特許第5733263号(P5733263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5733263変性ポリヒドロキシスチレン樹脂及びその製造方法並びにレジスト材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5733263
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】変性ポリヒドロキシスチレン樹脂及びその製造方法並びにレジスト材料
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/00 20060101AFI20150521BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20150521BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20150521BHJP
   C08F 12/24 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   C08F8/00
   G03F7/038 601
   H01L21/30 502R
   C08F12/24
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-98363(P2012-98363)
(22)【出願日】2012年4月24日
(65)【公開番号】特開2013-227364(P2013-227364A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2014年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(72)【発明者】
【氏名】平野 禎典
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 武
【審査官】 上前 明梨
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−287393(JP,A)
【文献】 特開昭59−065455(JP,A)
【文献】 国際公開第99/015935(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00−246/00
C08F 301/00
C08G 59/00−59/72
G03C 3/00
G03F 7/004−7/04
G03F 7/06
G03F 7/075−7/115
G03F 7/16−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリヒドロキシスチレン樹脂:100質量部、
ホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、及び1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれる1種又は2種以上樹脂変性剤:0.1〜50質量部、
塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、蓚酸、酢酸、有機スルホン酸化合物から選ばれる1種以上の酸性触媒:0.1〜70質量部
を用いて、ポリヒドロキシスチレン樹脂を樹脂変性剤にて変性前の重量平均分子量(Mw)に比べて変性後の重量平均分子量(Mw)が1.4〜10倍となるように変性してなる変性ポリヒドロキシスチレン樹脂。
【請求項2】
樹脂変性剤がメラミン基骨格含有樹脂変性剤又は尿素基含有樹脂変性剤であり、変性前のMwに比べて変性後のMwが1.4〜10倍になっている請求項1記載の変性ポリヒドロキシスチレン樹脂。
【請求項3】
ポリヒドロキシ樹脂の変性前の重量平均分子量が1,000〜30,000である請求項1又は2記載の変性ポリヒドロキシスチレン樹脂。
【請求項4】
ポリヒドロキシスチレン樹脂:100質量部、
ホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、及び1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれる1種又は2種以上樹脂変性剤:0.1〜50質量部、
塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、蓚酸、酢酸、有機スルホン酸化合物から選ばれる1種以上の酸性触媒:0.1〜70質量部、及び
上記ポリヒドロキシスチレン樹脂と樹脂変性剤を溶解できる有機溶剤:ポリヒドロキシスチレン樹脂100質量部に対し0.5〜100倍質量部
よりなる変性ポリヒドロキシスチレン樹脂製造用材料。
【請求項5】
ポリヒドロキシスチレン樹脂の重量平均分子量が1,000〜30,000である請求項4記載の材料。
【請求項6】
