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の基本インキで形成した。複数の第一の網点部(1a)により、可視画像である第一の画像となる。また、第二の網点部(2a)は、赤外線吸収性色素を含む単色の黒の材料(例えば、カーボンを含むカーボンブラック)を用いて形成し、第二の背景部(2b)は、赤外線吸収色素を含まないシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)を重ね合わせた混色ブラックを用いて形成した。複数の第二の網点部(2a)により、赤外線環境下において観察可能な第二の画像となる。
【0007】
作製した印刷物は、可視光源下において観察した場合、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)のカラー色材で形成した可視画像である第一の画像が視認される。また、赤外線環境下において観察した場合、カーボンブラックで形成された潜像画像である第二の画像が現出する。なお、作製した印刷物を複写した際には、第二の網点部(2a)及び第二の背景部(2b)の双方が区別されることなく黒色系で複製物が形成されることから、潜像画像を観察することが不可能となる。
【0008】
前述した特許文献1にて提案された特殊な網点構成は、本出願人が出願した特許文献2において開示された、網点印刷物作製方法により簡易に作製することができる。特許文献2の網点印刷物作製方法によって、特許文献1において開示された、特殊な網点構成を所望の状態で出力物として得ることが可能となった。
【0009】
図2は、特許文献2における、網点印刷物の作製方法を示すフローチャートである。まず、第一の画像についてである。印刷物上に可視画像として認識させたい第一の原画像を画像処理部へ入力し、単色の網点の面積の大小、有無又は単色の画素の分布の粗密若しくは階調情報を持った画素によって表現される第一の画像を生成する(STEP1)。
【0010】
次に、第一の画像と同一の画像幅及び画像高さを持つグレー画像を生成し、このグレー画像を画像処理部へ入力して(STEP1´)、マスク画像生成部によって変換し、マスク画像を得る(STEP2)。
【0011】
次に、第一の画像と同一の画像幅、画像高さ及び画像解像度を持つように、第二の画像の基となる第二の原画像を画像処理部へ入力し、単色の網点の面積の大小又は単色の画素の分布の粗密によって、ある特定の観察条件下で認識される第二の画像を生成する(STEP1´´)。
【0012】
次に、マスク画像と第二の画像をマスク処理部に入力し、マスク処理を行う(STEP3)。これは、第二の画像に対してマスク画像の白画素に対応する部分をすべて白画素に置き換える処理を施すことで、第二の画像のうち、第一の領域(1)に相当する部分をすべて白色に置き換えるものである。
【0013】
STEP1で入力した第一の画像の上にSTEP2で得られたマスク画像を重ね合わせ、さらに、その上にSTEP3で得られたマスク処理後の第二の画像を重ね合わせ、すべての画像を合成する(STEP4)。
【0014】
以上の工程を経て作製された画像データは、第一の原画像を基に作製した第一の画像と、第二の原画像を基に作製した第二の画像の二つの画像情報が含まれる。この画像データを基に印刷物を作製する。この印刷物作製には、例えば、画像データを色分解して印刷版面を出力し、商業印刷機によって印刷する方法、画像データを基に、直接インクジェットプリンタにより出力する方法等がある。
【0015】
以上の方法で作製された網点印刷物を所定の観察条件により観察すると、肉眼では、第一の画像が視認され、赤外線による観察では、カーボンブラックからなる第二の画像が視認される。
【0016】
この方法によると、網点による画像データ作製の際、第一の領域(1)のサイズより、第二の領域(2)のサイズを大きくする等といった、二種類の網点領域のサイズにおける制約を受けなくなり、さらに、第一の領域(1)のサイズと第二の領域(2)のサイズを同一にしてもよく、網点による画像データ作製の自由度が上がる。
【0017】
二種類の網点領域を持つ印刷物における任意条件の画像データを自動で作製することが可能となり、作製者による作業ミスの混入が減少し、さらに、作業時間も短縮される。さらには、マスク生成に関する処理工程が大幅に減少されるため、画像データの作製に要する時間が短縮される。
【0018】
また、画像データ作製に関わる処理工程を減少しても、従来と同様、所定の領域に一つの画像を印刷可能なことは勿論だが、所定の領域に二つの画像を互いに重なり合うことなく、かつ、所定の領域に画像を網点の融合を生じることなく同等に配置し、一般市場で広く用いられているシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)の四色で、セキュリティ印刷を安価に実現することが可能である。
【0019】
特許文献1に開示されている網点印刷物では、特殊な網点構成により、可視光で認識可能な可視画像と、赤外線カメラ等の鑑定装置を用いて視認可能な潜像画像という二つの画像を安価に作製することが達成できた。しかし、潜像画像は、赤外線カメラ等の鑑定装置を用いなければ視認できないため、例えば、銀行、入国管理審査等の各種窓口業務における検査担当者は、目視検査により真偽判別を行うことができない問題点があった。
【0020】
そこで、各種窓口業務では、検査担当者が鑑定装置を用いずに、目視によって真偽判別可能な潜像画像が付与された偽造防止印刷物として本出願人は、可視光源下の拡散光領域で観察した際には可視画像である第一の画像が視認でき、印刷物を傾けて観察することで第一の潜像画像である第二の画像が視認でき、さらに、赤外線カメラ等の鑑定装置を用いて観察した際には第二の潜像画像である第三の画像が視認可能となる印刷物を出願している。つまり、一つの印刷物上に観察条件の異なる三つの画像を形成することが可能となり、簡易な手法による真偽判別と、鑑定装置を用いた真偽判別の二重の確認を行うことが可能となる(特許文献3)。
【0021】
図1(b)は、特許文献3における印刷物の網点構成を示す図の一例であり、第一の領域(1)、第二の領域(2)及び第三の領域(3)が複数組配置されている。なお、印刷物は、
図1(a)に示した、本出願人が特許文献1にて提案した同一平面上に網点で構成された二つの画像を、特殊な網点構成によって、互いに重なり合うことなく配置した画像処理法の一部を利用することにより生成される。
【0022】
第一の網点部(1a)は、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の基本インキで形成した。複数の第一の網点部(1a)により、可視画像である第一の画像となる。また、第二の網点部(2a)は、赤外線吸収性色素を含む材料を用いて形成し、第二の背景部(2b)は、赤外線吸収色素を含まない材料を用いて形成した。複数の第二の網点部(2a)により、赤外線環境下において観察可能な第二の画像となる。
【0023】
さらに、第三の網点部(3a)は、観察角度を定位置の照明光源に対して拡散光領域から正反射光領域へ変化させることで第三の背景部(3b)との色差ΔEが所定の値変化する材料を用いて形成し、第三の背景部(3b)は、赤外線吸収性色素を含む材料を用いて形成した。複数の第三の網点部(3a)により、正反射光領域、例えば基材を傾けることで観察可能な第三の画像となる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の実施形態について図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他色々な形態が実施可能である。
【0039】
図1(b)は、本発明における網点印刷物の網点構成を示す一例であり、前述した、本出願人が出願した特許文献3にて開示された網点構成である。
図1(b)に示すように、本発明における網点印刷物は、紙、プラスチックカード等の基材上における少なくとも一部の印刷領域に形成されている。印刷領域は、複数の中心領域(c)、複数の第一の領域(1)、複数の第二の領域(2)及び複数の第三の領域(3)から成る。各領域(1、2、3)は、肉眼ではそれぞれの領域を区別して視認することができない微細な大きさの領域である。
【0040】
本発明における網点印刷物の網点構成においては、複数の第一の領域(1)に囲まれるように一つの中心領域(c)が配置されている。中心領域(c)は、第一の領域(1)よりも小さい面積であり、かつ、第一の領域(1)の外周に沿って等間隔に配置されている。中心領域(c)を第一の領域(1)よりも大きい面積で形成した際には、第一の観察条件において中心領域(c)に形成した第三の領域(3)がノイズとなり第一の画像の視認性を低下させるので好ましくない。
【0041】
第二の領域(2)及び第三の領域(3)は、第一の領域(1)及び/又は第一の領域(1)と隣接する中心領域(c)内に配置されている。中心領域(c)は、第二の領域(2)及び第三の領域(3)の少なくとも一つから成る。なお、網点構成における第一の領域(1)、第二の領域(2)及び第三の領域(3)の配置個所は、これに限定されるものではなく、この形態の態様についての詳細は後述する。
【0042】
第一の領域(1)、第二の領域(2)及び第三の領域(3)は、それぞれが網点部(1a、2a、3a)及び背景部(1b、2b、3b)から成る。複数の第一の領域(1)、複数の第二の領域(2)及び複数の第三の領域(3)に配置された、それぞれ複数の網点部(1a、2a、3a)により、第一の画像、第二の画像及び第三の画像がそれぞれが形成される。なお、第一の画像に、第二の画像及び第三の画像が埋め込まれている。
【0043】
各領域(1、2、3)における各網点部(1a、2a、3a)は、すべて異なる観察条件である第一の観察条件、第二の観察条件又は第三の観察条件により視認可能な異なる特性を有する材料で形成されている。また、各領域(1、2、3)における各背景部(1a、1b、1c)は、各領域(1、2、3)における各網点部(1a、2a、3a)が視認可能となる、第一の観察条件、第二の観察条件及び第三の観察条件を除く観察条件において、各領域(1、2、3)における網点部(1a、2a、3a)とそれぞれ等色であり、かつ、第一の観察条件、第二の観察条件及び第三の観察条件により視認可能な異なる特性を有する材料とは異なる特性を有する材料で形成される。
【0044】
第一の観察条件とは、各領域(1、2、3)における網点部(1a、2a、3a)のうち、第一の網点部(1a)のみが視認可能となる観察条件である。なお、本発明における第一の網点部(1a)のみが視認可能となる観察条件とは、他の領域における網点部及び背景部が等色となり、第一の領域(1)における第一の網点部(1a)と第一の背景部(1b)のみが、互いに異なる色として視認される観察条件のことである。
【0045】
同様に、当該網点部のみ、つまり第Nの網点部のみが視認可能となる第(N−1)の観察条件とは、他の領域における網点部及び背景部が等色となり、当該領域における第Nの網点部と第Nの背景部のみが、互いに異なる色として視認できる条件のことであり、以下説明を省略する。それにより、複数の網点部(1a、2a、3a)により形成された、第一の画像、第二の画像及び第三の画像は、その網点を形成した材料の、異なる特性に対応した観察条件において視認可能な潜像画像となる。
【0046】
