【実施例】
【0060】
以下、実施例、比較例を用いて、本発明を具体的に示すが、本発明は、これらによって何ら限定されるものではない。
【0061】
(酸化物焼結体の評価)
得られた酸化物焼結体の密度は、端材を用いて、アルキメデス法で求めた。続いて得られた酸化物焼結体の生成相は、端材の一部を粉砕し、X線回折装置(フィリップス製X‘pertPRO MPD)を用いて粉末法により同定を行った。そして、下記の式で定義されるX線回折ピーク強度比(I)を求めた。
I=CeO
2相(111)/In
2O
3相(222)×100[%] (1)
また、粉末の一部を用いて、酸化物焼結体のICP発光分光法による組成分析を行った。さらに、走査電子顕微鏡ならびにエネルギー分散型X線分析法(SEM−EDS,カールツァイス製ULTRA55およびブルカー製QuanTax QX400)を用いて、酸化物焼結体の組織観察ならびに面分析を行った。これらの像の画像解析結果から、CeO
2相の結晶粒の平均粒径を求めた。
【0062】
(透明導電膜の基本特性評価)
得られた透明導電膜の組成をICP発光分光法によって調べた。透明導電膜の膜厚は、表面粗さ計(テンコール社製Alpha−Step IQ)で測定した。成膜速度は、膜厚と成膜時間から算出した。膜の比抵抗は、抵抗率計(ダイアインスツルメンツ社製ロレスタEP MCP−T360型)による四探針法によって測定した表面抵抗と膜厚の積から算出した。膜のキャリア電子濃度および移動度は、ホール効果測定より求めた。膜の生成相は、酸化物焼結体と同様、X線回折測定によって同定した。また、屈折率を分光エリプソメーター(J.A.Woolam製 VASE)によって測定し、特に青色光に対する特性を評価するため、波長460nmの屈折率を比較した。
【0063】
(参考例1)
酸化インジウム粉末および酸化セリウム粉末を平均粒径1μm以下となるよう調整して原料粉末とした。セリウム含有量がCe/(In+Ce)原子数比で9原子%となるように、これらの粉末を調合し、水とともに樹脂製ポットに入れ、湿式ボールミルで混合した。この際、硬質ZrO
2ボールを用い、混合時間を18時間とした。混合後、スラリーを取り出し、濾過、乾燥、造粒した。造粒物を、冷間静水圧プレスで3ton/cm
2の圧力をかけて成形した。
次に、成形体を次のように焼結した。炉内容積0.1m
3当たり5リットル/分の割合で、焼結炉内の大気に酸素を導入する雰囲気で、1400℃の焼結温度で20時間焼結した。この際、1℃/分で昇温し、焼結後の冷却の際は酸素導入を止め、1000℃までを10℃/分で降温した。
得られた酸化物焼結体を、直径152mm、厚み5mmの大きさに加工し、スパッタリング面をカップ砥石で最大高さRzが3.0μm以下となるように磨いた。加工した酸化物焼結体を、無酸素銅製のバッキングプレートに金属インジウムを用いてボンディングして、スパッタリングターゲットとした。
得られた酸化物焼結体の組成分析をICP発光分光法にて行ったところ、原料粉末の配合時の仕込み組成とほぼ同じであることが確認された。次に、
図2に示すように、X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行った。
図2より、酸化物焼結体はビックスバイト型構造のIn
2O
3相および蛍石型構造のCeO
2相で構成されていることが確認された。前記式(1)で表されるCeO
2相(111)のX線回折ピーク強度比は、16%であった。
酸化物焼結体の密度を測定したところ、6.87g/cm
3であった。続いて、SEMによる酸化物焼結体の組織観察を行ったところ(前出の
図1参照)、CeO
2相の平均粒径は1.1μmであった。これらの結果を表1に示す。
次に、アーキング抑制機能のない直流電源を装備した直流マグネトロンスパッタリング装置(アネルバ製SPF−530H)の非磁性体ターゲット用カソードに、上記スパッタリングターゲットを取り付けた。基板には、大きさが50mm角、厚さが0.5mmの合成石英を用い、ターゲット−基板間距離を49mmに固定した。1×10
−4Pa未満まで真空排気後、アルゴンと酸素の混合ガスを酸素の比率が1.0%になるように導入し、ガス圧を0.3Paに調整した。なお、上記の酸素の比率1.0%において、最も低い比抵抗を示した。
直流電力200W(1.10W/cm
2)を印加して直流プラズマを発生させ、スパッタリングを実施した。投入した直流電力とスパッタリング時間の積から算出される積算投入電力値12.8kwhに到達するまで、直流スパッタリングを連続して実施した。この間、アーキングは起こらず放電は安定していた。スパッタリング終了後、ターゲット表面を観察したが、ノジュールの発生は特に見られなかった。次に、直流電力200、400、500、600W(1.10〜3.29W/cm
2)と変化させ、それぞれの電力で10分間ずつスパッタリングを行い、アーキング発生回数を測定した。いずれの電力でもアーキングは起こらず、各直流電力での1分間当たりアーキング発生平均回数はゼロであった。
続いて、直流スパッタリングによる成膜を行った。10分間のプリスパッタリング後、スパッタリングターゲットの直上、すなわち静止対向位置に基板を配置し、基板温度500℃でスパッタリングを実施して、膜厚200nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。
膜の比抵抗を測定したところ、6.6×10
−4Ωcmであった。また、ホール効果測定を行ったところ、キャリア電子濃度は2.6×10
20cm
−3、キャリア電子移動度36cm
2V
−1s
−1であった。波長460nmの屈折率は、2.21であった。X線回折測定によって膜の結晶性を調べた結果、酸化インジウム相のみからなる結晶質の膜であり、セリウムは酸化インジウム相に固溶していることが確認された。
【0064】
(参考例2)
セリウム含有量がCe/(In+Ce)で表される原子数比で7原子%となるように、平均粒径1.5μm以下となるよう調整した原料粉末を調合したこと以外は、参考例1と同様の方法で酸化物焼結体、さらにはスパッタリングターゲットを作製した。
得られた酸化物焼結体の組成分析をICP発光分光法にて行ったところ、原料粉末の配合時の仕込み組成とほぼ同じであることが確認された。次に、X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、ビックスバイト型構造のIn
2O
3相および蛍石型構造のCeO
2相で構成されていることが確認された。前記式(1)で表されるCeO
2相(111)のX線回折ピーク強度比は、14%であった。
酸化物焼結体の密度を測定したところ、6.88g/cm
3であった。続いて、SEMによる酸化物焼結体の組織観察を行ったところ、CeO
2相の平均粒径は2.7μmであった。
次に、参考例1と同様の方法によって、直流スパッタリングにおけるアーキング発生について調べた。積算投入電力値12.8kwhに到達するまでアーキングは起こらず放電は安定していた。また、直流電力を変化させた場合の各直流電力での1分間当たりアーキング発生平均回数もゼロであった。
続いて、参考例1と同様に、直流スパッタリングによる成膜を行った。なお、基板温度は500℃とし、膜厚200nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。
膜の比抵抗を測定したところ、5.4×10
−4Ωcmであった。また、ホール効果測定を行ったところ、キャリア電子濃度は2.5×10
20cm
−3、キャリア電子移動度46cm
2V
−1s
−1であった。波長460nmの屈折率は、2.20であった。X線回折測定によって膜の結晶性を調べた結果、酸化インジウム相のみからなる結晶質の膜であり、セリウムは酸化インジウム相に固溶していることが確認された。
【0065】
(参考例3)
セリウム含有量がCe/(In+Ce)で表される原子数比で5原子%となるように、平均粒径1μm以下となるよう調整した原料粉末を調合したこと以外は、参考例1と同様の方法で酸化物焼結体、さらにはスパッタリングターゲットを作製した。
