(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記成分(A)、前記成分(B)、及び前記成分(E)の合計を100質量部とした場合、前記成分(B)と前記成分(E)の合計の含有量が10質量部〜25質量部である、請求項4又は5に記載のプリプレグ。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の態様は、強化繊維と、マトリックス樹脂組成物を含むプリプレグであって、前記マトリックス樹脂組成物が、少なくとも成分(A):エポキシ樹脂、成分(B):ラジカル重合性不飽和化合物、及び成分(E):前記成分(B)がラジカル重合してなる重合体、を含むプリプレグ、及び前記プリプレグを製造する方法に存する。
なお本発明の態様において、離型紙と工程剥離紙は同義であり、これらとセパレートフィルムを総称して「工程剥離材」と称する。いずれも、少なくともプリプレグ前駆体作製時又はプリプレグ作製時のいずれかで用いられる部材であるが、完成したプリプレグに積層されたまま保管又は輸送されるか否かは問わない。
また「保護フィルム」とは、プリプレグに積層され、保管又は輸送時にプリプレグを保護する役割を果たすが、前記プリプレグ製造工程や、それに先立つプリプレグ前駆体製造工程において、既に前記プリプレグやプリプレグ前駆体の表面に積層されているか(つまり工程剥離材を兼ねているか)、或いは完成後のプリプレグに新たに積層されるかは問わない。
本発明の態様における「含浸用樹脂組成物」は、後述する強化繊維基材に含浸され、プリプレグ前駆体を構成する樹脂組成物を表す。一方「マトリックス樹脂組成物」は、プリプレグ中に含まれる樹脂組成物を表し、前記含浸用樹脂組成物に含まれる成分(B)が一部反応(重合)した後の樹脂組成物を意味する。
なお、本明細書において、「〜」は、この「〜」の前後に記載された数値及び比等を含む。
また、本明細書において、粘度は、30℃における値で定義する。即ち、本明細書に規定した範囲外の粘度であっても、30℃のおける粘度に補正したときに本明細書に規定した範囲の粘度の範囲の値であれば、それらは本発明の範囲に含まれる。
また、本明細書において、タック性及びタック値の指標は、気温23±3℃、湿度50±10%RHの環境下で測定した値と定義する。即ち、本明細書に規定した範囲外のタック性の指標であっても、気温23±3℃、湿度50±10%RHの環境下のおけるタック性の指標に補正したときに本明細書に規定した範囲のタック性の指標の範囲の値であれば、それらは本発明の範囲に含まれる。
より具体的かつ好ましくは、本発明のいくつかの態様は、以下の(1)〜(4)に記す第1〜第4の態様である。
以下、本発明の態様を順次詳細に説明する。
【0044】
(1)第1の態様
第1の態様は、強化繊維と、マトリックス樹脂組成物を含むシート状又はテープ状のプリプレグであって、
前記マトリックス樹脂組成物が、少なくとも成分(A):エポキシ樹脂、成分(B):ラジカル重合性不飽和化合物、成分(C):エポキシ樹脂硬化剤、及び成分(E):前記成分(B)がラジカル重合してなる重合体、を含み、
前記プリプレグの少なくとも片面に、マトリックス樹脂組成物の反応率が互いに異なる複数の領域を有する。
ここで、第1の態様におけるマトリックス樹脂組成物の反応率とは、マトリックス樹脂組成物中の成分(B)の反応率を意味する。すなわち、マトリックス樹脂組成物の反応率とは、マトリックス樹脂組成物に含まれる成分(B)全体に対し、成分(B)が反応して成分(E)になっている割合である。成分(B)が反応して成分(E)になっていることは、FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)によるATR法での構造解析にて確認することができる。また、成分(B)が反応して成分(E)になることによりマトッリクス樹脂組成物の粘度が局所的に変化するために、プリプレグ表面のタック変化を測定することにより確認できる。
また、第1の態様は以下のようにも表現できる。
(1−i)強化繊維と、エポキシ樹脂と(メタ)アクリレート樹脂を含むマトリックス樹脂とを含むプリプレグであって、前記プリプレグはシート状又はテープ状であり、その少なくとも片側の表面が互いに異なる前記マトリックス樹脂の反応率を持つ複数の領域で形成されているプリプレグ。
(1−ii)強化繊維と、エポキシ樹脂と(メタ)アクリレート樹脂を含むマトリックス樹脂とを含むプリプレグの製造方法であって、プリプレグ前駆体の少なくとも片側の表面に、紫外線、赤外線、可視光線、電子線の内、1種又は複数種のエネルギー波を照射することにより前記マトリックス樹脂の一部を反応させるプリプレグの製造方法。
(1−iii)さらに、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させる工程を有する、(1−ii)に記載の製造方法。
第1の態様に係るプリプレグの少なくとも片面は、プリプレグ表面のマトリックス樹脂組成物に含まれる成分(B)の反応率の水準において、複数に区分される領域で構成される。この複数の区分のうち、反応率が高い領域、すなわち成分(E)の含有量が相対的に多い領域は、前記表面のタック性が低い領域となる。低いタック性を持つ領域は、前記プリプレグの積層体を真空バック成形する間、特に、デバルクないし硬化の間に、積層体中に取り込まれた空気や揮発物を逃す経路を形成し、得られる成形体のボイド率をより低いものとする。
マトリックス樹脂組成物の反応率を区分するための水準の数は、基準となる水準(すなわちプリプレグ表面において、後述するエネルギー線が照射されていない部分の、成分(B)の反応率。以下同様。)以外に1以上の任意の自然数であることが可能であるが、基準となる水準を含め2つの水準に区分することで、実用的な観点からは第1の態様の効果を十分に得ることができる。水準の数を増やして、より複雑なパターンを形成したり、プリプレグ表面の反応率がグラデーションとなるようにしたりすることも可能である。
前記複数の領域は必要に応じて任意のパターン形状を有する。例えば、
図1及び
図2に記載されるように、プリプレグ表面の成分(B)の含有量が相対的に多い領域2と、成分(E)の含有量が相対的に多い領域1とのパターンは、閉じた曲線又は折れ線によって囲まれた島領域が不連続に分布した海島構造で構成される。この場合、個々の島領域の大きさは0.01cm
2から100cm
2が好ましく、成分(E)の含有量が相対的に多い領域1(反応率が相対的に高い領域、即ちタックが低くなる水準である領域)が海領域を形成することが好ましい。また、島領域と島領域の間の海領域の幅は1mmから100mmが好ましく、より好ましくは5mmから50mmである。
図3及び
図4に記載されるように、プリプレグ表面の成分(B)の含有量が相対的に多い領域2と、成分(E)の含有量が相対的に多い領域1とのパターンは、直線、曲線、折れ線、波線などの境界線で構成された縞構造で構成されてもよい。この場合、縞構造のパターンの幅(パターン長手方向に対する垂直方向の長さをパターンの幅とする)、すなわち成分(B)の含有量が相対的に多い領域2(マトリックス樹脂組成物の反応率が相対的に低い領域)及び成分(E)の含有量が相対的に多い領域1(マトリックス樹脂組成物の反応率が相対的に高い領域)の幅が、それぞれ1mmから100mmであることが好ましく、5mmから50mmであることがより好ましい。
これらのパターンは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
プリプレグ表面の成分(E)の含有量が相対的に多い領域の割合は、所望のプリプレグ物性によって自由に設定できるが、プリプレグの積層体を真空バック成形する間、特に、デバルクないし硬化の間に、積層体中に取り込まれた空気や揮発物を逃す経路を形成し、得られる成形体のボイド率をより低いものとするため、成分(E)の含有量が相対的に多い領域の面積がプリプレグ全面積に対して20%〜95%の間で設定されることが好ましい。
第1の態様は、強化繊維の目付が50g/m
2〜2000g/m
2であるプリプレグ、好ましくは強化繊維の目付が250g/m
2〜2000g/m
2であるプリプレグに適用すると、より効果的である。更に効果的であるのは、500g/m
2〜2000g/m
2のプリプレグであり、特に効果的であるのは、600g/m
2〜2000g/m
2のプリプレグである。
【0045】
(マトリックス樹脂組成物)
第1の態様におけるマトリックス樹脂組成物は、成分(A):エポキシ樹脂、成分(B):ラジカル重合性不飽和化合物、及び成分(E):前記成分(B)がラジカル重合してなる重合体、を含有する。
【0046】
<成分(A):エポキシ樹脂>
成分(A):エポキシ樹脂(以下、「エポキシ樹脂(A)」と称することがある)としては、例えば、グリシジルエーテル型、グリシジルアミン型、グリシジルエステル型、及び、脂環式エポキシ型のいずれかの型の、あるいはこれらの型から選ばれる2以上の型のエポキシ基が分子内に存在する化合物を用いることができる。
【0047】
グリシジルエーテル型のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば三菱化学株式会社製の“jER826”、“jER1001” 、“EPON825”、“jER826”、“jER827”、“jER828”、“jER1001”、DIC株式会社製の“エピクロン850”、新日鐵化学株式会社製の“エポトートYD−128”、ダウケミカル社製の“DER−331”、“DER−332”などが挙げられる。)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(例えば三菱化学株式会社製の“jER806”、“jER807”、“jER1750”、DIC株式会社製の“エピクロン830”、新日鐵化学株式会社製の“エポトートYD−170”、“エポトートYD−175”などが挙げられる。)、レゾルシノール型エポキシ樹脂(例えばナガセケムテックス株式会社製の“デナコールEX−201”などが挙げられる。)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(例えば三菱化学株式会社製の“jER152”、“jER154”、DIC株式会社製の“エピクロン740”、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ株式会社製の“EPN179”、“EPN180”などが挙げられる。)、エチレングリコール又はポリエチレングリコール型エポキシ樹脂(例えばナガセケムテックス株式会社製の“デナコールEX810”、“デナコールEX−861”、共栄社化学社製の“エポライト200E”などが挙げられる。)、プロピレングリコール又はポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂(例えばナガセケムテックス株式会社製の“デナコールEX−911”,“デナコールEX−941”,“デナコールEX−920”,“デナコールEX−921”,“デナコールEX−931”、共栄社化学株式会社製の“エポライト70P”,“エポライト200P”,“エポライト400P”、株式会社ダイセル製の“エポリードNT228”等が挙げられる。)、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂(例えば新日鐵化学株式会社製の“エポトート ZX−1355”などが挙げられる。)、イソシアネート変性エポキシ樹脂(旭化成エポキシ株式会社製の“AER4152”などが挙げられる。)、ジシクロペンタジエン骨格型エポキシ樹脂(例えばDIC株式会社製の“エピクロン HP−7200L”)、及びこれらの位置異性体、並びにアルキル基やハロゲン原子等の置換基を有する置換体、等がある。
【0048】
グリシジルアミン型のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の具体例としては、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(例えば住友化学株式会社製の“スミエポキシELM434”、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ株式会社製の“アラルダイトMY720”、“アラルダイトMY721”、“アラルダイトMY9512”、“アラルダイトMY9612”、“アラルダイトMY9634”、“アラルダイトMY9663”、三菱化学株式会社製の“jER604”などが挙げられる。)、ジグリシジルアニリン(例えば日本化薬株式会社製の“GAN、GOT”などが挙げられる。)、テトラグリシジルキシレンジアミン(例えば三菱ガス化学化学株式会社製の“TETRAD−X”などが挙げられる)などがある。
【0049】
グリシジルエステル型のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の具体例としては、フタル酸ジグリシジルエステル(例えば三井化学株式会社製の“エポミックR508”、ナガセケムテックス株式会社製の“デナコールEX−721”などが挙げられる。)、(メチル)テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、(メチル)ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル(例えば三井化学株式会社製の“エポミックR540”、日本化薬株式会社製の“AK−601”、などが挙げられる。)、イソフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル(例えば三菱化学株式会社製の“jER871”、新日鐵化学株式会社製の“エポトートYD−171”などが挙げられる。)や、それぞれの各種異性体などがある。
【0050】
脂環式エポキシ型のエポキシ基を有するエポキシ樹脂としては、シクロヘキセンオキシド基、トリシクロデセンオキシド基、シクロペンテンオキシド基等を有する化合物が代表的であり、具体的には、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ビニルシクロヘキセンモノエポキシド、(3’,4’−エポキシシクロヘキサン)メチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えば株式会社ダイセル製の“セロキサイド2021P”、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ株式会社製の“CY179”などが挙げられる。)、(3’,4’−エポキシシクロヘキサン)オクチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えば株式会社ダイセル製“セロキサイド2081”などが挙げられる。)、1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン(例えば株式会社ダイセル製“セロキサイド3000”などが挙げられる。)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチレン)アジペート、ビス(2−メチル−4,5−エポキシシクロヘキシルメチレン)アシペート等がある。
【0051】
グリシジルエーテル型とグリシジルアミン型の両方の型のエポキシ基を持つエポキシ樹脂の具体例としては、トリグリシジルアミノフェノールやトリグリシジルアミノクレゾール(例えば住友化学株式会社製の“スミエポキシELM−100”、“スミエポキシELM−120”、三菱化学株式会社製の“jER630”、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ株式会社製の“アラルダイトMY0500”、“アラルダイトMY0510”、“アラルダイトMY0600”、“アラルダイトMY0610”、新日鐵化学株式会社製の“エポトートYDCN−701”などが挙げられる。)等がある。
【0052】
これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらエポキシ樹脂の中でも、硬化したマトリックス樹脂組成物の耐熱性、靱性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。さらにはビスフェノールA型エポキシ樹脂とイソシアネート変性エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。
【0053】
<成分(B):ラジカル重合性不飽和化合物>
成分(B):ラジカル重合性不飽和化合物(以下、「ラジカル重合性不飽和化合物(B)」と称することがある)とは、ラジカル重合性不飽和結合、すなわち炭素−炭素二重結合あるいは三重結合を分子内に含む低分子化合物、高分子化合物又はオリゴマーのことである。ここで言う炭素−炭素二重結合あるいは三重結合を分子内に含む低分子化合物とは、炭素−炭素二重結合あるいは三重結合を分子内に含むモノマーのことを指し、分子量はおおよそ50〜1000のものが一般的である。オリゴマーは、モノマーが複数個(一般的には2〜100個)重合したものをいう。
【0054】
ラジカル重合性不飽和結合を分子内に含む低分子化合物としては、分子内に1つ以上の、例えば1〜6つのラジカル重合性不飽和結合を有する低分子化合物が挙げられる。例えば、(メタ)アクリレート化合物、アリルフタレート化合物、アリルイソフタレート化合物、アリルテレフタレート化合物、アリルシアヌレート化合物、などが挙げられる。なお、本発明において「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート又はメタアクリレート」を意味する。
好ましくは、アクリレート化合物及びメタクリレート化合物である。
【0055】
分子内に1つのラジカル重合性不飽和結合を有する低分子化合物としては、フェノキシエチルアクリレート(例えば大阪有機化学工業株式会社製の“ビスコート#192”)、エトキシジエチレングリコールアクリレート(例えば共栄社化学株式会社製の“ライトアクリレートEC−A”)、メトキシトリエチレングリコールアクリレート(例えば共栄社化学株式会社製の“ライトアクリレートMTG−A”)、メトキシジプロピレングリコールアクリレート(例えば共栄社化学株式会社製の“ライトアクリレートDPM−A”)、イソボルニルアクリレート(例えば共栄社化学株式会社製の“ライトアクリレートIB−XA”)、フェニルグリシジルエーテルアクリル酸付加物(例えばナガセケムテックス株式会社製の“デナコールアクリレートDA−141”)などが挙げられる。
【0056】
分子内に2つのラジカル重合性不飽和結合を有する低分子化合物としては、トリエチレングリコールジアクリレート(例えば共栄社化学株式会社製の“ライトエステル3EG−A”)、テトラエチレングリコールジアクリレート(例えば東亜合成化学工業株式会社製の“アロニックスM−240”)、ネオペンチルグリコールジアクリレート(例えば共栄社化学株式会社製の“ライトエステルNP−A”)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(例えば共栄社化学株式会社製の“ライトエステル1,6HX−A”)、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物ジアクリレート(例えば共栄社化学株式会社製の“ライトエステルBP−2PA”)、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物ジアクリレート(例えば三洋化成工業株式会社製の“ネオマーBA−641”)、水素化ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物ジアクリレート(例えば三洋化成工業株式会社製の“ネオマーHA−605”)、水素化ビスフェノールAエチレンオキシド付加物ジアクリレート(例えば三洋化成工業株式会社製の“ネオマーHA−601”)、ビスフェノールSエチレンオキシド付加物ジアクリレート(例えば東亜合成化学工業株式会社製の“アロニックスM−205”)、ジメチロールプロパントリシクロデカンジアクリレート(例えば共栄社化学株式会社製の“ライトエステルDCP−A”)、エチレングリコールジメタクリレート(例えば共栄社化学株式会社製の“ライトエステルEG”)、ジエチレングリコールジメタクリレート(例えば共栄社化学株式会社製の“ライトエステル2EG”)、トリエチレングリコールジメタクリレート(例えば三洋化成工業株式会社製の“ネオマーPM−201”)、1,4−ブタンジオールジメタクリレート(例えば共栄社化学株式会社製の“ライトエステル1・4BG”)、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート(例えば共栄社化学株式会社製の“ライトエステル1・6HX”)、グリセリンジメタクリレート(例えば共栄社化学株式会社製の“ライトエステルG−101P”)、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物ジメタクリレート(例えば共栄社化学株式会社製の“ライトエステルBP−2EM”)、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物ジメタクリレート、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)(2−ヒドロキシエチル)シアヌレート(例えば東亜合成化学工業株式会社製の“アロニックスM−215”)、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物(例えば共栄社化学株式会社製の“エポキシエステル3000A”、三菱レイヨン株式会社製の“ダイヤビーム UK6105”)、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物ジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物ジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物ジグリシジルエーテルアクリル酸付加物(例えば共栄社化学株式会社製の“エポキシエステル3002A”)、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物ジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物(例えば共栄社化学株式会社製の“エポキシエステル3002M”)、グリセロールジグリシジルエーテルアクリル酸付加物(例えば共栄社化学株式会社製の“エポキシエステル80MFA”)、ジグリシジルフタレートアクリル酸付加物(例えばナガセケムテックス株式会社製の“デナコールアクリレートDA−721”)、ジグリシジルテトラヒドロフタレートアクリル酸付加物(例えばナガセケムテックス株式会社製の“デナコールアクリレートDA−722”)、レゾルシノールジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物(例えばナガセケムテックス株式会社製の“デナコールアクリレートDA−201”)、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレートなどが挙げられる。