本発明における等色とは、色差ΔEが6未満のことを指す。一般的に色差ΔEが6前後は、異なった色として視認される可能性がある。ただし、前述のとおり本発明では、各領域(1、2、3)を、肉眼ではそれぞれの領域を区別して視認することができない微細な領域からなる。そのことから、前述の通り色差ΔEが6未満であれば、第Nの網点部のみが視認可能となる第(N−1)の観察条件においても、肉眼で、網点部と背景部を区別して視認することができず、よって、網点部及び背景部は等色として視認される。
【0047】
本発明における色差は、CIE1976L
*a
*b
*表色系のΔEで定義するものとする。CIE1976L
*a
*b
*表色系とは、CIE(国際照明委員会)が1976年に推奨した色空間のことであり、日本工業規格では、JIS Z 8729に規定されている。色差は、ある二色の色空間中における距離のことであり、CIE1976L
*a
*b
*表色系での色差は、二色のL
*の差、a
*の差、及びb
*の差をそれぞれ二乗して加え、その平方根をとることで求めることができる。
【0048】
第一の領域(1)は、第一の観察条件、例えば可視光源下における拡散光領域において視認可能な第一の画像を形成する領域である。第一の領域(1)は、第一の網点部(1a)及び第一の背景部(1b)から成る。複数の第一の網点部(1a)により、第一の画像を形成する。第一の画像は、第一の領域(1)内における、第一の網点部(1a)と第一の背景部(1b)との面積比率に応じて、階調が付与される。
【0049】
第一の網点部(1a)は、第一の観察条件により視認可能な特性を有する材料、例えば赤外線吸収色素を含まない材料(例えば、基本4色インキのうち、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y))を用いて形成する。第一の網点部(1a)は、赤外線吸収色素を含まない材料によって形成することで、赤外線吸収色素を含まない材料の特性に対応した第一の観察条件においては視認可能だが、後述する第二の観察条件及び第三の観察条件おいて観察した場合に、第一の画像を視認することができない。
【0050】
第二の領域(2)は、第二の観察条件、例えば、赤外線光源下において視認可能な第二の画像を形成する領域である。第二の領域(2)は、第二の網点部(2a)及び第二の背景部(2b)から成る。複数の第二の網点部(2a)により、第二の画像を形成する。第二の画像は、第二の領域(2)内における、第二の網点部(2a)と第二の背景部(2b)との面積比率に応じて、階調が付与される。
【0051】
第二の網点部(2a)は、第二の観察条件により視認可能な特性を有する材料、例えば、赤外線吸収色素を含む材料(例えば、カーボンブラック)を用いて形成する。
【0052】
また、第二の背景部(2b)は、可視光源下において、第二の網点部(2a)と等色であり、かつ、赤外吸収色素を含まない材料(例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の混色により形成した混色ブラック)を用いて形成する。赤外線吸収色素を含む材料の特性に対応した第二の観察条件においては、第二の網点部(2a)は視認可能であり、第二の背景部(3b)は、視認することができない。よって、複数の第二の網点部(2a)から成る第二の画像を視認することが可能となる。なお、第一の観察条件及び後述する第三の観察条件において観察した場合に、第二の網点部(2a)及び第二の背景部(2b)は等色として視認される。それにより、第二の網点部(2a)及び第二の背景部(2b)は、第一の観察条件である可視光源下における拡散光領域と、後述する第三の観察条件である、定位置の照明光源に対して観察角度を拡散光領域から正反射光領域へ変化させた場合において、等色として視認される。つまり、第二の画像は、第二の観察条件以外おいて視認不可能となる。
【0053】
第三の領域(3)は、第三の観察条件、例えば、可視光源下において基材を傾けることで視認可能な第三の画像を形成する領域である。第三の領域(3)は、第三の網点部(3a)及び第三の背景部(3b)から成る。複数の三の網点部(3a)により、第三の画像を形成する。第三の画像は、第三の領域(3)内における、第三の網点部(3a)と第三の背景部(3b)との面積比率に応じて、階調が付与される。
【0054】
第三の網点部(3a)は、第三の観察条件により視認可能な特性を有する材料、例えば定位置の照明光源に対して観察角度を拡散光領域から正反射光領域へ変化させることで、第三の背景部(3b)との色差ΔEが所定の値変化する材料(例えば、金インキ、銀インキ等)を用いて形成する。
【0055】
また、第三の背景部(3b)は、可視光源下における拡散光領域において、第三の網点部(3a)と等色であり、かつ、赤外吸収色素を含む材料を用いて形成する。定位置の照明光源に対して観察角度を拡散光領域から正反射光領域へ変化させることで、第三の背景部(3b)との色差ΔEが所定の値変化する材料の特性に対応した第三の観察条件において、第三の網点部(3a)は、第三の背景部(3b)と色差が生じ、視認可能となり、第三の網点部(3a)で構成された第三の画像を視認することが可能となる。なお、第一の観察条件及び第二の観察条件において観察した場合に、第三の網点部(3a)及び第三の背景部(3b)は、第一の観察条件である可視光源下における拡散光領域及び第二の観察条件である赤外線光源下において、等色として視認される。つまり、第三の画像は、第三の観察条件以外では視認不可能となる。
【0056】
このように、各領域(1、2、3)における、各網点部(1a、2a、3a)は、それぞれが、すべて異なる観察条件である第一の観察条件、第二の観察条件及び第三の観察条件により視認可能な異なる特性を有する材料で形成する。それにより、各網点部(1a、2a、3a)を形成する材料の異なる特性に対応した観察条件、つまり、第一の観察条件下においては、第一の網点部(1a)が観察され、第一の画像が出現する。また、第二の観察条件下においては、第二の網点部(2a)が観察され、第二の画像が出現する。さらに、第三の観察条件下においては、第三の網点部(3a)が観察され、第三の画像が出現する。よって、本発明における網点印刷物は、各領域(1、2、3)における各網点部(1a、1b、1c)を形成する材料の異なる特性に対応した観察条件において複数の潜像画像が視認可能となる。
【0057】
なお、
図1(b)において印刷領域は、複数の中心領域(c)、複数の第一の領域(1)、複数の第二の領域(2)及び複数の第三の領域(3)という、複数の中心領域(c)と三種類の領域により形成されているが、三種類に限定されるものではなく、第一の領域(1)、第二の領域(2)、・・・、第(N−1)の領域及び第Nの領域(Nは3以上の自然数)により形成することができる。
【0058】
また、第一の画像に埋め込まれる、第二の画像及び第三の画像は、各々が複数の第二の網点部(2a)及び複数の第三の網点部(3a)により、それぞれが形成されている。よって、前述のとおり、印刷領域を、複数の中心領域(c)と、複数の第一の領域(1)、複数の第二の領域(2)、・・・、複数の第(N−1)の領域及び複数の第Nの領域(Nは3以上の自然数)とし、第一の領域(1)、第二の領域(2)、・・・、第(N−1)の領域及び第Nの領域における網点部を、それぞれすべて異なる観察条件である第一の観察条件、第二の観察条件、・・・、第(N−1)の観察条件又は第Nの観察条件により視認可能な異なる特性を有する材料で形成することで、それに伴い、各網点部を形成した材料の異なる特性に対応した観察条件において視認可能な第二の画像、・・・、第(N−2)の画像及び第(N−1)の画像を、第一の画像へ埋め込むことが可能となる。
【0059】
(作製方法)
図3は、本発明における網点印刷物の作製方法を示すフローチャートである。
図12に示す網点印刷物を作製する装置のブロック図を参照し、
図3のフローチャートに順じて説明する。なお、
図12に示した装置は、本出願人が先に出願した、特開2009−202420号公報にて記載されている画像処理装置(4)である。
【0060】
はじめに、画像生成工程において第一の画像、第二の画像、・・・、第(N−1)の画像及び第Nの画像の基となる各原画像を取得し、各原画像における共通する位置の、任意の少なくとも三つの点を、各原画像におけるそれぞれの基準点に設定する。
【0061】
第一の原画像、第二の原画像、・・・、第(N−1)の原画像及び第Nの原画像における共通する位置の、少なくとも任意の三つの点を、各原画像におけるそれぞれの基準点に設定する。
図4は、
図4(a)に示す第一の原画像と、
図4(b)に示す第二の原画像における、それぞれの基準点を示す模式図である。第一の原画像は、印刷物上に第一の観察条件、例えば、可視光源下における拡散光領域において認識させたい画像の基となる原画像である。また、第二の原画像は、印刷物上に第二の観察条件、例えば、赤外線光源下において認識させたい画像の基となる原画像である。
【0062】
基準点を設定する際には、まず、各原画像から、任意の原画像を一つ選ぶ。
図4においては、
図4(a)に示す第一の原画像を選び、次に、任意の三つの点を選ぶ。第一の原画像においては、まず、一つ目の基準点(P1)を設定したのち、一つ目の基準点(P1)からX方向へ、X1の距離にある点を二つ目の基準点(P2)とし、さらに、一つ目の基準点(P1)からY方向へ、Y1の距離にある点を三つ目の基準点(P3)とした。このように、P1、P2及びP3を、第一の原画像における基準点に設定した。次に、第一の原画像で設定した三つの基準点と共通する位置に、
図4(b)に示す第二の原画像の基準点を設定する。
【0063】
第二の原画像においては、まず、一つ目の基準点(P1’)を設定したのち、第一の原画像と同様に、一つ目の基準点(P1’)からX方向へ、X1の距離にある点を二つ目の基準点(P2’)とする。さらに、一つ目の基準点(P1’)からY方向へ、Y1の距離にある点を三つ目の基準点(P3’)とした。それぞれの原画像における、三つの基準点間の距離は、同一である。このように、第一の原画像と第二の原画像における共通する位置の、任意の三つの点を、それぞれの基準点とする。
【0064】
同様に、第三の原画像、・・・、第(N−1)の原画像及び第Nの原画像においても、第一の原画像及び第二の原画像と共通する位置の、三つの点を、原画像におけるそれぞれの基準点とする。
【0065】
なお、すべての原画像が同じ大きさである場合には、各原画像における四隅のうち、少なくとも三隅を基準点とすることで、各原画像における共通する位置に基準点を設定することが可能である。また、TIFF形式、JPEG形式、BMP形式等の一般的な画像形式では、画素が必ず縦横の直交する二つの軸方向に沿って平行に配置されるという特性を持つ。よって、各画素画像が、すべて画素が必ず縦横の直交する二つの軸方向に沿って平行に配置されるという特性を持つ場合は、各画素画像の縦横方向が自明であり、回転を考慮する必要がないため、基準点は、各画素画像において、それぞれ一点のみでよい。
【0066】
次に、各原画像から、各原画像の基準点に対応する基準点を有し、複数の画素から成る各画素画像を生成する。(STEP1〜STEP1
(N))。
【0067】
各原画像を画像入力部(6)へ入力したのち、画像処理部(7)において、各原画像の基準点に対応する基準点を有し、複数の画素から成る第一画素画像を生成する(STEP1)。
【0068】