有機スルホン酸化合物、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p−フェノールスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸のいずれか1種以上である請求項4又は5記載の材料
【請求項7】
ベースとなる重量平均分子量1,000〜30,000のポリヒドロキシスチレン樹脂100質量部に、ホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、及び1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれる1種又は2種以上の樹脂変性剤0.1〜50質量部を混合し、塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、蓚酸、酢酸及び有機スルホン酸化合物から選ばれる1種以上の酸性触媒0.1〜70質量部を上記混合と同時又は後添加して反応させて、変性前の重量平均分子量(Mw)に比べて変性後の重量平均分子量(Mw)が1.4〜10倍となる変性ポリヒドロキシスチレン樹脂を得ることを特徴とする変性ポリヒドロキシスチレン樹脂の製造方法。
【請求項8】
樹脂変性剤が、メラミン基骨格含有樹脂変性剤又は尿素基含有樹脂変性剤であることを特徴とする請求項記載の変性ポリヒドロキシスチレン樹脂の製造方法。
【請求項9】
有機スルホン酸化合物が、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p−フェノールスルホン酸、メタンスルホン酸又はエタンスルホン酸であることを特徴とする請求項7又は8記載の変性ポリヒドロキシスチレン樹脂の製造方法。
【請求項10】
ポリヒドロキシスチレン樹脂を樹脂変性剤によって変性してなり、かつ変性されたポリヒドロキシスチレン樹脂のフェノール性水酸基の一部に酸不安定基を導入して酸により脱保護できる官能基に置き換えられた変性ポリヒドロキシスチレン樹脂であって、上記樹脂変性剤が、ホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、及び1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれる1種又は2種以上であり、該樹脂変性剤による変性により変性前の重量平均分子量(Mw)に比べて変性後の重量平均分子量(Mw)が1.4倍以上になっている変性ポリヒドロキシスチレン樹脂。
【請求項11】
ポリヒドロキシスチレン樹脂を樹脂変性剤で変性した変性ポリヒドロキシスチレン樹脂が、ポリヒドロキシスチレン樹脂の重量平均分子量が1,000〜30,000であり、このポリヒドロキシスチレン樹脂100質量部を酸性触媒0.1〜70質量部の存在下に樹脂変性剤0.1〜50質量部で変性したものであり、変性前の重量平均分子量(Mw)に比べて変性後の重量平均分子量(Mw)が1.4〜10倍になっている請求項10記載の変性ポリヒドロキシスチレン樹脂。
【請求項12】
ポリヒドロキシスチレン樹脂をホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、及び1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれる1種又は2種以上の樹脂変性剤で変性して、該樹脂変性剤による変性により変性前の重量平均分子量(Mw)に比べて変性後の重量平均分子量(Mw)が1.4以上になっている変性ポリヒドロキシスチレン樹脂を得た後、この変性されたポリヒドロキシスチレン樹脂のフェノール性水酸基の一部に酸不安定基を導入して、酸により脱保護できる官能基に置き換える変性ポリヒドロキシスチレン樹脂の製造方法。
【請求項13】
ポリヒドロキシスチレン樹脂を樹脂変性剤で変性した変性ポリヒドロキシスチレン樹脂が、ポリヒドロキシスチレン樹脂の重量平均分子量が1,000〜30,000であり、このポリヒドロキシスチレン樹脂100質量部を酸性触媒0.1〜70質量部の存在下に樹脂変性剤0.1〜50質量部で変性したものであり、変性前の重量平均分子量(Mw)に比べて変性後の重量平均分子量(Mw)が1.4〜10倍になっている請求項12記載の変性ポリヒドロキシスチレン樹脂の製造方法。
【請求項14】
請求項1,2,3,10及び11のいずれか1項記載の変性ポリヒドロキシスチレン樹脂を含有するレジスト材料。
【請求項15】
請求項14記載のレジスト材料を用いて、基板の上に当該材料を塗布し、放射線を照射し、現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(4−ヒドロキシスチレン)樹脂等のポリヒドロキシスチレン樹脂と樹脂変性剤とが反応した変性ポリヒドロキシスチレン樹脂及びその製造方法、該樹脂を使用したレジスト材料並びにパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学増幅タイプのレジスト材料においては、ポリヒドロキシスチレン樹脂が広く用いられており、特に高解像度を得るための狭分散ポリヒドロキシスチレン(誘導体)樹脂については、特開昭59−199705号公報(特許文献1)や特開平5−1115号公報(特許文献2)等で種々報告が行われている。しかしながら、解像力を要求されない工程に用いられるポリヒドロキシスチレン樹脂については、その物性を改善するための報告例は少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−199705号公報