得られた酸化物焼結体の組成分析をICP発光分光法にて行ったところ、原料粉末の配合時の仕込み組成とほぼ同じであることが確認された。次に、X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、ビックスバイト型構造のIn
2O
3相および蛍石型構造のCeO
2相で構成されていることが確認された。前記式(1)で表されるCeO
2相(111)のX線回折ピーク強度比は、9%であった。
酸化物焼結体の密度を測定したところ、6.92g/cm
3であった。続いて、SEMによる酸化物焼結体の組織観察を行ったところ、CeO
2相の平均粒径は1.3μmであった。
次に、参考例1と同様の方法によって、直流スパッタリングにおけるアーキング発生について調べた。積算投入電力値12.8kwhに到達するまでアーキングは起こらず放電は安定していた。また、直流電力を変化させた場合の各直流電力での1分間当たりアーキング発生平均回数もゼロであった。
続いて、参考例1と同様に、直流スパッタリングによる成膜を行った。なお、基板温度は400℃とし、膜厚200nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。
膜の比抵抗を測定したところ、4.6×10
−4Ωcmであった。また、ホール効果測定を行ったところ、キャリア電子濃度は2.4×10
20cm
−3、キャリア電子移動度57cm
2V
−1s
−1であった。波長460nmの屈折率は、2.19であった。X線回折測定によって膜の結晶性を調べた結果、酸化インジウム相のみからなる結晶質の膜であることが確認された。
次に、基板温度を室温(25℃)として直流スパッタリングによる成膜を行い、その後、窒素中で熱処理を行った。
室温で形成された膜の比抵抗を測定したところ、7.5×10
−4Ωcmであった。また、ホール効果測定を行ったところ、キャリア電子濃度は4.9×10
20cm
−3、キャリア電子移動度17cm
2V
−1s
−1であった。波長460nmの屈折率は、2.17であった。X線回折測定によって膜の結晶性を調べた結果、非晶質の膜であった。
続いて、この非晶質の膜を窒素雰囲気中において、400℃にて、30分間の熱処理を行った。その結果、膜の比抵抗は4.9×10
−4Ωcmであった。また、ホール効果測定を行ったところ、キャリア電子濃度は2.2×10
20cm
−3、キャリア電子移動度58cm
2V
−1s
−1であった。波長460nmの屈折率は、2.20であった。X線回折測定によって膜の結晶性を調べた結果、酸化インジウム相のみからなる結晶質の膜であり、セリウムは酸化インジウム相に固溶していることが確認された。
【0066】
(参考例4)
セリウム含有量がCe/(In+Ce)で表される原子数比で4原子%となるように、平均粒径1.5μm以下となるよう調整した原料粉末を調合したこと以外は、参考例1と同様の方法で酸化物焼結体、さらにはスパッタリングターゲットを作製した。
得られた酸化物焼結体の組成分析をICP発光分光法にて行ったところ、原料粉末の配合時の仕込み組成とほぼ同じであることが確認された。次に、X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、ビックスバイト型構造のIn
2O
3相および蛍石型構造のCeO
2相で構成されていることが確認された。前記式(1)で表されるCeO
2相(111)のX線回折ピーク強度比は、8%であった。
酸化物焼結体の密度を測定したところ、6.91g/cm
3であった。続いて、SEMによる酸化物焼結体の組織観察を行ったところ、CeO
2相の平均粒径は2.8μmであった。
次に、参考例1と同様の方法によって、直流スパッタリングにおけるアーキング発生について調べた。積算投入電力値12.8kwhに到達するまでアーキングは起こらず放電は安定していた。また、直流電力を変化させた場合の各直流電力での1分間当たりアーキング発生平均回数もゼロであった。
続いて、参考例1と同様に、直流スパッタリングによる成膜を行った。なお、基板温度は400℃とし、膜厚200nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。
膜の比抵抗を測定したところ、4.2×10
−4Ωcmであった。また、ホール効果測定を行ったところ、キャリア電子濃度は2.3×10
20cm
−3、キャリア電子移動度65cm
2V
−1s
−1であった。波長460nmの屈折率は、2.17であった。X線回折測定によって膜の結晶性を調べた結果、酸化インジウム相のみからなる結晶質の膜であり、セリウムは酸化インジウム相に固溶していることが確認された。
【0067】
(参考例5)
セリウム含有量がCe/(In+Ce)で表される原子数比で1原子%となるように、平均粒径1μm以下となるよう調整した原料粉末を調合したこと以外は、参考例1と同様の方法で酸化物焼結体、さらにはスパッタリングターゲットを作製した。
得られた酸化物焼結体の組成分析をICP発光分光法にて行ったところ、原料粉末の配合時の仕込み組成とほぼ同じであることが確認された。次に、X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、ビックスバイト型構造のIn
2O
3相および蛍石型構造のCeO
2相で構成されていることが確認された。前記式(1)で表されるCeO
2相(111)のX線回折ピーク強度比は、2%であった。
酸化物焼結体の密度を測定したところ、6.86g/cm
3であった。続いて、SEMによる酸化物焼結体の組織観察を行ったところ、CeO
2相の平均粒径は1.1μmであった。
次に、参考例1と同様の方法によって、直流スパッタリングにおけるアーキング発生について調べた。積算投入電力値12.8kwhに到達するまでアーキングは起こらず放電は安定していた。また、直流電力を変化させた場合の各直流電力での1分間当たりアーキング発生平均回数もゼロであった。
続いて、参考例1と同様に、直流スパッタリングによる成膜を行った。なお、基板温度は400℃とし、膜厚200nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。
膜の比抵抗を測定したところ、4.4×10
−4Ωcmであった。また、ホール効果測定を行ったところ、キャリア電子濃度は1.6×10
20cm
−3、キャリア電子移動度88cm
2V
−1s
−1であった。波長460nmの屈折率は、2.14であった。X線回折測定によって膜の結晶性を調べた結果、酸化インジウム相のみからなる結晶質の膜であり、セリウムは酸化インジウム相に固溶していることが確認された。
【0068】
(参考例6)
セリウム含有量がCe/(In+Ce)で表される原子数比で0.3原子%となるように、平均粒径1μm以下となるよう調整した原料粉末を調合したこと以外は、参考例1と同様の方法で酸化物焼結体、さらにはスパッタリングターゲットを作製した。
得られた酸化物焼結体の組成分析をICP発光分光法にて行ったところ、原料粉末の配合時の仕込み組成とほぼ同じであることが確認された。次に、X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、ビックスバイト型構造のIn
2O
3相および蛍石型構造のCeO
2相で構成されていることが確認された。前記式(1)で表されるCeO
2相(111)のX線回折ピーク強度比は、0.5%であった。
酸化物焼結体の密度を測定したところ、6.70g/cm
3であった。続いて、SEMによる酸化物焼結体の組織観察を行ったところ、CeO
2相の平均粒径は1.2μmであった。
次に、参考例1と同様の方法によって、直流スパッタリングにおけるアーキング発生について調べた。積算投入電力値12.8kwhに到達するまでアーキングは起こらず放電は安定していた。また、直流電力を変化させた場合の各直流電力での1分間当たりアーキング発生平均回数もゼロであった。
続いて、参考例1と同様に、直流スパッタリングによる成膜を行った。なお、基板温度は300℃とし、膜厚200nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。
膜の比抵抗を測定したところ、7.6×10