第一画素画像を形成する複数の画素には、単色の網点の面積の大小、単色の画素の分布の粗密又は階調情報を持った画素がある。単色の網点の面積の大小とは、同色の複数の画素が第一画素画像内に存在し、同色の複数の画素が互いに隣接する縦横斜めのいずれかの位置に配置されて網点を形成し、さらに第一の画像内に複数の網点が形成され、網点を構成する画素の数の大小によって視認可能な画像の濃淡を表現するものである。単色の画素の分布の粗密とは、同色の複数の画素が第一画素画像内に存在し、かつ、その網点を構成せず、同色の複数の画素同士の平均距離の大小によって視認可能な画像の濃淡を表現するものである。また、階調情報を持った画素とは、同色若しくは異なる色を持った画素が第一画素画像内に存在し、上記画素の集合により、視認可能な画像の色及び濃淡を表現するものである。
【0069】
画像処理部(7)において、複数の画素から成る第一画素画像を生成する方法には、前述したポストスクリプト網点発生法のHalftoneType16に準じた方法がある。ポストスクリプト網点発生法のHalftoneType16に準じた方法により、第一の原画像に対してハーフトーン処理を行うことで、複数の画素から成る第一画素画像を生成することが可能である。
【0070】
なお、ハーフトーン処理とは、濃淡情報を持った画像に対して行う変換処理である。本発明において、画像入力部(6)へ入力した各原画像を画像処理部(7)において、各原画像にあらかじめ指定された一定の間隔ごとに、各濃淡情報に対応する面積の網点へと、それぞれ置き換える処理をハーフトーン処理という。
【0071】
図5(a)は、第一の原画像を示す図であり、
図5(b)は第一画素画像を示す図である。第一画素画像については、第一の原画像の基準点に対応する基準点を有する。第一画素画像は、第一の原画像における一つ目の基準点(P1)と同じ位置に基準点(p1’)を有し、さらに、一つ目の基準点(p1’)からX方向へX1の距離に、第一の原画像と同様に二つ目の基準点(p2’)とし、さらに、一つ目の基準点(p1’)からY方向へ、Y1の距離に、を三つ目の基準点(p3’)有する。本発明における第一画素画像内のX方向又はY方向に離れた任意の二つの画素間の距離とは、その任意の二つの画素を結んだ直線上に存在する、任意の二つの画素以外の画素の数に1を加えた値とする。
【0072】
このように、第一画素画像及び第二の原画像を同じ大きさ(X×Y)の画像とし、その四隅のいずれかをゼロ点とした際に、第一画素画像におけるp1’、p2’及びp3のそれぞれの距離は、第一の原画像におけるP1、P2及びP3と同じ距離であり、P1’とp1’、P2とp2’、P3とp3’は、それぞれが同じ位置座標上にあることを、本発明における、各原画像の基準点に対応する基準点を有するという。以下、各原画像の基準点に対応する基準点については、同様であることから説明を省略する。
【0073】
同様に、第二の原画像、・・・、第(N−1)の原画像及び第Nの原画像から、第二画素画像、・・・、第(N−1)画素画像及び第N画素画像を生成する。各画素画像は、それぞれ各画素画像の基となる各原画像の基準点に対応する基準点を有する。
【0074】
次に、マスク画像生成工程において、複数の第二の領域、・・・、複数の第(N−1)の領域及び複数の第Nの領域に、第二の画像、・・・、第(N−1)の画像及び第Nの画像をそれぞれ配置するための、各マスク画像を生成する(STEP2〜STEP2
(N−1))。
【0075】
各マスク画像は、あらかじめ作製しておいた、
図6(a)に示すフォーマット画像を用いて生成される。フォーマット画像とは、本発明における網点印刷物を生成する、複数の第一の領域(1)、第二の領域(2)、・・・、第(N−1)の領域及び第Nの領域をどのように配置するかが設定された画像である。フォーマット画像の生成方法としては、まず、第一の画像へ埋め込む潜像画像(第二の画像、・・・、第(N−1)の画像及び第Nの画像)を、何個埋め込むかを設定する。次に、潜像画像を形成する領域である、第二の領域(2)、・・・、第(N−1)の領域及び第Nの領域を、第一の領域(1)と、第一の領域(1)と隣接する中心領域内に、どのように配置するかを設計することで、フォーマット画像が生成される。フォーマット画像は、複数の画素によって構成される。なお、フォーマット画像における各領域の配置箇所は、先に出願した特願2009−72964号における網点印刷物の配置箇所となるように生成する。
【0076】
あらかじめ生成したおいたフォーマット画像を、画像入力部(6)へ入力したのち、フォーマット画像を用いて各マスク画像を生成する。まず、第一マスク画像を生成する(STEP2)。第一マスク画像は、複数の第二の領域(2)へ、第二の画像を配置する際に用いる画像である。フォーマット画像における、複数の第二の領域(2)の配置箇所の画素のみを黒画素とし、他の領域の配置箇所の画素を白画素とすることで、
図6(b)に示す第一マスク画像が生成される。各マスク画像は、各原画像の基準点と対応する基準点(P1’’、P2’’、P3’’)を有する。
【0077】
同様に、第二マスク画像から第(N−1)マスク画像を各々生成するが、以下、代表例として第(N−1)マスク画像の生成について説明する。
【0078】
さらに、画像入力部(6)へ入力したフォーマット画像を用いて、第(N−1)マスク画像を生成する(STEP2
(N−1))。第(N−1)マスク画像は、複数の第Nの領域へ、第Nの画像を配置する際に用いる画像である。フォーマット画像における、複数の第Nの領域の配置箇所の画素のみを黒画素とし、他の領域の配置箇所の画素を白画素とすることで、第(N−1)マスク画像が生成される。
【0079】
次に、マスク処理工程において、各マスク画像の基準点と、各マスク画像と対応する第二画素画像、・・・、第(N−1)画素画像及び第N画素画像の基準点とをそれぞれ合わせて、同じ位置となる二つの画素のうち、各マスク画像を構成する画素が黒画素ならば、第二画素画像、・・・、第(N−1)画素画像及び第N画素画像を構成する画素を残し、各マスク画像を構成する画素を構成する画素が白画素ならば第二画素画像、・・・、第(N−1)画素画像及び第N画素画像を白画素とすることで、複数の網点部から成る第二の画像、・・・、第(N−1)の画像及び第Nの画像をそれぞれ生成する(STEP3〜STEP3
(N−1))。
【0080】
マスク処理工程を行うことで、第二画素画像は、複数の第二の領域(2)内に配置された第二の網点部(2a)のみ、・・・、第(N−1)画素画像は、複数の第(N−1)の領域内に配置された第(N−1)の網点部のみ及び第N画素画像は、複数の第Nの領域内に配置された第Nの網点部のみから成る画像へと変換される。それにより、各画像を形成する複数の網点部を、混じり合うことなく印刷領域内へ割り当てることが可能となる。よって、各網点部を形成する材料の特性に対応した観察条件により、第一の画像、第二の画像・・・、第(N−1)の画像及び第Nの画像のいずれかが視認可能な印刷物が作製可能となる。
【0081】
図7は、一例として第二の画像を生成する、マスク処理工程を示す模式図である。なお、
図7においては、詳細に説明するために、それぞれの黒画素を斜線で図示し、
図7(a)に示す、第一マスク画像における黒画素を太線で囲んでいる。マスク処理工程においては、マスク処理部(14)へ入力した、
図7(a)に示す、第一マスク画像の基準点と、第一マスク画像と対応する第二画素画像の基準点とを合わせる。なお、マスク画像と対応する画素画像とは、各マスク画像内の黒画素である複数の第二の領域(2)、・・・、第(N−1)の領域及び第Nの領域へ配置する、第二の画像、・・・、第(N−1)の画像及び第Nの画像の基となる各原画像から生成した各画素画像を、それぞれ対応する画素画像という。第一マスク画像においては、第一マスク画像内の黒画素である複数の第二の領域(2)へ配置する、第二の画像の基となる第二の原画像から生成した第二画素画像が、第一マスク画像と対応する画素画像となる。
【0082】
次に、
図7(a)に示す第一マスク画像の基準点(P1’’、P2’’、P3’’)と、
図7(b)に示す第二画素画像の基準点(P1’、P2’、P3’)とを合わせる。
図7(c)は、第一マスク画像と第二画素画像を合わせた際の模式図である。二つの画像を合わせた際に、同じ位置となる二つの画素のうち、第一マスク画像を構成する画素が黒画素(太線内)ならば、第二画素画像を構成する画素を残す。また、第一マスク画像を構成する画素が白画素(太線外)ならば、第二画素画像を白画素とする。マスク処理を行うことで、第二の画像要素のうち、第二の領域(2)に相当しない部分、つまり、第一の領域(1)、第三の領域(3)、・・・、第(N−1)の領域及び第Nの領域を形成する画素は白画素となる。よって、
図7(d)に示す、複数の第二の網点部(2a)から成る第二の画像が生成される。図示していないが、第二の画像は、第二の原画像の基準点と対応する基準点を有する(STEP3)。なお、詳細に説明するために、
図7(d)においては、第一マスク画像の黒画素部を太線で記しているが、実際には存在するものではない。
【0083】
同様に、第三の画像から第Nの画像に対して各々マスク処理を行うが、以下、代表例として第N画素画像へのマスク処理について説明する。
【0084】
次に、第(N−1)マスク画像と第N画素画像をマスク処理部(14)に入力し、マスク処理を行う(STEP3
(N−1))マスク処理工程においては、第(N−1)マスク画像の基準点と、第(N−1)マスク画像と対応する第N画素画像の基準点とを合わせる。二つの画像を合わせた際に、同じ位置となる二つの画素のうち、第(N−1)マスク画像を構成する画素が黒画素ならば、第N画素画像を構成する画素を残す。また、第(N−1)マスク画像を構成する画素が白画素ならば、第N画素画像を白画素とする。マスク処理を行うことで、第Nの画像要素のうち、第Nの領域に相当しない部分、つまり、第一の領域(1)、第二の領域(2)、・・・、及び第(N−1)の領域を形成する画素は白画素となる。よって、複数の第Nの網点部から成る第Nの画像が生成される。第Nの画像は、第Nの原画像の基準点と対応する基準点を有する。
【0085】
最後に、画像合成部(15)において、第一画素画像と、マスク処理工程において生成した第二の画像、・・・、第(N−1)の画像及び第Nの画像と、第一マスク画像、・・・、第(N−2)マスク画像及び第(N−1)マスク画像とを、それぞれの基準点を合わせて合成し、合成画像を生成する(STEP4)。
【0086】
画像合成工程においては、まず画像合成部(15)に、第一画素画像と、マスク処理工程後の第二の画像と、第一マスク画像を入力する。次に、第一画素画像の上に第一マスク画像を、それぞれの基準点を合わせて重ね合わせ、その上にマスク処理工程後の第二の画像を、それぞれの基準点を合わせて重ね合わせ、・・・、さらに、その上に第(N−1)マスク画像を、それぞれの基準点を合わせて重ね合わせ、最後に、マスク処理工程後の第Nの画像を、それぞれの基準点を合わせて重ね合わせすべての画像を合成し、合成画像を生成することで、画像データは完成となる。
【0087】
なお、第一画素画像の上に第一マスク画像を、それぞれの基準点を合わせて重ね合わせる処理の前に、第一マスク画像のすべての黒画素を、任意の単色の画素によって置き換える処理を含めてもよい(STEP3’’)。
【0088】
第一画素画像の上に、第一マスク画像を、それぞれの基準点を合わせて重ね合わせる際には、第一マスク画像の色が、そのまま
図1(b)に示した第二の背景部(2b)の色となる。第二の網点部(2a)を形成した材料の特性に対応した観察条件以外では第二の背景部(2b)と第二の網点部(2a)は略等色になることで第二の画像が視認できないようにするため、第二の背景部(2b)を適当な濃度の単色の画素に置き換えすることが好ましい。同様に、各マスク画像においても、合成画像を生成する前に、各マスク画像のすべての黒画素を、任意の単色の画素によって置き換える処理を含めてもよい(STEP3