【特許文献2】特開平5−1115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、公知の手法で合成されたポリヒドロキシスチレン樹脂と樹脂変性剤を用い、ポリヒドロキシスチレンの物性、特に耐熱性を向上させた変性ポリヒドロキシスチレン樹脂及びその製造方法、並びに該変性ポリヒドロキシスチレン樹脂を用いたレジスト材料とパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、酸触媒下で、ポリヒドロキシスチレン樹脂と樹脂変性剤を反応させることによって得られる変性ポリヒドロキシスチレン樹脂が、分子量を制御し、耐熱性の高い特性を有し、かつフォトレジスト用ポリスチレン樹脂として使用可能であることを見出し、本発明をなすに至った。
即ち、本発明者らは、ポリヒドロキシスチレン樹脂を高分子量化する製造方法として、酸触媒下で、ポリヒドロキシスチレン樹脂と樹脂変性剤を反応する手法を見出し、得られる変性ポリヒドロキシスチレン樹脂が特徴的な性能を有していることを見出したものである。
【0006】
従って、本発明は、変性ポリヒドロキシスチレン樹脂及びその製造方法並びにレジスト材料及びパターン形成方法を提供する。
(1) ポリヒドロキシスチレン樹脂:100質量部、
ホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、及び1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれる1種又は2種以上樹脂変性剤:0.1〜50質量部、
塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、蓚酸、酢酸、有機スルホン酸化合物から選ばれる1種以上の酸性触媒:0.1〜70質量部
を用いて、ポリヒドロキシスチレン樹脂を樹脂変性剤にて変性前の重量平均分子量(Mw)に比べて変性後の重量平均分子量(Mw)が1.4〜10倍となるように変性してなる変性ポリヒドロキシスチレン樹脂。
(2) 樹脂変性剤がメラミン基骨格含有樹脂変性剤又は尿素基含有樹脂変性剤であり、変性前のMwに比べて変性後のMwが1.4〜10倍になっている(1)記載の変性ポリヒドロキシスチレン樹脂。
(3) ポリヒドロキシ樹脂の変性前の重量平均分子量が1,000〜30,000である(1)又は(2)記載の変性ポリヒドロキシスチレン樹脂。
(4) ポリヒドロキシスチレン樹脂:100質量部、
ホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、及び1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれる1種又は2種以上樹脂変性剤:0.1〜50質量部、
塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、蓚酸、酢酸、有機スルホン酸化合物から選ばれる1種以上の酸性触媒:0.1〜70質量部、及び
上記ポリヒドロキシスチレン樹脂と樹脂変性剤を溶解できる有機溶剤:ポリヒドロキシスチレン樹脂100質量部に対し0.5〜100倍質量部
よりなる変性ポリヒドロキシスチレン樹脂製造用材料。
(5) ポリヒドロキシスチレン樹脂の重量平均分子量が1,000〜30,000である(4)記載の材料。
(6) 有機スルホン酸化合物、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p−フェノールスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸のいずれか1種以上である(4)又は(5)記載の材料
(7) ベースとなる重量平均分子量1,000〜30,000のポリヒドロキシスチレン樹脂100質量部に、ホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、及び1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれる1種又は2種以上の樹脂変性剤0.1〜50質量部を混合し、塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、蓚酸、酢酸及び有機スルホン酸化合物から選ばれる1種以上の酸性触媒0.1〜70質量部を上記混合と同時又は後添加して反応させて、変性前の重量平均分子量(Mw)に比べて変性後の重量平均分子量(Mw)が1.4〜10倍となる変性ポリヒドロキシスチレン樹脂を得ることを特徴とする変性ポリヒドロキシスチレン樹脂の製造方法。
(8) 樹脂変性剤が、メラミン基骨格含有樹脂変性剤又は尿素基含有樹脂変性剤であることを特徴とする()記載の変性ポリヒドロキシスチレン樹脂の製造方法。