【0057】
分子内に3つのラジカル重合性不飽和結合を有する低分子化合物としては、トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば東亜合成化学工業株式会社製の“アロニックスM−309”)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(例えば東亜合成化学工業株式会社製の“アロニックスM−305”)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(例えば共栄社化学株式会社製の“ライトエステルTMP”)、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)シアヌレート(例えば東亜合成化学工業株式会社製の“アロニックスM−315”)、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート(例えば大阪有機化学工業株式会社製の“ビスコート3PA”)、グリセロールトリグリシジルエーテルアクリル酸付加物(例えばナガセケムテックス株式会社製の“デナコールアクリレートDA−314”)、トリアリルシアヌレートなどが挙げられる。また分子内に3つのラジカル重合性不飽和結合を有するオリゴマーとしては、ノボラック型グリシジルエーテルアクリル酸付加物(例えばDIC株式会社製“DICLITE UE−8740”)等が挙げられる。
【0058】
分子内に4つのラジカル重合性不飽和結合を有する低分子化合物としては、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(例えば共栄社化学株式会社製の“ライトエステルBP−4A”)、グリセリンジメタクリレートイソホロンジイソシアネート付加物(例えば共栄社化学株式会社製の“ウレタンアクリレートUA−101I”)、グリセリンジメタクリレートヘキサメチレンジイソシアネート付加物(例えば共栄社化学株式会社製の“ウレタンアクリレートUA−101H”)、グリセリンジメタクリレートトリレンジイソシアネート付加物(例えば共栄社化学株式会社製の“ウレタンアクリレートUA−101T”)などが挙げられる。
【0059】
分子内に5つのラジカル重合性不飽和結合を有する低分子化合物としては、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(例えば三洋化成工業株式会社製の“ネオマーDA−600”)などが挙げられる。
【0060】
分子内に6つのラジカル重合性不飽和結合を有する低分子化合物としては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(例えば共栄社化学株式会社製の“ライトエステルDPE−6A”)、ペンタエリスリトールトリメタクリレートイソホロンジイソシアネート付加物(例えば共栄社化学株式会社製の“ウレタンアクリレートUA−306I”)、ペンタエリスリトールトリメタクリレートヘキサメチレンジイソシアネート付加物(例えば共栄社化学株式会社製の“ウレタンアクリレートUA−306H”)、ペンタエリスリトールトリメタクリレートトリレンジイソシアネート付加物(例えば共栄社化学株式会社製の“ウレタンアクリレートUA−306T”)などが挙げられる。
【0061】
また本発明の第1の態様におけるラジカル重合性不飽和化合物(B)としては、末端、側鎖または主鎖の少なくともいずれかにラジカル重合性不飽和結合を有する高分子化合物又はオリゴマーを用いることができる。ここで、高分子化合物又はオリゴマーの主鎖とは、高分子化合物又はオリゴマーの最も長い直鎖のことをいう。高分子化合物又はオリゴマーの側鎖とは、主鎖に含まれる置換基から伸張した直鎖のことをいう。高分子化合物又はオリゴマーの末端とは、主鎖の両端をいう。
末端にラジカル重合性不飽和結合を有するものとして、例えば、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールの末端水酸基を、アクリル酸又はメタクリル酸でエステル化した化合物、酸成分としてマレイン酸又はフマル酸を含むポリエステル、ラジカル重合性不飽和結合を有する無水マレイン酸、ナジック酸無水物又はエチニル無水フタル酸などでアミノ末端を封止したポリイミド等が挙げられる。
主鎖にラジカル重合性不飽和結合を有する不飽和ポリエステル樹脂としては、例えば、オルソフタル酸系樹脂、イソフタル酸系樹脂、テレフタル酸系樹脂、ビスフェノール系樹脂、プロピレングリコール−マレイン酸系樹脂、ジシクロペンタジエンないしその誘導体を不飽和ポリエステル組成に導入したものが挙げられる。
なお、ラジカル重合性不飽和化合物(B)としては樹脂組成物の高粘度化抑制の観点から、上述の低分子化合物やオリゴマーが好ましい。
【0062】
ラジカル重合性不飽和化合物(B)は、ラジカル重合性不飽和結合とともに、エポキシ樹脂(A)と反応する部分構造を有する、低分子化合物、高分子化合物又はオリゴマーを用いることもできる。このような化合物を用いると、マトリックス樹脂の硬化物においてエポキシ樹脂(A)によって構成される高分子ブロックとラジカル重合性不飽和化合物(B)によって構成される高分子ブロックとの間に化学結合が形成され、モルフォロジーや物性を改良できる。
エポキシ樹脂(A)と反応する部分構造としては、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アルコキシメチル基、第1又は第2アミン、アミド、1,2−ジカルボン酸無水物構造、窒素含有複素環などが挙げられる。
【0063】
かかる化合物としては、例えば1つのラジカル重合性不飽和結合を有するものとして、2−アクリロイルオキシエチル水素フタレート(例えば大阪有機化学工業株式会社製の“ビスコート#2000”)、2−アクリロイルオキシプロピル水素フタレート(例えば大阪有機化学工業株式会社製の“ビスコート#2100”)、2−メタクリロイルオキシエチル水素フタレート(例えば共栄社化学株式会社製の“ライトエステルHO−MP”)、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート(例えば大阪有機化学工業株式会社製の“ビスコート#2311HP”)、無水マレイン酸、無水ナジック酸などが挙げられる。
また、2つのラジカル重合性不飽和結合を有するものとして、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸部分付加物(例えば昭和電工株式会社製の“リポキシSP−1509H1”)、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)2−ヒドロキシエチルシアヌレート(例えば東亜合成化学工業株式会社製の“アロニックスM−215”)などが挙げられる。
【0064】
後述する、プリプレグ表面におけるラジカル重合で、生成する高分子量成分が架橋構造を有し、プリプレグ表面にて大きな粘度増大効果が得られる観点から、ラジカル重合性不飽和化合物(B)としては、分子内に複数のラジカル重合性不飽和結合を有する化合物を用いるのが好ましい。
また、前記エポキシ樹脂(A)と反応する部分構造として、水酸基、カルボキシル基又はアミノ基を有する化合物がより好ましい。これはエポキシ樹脂(A)におけるエポキシ基がこれらの基と反応しやすいため、または前記エポキシ基が反応して生じる水酸基、カルボキシル基などとこれらの基との相互作用により親和性が高いためである。
【0065】
第1の態様に用いるラジカル重合性不飽和化合物(B)は、1種の化合物を単独で用いてもよいし、2種以上の化合物を併用してもよい。重合性及び含有する樹脂組成物の粘度上昇の高さからビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物が好ましい。
含浸用樹脂組成物において、成分(B)の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計を100質量部とした場合、10質量部から25質量部であることが好ましい。成分(B)の含有量が10質量部以上であるとプリプレグのタック値を制御しやすいため好ましい。成分(B)の含有量が25質量部以下であればプリプレグを積層硬化後の繊維強化複合材料中に大量の成分(B)が残存しないため繊維強化複合材料の強度が好ましい。
【0066】
<成分(C):エポキシ樹脂硬化剤>
第1の態様のマトリックス樹脂組成物及び含浸用樹脂組成物は、成分(C):エポキシ樹脂硬化剤(以下、「エポキシ樹脂硬化剤(C)」と称することがある)を含有することが好ましい。
エポキシ樹脂硬化剤(C)は、例えばアミン型、酸無水物(カルボン酸無水物等)、フェノール(ノボラック樹脂等)、メルカプタン、ルイス酸アミン錯体、オニウム塩、イミダゾールなどが挙げられるが、エポキシ樹脂(A)を硬化させうるものであればどのような構造のものでもよい。これらの中でも、アミン型の硬化剤が好ましい。これら硬化剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0067】
アミン型の硬化剤としては、例えばジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族アミン、ジエチレントリアミン等の脂肪族アミン、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、ジシアンジアミド、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、及びこれらの異性体、変成体などがある。これらの中でも、プリプレグの保存性に優れる点で、ジシアンジアミドが特に好ましい。
【0068】
エポキシ樹脂硬化剤(C)の硬化活性を高めるために、硬化助剤を併用してもよい。例えばエポキシ樹脂硬化剤(C)がジシアンジアミドである場合の硬化助剤は3−フェニル−1,1−ジメチル尿素、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(DCMU)、3−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−1,1−ジメチル尿素、2,4−ビス(3,3−ジメチルウレイド)トルエン等の尿素誘導体が好ましく、エポキシ樹脂硬化剤(C)がカルボン酸無水物やノボラック樹脂である場合の硬化助剤はトリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミンが好ましく、エポキシ樹脂硬化剤(C)がジアミノジフェニルスルホンである場合の硬化助剤は2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、フェニルジメチルウレア(PDMU)等のウレア化合物、三フッ化ホウ素モノエチルアミンや三塩化ホウ素アミン錯体等のアミン錯体が好ましい。
これらの中でもジシアンジアミドとDCMUの組み合わせが特に好ましい。
【0069】
<成分(D):ラジカル重合開始剤>
第1の態様のマトリックス樹脂組成物及び含浸用樹脂組成物は、成分(D):ラジカル重合開始剤(以下、「ラジカル重合開始剤(D)」と称することがある)を含有することが好ましい。
ラジカル重合開始剤(D)としては、例えばラジカルの発生のための刺激を紫外線又は可視光線の照射で行う場合、重合開始剤は紫外線又は可視光線の照射を受けて開裂、水素引き抜き、電子移動などの反応を起こす光重合開始剤を用いることができる。また、赤外線又は超音波の照射、加熱板の押し当てで行う場合、熱によりラジカルを発生する熱重合開始剤を用いることができる。
【0070】
光重合開始剤としては、特に制限なく公知の光重合開始剤を使用することができる。
具体的には、例えばベンゾフェノン、ω−ブロモアセトフェノン、クロロアセトン、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4´−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンジルメチルケタール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル-プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンなどのカルボニル系光重合開始剤が挙げられるが、これらには限定されない。
さらに、ジフェニルジスルフィド、ジベンジルジスルフィド、テトラエチルメチルアンモニウムスルフィドなどのスルフィド系光重合開始剤、ベンゾキノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノンなどのキノン系光重合開始剤、アジビスイソブチロニトリル、2、2´−アゾビスプロパン、ヒドラジンなどのアゾ系光重合開始剤、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどのチオキサントン系光重合開始剤、過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルペルオキシドなどの過酸化物系光重合開始剤、1−[4―(フェニルチオ)フェニル]−1,2―オクタンジオン−2−(O−ベンゾイルオキシム)、O-アセチル−1−[6−(2−メチルベンゾイル) −9−エチル−9H−カルバゾール−3−イル]エタノンオキシムなどのオキシムエステル化合物系光重合開始剤、オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸などのオキシフェニル酢酸エステル系光重合開始剤などが挙げられる。
これらの光重合開始剤を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
中でも、紫外線によりラジカルを発生し種々の樹脂への溶解性が高いことから1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル-プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンのようなα−ヒドロキシアルキルフェノンが好ましい。
【0071】
加熱によりラジカルを発生する熱重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物などを用いることができる。アゾ化合物としては、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(例えば和光純薬工業株式会社製の“V−70”などが挙げられる)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル(例えば和光純薬工業株式会社製の“V−65”などが挙げられる。)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(例えば和光純薬工業株式会社製の“V−60”などが挙げられる。)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル(例えば和光純薬工業株式会社製の“V−59”などが挙げられる。)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(例えば和光純薬工業株式会社製の“V−40”などが挙げられる。)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド(例えば和光純薬工業株式会社製の“V−30”などが挙げられる。)、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチル−バレロニトリル(例えば和光純薬工業株式会社製の“V−19”などが挙げられる。)等のアゾニトリル化合物、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド](例えば和光純薬工業株式会社製の“VA−080”などが挙げられる。)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド](例えば和光純薬工業株式会社製の“VA−082”などが挙げられる。)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド](例えば和光純薬工業株式会社製の“VA−085”などが挙げられる。)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド](例えば和光純薬工業株式会社製の“VA−086”などが挙げられる。)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジハイドレート(例えば和光純薬工業株式会社製の“VA−088”などが挙げられる。)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド](例えば和光純薬工業株式会社製の“VF−096”などが挙げられる。)、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)(例えば和光純薬工業株式会社製の“VAm−110”などが挙げられる。)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)(例えば和光純薬工業株式会社製の“VAm−111”などが挙げられる。)等のアゾアミド化合物、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)(例えば和光純薬工業株式会社製の“VR−110”などが挙げられる。)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)(例えば和光純薬工業株式会社製の“VR−160”などが挙げられる。)等のアルキルアゾ化合物等が挙げられる。有機過酸化物としては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2,2,5−トリメチルシクロヘキサン(例えば日油株式会社製の“パーヘキサ3M−95”)、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロドデカン(例えば日油株式会社製の“パーヘキサCD”、1,1,3,3−テトラメチルヒドロペルオキシド(例えば日油株式会社製の“パーオクタH”)、1,1−ジメチルブチルペルオキシド(例えば日油株式会社製の“パーヘキシルH”)、ビス(1−t−ブチルペルオキシ−1−メチルエチル)ベンゼン(例えば日油株式会社製の“パーブチルP”)、ジクミルペルオキシド(例えば日油株式会社製の“パークミルD”)、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン(例えば日油株式会社製の“パーヘキサ25B”)、t−ブチルクミルペルオキサイド(例えば日油株式会社製の“パーブチルC”)、ジ−t−ブチルペルオキサイド(例えば日油株式会社製の“パーブチルD”)、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン(例えば日油株式会社製の“パーヘキシン25B”)、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド(例えば日油株式会社製の“パーロイルL”)、デカノイルパーオキサイド(例えば三建化工株式会社製の“サンペロックス−DPO”)、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート(例えば三建化工株式会社製の“サンペロックス−CD”)、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート(例えば日油株式会社製の“パーロイルTCP”)、t−ブチル2−エチルペルヘキサノエート(例えば日油株式会社製の“パーブチルO”)、(1,1−ジメチルプロピル)2−エチルペルヘキサノエート(例えば化薬アクゾ株式会社製の“トリゴノックス121”)、(1,1−ジメチルブチル)2−エチルペルヘキサノエート(例えば化薬アクゾ株式会社製の“カヤエステルHO”)、t−ブチル3,5,5−トリメチルペルヘキサノエート(例えば日油株式会社製の“パーブチル355”)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(例えば日油株式会社製の“パーヘキシルI”)、t−ブチルオキシイソプロピルカーボネート(例えば日油株式会社製の“パーブチルI”)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート(例えば日油株式会社製の“パーブチルE”)、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド(例えば日油株式会社製の“パーブチルMA”)、t−ブチルパーオキシラウレート(例えば日油株式会社製の“パーブチルL”)、t−ブチルパーオキシベンゾエート(例えば日油株式会社製の“パーブチルZ”)などを用いることができる。これらの熱重合開始剤は単独でも、複数混合して用いてもよい。
【0072】
また、ラジカルを発生させる手段として、光重合開始剤と熱重合開始剤を併用しても良い。光重合開始剤と熱重合開始剤を併用した場合、光重合開始剤からラジカルを発生させる紫外線又は可視光線の照射、及び熱重合開始剤からラジカルを発生させる赤外線又は超音波の照射、加熱板の押し当てを同時あるいは順次行うことで、光重合開始剤と熱重合開始剤の両方からラジカルを発生させることができる。
<成分(E):成分(B)がラジカル重合してなる重合体>
【0073】
成分(E)は、前記成分(B):ラジカル重合性不飽和化合物がラジカル重合することによって得られる重合体である。また前記成分(E)は、前記成分(A)や成分(A)から誘導される化合物と化学結合を形成しても構わない。
成分(E)はプリプレグ表層部に局在することが好ましい。プリプレグの表層部とは、プリプレグの表面の任意の点から、プリプレグの厚み方向に進み、最初に到達する強化繊維の表面までのマトリックス樹脂組成物によって充填された空間をいう。
成分(E)がプリプレグ表層部に局在すると、プリプレグ表面のマトリックス樹脂組成物の粘度が高く、内部のマトリックス樹脂組成物の粘度が低くなるので、プリプレグのドレープ性を保ちつつプリプレグ表面のタック性を制御することができる。
【0074】
マトリックス樹脂組成物中の成分(B)と成分(E)の合計の含有量は、成分(A)と成分(B)と成分(E)の合計を100質量部とした場合、10質量部〜25質量部が好ましい。成分(B)と成分(E)の合計の含有量が、成分(A)と成分(B)と成分(E)の合計を100質量部とした場合、10質量部以上とすることにより十分なタック性制御効果が得られ、25質量部以下とすることにより、プリプレグを複数枚重ねて硬化させ、繊維強化複合材料を作製した場合に、その硬化度、強度、耐熱性及び層間結合力が低くなりにくい。