(N−1)’)。
【0089】
完成した画像データには、第一の画像、第二の画像、・・・、第Nの画像から成るN個の画像情報が含まれている。この合成画像のデータである画像データを基に、合成画像を、基材に所定の方法により施す(STEP5)。例えば、画像処理装置(4)により生成した画像データを、オフセット製版装置、スクリーン製版装置等所望の製版装置へと転送及び入力することで、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)等の印刷版面を出力する。次に、出力した印刷版面と、各領域における網点部及び背景部を形成する材料を用いて、印刷版面に適した所望の印刷方法により、基材上へ印刷を施すことで、網点印刷物となる。又は、画像処理装置(4)により生成した画像データを、インクジェットプリンタへと転送及び入力し、各領域における網点部及び背景部を形成する材料を用いて、基材上へ印刷を施すことで、網点印刷物を作製する(STEP5)。
【0090】
また、マスク処理工程後に、第一画素画像と、マスク処理後の第二の画像、・・・、第(N−1)の画像及び第Nの画像と、各マスク画像とを合成し、合成画像を生成することで、画像データを完成させる方法について説明したが、別の態様としてマスク処理工程と、画像合成工程の間に背景画像生成工程(STEP3’〜STEP3
(N−1)’)とをさらに有してもよい。
【0091】
第一背景画像とは、第二の背景部(2b)を構成する画素には黒画素を割り当てるとともに、上記第二の背景部(2b)を構成する画素以外の画素には白画素を割り当てた画像である。
【0092】
第一背景画像を生成することで、第二の画像を形成する複数の第二の網点部(2a)の下地には、第一の画像の階調情報を残すと同時に、第二の背景部(2b)の下地には第一の画像の階調情報を残さないという処理が可能になる。それにより、画像合成工程において、合成画像を生成する際に、仮に画像を形成する複数の網点部がずれて合成されていたとしても、そのずれた箇所は、第一背景画像として着色されていることから、その合成画像データを基に作製した印刷物は、白ヌケすることなく、網点印刷物として完成させることが可能となる。
【0093】
背景画像生成工程とは、マスク画像生成工程において生成した各マスク画像における基準点と、各マスク画像と対応するマスク処理工程において生成した第二の画像、・・・、第(N−1)の画像及び第Nの画像とをそれぞれ合わせて、同じ位置となる二つの画素が、いずれも黒画素又はいずれも白画素ならば白画素とし、どちらか一方が黒画素ならば黒画素とすることで、第一背景画像、・・・、第(N−2)背景画像及び第(N−1)背景画像を生成する工程である。各背景画像においても、前述した各画素画像に設定した基準点と、共通する位置に基準点をそれぞれ有する。
【0094】
図8は、一例として第一背景画像を生成する、背景画像生成工程を示す模式図である。背景画像生成工程においては、画像処理装置(4)における背景画像生成部(5)に入力したのち、
図8(a)に示す、第一マスク画像における基準点(P1’’、P2’’、P3’’)と、第一マスク画像と対応する、
図8(b)に示す、マスク処理後の第二の画像の基準点(P1’’’、P2’’’、P3’’’)とをそれぞれ合わせる。次に、同じ位置となる二つの画素が、いずれも黒画素又はいずれも白画素ならば白画素とし、どちらか一方のみが黒画素ならば黒画素とすることで、
図8(c)に示す第一背景画像を生成する。第一背景画像においても、第二の原画像の基準点と対応する基準点(P1’’’’、P2’’’’、P3’’’’)を有する。
【0095】
同様に、第二マスク画像から第(N−1)マスク画像に対しても、マスク処理後の第三の画像から第Nの画像を用いて、各背景画像を生成する。
【0096】
なお、第一マスク画像における基準点と、第二の画像における基準点をそれぞれ対応させて合わせた際に、同じ位置となる二つの画素が、いずれも黒画素又はいずれも白画素ならば白画素を出力し、どちらか一方のみが黒画素ならば黒画素を出力することで、第一背景画像を簡易に生成する方法には、例えばXOR演算により、第一マスク画像と第二の画像を合成する方法がある。
【0097】
XOR演算とは、論理演算の一つであり、入力される1(黒画素)と0(白画素)の組み合わせのうち、その値が一致しないときに限り1(黒画素)を出力する演算方式のことである。
【0098】
例えば、第一マスク画像とマスク処理を行った第二の画像という、二つの画像をXOR演算により合成した場合には、対応する二つのドットの色を比較し、二つとも黒画素又は二つとも白画素ならば白画素に置き換え、どちらか一方のみが黒画素ならば黒画素に置き換えることで合成され、第一背景画像が生成される。このように、XOR演算を用いることで、一回の演算に所望の背景画像を生成することが可能となる。なお、XOR演算を行うためには、特定の画素の色情報を書き換えることで白画素と黒画素を入れ替えることが可能な画像処理装置(4)を用いる必要がある。
【0099】
背景画像生成工程後の画像合成工程においては、合成される各画像が、前述した態様とは異なるので、以下説明する。まず、画像合成工程においては、前述した態様において用いた各マスク画像を、背景画像生成工程において生成した各背景画像に置き換える。次に、第一画素画像と、マスク処理工程において生成した第二の画像、・・・、第(N−1)の画像及び第Nの画像と、各背景画像とを合成して合成画像を生成する(STEP4)。
【0100】
画像合成工程においては、まず画像合成部(15)に、第一画素画像と、マスク処理工程において生成した第二の画像と、第一背景画像を入力する。次に、第一の画像の上に第一背景画像を、それぞれの基準点を合わせて重ね合わせ、その上にマスク処理工程において生成した第二の画像を、それぞれの基準点を合わせて重ね合わせ、・・・、さらに、その上に第(N−1)背景画像を、それぞれの基準点を合わせて重ね合わせ、最後に、マスク処理工程において生成した第Nの画像を、それぞれの基準点を合わせて重ね合わせすべての画像を合成し、合成画像を生成することで、画像データは完成となる。完成した画像データは、第一の画像、第二の画像、・・・、第Nの画像から成るN個の画像情報と、さらに、各背景画像情報が含まれている。
【0101】
完成した、画像データには、第一の画像、第二の画像、・・・、第(N−1)の画像及び第Nの画像から成るN個の画像情報と、さらに、各背景画像の画像情報が含まれている。この合成画像のデータである画像データを基に、合成画像を、基材に所定の方法により施す工程においては、基材上に、各背景画像を印刷したあとに、その上に、複数の各網点部から成る第一の画像、第二の画像、・・・、第(N−1)の画像及び第Nの画像を印刷する。それにより、各画像を形成する複数の網点部が、基材に対してずれて印刷された場合でも、そのずれた箇所は、各背景画像として着色されていることから、基材が露出して白ヌケすることなく、網点印刷物を作製することが可能となる。
【0102】
また、画像生成工程において生成した各画素画像を用いて、マスク画像生成工程により各マスク画像を生成する方法について説明したが、別の態様として画像生成工程において、さらに、グレー画像を生成したのち、マスク画像生成工程において、グレー画像を用いてマスク画像を生成することも可能である。
【0103】
グレー画像とは、白画素及び黒画素をまったく含まない画像である。前述した、グレー画像を用いないで各マスク画像を生成する場合には、フォーマット画像における各領域の配置箇所の画素のみを、それぞれ一画素ずつ黒画素又は白画素としていくことで生成している。よって、一画素ずつ、配置箇所の画素か否かを判断して画素を設定するためには、作製者のノウハウを必要とする。一方、グレー画像を用いて各マスク画像を生成する場合には、前述したポストスクリプト網点発生法のHalftoneType16を用いて各マスク画像を生成することから、ポストスクリプトを処理可能な一般的なソフトウェアを用いることが可能になる。そのため、マスク画像生成に必要な処理の大部分を一般的なソフトウェアで処理可能になる。よって、作製者のノウハウを必要としないことから、グレー画像を用いない方法と比較し、各マスク画像を簡易に得ることが可能となる。
【0104】
グレー画像は、グレー画像の基となるグレー原画像を画像入力部(6)へ入力する。次に、各画素画像から、一番サイズ(X×Y)が大きい画素画像を選び、その画素画像と同じ又はそれよりも大きいサイズであり、かつ、複数の画素により形成された画像へと変換することで、グレー画像が生成される。一番大きい画素画像と同じサイズとすることで、マスク画像生成工程において、各画素画像の全面を不足なく覆うことが可能となり、マスク処理工程及び画像合成工程の各工程において、画像全面に対して隈なく処理が可能になる。なお、すべての画素画像が同じ大きさである場合には、グレー画像も各画素画像と同じ大きさとする。それにより、画素画像の全面を過不足なく覆うことが可能となる。生成したグレー画像においても、各原画像の基準点に対応する基準点を有する。
【0105】
グレー画像生成工程後のマスク画像生成工程においては、前述した態様とは異なるので、以下説明する。まず、マスク画像生成工程においては、前述したフォーマット画像に、各画素画像と共通する位置に基準点を設定する。基準点を設定する際には、前述した各画素画像と同様とする。次に、グレー画像の基準点とフォーマット画像の基準点とを合わせて、同じ位置となる二つの画素においては、グレー画像を構成する画素の明度に対応した最高閾値及び/又は最低閾値を、フォーマット画像における複数の第二の領域(2)を構成する画素ごとに設定する。閾値設定後の複数の第二の領域(2)は、第一マスク画像となる(STEP2)。第一マスク画像は、前述の態様と同じく、第二画素画像に設定した基準点と、共通する位置に基準点を有する。第一マスク画像における基準点を設定する際には、前述した各画素画像と同様に設定する。
【0106】
同様に、グレー画像生成工程後のマスク画像生成工程においても、第二マスク画像から第(N−1)マスク画像を各々生成する。
【0107】
次に、グレー画像から各マスク画像を生成するための詳細工程について、第(N−1)マスク画像を例に説明する。
【0108】
図9は、
図3に示した本発明における網点印刷物の作製方法を示す全体フローにおいて、STEP2
(N−1)の第(N−1)マスク画像の生成工程の詳細を示すフローチャートであり、従来の技術とは異なる、本発明の特徴点を示すところである。
【0109】
フローチャートに準じて説明すると、第一に、第一スレッショルドデータ生成工程を設け(STEP2
(N−1)−1)、第二に、第二スレッショルドデータ生成工程を設け(STEP2
(N−1)−2)、第三に、第一スレッショルドデータ生成工程で得られた第一スレッショルドデータ(16)と第二スレッショルドデータ生成工程で得られた第二スレッショルドデータ(17)をポストスクリプト網点発生法のHalftoneType16に準じたコマンドに変換するコマンド変換工程を設け(STEP2
(N−1)−3)、第四に、コマンド変換工程により所定のコマンドに変換された第一スレッショルドデータ(16)と第二スレッショルドデータ(17)を結合し、網点データとして保存する網点データ保存工程を設け(STEP2
(N−1)−4)、第五に、保存した網点データに対し、第一の領域(1)に含まれるすべての画素を黒画素に変換するラスター処理手段(13)を設け(STEP2