(9) 有機スルホン酸化合物が、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p−フェノールスルホン酸、メタンスルホン酸又はエタンスルホン酸であることを特徴とする(7)又は(8)記載の変性ポリヒドロキシスチレン樹脂の製造方法。
(10) ポリヒドロキシスチレン樹脂を樹脂変性剤によって変性してなり、かつ変性されたポリヒドロキシスチレン樹脂のフェノール性水酸基の一部に酸不安定基を導入して酸により脱保護できる官能基に置き換えられた変性ポリヒドロキシスチレン樹脂であって、上記樹脂変性剤が、ホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、及び1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれる1種又は2種以上であり、該樹脂変性剤による変性により変性前の重量平均分子量(Mw)に比べて変性後の重量平均分子量(Mw)が1.4倍以上になっている変性ポリヒドロキシスチレン樹脂。
(11) ポリヒドロキシスチレン樹脂を樹脂変性剤で変性した変性ポリヒドロキシスチレン樹脂が、ポリヒドロキシスチレン樹脂の重量平均分子量が1,000〜30,000であり、このポリヒドロキシスチレン樹脂100質量部を酸性触媒0.1〜70質量部の存在下に樹脂変性剤0.1〜50質量部で変性したものであり、変性前の重量平均分子量(Mw)に比べて変性後の重量平均分子量(Mw)が1.4〜10倍になっている(10)記載の変性ポリヒドロキシスチレン樹脂。
(12) ポリヒドロキシスチレン樹脂をホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、及び1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれる1種又は2種以上の樹脂変性剤で変性して、該樹脂変性剤による変性により変性前の重量平均分子量(Mw)に比べて変性後の重量平均分子量(Mw)が1.4以上になっている変性ポリヒドロキシスチレン樹脂を得た後、この変性されたポリヒドロキシスチレン樹脂のフェノール性水酸基の一部に酸不安定基を導入して、酸により脱保護できる官能基に置き換える変性ポリヒドロキシスチレン樹脂の製造方法。
(13) ポリヒドロキシスチレン樹脂を樹脂変性剤で変性した変性ポリヒドロキシスチレン樹脂が、ポリヒドロキシスチレン樹脂の重量平均分子量が1,000〜30,000であり、このポリヒドロキシスチレン樹脂100質量部を酸性触媒0.1〜70質量部の存在下に樹脂変性剤0.1〜50質量部で変性したものであり、変性前の重量平均分子量(Mw)に比べて変性後の重量平均分子量(Mw)が1.4〜10倍になっている(12)記載の変性ポリヒドロキシスチレン樹脂の製造方法。
14(1),(2),(3),(10)及び(11)のいずれかに記載の変性ポリヒドロキシスチレン樹脂を含有するレジスト材料。
15) (14)記載のレジスト材料を用いて、基板の上に当該材料を塗布し、放射線を照射し、現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ポリヒドロキシスチレン樹脂の重量平均分子量を増大することができ、耐熱性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の変性ポリヒドロキシスチレン樹脂を得るために用いられる原料となるポリ(4−ヒドロキシスチレン)樹脂等のポリヒドロキシスチレン樹脂は、公知の方法で合成されたポリヒドロキシスチレン樹脂であれば、種類を問わないが、効果的に高分子量化するためには、ベースとなるポリヒドロキシスチレン樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量が1,000以上、好ましくは1,500以上であることが好ましい。その上限は必ずしも制限されないが、30,000以下、特に20,000以下であることが望ましい。
【0009】
樹脂変性剤としては、ホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、及び1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
【0010】
上記ホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性されたアミノ縮合物としては、例えば、ホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性されたメラミン縮合物(メラミン基骨格含有樹脂変性剤)、又はホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性された尿素縮合物(尿素基含有樹脂変性剤)が挙げられる。上記ホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性されたメラミン縮合物の調製は、例えば、まず公知の方法に従ってメラミンモノマーをホルマリンでメチロール化して変性、又はこれを更にアルコールでアルコキシ化して変性した、下記一般式(1)で示される変性メラミンが挙げられる。なお、上記アルコールとしては、低級アルコール、例えば炭素数1〜4のアルコールが好ましい。