−4Ωcmであった。また、ホール効果測定を行ったところ、キャリア電子濃度は1.0×10
20cm
−3、キャリア電子移動度82cm
2V
−1s
−1であった。波長460nmの屈折率は、2.13であった。X線回折測定によって膜の結晶性を調べた結果、酸化インジウム相のみからなる結晶質の膜であり、セリウムは酸化インジウム相に固溶していることが確認された。
【0069】
(参考例7)
酸化インジウム粉末、酸化セリウム粉末および酸化チタン粉末を平均粒径1.5μm以下となるよう調整して原料粉末としたこと、さらにはセリウム含有量がCe/(In+Ce+Ti)原子数比で8原子%ならびにチタン含有量がTi/(In+Ce+Ti)原子数比で1原子%となるように調合したことを除いては、参考例1と同様の方法で酸化物焼結体、さらにはスパッタリングターゲットを作製した。
得られた酸化物焼結体の組成分析をICP発光分光法にて行ったところ、原料粉末の配合時の仕込み組成とほぼ同じであることが確認された。次に、X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、ビックスバイト型構造のIn
2O
3相および蛍石型構造のCeO
2相で構成されていることが確認された。前記式(1)で表されるCeO
2相(111)のX線回折ピーク強度比は、25%であった。
酸化物焼結体の密度を測定したところ、7.06g/cm
3であった。続いて、SEMによる酸化物焼結体の組織観察を行ったところ、CeO
2相の平均粒径は2.7μmであった。
次に、参考例1と同様の方法によって、直流スパッタリングにおけるアーキング発生について調べた。積算投入電力値12.8kwhに到達するまでアーキングは起こらず放電は安定していた。また、直流電力を変化させた場合の各直流電力での1分間当たりアーキング発生平均回数もゼロであった。
続いて、参考例1と同様に、直流スパッタリングによる成膜を行った。なお、基板温度は400℃とし、膜厚200nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。
膜の比抵抗を測定したところ、5.6×10
−4Ωcmであった。また、ホール効果測定を行ったところ、キャリア電子濃度は3.1×10
20cm
−3、キャリア電子移動度36cm
2V
−1s
−1であった。波長460nmの屈折率は、2.14であった。X線回折測定によって膜の結晶性を調べた結果、酸化インジウム相のみからなる結晶質の膜であり、セリウムおよびチタンは酸化インジウム相に固溶していることが確認された。
【0070】
(参考例8)
酸化インジウム粉末、酸化セリウム粉末および酸化チタン粉末を平均粒径1μm以下となるよう調整して原料粉末としたこと、さらにはセリウム含有量がCe/(In+Ce+Ti)原子数比で5原子%ならびにチタン含有量がTi/(In+Ce+Ti)原子数比で0.5原子%となるように調合したことを除いては、参考例1と同様の方法で酸化物焼結体、さらにはスパッタリングターゲットを作製した。
得られた酸化物焼結体の組成分析をICP発光分光法にて行ったところ、原料粉末の配合時の仕込み組成とほぼ同じであることが確認された。次に、X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、ビックスバイト型構造のIn
2O
3相および蛍石型構造のCeO
2相で構成されていることが確認された。前記式(1)で表されるCeO
2相(111)のX線回折ピーク強度比は、14%であった。
酸化物焼結体の密度を測定したところ、7.01g/cm
3であった。続いて、SEMによる酸化物焼結体の組織観察を行ったところ、CeO
2相の平均粒径は1.5μmであった。
次に、参考例1と同様の方法によって、直流スパッタリングにおけるアーキング発生について調べた。積算投入電力値12.8kwhに到達するまでアーキングは起こらず放電は安定していた。また、直流電力を変化させた場合の各直流電力での1分間当たりアーキング発生平均回数もゼロであった。
続いて、参考例1と同様に、直流スパッタリングによる成膜を行った。なお、基板温度は400℃とし、膜厚200nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。
膜の比抵抗を測定したところ、5.4×10
−4Ωcmであった。また、ホール効果測定を行ったところ、キャリア電子濃度は2.5×10
20cm
−3、キャリア電子移動度46cm
2V
−1s
−1であった。波長460nmの屈折率は、2.17であった。X線回折測定によって膜の結晶性を調べた結果、酸化インジウム相のみからなる結晶質の膜であり、セリウムおよびチタンは酸化インジウム相に固溶していることが確認された。
【0071】
(参考例9)
酸化インジウム粉末、酸化セリウム粉末および酸化チタン粉末を平均粒径1μm以下となるよう調整して原料粉末としたこと、さらにはセリウム含有量がCe/(In+Ce+Ti)原子数比で4原子%ならびにチタン含有量がTi/(In+Ce+Ti)原子数比で1原子%となるように調合したことを除いては、参考例1と同様の方法で酸化物焼結体、さらにはスパッタリングターゲットを作製した。
得られた酸化物焼結体の組成分析をICP発光分光法にて行ったところ、原料粉末の配合時の仕込み組成とほぼ同じであることが確認された。次に、X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、ビックスバイト型構造のIn
2O
3相および蛍石型構造のCeO
2相で構成されていることが確認された。前記式(1)で表されるCeO
2相(111)のX線回折ピーク強度比は、7%であった。
酸化物焼結体の密度を測定したところ、7.06g/cm
3であった。続いて、SEMによる酸化物焼結体の組織観察を行ったところ、CeO
2相の平均粒径は1.1μmであった。
次に、参考例1と同様の方法によって、直流スパッタリングにおけるアーキング発生について調べた。積算投入電力値12.8kwhに到達するまでアーキングは起こらず放電は安定していた。また、直流電力を変化させた場合の各直流電力での1分間当たりアーキング発生平均回数もゼロであった。
続いて、参考例1と同様に、直流スパッタリングによる成膜を行った。なお、基板温度は400℃とし、膜厚200nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。
膜の比抵抗を測定したところ、5.0×10
−4Ωcmであった。また、ホール効果測定を行ったところ、キャリア電子濃度は2.5×10
20cm
−3、キャリア電子移動度50cm
2V
−1s
−1であった。波長460nmの屈折率は、2.16であった。X線回折測定によって膜の結晶性を調べた結果、酸化インジウム相のみからなる結晶質の膜であり、セリウムおよびチタンは酸化インジウム相に固溶していることが確認された。
【0072】
(参考例10)
酸化インジウム粉末、酸化セリウム粉末および酸化チタン粉末を平均粒径1μm以下となるよう調整して原料粉末としたこと、さらにはセリウム含有量がCe/(In+Ce+Ti)原子数比で0.3原子%ならびにチタン含有量がTi/(In+Ce+Ti)原子数比で0.3原子%となるように調合したことを除いては、参考例1と同様の方法で酸化物焼結体、さらにはスパッタリングターゲットを作製した。
得られた酸化物焼結体の組成分析をICP発光分光法にて行ったところ、原料粉末の配合時の仕込み組成とほぼ同じであることが確認された。次に、X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、ビックスバイト型構造のIn
2O
3相および蛍石型構造のCeO
2相で構成されていることが確認された。前記式(1)で表されるCeO
2相(111)のX線回折ピーク強度比は、1%であった。
酸化物焼結体の密度を測定したところ、7.05g/cm
3であった。続いて、SEMによる酸化物焼結体の組織観察を行ったところ、CeO
2相の平均粒径は1.0μmであった。