(N−1)−5)、第六に、白黒二値のマスク画像が生成される(STEP2
(N−1)−6)。
【0110】
(本発明におけるN=3の実施形態)
次に、各マスク画像の作製に関する各ステップにおける処理内容について、一例としてN=3であり、
図1(b)に示した、第三の領域(3)が、第一の領域(1)に含まれる場合に関する、第二マスク画像の作製に関する各ステップにおける処理内容について、さらに詳細に説明する。なお、
図1(b)に示した各領域の大きさは、第一の領域(1)の外形をj
x×j
yピクセルとし、第二の領域(2)の外形をk
x×k
yピクセルとし、第三の領域(3)の外形をm
x×m
yピクセルとする。以下、
図12に示す網点印刷物を作製する装置のブロック図を参照し、
図9のフローチャートに順じて説明する。
【0111】
まず、第一に、第一スレッショルドデータ生成手段(9)では、第一スレッショルドデータ(16)を生成する(STEP2
(1)−1)。
【0112】
図10(a)は、前述したあらかじめ作製しておいた、フォーマット画像における複数の第一の領域(1)、複数の第二の領域(2)、・・・、複数の第(N−1)の領域及び複数の第Nの領域を基に生成した第一スレッショルドデータ(16)を示す図である。第一スレッショルドデータ(16)は、
図10(a)において破線で示した第一の領域(1)の外形内の網点形状を指定するために必要な画像である。本ステップでは、第一マスク画像のマスク形状を指定するために第一スレッショルドデータ(16)を用いる。
【0113】
第一スレッショルドデータ(16)は、フォーマット画像における第一の領域(1)と同一形状及び同じ大きさとする。
図6(b)においては、第一の領域(1)内において、第三の領域(3)が配置されている。そのことから、
図10(a)に示した第一スレッショルドデータ(16)のうち、m
x×m
yピクセルの第三の領域(3)に相当するすべての画素に充分に高い明度を設定し、第三の領域(3)に相当しないすべての画素に充分に低い明度が設定された状態で生成する。生成したデータは、ビットマップデータ等の適当な画像形式で記録媒体へ出力することで、
図10(b)に示すような第一スレッショルドデータ(16)となる。本発明における記録媒体とは、フレキシブルディスク、CD-R、USBメモリ、コンピュータのハードディスク等のことである。なお、RAM等の揮発メモリにおいても本発明においては記録媒体とする。
【0114】
本発明における充分に高い明度とは、グレー画像に含まれる最も高い明度よりも、さらに高い明度を指すものである。第一スレッショルドデータ(16)で用いられる画像形式において、充分に高い明度を表現するために各画素に割り当てられる閾値を、本発明では第一最高閾値と呼ぶ。
【0115】
グレー画像の明暗による影響を避けるために、第一最高閾値及び後述する第二最高閾値は、各々のスレッショルドデータを生成する際に用いられる画像形式で表現可能な最も高い明度であることが望ましい。なお、前述の通りグレー画像に含まれる最も高い明度よりもさらに高い明度の場合、各々のスレッショルドデータを生成する際に用いられる画像形式で表現可能な、最も高い明度に限定されない。
【0116】
グレー画像又は/及び各スレッショルドの画像形式が、明度の情報を直接的には持たず、RGBの明暗若しくはCMYKの濃淡を記録する形式である場合、各色成分の値を基に、適切に変換することによって明度を得る。このような変換として、例えば、日本のテレビで用いられているNTSC方式があり、該方式によれば、明度(輝度)YはRGB各成分を用いて、Y=0.299×R+0.587×G+0.114×Bの変換式によって得られる。本発明では記載を省略しているが、明度に関するすべての処理において、必要に応じて適宜このような変換を行うものとする。
【0117】
また、本発明における充分に低い明度とは、グレー画像に含まれる最も低い明度よりも、さらに低い明度を指すものである。第一スレッショルドデータ(16)で用いられる画像形式において、充分に低い明度を表現するために各画素に割り当てられる閾値を、本発明では第一最低閾値と呼ぶ。
【0118】
グレー画像の明暗による影響を避けるために、第一最低閾値及び後述する第二最低閾値は、各々のスレッショルドデータを生成する際に用いられる画像形式で表現可能な、最も低い明度であることが望ましい。なお、前述の通りグレー画像に含まれる最も低い明度よりも更に低い明度の場合、各々のスレッショルドデータを生成する際に用いられる画像形式で表現可能な、最も低い明度に限定されない。
【0119】
例えば、濃度0%を白とし、濃度100%を黒とした際、入力するグレー画像が濃度50%のベタ画像なら、第一スレッショルドデータ(16)のうち、m
x×m
yピクセルの第三の領域(3)に相当するすべての画素に設定する明度を、濃度0〜49%とすることで充分に高い明度となる。なお、第一スレッショルドデータ(16)を生成する際に用いられる画像形式で表現可能な、最も高い明度=濃度0%を第一スレッショルドデータ(16)の明度として設定しておくことで、グレー画像にどの明度がきても各最高閾値を再設定する必要がなくなり、好ましい。
【0120】
同様に、入力するグレー画像が濃度50%のベタ画像なら、第一スレッショルドデータ(16)のうち、m
x×m
yピクセルの第三の領域(3)に相当しないすべての画素に設定する明度を、濃度51〜100%とすることで最も低い明度となる。なお、第一スレッショルドデータ(16)を生成する際に用いられる画像形式で表現可能な、最も低い明度=濃度100%を第一スレッショルドデータ(16)の明度として設定しておくことで、グレー画像にどの明度が来ても、各最低閾値を再設定する必要がなくなり、好ましい。
【0121】
図11は、第一スレッショルドデータ生成手段(9)における、各画素の閾値設定を示す詳細な模式図である。
図11(a)は、
図10(b)に示した、j
x×j
yピクセルの第一スレッショルドデータ(16)の、各画素の閾値設定前の状態を示している。第一スレッショルドデータ(16)には、斜線で示す、各画素の閾値設定前のm
x×m
yピクセルの第三の領域(3)が含まれている。各画素における閾値設定は、矢印に示すように一画素ずつ行っていく。なお、
図11(a)においては、X方向(
図11(a)における右方向)に一画素ずつ閾値設定を行っているが、これに限らず、第一スレッショルドデータ(16)内のすべての画素に閾値設定を行うのであれば、例えば、Y方向(
図11(a)における下方向)に一画素ずつ閾値設定を行うことも可能である。
【0122】
図11(b)に示すように、第一スレッショルドデータ(16)のうち、m
x×m
yピクセルの第三の領域(3)に相当する画素には、第一最高閾値を設定する。また、
図11(c)に示すように、第一スレッショルドデータ(16)のうち、m
x×m
yピクセルの第三の領域(3)に相当しない画素には、第一最低閾値を設定する。同様の手順で、
図11(d)に示すように、第一スレッショルドデータ(16)のすべての画素に閾値設定を行う。すべての画素に閾値を設定することで、
図11(e)に示すような、各画素の閾値が設定された第一スレッショルドデータ(16)が生成される。
【0123】
なお、前述の通り、
図1(b)に示すような、N=3であり、第三の領域(3)が、第一の領域(1)に含まれる場合における、第一スレッショルドデータ生成手段(9)について説明している。そのため、第三の領域(3)が、第一の領域(1)に含まれず、第二の領域(2)に含まれる場合においては、
図11に示した、各画素の閾値設定は、第一スレッショルドデータ生成手段(9)ではなく、第二スレッショルドデータ生成手段(10)にて行う。
【0124】
また、第三の領域(3)が、後述する
図13(a)に示すような、第一の領域(1)と第二の領域(2)の両方にまたがって形成される場合においては、
図11に示した各画素の閾値設定は、第一スレッショルドデータ生成手段(9)と、後述する第二スレッショルドデータ生成手段(10)の両方で行う。
【0125】
次に、第二に、
図12に示した第二スレッショルドデータ生成手段(10)では、第二スレッショルドデータ(17)を生成する(STEP2
(1)−2)。
【0126】
図10(a)は、前述したあらかじめ作製しておいた、フォーマット画像における複数の第一の領域(1)、複数の第二の領域(2)、・・・、複数の第(N−1)の領域及び複数の第Nの領域を基に生成した第二スレッショルドデータ(17)を示す図である。第二スレッショルドデータ(17)は、
図10(a)において実線で示した中心領域(c)の外形内の網点形状を指定するために必要な画像である。本ステップでは、第二マスク画像のマスク形状を指定するために第二スレッショルドデータ(17)を用いる。
【0127】
第二スレッショルドデータ(17)は、フォーマット画像における中心領域と同一形状及び同じ大きさとする。
図6(b)においては、中心領域(c)内において第二の領域(2)のみが配置されている。そのことから、
図10(a)に示した第二スレッショルドデータ(17)は、すべての画素を充分に低い明度が設定された状態で生成する。なお、中心領域(c)内において、他の領域が配置されている場合には、前述した第一スレッショルドデータ(16)と同様に、第二スレッショルドデータ(17)のうち、中心領域(c)内に配置した領域に相当するすべての画素に充分に高い明度を設定する。
【0128】
第二スレッショルドデータ(17)で用いられる画像形式において、充分に高い明度を表現するために各画素に割り当てられる閾値を、本発明では第二最高閾値と呼び、充分に低い明度を表現するために各画素に割り当てられる閾値を、本発明では第二最低閾値と呼ぶ。第二スレッショルドデータ(17)のすべての画素に閾値設定を行う。すべての画素に閾値を設定することで、各画素の閾値が設定された第二スレッショルドデータ(17)が生成される。
【0129】
第三に、
図12に示したコマンド変換手段(11)では、第一スレッショルドデータ生成手段(9)で得られた第一スレッショルドデータ(16)及び第二スレッショルドデータ生成手段(10)で得られた第二スレッショルドデータ(17)を、ビットマップ、RAW形式等の適当な画像形式に変換したのち、さらに、ポストスクリプト網点発生法のHalftoneType16に準じたコマンドに変換する(STEP2
(1)−3)。
【0130】
第四に、
図12に示した網点データ保存手段(12)では、コマンド変換手段(11)の出力結果を結合して保存する(STEP2
(1)−4)。この出力結果にはコマンド変換手段(11)によって、第一スレッショルドデータ(16)及び第二スレッショルドデータ(17)を用いて、グレー画像に網点を付与するためのポストスクリプト網点発生法のHalftoneType16に準じたコマンドが付与されている。
【0131】
前述の通り、第一スレッショルドデータ(16)及び第二スレッショルドデータ(17)における各画素の閾値は、最高閾値(グレー画像に含まれる最も高い明度よりも、さらに高い明度)及び/又は最低閾値(グレー画像に含まれる最も低い明度よりも、さらに低い明度)が設定されている。つまり、グレー画像を構成するすべての画素は、最低閾値よりは高い明度で、かつ、最高閾値よりは低い明度であれば、グレー画像内にはどのような画像が形成されていても後の出力結果にまったく影響を与えない。
【0132】
このため、グレー画像の生成にかかる手間をかける必要はなく、グレー画像は単純な画像、例えば濃度50%の中間調グレーのみを用いた単色画像とすることが好ましい。