【0011】
【化1】
(式中、R1は同一でも異なってもよく、メチロール基、炭素数1〜4のアルコキシ基を含むアルコキシメチル基、又は水素原子であるが、少なくとも1つはメチロール基又は上記アルコキシメチル基である。)
【0012】
上記R1としては、例えば、メチロール基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基等のアルコキシメチル基、及び水素原子等が挙げられる。
【0013】
上記一般式(1)の変性メラミンとして、具体的には、トリメトキシメチルモノメチロールメラミン、ジメトキシメチルモノメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチロールメラミン等が挙げられる。次いで、一般式(1)の変性メラミン又はこの多量体(例えば二量体、三量体等のオリゴマー体)を、常法に従って、ホルムアルデヒドと所望の分子量になるまで付加縮合重合させることにより、ホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性されたメラミン縮合物が得られる。
【0014】
また、上記ホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性された尿素縮合物の調製は、例えば公知の方法に従って、所望の分子量の尿素縮合物をホルマリンでメチロール化して変性し、又はこれを更にアルコールでアルコキシ化して変性する。上記ホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性された尿素縮合物の具体例としては、例えば、メトキシメチル化尿素縮合物、エトキシメチル化尿素縮合物、プロポキシメチル化尿素縮合物等が挙げられる。なお、これら変性メラミン縮合物及び変性尿素縮合物の1種又は2種以上を混合して使用することもできる。
【0015】
また、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物としては、例えば、(2−ヒドロキシ−5−メチル)−1,3−ベンゼンジメタノール、2,2’,6,6’−テトラメトキシメチロールビスフェノールA等が挙げられる。これらフェノール化合物の1種又は2種以上を、樹脂変性剤として使用することができる。
【0016】
更に、1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールアルカン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0017】
これらの樹脂変性剤の中で特に変性メラミン縮合物及び変性尿素縮合物が、反応を制御しやすく、好適に用いることができる。なお、上記樹脂変性剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
樹脂変性剤の添加量については、ポリヒドロキシスチレン樹脂100質量部に対し、0.1〜50質量部が好ましく、より好ましくは0.5〜30質量部で好適に用いることができる。添加量が0.1質量部未満であると本発明の効果を得ることが困難な場合があり、50質量部を超える添加量では、樹脂の反応が進みすぎて、ゲル化を起こす可能性が出てくる場合がある。
【0019】
本発明では、ポリヒドロキシスチレン樹脂と樹脂変性剤を酸性触媒下で反応する際に、有機溶剤中で反応を行うことが好ましく、その際に好適に用いられる有機溶剤としては、アルコール類、グリコール類、ケトン類、エーテル類、ラクトン類、芳香族炭化水素類が挙げられる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、1,3−ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等のジオール類、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類を挙げることができるが、ポリヒドロキシスチレン樹脂と樹脂変性剤を均一に溶解できる溶剤であれば、上記に限定されない。上記有機溶剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
なお、有機溶剤の添加量については、ポリヒドロキシスチレン樹脂と樹脂変性剤が均一に溶解できる量以上であれば、本発明に制限を与えることなく、好適に用いることができる。具体的に、溶剤はポリヒドロキシスチレン樹脂100質量部に対し0.5〜100倍質量部、好ましくは、0.8〜50倍質量部、最も好ましくは、1.0〜10倍質量部である。
【0021】