次に、参考例1と同様の方法によって、直流スパッタリングにおけるアーキング発生について調べた。積算投入電力値12.8kwhに到達するまでアーキングは起こらず放電は安定していた。また、直流電力を変化させた場合の各直流電力での1分間当たりアーキング発生平均回数もゼロであった。
続いて、参考例1と同様に、直流スパッタリングによる成膜を行った。なお、基板温度は300℃とし、膜厚200nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。
膜の比抵抗を測定したところ、5.0×10
−4Ωcmであった。また、ホール効果測定を行ったところ、キャリア電子濃度は1.5×10
20cm
−3、キャリア電子移動度83cm
2V
−1s
−1であった。波長460nmの屈折率は、2.12であった。X線回折測定によって膜の結晶性を調べた結果、酸化インジウム相のみからなる結晶質の膜であり、セリウムおよびチタンは酸化インジウム相に固溶していることが確認された。
【0073】
(参考例11)
酸化インジウム粉末、酸化セリウム粉末および酸化ジルコニウム粉末を平均粒径1μm以下となるよう調整して原料粉末としたこと、さらにはセリウム含有量がCe/(In+Ce+Zr)原子数比で0.3原子%ならびにジルコニウム含有量がZr/(In+Ce+Zr)原子数比で0.3原子%となるように調合したことを除いては、参考例1と同様の方法で酸化物焼結体、さらにはスパッタリングターゲットを作製した。
得られた酸化物焼結体の組成分析をICP発光分光法にて行ったところ、原料粉末の配合時の仕込み組成とほぼ同じであることが確認された。次に、X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、ビックスバイト型構造のIn
2O
3相および蛍石型構造のCeO
2相で構成されていることが確認された。前記式(1)で表されるCeO
2相(111)のX線回折ピーク強度比は、1%であった。
酸化物焼結体の密度を測定したところ、6.98g/cm
3であった。続いて、SEMによる酸化物焼結体の組織観察を行ったところ、CeO
2相の平均粒径は1.0μmであった。
次に、参考例1と同様の方法によって、直流スパッタリングにおけるアーキング発生について調べた。積算投入電力値12.8kwhに到達するまでアーキングは起こらず放電は安定していた。また、直流電力を変化させた場合の各直流電力での1分間当たりアーキング発生平均回数もゼロであった。
続いて、参考例1と同様に、直流スパッタリングによる成膜を行った。なお、基板温度は300℃とし、膜厚200nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。
膜の比抵抗を測定したところ、5.2×10
−4Ωcmであった。また、ホール効果測定を行ったところ、キャリア電子濃度は1.5×10
20cm
−3、キャリア電子移動度80cm
2V
−1s
−1であった。波長460nmの屈折率は、2.12であった。X線回折測定によって膜の結晶性を調べた結果、酸化インジウム相のみからなる結晶質の膜であり、セリウムおよびジルコニウムは酸化インジウム相に固溶していることが確認された。
なお、ジルコニウムの代わりに、ハフニウム、モリブデン、あるいはタングステンを同組成添加した場合についても、ほぼ同様の結果を得た。
【0074】
(参考比較例1)
セリウム含有量がCe/(In+Ce)で表される原子数比で0.1原子%となるように、平均粒径1μm以下となるよう調整した原料粉末を調合したこと以外は、参考例1と同様の方法で酸化物焼結体、さらにはスパッタリングターゲットを作製した。
得られた酸化物焼結体の組成分析をICP発光分光法にて行ったところ、原料粉末の配合時の仕込み組成とほぼ同じであることが確認された。次に、X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、ビックスバイト型構造のIn
2O
3相のみが確認された。
酸化物焼結体の密度を測定したところ、6.74g/cm
3であった。続いて、SEMによる酸化物焼結体の組織観察を行ったところ、極少量のCeO
2相が点在している様子が観察された。CeO
2相の平均粒径は1.0μmであった。これらの結果を表1に示す。
次に、参考例1と同様の方法によって、直流スパッタリングにおけるアーキング発生について調べた。積算投入電力値12.8kwhに到達するまでアーキングは起こらず放電は安定していた。また、直流電力を変化させた場合の各直流電力での1分間当たりアーキング発生平均回数もゼロであった。
続いて、参考例1と同様に、直流スパッタリングによる成膜を行った。なお、基板温度は300℃とし、膜厚200nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。
膜の比抵抗を測定したところ、1.3×10
−3Ωcmと高い値を示した。また、ホール効果測定を行ったところ、キャリア電子濃度は6.2×10
19cm
−3、キャリア電子移動度68cm
2V
−1s
−1であった。波長460nmの屈折率は、2.12であった。X線回折測定によって膜の結晶性を調べた結果、酸化インジウム相のみからなる結晶質の膜であり、セリウムは酸化インジウム相に固溶していることが確認された。
【0075】
(参考比較例2)
セリウム含有量がCe/(In+Ce)で表される原子数比で11原子%となるように、平均粒径1.5μm以下となるよう調整した原料粉末を調合したこと以外は、参考例1と同様の方法で酸化物焼結体、さらにはスパッタリングターゲットを作製した。
得られた酸化物焼結体の組成分析をICP発光分光法にて行ったところ、原料粉末の配合時の仕込み組成とほぼ同じであることが確認された。次に、X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、ビックスバイト型構造のIn
2O
3相および蛍石型構造のCeO
2相で構成されていることが確認された。前記式(1)で表されるCeO
2相(111)のX線回折ピーク強度比は、28%と高かった。
酸化物焼結体の密度を測定したところ、6.69g/cm
3とやや低かった。続いて、SEMによる酸化物焼結体の組織観察を行ったところ、CeO
2相の平均粒径は2.6μmであった。また、CeO
2相の結晶粒の体積比率増加に起因すると推測されるが、In
2O
3相の結晶粒がやや微細化している様子が観察された。このことによって、前記式(1)で表されるCeO
2相(111)のX線回折ピーク強度比が高くなったものと考えられる。
次に、参考例1と同様の方法によって、直流スパッタリングにおけるアーキング発生について調べた。積算投入電力値12.8kwhに到達するまでアーキングは起こらず放電は安定していた。また、直流電力を変化させた場合の各直流電力での1分間当たりアーキング発生平均回数もゼロであった。
続いて、参考例1と同様に、直流スパッタリングによる成膜を行った。なお、基板温度は500℃とし、膜厚200nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。
膜の比抵抗を測定したところ、1.0×10
−3Ωcmと高かった。また、ホール効果測定を行ったところ、キャリア電子濃度は2.8×10
20cm
−3、キャリア電子移動度21cm
2V
−1s
−1であった。波長460nmの屈折率は、2.18であった。X線回折測定によって膜の結晶性を調べた結果、酸化インジウム相のみからなる結晶質の膜であり、セリウムは酸化インジウム相に固溶していることが確認された。
【0076】
(参考比較例3)
平均粒径2μmの酸化セリウム粉末を原料粉末として用いたこと以外は、参考例1と同様の方法で酸化物焼結体、さらにはスパッタリングターゲットを作製した。
得られた酸化物焼結体の組成分析をICP発光分光法にて行ったところ、原料粉末の配合時の仕込み組成とほぼ同じであることが確認された。次に、X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、ビックスバイト型構造のIn
2O
3相および蛍石型構造のCeO
2相で構成されていることが確認された。前記式(1)で表されるCeO
2相(111)のX線回折ピーク強度比は、18%であった。
