(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
酸化イットリウムを主成分とし、繊維状導電性物質を0.1体積%以上かつ3体積%以下含有してなる導電性セラミックスと、酸化イットリウムを主成分とする絶縁性セラミックスとを、熱膨張率を前記導電性セラミックスおよび前記絶縁性セラミックスと±10%の範囲内で一致させた無機系接着剤により接着してなることを特徴とするセラミック部材。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のセラミック部材を実施するための形態について説明する。
なお、以下の実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0017】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態のセラミック部材を示す断面図であり、図において、1はセラミック部材であり、導電性セラミックス2と絶縁性セラミックス3とが接着層4により接着されて一体化されている。
【0018】
導電性セラミックス2は、酸化イットリウムを主成分とし、繊維状導電性物質を0.1体積%以上かつ3体積%以下含有しているセラミックスであり、相対密度が95%以上、体積固有抵抗値が0.5Ω・cm以上かつ10Ω・cm以下である。
【0019】
この導電性セラミックス2では、ハロゲン系プラズマに対して特に耐食性の高い酸化イットリウム(Y
2O
3)粒子がマトリックスを構成している。
この酸化イットリウム粒子の平均粒子径は、0.1μm以上かつ10μm以下が好ましく、より好ましくは0.5μm以上かつ5μm以下である。
ここで、酸化イットリウム粒子の平均粒子径を0.1μm以上かつ10μm以下と限定した理由は、平均粒子径が0.1μm未満では、導電性セラミックス中における酸化イットリウムの粒界総数が増加するために、導電性を発現させるためには繊維状導電性物質の添加量を増加させる必要があるが、繊維状導電性物質の添加量を増加させると耐食性が低下するので好ましくなく、一方、平均粒子径が10μmを超えると、繊維状導電性物質の添加量が減少するので、導電性は向上するが、導電性セラミックス中における酸化イットリウムの粒界総数が減少するので、繊維状導電性物質が局所的に存在(偏在)することとなり、導電性セラミックス内での導電性に偏りが生じ、真空プロセス装置に適用した場合に、異常放電等が発生する虞があるので好ましくない。
【0020】
この導電性セラミックス2では、繊維状導電性物質が三次元に分散している。ここで、「繊維状導電性物質が三次元に分散する」とは、繊維状導電性物質が特定の配向性を示すことなくランダムに配置しており、酸化イットリウム粒子同士の間(粒界)に分散しているという意味である。すなわち、この導電性セラミックス2から一定体積を取り、この体積中に含まれる繊維状導電性物質それぞれの長手方向の平均値を取った場合、この平均値が零となるということである。
【0021】
この繊維状導電性物質としては、使用雰囲気や温度領域にて融解、消失、変質をしないものであることが好ましく、特に、極微量添加で導電性を発現するためには、アスペクト比(長さ/直径)は10以上である必要がある。
このナノファイバーとしては、カーボンナノファイバーや金属ナノファイバーが挙げられるが、これらの中でもカーボンナノファイバーが好ましく、カーボンナノファイバーとしては、カーボンナノチューブが好ましい。
【0022】
このカーボンナノチューブとしては、アスペクト比(長さ/直径)が10以上、例えば、直径30nm以下、長さ10μm以下の単層カーボンナノチューブ(SWCNT:Single Walled Carbon Nanotube)、二層カーボンナノチューブ(DWCNT:Double Walled Carbon Nanotube)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT:Multi Walled Carbon Nanotube)の群から選択される1種または2種以上が用いられる。
【0023】
この繊維状導電性物質は、その異方性形状により、酸化イットリウム粒子同士の間(粒界)にランダムに存在することにより、これら繊維状導電性物質同士が一部で接触して三次元的にネットワークを形成し、よって、導電性セラミックス2中の粒界に導電パスを形成している。