本発明の変性で用いられる酸性触媒は、塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸類、蓚酸、酢酸等のカルボン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p−フェノールスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の有機スルホン酸化合物などから選ばれる有機酸類が挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、好ましくは、有機溶剤への溶解性が高く、強い酸である点で有機スルホン酸化合物を用いることがよい。
【0022】
なお、酸性触媒の添加量については、ポリヒドロキシスチレン樹脂100質量部に対して0.1〜70質量部であればよく、好ましくは0.5〜50質量部、最も好ましくは1.0〜30質量部である。これらの酸は、最初から、ポリヒドロキシスチレン樹脂及び樹脂変性剤と併せて同時に溶解してもよく、ポリヒドロキシスチレン樹脂と樹脂変性剤を溶解した有機溶剤中に、後から滴下しながら加えてもよい。
【0023】
なお、酸性触媒を最初からポリヒドロキシスチレン樹脂及び樹脂変性剤と混合した場合、もしくは、後から添加する場合、どちらについても、反応中の溶液の温度は、10℃以上であることが好ましく、これより低い温度で酸性触媒を添加しても、反応が進みづらくなってしまうおそれがある。また、反応中の温度については、高温にするほど、反応時間を短くすることができるが、極端に高温にしてしまうと、反応を制御しづらくなるために、必須ではないが、100℃以下の温度で反応を行うことが好ましい。
【0024】
また、反応溶液のpHについては4未満であることが好ましい。これよりもアルカリ性側であると、目的とする反応が進まないおそれがある。
【0025】
なお、反応終了後は、残存している未反応の酸性触媒を失活させるために、ピリジン、トリエチルアミン等の塩基性物質を添加し、pHを制御し反応を確実に停止することが好ましい。また、塩基性物質での中和処理が困難である場合、もしくは適さない場合については、反応後の溶液に純水を添加後、撹拌・静置し、分離した水層を系外へ除去する工程を複数回繰り返すことによって、酸性触媒を反応溶液から除去しても構わない。この際、純水にピリジン等の塩基性物質を溶解し、中和と水洗を同時に行っても構わない。また、反応を完全に停止する必要が無ければ、これらの触媒除去工程を省略しても構わない。更に必要に応じて、溶剤置換を行ってもよいし、蒸発乾固により溶剤を除去しても構わない。
【0026】
このような工程下を経て、樹脂の高分子化と併行して、ポリヒドロキシスチレン樹脂の一部のフェノール性水酸基の水素原子に酸不安定基を導入することにより、酸により脱保護できる官能基に置き換えている変性樹脂を得ることができる。
【0027】
このような反応により、本発明では、得られる変性ポリスチレン樹脂の重量平均分子量(Mw)が、ベースのポリヒドロキシスチレンの重量平均分子量の1.4倍以上、具体的には、1.4以上10.0以下、好ましくは1.45以上5.0以下にすることが可能となる。変性度合いが1.4倍未満の場合には、十分な分子量が得られなく、耐熱性を要求されるレジストパターンの形状に影響を与える。
【0028】
更に望ましくは、重量平均分子量として、1,400以上30,000以下、より好ましくは3,000以上15,000以下の高分子量の変性されたポリヒドロキシスチレン樹脂に分子量を制御できるものである。
【0029】
本発明によって得られた変性ポリヒドロキシスチレン樹脂は、公知の感光剤、光酸発生剤、塩基性化合物、架橋剤、溶解促進剤、溶解阻害剤、染料、界面活性剤等を組み合わせることにより、レジスト材料のベース樹脂として好適に用いることができる。
【0030】
まず、本発明によって得られた変性ポリヒドロキシスチレン樹脂をネガ型レジスト材料として用いる場合、変性ポリヒドロキシスチレン樹脂100質量部に対し、光酸発生剤0.05〜50質量部、架橋剤1〜50質量部をレジスト溶剤に溶解し、必要であれば塩基性化合物、界面活性剤、染料、溶解促進剤等、公知の添加剤を添加することにより、ネガ型レジスト溶液を得ることができる。この溶液を、ネガ型レジスト溶液として直接使用してもよく、また、公知の手法を用いて、脱溶剤を行い、均一な膜を作製し、これをネガ型レジストフィルムとして用いても構わない。
【0031】
本発明によって得られた変性ポリヒドロキシスチレン樹脂は、ポジ型レジスト材料に用いることが更に好ましいが、この場合、以下の形態で使用することができる。
【0032】
本発明の変性ポリヒドロキシスチレン樹脂の一部のフェノール性水酸基に公知の酸不安定基を導入することにより、塩基の存在下で反応させることにより、部分的にフェノール性水酸基がアルコキシアルキル基で保護された(該水酸基の水素原子がアルコキシアルキル基で置換された)変性ポリヒドロキシスチレン樹脂を得ることができる。酸不安定基の導入は、二炭酸ジアルキル化合物、又はアルコキシカルボニルアルキルハライドと高分子化合物を、溶媒中において塩基の存在下反応を行うことで可能である。反応溶媒としては、アセトニトリル、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒が好ましく、単独でも2種以上混合して使用しても構わない。