酸化物焼結体の密度を測定したところ、6.72g/cm
3であった。続いて、SEMによる酸化物焼結体の組織観察を行ったところ、CeO
2相の平均粒径は4.2μmであった。
次に、参考例1と同様の方法によって、直流スパッタリングにおけるアーキング発生について調べた。積算投入電力値12.8kWhに到達するまで、直流スパッタリングを実施した。スパッタリングを開始してから、しばらくアーキングは起こらなかったが、積算時間が11.2kWhを経過後から、しだいにアーキングが起こるようになった。積算時間到達後、ターゲット表面を観察したところ、多数のノジュールの生成が確認された。続いて、直流電力200、400、500、600Wと変化させ、それぞれの電力で10分間ずつスパッタリングを行い、アーキング発生回数を測定した。
図3に、参考例2とともに、各直流電力での1分間当たりアーキング発生平均回数を示した。
図3より、直流電力増加とともにアーキングが頻発するようになっていることは明らかである。なお、アーキングが頻発したため、成膜は実施しなかった。
【0077】
(参考比較例4)
酸化インジウム粉末、酸化セリウム粉末および酸化チタン粉末を平均粒径1μm以下となるよう調整して原料粉末としたこと、さらにはセリウム含有量がCe/(In+Ce+Ti)原子数比で0.3原子%ならびにチタン含有量がTi/(In+Ce+Ti)原子数比で3原子%となるように調合したことを除いては、参考例1と同様の方法で酸化物焼結体、さらにはスパッタリングターゲットを作製した。
得られた酸化物焼結体の組成分析をICP発光分光法にて行ったところ、原料粉末の配合時の仕込み組成とほぼ同じであることが確認された。次に、X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、ビックスバイト型構造のIn
2O
3相による回折ピークのみが観察され、蛍石型構造のCeO
2相による回折ピークは観察されなかった。酸化物焼結体の密度を測定したところ、7.04g/cm
3であった。
次に、参考例1と同様の方法によって、直流スパッタリングにおけるアーキング発生について調べた。積算投入電力値12.8kwhに到達するまでアーキングは起こらず放電は安定していた。また、直流電力を変化させた場合の各直流電力での1分間当たりアーキング発生平均回数もゼロであった。
続いて、参考例1と同様に、直流スパッタリングによる成膜を行った。なお、基板温度は300℃とし、膜厚200nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。
膜の比抵抗を測定したところ、3.0×10
−4Ωcmであった。また、ホール効果測定を行ったところ、キャリア電子濃度は5.6×10
20cm
−3、キャリア電子移動度37cm
2V
−1s
−1であった。波長460nmの屈折率は、2.07と低かった。X線回折測定によって膜の結晶性を調べた結果、酸化インジウム相のみからなる結晶質の膜であり、セリウムおよびチタンは酸化インジウム相に固溶していることが確認された。
【0078】
(参考比較例5)
酸化インジウム粉末、酸化セリウム粉末および酸化スズ粉末を平均粒径1μm以下となるよう調整して原料粉末としたこと、さらにはセリウム含有量がCe/(In+Ce+Sn)原子数比で0.3原子%ならびにスズ含有量がSn/(In+Ce+Sn)原子数比で3原子%となるように調合したことを除いては、参考例1と同様の方法で酸化物焼結体、さらにはスパッタリングターゲットを作製した。
得られた酸化物焼結体の組成分析をICP発光分光法にて行ったところ、原料粉末の配合時の仕込み組成とほぼ同じであることが確認された。次に、X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、ビックスバイト型構造のIn
2O
3相による回折ピークのみが観察され、蛍石型構造のCeO
2相による回折ピークは観察されなかった。酸化物焼結体の密度を測定したところ、7.09g/cm
3であった。
次に、参考例1と同様の方法によって、直流スパッタリングにおけるアーキング発生について調べた。積算投入電力値12.8kwhに到達するまでアーキングは起こらず放電は安定していた。また、直流電力を変化させた場合の各直流電力での1分間当たりアーキング発生平均回数もゼロであった。
続いて、参考例1と同様に、直流スパッタリングによる成膜を行った。なお、基板温度は300℃とし、膜厚200nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の組成は、ターゲットとほぼ同じであることが確認された。
膜の比抵抗を測定したところ、2.6×10
−4Ωcmであった。また、ホール効果測定を行ったところ、キャリア電子濃度は7.3×10
20cm
−3、キャリア電子移動度33cm
2V
−1s
−1であった。波長460nmの屈折率は、2.04と低かった。X線回折測定によって膜の結晶性を調べた結果、酸化インジウム相のみからなる結晶質の膜であり、セリウムおよびスズは酸化インジウム相に固溶していることが確認された。
【0079】
(実施例1)
セリウム含有量がCe/(In+Ce)で表される原子数比で2原子%となる酸化物焼結体からなるタブレットを用いて、イオンプレーティング法で成膜を実施した。
酸化物焼結体の作製方法は、平均粒径1μm以下となるよう調整した原料粉末を調合したことを含めて、参考例1のスパッタリングターゲットの場合とほぼ同様の作製方法であるが、先に述べたように、イオンプレーティング用のタブレットとして用いる場合には、密度を低くする必要があるため、2種類の平均粒径の酸化インジウム粉末を用いることとし、平均粒径1μm以下となるよう調整した前記の酸化インジウム粉末に加え、平均粒径3μmとなるよう調整した酸化インジウム粉末を選択することとした。
同様に低密度化のために焼結温度を1100℃とした。タブレットは、焼結後の寸法が直径30mm、高さ40mmとなるよう予め成形した。得られた酸化物焼結体の組成分析をICP発光分光法にて行ったところ、原料粉末の配合時の仕込み組成とほぼ同じであることが確認された。次に、X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、ビックスバイト型構造のIn
2O
3相および蛍石型構造のCeO
2相で構成されていることが確認された。前記式(1)で表されるCeO
2相(111)のX線回折ピーク強度比は、4%であった。酸化物焼結体の密度を測定したところ、4.67g/cm
3であった。続いて、SEMによる酸化物焼結体の組織観察を行ったところ、CeO
2相の平均粒径は1.0μmであった。
このような酸化物焼結体をタブレットとして用い、イオンプレーティング法によるプラズマガンを用いた放電をタブレットが使用不可となるまで継続した。イオンプレーティング装置として、高密度プラズマアシスト蒸着法(HDPE法)が可能な反応性プラズマ蒸着装置を用いた。成膜条件としては、蒸発源と基板間距離を0.6m、プラズマガンの放電電流を100A、Ar流量を30sccm、O
2流量を10sccmとした。タブレットが使用不可となるまでの間、スプラッシュなどの問題は起こらなかった。
タブレット交換後、成膜を実施した。なお、基板温度は300℃とし、膜厚200nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の組成は、タブレットとほぼ同じであることが確認された。
膜の比抵抗を測定したところ、3.3×10
−4Ωcmであった。また、ホール効果測定を行ったところ、キャリア電子濃度は2.1×10
20cm
−3、キャリア電子移動度92cm
2V
−1s
−1であった。波長460nmの屈折率は、2.13であった。X線回折測定によって膜の結晶性を調べた結果、酸化インジウム相のみからなる結晶質の膜であり、セリウムは酸化インジウム相に固溶していることが確認された。
【0080】
(実施例2)
セリウム含有量がCe/(In+Ce)で表される原子数比で1原子%になるよう原料粉末を調合したこと以外は、実施例1と同様に酸化物焼結体からなるタブレットを作製した。得られたタブレットの組成分析をICP発光分光法にて行ったところ、原料粉末の配合時の仕込み組成とほぼ同じであることが確認された。