したがって、繊維状導電性物質を0.1体積%以上かつ3体積%以下の極微量添加することにより、導電性セラミックス2に1〜100Ω・cm程度の導電性を発現させることができ、なおかつ、熱膨張率も殆ど変化しない。
なお、この繊維状導電性物質は、酸化イットリウム粒子同士の間(粒界)に必ず存在している必要はなく、繊維状導電性物質が存在しない粒界があってもよい。
【0024】
この繊維状導電性物質は、酸化イットリウム粒子からなるマトリックス中に、繊維状導電性物質が単体、あるいは、単体の繊維状導電性物質が複数本凝集した凝集体として存在しており、この凝集体の凝集径(凝集体の直径)は5μm以下、好ましくは2μm以下となっている。
ここで、凝集径が5μmを超えると、ハロゲン系プラズマにより繊維状導電性物質が消失し易くなり、耐食性が低下し、導電性の低下、パーティクルの発生を引き起こすので、好ましくない。特に、半導体製造装置用部材として使用した際には、凝集体の部分がプラズマにより選択的に消耗してしまい、その結果、耐食性の低下、導電性の低下、パーティクルの発生が生じることとなり、半導体製造装置用部材として不適当であり、また、凝集体が焼結を阻害する要因となり、低圧焼成時に導電性セラミックス2の密度が向上せず、体積抵抗率の低下も不十分なものとなる。さらに、導電パスが形成しづらく、導電性セラミックス2に求められる導電性を発現させるためには、繊維状導電性物質の含有量を高くする必要がある。
【0025】
この繊維状導電性物質の含有率は、0.1体積%以上かつ3体積%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5体積%以上かつ2体積%以下である。
ここで、繊維状導電性物質の含有率が0.1体積%より低いと、導電パスの形成が不十分なものとなり、導電性セラミックス2に必要とされる導電性を発現させることができず、一方、繊維状導電性物質の含有率が3体積%を超えると、繊維状導電性物質が10μmより大きい粗大凝集体を形成し易くなり、耐食性が低下する。
【0026】
この導電性セラミックス2は、その相対密度、すなわち真密度(d
0)の理論密度(d
t)に対する比(d
0/d
t)を百分率で表した場合、95%以上と緻密なものとなっている。
【0027】
また、この導電性セラミックス2の体積固有抵抗値は、0.5Ω・cm以上かつ10Ω・cm以下である。
ここで、導電性セラミックス2の体積固有抵抗値を0.5Ω・cm未満にするには、繊維状導電性物質の含有率を高める必要があるが、含有率を高めると、繊維状導電性物質が凝集を生じ易くなり、耐食性が低下してしまうので好ましくない。また、コストの面でも経済的ではない。一方、体積固有抵抗値が10Ω・cmを超えると、様々な真空プロセス装置での各種条件下で使用する場合、同時に使用される真空プロセス装置用部材と電気的整合性をとることが難しく、設計上の制約が生じるので好ましくない。
【0028】
この導電性セラミックス2は、ハロゲン系腐食性ガス及びこれらのプラズマに対する耐食性及び熱伝導性に優れており、体積固有抵抗値が10Ω・cm以下と導電性にも優れている。
この導電性セラミックス2は、酸化イットリウムを主成分とする絶縁性セラミックスに0.1体積%以上かつ3体積%以下という極微量の繊維状導電性物質を添加することで、導電性を発現したものであり、酸化イットリウムを主成分とする絶縁性セラミックスと比べて、導電性以外の物性、例えば、熱膨張率、プラズマ耐食性等を変化させることが無い。
【0029】
また、絶縁性セラミックス3は、酸化イットリウムを主成分とするセラミックスであり、ハロゲン系プラズマに対して特に耐食性の高い酸化イットリウム(Y
2O
3)粒子により構成されている。
この酸化イットリウム粒子は、導電性セラミックス2に用いられる酸化イットリウム粒子と同様であるから、説明を省略する。
【0030】
この絶縁性セラミックス3においても、導電性セラミックス2と同様、その相対密度、すなわち真密度(d
0)の理論密度(d
t)に対する比(d
0/d
t)を百分率で表した場合、95%以上と緻密なものとなっている。
また、この絶縁性セラミックス3の体積固有抵抗値は10
8Ω・cm以上であり、極めて絶縁性に優れたものとなっている。
【0031】
接着層4は、導電性セラミックス2と絶縁性セラミックス3とを接着し一体化するためのものであり、その熱膨張率は、導電性セラミックス2及び絶縁性セラミックス3の熱膨張率に略一致している。
この接着層4としては、例えば1000℃以上の高温雰囲気中にても十分耐性を有する無機系接着材が好適に用いられ、この無機系接着材としては、アルカリ金属ケイ酸塩系接着材、シリカゾル系接着材、金属アルコキシド系接着材等が挙げられる。