【0075】
<その他成分(任意成分)>
第1の態様におけるマトリックス樹脂組成物は、必要に応じて、第1の態様の効果を損なわない範囲で、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー及びエラストマーからなる群より選ばれた1種以上の成分を含有してもよい。これらの成分は、マトリックス樹脂組成物の粘度、貯蔵弾性率及びチキソトロピー性を適正化する役割があり、かつ、マトリックス樹脂組成物の硬化物の粘弾性を変化させたり、靭性を向上させたりする等の役割がある。これらの成分は、前述した各種成分と共に混合してもよいし、予めエポキシ樹脂(A)中に溶解しておいてもよい。
【0076】
第1の態様に用いることができる熱可塑性樹脂は、炭素−炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、尿素結合、チオエーテル結合、スルホン結合、イミダゾール結合及びカルボニル結合からなる群より選ばれた結合を主鎖に有する熱可塑性樹脂が好ましい。このような熱可塑性樹脂は、例えばポリアクリレート、ポリアミド、ポリアラミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン及びポリエーテルスルホン等がある。これらの中でも、耐熱性に優れることから、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン及びポリエーテルスルホンが特に好ましい。
【0077】
第1の態様におけるマトリックス樹脂組成物が熱可塑性樹脂を含有する場合、前記熱可塑性樹脂は、エポキシ樹脂(A)が有するエポキシ基との反応性の官能基を有することが、硬化物の靭性向上及び耐環境性維持の観点から好ましい。特に好ましい官能基は、カルボキシル基、アミノ基及び水酸基である。
【0078】
第1の態様におけるマトリックス樹脂組成物は、強化繊維基材に含浸させる時点で液状であれば、任意成分として常温で固体状の添加剤を含有してもよい。第1の態様に用いることができる常温で固体状の添加剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ジルコニア、粘土鉱物、タルク、雲母、フェライトなどの無機粒子や、カーボンナノチューブ、フラーレンなどの炭素質成分などが挙げられる。これらの固体状の添加剤には、未硬化のマトリックス樹脂組成物にチキソトロピー性を付与する効果、マトリックス樹脂組成物の硬化物の弾性率、耐熱性、疲労強度、及び/又は、耐摩耗性を向上させる効果がある。また、固体状の添加剤として金属、カーボンブラック、酸化銅、酸化スズなどの粒子を導電性向上のために含有させることもできる。固体状の添加剤の含有量は、マトリックス樹脂組成物の総質量に対して1重量%以上50質量%以下とすることが好ましい。
(含浸用樹脂組成物の粘度)
第1の態様における含浸用樹脂組成物は、30℃における粘度が12Pa・s〜40000Pa・sであることが好ましく、40Pa・s〜30000Pa・sであることがより好ましい。含浸用樹脂組成物の粘度の下限が12Pa・s未満であると、強化繊維基材への含浸操作において、後述するプリプレグ前駆体がその形状を保ち難くなる傾向がある。また40000Pa・sを超えると、強化繊維基材に含浸用樹脂組成物が含浸し難くなる傾向がある。
【0079】
含浸用樹脂組成物の30℃における粘度の下限は、50Pa・sがより好ましく、60Pa・sが更に好ましい。また30℃における粘度の上限は、20000Pa・sがより好ましく、10000Pa・sが更に好ましい。
特に、上記上限値より粘度が低い含浸用樹脂組成物は、後述する比較的FAW(Fiber Areal Weight)の高い強化繊維基材に対する含浸性が良好であり、航空機、風車翼、船舶、車両、建造物などの大型部材の製造に適した厚いプリプレグを容易に得ることができるため、好ましい。
【0080】
(含浸用樹脂組成物の調製)
含浸用樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂(A)、ラジカル重合性不飽和化合物(B)、及び必要に応じて使用されるエポキシ樹脂硬化剤(C)、ラジカル重合開始剤(D)、その他成分(任意成分)を混合して均一に調合したものである。各成分が均一に混練され、含浸用樹脂組成物が均一になる限り、従来から用いられる一般的な方法を採用することができる。
例えば、含浸用樹脂組成物を構成する各成分を同時に混合して調製してもよく、或いは、必要に応じて予めエポキシ樹脂(A)やラジカル重合性不飽和化合物(B)に、エポキシ樹脂硬化剤(C)、ラジカル重合開始剤(D)、その他添加物を適宜分散させたマスターバッチを調製し、これを用いて調製してもよい。混合操作には、三本ロールミル、プラネタリミキサー、ニーダー、万能攪拌機、ホモジナイザー、ホモディスペンサー等の混合機を用いることができる。
【0081】
(強化繊維基材)
第1の態様における強化繊維基材とは、多数の強化繊維で構成されたシート状又はテープ状の基材である。なお便宜上、比較的幅の広いものをシート、狭いものをテープと称しているが、強化繊維基材のサイズに制限は無い。
第1の態様に用いる強化繊維基材の形態は、連続繊維を一方向に引き揃えた形態、連続繊維を経緯にして織物とした形態、トウを一方向に引き揃え横糸補助糸で保持した形態、複数枚の一方向の強化繊維のシートを異なる方向に重ねて補助糸でステッチして留めマルチアキシャルワープニットとした形態、また、強化繊維を不織布とした形態などが挙げられる。
中でも連続繊維を一方向に引き揃えた形態、連続繊維を経緯にして織物とした形態、トウを一方向に引き揃え横糸補助糸で保持した形態、また複数枚の一方向の強化繊維のシートを異なる方向に重ねて補助糸でステッチして留めマルチアキシャルワープニットとした形態が好ましい。
第1の態様に係るプリプレグを硬化して得られる繊維強化複合材料の強度発現の観点からは、連続繊維を一方向に引き揃えた形態がさらに好ましい。
強化繊維基材の目付は、第1の態様により得られるプリプレグを用いて形成する繊維強化複合材料の、使用目的に応じて自由に設定できるが、50g/m
2〜2000g/m
2が実用的に好ましい範囲である。
なお、第1の態様に係るプリプレグにドレープ性を付与する為には、前述のような30℃における粘度が50Pa・s〜20000Pa・sの低粘度のマトリックス樹脂組成物を適用することが好ましく、その場合には、強化繊維基材の目付は250g/m
2〜2000g/m
2が好ましく、500g/m
2〜2000g/m
2がより好ましく、600g/m
2〜2000g/m
2が特に好ましい。
第1の態様における強化繊維基材を構成する強化繊維は、広範囲の適切な材料から選択することができるが、第1の態様の製造方法により、特に優れたプリプレグを供給するためには、炭素繊維又は黒鉛繊維が好適である。
第1の態様に用いることができる炭素繊維や黒鉛繊維としては、用途に応じてあらゆる種類の炭素繊維や黒鉛繊維を用いることが可能であるが、高い強度の繊維強化複合材料が得られる点から炭素繊維がより好ましい。用いられる炭素繊維の繊維径は3μm〜20μmのものが炭素繊維を製造しやすく、強度が高いため好ましい。ここで繊維径とは、それぞれの単繊維の断面の等面積円相当直径のことである。さらに、引張伸度1.5%以上3.0%未満の高強度炭素繊維が繊維強化複合材料の強度発現のため適している。
【0082】
(パターン)
第1の態様に係るプリプレグの少なくとも片面は、プリプレグ表面のマトリックス樹脂組成物の反応率の水準において複数に区分される複数の領域をパターンとして有する。つまり、第1の態様に係るプリプレグは、少なくとも片面に、マトリックス樹脂組成物の反応率が互いに異なる複数の領域を有する。
前記領域のパターン形状は必要に応じて任意の形状、例えば、
図3及び
図4に示される直線、曲線、折れ線、波線などの境界線で構成された縞構造、又は
図1及び
図2に示される閉じた曲線又は折れ線によって囲まれた島領域が不連続に分布した海島構造が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
マトリックス樹脂組成物の反応率が高い領域、つまり成分(E)(すなわち成分(B):ラジカル重合性不飽和化合物がラジカル重合してなる重合体)の含有量が多い領域は、マトリックス樹脂組成物の反応率が低い領域に比べてタック性が低い。よって、マトリックス樹脂組成物の反応率が高い領域がプリプレグの外周に到達していると、積層体(積層されたプリプレグ)中に取り込まれた空気や揮発物を逃す経路が、積層体外部に通じることになり、得られる成形体におけるボイド発生を抑制できるため好ましい。
マトリックス樹脂組成物の反応率を区分する水準は、基準となる水準以外に1以上の任意の自然数であることが可能であるが、基準となる水準を含め2つの水準に区分することで、実用的な観点からは第1の態様の効果を十分に得ることができる。水準の数を増やして、より複雑なパターンを形成したり、プリプレグ表面の反応率がグラデーションとなるようにしたりすることも可能である。
【0083】
第1の態様に係るプリプレグの少なくとも片面が、プリプレグ表面におけるマトリックス樹脂組成物の反応率の水準において2つの区分(反応率が相対的に高い領域と反応率が相対的に低い領域)を有する実施形態の場合で、縞構造のパターンの場合、縞構造のパターンの幅、すなわちマトリックス樹脂組成物の反応率が相対的に低い領域及び相対的に高い領域の幅が、それぞれ1mmから100mmであることが好ましく、5mmから50mmであることがより好ましい。同様な実施形態の場合で、海島構造のパターンの場合、個々の島領域の大きさは0.01cm
2から100cm
2が好ましく、反応率が相対的に高い領域(即ちタックが低くなる水準である領域)が海領域を形成することが好ましい。また、島領域と島領域の間の海領域の幅は1mmから100mmが好ましく、より好ましくは5mmから50mmである。
【0084】
好ましい実施形態により得られるプリプレグにおいては、マトリックス樹脂組成物の反応率が特定の水準であるそれぞれの領域に対して、断面積が十分小さく平滑性が高い底面を有する円筒形の棒、例えばガラス棒を、プリプレグ表面のパターンの領域に押し当て、引き剥がす際の感触でタックの違いを確認することができる。このタックの違いの測定方法は、後に詳細に説明する。
(プリプレグの製造方法)
第1の態様に係るプリプレグは、前記強化繊維を含む強化繊維基材に、成分(A):エポキシ樹脂、成分(B):ラジカル重合性不飽和化合物、及び成分(C):エポキシ樹脂の硬化剤を含む含浸用樹脂組成物を含浸させてプリプレグ前駆体を作製し、前記プリプレグ前駆体の少なくとも片面の一部に、紫外線、赤外線、可視光線及び電子線からなる群より選択される少なくとも1種又はのエネルギー波を照射することにより成分(B)の一部を反応させ、前記プリプレグ前駆体の表面に成分(E):前記成分(B)がラジカル重合してなる重合体、を生成させることにより得られる。
【0085】
プリプレグ前駆体は、公知の方法により、含浸用樹脂組成物を強化繊維基材に含浸させることにより得られる。例えば、離型紙などの工程剥離材の表面に所定量の含浸用樹脂組成物を塗工し、その表面に強化繊維基材を供給した後、押圧ロールを通過させるなどの手段により強化繊維基材に含浸用樹脂組成物を含浸させる、或いは、強化繊維基材に所定量の含浸用樹脂組成物を直接塗工した後、必要に応じて前記強化繊維基材を工程剥離材で挟んだ後、押圧ロールを通過させるなどの手段により、強化繊維基材に含浸用樹脂組成物を含浸させることによって製造できる。
【0086】
第1の態様に係るプリプレグは、少なくとも片面に、マトリックス樹脂組成物の反応率が異なる複数の領域を有する。
前記プリプレグ前駆体表面において、上述のエネルギー波を照射された領域に含まれる前記成分(B)は、ラジカル重合して成分(E)となるため、前記領域表面のタック性が低下する。
このようにエネルギー波が照射され、タック性が低下した領域と、照射されずに高いタック性を保った領域が、前述のように、第1の態様に係るプリプレグの表面でパターンを形成している。つまり、前記プリプレグの少なくとも片面の反応率において、複数の水準に区分される複数の領域から成るパターンを有する。
前記パターンは重合可能な成分(すなわち成分(B))を含む含浸用樹脂組成物を含浸した強化繊維基材の表面に対し、所望のパターンに一致した形状の領域に刺激を与えて(具体的には、前記エネルギー波を照射して)、含浸用樹脂組成物中の成分(B)の反応率を制御することで得ることができる。
ラジカル重合開始剤(D)として光重合開始剤を含む含浸用樹脂組成物を用いる場合、前記パターンは紫外線や可視光線をフォトマスクを介して照射する、あるいはレーザー光線の走査やシャッターで点滅させる照射方法によって得ることができる。用いる紫外線や可視光線の波長、照射量、照射時間は、所望のプリプレグ表面状態となるように適宜設定すればよい。
熱重合開始剤を含む含浸用樹脂組成物を用いる場合、前記パターンはマスクを介した赤外電子線照射による局所的加熱、超音波ホーンによる局所的加熱、或いはパターンの形状の凹凸を有する加熱ロールや加熱板による局所的加熱によって得ることができる。上記加熱装置によって加熱されるプリプレグの温度、時間は所望のプリプレグ表面状態となるように適宜設定すればよい。
更には、ラジカル重合開始剤(D)を必要としない電子線照射によるパターン形成の場合、前記パターンは含浸用樹脂組成物を含浸した強化繊維シートに電子線の走査や、シャッターで点滅させる照射方法によって得ることができる。用いる電子線の照射エネルギー、照射線量は所望のプリプレグ表面状態となるように適宜設定すればよい。
【0087】
パターンを形成するために用いるフォトマスクは、例えば、照射するエネルギー線の多くを透過する材質で形成された基材シート上に、照射するエネルギー線を吸収又は遮蔽する材質で形成された吸収又は遮蔽部を配置したもので、例えば紫外線の場合では、石英板、又は、ポリエステルなどの紫外線透過性のあるフィルムに、金属箔や金属粒子ないし無機粒子等の顔料で吸収及び/又は遮蔽部分を形成したものを用いることができる。或いは、金属板など、照射するエネルギー線を遮蔽する材料に開口部を設けたものを用いることができる。
吸収又は遮蔽部におけるエネルギー線の透過率を吸収又は遮蔽部分の材質や厚みで制御することによって、第1の態様のプリプレグの前駆体であるマトリックス樹脂組成物を含浸した強化繊維シートに照射されるエネルギー線の線量を制御することができる。
第1の態様のプリプレグにおいて好ましい実施形態は、反応率が高いマトリックス樹脂組成物がプリプレグの表層部のみに局在する(即ち、成分(E)がプリプレグ表層部に局在する)ものである。
よって、前記成分(B)をラジカル反応させるための刺激(好ましくはエネルギー波照射)の種類に応じ、また得られる成形品に求められる強度も勘案して、強化繊維の種類を選択すればよい。
例えば、成分(B)を反応させるために可視光線や紫外線を照射する場合には、これらを透過しない炭素繊維や黒鉛繊維などを使用することが好ましい。また赤外線を照射したり、加熱ロールや加熱板を接触させる場合には、ガラス繊維などの低熱伝導性の繊維が好ましい。
【0088】
(2)第2の態様
第2の態様は、強化繊維と、マトリックス樹脂組成物を含むプリプレグに関し、前記強化繊維が強化繊維シートを構成し、前記マトリックス樹脂組成物が、成分(A):エポキシ樹脂、成分(B):ラジカル重合性不飽和化合物、及び成分(E):前記成分(B)がラジカル重合してなる重合体と共に、成分(C):エポキシ樹脂硬化剤及び成分(D)ラジカルを発生する重合開始剤、をも含み、前記プリプレグの少なくとも片面において、押付け圧力40kPaで測定したタック値が70kPa以下であり、押付け圧力80kPaで測定したタック値が150kPa以上である。
また第2の態様に係るプリプレグロールは、連続したプリプレグがロール状に複数周巻かれて多層をなすプリプレグロールであって、前記プリプレグロール中で隣接する層をなすプリプレグ同士が相互に接している。なお、前記プリプレグロールを構成するプリプレグは、上述の第2の態様に係るプリプレグであることが好ましい。
また本発明の第2の態様は以下のようにも表現できる。
(2−i)マトリックス樹脂組成物と強化繊維シートを含むプリプレグであって、前記プリプレグの少なくとも片面において、プリプレグへの押付け圧力40kPaで測定したプリプレグのタック値が70kPa以下であり、プリプレグへの押付け圧力80kPaで測定したプリプレグのタック値が150kPa以上であるプリプレグ。
(2−ii)マトリックス樹脂組成物(I)が成分(A):エポキシ樹脂、成分(B):ラジカル重合性不飽和化合物、成分(C):エポキシ樹脂の硬化剤、成分(D):ラジカルを発生する重合開始剤、成分(E):ラジカル重合性不飽和化合物を単量体とする重合体を含む、前記(2−i)に記載のプリプレグ。
(2−iii)前記成分(E)が前記プリプレグの表層部に局在する、前記(2−ii)に記載のプリプレグ。
(2−iv)前記成分(A):エポキシ樹脂、成分(B):ラジカル重合性不飽和化合物、成分(E):ラジカル重合性不飽和化合物を単量体とする重合体の合計を100質量部とした場合、成分(B)と成分(E)の合計の含有量が10質量部〜25質量部である、前記(2−ii)又は(2−iii)に記載のプリプレグ。
(2−v)前記強化繊維が強化繊維束をひき揃えた強化繊維シートである前記(2−i)〜(2−iv)のいずれか一に記載のプリプレグ。
(2−vi)成分(A):エポキシ樹脂、成分(B):ラジカル重合性不飽和化合物、成分(C):エポキシ樹脂の硬化剤、成分(D1):紫外線もしくは可視光線の照射によりラジカルを発生する光重合開始剤を含む含浸用樹脂組成物を強化繊維シートに含浸させてプリプレグ前駆体シートを作製し、前記プリプレグ前駆体シートの少なくとも片方の表面の一部に紫外線もしくは可視光線の照射をすることを含むプリプレグの製造方法。
(2−vii)連続したプリプレグがロール状に複数周巻かれて多層をなすプリプレグロールであって、前記プリプレグロール中で隣接する層をなすプリプレグとプリプレグが相互に直接に接しているプリプレグロール。
(2−viii)前記(2−i)〜(2−v)のいずれか一に記載のプリプレグからなる、前記(2−vii)に記載のプリプレグロール。
【0089】
一般に、プリプレグのタック性は、触感による官能試験の他、傾斜式ボールタック法(例えばJIS Z 0237)、ローリングボールタック法、プローブタック法(例えばASTM D 2979)などによって評価及び測定される。中でもプローブタック法はプリプレグの特定表面のタック性を数値化することができるので、プリプレグの表面の特性を特定するのに優れた方法である。第2の態様におけるプリプレグのタック値の測定は、ASTM D 2979に基づいたプローブタック法と同様な結果をもたらす測定方法にて行う。プローブタック法を採用したタック測定装置としては、プローブタックテスター(テスター産業株式会社製、製品名:TE−6001)やタックテスター(UBM社製、製品名:TA−500)などが市販されている。
【0090】
第2の態様におけるプリプレグのタック値は、プローブタック法で測定した、後述の測定条件におけるプローブとプリプレグの接触面積あたりの剥離抵抗力である。前記タック値の測定に用いるプローブは、その一方の先端部がステンレス鋼製の所定の直径の円柱状で、端面が円柱の軸に対して垂直で平滑な検出面となっている。所定の測定環境下において、プリプレグを、その表面がプローブの検出面と平行であるように保持し、プローブをプローブ円柱の軸方向にプリプレグ側に所定の速度で前進させ、検出面をプリプレグに密着させる。プローブ円柱の軸方向プリプレグ側に荷重を負荷して、所定の押付け時間にわたり所定の押付け圧力を作用させる。その直後、プローブを所定の速度でプリプレグから後退させてプリプレグ表面から引き剥がす。この一連の動作の中でプリプレグとプローブを引き剥がすのに要した最大力の、プローブの検出面の面積当たりの値をタック値とする。
タック値の測定に用いるプローブの検出面の直径は8mm又は20mmである。測定環境は25±3℃、湿度50±10%RHとする。プローブの移動速度は前進、後退ともに0.2mm/sを採用したが、0.02mm/s〜2mm/sであればタック値の測定結果に大きな影響はない。プリプレグとプローブの検出面を密着させる押付け時間は30秒を採用したが、15秒〜60秒であればタック値の測定結果に大きな影響はない。プリプレグとプローブの検出面を密着させるプリプレグへの押付け圧力はタック値の測定値に大きく影響するので10kPa〜500kPaの範囲で精度良く、好ましくは±1kPaの精度で制御する必要がある。第2の態様のプリプレグのタック値は、プリプレグへの押付け圧力が40kPaの場合と80kPaの場合で測定した値である。
【0091】
プリプレグのタック値が適切な値であれば、プリプレグの積層操作において、プリプレグを成形型や他のプリプレグに強く押しあてることで型への貼り付きとプリプレグ同士の貼り付きを強固にすることができる。プリプレグを成形型や他のプリプレグに軽く押付けるだけで容易に仮止めすることができ、また仮止め状態の前記プリプレグを容易にリプレイスすることもできる。
具体的には、プリプレグへの押付け圧力80kPaで測定したタック値が150kPa以上であれば、前記プリプレグを成形型や他のプリプレグに押し付けることで、成形型への貼り付きとプリプレグ同士の貼り付きを強固にすることができる。押付け圧力80kPaで測定したタック値の上限に特に制限は無く、該タック値は高いほど好ましい。
押付け圧力40kPaで測定したタック値が70kPa以下であれば、成形型や他のプリプレグに軽く押付けるだけで容易に仮止めすることができ、仮止め状態の前記プリプレグを容易にリプレイスすることができる。押付け圧力40kPaで測定したタック値の下限値に特に制限は無いが、1kPa以上であると成形型や他のプリプレグに軽く押付けるだけで容易に仮止めすることができる。すなわち押付け圧力40kPaで測定したタック値は、1kPa以上70kPa以下が好ましい。
なお、仮止めとリプレイスを良好に行える点から、押付け圧力40kPaで測定したタック値は20kPa以上70kPa以下がより好ましい。
【0092】
(強化繊維シート)
第2の態様の強化繊維シートを構成する強化繊維は、繊維強化複合材料の使用目的に応じた様々なものが使用でき、具体例としては、炭素繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、タングステンカーバイド繊維、ガラス繊維などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。このなかでも、比強度、比弾性率に優れる点で、炭素繊維や黒鉛繊維が好適である。
【0093】
第2の態様に用いることができる炭素繊維や黒鉛繊維としては、用途に応じてあらゆる種類の炭素繊維や黒鉛繊維を用いることが可能であるが、引張伸度1.5%以上3.0%未満の高強度炭素繊維が繊維強化複合材料の強度発現のため適している。