タブレットの密度を測定したところ、4.58g/cm
3であった。また、前記式(1)で表されるCeO
2相(111)のX線回折ピーク強度比は、1%であった。
得られた酸化物焼結体の組成分析をICP発光分光法にて行ったところ、原料粉末の配合時の仕込み組成とほぼ同じであることが確認された。次に、
図5に示すように、X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行った。
図5より、酸化物焼結体はビックスバイト型構造のIn
2O
3相および蛍石型構造のCeO
2相で構成されていることが確認された。前記式(1)で表されるCeO
2相(111)のX線回折ピーク強度比は、1%であった。
続いて、SEMによる酸化物焼結体の組織観察を行ったところ(前出の
図4参照)、CeO
2相の平均粒径は1.0μmであった。これらの結果を表1に示す。
このタブレットを用いて、実施例1と同様にイオンプレーティング法による成膜を実施した。
基板温度は400℃とし、膜厚200nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の組成は、タブレットとほぼ同じであることが確認された。タブレットが使用不可となるまでの間、スプラッシュなどの問題は起こらなかった。
膜の比抵抗を測定したところ、3.6×10
−4Ωcmであった。また、ホール効果測定を行ったところ、キャリア電子濃度は2.1×10
20cm
−3、キャリア電子移動度83cm
2V
−1s
−1であった。波長460nmの屈折率は、2.14であった。X線回折測定によって膜の結晶性を調べた結果、酸化インジウム相のみからなる結晶質の膜であり、セリウムは酸化インジウム相に固溶していることが確認された。
【0081】
(実施例3)
セリウム含有量がCe/(In+Ce)で表される原子数比で9原子%となるよう原料粉末を調合したこと、および原料粉末のうち酸化セリウム粉末を平均粒径1.5μm以下となるよう調整したこと以外は、実施例1と同様に酸化物焼結体からなるタブレットを作製した。得られたタブレットの組成分析をICP発光分光法にて行ったところ、原料粉末の配合時の仕込み組成とほぼ同じであることが確認された。タブレットの密度を測定したところ、4.88g/cm
3であった。続いて、SEMによる酸化物焼結体の組織観察を行ったところ、CeO
2相の平均粒径は2.6μmであった。また、前記式(1)で表されるCeO
2相(111)のX線回折ピーク強度比は、24%であった。このタブレットを用いて、実施例1と同様に成膜を実施した。
基板温度は400℃とし、膜厚200nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の組成は、タブレットとほぼ同じであることが確認された。タブレットが使用不可となるまでの間、スプラッシュなどの問題は起こらなかった。
膜の比抵抗を測定したところ、5.8×10
−4Ωcmであった。また、ホール効果測定を行ったところ、キャリア電子濃度は2.7×10
20cm
−3、キャリア電子移動度40cm
2V
−1s
−1であった。波長460nmの屈折率は、2.20であった。X線回折測定によって膜の結晶性を調べた結果、酸化インジウム相のみからなる結晶質の膜であり、セリウムは酸化インジウム相に固溶していることが確認された。
【0082】
(実施例4)
セリウム含有量がCe/(In+Ce)で表される原子数比で0.3原子%となるよう原料粉末を調合したこと以外は、実施例1と同様に酸化物焼結体からなるタブレットを作製した。得られたタブレットの組成分析をICP発光分光法にて行ったところ、原料粉末の配合時の仕込み組成とほぼ同じであることが確認された。タブレットの密度を測定したところ、4.52g/cm
3であった。続いて、SEMによる酸化物焼結体の組織観察を行ったところ、CeO
2相の平均粒径は1.0μmであった。また、前記式(1)で表されるCeO
2相(111)のX線回折ピーク強度比は、0.5%であった。
このタブレットを用いて、実施例1と同様に成膜を実施した。
基板温度は300℃とし、膜厚200nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の組成は、タブレットとほぼ同じであることが確認された。タブレットが使用不可となるまでの間、スプラッシュなどの問題は起こらなかった。
膜の比抵抗を測定したところ、6.5×10
−4Ωcmであった。また、ホール効果測定を行ったところ、キャリア電子濃度は1.2×10
20cm
−3、キャリア電子移動度80cm
2V
−1s
−1であった。波長460nmの屈折率は、2.13であった。X線回折測定によって膜の結晶性を調べた結果、酸化インジウム相のみからなる結晶質の膜であり、セリウムは酸化インジウム相に固溶していることが確認された。
【0083】
(実施例5)
セリウム含有量がCe/(In+Ce+Ti)原子数比で4原子%、ならびにチタン含有量がTi/(In+Ce+Ti)原子数比で1原子%となるよう原料粉末を調合したこと、ならびに酸化チタン粉末を平均粒径1μm以下となるよう調整して原料粉末としたこと以外は、実施例1と同様に酸化物焼結体からなるタブレットを作製した。得られたタブレットの組成分析をICP発光分光法にて行ったところ、原料粉末の配合時の仕込み組成とほぼ同じであることが確認された。また、前記式(1)で表されるCeO
2相(111)のX線回折ピーク強度比は、6%であった。続いて、SEMによる酸化物焼結体の組織観察を行ったところ、CeO
2相の平均粒径は1.2μmであった。タブレットの密度を測定したところ、4.84g/cm
3であった。このタブレットを用いて、実施例1と同様に成膜を実施した。
基板温度は300℃とし、膜厚200nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の組成は、タブレットとほぼ同じであることが確認された。タブレットが使用不可となるまでの間、スプラッシュなどの問題は起こらなかった。
膜の比抵抗を測定したところ、3.9×10
−4Ωcmであった。また、ホール効果測定を行ったところ、キャリア電子濃度は2.9×10
20cm
−3、キャリア電子移動度55cm
2V
−1s
−1であった。波長460nmの屈折率は、2.15であった。X線回折測定によって膜の結晶性を調べた結果、酸化インジウム相のみからなる結晶質の膜であり、セリウムは酸化インジウム相に固溶していることが確認された。
【0084】
(比較例1)
セリウム含有量がCe/(In+Ce)で表される原子数比で0.1原子%となるように、平均粒径1μm以下となるよう調整した原料粉末を調合したこと以外は、実施例1と同様の方法で酸化物焼結体、さらにはイオンプレーティング用タブレットを作製した。
得られた酸化物焼結体の組成分析をICP発光分光法にて行ったところ、原料粉末の配合時の仕込み組成とほぼ同じであることが確認された。次に、X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、ビックスバイト型構造のIn
2O
3相のみが確認された。
酸化物焼結体の密度を測定したところ、4.49g/cm
3であった。続いて、SEMによる酸化物焼結体の組織観察を行ったところ、極少量のCeO
2相が点在している様子が観察された。CeO
2相の平均粒径は1.0μmであった。これらの結果を表1に示す。
次に、実施例1と同様に、イオンプレーティング法による成膜を実施し、スプラッシュの発生状況を調べたが、タブレットが使用不可となるまでの間、スプラッシュなどの問題は起こらなかった。
続いて、実施例1と同様に、イオンプレーティング法による成膜を行った。なお、基板温度は300℃とし、膜厚200nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の組成は、タブレットとほぼ同じであることが確認された。
膜の比抵抗を測定したところ、1.2×10
−3Ωcmと高い値を示した。また、ホール効果測定を行ったところ、キャリア電子濃度は6.9×10