【0033】
塩基としては、トリエチルアミン、ピリジン、イミダゾール、ジイソプロピルアミン、炭酸カリウム等が好ましく、その使用量は元の高分子化合物のフェノール性水酸基の水素原子をその全水酸基の1モルに対して10モル%以上であることが好ましい。
反応温度としては、0〜100℃、好ましくは0〜60℃である。反応時間としては0.2〜100時間、好ましくは1〜10時間である。
二炭酸ジアルキル化合物としては二炭酸ジ−tert−ブチル、二炭酸ジ−tert−アミル等が挙げられ、アルコキシカルボニルアルキルハライドとしてはtert−ブトキシカルボニルメチルクロライド、tert−アミロキシカルボニルメチルクロライド、tert−ブトキシカルボニルメチルブロマイド、tert−ブトキシカルボニルエチルクロライド等が挙げられる。
但し、フェノール性水酸基に酸不安定基を導入する公知の方法であれば、これらの合成手法に限定されるものではない。
【0034】
このようにして得られた部分的に酸不安定基を導入した変性ポリヒドロキシスチレン樹脂と光酸発生剤を有機溶剤に溶解することによって、ポジ型レジスト組成物溶液を得ることができる。更に、必要に応じて、塩基性化合物、界面活性剤、染料、架橋剤、溶解促進剤、溶解阻害剤等、公知の添加剤を添加することができる。この溶液を、ポジ型レジスト溶液として直接使用してもよく、また、公知の手法を用いて、脱溶剤を行い均一な膜を作製し、これをポジ型レジストフィルムとして用いても構わない。その際、使用される支持フィルムは、単一でも複数の重合体フィルムを積層した多層フィルムでもよい。材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルムがあるが、適度の可とう性、機械的強度及び耐熱性を有するポリエチレンテレフタレートが好ましい。また、これらのフィルムについては、コロナ処理や剥離剤が塗布されたような各種処理が行われたものでもよい。
【0035】
また、本発明のレジスト材料を用いたレジストパターン形成方法は、常法であれば特に限定されるものでない。Si、SiO2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG等の基板に加え、Au、Ti、W、Cu、Ni−Fe、Ta、Zn、Co、Pb等の金属基板、有機反射防止膜等を施した基板上にスピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターブレードコート等の適当な塗布方法により、所望の膜厚、通常0.1〜100μm、特に0.5〜50μmになるよう塗布し、ホットプレート上で60〜150℃,1〜10分間、好ましくは80〜120℃,1〜5分間プリベークする。次いで、放射線である紫外線、遠紫外線、電子線等から選ばれる光源、好ましくは190〜500nmの露光波長で目的とするパターンを所定のマスクを通じて露光を行う。露光量は10〜1,000mJ/cm2程度、好ましくは20〜800mJ/cm2程度となるように露光することが好ましい。ホットプレート上で60〜150℃,1〜5分間、好ましくは80〜120℃,1〜3分間ポストエクスポージャベーク(PEB)する。
【0036】
更に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜60分間、好ましくは0.5〜10分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法で現像することにより基板上に目的のパターンが形成される。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例等に制限されるものではない。
【0038】
[実施例1]
GPCでの重量平均分子量(ポリスチレン換算)が1,500であるポリヒドロキシスチレン樹脂(ガラス転移温度:68℃)400g、式(2)で表される変性剤CL−1(ニカラックMW−390 三和ケミカル社製)40.0gをアセトン800gで溶解した溶液に、室温でp−トルエンスルホン酸4.0gをアセトン60gに溶解した溶液を10分間かけて滴下し、そのままpH2で、25℃で2時間撹拌を行った。得られた溶液をGPCにて測定したところ、重量平均分子量で3,200であり、ポリスチレンのフェノール性水酸基の一部が変性剤により変性された変性ポリヒドロキシスチレン樹脂が得られた。
【化2】
CL−1
【0039】
[実施例2〜5]
表1に示す成分を用い、実施例1と同様にしてポリヒドロキシスチレン樹脂と変性剤との反応を行い、変性樹脂を得た。結果を下表に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
ニカラックMX270:メチル化尿素樹脂化合物
【化3】
【0042】
DIC(株)製EXA−850CRP
【化4】
【0043】
【表2】

ガラス転移温度測定;示差走査熱量計(メトラー・トレド社製)
【0044】
なお、実施例2で用いた原料である重量平均分子量10,000のポリヒドロキシスチレン樹脂のガラス転移温度は163℃であった。
【0045】
[比較例1〜4]