【0094】
第2の態様に用いる強化繊維シートの形態としては、前記第1の態様における(強化繊維基材)の項で述べたものと同様の形態が挙げられる。好ましいものも、前述と同様である。
【0095】
(マトリックス樹脂組成物)
第2の態様のマトリックス樹脂組成物は、成分(A):エポキシ樹脂、成分(B):ラジカル重合性不飽和化合物、成分(C):エポキシ樹脂硬化剤、成分(D):ラジカルを発生する重合開始剤、及び成分(E):成分(B)がラジカル重合してなる重合体、を含む。
前記成分(A)〜(E)は、前記第1の態様における(マトリックス樹脂組成物)の項で述べたものと同様であり、好ましいものも同様である。また、第2の態様のマトリックス樹脂組成物が含有し得る任意成分についても、前記第1の態様のマトリックス樹脂組成物におけるものと同様である。
なお、成分(B)として(メタ)アクリレート基を有する化合物を含み、成分(D)として紫外線によってラジカルを発生するラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。
【0096】
(含浸用樹脂組成物の粘度)
第2の態様における含浸用樹脂組成物の粘度は、前記第1の態様における含浸用樹脂組成物の粘度と同様であり、好ましい粘度範囲やその理由も同様である。
【0097】
(含浸用樹脂組成物の調製)
第2の態様における含浸用樹脂組成物は、前記第1の態様における含浸用樹脂組成物と同様の方法にて調製することができる。
【0098】
(プリプレグの製造方法)
第2の態様に係るプリプレグは、前記第1の態様に係るプリプレグと同様の方法にて製造することができる。すなわち、マトリックス樹脂組成物を強化繊維シートに含浸させてプリプレグ前駆体を作製し、前記プリプレグ前駆体にエネルギー波を照射することにより、前記プリプレグ前駆体表面に存在する成分(B)の一部をラジカル重合させ、プリプレグを作製する。エネルギー波照射条件など、具体的な実施態様は、前記第1の態様における記載の通りである。
特に、第2の態様のプリプレグは、エネルギー波として紫外線又は可視光線を用いることが好ましい。
具体的には、成分(A):エポキシ樹脂、成分(B):ラジカル重合性不飽和化合物、成分(C):エポキシ樹脂の硬化剤、成分(D1):紫外線もしくは可視光線の照射によりラジカルを発生する光重合開始剤からなる含浸用樹脂組成物、を強化繊維シートに含浸してプリプレグ前駆体シートを製造し、前記プリプレグ前駆体シートの少なくとも片方の表面の一部に紫外線もしくは可視光線を照射することを含むプリプレグの製造方法である。
【0099】
紫外線又は可視光線の照射によりプリプレグを作製する場合、ラジカル重合開始剤(D)としては、紫外線又は可視光線の照射を受けて開裂、水素引き抜き、電子移動などの反応を起こす光重合開始剤、すなわち成分(D1):紫外線もしくは可視光線の照射によりラジカルを発生する光重合開始剤、を用いる。前記成分(D1)を用い、プリプレグ前駆体に紫外線もしくは可視光線を照射することで、プリプレグ表面に成分(E)が局在したプリプレグを製造することを容易に実現できるため好ましい。
成分(E)がプリプレグ表層部に局在すると表層部のマトリックス樹脂組成物の粘度が高く、内部のマトリックス樹脂組成物の粘度が低くなるのでプリプレグのドレープ性を保ちつつプリプレグ表面のタックを制御できる点で好ましい。
紫外線又は可視光線の照射量は、プリプレグのタック値が、プリプレグへの押付け圧力40kPaで測定したプリプレグのタック値が70kPa以下、プリプレグへの押付け圧力80kPaで測定したプリプレグのタック値が150kPa以上になるように、適宜設定すればよい。紫外線又は可視光線の照射量は、好ましくは300から700 mJ/cm
2である。
【0100】
(プリプレグロール)
第2の態様に係るプリプレグロールは、連続したプリプレグがロール状に複数周巻かれたプリプレグロールであって、前記プリプレグロール中で隣接する層をなすプリプレグとプリプレグが相互に接しているプリプレグロールである。
前記プリプレグロールの形態に特に限定は無いが、例えばプリプレグ幅0.1m〜2m、プリプレグ長さ5m〜200m程度のプリプレグが、直径20cm〜100cmの芯にロール状に巻かれたプリプレグロールなどが挙げられる。
第2の態様のプリプレグロールは、プリプレグ表面にセパレートフィルムや離型紙が配置されていないのでこれらを取り除く作業時間や作業労力がない。また、これらセパレートフィルムや離型紙が無いのでこれらの廃棄物が生じない。
第2の態様のプリプレグロールは、連続したプリプレグを円筒もしくは円柱の芯材に巻きつけることで容易に得られる。芯材は、紙管、プラスチック管、プラスチック円柱、金属管、金属円柱などを用いることができる。芯材は軽い方が好ましいので円筒が好ましい。その中でも低価格で入手できることから紙管が特に好ましい。
第2の態様のプリプレグロールには、前述の第2の態様に係るプリプレグが好適に用いられる。
前述した第2の態様に係るプリプレグは、その表面が適度なタック性を示すため、セパレートフィルムや離型紙、保護フィルムなどを積層することなく、プリプレグのみをロール状に巻いて保管及び輸送することができる。またロール中で互いに接しているプリプレグ同士が、強固に接着しすぎないため、ロール状のプリプレグから容易に巻き出して使用することができ、成形時のプリプレグ積層作業に要する時間や労力を削減し、併せて繊維強化複合材料製造工程における廃棄物の低減を可能とする。
【0101】
(3)第3の態様
第3の態様は、強化繊維と、マトリックス樹脂組成物を含むプリプレグであって、
前記プリプレグがシート状又はテープ状であり、
前記プリプレグの少なくとも片面に保護フィルムが積層され、
下記の前記プリプレグのタック性評価におけるタック性の指標が50g以上である。
(タック性評価)
厚み25μm、幅50mm、長さ250mmのポリエチレン製フィルムと、幅及び長さが各々50mm以上であるプリプレグを、前記プリプレグの一辺と前記ポリエチレン製フィルムの長手方向が直交し、且つ幅50mm、長さ50mmの範囲で接触するように前記ポリエチレンフィルムの自重のみで重ね合わせ、その重ね合わせ範囲に均一に荷重がかかるように錘を載せて60秒間保持した後、前記錘を取り除く。
続いて、前記ポリエチレン製フィルムの長さ50mmの辺のうち、前記プリプレグに接触していない辺を把持し、前記ポリエチレン製フィルムと前記プリプレグの重ね合わせに範囲に剥離力が負荷されない範囲で、これを剥離する方向へ移動する。
その後3秒以内に、前記ポリエチレン製フィルムが積層された前記プリプレグを静かに垂直に起こして保持する。
垂直での保持を開始してから10秒以内に、前記ポリエチレン製フィルムが前記プリプレグから完全に剥離するか否かを判定する。
5g、7g、15g、30g、60g、150g、300g、600g、及び1200gの9種類の錘を使用して試験を行い、10秒以内にポリエチレン製フィルムが剥がれない最も軽い錘の重量をタック性の指標の基礎値とする。また、1200gの錘を用いて判定した場合でも、前記ポリエチレン製フィルムが10秒以内に剥がれるときは1200gをタック性の指標の基礎値とする。
これを3回繰り返して、得られたタック性指標の基礎値の算術平均をタック性の指標とする。
前記プリプレグの曲がりを防ぐため、前記プリプレグの、前記ポリエチレン製フィルム積層面とは反対の面に、厚さ1mm、長さ35cm、幅20cmのステンレス製の板を積層する。ポリエチレン製フィルムは、廣積化工株式会社のポリロンフィルムLD(製品名)を用いる。なお、本評価の環境は気温23±3℃、湿度50±10%RHとする。
【0102】
また第3の態様は以下のようにも表現できる。
(3−i)強化繊維と、エポキシ樹脂と(メタ)アクリレート樹脂とを含むマトリックス樹脂とを含むシート状又はテープ状のプリプレグであって、前記プリプレグは前記タック性評価におけるタック性の指標が50g以上という相対的に低いタック性を有し、少なくとも片面にフィルムが貼付されたプリプレグ。
(3−ii)強化繊維と、エポキシ樹脂と(メタ)アクリレート樹脂とを含むマトリックス樹脂とを含むシート状又はテープ状のプリプレグ前駆体に保護フィルムを載置する工程を含むプリプレグの製造方法であって、プリプレグ前駆体の少なくとも保護フィルムを載置した片側の表面の一部にに、紫外線、赤外線、可視光線、電子線の内、1種又は複数種のエネルギー波を照射することによりマトリックス樹脂を反応させるプリプレグの製造方法。
(3−iii)前記プリプレグの製造方法は、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸する工程を有する、前記(3−ii)に記載の製造方法。
【0103】
第3の態様に係る保護フィルム付きプリプレグは、保護フィルムを剥離したプリプレグの表面が低タック性を有していても、製造工程中に載置した保護フィルムがプリプレグ表面に良好に密着した状態で保持されており、保護フィルムが剥がれ難いためプリプレグ表面に外来物が付着せず、繊維強化複合材料の物性及び外観品質の低下を回避することができる。また、プリプレグを所望の形状へカットする際に、保護フィルムが剥がれ難いため、取り扱い性に優れる。
【0104】
(マトリックス樹脂組成物)
第3の態様の保護フィルム付きプリプレグに用いるマトリックス樹脂組成物は、成分(A):エポキシ樹脂、成分(B):ラジカル重合性不飽和化合物、成分(C):エポキシ樹脂硬化剤、成分(D):ラジカル重合開始剤、及び成分(E):成分(B)がラジカル重合してなる重合体、を含有する。
前記成分(A)〜(E)は、前記第1発明における(マトリックス樹脂組成物)の項で述べたものと同様であり、好ましいものも同様である。また、第3発明のマトリックス樹脂組成物が含有し得る任意成分についても、前記第1発明のマトリックス樹脂組成物におけると同様である。
なお、成分(B)として(メタ)アクリレート基を有する化合物を含み、成分(D)として紫外線によってラジカルを発生するラジカル重合開始剤とを含むことが好ましい。
【0105】
(強化繊維)
第3の態様のプリプレグに用いられる強化繊維としては、前記第1の態様の(強化繊維基材)の項に記載したものと同様のものが挙げられる。好ましい材料も同様である。なお、前記強化繊維は、第1の態様と同様、強化繊維基材を構成していることが好ましい。
【0106】
(含浸用樹脂組成物の粘度)
第3の態様における含浸用樹脂組成物の粘度は、前記第1の態様における含浸用樹脂組成物の粘度と同様であり、好ましい粘度範囲やその理由も同様である。
【0107】
(含浸用樹脂組成物の調製)
第3の態様における含浸用樹脂組成物は、前記第1の態様における含浸用樹脂組成物と同様の方法にて調製することができる。
【0108】
(保護フィルム)
第3の態様に用いる保護フィルムの材質については特に制限はない。前記エネルギー線(前記第1の態様における「エネルギー波」と同義)が前記保護フィルムを透過して、マトリックス樹脂中のラジカル重合開始剤(D)をラジカル発生せしめることが可能であれば良い。
このような材質として、具体的には低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレ(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アイオノマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、各種ポリアミド、セロファンなどが挙げられる。
保護フィルムの材質は、使用するエネルギー線の透過性と、前記エネルギー線に刺激されてラジカルを発生するラジカル重合開始剤(D)の組み合わせで選択することになる。
例えば、エネルギー線として紫外線を用いた場合、水銀ランプを光源とする紫外線の主波長365nmは、構造中にπ電子共役系を持たないポリエチレン製フィルムやポリプロピレン製フィルムに対して十分な透過性があり、またメタルハライドランプを光源とする紫外線の様に200nmから450nmの広範囲にわたるスペクトルよりなる紫外線は、ポリエチレンテレフタレート製フィルムの様なπ電子共役系を有するものでも、ラジカル重合開始剤が反応を開始するのに十分な紫外線透過性がある。
中でも保護フィルムとしてはLDPE製フィルム又はPP製フィルムが好適に用いられる。
保護フィルムの厚みに特に制限はないが、保護フィルムの保護機能やフィルムの扱い易さを考慮すると20μm以上が好適に用いられ、25μm以上であることが更に好ましい。保護フィルム厚みが過大であると保護機能には優れていても保護フィルム付きプリプレグの製品重量が徒に増えて資源の浪費となるだけでなく、エネルギー線の透過率も低下するので、100μm以下が好適に用いられ、75μm以下であることが更に好ましい。
【0109】
(プリプレグの製造方法)
第3の態様に係るプリプレグの製造方法は、含浸用樹脂組成物調合工程と、含浸工程と、フィルム載置工程と、エネルギー線照射工程と、を有する。
【0110】
<含浸用樹脂組成物調合工程>
第1の態様の(含浸用樹脂組成物の調製)の項で述べた方法により、含浸用樹脂組成物を調製することができる。
【0111】
<含浸工程>
含浸工程は、工程剥離紙やセパレートフィルムなどの工程剥離材の表面に、所定量の前記含浸用樹脂組成物を塗工し、その表面に強化繊維基材を供給した後、押圧ロールを通過させるなどの手段により強化繊維基材に含浸用樹脂組成物を含浸させる、或いは、強化繊維基材に所定量の含浸用樹脂組成物を直接塗工した後、必要に応じて前記強化繊維基材を工程剥離材で挟んだ後、押圧ロールを通過させるなどの手段により、強化繊維基材に含浸用樹脂組成物を含浸させることによって製造できる。
【0112】
<保護フィルム積層工程>
保護フィルム載置工程は、上述の樹脂調合工程、及び含浸工程によって得たプリプレグ前駆体に、保護フィルムを密着性良く載置し、圧着することにより積層する工程である。
載置操作は、プリプレグ前駆体と保護フィルムの間に空気が取り込まれない限り、従来から用いられる一般的な方法を採用できる。例えば、金属製のロール、或いは表面にゴム巻き処理をしたロールによる圧着などの方法を用いることができる。
保護フィルムはプリプレグ前駆体の両面に載置及び圧着してもよいし、片面のみに載置及び圧着してもよい。
【0113】
なお第3の態様では、前記含浸工程においてセパレートフィルムとして保護フィルムを用いることで、本工程は省略することができる。
【0114】
<エネルギー線照射工程>
エネルギー線照射工程は、上述の各工程を経て得られた、保護フィルムを積層したプリプレグ前駆体の一部に、保護フィルムを通してエネルギー線を照射し、プリプレグ前駆体の保護フィルムを積層した面の表層部に存在するラジカル重合開始剤(D)にラジカルを発生させることにより、プリプレグ前駆体の深部に存在するラジカル重合性不飽和化合物(B)を重合させることなく、プリプレグ前駆体の表層部でのみ成分(B)を重合させたプリプレグを得る工程である。
【0115】
ここでプリプレグ前駆体の深部とは、プリプレグ前駆体の厚さ100%に対し、プリプレグ前駆体の保護フィルムを積層した表面からの厚み40%よりも深い部分をいう。またプリプレグ前駆体の表層部とは、プリプレグ前駆体の、保護フィルムに接した表面の任意の点から、プリプレグ前駆体の厚み方向に進み、最初に到達する強化繊維の表面までの含浸用樹脂組成物によって充填された空間をいう。
【0116】
エネルギー線の照射線量、保護フィルムのエネルギー線透過性、ラジカル重合開始剤のエネルギー線への反応性、ラジカル重合性不飽和化合物の反応性、プリプレグ前駆体のエネルギー線吸収係数等が総合的に作用して、エネルギー線照射後のプリプレグ表層部並びにプリプレグ深部におけるラジカル重合性不飽和化合物の反応率が決まるので、エネルギー線の照射条件はこれらを考慮して適宜決定する。
【0117】
エネルギー線の吸収はランバート・ベールの法則に従う。即ちIoを入射する前のエネルギー線強度、Iを厚さdの試料を透過したエネルギー線強度、αを吸収係数とすると、以下の関係が成り立つ。
Log(Io/I)=α・d
従ってこの関係において、特定の深さ、即ちプリプレグ前駆体の厚さ100%に対し、プリプレグ前駆体の、保護フィルムに接した表面から厚み40%の深さにおいてIが実質的にゼロ、即ち、ラジカル重合性不飽和化合物(B)の重合反応が実質的に開始されない条件でエネルギー線を照射することにより、プリプレグ前駆体の深部に存在するラジカル重合性不飽和化合物(B)を重合させることなく、プリプレグ前駆体の表層部にのみマトリックス樹脂組成物中の前記成分(E):前記成分(B)がラジカル重合してなる重合体、が含まれたプリプレグを得ることができる。
【0118】
第3の態様の保護フィルム付きプリプレグの製造方法には、エネルギー線として、紫外線、赤外線、可視光線、及び電子線からなる群から選択される少なくとも一種のエネルギー線を用いることができる。
なお、炭素繊維及び黒鉛繊維は、紫外線、赤外線及び可視光線を透過させないので、これらの光線を、炭素繊維又は黒鉛繊維を強化繊維とするプリプレグ前駆体に対して用いることにより、プリプレグ前駆体の表層部のみでラジカル重合性不飽和化合物(B)を重合させる条件が容易に実現されるため好ましい。
但し、可視光線はプリプレグ製造工程の作業と監視のために必要であるため、望ましい段階のみに照射して照射線量を厳密に制御するためには技術的な困難が伴う。また、赤外線に反応するラジカル重合開始剤(D)は温度によっても反応するため、プリプレグ前駆体の深さ方向におけるラジカル重合反応の制御のためには、赤外線照射時の熱除去を必要とする。従って、第3の態様には紫外線が最も好適に用いられる。
【0119】
(4)第4の態様
第4の態様は、以下の工程(1)〜(4)を有し、前記工程(4)にて回収された光透過性フィルムを再利用するプリプレグの製造方法に存する。
(1)成分(A):エポキシ樹脂、成分(B):ラジカル重合性不飽和化合物、成分(C):エポキシ樹脂硬化剤(C)、及び成分(D)ラジカル重合開始剤、を混合して含浸用樹脂組成物を調製する工程。
(2)前記含浸用樹脂組成物を、シート状又はテープ状の強化繊維基材に含浸させてプリプレグ前駆体を作製する含浸操作を含み、
前記含浸操作前に前記強化繊維基材の少なくとも一方の面に光透過性フィルムを積層する操作を有するか、
前記含浸操作後に得られた前記プリプレグ前駆体の少なくとも一方の面に光透過性フィルムを積層する操作を有する、
前記プリプレグ前駆体の少なくとも一方の面に光透過性フィルムが積層された第1積層体を作製する工程。
(3)前記第1積層体の光透過性フィルムが積層された面のうち少なくとも一方に、紫外線、赤外線、可視光線及び電子線からなる群より選択される少なくとも1種のエネルギー線を照射し、前記成分(B)を反応させてプリプレグを作製する工程。
なお、前記プリプレグは、その少なくとも一方の面に光透過性フィルムが積層されてなる第2積層体として得られる。
(4)前記第2積層体から、前記工程(3)でエネルギー線を照射された面の光透過性フィルムのうち少なくとも一方を引き剥がして回収する工程。
なお、前記工程(4)で回収したフィルムを、前記工程(2)における光透過性フィルムとして再利用することが好ましい。
第4の態様における光透過性フィルムは、セパレートフィルムのうち光透過性であるものに相当する。また前記光透過性フィルムは、プリプレグ前駆体及びプリプレグ製造時のセパレートフィルムとして使用された後、剥離せず、積層したままとすることにより、得られたプリプレグを保護する役割(すなわち前記第3の態様における保護フィルムと同様の役割)の項を果たしても良い。
第4の態様のプリプレグ製造方法における工程(4)では、低粘度のマトリックス樹脂組成物を用いた場合であっても、プリプレグから容易に光透過性フィルムを引き剥がすことができ、プリプレグの外観品質やプリプレグに安定したタック性を与える均質な表層樹脂が部分的に奪い去られることが無いため、良好な外観品質と取り扱い性を有するプリプレグを提供することができる。
【0120】
また前記工程(4)で回収される光透過性フィルムは、プリプレグ表層の、及びプリプレグ両耳端部からはみ出した(滲出した)マトリックス樹脂組成物の付着が抑制されており、良好なリサイクル性を有している。
以下、第4の態様を詳細に説明する。
【0121】
〔工程(1)〕
第4の態様のプリプレグ製造方法における工程(1)は以下の通りである。
(1)成分(A):エポキシ樹脂、成分(B):ラジカル重合性不飽和化合物、成分(C):エポキシ樹脂硬化剤、及び成分(D):ラジカル重合開始剤、を混合して含浸用樹脂組成物を調製する工程である。
【0122】
(含浸用樹脂組成物)
第4の態様における含浸用樹脂組成物は、成分(A):エポキシ樹脂、成分(B):ラジカル重合性不飽和化合物、成分(C):エポキシ樹脂硬化剤、及び成分(D):ラジカル重合開始剤、を含有する。
前記成分(A)〜(D)は、前記第1の態様における(含浸用樹脂組成物)の項で述べたものと同様であり、好ましい材料も同様である。また、第4の態様の含浸用樹脂組成物が含有し得る任意成分についても、前記第1の態様の含浸用樹脂組成物におけるものと同様である。
【0123】
(含浸用樹脂組成物の粘度)
第4の態様における含浸用樹脂組成物の粘度は、前記第1の態様の(含浸用樹脂組成物の粘度)の項に記した通りであるが、特に、第4の態様に係るプリプレグの製造方法は、低粘度の含浸用樹脂組成物を使用した場合でも、工程中で使用する剥離材(光透過性フィルム)を好適に再利用できるという利点を有する。
例えば、30℃における粘度が12Pa・s〜1500Pa・s、特に12Pa・s〜1000Pa・sであるような低粘度の含浸用樹脂を使用した場合でも、後述する工程(4)にてプリプレグから容易に光透過性フィルムを引き剥がすことができ、プリプレグの外観品質やプリプレグに安定したタック性を与える均質な表層樹脂が部分的に奪い去られることが無いため、良好な外観品質と取り扱い性を有するプリプレグを提供することができる。すなわち、第4の態様の効果がより顕著である。
【0124】
(含浸用樹脂組成物の調製)
第4の態様における含浸用樹脂組成物は、前記第1の態様における含浸用樹脂組成物と同様の方法にて調製することができる。
【0125】
〔工程(2)〕
第4の態様のプリプレグ製造方法における工程(2)は以下の通りである。
(2)前記マトリックス樹脂組成物を、シート状又はテープ状の強化繊維基材に含浸させてプリプレグ前駆体を作製する含浸操作を含み、前記含浸操作前に前記強化繊維基材の少なくとも一方の面に光透過性フィルムを積層する操作を有するか、前記含浸操作後に得られた前記プリプレグ前駆体の少なくとも一方の面に光透過性フィルムを積層する操作を有し、前記プリプレグ前駆体の少なくとも一方の面に光透過性フィルムが積層された第1積層体を作製する工程である。
【0126】
(強化繊維基材)
第4の態様における強化繊維基材とは、多数の強化繊維で構成されたシート状又はテープ状の基材である。なお便宜上、比較的幅の広いものをシート、狭いものをテープと称しているが、強化繊維基材のサイズに制限は無い。
前記強化繊維基材及びこれを構成する強化繊維については、前記第1の態様の(強化繊維基材)の項に記載したものと同様のものが挙げられる。好ましい材料も同様である。