【0133】
第五に、
図12に示したラスター処理手段(13)では、網点発生装置又はソフトウェアRIPに命令を与え、網点データ保存手段(12)の出力結果を用いてグレー画像を変換することで、網点を生成する(STEP2
(1)−5)。
【0134】
網点発生装置とは、濃淡情報を持った画像の位置ごとに、各濃淡情報に対応する面積の網点へとそれぞれ置き換える変換を実施して出力する装置のことである。
【0135】
ソフトウェアRIPとは、連続直線や連続曲線等のベクトル情報で構成された画像を、画素によって構成される画像へと変換して出力するソフトウェアであり、一般的なソフトウェアRIPでは、連続直線や連続曲線等のベクトル情報で構成された画像を、画素によって構成される画像へと変換する際に、網点発生装置同様に濃度情報を網点へ置き換える機能を有する。
【0136】
第一スレッショルドデータ(16)及び第二スレッショルドデータ(17)のうち、第三の領域(3)に相当しないすべての画素には充分に低い明度が設定されている。そのため、ラスター処理手段(13)では、グレー画像における第三の領域(3)に含まれないすべての画素は白画素に変換される。同様に、第一スレッショルドデータ(16)及び第二スレッショルドデータ(17)のうち、第三の領域(3)に相当するすべての画素には充分に高い明度が設定されているため、グレー画像の第三の領域(3)に含まれるすべての画素は黒画素に変換される。
【0137】
以上の一連の処理によって、第三の領域(3)には黒画素が割り当てられ、第三の領域(3)以外には白画素が割り当てられた、第二マスク画像が生成される(STEP2
(1)−6)。この第二マスク画像を用いることで、一つの印刷物内に独立した第三の領域(3)を設けることが可能となり、第三の領域(3)に対応するように任意の画像である第三の画像を割り当てることが可能になる。
【0138】
また、上記STEP2
(1)−1〜STEP2
(1)−6の処理における第三の領域(3)の替わりに、第二の領域(2)を用いて同等の処理を行うことで(STEP2−1〜STEP2−6)、第一マスク画像が生成される。この第一マスク画像を用いることで、一つの印刷物内に独立した第二の領域(2)を設けることが可能となり、第二の領域(2)に対応するように任意の画像である第二の画像を割り当てることが可能になる。なお、第一マスク画像の生成及び一つの印刷物内に独立した第二の領域(2)を設けることについては、本出願人が先に出願した、特開2009−202420号公報にて詳細に記載されている。
【0139】
このように、各マスク画像を生成する工程により、第一スレッショルドデータ(16)をすべて第一の領域(1)に対応させ、第二スレッショルドデータ(17)をすべて第二の領域(2)に対応させなければいけないという、従来の制約から解放された。それにより、N種類以上、例えば三種類の領域を確保してその各々に異なる画像を割り当てることが可能になった。
【0140】
第三の領域(3)は、
図1(b)に示したように、第一の領域(1)内に配置してもよいが、それに限定されるものではなく、例えば、特許文献3において開示された、様々な網点構成とすることも可能である。
図13(a)は、特許文献3において開示された各網点構成を示す模式図であり、例えば、第三の領域(3)を、第一の領域(1)及び中心領域(c)に配置された第二の領域(2)にまたがって形成してもよい。
【0141】
前述の通り、第一スレッショルドデータ(16)は、第一の領域(1)と同一形状及び同じ大きさであり、第二スレッショルドデータ(17)は、中心領域(c)と同じ大きさである。そのことから、
図13(a)に示した網点構成における第一スレッショルドデータ(16)は、
図13(c)に示すように、第一の領域(1)内に形成された第三の領域(3)の一部(3’)に相当する画素に充分に高い明度を設定することで生成される。同様に、
図13(d)に示すように、第二スレッショルドデータ(17)は、第二の領域(2)内に形成された第三の領域(3)の一部(3’)に相当する画素に充分に高い明度を設定することで生成される。
【0142】
また、
図14に示すように、本発明における網点印刷物は、第一の領域(1)、第二の領域(2)、第三の領域(3)・・・、第Nの領域を、明暗又は色彩によって表現される階調情報を持った画素によって構成されていてもよい。なお、
図14においては、第一の領域(1)のみを明暗又は色彩によって表現される階調情報を持った画素により構成したが、複数の領域を、明暗又は色彩によって表現される階調情報を持った画素としてもよい。
【0143】
なお、前述した、背景画像生成工程を更に有した作製方法については、複数の中心領域(c)とN種類の領域(Nは3以上の自然数)により形成された網点印刷物を作成する場合として説明したが、これに限らず、本出願人が先に出願した、特開2009−202420号公報に記載した、複数の二種類の領域により形成された網点印刷物の作製方法においても、同様に背景画像生成工程を更に有することにより、本発明と同様の目的を達成できることは言うまでもない。
【0144】
上記記載の網点印刷物の作製方法をコンピュータプログラムによって実行するための網点印刷物の作製用ソフトウェア化して記録媒体(23)に格納することができる。
【0145】
図15は、前述した網点印刷物の作製方法がソフトウェア化されたのち格納された記録媒体(23)から、ソフトウェアを読み取りコンピュータプログラムによって実行することが可能な、コンピュ−タシステム(18)の概要を示す模式図の一例である。コンピュータシステム(18)は、演算装置やディスクドライブ装置等を内蔵した本体部(19)、本体部(19)からの指示により画像を表示するディスプレイ(20)、コンピュ−タシステム(18)に種々の情報を入力するためのキーボード(21)及びマウス(22)、CD−ROM、フレキシブルディスク、ハードディスク等の記録媒体(23)から構成される。
【0146】
網点印刷物の作製方法をコンピュータプログラムによって実行するための網点印刷物の作製用ソフトウェア化して格納する記録媒体(23)としては、前述したフレキシブルディスク、CD-R、USBメモリ、ハードディスクや、本体部(19)内のRAM等の揮発メモリを用いることが可能である。さらには、コンピュータシステム(18)に、無線又は有線による情報通信経路によって接続されたデータベース(24)に、網点印刷物の作製用ソフトウェア化して格納することも可能である。いずれの場合においても、当該プログラムは本体部(19)に呼び出されてそのメモリ上で実行される。
【実施例1】
【0147】
以下、前述の実施の形態に従って具体的に作製した、三つの領域からなる網点印刷物について、詳細に説明する。実施例1における網点印刷物については、
図1(b)に示した網点構成を用いて、第一の領域(1)を40×40ピクセルとし、中心領域(c)及び第二の領域(2)を15×15ピクセルとし、第三の領域(3)を20×20ピクセルとして作製した。なお、印刷物については、
図12に示した画像処理装置(4)を用いて作製した。
【0148】
図16は、実施例1における第一の画像(a)、グレー画像(b)、第二の画像(c)及び第三の画像(d)である。また、
図17は、実施例1における各マスク画像及びマスク処理工程後の各画像を示す図であり、
図18は、実施例1における網点印刷物の作製方法を示すフローチャートである。以下、
図18のフローチャートに順じて作製した。
【0149】
まず、第一の画像の基となる、第一の原画像を画像入力部(6)へ入力した(STEP1)。第一の原画像は、最終的な網点印刷物において、第一の観察条件である可視光源下における拡散光領域において視認可能な画像となる第一の画像(
図16(a))が網点画像へ変換する前の原画像である。第一の原画像はサイズが幅4cm×高さ3cmで、解像度は300DPIであり、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の色情報によって構成された画像とした。次に、画像処理部(7)において第一の原画像の色変換を行い、第一の原画像のK成分をすべてCMY成分に置き換えた。この色変換の前後で原画像の見た目に変化はないが、色変換後の第一の原画像にはK成分がまったく含まれない。その後、色変換後の第一の原画像を、画像サイズを幅4cm×高さ3cmに保ったまま解像度を1200DPIへ変換することで、第一画素画像を生成した。
【0150】
次に、第二の画像の基となる、第二の原画像を画像入力部(6)へ入力した(STEP1
(2))。第二の原画像は、最終的な網点印刷物において、第二の観察条件である赤外線光源下において視認可能な画像となる第二の画像(
図16(c))が網点画像へ変換する前の原画像である。第二の原画像は、サイズが第一の画像(
図16(a))と同一で幅4cm×高さ3cm、解像度は72DPIのビットマップ画像とした。次に、画像処理部(7)において、ポストスクリプト網点発生法のHalftoneType16に準じた方法により、第二の原画像に対してハーフトーン処理を行うことで、サイズを幅4cm×高さ3cmに保ったまま解像度1200DPIの白黒二値の網点画像へ変換し、白黒二値の網点画像である第二画素画像を生成した。
【0151】
次に、第三の画像の基となる、第三の原画像を画像入力部(6)へ入力した(STEP1
(3))。第三の原画像は、最終的な網点印刷物において、第三の観察条件である、定位置の照明光源に対して観察角度を拡散光領域から正反射光領域へ変化させることで視認可能な画像となる第三の画像(
図16(d))が、網点画像へ変換する前の原画像である。第三の原画像は、サイズが第一の画像(
図16(a))及び第二の画像(
図16(c))と同一で幅4cm×高さ3cm、解像度は300DPIのグレースケール画像とした。次に、画像処理部(7)において、ポストスクリプト網点発生法のHalftoneType16に準じた方法により、第三の原画像に対してハーフトーン処理を行うことで、サイズを幅4cm×高さ3cmに保ったまま解像度1200DPIの白黒二値の網点画像へ変換し、白黒二値の網点画像である第三画素画像を生成した。
【0152】
次に、各マスク画像を簡易に生成するために、グレー画像を生成した(STEP1
(1)。まず、第一画素画像、第二画素画像及び第三画素画像は、同じ大きさであることから、第一画素画像を選び、次に、第一画素画像を基に、第一画素画像と同一サイズであり、かつ、複数の画素にから成るグレー画像を生成した。グレー画像は、幅4cm×高さ3cmの画像サイズを持ち、濃度50%のベタ画像とした。
【0153】
次に、各画素画像及びグレー画像における基準点を設定した。第一画素画像、第二画素画像及び第三画素画像は、すべて同じ大きさであることから、各画素画像の四隅を、それぞれの画素画像における基準点に設定し、各画素画像の基準点と共通する位置に、グレー画像における基準点を設定した。
【0154】
次に、あらかじめ作製しておいたフォーマット画像を用いて、マスク画像生成部(8)における第一スレッショルドデータ生成手段(9)により、すべての画素に黒色が割り当てられた大きさ40×40ピクセルの第一スレッショルド画像を生成した。さらに、マスク画像生成部(8)における第二スレッショルドデータ生成手段(10)により、すべての画素に白色が割り当てられた大きさ15×15ピクセルの第二スレッショルド画像を生成した。さらに、第一スレッショルド画像及び第二スレッショルド画像を用いて網点を生成する、ポストスクリプト網点発生法のHalftoneType16に準じた命令を、コマンド変換手段(11)によって埋め込む処理を行った。