表3に示す成分を用い、実施例1と同様にしてポリヒドロキシスチレン樹脂の変性反応を行い、変性樹脂を得た。結果を下表に示す。
【0046】
【表3】
【0047】
次に、下記応用例の実施のため、実施例1で得られた樹脂溶液に、ピリジン2.76gを添加した後、減圧乾燥を行い、固形分として390gの試料1を回収した。
【0048】
[応用例1]
得られた試料1の固形分50gと上記式(2)で表されるCL−1を3g、式(3)で表される光酸発生剤PAG−1を0.3g、トリエタノールアミンを0.01g、界面活性剤X−70−093(信越化学工業(株)製)0.05gを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100gに溶解し、孔径0.5μmのメンブレンフィルターで濾過を行った。得られたネガ型レジスト溶液をシリコンウェハー上にスピンコート法を用いて塗布し、ホットプレートで100℃,120秒間のプリベークを行い、5μmの膜厚を得た。次に、ズース製マスクアライナーMA−8でマスクを介し、i線露光した後、ホットプレートで100℃,120秒間のPEBを行い、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)2.38質量%の現像液で150秒間現像し、30秒間純水でリンスした後、スピンドライを行った。得られた基板に対して電界放出形走査電子顕微鏡S−4700(商品名、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて観察したところ、10μmのラインとスペースの繰り返しパターンが問題なく形成されていることを確認した。
【0049】
【化5】
【0050】
次に、実施例1の樹脂溶液を減圧乾燥することによって得られた固形分50gとメタンスルホン酸1gをテトラヒドロフラン200gに溶解し、エチルビニルエーテル9.01gを氷浴中で滴下した。滴下終了後、トリエチルアミン3.2gを添加し、室温になるまで放置した。その後、0.1質量%酢酸でpHが4以下になるまで洗浄を行った後、純水中に溶液を滴下し、析出した固形分を回収した。更に、回収した固形分を減圧乾燥し、目的とする樹脂を57g得た。
【0051】
得られた樹脂50g、式(3)で表される光酸発生剤PAG−1を0.3g、トリエタノールアミンを0.01g、界面活性剤X−70−093(前出)0.05gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100gに溶解し、孔径0.5μmのメンブレンフィルターで濾過を行った。得られたポジ型レジスト溶液をシリコンウェハー上にスピンコート法を用いて塗布し、ホットプレートで100℃,120秒間のプリベークを行い、5μmの膜厚を得た。次に、ズース製マスクアライナーMA−8で露光した後、TMAH2.38質量%の現像液で150秒間現像し、30秒間純水でリンスした後、スピンドライを行った。得られた基板に対して電界放出形走査電子顕微鏡S−4700を用いて観察したところ、10μmのラインとスペースの繰り返しパターンが問題なく形成されていることを確認した。更に、この基板に対し、110℃,3分間の加熱を行い、加熱後の10μmのラインとスペースの繰り返しパターンを電子顕微鏡にて観察したところ、加熱前後で、パターンの矩形性等の形状及び寸法の変動が見られなかった。
【0052】
次に、比較例1の樹脂溶液を減圧乾燥することによって得られた固形分50gとメタンスルホン酸1gをテトラヒドロフラン200gに溶解し、エチルビニルエーテル9.01gを氷浴中で滴下した。滴下終了後、トリエチルアミン3.2gを添加し、室温になるまで放置した。その後、0.1質量%酢酸でpHが4以下になるまで洗浄を行った後、純水中に溶液を滴下し、析出した固形分を回収した。更に、回収した固形分を減圧乾燥し、目的とする樹脂を57g得た。得られた樹脂50g、式(3)で表される光酸発生剤PAG−1を0.3g、トリエタノールアミンを0.01g、界面活性剤X−70−093(前出)0.05gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100gに溶解し、孔径0.5μmのメンブレンフィルターで濾過を行った。得られたポジ型レジスト溶液をシリコンウェハー上にスピンコート法を用いて塗布し、ホットプレートで100℃,120秒間のプリベークを行い、5μmの膜厚を得た。次に、ズース製マスクアライナーMA−8を用いて露光波長としてi線を用いて露光した後、TMAH2.38質量%の現像液で150秒間現像し、30秒間純水でリンスした後、スピンドライを行った。得られた基板に対して電界放出形走査電子顕微鏡S−4700を用いて観察したところ、10μmのラインとスペースの繰り返しパターンが問題なく形成されていることを確認した。更に、この基板に対し、110℃,3分間の加熱を行い、加熱後の10μmのラインとスペースの繰り返しパターンを電子顕微鏡にて観察したところ、加熱後のパターン形状は、矩形性が低下し、基板接地部分のライン幅が太くなっていたことから、樹脂の耐熱性が低いために、パターンが熱フローにより変形したものと判断できた。