【0127】
(光透過性フィルム)
第4の態様に用いる光透過性フィルムは紫外線を透過すれば良く、材質については特に制限はないが、少なくとも片面にシリコーン被膜を有すること等による離型性を有し、温度変化の大きな環境下での寸法安定性、引張弾性率、引張強度、耐熱性を有し、プリプレグ製造工程の通過に耐えうるものであることが好ましい。また、得られるプリプレグの品質に影響する良好な平滑性を有し、後述する工程(3)において照射するエネルギー線を透過し、マトリックス樹脂組成物中のラジカル重合開始剤(D)がラジカル発生反応を開始することが可能なものであれば良い。
エネルギー線の波長と、前記エネルギー線の光透過性及びフィルム透過性について説明すると、例えば水銀ランプを光源とする紫外線の主波長365nmは、構造中にπ電子共役系を持たないポリエチレン製フィルムやポリプロピレン製フィルムに対して十分な透過性があり、またメタルハライドランプを光源とする紫外線の様に200nmから450nmの広範囲にわたるスペクトルよりなる紫外線は、ポリエチレンテレフタレート製フィルムの様なπ電子共役系を有するものでも、ラジカル重合開始剤(D)が反応を開始するのに十分な透過性がある。
フィルムに適した熱可塑性樹脂として中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリイミド等が知られている。中でもプリプレグ前駆体の製造時に剥離材として用いられる光透過性フィルムは、引張強度、耐熱性の点からポリエステルフィルムやポリプロピレンフィルムが好適に用いられる。
光透過性フィルムの厚みに特に制限はないが、フィルムとしての強度や工程通過信頼性、取り扱い易さを考慮すると19μm以上が好適に用いられ、25μm以上であることが更に好ましい。一方、前記光透過性フィルムの厚みが過大であると弾性率や強度の点で工程通過性の信頼性は増しても、工程フィルムを載置したままのプリプレグの製品重量が徒に増えて資源の浪費となるだけでなく、マトリックス樹脂組成物が強化繊維中に含浸する際に必要な熱伝導性や、プリプレグ前駆体に照射する光の透過性も低下する為、150μm以下が好適に用いられ、100μm以下であることが更に好ましい。すなわち、光透過性フィルムの厚みは、19μm以上150μm以下が好ましく、25μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0128】
(第1積層体の作製方法)
第1積層体は、前記強化繊維基材に前記含浸用樹脂組成物を含浸させたもの、すなわちプリプレグ前駆体、の少なくとも一方の面に、前記光透過性フィルムが積層されたものである。
前記含浸用樹脂を強化繊維基材に含浸させる操作については、特に制限は無いが、例えば以下の方法が挙げられる。
(a)一対の剥離材の、互いに対向する面のうち少なくとも一方に前記含浸用樹脂組成物の層を形成した後、前記一対の剥離材の間に、前記シート状又はテープ状の強化繊維基材を挟持して、押圧ロールを通過させる等の手段により加圧し、前記強化繊維基材に前記含浸用樹脂組成物を含浸させる方法。
(b)前記シート状又はテープ状の強化繊維基材の少なくとも一方の面に、前記含浸用樹脂組成物を直接塗工し、前記含浸用樹脂組成物層を形成した後、押圧ロールを通過させる等の手段により加圧し、前記含浸用樹脂組成物を前記強化繊維基材に含浸させる方法。
【0129】
上記(a)の方法において、剥離材としては、前記光透過性フィルムや剥離紙が使用できる。剥離紙としては、少なくとも一方の面にシリコーン被膜を有する上質紙等、プリプレグ前駆体の製造に用いられる公知の剥離紙(離型紙)を用いることができる。なお、剥離材として光透過性フィルムを使用すると、より少ない操作で第1積層体を得ることができるため好ましい。
【0130】
第4の態様の工程(2)につき、より具体的な例を工程(2−1)〜(2−6)として以下に示す。
(2−1)一方が光透過性フィルムであり、他方が光透過性フィルム又は剥離紙である、一対の剥離材を使用し、前記一対の剥離材の、互いに対向する面のうち少なくとも一方に前記含浸用樹脂組成物の層を形成した後、前記一対の剥離材の間に、シート状又はテープ状の強化繊維基材を挟持して加圧することにより、前記強化繊維基材に前記含浸用樹脂組成物を含浸させてプリプレグ前駆体を作製し、前記プリプレグ前駆体の少なくとも一方の面に光透過性フィルムが積層された第1積層体を作製する工程。
(2−2)一対の剥離紙の、互いに対向する面のうち少なくとも一方に前記含浸用樹脂組成物の層を形成した後、前記一対の剥離紙の間に、シート状又はテープ状の強化繊維基材を挟持して加圧することにより、前記強化繊維基材に前記マトリックス樹脂組成物を含浸させてプリプレグ前駆体を作製し、前記プリプレグ前駆体の少なくとも一方の面から前記剥離紙を引き剥がし、前記剥離紙の代わりに光透過性フィルムを積層して、第1積層体を作製する工程。
(2−3)一対のシート状又はテープ状の強化繊維基材を、互いに対向する面のうち少なくとも一方に前記含浸用樹脂組成物の層を形成した後、密着させ、前記密着した一対の強化繊維基材を、一方が光透過性フィルムであり、他方が光透過性フィルム又は剥離紙である一対の剥離材で挟持して加圧することにより、前記マトリックス樹脂組成物を前記一対の強化繊維基材に含浸させてプリプレグ前駆体を作製し、前記プリプレグ前駆体の少なくとも一方の面に、光透過性フィルムが積層された第1積層体を作製する工程。
(2−4)一対のシート状又はテープ状の強化繊維基材を、互いに対向する面のうち少なくとも一方に前記含浸用樹脂組成物の層を形成した後、密着させ加圧することにより、前記含浸用樹脂組成物を前記一対の強化繊維基材に含浸させてプリプレグ前駆体を作製し、前記プリプレグ前駆体の少なくとも一方の面に、光透過性フィルムを積層して、第1積層体を作製する工程である。
(2−5)シート状又はテープ状の強化繊維基材の少なくとも一方の面に、前記含浸用樹脂組成物の層を形成した後、前記強化繊維基材を、他の一対のシート状又はテープ状の強化繊維基材で挟み、これをさらに、一方が光透過性フィルムであり、他方が光透過性フィルム又は剥離紙である一対の剥離材で挟持して加圧することにより、前記3枚の強化繊維基材に前記含浸用樹脂組成物を含浸させてプリプレグ前駆体を作製し、前記プリプレグ前駆体の少なくとも一方の面に、光透過性フィルムが積層された第1積層体を作製する工程。
(2−6)シート状又はテープ状の強化繊維基材の少なくとも一方の面に、前記含浸用樹脂組成物の層を形成した後、前記強化繊維基材を、他の一対のシート状又はテープ状の強化繊維基材で挟んで加圧することにより、前記3枚の強化繊維基材に前記含浸用樹脂組成物を含浸させてプリプレグ前駆体を作製し、前記プリプレグ前駆体の少なくとも一方の面に、光透過性フィルムを積層して、第1積層体を作製する工程である。
【0131】
強化繊維基材に含浸用樹脂組成物の層を直接成形することで、剥離材表面に前記樹脂組成物フィルム形成が困難な程の、非常に低粘度の含浸用樹脂組成物を使用可能である点からは、工程(2−3)、(2−4)、(2−5)及び工程(2−6)が好ましく、工程(2−3)がより好ましい。
また剥離材とプリプレグ前駆体の界面への空気の混入を防ぎ、前記プリプレグ前駆体と剥離材の密着性や、酸素によるラジカル重合の阻害を抑制可能である点からは、工程(2−1)、(2−3)及び工程(2−5)が好ましく、工程(2−3)がより好ましい。
【0132】
なお、第1積層体が、プリプレグ前駆体の両面に光透過性フィルムが積層されたものである場合、続く工程(3)(プリプレグ前駆体の表面の増粘工程)において、プリプレグ前駆体の両面を増粘することができる。結果として得られたプリプレグ同士は互いに融着せず、これを巻きとってプリプレグロールとする際には、分離材としての工程剥離材等が不要となるため好ましい。
このような第1積層体を得るには、例えば前記工程(2)のうち(2−1)、(2−3)又は(2−5)において、前記一対の剥離材としていずれも光透過性フィルムを選択するか、或いは前記工程(2−2)、(2−4)又は(2−6)において、前記プリプレグ前駆体を作製した後、その両面に光透過性フィルムを積層することにより得ることができる。
【0133】
第4の態様の工程(2)では、積層体に用いる光透過性フィルムの材質を適当に選択することで、後の工程(3)において、エネルギー線照射によるプリプレグの表面増粘が可能である。すなわち、プリプレグ前駆体の表層部に含まれる、含浸用樹脂組成物中存在するラジカル重合開始剤(D)にラジカルを発生させて、プリプレグ前駆体の表層部でのみラジカル重合性不飽和化合物(B)を重合させることが可能である。また前記光透過性フィルムが、第4の態様の製造方法により得られるプリプレグの保護フィルムとしての役割を担うことが可能となる。
【0134】
〔工程(3)〕
第4の態様のプリプレグ製造方法における工程(3)は、以下の通りである。
(3)前記第1積層体の光透過性フィルムが積層された面のうち少なくとも一方に、紫外線、赤外線、可視光線及び電子線の内少なくとも1種のエネルギー線を照射し、前記成分(B)を反応させてプリプレグを作製する工程である。
なお、前記プリプレグは、その少なくとも一方の面に光透過性フィルムが積層されてなる第2積層体として得られる。
【0135】
(エネルギー線)
前記工程(3)で使用するエネルギー線は、紫外線、赤外線、可視光線及び電子線から選ばれる少なくとも1種である。これらのうち、プリプレグの表層の含浸用樹脂組成物のみを反応させて増粘し、一方で内層(深部)の前記含浸用樹脂組成物は反応させず、ドレープ性を有するプリプレグが容易に得られる点から、紫外線又は可視光線が好ましく、取扱性や不意な反応開始を防ぐ反応制御の観点から、紫外線が特に好ましい。
紫外線を使用する場合、その光源としては特に制限なく、例えばキセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、蛍光ランプなどのランプ光源や、アルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、窒素レーザー、ヘリウムカドミニウムレーザー、半導体レーザーなどのレーザー光源などが挙げられる。
なお前述のように、前記工程(2)で得られる第1積層体が有する光透過性フィルムとしては、工程(3)で使用する光源からの光に対する透過率が高いものを選択することが好ましい。
【0136】
(表面増粘)
工程(3)では、前記第1積層体(A)の光透過性フィルムが積層された面に対しエネルギー線を照射することにより、前記プリプレグ前駆体の、深部に存在するラジカル重合性不飽和化合物(B)を重合させることなく、表層部に存在するラジカル重合開始剤(D)だけにラジカルを発生させて、表層部でのみラジカル重合性不飽和化合物(B)が重合したプリプレグを得る。なお、プリプレグの表層部でのみ重合反応が生じているので、結果的にプリプレグの表面が増粘しているとも言える。
【0137】
ここでプリプレグ前駆体の深部とは、プリプレグ前駆体の厚さ100%に対し、プリプレグ前駆体の光透過性フィルムを積層した表面からプリプレグ前駆体の厚さ方向に40%よりも深い部分をいう。
またプリプレグ前駆体の表層部とは、プリプレグ前駆体の光透過性フィルムを積層した表面の任意の点から、プリプレグ前駆体の厚み方向に進み、最初に到達する強化繊維の表面までの含浸用樹脂組成物によって充填された空間をいう。
【0138】
エネルギー線の照射線量(照射エネルギー)、光透過性フィルムのエネルギー線透過性、ラジカル重合開始剤(D)のエネルギー線に対する反応性、ラジカル重合性不飽和化合物(B)の反応性、プリプレグ前駆体のエネルギー線吸収係数等が総合的に作用して、エネルギー線照射後のプリプレグ表層部並びに深部におけるラジカル重合性不飽和化合物(B)の反応率が決まるので、エネルギー線の照射条件はこれらを考慮して適宜決定する。
【0139】
エネルギー線が紫外線である場合、前記プリプレグ前駆体の紫外線吸収係数はランバート・ベールの法則に従う。即ちIoを入射する前の紫外線強度、Iを厚さdの試料を透過した紫外線強度、αを吸収係数とすると、以下の関係が成り立つ。
Log(Io/I)=α・d
従ってこの関係において、特定の深さ、即ちプリプレグ前駆体の厚さ100%に対し、プリプレグ前駆体の光透過性フィルムを積層した表面からプリプレグ前駆体の厚さ方向に40%の深さにおいてIが実質的にゼロ、即ち、ラジカル重合性不飽和化合物の重合反応が実質的に開始されない条件で紫外線を照射することにより、プリプレグ前駆体の深部に存在するラジカル重合性不飽和化合物(B)を重合させることなく、表層部でのみラジカル重合性不飽和化合物(B)が重合したプリプレグを得ることができる。
【0140】
なお、炭素繊維及び黒鉛繊維は紫外線を透過させないので、工程(3)におけるエネルギー線として紫外線を使用する場合、炭素繊維又は黒鉛繊維からなる強化繊維基材を使用することにより、これを含むプリプレグ前駆体の表層部のみでラジカル重合性不飽和化合物(B)を重合させる条件が容易に実現されるため好ましい。
工程(3)において使用する第1積層体が、プリプレグ前駆体の両面に光透過性フィルムが積層されたものである場合、前記エネルギー線は第1積層体の両面に照射することが好ましい。両面に照射することにより、例えば後述する工程(4)において、プリプレグの光透過性フィルムを剥離しない面のタック性も良好に制御されるため、前記プリプレグを用いて繊維強化複合材料を製造する際の取扱い性が更に向上する。
工業的なプリプレグ製造プロセスにおいては、前記第1積層体を作製する際に、前記プリプレグ前駆体より大きな光透過性フィルムを使用する場合がある。このような第1積層体において、前記プリプレグ前駆体の端部から含浸用樹脂組成物が滲出し、前記光透過性フィルムに付着する場合がある。
第4の態様のプリプレグ製造方法によると、本工程(3)において、この滲出して光透過性フィルムに付着した含浸用樹脂組成物に対してもエネルギー線を照射することにより、これを硬化させることができ、続く工程(4)にて、マトリックス樹脂組成物が付着していない、再利用に適した状態の光透過性フィルムを回収することができる。
【0141】
〔工程(4)〕
第4の態様のプリプレグ製造方法における工程(4)は以下の通りである。
(4)前記第2積層体から、前記工程(3)でエネルギー線を照射された面の光透過性フィルムのうち少なくとも一方を引き剥がして回収する工程である。
【0142】
光透過性フィルムの引き剥し操作には、従来から用いられる一般的な方法を採用できる。例えば、第2積層体からプリプレグを引取りながら、第2積層体にフィルム引き剥しガイドロールを押し当てて光透過性フィルムを引っ張り、プリプレグ製造ラインと同速で、巻取り装置によりフィルムを連続的に引き剥がす方法を用いることができる。
前記第2積層体が、プリプレグの両面に光透過性フィルムが積層されたものであり、かつ両面に対してエネルギー線を照射されて得られたものである場合、本工程(4)において、一方の面に積層された光透過性フィルムのみ引き剥がして回収することが好ましい。
特にマトリックス樹脂組成物が低粘度である場合、プリプレグ中で前記組成物が強化繊維同士を繋ぎ止めておく力が弱く、プリプレグが解れやすい。もう一方の面に積層された光透過性フィルムを剥がさずに残すことにより、前記フィルムが支持体となりプリプレグの形態保持性を高めるという利点がある。
【0143】
〔光透過性フィルムの再利用〕
前記工程(4)で回収された光透過性フィルムは、プリプレグ表層の、及びプリプレグ両耳端部からはみ出した、マトリックス樹脂組成物の付着が抑えられていて、良好なリサイクル性を有している。このように良好な状態で回収した前記フィルムは、前記工程(2)における光透過性フィルムとして繰り返し再利用する事ができる。なお、光透過性フィルムの種類、形状、剥離材の固着安定性等によって異なるが、光透過性フィルムの耐久性の点から、再利用の回数は通常1〜4回程度である。
具体的には、前記工程(2−1)、(2−3)及び(2−5)において、強化繊維基材へのマトリックス樹脂の含浸操作に使用する剥離材として利用してもよく、或いは前記工程(2−2)、(2−4)及び(2−6)において、得られたプリプレグ前駆体の表面に積層する光透過性フィルムとして利用してもよい。
また、前記工程(3)にて得られた前記第2積層体が、プリプレグの両面に光透過性フィルムが積層され、かつ前記両面に対してエネルギー線を照射されて得られたものであり、続く前記工程(4)において、前記第2積層体の一方の面に積層された光透過性フィルムのみ引き剥がして回収する場合において、回収された光透過性フィルムは、前記工程(4)にて回収しない光透過性フィルムとして再利用しても、引き剥がして回収する光透過性フィルムとして再利用してもよい。なお、前述したようにプリプレグから剥がさずに、前記工程(4)にて回収しない(プリプレグに積層したまま製品とする)光透過性フィルムとして再利用してもよい。
本実施形態では、前記工程(4)で回収された光透過性フィルムを前記工程(2)における光透過性フィルムとして繰り返し再利用する例について説明したが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、回収された光透過性フィルムは、他の製品の製造ラインで利用することも可能である。
【0144】
本発明の第1の態様の別の側面は、強化繊維と、マトリックス樹脂組成物を含むプリプレグがシート状又はテープ状であるプリプレグであって、前記マトリックス樹脂組成物が、少なくとも
成分(A):ビスフェノールA型エポキシ樹脂、
成分(B):ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、及び
成分(E):前記成分(B)がラジカル重合してなる重合体、を含み、
前記プリプレグの片面に、前記マトリックス樹脂組成物の反応率が互いに異なる複数の領域を有するプリプレグである。
このプリプレグは、さらに成分(C):アミン型のエポキシ樹脂硬化剤を含む樹脂組成物を含んでいてもよい。
このプリプレグは、さらに成分(C):アミノジフェニルスルホンを含む樹脂組成物を含んでいてもよい。
【0145】
本発明の第1の態様の別の側面は、強化繊維と、マトリックス樹脂組成物を含むプリプレグがシート状又はテープ状であるプリプレグであって、前記マトリックス樹脂組成物が、少なくとも
成分(A):イソシアネート変性エポキシ樹脂、
成分(B):ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、及び
成分(E):前記成分(B)がラジカル重合してなる重合体、を含み、
前記プリプレグの片面に、前記マトリックス樹脂組成物の反応率が互いに異なる複数の領域を有するプリプレグである。
このプリプレグは、さらに成分(C):アミン型のエポキシ樹脂硬化剤を含む樹脂組成物を含んでいてもよい。
このプリプレグは、さらに成分(C):アミノジフェニルスルホンを含む樹脂組成物を含んでいてもよい。
【0146】
本発明の第1の態様の別の側面は、強化繊維と、マトリックス樹脂組成物を含むプリプレグがシート状又はテープ状であるプリプレグであって、前記マトリックス樹脂組成物が、少なくとも
成分(A):ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びイソシアネート変性エポキシ樹脂、
成分(B):ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、及び
成分(E):前記成分(B)がラジカル重合してなる重合体、を含み、
前記プリプレグの片面に、前記マトリックス樹脂組成物の反応率が互いに異なる複数の領域を有するプリプレグである。
このプリプレグは、さらに成分(C):アミン型のエポキシ樹脂硬化剤を含む樹脂組成物を含んでいてもよい。
このプリプレグは、さらに成分(C):アミノジフェニルスルホンを含む樹脂組成物を含んでいてもよい。
【0147】
本発明の第1の態様の別の側面は、強化繊維を含む強化繊維基材に、成分(A):ビスフェノールA型エポキシ樹脂、成分(B):ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、及び成分(C):アミン型のエポキシ樹脂硬化剤を含む含浸用樹脂組成物を含浸させてプリプレグ前駆体を作製し、
前記プリプレグ前駆体の少なくとも片面の一部に、紫外線、赤外線、可視光線及び電子線からなる群より選択される少なくとも1種のエネルギー波を照射することにより前記成分(B)の一部を反応させ、前記プリプレグ前駆体の表面に前記成分(E)前記成分(B)がラジカル重合してなる重合体、を生成させることを含む製造方法である。
前記プリプレグ前駆体を作製する工程において、含浸用樹脂組成物は、さらに尿素誘導体を含んでいてもよい。
【0148】
本発明の第1の態様の別の側面は、強化繊維を含む強化繊維基材に、成分(A):イソシアネート変性エポキシ樹脂、成分(B):ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、及び成分(C):アミン型のエポキシ樹脂硬化剤を含む含浸用樹脂組成物を含浸させてプリプレグ前駆体を作製し、
前記プリプレグ前駆体の少なくとも片面の一部に、紫外線、赤外線、可視光線及び電子線からなる群より選択される少なくとも1種のエネルギー波を照射することにより前記成分(B)の一部を反応させ、前記プリプレグ前駆体の表面に前記成分(E)前記成分(B)がラジカル重合してなる重合体、を生成させることを含む製造方法である。
前記プリプレグ前駆体を作製する工程において、含浸用樹脂組成物は、さらに尿素誘導体を含んでいてもよい。
【0149】
本発明の第1の態様の別の側面は、強化繊維を含む強化繊維基材に、成分(A):ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びイソシアネート変性エポキシ樹脂、成分(B):ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、及び成分(C):アミン型のエポキシ樹脂硬化剤を含む含浸用樹脂組成物を含浸させてプリプレグ前駆体を作製し、
前記プリプレグ前駆体の少なくとも片面の一部に、紫外線、赤外線、可視光線及び電子線からなる群より選択される少なくとも1種のエネルギー波を照射することにより前記成分(B)の一部を反応させ、前記プリプレグ前駆体の表面に前記成分(E)前記成分(B)がラジカル重合してなる重合体、を生成させることを含む製造方法である。
前記プリプレグ前駆体を作製する工程において、含浸用樹脂組成物は、さらに尿素誘導体を含んでいてもよい。
【0150】
本発明の第2の態様におけるの別の側面は、強化繊維と、マトリックス樹脂組成物を含むプリプレグがシート状又はテープ状でありプリプレグであって、前記マトリックス樹脂組成物が、少なくとも
成分(A):ビスフェノールA型エポキシ樹脂、
成分(B):ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、及び
成分(E):前記成分(B)がラジカル重合してなる重合体、
成分(C):アミン型のエポキシ樹脂硬化剤を含む樹脂組成物、及び