【0032】
このセラミック部材1では、導電性セラミックス2及び絶縁性セラミックス3の熱膨張率と、接着層4の熱膨張率とは、略一致している。
ここで、略一致とは、導電性セラミックス2及び絶縁性セラミックス3の熱膨張率と、接着層4の熱膨張率とが、±10%の範囲内で一致していることである。
例えば、酸化イットリウムからなる絶縁性セラミックス3の熱膨張率が8×10
−6/℃、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を1体積%含有する酸化イットリウムからなる導電性セラミックス2の熱膨張率が7.9×10
−6/℃の場合、接着層4の熱膨張率は8×10
−6/℃となる等である。
【0033】
このように、接着層4により導電性セラミックス2及び絶縁性セラミックス3を接着し一体化したセラミック部材1は、導電性セラミックス2及び絶縁性セラミックス3と接着層4との間の熱膨張差によるミスマッチが無く、高温でも破損しなくなり、この接着層4の材質によっては、1000℃以上での使用に対しても耐性を有するものとなる。
【0034】
次に、セラミック部材1の製造方法について説明する。
まず、導電性セラミックス2と絶縁性セラミックス3を作製する。
導電性セラミックス2は、酸化イットリウムスラリーと繊維状導電性物質スラリーとを混合して混合スラリーとし、次いで、この混合スラリーを噴霧乾燥して造粒し、得られた造粒粉を金型を用いて成形して所望の形状の成形体とし、この成形体を不活性雰囲気下にて焼成することにより、作製することができる。
【0035】
ここでは、予め、酸化イットリウム粒子を分散媒中に均一に分散させた酸化イットリウムスラリーと、繊維状導電性物質を分散媒中に均一に分散させた繊維状導電性物質スラリーとを、個別に調製する。
【0036】
酸化イットリウムスラリーを調製するには、分散媒に、酸化イットリウム粒子を、その含有率が30質量%以上かつ50質量%以下となるように添加して混合する。
ここで、酸化イットリウム粒子の含有率を30質量%以上かつ50質量%以下とした理由は、酸化イットリウムスラリーと繊維状導電性物質スラリーとを混合して混合スラリーを調製した際に、混合スラリーが高粘度化するのを防止するためである。
【0037】
また、繊維状導電性物質スラリーを調製するには、分散媒に、繊維状導電性物質(固形分)を、その含有率が0.5質量%以上かつ2質量%以下となるように添加し、この繊維状導電性物質及び分散媒を含む混合物に対して分散処理を施す。
ここで、繊維状導電性物質スラリーにおける繊維状導電性物質の含有率を0.5質量%以上かつ2質量%以下とした理由は、繊維状導電性物質の含有率が2質量%を超えると、繊維状導電性物質が再び凝集する虞があるばかりでなく、繊維状導電性物質スラリーが高粘度化し、繊維状導電性物質凝集体の邂逅、分散が困難になり、さらには、酸化イットリウムスラリーと混合した場合に均一な混合スラリーが得られない等の問題が生じるからである。
【0038】
なお、繊維状導電性物質スラリーにおける繊維状導電性物質の含有率は2質量%以下であれば特に問題ないが、繊維状導電性物質の含有率を必要以上に下げると、スラリー中の繊維状導電性物質の絶対量が減少しかつ溶媒の量が過剰となり、製造上非効率かつ高コストとなる等の問題が生じる。それ故、繊維状導電性物質の含有率の下限値は0.5質量%が好ましい。
【0039】
この繊維状導電性物質スラリー中の繊維状導電性物質の平均二次粒子径は、2μm以下であることが好ましい。
繊維状導電性物質の平均二次粒子径が2μmを超えると、酸化イットリウムスラリーと混合、乾燥する際に、繊維状導電性物質が凝集してしまい、その後焼成した際に得られる焼結体中の繊維状導電性物質の凝集体が粗大となり、耐食性が低下してしまうので好ましくない。
繊維状導電性物質スラリー中の繊維状導電性物質の平均二次粒子径を2μm以下とすることにより、酸化イットリウムスラリーと混合する際に、繊維状導電性物質が混合スラリー中および乾燥時に再凝集することを抑止することができる。この結果、焼結体中での繊維状導電性物質が粗大凝集物を形成せずに、酸化イットリウム粒子の粒界中に三次元的に分散し、効率的に導電パスを形成することができる。
【0040】