19cm
−3、キャリア電子移動度75cm
2V
−1s
−1であった。波長460nmの屈折率は、2.11であった。X線回折測定によって膜の結晶性を調べた結果、酸化インジウム相のみからなる結晶質の膜であり、セリウムは酸化インジウム相に固溶していることが確認された。
【0085】
(比較例2)
セリウム含有量がCe/(In+Ce)で表される原子数比で11原子%となるように、平均粒径1.5μm以下となるよう調整した原料粉末を調合したこと以外は、実施例1と同様の方法で酸化物焼結体、さらにはイオンプレーティング用タブレットを作製した。
得られた酸化物焼結体の組成分析をICP発光分光法にて行ったところ、原料粉末の配合時の仕込み組成とほぼ同じであることが確認された。次に、X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、ビックスバイト型構造のIn
2O
3相および蛍石型構造のCeO
2相で構成されていることが確認された。前記式(1)で表されるCeO
2相(111)のX線回折ピーク強度比は、28%と高かった。
酸化物焼結体の密度を測定したところ、4.86g/cm
3であった。続いて、SEMによる酸化物焼結体の組織観察を行ったところ、CeO
2相の平均粒径は2.7μmであった。
次に、実施例1と同様の方法によって、イオンプレーティング法による成膜を実施し、スプラッシュの発生状況を調べたが、タブレットが使用不可となるまでの間、スプラッシュなどの問題は起こらなかった。
続いて、実施例1と同様に、イオンプレーティング法による成膜を行った。なお、基板温度は500℃とし、膜厚200nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の組成は、タブレットとほぼ同じであることが確認された。
膜の比抵抗を測定したところ、1.1×10
−3Ωcmと高かった。また、ホール効果測定を行ったところ、キャリア電子濃度は2.9×10
20cm
−3、キャリア電子移動度20cm
2V
−1s
−1であった。波長460nmの屈折率は、2.18であった。X線回折測定によって膜の結晶性を調べた結果、酸化インジウム相のみからなる結晶質の膜であり、セリウムは酸化インジウム相に固溶していることが確認された。
【0086】
(比較例3)
平均粒径2μmの酸化セリウム粉末を原料粉末として用いたこと以外は、実施例2と同様の方法で酸化物焼結体、さらにはイオンプレーティング用タブレットを作製した。
得られた酸化物焼結体の組成分析をICP発光分光法にて行ったところ、原料粉末の配合時の仕込み組成とほぼ同じであることが確認された。次に、X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、ビックスバイト型構造のIn
2O
3相および蛍石型構造のCeO
2相で構成されていることが確認された。前記式(1)で表されるCeO
2相(111)のX線回折ピーク強度比は、2%であった。
酸化物焼結体の密度を測定したところ、4.61g/cm
3であった。続いて、SEMによる酸化物焼結体の組織観察を行ったところ、CeO
2相の平均粒径は4.0μmであった。
次に、実施例1と同様の方法によって、イオンプレーティング法による成膜を実施し、スプラッシュの発生状況を調べたところ、成膜時間の経過とともに、スプラッシュが頻発するようになった。なお、スプラッシュが頻発したため、成膜は実施しなかった。
【0087】
(比較例4)
セリウム含有量がCe/(In+Ce+Ti)原子数比で0.3原子%ならびにチタン含有量がTi/(In+Ce+Ti)原子数比で3原子%となるように原料粉末を調合したことを除いては、実施例5と同様の方法で酸化物焼結体、さらにはイオンプレーティング用タブレットを作製した。
得られたタブレットの組成分析をICP発光分光法にて行ったところ、原料粉末の配合時の仕込み組成とほぼ同じであることが確認された。次に、X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、ビックスバイト型構造のIn
2O
3相による回折ピークのみが観察され、蛍石型構造のCeO
2相による回折ピークは観察されなかった。酸化物焼結体の密度を測定したところ、4.55g/cm
3であった。
次に、実施例1と同様の方法によって、イオンプレーティング法による成膜を実施し、スプラッシュの発生状況を調べたが、タブレットが使用不可となるまでの間、スプラッシュなどの問題は起こらなかった。
続いて、実施例1と同様に、イオンプレーティング法による成膜を行った。なお、基板温度は300℃とし、膜厚200nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の組成は、タブレットとほぼ同じであることが確認された。
膜の比抵抗を測定したところ、2.7×10
−4Ωcmであった。また、ホール効果測定を行ったところ、キャリア電子濃度は5.9×10
20cm
−3、キャリア電子移動度39cm
2V
−1s
−1であった。波長460nmの屈折率は、2.06と低かった。X線回折測定によって膜の結晶性を調べた結果、酸化インジウム相のみからなる結晶質の膜であり、セリウムおよびチタンは酸化インジウム相に固溶していることが確認された。
【0088】
(比較例5)
セリウム含有量がCe/(In+Ce+Sn)原子数比で0.3原子%ならびにスズ含有量がSn/(In+Ce+Sn)原子数比で3原子%となるように調合したこと、ならびに酸化スズ粉末を平均粒径1μm以下となるよう調整して原料粉末としたことを除いては、実施例1と同様の方法で酸化物焼結体、さらにはイオンプレーティング用タブレットを作製した。
得られたタブレットの組成分析をICP発光分光法にて行ったところ、原料粉末の配合時の仕込み組成とほぼ同じであることが確認された。次に、X線回折測定による酸化物焼結体の相同定を行ったところ、ビックスバイト型構造のIn
2O
3相による回折ピークのみが観察され、蛍石型構造のCeO
2相による回折ピークは観察されなかった。酸化物焼結体の密度を測定したところ、4.61g/cm
3であった。
次に、実施例1と同様の方法によって、イオンプレーティング法による成膜を実施し、スプラッシュの発生状況を調べたが、タブレットが使用不可となるまでの間、スプラッシュなどの問題は起こらなかった。
続いて、実施例1と同様に、イオンプレーティング法による成膜を行った。なお、基板温度は300℃とし、膜厚200nmの透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜の組成は、タブレットとほぼ同じであることが確認された。
膜の比抵抗を測定したところ、2.4×10
−4Ωcmであった。また、ホール効果測定を行ったところ、キャリア電子濃度は8.7×10
20cm
−3、キャリア電子移動度30cm
2V
−1s
−1であった。波長460nmの屈折率は、2.02と低かった。X線回折測定によって膜の結晶性を調べた結果、酸化インジウム相のみからなる結晶質の膜であり、セリウムおよびスズは酸化インジウム相に固溶していることが確認された。
【0089】
【表1】
【0090】
「評価」
表1に示した結果から明らかなように、実施例1〜5の酸化物焼結体は、酸化物焼結体中のセリウム含有量がCe/(In+Ce)原子数比で0.3〜9原子%であり、ビックスバイト型構造のIn
2O
3相が主たる結晶相となり、第2相として蛍石型構造のCeO
2相が平均粒径3μm以下の結晶粒として微細に分散しており、これらの酸化物焼結体をタブレットとして、イオンプレーティング法(HDPE法)による長時間の連続放電においてCeO
2相起因のスプラッシュが発生しないことが明らかとなった。さらに、In
2O
3相の結晶粒が2種類の大きさの平均粒径からなり、1種類が平均粒径2μm以下、より好ましくは1.5μm以下、さらに好ましくは1μm以下の比較的小さい結晶粒であり、もう1種類が平均粒径2.5μm以上、より好ましくは3〜6μmの比較的大きい結晶粒であることによって、焼結体の強度確保と密度調整(低密度化)に寄与し、その結果としてスプラッシュが発生しないことが明らかとなった。また、焼結体密度が3.4〜5.5g/cm