成分(D):α−ヒドロキシフェノンを含み、
前記プリプレグはシート状又はテープ状であり、前記プリプレグの少なくとも片面において、押付け圧力40kPaで測定したタック値が70kPa以下であり、押付け圧力80kPaで測定したタック値が150kPa以上であるプリプレグである。
【0151】
本発明の第2の態様におけるの別の側面は、強化繊維と、マトリックス樹脂組成物を含むプリプレグがシート状又はテープ状でありプリプレグであって、前記マトリックス樹脂組成物が、少なくとも
成分(A):イソシアネート変性エポキシ樹脂、
成分(B):ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、及び
成分(E):前記成分(B)がラジカル重合してなる重合体、
成分(C):アミン型のエポキシ樹脂硬化剤を含む樹脂組成物、及び
成分(D):α−ヒドロキシフェノンを含み、
前記プリプレグはシート状又はテープ状であり、前記プリプレグの少なくとも片面において、押付け圧力40kPaで測定したタック値が70kPa以下であり、押付け圧力80kPaで測定したタック値が150kPa以上であるプリプレグである。
【0152】
本発明の第2の態様におけるの別の側面は、強化繊維と、マトリックス樹脂組成物を含むプリプレグがシート状又はテープ状でありプリプレグであって、前記マトリックス樹脂組成物が、少なくとも
成分(A):ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びイソシアネート変性エポキシ樹脂、
成分(B):ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、及び
成分(E):前記成分(B)がラジカル重合してなる重合体、
成分(C):アミン型のエポキシ樹脂硬化剤を含む樹脂組成物、及び
成分(D):α−ヒドロキシフェノンを含み、
前記プリプレグはシート状又はテープ状であり、前記プリプレグの少なくとも片面において、押付け圧力40kPaで測定したタック値が70kPa以下であり、押付け圧力80kPaで測定したタック値が150kPa以上であるプリプレグである。
【0153】
本発明の第2の態様における別の側面は、強化繊維シートを、成分(A):ビスフェノールA型エポキシ樹脂、成分(B):ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、成分(C):アミン型のエポキシ樹脂硬化剤、及び成分(D1):α−ヒドロキシフェノン、を含む含浸用樹脂組成物に含浸させてプリプレグ前駆体シートを作製し、前記プリプレグ前駆体シートの少なくとも片面の一部に、紫外線もしくは可視光線を照射することを含むプリプレグの製造方法である。
前記プリプレグ前駆体シートを作製する工程において、含浸用樹脂組成物は、さらに尿素誘導体を含んでいてもよい。
【0154】
本発明の第2の態様における別の側面は、強化繊維シートを、成分(A):イソシアネート変性エポキシ樹脂、成分(B):ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、成分(C):アミン型のエポキシ樹脂硬化剤、及び成分(D1):α−ヒドロキシフェノン、を含む含浸用樹脂組成物に含浸させてプリプレグ前駆体シートを作製し、前記プリプレグ前駆体シートの少なくとも片面の一部に、紫外線もしくは可視光線を照射することを含むプリプレグの製造方法である。
前記プリプレグ前駆体シートを作製する工程において、含浸用樹脂組成物は、さらに尿素誘導体を含んでいてもよい。
【0155】
本発明の第2の態様における別の側面は、強化繊維シートを、成分(A):ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びイソシアネート変性エポキシ樹脂、成分(B):ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、成分(C):アミン型のエポキシ樹脂硬化剤、及び成分(D1):α−ヒドロキシフェノン、を含む含浸用樹脂組成物に含浸させてプリプレグ前駆体シートを作製し、前記プリプレグ前駆体シートの少なくとも片面の一部に、紫外線もしくは可視光線を照射することを含むプリプレグの製造方法である。
前記プリプレグ前駆体シートを作製する工程において、含浸用樹脂組成物は、さらに尿素誘導体を含んでいてもよい。
【0156】
本発明の第3の態様における別の側面は、強化繊維と、マトリックス樹脂組成物を含むプリプレグがシート状又はテープ状でありプリプレグであって、前記マトリックス樹脂組成物が、少なくとも
成分(A):ビスフェノールA型エポキシ樹脂、
成分(B):ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、及び
成分(E):前記成分(B)がラジカル重合してなる重合体、を含むプリプレグであって、
前記プリプレグがシート状又はテープ状であり、
前記プリプレグの少なくとも片面に保護フィルムが積層され、
前記プリプレグのタック性評価におけるタック性の指標が50g以上であるプリプレグである。
【0157】
本発明の第3の態様における別の側面は、強化繊維と、マトリックス樹脂組成物を含むプリプレグがシート状又はテープ状でありプリプレグであって、前記マトリックス樹脂組成物が、少なくとも
成分(A):イソシアネート変性エポキシ樹脂、
成分(B):ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、及び
成分(E):前記成分(B)がラジカル重合してなる重合体、を含むプリプレグであって、
前記プリプレグがシート状又はテープ状であり、
前記プリプレグの少なくとも片面に保護フィルムが積層され、
前記プリプレグのタック性評価におけるタック性の指標が50g以上であるプリプレグである。
【0158】
本発明の第3の態様における別の側面は、強化繊維と、マトリックス樹脂組成物を含むプリプレグがシート状又はテープ状でありプリプレグであって、前記マトリックス樹脂組成物が、少なくとも
成分(A):ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びイソシアネート変性エポキシ樹脂、
成分(B):ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、及び
成分(E):前記成分(B)がラジカル重合してなる重合体、を含むプリプレグであって、
前記プリプレグがシート状又はテープ状であり、
前記プリプレグの少なくとも片面に保護フィルムが積層され、
前記プリプレグのタック性評価におけるタック性の指標が50g以上であるプリプレグである。
【0159】
本発明の第3の態様における別の側面は、シート状又はテープ状である強化繊維を、成分(A):ビスフェノールA型エポキシ樹脂、成分(B):ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、及び成分(C):アミン型のエポキシ樹脂硬化剤を含む樹脂組成物に含浸させてプリプレグ前駆体を作製し、
前記プリプレグ前駆体の少なくとも片面に保護フィルムを積層し、
前記保護フィルムを積層した面の一部に、紫外線、赤外線、可視光線及び電子線からなる群より選択される少なくとも1種のエネルギー波を照射することにより前記成分(B)の一部を反応させることを含むプリプレグの製造方法である。
前記プリプレグ前駆体シートを作製する工程において、含浸用樹脂組成物は、さらに成分(D):α−ヒドロキシフェノンを含んでいてもよい。
前記プリプレグ前駆体シートを作製する工程において、含浸用樹脂組成物は、さらに尿素誘導体を含んでいてもよい。
【0160】
本発明の第3の態様における別の側面は、シート状又はテープ状である強化繊維を、成分(A):イソシアネート変性エポキシ樹脂、成分(B):ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、及び成分(C):アミン型のエポキシ樹脂硬化剤を含む樹脂組成物に含浸させてプリプレグ前駆体を作製し、
前記プリプレグ前駆体の少なくとも片面に保護フィルムを積層し、
前記保護フィルムを積層した面の一部に、紫外線、赤外線、可視光線及び電子線からなる群より選択される少なくとも1種のエネルギー波を照射することにより前記成分(B)の一部を反応させることを含むプリプレグの製造方法である。
前記プリプレグ前駆体シートを作製する工程において、含浸用樹脂組成物は、さらに成分(D):α−ヒドロキシフェノンを含んでいてもよい。
前記プリプレグ前駆体シートを作製する工程において、含浸用樹脂組成物は、さらに尿素誘導体を含んでいてもよい。
【0161】
本発明の第3の態様における別の側面は、シート状又はテープ状である強化繊維を、成分(A):ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びイソシアネート変性エポキシ樹脂、成分(B):ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、及び成分(C):アミン型のエポキシ樹脂硬化剤を含む樹脂組成物に含浸させてプリプレグ前駆体を作製し、
前記プリプレグ前駆体の少なくとも片面に保護フィルムを積層し、
前記保護フィルムを積層した面の一部に、紫外線、赤外線、可視光線及び電子線からなる群より選択される少なくとも1種のエネルギー波を照射することにより前記成分(B)の一部を反応させることを含むプリプレグの製造方法である。
前記プリプレグ前駆体シートを作製する工程において、含浸用樹脂組成物は、さらに成分(D):α−ヒドロキシフェノンを含んでいてもよい。
前記プリプレグ前駆体シートを作製する工程において、含浸用樹脂組成物は、さらに尿素誘導体を含んでいてもよい。
【0162】
本発明の第4の態様の別の側面は、成分(A):ビスフェノールA型エポキシ樹脂、成分(B):ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、成分(C):アミン型のエポキシ樹脂硬化剤、及び成分(D)α−ヒドロキシフェノンを混合して含浸用樹脂組成物を調製する工程と、
前記含浸用樹脂組成物を、シート状又はテープ状の強化繊維基材に含浸させてプリプレグ前駆体を作製する含浸操作を含み、前記含浸操作前に前記強化繊維基材の少なくとも一方の面に光透過性フィルムを積層する操作を含むか、或いは
前記含浸操作後に得られた前記プリプレグ前駆体の少なくとも一方の面に前記光透過性フィルムを積層する操作を含む、
前記プリプレグ前駆体の少なくとも一方の面に前記光透過性フィルムが積層された第1積層体を作製する工程と、
前記第1積層体の前記光透過性フィルムが積層された面のうち少なくとも一方に、紫外線、赤外線、可視光線及び電子線からなる群より選択される少なくとも1種のエネルギー線を照射し、前記成分(B)を反応させ、その少なくとも一方の面に前記光透過性フィルムが積層されてなる第2積層体を作製する工程と、
前記第2積層体から、前記第2積層体を作成する工程で前記エネルギー線を照射された面の前記光透過性フィルムのうち少なくとも一方を引き剥がして回収する工程と、
前記光透過性フィルムを回収する工程にて回収された前記光透過性フィルムを再利用する工程と、を含むプリプレグの製造方法である。
前記含浸用樹脂組成物を調製する工程において、含浸用樹脂組成物は、さらに尿素誘導体を含んでいてもよい。
【0163】
本発明の第4の態様の別の側面は、成分(A):イソシアネート変性エポキシ樹脂、成分(B):ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、成分(C):アミン型のエポキシ樹脂硬化剤、及び成分(D)α−ヒドロキシフェノンを混合して含浸用樹脂組成物を調製する工程と、
前記含浸用樹脂組成物を、シート状又はテープ状の強化繊維基材に含浸させてプリプレグ前駆体を作製する含浸操作を含み、前記含浸操作前に前記強化繊維基材の少なくとも一方の面に光透過性フィルムを積層する操作を含むか、或いは
前記含浸操作後に得られた前記プリプレグ前駆体の少なくとも一方の面に前記光透過性フィルムを積層する操作を含む、
前記プリプレグ前駆体の少なくとも一方の面に前記光透過性フィルムが積層された第1積層体を作製する工程と、
前記第1積層体の前記光透過性フィルムが積層された面のうち少なくとも一方に、紫外線、赤外線、可視光線及び電子線からなる群より選択される少なくとも1種のエネルギー線を照射し、前記成分(B)を反応させ、その少なくとも一方の面に前記光透過性フィルムが積層されてなる第2積層体を作製する工程と、
前記第2積層体から、前記第2積層体を作成する工程で前記エネルギー線を照射された面の前記光透過性フィルムのうち少なくとも一方を引き剥がして回収する工程と、
前記光透過性フィルムを回収する工程にて回収された前記光透過性フィルムを再利用する工程と、を含むプリプレグの製造方法である。
前記含浸用樹脂組成物を調製する工程において、含浸用樹脂組成物は、さらに尿素誘導体を含んでいてもよい。
【0164】
本発明の第4の態様の別の側面は、成分(A):ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びイソシアネート変性エポキシ樹脂、成分(B):ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、成分(C):アミン型のエポキシ樹脂硬化剤、及び成分(D)α−ヒドロキシフェノンを混合して含浸用樹脂組成物を調製する工程と、
前記含浸用樹脂組成物を、シート状又はテープ状の強化繊維基材に含浸させてプリプレグ前駆体を作製する含浸操作を含み、前記含浸操作前に前記強化繊維基材の少なくとも一方の面に光透過性フィルムを積層する操作を含むか、或いは
前記含浸操作後に得られた前記プリプレグ前駆体の少なくとも一方の面に前記光透過性フィルムを積層する操作を含む、
前記プリプレグ前駆体の少なくとも一方の面に前記光透過性フィルムが積層された第1積層体を作製する工程と、
前記第1積層体の前記光透過性フィルムが積層された面のうち少なくとも一方に、紫外線、赤外線、可視光線及び電子線からなる群より選択される少なくとも1種のエネルギー線を照射し、前記成分(B)を反応させ、その少なくとも一方の面に前記光透過性フィルムが積層されてなる第2積層体を作製する工程と、
前記第2積層体から、前記第2積層体を作成する工程で前記エネルギー線を照射された面の前記光透過性フィルムのうち少なくとも一方を引き剥がして回収する工程と、
前記光透過性フィルムを回収する工程にて回収された前記光透過性フィルムを再利用する工程と、を含むプリプレグの製造方法である。
前記含浸用樹脂組成物を調製する工程において、含浸用樹脂組成物は、さらに尿素誘導体を含んでいてもよい。
【実施例】
【0165】
〔(1)第1の態様に対応する実施例及び比較例〕
以下、実施例により本発明のいくつかの態様を具体的に説明するが、本発明のいくつかの態様はこれらによって何ら限定されるものではない。また、各例で使用した原料(樹脂等)、強化繊維、及び各種測定及び評価方法などを以下に示す。
【0166】
(原料)
<エポキシ樹脂(A)(以下「成分(A)」と称する)>
・A−1:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、製品名「jER828」)
・A−2:イソシアネート変性エポキシ樹脂(旭化成エポキシ株式会社製、製品名「AER4152」)
<ラジカル重合性不飽和化合物(B)(以下「成分(B)」と称する)>
・B−1:ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物(三菱レイヨン社製、製品名「ダイヤビーム UK6105」)
・B−2:ノボラック型グリシジルエーテルアクリル酸付加物(DIC株式会社製、製品名「DICLITE UE−8740」)
<エポキシ樹脂硬化剤(C)>
・ジシアンジアミド(三菱化学株式会社製、製品名「Dicy 15」)
<硬化助剤>
・DCMU:ジフェニルジメチルウレア(保土谷化学工業株式会社製、製品名「DCMU99」)
<ラジカル重合開始剤(D)>
・α−ヒドロキシアルキルフェノン(BASF社製、製品名「Irgacure184」)
(強化繊維基材)
・炭素繊維束1:引張強度4.2GPa、引張弾性率235GPa、フィラメント数50000本、目付3.8g/m(三菱レイヨン株式会社製)
【0167】
(測定・評価方法)
<紫外線照射による、含浸用樹脂組成物の粘度変化の測定>
含浸用樹脂組成物の、紫外線照射による粘度変化を以下の測定条件で測定した。
・測定機器:(Reologica Instruments A.B.社製、製品名「VAR−100」)
・試験モード:高速オシレーション
・測定温度:27 ℃
・プレートサイズ:8mmφ
・ギャップ:0.05mm
・応力:700Pa
・周波数:1.59Hz
・紫外線強度(λ=365nm):50mW/cm
2
・照射1回当たりの照射時間:6秒
・照射間隔:120秒
【0168】
<含浸用樹脂組成物の粘度測定>
含浸用樹脂組成物の粘度を以下の測定条件で測定した。
・装置:レオメーター(ティー・エイ・インスツルメント社製、製品名「DSR−200」)
・使用プレート:40φパラレルプレート
・プレートギャップ:0.5mm
・測定周波数:10rad/秒
・昇温速度:2℃/分
・応力:3000dyne/cm
2【0169】
<プリプレグ表面に分布する樹脂の構造解析>
実施例にて得られたプリプレグの表面の、マトリックス樹脂組成物の反応率を評価するため、プリプレグ表面に分布する樹脂の構造解析を以下の測定条件で実施した。なお「マトリックス樹脂組成物の反応率」とは、マトリックス樹脂組成物中の成分(B)の反応率を意味し、成分(B)が反応して成分(E)になることによりマトリックス樹脂組成物が局所的に粘度が変化するために、プリプレグ表面がタック変化することにより確認できる。
・装置 :Varian 600 UMA FT−IR Microscope(Varian, Inc.製)
・ATR使用結晶:Ge
・分解能:4cm
−1
・積算回数:128回
・測定波数範囲:4000cm
−1 〜 700cm
−1
・測定面積:120μm × 70μm
【0170】
[ラジカル重合開始剤(D)及びエポキシ樹脂硬化剤(C)を含むマスターバッチの調製]
表1に示す組成で、成分(B)、エポキシ樹脂硬化剤(C)、硬化助剤、及びラジカル重合開始剤(D)を容器に計量し、攪拌・混合した。これを三本ロールミルにてさらに細かく混合して、マスターバッチ1−1及び1−2を得た。
【0171】
【表1】
【0172】
[実施例1−1]
<樹脂組成物の調製>
溶解釜に成分(A)としてA−1を50質量部とA−2を40質量部計量した。溶解釜を130℃に加熱し、A−1とA−2を混合した後、A−1とA−2の混合物を60℃程度まで冷却した。引き続き、この溶解釜に先に調製したマスターバッチ1−1を19質量部加え、60℃で攪拌し含浸用樹脂組成物1−11を得た。
得られた含浸用樹脂組成物1−11について、紫外線照射による粘度変化測定したところ、30℃における紫外線照射前の粘度は6×10
2Pa・s、紫外線を1回照射した場合の粘度は9×10
3Pa・s、紫外線を2回照射した場合の粘度は1.5×10
4Pa・sであった。これらの結果より、紫外線の照射時間や照射回数で樹脂の増粘を制御できることが確認できた。
【0173】
<プリプレグ前駆体の製造>
プリプレグ前駆体である、含浸用樹脂組成物1−11を含浸した強化繊維シートを以下の手順により製造した。強化繊維基材として炭素繊維束1を引き揃えて得られる炭素繊維束シートを2枚用いた。各々、強化繊維シート(I−1)及び強化繊維シート(I−2)と称す。
60℃に維持した含浸用樹脂組成物1−11を樹脂塗工ダイより吐出して、強化繊維シート(I−1)の一方の面に含浸用樹脂組成物1−11を連続的に付着させた。続いて強化繊維シート(I−2)を、強化繊維シート(I−1)の含浸用樹脂組成物1−11を付着させた面に重ね、強化繊維シート(I−1)及び強化繊維シート(I−2)の外側の両面に、保護フィルムを供給してさらに挟み込んだ。
引き続き、保護フィルムで挟み込んだ、強化繊維シート(I−1)及び強化繊維シート(I−2)を、加圧ロールに3回通して、含浸用樹脂組成物1−11を強化繊維基材に含浸させたプリプレグ前駆体を得た。
得られたプリプレグ前駆体について、溶剤法により強化繊維の目付(FAW)と樹脂含有率を測定したところ、FAWが600g/m
2で、樹脂含有率が34質量%であった。
【0174】
<パターンの形成>
以下の方法により、片面に、マトリックス樹脂組成物の反応率において2つの水準に区分される複数の領域をパターンとして有するプリプレグを製造した。
先ず、
図1に示す形状のフォトマスク1を用意した。フォトマスク1は厚さ100μmのポリエステル基材に直径5mmの円形の遮光性のシートを5mmの間隔で貼付したものである。上記操作で得られたプリプレグ前駆体の表面にフォトマスク1を載置し、メタルハライドランプ(アイグラフィックス株式会社製)を備えた紫外線照射装置により、照射量320mJ/cm
2(照度計は株式会社オーク製作所の“ORCUV−351”を基準とした。)の紫外線をフォトマスク1上から照射し、フォトマスク1を取り除いた。
こうして、マトリックス樹脂の反応率が低い直径5mmの円領域が海島構造の島領域を形成し、島領域と島領域の間隔が5mmの海島構造のパターンを有するプリプレグ1−12を得た。
【0175】
<パターンを構成する各領域のマトリックス樹脂組成物の構造解析>
プリプレグ1−12の紫外線非照射部分である海島構造の島領域と、紫外線照射部分である海島構造の海領域の樹脂構造を、前記のATR法(すなわち<プリプレグ表面に分布する樹脂の構造解析>に記載の方法)で解析したところ、アクリロイル基に存在するカルボニル由来の1700cm
−1付近のピーク形状が有意に変化することを確認した。具体的には、島領域である紫外線非照射部分では1700cm
−1付近に出現するふた山のピークが、海領域である紫外線照射部分ではひと山に変化しているのを確認した。この変化は、アクリロイル基において炭素−炭素二重結合と共役していたカルボニルの二重結合が、共役のない二重結合に変化したことを示すものであり、プリプレグ1−12の紫外線照射部分である海領域の表面からATR法により検出される深さまでにおいては、「ラジカル重合性不飽和化合物(B)のラジカル重合で生成する高分子量成分」(すなわち成分(E))由来のカルボニルが、ラジカル重合性不飽和化合物(B)よりも明らかに多いことを示している。
【0176】
<パターン表面のタック解析>
プリプレグ1−12の紫外線非照射部分である島領域と、照射部分である海領域のタック性の違いは、島領域より面積が小さく平滑性が十分に高い底面を有する円筒形のガラス棒(底面積0.28cm
2(直径3mm)、長さ15mm、重量約10.6g)のガラス棒の底面をプリプレグに押し当てて、引き剥がす時の感触で確認することができ、紫外線非照射部分はタック性が高く、紫外線照射部分はタック性が弱かった。
【0177】
〔(2)第2の態様に対応する実施例及び比較例〕
使用した原料(樹脂等)、強化繊維、及び各種測定・評価方法などを以下に示す。