これら酸化イットリウムスラリー及び繊維状導電性物質スラリーに用いられる分散媒としては、水および有機溶媒が使用可能である。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、オクタノール等の一価アルコール類およびその変性体;α−テルピネオール等の単環式モノテルペンに属するアルコール類;ブチルカルビトール等のカルビトール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が好適に用いられ、これらの溶媒のうち1種または2種以上を用いることができる。
【0041】
これらのスラリーを調製する際に分散剤やバインダーを添加してもよい。
分散剤やバインダーとしては、例えば、ポリカルボン酸アンモニウム塩等のポリカルボン酸塩、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の有機高分子等が用いられる。
【0042】
分散処理としては、繊維状導電性物質自体の凝集力が強いために、まず前分散として、機械的な力を加えて邂逅を行う必要がある。前分散方法としては、特に限定されないが、高速ホモジナイザー等が挙げられる。
その後の分散処理としては、特に限定されないが、超音波ホモジナイザー、ビーズミル、超高圧粉砕機等の分散機が用いられる。
【0043】
次いで、この酸化イットリウムスラリーと繊維状導電性物質スラリーとを、酸化イットリウムに対して繊維状導電性物質が0.1体積%以上かつ3体積%以下、好ましくは0.5体積%以上かつ2体積%以下となるように混合して混合スラリーとする。
混合方法としては、特に限定されないが、例えば、回転二枚刃式ホモジナイザーと湿式ボールミルを組み合わせた方法が用いられる。
【0044】
次いで、この混合スラリーを噴霧乾燥法により造粒し、酸化イットリウム粒子と繊維状導電性物質との混合粒子からなる造粒粉を得る。
ここでは、混合スラリーを加熱された気流中に噴霧し乾燥することにより、混合スラリー中の酸化イットリウム粒子及び繊維状導電性物質それぞれの分散性を保持したまま、これらを含む混合粒子を急速に乾燥させ、造粒することができる。
噴霧乾燥の際に、混合スラリーの噴霧乾燥条件を、後段の焼成工程において良好な特性が得られるような大きさの造粒粉が得られるように、適宜調整する。
例えば、造粒粉の平均粒子径が30μm〜100μm等の大きさになるように、混合スラリーの噴霧乾燥条件を調整する。
【0045】
次いで、この造粒粉を金型を用いて成形して所望の形状の成形体とし、この成形体を不活性雰囲気下にて焼成する。なお、成形体に有機溶媒等が含まれている場合には、焼成温度を下回る温度にて仮焼成し、その後、本焼成を行うことが好ましい。
焼成時の雰囲気としては、繊維状導電性物質の酸化を防止する必要があることから、窒素(N
2)、アルゴン(Ar)等の不活性雰囲気が好ましい。
また、焼成温度は、1600℃以上かつ1850℃以下が好ましい。
【0046】
ここで、焼成温度を1600℃以上かつ1850℃以下が好ましいとした理由は、焼成温度が1600℃未満では、繊維状導電性物質が酸化イットリウムの焼結を阻害し、緻密な焼結体を得ることができないからであり、一方、焼成温度が1850℃を超えると、酸化イットリウムと繊維状導電性物質が直接反応して炭化物を形成してしまうからである。
また、焼成時間は、緻密な焼結体が得られるのに十分な時間であればよく、例えば、1〜6時間である。
以上により、繊維状導電性物質が形成する導電パスの切断を行うことなく、10Ω・cm以下の導電性を発現することができる導電性セラミックス2を得ることができる。
【0047】
また、絶縁性セラミックス3は、上記の酸化イットリウムスラリーと繊維状導電性物質スラリーとを混合した混合スラリーの替わりに、上記の酸化イットリウムスラリーを用い、上記の混合スラリーと同様、噴霧乾燥して造粒し、得られた造粒粉を金型を用いて成形して所望の形状の成形体とし、この成形体を不活性雰囲気下にて焼成することにより、作製することができる。
噴霧乾燥以降の工程は、導電性セラミックス2の製造方法と全く同様である。
【0048】
このようにして得られた導電性セラミックス2と絶縁性セラミックス3とに、必要に応じて形状加工を施し、これら導電性セラミックス2及び絶縁性セラミックス3の少なくとも一方の接着面に上述した無機系接着材を塗布する。
ここでは、導電性セラミックス2及び絶縁性セラミックス3の熱膨張率と、接着層4の熱膨張率とが略一致するように、無機系接着材に含まれる無機材料の種類及び量を調整する。
【0049】
次いで、この無機系接着材を介して導電性セラミックス2と絶縁性セラミックス3とを仮接着し、この仮接着した状態で加熱して無機系接着材を硬化させ、接着層4とする。