【0155】
次に、網点データ保存手段(12)によってコマンド変換手段(11)の出力結果をファイルに保存した後、ラスター処理手段(13)によって第一画素画像と同一解像度である1200DPIのビットマップ画像へ変換することで、白黒の二値画像である第一マスク画像(
図17(a))を得た(STEP2)。第一マスク画像は、各画素画像に設定した基準点と、共通する位置に基準点を設けた。
【0156】
次に、第二マスク画像を生成するために、画像入力部(6)へグレー画像(
図16(b))が入力された状態のままで、第一スレッショルド画像内における20×20ピクセルの範囲内のすべての画素に白色が割り当てられ、それ以外のすべての画素に黒色が割り当てられた大きさ40×40ピクセルの第一スレッショルド画像を生成し、さらにすべての画素に黒色が割り当てられた大きさ15×15ピクセルの第二スレッショルド画像を生成した。
【0157】
次に、第一スレッショルド画像及び第二スレッショルド画像を用いて網点を生成する、ポストスクリプト網点発生法のHalftoneType16に準じた命令を、コマンド変換手段(11)によって埋め込む処理を行った。網点データ保存手段(12)によってコマンド変換手段(11)の出力結果をファイルに保存した後、ラスター処理手段(13)によって第一画素画像と同一解像度である1200DPIのビットマップ画像へ変換することで、白黒の二値画像である第二マスク画像(
図17(c))を得た(STEP2
(1))。第二マスク画像は、各画素画像に設定した基準点と、共通する位置に基準点を設けた。
【0158】
次に、第一マスク画像(
図17(a))と、画像処理部(7)において得られた第二画素画像をマスク処理部(14)に入力し、第一マスク画像(
図17(a))の基準点と、第一マスク画像(
図17(a))と対応する第二画素画像の基準点とをそれぞれ合わせて、同じ位置となる二つの画素のうち、第一マスク画像(
図17(a))を構成する画素が黒画素ならば、第二画素画像を構成する画素を残し、第一マスク画像(
図17(a))を構成する画素が白画素ならば、第二画素画像を構成する画素を白画素とすることで、複数の第二の網点部(2a)から成る第二の画像(
図17(b))を生成した(STEP3)。第二の画像(
図17(b))は、各画素画像及び各マスク画像に設定した基準点と、共通する位置に基準点を設けた。
【0159】
次に、第二マスク画像(
図17(c))と、画像処理部(7)において得られた第三画素画像をマスク処理部(14)に入力し、第二マスク画像(
図17(c))の基準点と、第二マスク画像(
図17(c))と対応する第三画素画像の基準点とをそれぞれ合わせて、同じ位置となる二つの画素のうち、第二マスク画像(
図17(c))を構成する画素が黒画素ならば、第三画素画像を構成する画素を残し、第二マスク画像(
図17(c))を構成する画素が白画素ならば、第三画素画像を構成する画素を白画素とすることで、複数の第三の網点部(3a)から成る第三の画像(
図17(d))を生成した(STEP3
(2))。
【0160】
次に、第一画素画像と、マスク処理工程後の第二の画像及び第三の画像と、第一マスク画像及び第二マスク画像とを、それぞれの基準点を合わせて合成し、合成画像を生成した(STEP4)。
【0161】
まず、第一の網点部(1a)、第二の網点部(2a)及び第三の網点部(3a)を形成する、各観察条件により視認可能な異なる特性を有する材料を設定した。実施例1においては、第一の観察条件は可視光源下における拡散光領域に設定したので、第一の観察条件により視認可能な材料を、プロセスインキである、シアンC、マゼンダM及びイエローYとした。次に、第二の観察条件は、赤外線光源下に設定したので、第二の観察条件により視認可能な材料を、プロセスインキであるブラックKとした。さらに、第三の観察条件を、定位置の照明光源に対して観察角度を拡散光領域から正反射光領域へ変化させることに設定したので、第三の観察条件により視認可能な材料を、金属光沢インキとした。
【0162】
次に、各網点部及び背景部を形成する材料の色の設定を行った。まず、第一マスク画像(
図13(a))の黒画素をシアンC(100%)+マゼンダM(100%)+イエローY(100%)の色を設定したのち、すべてその色に置き換え、第二マスク画像(
図13(c))の黒画素をシアンC(20%)+マゼンダM(20%)+イエローY(20%)+ブラックK(80%)の色を設定したのち、すべてその色に置き換え、マスク処理後の第二の画像の黒画素をブラックK(100%)の色を設定したのち、すべてその色に置き換え、マスク処理後の第三の画像の黒画素を金属光沢インキ印刷用の色を設定したのち、すべてその色に置き換えた。
【0163】
なお、これらの色の置き換えにより、第一の観察条件である可視光源下における拡散光領域における観察時に第二の網点部(2a)と第二の背景部(2b)が略等色、かつ、第三の網点部(3a)と第三の背景部(3b)が略等色に視認され、第二の観察条件である赤外線光源下による観察時に、第二の網点部(2a)(マスク処理後の第二の画像の設定色)と第二の背景部(2b)(第一マスク画像の設定色)が異なる色で視認され、かつ、第三の網点部(3a)(マスク処理後の第三の画像の設定色)と第三の背景部(3b)(第二マスク画像の設定色)が略等色に視認され、第三の観察条件である、定位置の照明光源に対して観察角度を拡散光領域から正反射光領域へ変化させて観察する場合に、第三の網点部(3a)と第三の背景部(3b)が異なる色で視認され、かつ、第二の網点部(2a)と第二の背景部(2b)が略等色で視認されるように設定された。
【0164】
図19は、実施例1における各画像データを合成する模式図である。次に、着色後の各画像を画像合成部(15)に入力したのち、各画像それぞれの基準点を合わせて合成し、合成画像を生成した(STEP4)。まず、第一画素画像の上に、第一マスク画像を、それぞれの基準点を合わせて重ね合わせ(STEP4−1)、さらにその上に、マスク処理後の第二の画像を、それぞれの基準点を合わせて重ね合わせた(STEP4−2)。加えて、その上に第二マスク画像を、それぞれの基準点を合わせて重ね合わせ(STEP4−1
(1))、さらにその上に、マスク処理後の第三の画像を、それぞれの基準点を合わせて重ね合わせ(STEP4−2
(1))、合成画像を生成することで画像データを完成させた。ただし、上記の画像の着色及び合成の処理においては、上に重ねる画像のうち、白色の画素の部分は透明として扱うことで下の画像を残し、それ以外の部分は、上に重ねる画像で上書きした。
【0165】
以上の工程を経て作製された画像データには三つの画像情報が含まれる。この画像データを基に、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)及び金属光沢インキの五つの印刷版面を出力し、網点印刷物を作製した(STEP5)。このとき、シアン(C)、マゼンダ(M)及びイエロー(Y)は、赤外線を透過する一般的なプロセスインキを用い、ブラック(K)については、赤外線を吸収するカーボンブラックインキを用いた。
【0166】
印刷方式はオフセット印刷機を用い、前述の五つの印刷版面を用いて行った。印刷時には、網点印刷物上のシアンC(100%)+マゼンダM(100%)+イエローY(100%)部分と、ブラックK(100%)部分とが、肉眼でほぼ等色に見えるようにインキ濃度の調整を行ない、さらに、金属光沢インキ部分とシアンC(20%)+マゼンダM(20%)+イエローY(20%)+ブラックK(80%)部分とが、肉眼及び赤外散乱光でほぼ等色に見えるようにインキ濃度の調整を行った。
【0167】
以上の方法で作製された網点印刷物を所定の観察条件により観察してみた。まず、第一の観察条件である可視光源下における拡散光領域において、肉眼では、第一の画像(
図16(a))が視認され、さらに、第二の観察条件である赤外線光源下による観察では、カーボンブラックを用いて構成された第二の画像(
図16(c))が視認され、さらに、第三の観察条件である、定位置の照明光源に対して観察角度を拡散光領域から正反射光領域へ変化させる、例えば網点印刷物を傾けることで、第三の画像(
図16(d))が視認された。
【実施例2】
【0168】
実施例2における網点印刷物については、
図1(b)に示した網点構成を用いて、第一の領域(1)を40×40ピクセルとし、中央領域(C)及び第二の領域(2)を15×15ピクセルとし、第三の領域(3)を20×20ピクセルとして作製した。印刷物については、
図12に示した画像処理装置(4)を用いて作製した。
【0169】
実施例2においては、前述した実施例1と同じく、
図16に示す第一の画像(a)、グレー画像(b)、第二の画像(c)及び第三の画像(d)、
図17に示す各マスク画像及びマスク処理後の画像を用いた。なお、作製方法については、
図20に示す、実施例2における網点印刷物の作製方法を示すフローチャートに順じて作製した。
【0170】
まず、第一の画像の基となる、第一の原画像を画像入力部(6)へ入力した(STEP1)。第一の原画像は、最終的な網点印刷物において、第一の観察条件である可視光源下における拡散光領域において視認可能な画像となる第一の画像(
図16(a))が網点画像へ変換する前の原画像である。第一の原画像はサイズが幅4cm×高さ3cmで、解像度は300DPIであり、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の色情報によって構成された画像とした。次に、画像処理部(7)において第一の原画像の色変換を行ない、第一の原画像のK成分をすべてCMY成分に置き換えた。この色変換の前後で原画像の見た目に変化はないが、色変換後の第一の原画像にはK成分がまったく含まれない。その後、色変換後の第一の原画像を、画像サイズを幅4cm×高さ3cmに保ったまま解像度を1200DPIへ変換することで、第一画素画像を生成した。
【0171】
次に、第二の画像の基となる、第二の原画像を画像入力部(6)へ入力した(STEP1
(2))。第二の原画像は、最終的な網点印刷物において、第二の観察条件である赤外線光源下において視認可能な画像となる第二の画像(
図16(c))が網点画像へ変換する前の原画像である。第二の原画像は、サイズが第一の画像(
図16(a))と同一で幅4cm×高さ3cm、解像度は72DPIのビットマップ画像とした。次に、画像処理部(7)において、ポストスクリプト網点発生法のHalftoneType16に準じた方法により、第二の原画像に対してハーフトーン処理を行うことで、サイズを幅4cm×高さ3cmに保ったまま解像度1200DPIの白黒二値の網点画像へ変換し、白黒二値の網点画像である第二画素画像を生成した。
【0172】
次に、第三の画像の基となる、第三の原画像を画像入力部(6)へ入力した(STEP1
(3))。第三の原画像は、最終的な網点印刷物において、第三の観察条件である、定位置の照明光源に対して観察角度を拡散光領域から正反射光領域へ変化させることで視認可能な画像となる第三の画像(
図16(d))が、網点画像へ変換する前の原画像である。第三の原画像は、サイズが第一の画像(
図16(a))及び第二の画像(
図16(c))と同一で幅4cm×高さ3cm、解像度は300DPIのグレースケール画像とした。次に、画像処理部(7)において、ポストスクリプト網点発生法のHalftoneType16に準じた方法により、第三の原画像に対してハーフトーン処理を行うことで、サイズを幅4cm×高さ3cmに保ったまま解像度1200DPIの白黒二値の網点画像へ変換し、白黒二値の網点画像である第三画素画像を生成した。