【0178】
(タック値の測定)
プリプレグのタックの測定を以下の条件で行った。
・装置:タックテスター (UBM社製、製品名「TA−500」)
・温度:25±3℃
・湿度:50±10%RH
・プローブ直径:8mmあるいは20mm(プローブ直径20mmでタック値を測定し、得られた結果が93.7kPa以下である場合はその測定値を、得られた結果が93.7kPaを超える場合はプローブ直径8mmで測定した結果をタック値として採用した。)
・プリプレグへの押付け圧力:20kPa,40kPa,60kPa,80kPa,93kPa
・押付け時間:30秒
・プローブ移動速度:0.2mm/s
【0179】
(プリプレグロールの巻き出し性の評価)
製造したプリプレグロールを温度23±3℃、湿度50%±10RHの環境下で横置きで静置し、所定の期間経過後、プリプレグロールからプリプレグが巻き出せるか否かを評価した。容易に不具合無く巻き出すことができるものを「○」、巻きだすことができなかったものを「×」とした。
【0180】
(プリプレグの貼り付きの強固さの評価)
評価するプリプレグを長さ(0°方向、強化繊維に平行方向)300mm×幅(90°方向、強化繊維に直交方向)300mmにカットし、型への貼り付きとプリプレグ同士の貼り付きの強固さを評価した。評価するプリプレグを、成形型や他のプリプレグに強く手で押し付けた後に、押し付けたプリプレグが手で動かせるか否かを評価した。動かせるものを「○」、動かせないものを「×」とした。成形型はアルミ製のものを使用した。
【0181】
(リプレイス性の評価)
評価するプリプレグを長さ(0°方向、強化繊維に平行方向)300mm×幅(90°方向、強化繊維に直交方向)300mmにカットしたものを2枚用意し、一枚を成形型に強く押し付けて貼り付けた上に、もう一枚のプリプレグを軽く貼りあわせた。その後、一番上に貼り付けたプリプレグの位置の修正(リプレイス)ができるか否かを評価した。リプレイスが容易であったものを「○」、リプレイスできなかったものを「×」とした。成形型はアルミ製のものを使用した。
【0182】
[含浸用樹脂組成物]
含浸用樹脂組成物に用いた原料は以下の通りである。
【0183】
(原料)
<成分(A):エポキシ樹脂>
・A−1:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、製品名「jER828」)
・A−2:イソシアネート変性エポキシ樹脂(旭化成エポキシ株式会社製、製品名「AER4152」)
【0184】
<成分(B):ラジカル重合性不飽和化合物>
・B−1:ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物(三菱レイヨン社製、製品名「ダイヤビーム UK6105」)
【0185】
<成分(C):エポキシ樹脂硬化剤>
・硬化剤:ジシアンジアミド(三菱化学株式会社製、製品名「Dicy 15」)
<硬化助剤>
・ジフェニルジメチルウレア(DCMU)(保土谷化学工業株式会社製、製品名「DCMU99」)
【0186】
<成分(D):ラジカル重合開始剤>
・D−1:α−ヒドロキシアルキルフェノン(BASF社製、「Irgacure184」)
【0187】
(強化繊維基材)
・炭素繊維束1:引張強度4.2GPa、引張弾性率235GPa、フィラメント数50000本、目付3.8g/m(三菱レイヨン株式会社製)
【0188】
<紫外線照射による、含浸用樹脂組成物の粘度変化の測定>
前記〔(1)第1の態様に対応する実施例及び比較例〕における<紫外線照射による、含浸用樹脂組成物の粘度変化の測定>と同様の測定条件で測定した。
【0189】
<含浸用樹脂組成物の粘度測定>
前記〔(1)第1の態様に対応する実施例及び比較例〕における<含浸用樹脂組成物の粘度測定>と同様の測定条件で測定した。
【0190】
[ラジカル重合開始剤及びエポキシ樹脂硬化剤を含むマスターバッチの調製]
表2に示す組成で、成分(B)、成分(C)、硬化助剤、及び成分(D)を容器に計量し、攪拌及び混合した。これを三本ロールミルにてさらに細かく混合して、ラジカル重合開始剤及びエポキシ樹脂硬化剤を含むマスターバッチ2−1を得た。
【0191】
【表2】
【0192】
[実施例2−1]
<含浸用樹脂組成物の調製>
溶解釜に成分(A)としてA−1を50質量部とA−2を40質量部計量し、溶解釜を130℃に加熱し、A−1とA−2を混合した後、A−1とA−2の混合物を60℃程度まで冷却した。引き続き、この溶解釜に先に調製したマスターバッチ2−1を19質量部加え、60℃で攪拌し含浸用樹脂組成物2−11を得た。
得られた含浸用樹脂組成物2−11の紫外線照射による粘度変化測定したところ、30℃における紫外線照射前の粘度は6×10
2Pa・s、紫外線を1回照射した後の粘度は9×10
3Pa・s、紫外線を2回照射した後の粘度は1.5×10
4Pa・sであった。これらの結果より、紫外線の照射時間や照射回数で樹脂の増粘を制御できることが確認できた。
【0193】
<プリプレグ前駆体の製造>
図5に示すプリプレグ製造装置10を用い、以下のようにしてプリプレグを製造した。強化繊維基材として炭素繊維束を引き揃えて得られる炭素繊維束シートを2枚用いた。各々、強化繊維シート11a(II−1)及び強化繊維シート11b(II−2)と称す。
60℃に維持した含浸用樹脂組成物2−11を付着装置12の樹脂塗工ダイ12aより吐出して、強化繊維シート11a(II−1)の一方の面に含浸用樹脂組成物2−11を付着させた。続いて強化繊維シート11b(II−2)を強化繊維シート11a(II−1)の含浸用樹脂を付着させた面に重ね、重ねた強化繊維シート11a(II−1)と強化繊維シート11b(II−2)の外側の両面に、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート製フィルム(三菱樹脂株式会社製、製品名「DIAFOIL MRF25」)をセパレートフィルム(14a、14b)としてそれぞれセパレートフィルム供給ロール14から供給してさらに挟み込んだ。
引き続き、セパレートフィルム(14a、14b)で挟み込んだ強化繊維シート(II−1)及び(II−2)を、外側から加圧装置13における加圧ロール13a、13bで押し付け、前記強化繊維シート(II−1)に付着した含浸用樹脂組成物2−11を強化繊維シート(II−1)及び強化繊維シート(II−2)に含浸させ、含浸用樹脂組成物2−11を含むプリプレグ前駆体2−12を得た。なおプリプレグの製造ライン速度を5m/minとした。
得られた本発明のプリプレグ前駆体2−12について、溶剤法により目付けを測定したところ、FAW596g/m
2、樹脂含有率33.7質量%であった。外観を目視にて確認したところ、毛羽がなく、含浸用樹脂が均一に含浸していることが確認された。
【0194】
<紫外線の照射>
以下の方法により、上記操作で得られたプリプレグ前駆体2−12に紫外線を照射し、プリプレグ2−13を製造した。
プリプレグ前駆体2−12を、メタルハライドランプ(アイグラフィックス株式会社製)を備えた紫外線照射装置16に通し、照射量320mJ/cm
2(照度計は株式会社オーク製作所の“ORCUV−351”を基準とした。)の紫外線を照射し、セパレートフィルム巻取り装置17により両面のセパレートフィルムを剥離して、連続したプリプレグ18(2−13)を得た。なお、
図5の符号15は、駆動ロールを示す。
【0195】
<プリプレグの巻き取り>
上記操作で得られた連続したプリプレグ2−13を、外直径310mmの紙管(巻き取り手段19)に約10m巻き取り、プリプレグ2−13がロール状に複数周巻かれて多層をなすプリプレグロール2−14を得た。前記プリプレグロール2−14中で、隣接する層をなすプリプレグ2−13同士は、互いに接していた。
【0196】
得られたプリプレグ2−13につき、タック値の測定、巻出し性の評価、プリプレグの貼り付きの強固さの評価、リプレイス性の評価を行った。
得られたプリプレグ2−13及びプリプレグロール2−14には、離型紙もセパレートフィルムも配置していないので、プリプレグ2−13の積層時においてこれらを剥がす時間も労力もかからなかった。また、これら廃棄物も発生しなかった。結果を
図6、表3に示す。
【0197】
[実施例2−2]
実施例2−1と同様にプリプレグ2−23を作成した。但し、本実施例においては紫外線照射量が640mJ/cm
2となるように紫外線を照射した。得られたプリプレグ2−23を、実施例2−1と同様にしてプリプレグロール2−24を得た。
【0198】
得られたプリプレグ2−23につき、タック値の測定、巻出し性の評価、プリプレグの貼り付きの強固さの評価、リプレイス性の評価を行った。
得られたプリプレグ2−23及びプリプレグロール2−24には離型紙もセパレートフィルムも配置していないので、プリプレグの積層時においてこれらを剥がす時間も労力もかからなかった。また、これら廃棄物も発生しなかった。結果を
図6、表3に示す。
【0199】
[比較例2−1]
炭素繊維プリプレグ(三菱レイヨン社製、一方向炭素繊維プリプレグ、製品名:TR350G175S、FAW175g/m
2)を長さ(0°方向、炭素繊維に平行方向)300mm×幅(90°方向、炭素繊維に直交方向)300mmにパターンカットした。パターンカットしたTR350G175Sの、プリプレグの貼り付きの強固さの評価、リプレイス性の評価を行った。
比較例1についてはプリプレグロールの巻き出し性の評価に代えて、以下の手順で評価を実施した。
温度23±3℃、湿度50±10%RHの環境下で、上記と同様にパターンカットしたプリプレグのセパレートフィルムを剥ぎ、炭素繊維に直交する1つの辺の全長に沿って50mm×300mmのポリエチレンテレフタレート製の粘着テープ(ソニーケミカル製、製品名T4082S)を貼りつけたものを2枚用意して、粘着テープを貼った部分が重なるように、その2枚を対面させて、80kPa相当の圧力がかかるように圧着して、その直後に粘着テープ貼着部を開いて左右の手に把持し、二枚に剥がせるか否かを評価した。
この評価により、本比較例は二枚のプリプレグの相互に繊維が架橋するのが観察され、プリプレグロールの巻き出し性はプリプレグロールを作製するまでもなく「×」と判定した。
TR350G175Sプリプレグ及びプリプレグロールには離型紙とセパレートフィルムが配置しているので、プリプレグの積層作業にはこれらを剥がす時間と労力が必要であるし、また、これらが廃棄物となる。結果を
図6と表3に示す。
【0200】
【表3】
【0201】
〔(3)第3の態様に対応する実施例及び比較例〕
使用した原料(樹脂等)、強化繊維、及び各種測定及び評価方法などを以下に示す。
(原料)
<エポキシ樹脂(A)(以下実施例において「成分(A)」と称す)>
・A−1:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、製品名「jER828」)
・A−2:イソシアネート変性エポキシ樹脂(旭化成エポキシ株式会社製、製品名「AER4152」)
【0202】
<ラジカル重合性不飽和化合物(B)(以下実施例において成分(B)と称す)>
・B−1:ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物(三菱レイヨン社製、製品名「ダイヤビーム UK6105」)
【0203】
<エポキシ樹脂硬化剤(C)>
・ジシアンジアミド(三菱化学株式会社製、製品名「Dicy 15」)
<硬化助剤>
・DCMU:ジフェニルジメチルウレア(保土谷化学工業株式会社製、製品名「DCMU99」)
【0204】
<ラジカル重合開始剤(D)>
・α−ヒドロキシアルキルフェノン(BASF社製、「Irgacure184」)
【0205】
(強化繊維基材)
・炭素繊維束1:引張強度4.2GPa、引張弾性率235GPa、フィラメント数50000本、目付3.8g/m(三菱レイヨン株式会社製)
【0206】
[ラジカル重合開始剤(D)及びエポキシ硬化剤(C)を含むマスターバッチの調製]
表4に示す組成で、成分(A)又は成分(B)と、エポキシ樹脂硬化剤(C)、硬化助剤、及びラジカル重合開始剤(D)を容器に計量し、攪拌・混合した。これを三本ロールミルにてさらに細かく混合して、ラジカル重合開始剤(D)及びエポキシ樹脂硬化剤(C)を含むマスターバッチ3−1及び3−2を得た。
【0207】
【表4】
【0208】
<保護フィルムの耐引っ張り剥し性評価>
図12に示すように、保護フィルムの耐引っ張り剥し性を評価した。
50mm×50mm、重さ200gの金属プレート141を水平な作業台面142の上に置き、その金属プレート141の上面全面に両面粘着テープ143aを貼り、50mm×50mmのサイズの保護フィルム付きプリプレグ144の保護フィルム145を下に向けて金属プレート141上に貼られた両面粘着テープ143aに端部を揃えて重ねて貼り合わせた。
続いて、50mm×50mm×50mm、重さ325gの金属ブロック146の一面全面に両面粘着テープ143bを貼り、両面粘着テープ143bを貼った面を下に向けて、金属プレート141上に両面粘着テープ143で固定された保護フィルム付きプリプレグ144のプリプレグ部分に端部を揃えて貼り合わせた。
図12に示すように、保護フィルム付きプリプレグ144を金属プレート141と金属ブロック146で挟み、金属ブロック146をプリプレグ144上に乗せた状態で1分間静置し試験体を作成した。
このまま1分間静置後、金属ブロック146を把持し試験体を10cmの高さまでおよそ2cm毎秒の速度で垂直に引き上げた。引き上げ開始から1分後の試験体の状態から、以下に示す2段階で、保護フィルムのプリプレグへの貼付の耐引っ張り剥し性を評価した。なお、本評価の環境は気温23±3℃、湿度50±10%RHとした。
耐引っ張り剥し性良好(○)とは、プリプレグと保護フィルムが貼付しており、金属プレートを引き上げている状態を意味する。
耐引っ張り剥し性不良(×)とは、プリプレグと保護フィルム間に剥がれが生じ、金属プレートが落下した状態を意味する。
実施例、比較例において本評価に用いた両面粘着テープ143a、143bは、日東電工株式会社製の製品名No.5000NS(アクリル系粘着材、厚み0.16mm、175g/m2)である。
保護フィルムとして、ポリエチレン製フィルム(廣積化工株式会社製、製品名はポリロンフィルムLD、厚み25μm)及びポリエチレンテレフタレート製フィルム(三菱樹脂株式会社製、製品名はMRF75、厚み75μmで片面に離型処理、プリプレグ側に離型面を向けた)を用いて、保護フィルムのプリプレグへの貼付の耐引っ張り剥し性を評価した。
【0209】
<保護フィルムの耐せん断剥し性評価>
300mm×600mmのサイズで切り出した保護フィルム付きプリプレグを、保護フィルム面を下にしてカッティングプロッター(株式会社レザック製のカッティングプロッター、L−2500)の真空吸引固定機能付きカット台上に載せ、真空吸引により固定した。
超硬刃で80m/分の速度で、強化繊維を垂直に切断する方向に切断した後のプリプレグにつき、以下に示す2段階で、保護フィルムのプリプレグへの貼付力の、耐せん断剥し性を評価した。なお、本評価の環境は気温23±3℃、湿度50±10%RHとした。
耐せん断剥し性良好(○)の場合は、プリプレグに保護フィルムが貼付しており、プリプレグが正しくカットできていた。
耐せん断剥し性不良(×)の場合は、プリプレグと保護フィルム間に剥がれが生じ、プリプレグが刃に引きずられ正しくカットできない。
保護フィルムとして、ポリエチレン製フィルム(廣積化工株式会社製、製品名はポリロンフィルムLD、厚み25μm)及びポリエチレンテレフタレート製フィルム(三菱樹脂株式会社製、製品名はMRF75、厚み75μmで片面に離型処理、プリプレグ側に離型面を向けた)を用いて、保護フィルムのプリプレグへの貼付力の耐せん断剥し性を評価した。
【0210】
<プリプレグのタック性評価>
図8〜11に示すように、プリプレグのタック性を評価した。
厚み25μm、幅50mm、長さ250mmのポリエチレン製フィルム131と、幅及び長さが各々50mm以上であるプリプレグ132を、前記プリプレグの一辺と前記ポリエチレン製フィルム131の長手方向が直交し、且つ幅50mm、長さ50mmの範囲で接触するように前記ポリエチレン製フィルム131の自重のみで重ね合わせた。その重ね合わせ範囲に均一に荷重がかかるように錘134を載せて60秒間保持した後、前記錘134を取り除いた。なお、
図9中の符号135は、作業台面を示す。
続いて、
図10に示すように前記ポリエチレン製フィルムの長さ50mmの辺のうち、前記プリプレグに接触していない辺を指136により把持し、前記ポリエチレン製フィルム131と前記プリプレグ132の重ね合わせに範囲に剥離力が負荷されない範囲で、これを剥離する方向へ移動した。
その後3秒以内に、
図11に示すように前記ポリエチレン製フィルム131が積層された前記プリプレグ132を静かに垂直に起こして保持した。
垂直での保持を開始してから10秒以内に、前記ポリエチレン製フィルム131が前記プリプレグ132から完全に剥離するか否かを判定した。
5g、7g、15g、30g、60g、150g、300g、600g、及び1200gの9種類の錘134を使用して試験を行い、10秒以内にポリエチレン製フィルム131が剥がれない最も軽い錘134の重量をタック性の指標の基礎値とした。また、1200gの錘を用いて判定した場合でも、前記ポリエチレン製フィルム131が10秒以内に剥がれるときは1200gをタック性の指標の基礎値とした。
これを3回繰り返して、得られたタック性指標の基礎値の算術平均をタック性の指標とした。
前記プリプレグ132の曲がりを防ぐため、前記プリプレグ132の、前記ポリエチレン製フィルム131積層面とは反対の面に、厚さ1mm、長さ35cm、幅20cmのステンレス製の板133を積層した。ポリエチレン製フィルム131は、廣積化工株式会社のポリロンフィルムLD(製品名)を用いた。なお、本評価の環境は気温23±3℃、湿度50±10%RHとした。
【0211】
[実施例3−1]
<含浸用樹脂組成物の調製>
ガラスフラスコに成分A−1を1.71質量部、A−2を2.29質量部計量し、オイルバスを用いて130℃に加熱し混合してベース樹脂3−11を得た。前記ベース樹脂3−11を60℃程度まで冷却した。続いて、ガラスフラスコにベース樹脂3−11を64.25質量部、成分A−1を15.25質量部、予め調製しておいたマスターバッチ3−1を16.00質量部を計量し、ウォーターバスを用いて60℃に加熱し混合した後、これに成分B−1を4.50質量部計量して添加し、引き続き60℃で加熱撹拌して、表5に示す含浸用樹脂組成物3−12を得た。
【0212】
<プリプレグの製造>
図7に示すプリプレグ製造装置110を用い、以下のようにしてプリプレグを製造した。強化繊維基材として炭素繊維束を引き揃えて得られる炭素繊維束シートを2枚用いた。各々、強化繊維シート111a(III−1)及び強化繊維シート111b(III−2)と称す。
60℃に維持した含浸用樹脂組成物3−12を付着装置112の樹脂塗工ダイ112aより吐出して、強化繊維シート111a(III−1)の一方の面に含浸用樹脂組成物3−12を付着させた。続いて強化繊維シート111b(III−2)を強化繊維シート111a(III−1)の含浸用樹脂組成物3−12を付着させた面に重ね、重ねた強化繊維シート111a(III−1)と強化繊維シート111b(III−2)の外側の両面にセパレートフィルム(114a、114b)をそれぞれセパレートフィルム供給ロール114から供給してさらに挟み込んだ。
引き続き、セパレートフィルム(114a、114b)で挟み込んだ強化繊維シート111a(III−1)及び強化繊維シート111b(III−2)を、外側から加圧装置113における加圧ロール113a、113bで押し付け、前記強化繊維シート111a(III−1)に付着した含浸用樹脂組成物3−12を強化繊維シート111a(III−1)及び強化繊維シート111b(III−2)に含浸させ、両面のセパレートフィルムをセパレートフィルム巻取り装置115により剥離してプリプレグ前駆体3−13を得た。なお、
図7の符号118は、駆動ロールを示す。
ついで、得られたプリプレグ前駆体3−13の両面にポリエチレン製の保護フィルム117(廣積化工株式会社製、製品名はポリロンフィルムLD、厚み25μm)を供給し、保護フィルム圧着ロール121を通してプリプレグ前駆体3−13に貼りあわせた。
エネルギー線照射装置116でメタルハライドランプ(アイグラフィックス株式会社製)を用い、プリプレグ前駆体3−13の両面にそれぞれ照射量320mJ/cm
2の紫外線を照射してプリプレグ120(3−14)を得た。なおプリプレグ120の製造ライン速度を5m/minとした。プリプレグ120は、巻取り手段119により巻き取られた。
【0213】
得られたプリプレグ3−14について、溶剤法により強化繊維の目付(FAW)と樹脂含有率を測定したところ、FAWが612g/m
2で、樹脂含有率が31質量%であった。また、得られたプリプレグ3−14の保護フィルム貼付の耐引っ張り剥し性評価、保護フィルムの耐せん断剥し性評価、プリプレグのタック性評価の結果を表6に示す。
【0214】
[実施例3−2]
<含浸用樹脂組成物の調製>
ガラスフラスコに、成分(A)としてA−1を50質量部と、A−2を40質量部計量し、オイルバスを用いて130℃に加熱し混合した後、A−1とA−2の混合物を60℃程度まで冷却した。これをニーダーに移し、先に調製したマスターバッチ3−1を19質量部加え、60℃で攪拌し、表5に示す組成の含浸用樹脂組成物3−21を得た。
<プリプレグの製造>
図7に示すプリプレグ製造装置を用い、炭素繊維束と含浸用樹脂組成物3−21を用いて実施例1と同様の方法でプリプレグ3−24を製造した。
得られたプリプレグ3−24はFAWが595g/m
2で、樹脂含有率が33質量%であった。また、得られたプリプレグ3−24の保護フィルム貼付の耐引っ張り剥し性評価、保護フィルムの耐せん断剥し性評価、プリプレグのタック性評価の結果を表6に示す。
【0215】
[実施例3−3]
<含浸用樹脂組成物の調製>
実施例3−2と同様の方法により、表5に示す組成の含浸用樹脂組成物3−31を得た。
<プリプレグの製造>
図7に示すプリプレグ製造装置を用い、炭素繊維束と含浸用脂組成物3−31を用いて実施例3−1と同様の方法でプリプレグ3−34を製造した。
得られたプリプレグ3−34はFAWが598g/m
2で、樹脂含有率が32質量%であった。また、得られたプリプレグ3−34の保護フィルム貼付の耐引っ張り剥し性評価、保護フィルムの耐せん断剥し性評価、プリプレグのタック性評価の結果を表6に示す。
【0216】
[実施例3−4]
<含浸用樹脂組成物の調製>
実施例3−2と同様の方法により、表5のように組成を変更してマトリックス樹脂組成物3−41を得た。
<プリプレグの製造>
図7に示すプリプレグ製造装置を用い、炭素繊維束とマトリックス樹脂組成物3−41を用いて実施例3−1と同様の方法でプリプレグ3−44を製造した。
得られたプリプレグ3−44はFAWが599g/m
2で、樹脂含有率が31質量%であった。また、得られたプリプレグ3−44の保護フィルム貼付の耐引っ張り剥し性評価、保護フィルムの耐せん断剥し性評価、プリプレグのタック性評価の結果を表6に示す。