これにより、導電性セラミックス2と絶縁性セラミックス3とを接着層4により接着一体化したセラミック部材1が得られる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態のセラミック部材1によれば、酸化イットリウムを主成分とし、繊維状導電性物質を0.1体積%以上かつ3体積%以下含有してなる導電性セラミックス2と、酸化イットリウムを主成分とする絶縁性セラミックス3とを、熱膨張率が略一致する接着層4により接着一体化したので、絶縁性セラミックス3の熱膨張率と導電性セラミックス2の熱膨張率との差を極めて小さくすることができ、絶縁性セラミックス3と導電性セラミックス2との間の熱膨張差によるミスマッチを無くすことができ、破損やクラックや剥離や破壊等の不具合が生じる虞もない。
以上により、プラズマや腐食性ハロゲンガスに対する耐食性に優れ、破損やクラックや剥離や破壊等の不具合が生じる虞がないセラミック部材1を提供することができる。
【0051】
[第2の実施形態]
図2は、本発明の第2の実施形態のセラミック部材を示す断面図であり、本実施形態のセラミック部材11が、第1の実施形態のセラミック部材1と異なる点は、第1の実施形態のセラミック部材1では、導電性セラミックス2と絶縁性セラミックス3とを、熱膨張率が略一致する接着層4により接着したのに対し、本実施形態のセラミック部材11では、導電性セラミックス2と絶縁性セラミックス3とを加熱接合することにより、これらの表面(一主面)2a、3a同士を接合し一体化した点である。
【0052】
このセラミック部材11は、これら導電性セラミックス2及び絶縁性セラミックス3を、導電性セラミックス2及び絶縁性セラミックス3の熱膨張率に略一致するペーストを介して貼り合わせ、次いで、窒素(N
2)、アルゴン(Ar)等の不活性雰囲気下、1000℃以上かつ1600℃以下の範囲の温度にて加熱することにより、得ることができる。
また、導電性セラミックス2の前駆体である導電性成形体と、絶縁性セラミックス3の前駆体である絶縁性成形体とを、重ね合わせ、これをホットプレス等により加圧下にて焼成することによっても、得ることができる。
【0053】
本実施形態のセラミック部材11においても、第1の実施形態のセラミック部材1と同様の作用・効果を奏することができる。
しかも、導電性セラミックス2と絶縁性セラミックス3とを加熱接合したので、絶縁性セラミックス3と導電性セラミックス2との界面の接合強度を向上させることができ、破損やクラックや剥離や破壊等の不具合が生じる虞もない。
【実施例】
【0054】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
「実施例1」
A.導電性セラミックスの作製
直径10nm、長さ1.5μmのカーボンナノチューブを、純水中に、カーボンナノチューブの含有率(固形分)が1質量%となるように加え、分散剤を添加後、回転二枚刃式ホモジナイザー装置により邂逅前処理を行った。次いで、超音波ホモジナイザーにより9時間分散処理を行い、カーボンナノチューブスラリーを作製した。
【0056】
また、平均粒子径が1μmの酸化イットリウム粉体を、純水中に、酸化イットリウム粉体の含有率(固形分)が40質量%となるように加え、分散剤を添加後、攪拌機で攪拌を行い、酸化イットリウムスラリーを調整した。
次いで、これらカーボンナノチューブスラリーと酸化イットリウムスラリーを、固形分中のカーボンナノチューブの含有率が1体積%となるように、調製混合し、攪拌機で攪拌し、混合スラリーを調製した。
【0057】
次いで、この混合スラリーを噴霧乾燥法により乾燥、造粒し、カーボンナノチューブと酸化イットリウムとを含む造粒粉を作製した。次いで、得られた造粒粉を金型を用いて成形し、直径50mm、厚み15mmの円板状の成形体とした。
次いで、この成形体を、アルゴン雰囲気下、1850℃、圧力20MPaにて2時間焼成を行い、実施例1の導電性セラミックスを作製した。
【0058】
B.絶縁性セラミックスの作製
上記の酸化イットリウムスラリーを噴霧乾燥法により乾燥、造粒し、酸化イットリウムからなる造粒粉を作製した。次いで、得られた造粒粉を金型を用いて成形し、直径50mm、厚み15mmの円板状の成形体とした。
次いで、この成形体を、アルゴン雰囲気下、1850℃、圧力20MPaにて2時間焼成を行い、実施例1の絶縁性セラミックスを作製した。
【0059】
C.セラミック部材の作製
上記の導電性セラミックスと絶縁性セラミックスとを、熱膨張率を8×10