3の範囲にあり、タブレットとしては熱衝撃によって割れにくくなる適度な密度を示した。なお、実施例1〜5で形成された結晶質の透明導電膜は、優れた電気的および光学的特性を示すことが確認された。
これに対して、参考例1〜6では、平均粒径1.5μm以下に調整した酸化インジウム粉末および酸化セリウム粉末を用いて、セリウム含有量をCe/(In+Ce)原子数比で0.3〜9原子%の範囲に調合して、インジウム酸化物とセリウム酸化物からなる酸化物焼結体(第1の酸化物焼結体)を作製しており、ビックスバイト型構造のIn
2O
3相を主相とし、第2相である蛍石型構造のCeO
2相が平均粒径3μm以下の結晶粒として微細分散された焼結体組織を有することが確認された。さらに、In
2O
3相とCeO
2相の結晶粒の粒径と分散状態の関係は、前出の式(1)で表されるIn
2O
3相(222)に対するCeO
2相(111)のX線回折ピーク強度比において、25%以下であることが確認された。
また、参考例7〜11より、平均粒径1.5μm以下に調整した酸化インジウム粉末、酸化セリウム粉末、およびチタン、ジルコニウム、ハフニウム、モリブデン、およびタングステンからなる金属元素群より選ばれる一種以上のM元素の酸化物粉末を用いて、セリウム含有量をCe/(In+Ce)原子数比で0.3〜
8原子%、M元素の含有量がM/(In+Ce+M)原子数比で
0.3〜1原子%、かつセリウムとチタンの総含有量が(Ce+Ti)/(In+Ce+Ti)原子数比で
0.6〜9原子%の範囲に調合して、インジウム、セリウム、およびM元素を酸化物として含有する酸化物焼結体(第2の酸化物焼結体)、M元素がチタンである酸化物焼結体(第3の酸化物焼結体)を作製しており、参考例1〜6の酸化物焼結体と同様の微細分散組織を有することが確認された。
参考例1〜11の酸化物焼結体は、焼結体密度が6.3g/cm
3以上であり、いずれも高密度を示した。これらの酸化物焼結体をスパッタリングターゲットとして、直流スパッタリングを実施したところ、長時間の連続スパッタリング後でもCeO
2相起因のスパッタリングの掘れ残りを起点としたノジュールの発生はみられず、直流電力200〜600Wの範囲で変化させてもアーキングが発生しないことが明らかとなった。
参考例1〜11において形成された結晶質の透明導電膜の比抵抗は8×10
−4Ω・cm以下と良好であり、この低い比抵抗が35cm
2V
−1s
−1を超える高いキャリア電子移動度に依存することが確認された。同時に、光学特性に関しては、キャリア電子濃度が低く制された結果、波長460nmにおける屈折率が2.1を超える高い値を示すことが確認された。なお、参考例3では、非晶質であるためキャリア電子移動度は低いものの、波長460nmにおける屈折率が2.1を超える高い値を示した。
したがって、これら参考例1〜11の酸化物焼結体は、スパッタリングターゲットとして使用できるが、焼度が5.5g/cm
3を超えているので、イオンプレーティング用タブレットとしては使用できない。
【0091】
一方、比較例1では、セリウム含有量を本発明の範囲から外れた、Ce/(In+Ce)原子数比で0.1原子%としている。セリウム含有量が低すぎるため、イオンプレーティングにより形成された結晶質の透明導電膜は、十分なキャリア電子濃度を生成することができず、比抵抗は1.2×10
−3Ω・cmを示し、青色LEDや太陽電池の用途などで必要な比抵抗8×10
−4Ω・cm以下を示すには至らなかった。
同様に、比較例2では、セリウム含有量を本発明の範囲から外れた、Ce/(In+Ce)原子数比で11原子%としている。セリウム含有量が高過ぎるため、イオンプレーティング法により形成された結晶質の透明導電膜は、キャリア電子移動度が低下してしまい、比抵抗は1.1×10
−3Ω・cmを示し、青色LEDや太陽電池の用途などで必要な比抵抗8×10
−4Ω・cm以下を示すには至らなかった。
比較例3では、平均粒径2μmの比較的粗大な酸化セリウム粉末を原料粉末として用いたことによって、酸化物焼結体に分散されたCeO
2相からなる結晶粒の平均粒径が3μmを超えている。このような組織の酸化物焼結体をタブレットとし、イオンプレーティング法による成膜を実施したところ、成膜時間の経過とともに、スプラッシュが頻発することが確認された。すなわち、実施例1〜5のように、平均粒径1.5μm以下に調整した酸化セリウム粉末を用いて、CeO
2相からなる結晶粒の平均粒径が3μm以下となるよう微細分散された酸化物焼結体の組織が、スプラッシュ発生の抑制に有効であることが明らかとなった。
比較例4は、チタン含有量を本発明の範囲から外れた、Ti/(In+Ce+Ti)原子数比で3原子%としている。チタン含有量が高過ぎるため、イオンプレーティング法により形成された結晶質の透明導電膜は、キャリア電子濃度が高くなり過ぎてしまい、屈折率は2.06を示し、青色LEDの用途などで必要な屈折率2.1を示すには至らなかった。
比較例5の酸化物焼結体は、インジウムおよびセリウムの他に、本発明の酸化物焼結体の構成元素とは異なるスズをSn/(In+Ce+Sn)原子数比で3原子%含有している。スズを含むため、イオンプレーティング法により形成された結晶質の透明導電膜は、キャリア電子濃度が高くなり過ぎてしまい、屈折率は2.02を示し、青色LEDの用途などで必要な屈折率2.1を示すには至らなかった。
したがって、これら比較例1〜5の酸化物焼結体は、イオンプレーティング用タブレットとして使用することができない
【0092】
さらに、参考比較例1では、セリウム含有量を本発明の範囲から外れた、Ce/(In+Ce)原子数比で0.1原子%としている。セリウム含有量が低すぎるため、スパッタリングにより形成された結晶質の透明導電膜は、十分なキャリア電子濃度を生成することができず、比抵抗は1.3×10
−3Ω・cmを示し、青色LEDや太陽電池の用途などで必要な比抵抗8×10
−4Ω・cm以下を示すには至らなかった。
同様に、参考比較例2では、セリウム含有量を本発明の範囲から外れた、Ce/(In+Ce)原子数比で11原子%としている。セリウム含有量が高過ぎるため、スパッタリングにより形成された結晶質の透明導電膜は、キャリア電子移動度が低下してしまい、比抵抗は1.0×10
−3Ω・cmを示し、青色LEDや太陽電池の用途などで必要な比抵抗8×10
−4Ω・cm以下を示すには至らなかった。
参考比較例3では、平均粒径2μmの比較的粗大な酸化セリウム粉末を原料粉末として用いたことによって、酸化物焼結体に分散されたCeO
2相からなる結晶粒の平均粒径が3μmを超えている。このような組織の酸化物焼結体をスパッタリングターゲットとし、直流スパッタリングを実施したところ、長時間の連続スパッタリング後にノジュールが発生し、アーキングが頻発することが確認された。すなわち、参考例1〜11のように、平均粒径1.5μm以下に調整した酸化セリウム粉末を用いて、CeO
2相からなる結晶粒の平均粒径が3μm以下となるよう微細分散された酸化物焼結体の組織が、ノジュール発生とアーキング発生の抑制に有効であることが明らかとなった。
参考比較例4は、チタン含有量を本発明の範囲から外れた、Ti/(In+Ce+Ti)原子数比で3原子%としている。チタン含有量が高過ぎるため、スパッタリングにより形成された結晶質の透明導電膜は、キャリア電子濃度が高くなり過ぎてしまい、屈折率は2.07を示し、青色LEDの用途などで必要な屈折率2.1を示すには至らなかった。参考比較例5の酸化物焼結体は、インジウムおよびセリウムの他に、本発明の酸化物焼結体の構成元素とは異なるスズをSn/(In+Ce+Sn)原子数比で3原子%含有している。スズを含むため、スパッタリングにより形成された結晶質の透明導電膜は、キャリア電子濃度が高くなり過ぎてしまい、屈折率は2.04を示し、青色LEDの用途などで必要な屈折率2.1を示すには至らなかった。
したがって、これら参考比較例1〜5の酸化物焼結体は、スパッタリングターゲットとして使用できず、しかも、焼結体密度が5.5g/cm
3を超えているので、イオンプレーティング用タブレットとしても使用することができない