【0173】
次に、各マスク画像を簡易に生成するために、グレー画像を生成した(STEP1
(1)。まず、第一画素画像、第二画素画像及び第三画素画像は同じ大きさであることから、第一画素画像を選び、次に、第一画素画像を基に、第一画素画像と同一サイズであり、かつ、複数の画素にから成るグレー画像を生成した。グレー画像は、幅4cm×高さ3cmの画像サイズを持ち、濃度50%のベタ画像とした。
【0174】
次に、各画素画像及びグレー画像における基準点を設定した。第一画素画像、第二画素画像及び第三画素画像は、すべて同じ大きさであることから、各画素画像の四隅を、それぞれの画素画像における基準点に設定し、各画素画像の基準点と共通する位置に、グレー画像における基準点を設定した。
【0175】
次に、あらかじめ作製しておいたフォーマット画像を用いて、マスク画像生成部(8)における第一スレッショルドデータ生成手段(9)により、すべての画素に黒色が割り当てられた大きさ40×40ピクセルの第一スレッショルド画像を生成した。さらに、マスク画像生成部(8)における第二スレッショルドデータ生成手段(10)により、すべての画素に白色が割り当てられた大きさ15×15ピクセルの第二スレッショルド画像を生成した。さらに、第一スレッショルド画像及び第二スレッショルド画像を用いて網点を生成する、ポストスクリプト網点発生法のHalftoneType16に準じた命令を、コマンド変換手段(11)によって埋め込む処理を行った。
【0176】
次に、網点データ保存手段(12)によってコマンド変換手段(11)の出力結果をファイルに保存した後、ラスター処理手段(13)によって第一画素画像と同一解像度である1200DPIのビットマップ画像へ変換することで、白黒の二値画像である第一マスク画像(
図17(a))を得た(STEP2)。第一マスク画像は、各画素画像に設定した基準点と、共通する位置に基準点を設けた。
【0177】
次に、第二マスク画像を生成するために、画像入力部(6)へグレー画像(
図16(b))が入力された状態のままで、第一スレッショルド画像内における20×20ピクセルの範囲内のすべての画素に白色が割り当てられ、それ以外のすべての画素に黒色が割り当てられた大きさ40×40ピクセルの第一スレッショルド画像を生成し、更にすべての画素に黒色が割り当てられた大きさ15×15ピクセルの第二スレッショルド画像を生成した。
【0178】
次に、第一スレッショルド画像及び第二スレッショルド画像を用いて網点を生成する、ポストスクリプト網点発生法のHalftoneType16に準じた命令を、コマンド変換手段(11)によって埋め込む処理を行った。網点データ保存手段(12)によってコマンド変換手段(11)の出力結果をファイルに保存した後、ラスター処理手段(13)によって第一画素画像と同一解像度である1200DPIのビットマップ画像へ変換することで、白黒の二値画像である第二マスク画像(
図17(c))を得た(STEP2
(1))。第二マスク画像は、各画素画像に設定した基準点と、共通する位置に基準点を設けた。
【0179】
次に、第一マスク画像(
図17(a))と、画像処理部(7)において得られた第二画素画像をマスク処理部(14)に入力し、第一マスク画像(
図17(a))の基準点と、第一マスク画像(
図17(a))と対応する第二画素画像の基準点とをそれぞれ合わせて、同じ位置となる二つの画素のうち、第一マスク画像(
図17(a))を構成する画素が黒画素ならば、第二画素画像を構成する画素を残し、第一マスク画像(
図17(a))を構成する画素が白画素ならば、第二画素画像を構成する画素を白画素とすることで、複数の第二の網点部(2a)から成る第二の画像(
図17(b))を生成した(STEP3)。第二の画像(
図17(b))は、各画素画像及び各マスク画像に設定した基準点と、共通する位置に基準点を設けた。
【0180】
次に、第二マスク画像(
図17(c))と、画像処理部(7)において得られた第三画素画像をマスク処理部(14)に入力し、第二マスク画像(
図17(c))の基準点と、第二マスク画像(
図17(c))と対応する第三画素画像の基準点とをそれぞれ合わせて、同じ位置となる二つの画素のうち、第二マスク画像(
図17(c))を構成する画素が黒画素ならば、第三画素画像を構成する画素を残し、第二マスク画像(
図17(c))を構成する画素が白画素ならば、第三画素画像を構成する画素を白画素とすることで、複数の第三の網点部(3a)から成る第三の画像(
図17(d))を生成した(STEP3
(2))。
【0181】
次に、第一マスク画像(
図17(a))における基準点と、マスク処理後の第二の画像(
図17(b))における基準点をそれぞれ合わせてXOR演算により合成し、
図21(a)に示す第一背景画像を生成した(STEP3’)。
【0182】
次に、第二マスク画像(
図17(c))における基準点と、マスク処理後の第三の画像(
図17(d))における基準点をそれぞれ合わせてXOR演算により合成し、
図21(b)に示す第二背景画像を生成した(STEP3’
(1)’)。第一背景画像及び第二背景画像においても、第一画素画像、第二画素画像及び第三画素画像に設定した基準点と、共通する位置に基準点をそれぞれ有する。
【0183】
次に、第一画素画像と、マスク処理工程後の第二の画像及び第三の画像と、第一背景画像及び第二背景画像とを、それぞれの基準点を合わせて合成し、合成画像を生成した(STEP4)。
【0184】
まず、第一の網点部(1a)、第二の網点部(2a)及び第三の網点部(3a)を形成する、各観察条件により視認可能な異なる特性を有する材料を設定した。実施例1においては、第一の観察条件は可視光源下における拡散光領域に設定したので、第一の観察条件により視認可能な材料を、プロセスインキである、シアンC、マゼンダM及びイエローYとした。次に、第二の観察条件は、赤外線光源下に設定したので、第二の観察条件により視認可能な材料を、プロセスインキであるブラックKとした。さらに、第三の観察条件を、定位置の照明光源に対して観察角度を拡散光領域から正反射光領域へ変化させることに設定したので、第三の観察条件により視認可能な材料を、金属光沢インキとした。
【0185】
次に、各網点部及び背景部を形成する材料の色の設定を行った。まず、第一背景画像(
図21(a))の黒画素をすべてシアンC(100%)+マゼンダM(100%)+イエローY(100%)の色の画素に置き換え、第二背景画像(
図22(b))の黒画素をすべてシアンC(20%)+マゼンダM(20%)+イエローY(20%)+ブラックK(80%)の色の画素に置き換え、マスク処理後の第二の画像の黒画素をすべてブラックK(100%)の色の画素に置き換え、マスク処理後の第三の画像の黒画素をすべて金属光沢インキ印刷用の色の画素に置き換えた。
【0186】
なお、これらの色の置き換えにより、第一の観察条件である可視光源下における拡散光領域における観察時に第二の網点部(2a)と第二の背景部(2b)が略等色、かつ、第三の網点部(3a)と第三の背景部(3b)が略等色に視認され、第二の観察条件である赤外線光源下による観察時に、第二の網点部(2a)(マスク処理後の第二の画像の設定色)と第二の背景部(2b)(第二背景画像の設定色)が異なる色で視認され、かつ、第三の網点部(3a)(マスク処理後の第三の画像の設定色)と第三の背景部(3b)(第二背景画像の設定色)が略等色に視認され、第三の観察条件である、定位置の照明光源に対して観察角度を拡散光領域から正反射光領域へ変化させて観察する場合に、第三の網点部(3a)と第三の背景部(3b)が異なる色で視認され、かつ、第二の網点部(2a)と第二の背景部(2b)が略等色で視認されるように設定された。
【0187】
図22は、実施例2における各画像データを合成する模式図である。次に、着色後の各画像を画像合成部(15)に入力したのち、各画像それぞれの基準点を合わせて合成し、合成画像を生成した(STEP4)。まず、第一画素画像の上に、第一背景画像を、それぞれの基準点を合わせて重ね合わせ(STEP4−1)、さらにその上に、マスク処理後の第二の画像を、それぞれの基準点を合わせて重ね合わせた(STEP4−2)。加えて、その上に第二背景画像を、それぞれの基準点を合わせて重ね合わせ(STEP4−1
(1))、さらにその上に、マスク処理後の第三の画像を、それぞれの基準点を合わせて重ね合わせ(STEP4−2
(1))、合成画像を生成することで画像データを完成させた。
【0188】
ただし、上記の画像の着色及び合成の処理においては、第一背景画像の重ね合わせ時(STEP4−1)及び第二背景画像の重ね合わせ時(STEP4−1
(1))には、上に重ねる画像のうち、白色の画素の部分は透明として扱うことで下の画像を残し、それ以外の部分は、上に重ねる画像で上書きした。マスク処理後の第二の画像の重ね合わせ時(STEP4−2)及びマスク処理後の第三の画像の重ね合わせ時(STEP4−2
(1))には、上に重ねる画像のうち、白色の画素の部分は透明として扱うことで下の画像を残し、それ以外の部分は、下に重ねられる画像を構成する画素の色に、上に重ねる画像を構成する画素の色を加えた。ここでいう色を加えるとは、二つの画素が持つシアン(C)濃度情報同士、マゼンダ(M)濃度情報同士、イエロー(Y)濃度情報同士の値を加算することを指す。ただし、加算の結果、濃度が100%を超える場合は、濃度として100%が設定される。
【0189】
以上の工程を経て作製された合成画像の画像データには三つの画像情報が含まれる。この画像データを基に、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)及び金属光沢インキの五つ印刷版面を出力し、網点印刷物を作製した(STEP5)。このとき、シアン(C)、マゼンダ(M)及びイエロー(Y)は、赤外線を透過する一般的なプロセスインキを用い、ブラック(K)については、赤外線を吸収するカーボンブラックインキを用いた。
【0190】
印刷方式はオフセット印刷機を用い、前述の五つの印刷版面を用いて行った。印刷時には、網点印刷物上のシアンC(100%)+マゼンダM(100%)+イエローY(100%)部分と、ブラックK(100%)部分とが、肉眼でほぼ等色に見えるようにインキ濃度の調整を行い、さらに、金属光沢インキ部分とシアンC(20%)+マゼンダM(20%)+イエローY(20%)+ブラックK(80%)部分とが、肉眼及び赤外散乱光でほぼ等色に見えるようにインキ濃度の調整を行った。印刷時においては、基材上に、各背景部を印刷し、その後、各背景部の上に各網点部を印刷することで、網点印刷物を作製した。
【0191】
以上の方法で作製された網点印刷物を所定の観察条件により観察してみた。まず、第一の観察条件である可視光源下における拡散光領域において、肉眼では、第一の画像(
図16(a))が視認され、さらに、第二の観察条件である赤外線光源下による観察では、カーボンブラックを用いて構成された第二の画像(
図16(c))が視認され、さらに、第三の観察条件である、定位置の照明光源に対して観察角度を拡散光領域から正反射光領域へ変化させる、例えば網点印刷物を傾けることで、第三の画像(
図16(d))が視認された。
【0192】
また、オフセット印刷を行う際に、五つの印刷版面が、互いに若干ずれて印刷されたが、そのずれた箇所は、第一背景画像及び第二背景画像が露出したことから、白抜けすることなく網点印刷物が生成された。