−6/℃に調整した無機系接着材を用いて接着し、次いで、アルゴン雰囲気下、250℃にて3時間焼成を行い、実施例1のセラミック部材を作製した。
【0060】
D.セラミック部材の評価
上記のセラミック部材を、窒素雰囲気下、10℃/分の昇温速度にて1000℃まで加熱し、1000℃にて1時間保持した後、10℃/分の冷却速度にて室温(25℃)まで冷却した。その後、取り出して、クラックの発生の有無、手での引っ張りによる剥離の有無、を目視にて評価した。
その結果、クラックの発生や手での引っ張りによる剥離も無く、高温域での耐久性に優れていることが分かった。
【0061】
「実施例2」
固形分中のカーボンナノチューブの含有率が0.5体積%となるように混合スラリーを調製した他は、実施例1に準じて実施例2のセラミック部材を作製した。
次いで、実施例1に準じて実施例2のセラミック部材の評価を行った。
その結果、クラックの発生や手での引っ張りによる剥離も無く、高温域での耐久性に優れていることが分かった。
【0062】
「実施例3」
固形分中のカーボンナノチューブの含有率が3体積%となるように混合スラリーを調製した他は、実施例1に準じて実施例3のセラミック部材を作製した。
次いで、実施例1に準じて実施例3のセラミック部材の評価を行った。
その結果、クラックの発生や手での引っ張りによる剥離も無く、高温域での耐久性に優れていることが分かった。
【0063】
「実施例4」
実施例1に準じて得られた導電性セラミックスと絶縁性セラミックスとを、熱膨張率を8×10
−6/℃に調整したペーストを介して貼り合わせ、次いで、窒素雰囲気下、1400℃にて1時間加熱処理を行い、実施例4のセラミック部材を作製した。
次いで、実施例1に準じて実施例4のセラミック部材の評価を行った。
その結果、クラックの発生や手での引っ張りによる剥離も無く、高温域での耐久性に優れていることが分かった。
【0064】
「比較例1」
実施例1の導電性セラミックスを炭化ケイ素(SiC)セラミックスに替えた他は、実施例1に準じて比較例1のセラミック部材を作製した。
次いで、実施例1に準じて比較例1のセラミック部材の評価を行った。
その結果、セラミックスにクラックが発生しており、また、接着層の剥離も認められ、実施例1〜4のセラミック部材と比較して耐熱性が劣っていることが分かった。
【0065】
「比較例2」
実施例1の導電性セラミックスを炭化ケイ素(SiC)を10体積%添加した酸化イットリウムセラミックスに替えた他は、実施例1に準じて比較例2のセラミック部材を作製した。
次いで、実施例1に準じて比較例2のセラミック部材の評価を行った。
その結果、接着層に多数のクラックが発生していることが認められ、実施例1〜4のセラミック部材と比較して耐熱性が劣っていることが分かった。
【0066】
「比較例3」
炭化ケイ素(SiC)を10体積%添加した酸化イットリウムセラミックスと、実施例1の絶縁性セラミックスとに、ボルト接合用の孔を開け、ボルト・ナットにより締結することにより、比較例3のセラミック部材を作製した。
次いで、実施例1に準じて比較例3のセラミック部材の評価を行った。
その結果、孔を中心にクラックが発生していることが認められ、実施例1〜4のセラミック部材と比較して高温での結合力が劣っていることが分かった。
【0067】
「比較例4」
固形分中のカーボンナノチューブの含有率を5体積%とした他は、実施例1に準じて比較例4のセラミック部材を作製した。
次いで、実施例1に準じて比較例4のセラミック部材の評価を行った。
その結果、接着層に多数のクラックが発生していることが認められ、実施例1〜4のセラミック部材と比較して耐熱性が劣っていることが分かった。
【0068】
「比較例5」
実施例1に準じて得られた導電性セラミックスと絶縁性セラミックスとを、エポキシ接着剤を用いて接着し、比較例5のセラミック部材を作製した。
次いで、実施例1に準じて比較例5のセラミック部材の評価を行った。
その結果、接着層が変質していることが認められ、実施例1〜4のセラミック部材と比較して耐熱性が劣っていることが分かった。
【0069】
「比較例6」
実施例1の無機系接着材を、熱膨張率を13×10
−6/℃に調整した無機系接着材に替えた他は、実施例1に準じて比較例6のセラミック部材を作製した。
次いで、実施例1に準じて比較例6のセラミック部材の評価を行った。
その結果、接着層に多数のクラックが発生していることが認められ、実施例1〜4のセラミック部材と比較して耐熱性が劣っていることが分かった。