【0217】
[実施例3−5]
<プリプレグの製造>
図7に示すプリプレグ製造装置を用い、炭素繊維束とマトリックス樹脂組成物3−21を用いて、さらに保護フィルムとしてポリエチレン製フィルムに代えてポリエチレンテレフタレート製フィルム(三菱樹脂株式会社製、製品名はMRF75、厚み75μmで片面に離型処理、プリプレグ側に離型処理面を向けた)を用いて、実施例3−1と同様の方法でプリプレグ3−54を製造した。
得られたプリプレグ3−54はFAWが601g/m
2で、樹脂含有率が32質量%であった。また、得られたプリプレグ3−54の保護フィルム貼付の耐引っ張り剥し性評価、保護フィルムの耐せん断剥し性評価の結果を表6に示す。
【0218】
[実施例3−6]
<プリプレグの製造>
図7に示すプリプレグ製造装置を用い、以下のようにしてプリプレグを製造した。強化繊維として炭素繊維束を用いた。
60℃に維持した含浸用樹脂組成物3−21を樹脂塗ダイ112aより吐出して、強化繊維シート111a(III−1)の一方の面に含浸用樹脂組成物3−21を付着させた。続いて強化繊維シート111b(III−2)を強化繊維シート111a(III−1)の含浸用樹脂組成物3−21を付着させた面に重ね、重ねた強化繊維シート111a(III−1)と強化繊維シート111b(III−2)の外側の両面にセパレートフィルム兼保護フィルム(114a、114b)として、ポリエチレンテレフタレート製フィルム(三菱樹脂株式会社製、製品名はMRF75、厚み75μmで片面に離型処理、プリプレグ側に離型面を向けた)をそれぞれ供給してさらに挟み込んだ。
【0219】
引き続き、フィルム(114a、114b)で挟み込んだ強化繊維シート111a(III−1)及び強化繊維シート111b(III−2)を、外側から加圧装置113における加圧ロール113a、113bで押し付け、前記強化繊維シート111a(III−1)に付着した含浸用樹脂組成物3−21を強化繊維シート111a(III−1)及び強化繊維シート111b(III−2)に含浸させ、プリプレグ前駆体3−63を得た。
ついで、プリプレグ前駆体3−63の表面に貼付されたポリエチレンテレフタレート製保護フィルムを保持したまま(つまり剥がさずに)、エネルギー線照射装置116でメタルハライドランプ(アイグラフィックス株式会社製)を用い、プリプレグ前駆体3−63の両面にそれぞれ照射量320mJ/cm
2の紫外線を照射してプリプレグ3−64を得た。なおプリプレグ3−64の製造ライン速度を5m/minとした。
得られたプリプレグ3−64について、溶剤法により強化繊維の目付(FAW)と樹脂含有率を測定したところ、FAWが612g/m
2で、樹脂含有率が31質量%であった。また、得られたプリプレグ3−64の保護フィルム貼付の耐引っ張り剥し性評価、保護フィルム貼付力耐せん断剥し性評価の結果を表6に示す。
【0220】
[比較例3−1]
<プリプレグの製造>
実施例3−1と同様にプリプレグ前駆体を製造し、前記プリプレグ前駆体の両面からセパレートフィルム(114a、114b)を剥離した。
ついで、前記プリプレグ前駆体のいずれの面にも保護フィルムを貼り付けること無く、エネルギー線照射装置116でメタルハライドランプ(アイグラフィックス株式会社製)を用い、プリプレグ前駆体の両面にそれぞれ照射量320mJ/cm
2の紫外線を照射してプリプレグ3−74を得た。なおプリプレグの製造ライン速度を5m/minとした。
【0221】
得られたプリプレグ3−74はFAWと樹脂含有率がプリプレグ3−14と同じであった。また、プリプレグ3−74については、保護フィルムの耐引っ張り剥し性評価、保護フィルムの耐せん断剥し性評価をするに先立ち、ポリエチレン製の保護フィルム(廣積化工株式会社製、製品名はポリロンフィルムLD、厚み25μm)をプリプレグ3−74の表面に載置及び圧着した。保護フィルム圧着ロール121によるプリプレグと保護フィルムの圧着条件は、プリプレグ引取速度5m/分、線圧約600N/mで実施した。
なお、プリプレグ表面に保護フィルムを載置及び圧着する工程の実施環境は気温15±5℃であった。保護フィルム貼付の耐引っ張り剥し性評価、保護フィルムの耐せん断剥し性評価の結果を表7に示す。
【0222】
[比較例3−2]
<プリプレグの製造>
図7に示すプリプレグ製造装置を用い、炭素繊維束と含浸用樹脂組成物3−21を用いて比較例3−1と同様の方法でプリプレグ3−84を製造した。
得られたプリプレグ3−84はFAWと樹脂含有率がプリプレグ3−24と同じであった。
また、保護フィルムの載置及び圧着も比較例3−1と同様にした。保護フィルムの耐引っ張り剥し性評価、保護フィルムの耐せん断剥し性評価の結果を表7に示す。
【0223】
[比較例3−3]
<プリプレグの製造>
図7に示すプリプレグ製造装置を用い、炭素繊維束と含浸用樹脂組成物3−31を用いて比較例3−1と同様の方法でプリプレグ3−94を製造した。
得られたプリプレグ3−94はFAWと樹脂含有率がプリプレグ3−34と同じであった。
また、保護フィルムの載置及び圧着も比較例3−1と同様にした。保護フィルムの耐引っ張り剥し性評価、保護フィルムの耐せん断剥し性評価の結果を表7に示す。
【0224】
[比較例3−4]
<プリプレグの製造>
図7に示すプリプレグ製造装置を用い、炭素繊維束と含浸用樹脂組成物3−41を用いて比較例3−1と同様の方法でプリプレグ3−104を製造した。
得られたプリプレグ3−104はFAWと樹脂含有率がプリプレグ3−44と同じであった。
また、保護フィルムの載置・圧着も比較例3−1と同様にした。保護フィルムの耐引っ張り剥し性評価、保護フィルムの耐せん断剥し性評価の結果を表7に示す。
【0225】
[比較例3−5]
<プリプレグの製造>
図7に示すプリプレグ製造装置を用い、炭素繊維束と含浸用樹脂組成物3−21を用いて比較例3−1と同様の方法でプリプレグ3−114を製造した。
得られたプリプレグ3−114はFAWと樹脂含有率がプリプレグ3−24と同じであった。
また、保護フィルムの載置及び圧着も比較例3−1と同様にした。但し、プリプレグ3−114については、保護フィルムとしてポリエチレンテレフタレート製フィルム(三菱樹脂株式会社製、製品名はMRF75、厚み75μmで片面に離型処理、プリプレグ側に離型面を向けた)を用いた。保護フィルムの耐引っ張り剥し性評価、保護フィルムの耐せん断剥し性評価の結果を表7に示す。
【0226】
【表5】
【0227】
【表6】
【0228】
【表7】
【0229】
〔(4)第4の態様に対応する実施例及び比較例〕
本実施例及び比較例で使用した材料や資材、及び各種測定及び評価方法などを以下に示す。
【0230】
(含浸用樹脂組成物の原料)
<エポキシ樹脂(A)(以下、「成分(A)」と称す)>
・A−1:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、製品名「jER828」)
・A−2:イソシアネート変性エポキシ樹脂(旭化成エポキシ株式会社製、製品名「AER4152」)
【0231】
<ラジカル重合性不飽和化合物(B)(以下、「成分(B)」と称す)>
・B−1:ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物(三菱レイヨン社製、製品名「ダイヤビーム UK6105」)
・B−2:ノボラック型グリシジルエーテルアクリル酸付加物(DIC株式会社製、「DICLITE UE−8740」)
【0232】
<エポキシ樹脂硬化剤(C)>
・ジシアンジアミド(三菱化学株式会社製、製品名「Dicy 15」)
<硬化助剤>
・DCMU:ジフェニルジメチルウレア(保土谷化学工業株式会社製、製品名「DCMU99」)
【0233】
<ラジカル重合開始剤(D)>
・α−ヒドロキシアルキルフェノン(BASF社製、「Irgacure184」)
【0234】
(強化繊維基材)
・炭素繊維束2:引張強度4.1GPa、引張弾性率240GPa、フィラメント数50000本、目付3.75g/m(三菱レイヨン株式会社製)
【0235】
(光透過性フィルム)
・F−1:厚さ25μmポリエステル製剥離フィルム(三菱樹脂社製、製品名「ダイアホイル MRF25」
・F−2:厚さ38μmポリエステル製剥離フィルム(三菱樹脂社製、製品名「ダイアホイル MRZ38」
・F−3:厚さ50μmポリエステル製剥離フィルム(三菱樹脂社製、製品名「ダイアホイル MRF50」
・F−4:厚さ75μmポリエステル製剥離フィルム(三菱樹脂社製、製品名「ダイアホイル MRF75」
・F−5:厚さ100μmポリエステル製剥離フィルム(三菱樹脂社製、製品名「ダイアホイル MRV100」
(剥離紙)
・F−6:厚さ100μm剥離紙(リンテック社製、製品名「CFP−45」)
【0236】
(測定・評価方法)
<含浸用樹脂組成物の紫外線照射による粘度変化測定>
実施例及び比較例にて得られた含浸用樹脂組成物の、紫外線照射による粘度変化を以下の測定条件で測定した。
・測定機器:(Reologica Instruments A.B.社製、製品名「VAR−100」)
・試験モード:高速オシレーション
・測定温度:30 ℃
・プレートサイズ:8mmφ
・ギャップ:0.05mm
・応力:700Pa
・周波数:1.59Hz
・紫外線強度(λ=365nm):50mW/cm
2
・照射時間:6秒
・照射間隔及び回数:120秒の間隔を空けて2回照射した。
・粘度測定:紫外線照射前から、含浸用樹脂組成物の粘度をリアルタイムに測定し続け、紫外線照射前、1回目の紫外線照射から120秒後の粘度、2回目の紫外線照射から120秒後の粘度を代表値として表9に記載した。
【0237】
<光透過性フィルムの引剥し性評価>
実施例及び比較例にて得られた第2積層体(
図14の巻取り手段219によって巻き取られたもの)を光透過性フィルム回収装置230の巻だし手段221に掛け、駆動ロール218によって5m/分で繰り出し、フィルム引き剥しガイドロール217でプリプレグ上面の光透過性フィルムを引き剥がして、プリプレグ製造速度と同速でフィルム巻取り装置215により光透過性フィルムを回収した(
図14参照)。
以下の基準で、フィルム引き剥し性について評価した。なお、本評価の環境は気温30℃±10℃、湿度40%±15%であった。
フィルム引き剥し性良好(○)の場合は、プリプレグ耳端部からはみ出したマトリックス樹脂組成物が、回収するフィルム側から良好に剥がれ、プリプレグの両耳端部側に付着した状態で保持された。
フィルム引き剥し性不良(×)の場合は、プリプレグ耳端部からはみ出したマトリックス樹脂組成物は、引き剥がしたフィルム側に付着した状態で、フィルム巻取り装置に巻き取られた。
【0238】
[ラジカル重合開始剤(D)及びエポキシ樹脂硬化剤(C)を含むマスターバッチの調製]
表8に示す組成で、成分(A)又は成分(B)と、エポキシ樹脂硬化剤(C)、硬化助剤、及びラジカル重合開始剤(D)を容器に計量し、攪拌・混合した。これを三本ロールミルにてさらに細かく混合して、ラジカル重合開始剤(D)及びエポキシ樹脂硬化剤(C)を含むマスターバッチ4−1〜4−3を得た。
【0239】
【表8】
【0240】
[実施例4−1]
<含浸用樹脂組成物の調製>
ガラスフラスコに、成分(A)としてA−1を50質量部と、A−2を40質量部計量し、オイルバスを用いて130℃に加熱し混合した後、A−1とA−2の混合物を60℃程度まで冷却した。これをニーダーに移し、先に調製したマスターバッチ4−1を19質量部加え、60℃で攪拌し、表8に示す含浸用樹脂組成物4−11を得た。含浸用樹脂組成物4−11につき、前記<含浸用樹脂組成物の、紫外線照射による粘度変化測定>に従って、紫外線照射前後の粘度を測定した。結果を表9に記載した。
【0241】
<プリプレグ(第2積層体B1)の製造方法>
図13に示すプリプレグ製造装置210を用い、以下のようにして第2積層体B1を製造した。なお、強化繊維基材として炭素繊維束を引き揃えて得られる炭素繊維束シートを2枚用いた。各々、強化繊維シート211a(IV−1)及び強化繊維シート211b(IV−2)と称す。
60℃に維持した含浸用樹脂組成物4−11を付着装置212の樹脂塗工ダイ212aより吐出して、強化繊維シート211a(IV−1)の一方の面に含浸用樹脂組成物4−11を付着させた。続いて強化繊維シート211b(IV−2)を強化繊維シート211a(IV−1)の含浸用樹脂組成物4−11を付着させた面に重ね、重ねた強化繊維シート211a(IV−1)と強化繊維シート211b(IV−2)の外側の両面に、各フィルム供給ロール214よりフィルム(214a、214b)をそれぞれ供給してさらに挟み込んだ。前記フィルムとして、ポリエステルフィルムF−1を用いた。
引き続き、加圧装置213により加圧ロール213a、213b及び213cで、フィルム214a及び214bの外側から強化繊維シート211a(IV−1)及び強化繊維シート211b(IV−2)を加圧し、前記強化繊維シート(IV−1)に付着した含浸用樹脂組成物4−11を強化繊維シート211a(IV−1)及び強化繊維シート211b(IV−2)に含浸させた。加圧ロール213a、213b及び213cの直径はいずれも500mm、加圧力は設置したロードセルの値で1000Kgfとした。
また、加圧ロール213a、213b及び213cの、各上下ロールの空間距離を制御して、得られるプリプレグ前駆体の幅変化を調整し、加圧ロール213a通過時には、強化繊維シート211a(IV−1)及び211b(IV−2)を290mmから308mmに拡幅、加圧ロール213b通過時に308mmから313mmに拡幅、加圧ロール213c通過時に313mmから315mmに拡幅させ、第1積層体A1を得た。
得られた第1積層体A1におけるプリプレグ前駆体の両耳端部には、含浸工程時に搾りだされた含浸用樹脂組成物4−11が発生した。前記プリプレグ前駆体の両耳端部外側には、幅15mm以内の範囲で含浸用樹脂組成物4−11が滲出していた。
ついで、得られた第1積層体A1の上面及び前記滲出した含浸用樹脂組成物4−11部分に、紫外線線照射装置216でメタルハライドランプ(アイグラフィックス株式会社製)を用い、照射量320mJ/cm
2の紫外線を照射して、第2積層体B1を得た。得られた第2積層体B1は、巻き取り手段219によって巻き取った。なおプリプレグ220の製造ライン速度を5m/minとした。
第2積層体B1における強化繊維シート(IV−1及びIV−2)の目付(FAW)と樹脂含有率は、FAWが600g/m
2、樹脂含有率が33質量%であった。
得られた第2積層体B1を用い、前記<光透過性フィルムの引剥し性評価>に従って光透過性フィルムの引き剥し性を評価した。結果を表10に示す。
【0242】
[実施例4−2]
紫外線照射装置216による紫外線照射量を640mJ/cm
2とした以外は実施例4−1と同様の方法で、第2積層体B2を製造した。
第2積層体B2における強化繊維シートのFAW、樹脂含有率は、共に第2積層体B1と同じであった。また、プリプレグ前駆体の両耳端部外側に滲出した含浸用樹脂組成物4−11の幅も、実施例4−1と同様、15mm以内であった。得られた第2積層体B2につき、実施例4−1と同様に光透過性フィルムの引き剥し性を評価した。結果を表10に示す。
【0243】
[実施例4−3]
フィルム供給ロール214より供給するフィルムとしてポリエステルフィルムF−2を用いた以外は、実施例4−1と同様の方法で第2積層体B3を製造した。
第2積層体B3における強化繊維シートのFAW、樹脂含有率は、共に第2積層体B1と同じであった。また、プリプレグ前駆体の両耳端部外側に滲出した含浸用樹脂組成物4−11の幅も、実施例4−1と同様、15mm以内であった。得られた第2積層体B3につき、実施例4−1と同様に光透過性フィルムの引き剥し性を評価した。結果を表10に示す。
【0244】
[実施例4−4]
フィルム供給ロール214より供給するフィルムとしてポリエステルフィルムF−2を用い、紫外線照射装置216による紫外線照射量を640mJ/cm
2とした以外は、実施例4−1と同様の方法で第2積層体B4を製造した。
第2積層体B4における強化繊維シートのFAW、樹脂含有率は、共に第2積層体B1と同じであった。また、プリプレグ前駆体の両耳端部外側に滲出した含浸用樹脂組成物4−11の幅も、実施例4−1と同様、15mm以内であった。得られた第2積層体B4につき、実施例4−1と同様に光透過性フィルムの引き剥し性を評価した。結果を表10に示す。
【0245】
[実施例4−5]
フィルム供給ロール214より供給するフィルムとしてポリエステルフィルムF−3を用いた以外は、実施例4−1と同様の方法で第2積層体B5を製造した。
第2積層体B5における強化繊維シートのFAW、樹脂含有率は、共に第2積層体B1と同じであった。また、プリプレグ前駆体の両耳端部外側に滲出した含浸用樹脂組成物4−11の幅も、実施例4−1と同様、15mm以内であった。得られた第2積層体B5につき、実施例4−1と同様に光透過性フィルムの引き剥し性を評価した。結果を表10に示す。
【0246】
[実施例4−6]
フィルム供給ロール214より供給するフィルムとしてポリエステルフィルムF−3を用い、紫外線照射装置216による紫外線照射量を640mJ/cm
2とした以外は、実施例4−1と同様の方法で第2積層体B6を製造した。
第2積層体B6における強化繊維シートのFAW、樹脂含有率は、共に第2積層体B1と同じであった。また、プリプレグ前駆体の両耳端部外側に滲出した含浸用樹脂組成物4−11の幅も、実施例4−1と同様、15mm以内であった。得られた第2積層体B6につき、実施例4−1と同様に光透過性フィルムの引き剥し性を評価した。結果を表10に示す。
【0247】
[実施例4−7]
フィルム供給ロール214より供給するフィルムとしてポリエステルフィルムF−4を用いた以外は、実施例4−1と同様の方法で第2積層体B7を製造した。
第2積層体B7における強化繊維シートのFAW、樹脂含有率は、共に第2積層体B1と同じであった。また、プリプレグ前駆体の両耳端部外側に滲出した含浸用樹脂組成物4−11の幅も、実施例4−1と同様、15mm以内であった。得られた第2積層体B7につき、実施例4−1と同様に光透過性フィルムの引き剥し性を評価した。結果を表10に示す。
【0248】
[実施例4−8]
フィルム供給ロール214より供給するフィルムとしてポリエステルフィルムF−4を用い、紫外線照射装置216による紫外線照射量を640mJ/cm
2とした以外は、実施例4―1と同様の方法で第2積層体B8を製造した。
第2積層体B8における強化繊維シートのFAW、樹脂含有率は、共に第2積層体B1と同じであった。また、プリプレグ前駆体の両耳端部外側に滲出した含浸用樹脂組成物4−11の幅も、実施例4−1と同様、15mm以内であった。得られた第2積層体B8につき、実施例4−1と同様に光透過性フィルムの引き剥し性を評価した。結果を表10に示す。
【0249】
[実施例4−9]
フィルム供給ロール214より供給するフィルムとしてポリエステルフィルムF−5を用いた以外は、実施例4−1と同様の方法で第2積層体B9を製造した。
第2積層体B9における強化繊維シートのFAW、樹脂含有率は、共に第2積層体B1と同じであった。また、プリプレグ前駆体の両耳端部外側に滲出した含浸用樹脂組成物4−1の幅も、実施例4−1と同様、15mm以内であった。得られた第2積層体B9につき、実施例4−1と同様に光透過性フィルムの引き剥し性を評価した。結果を表10に示す。
【0250】
[実施例4−10]
フィルム供給ロール214より供給するフィルムとしてポリエステルフィルムF−5を用い、紫外線照射装置216による紫外線照射量を640mJ/cm
2とした以外は、実施例4−1と同様の方法で第2積層体B10を製造した。
第2積層体B10における強化繊維シートのFAW、樹脂含有率は、共に第2積層体B1と同じであった。また、プリプレグ前駆体の両耳端部外側に滲出した含浸用樹脂組成物4−1の幅も、実施例4−1と同様、15mm以内であった。得られた第2積層体B10につき、実施例4−1と同様に光透過性フィルムの引き剥し性を評価した。結果を表10に示す。
【0251】
[実施例4−11]
<含浸用樹脂組成物4−21の調製>
ガラスフラスコに、成分(A)としてA−1を50質量部と、A−2を40質量部計量し、オイルバスを用いて130℃に加熱し混合した後、A−1とA−2の混合物を60℃程度まで冷却した。これをニーダーに移し、先に調製したマスターバッチ4−2を19質量部加え、60℃で攪拌し、表9に示す含浸用樹脂組成物4−21を得た。含浸用樹脂組成物4−21につき、前記<含浸用樹脂組成物の、紫外線照射による粘度変化測定>に従って、紫外線照射前後の粘度を測定した。結果を表9に記載した。
<プリプレグ(第2積層体B)の製造>
含浸用樹脂組成物4−11の代わりに含浸用樹脂組成物4−21を用いた以外は、実施例4−1と同様の方法で第2積層体B11を製造した。
第2積層体B11における強化繊維シートのFAW、樹脂含有率は、共に第2積層体B1と同じであった。また、プリプレグ前駆体の両耳端部外側に滲出した含浸用樹脂組成物4−21の幅も、実施例4−1と同様、15mm以内であった。得られた第2積層体B11につき、実施例4−1と同様に光透過性フィルムの引き剥し性を評価した。結果を表10に示す。
【0252】
[実施例4−12]
含浸用樹脂組成物4−1の代わりに含浸用樹脂組成物4−21を用い、紫外線照射装置216による紫外線照射量を640mJ/cm
2とした以外は、実施例4−1と同様の方法で第2積層体B12を製造した。
第2積層体B12における強化繊維シートのFAW、樹脂含有率は、共に第2積層体B1と同じであった。また、プリプレグ前駆体の両耳端部外側に滲出した含浸用樹脂組成物4−21の幅も、実施例4−1と同様、15mm以内であった。得られた第2積層体B12につき、実施例4−1と同様に光透過性フィルムの引き剥し性を評価した。結果を表10に示す。
【0253】
[比較例4−1]
<含浸用樹脂組成物4−31の調製>
ガラスフラスコに、成分(A)としてA−1を40質量部と、A−2を40質量部計量し、オイルバスを用いて130℃に加熱し混合した後、A−1とA−2の混合物を60℃程度まで冷却した。これをニーダーに移し、先に調製したマスターバッチ4−3を19質量部加え、60℃で攪拌し、表9に示す含浸用樹脂組成物4−31を得た。含浸用樹脂組成物4−31につき、前記<含浸用樹脂組成物の、紫外線照射による粘度変化測定>に従って、紫外線照射前後の粘度を測定した。結果を表9に記載した。
<プリプレグ(積層体B)の製造>
含浸用樹脂組成物4−11の代わりに含浸用樹脂組成物4−31を用い、紫外線照射装置216による紫外線照射量を640mJ/cm
2とした以外は、実施例4−1と同様の方法で第2積層体B13を製造した。
第2積層体B13における強化繊維シートのFAW、樹脂含有率は、共に積層体B1と同じであった。また、プリプレグ前駆体の両耳端部外側に滲出した含浸用樹脂組成物4−31の幅も、実施例4−1と同様、15mm以内であった。得られた第2積層体B13につき、実施例4−1と同様に光透過性フィルムの引き剥し性を評価した。結果を表11に示す。
【0254】
[比較例4−2]
フィルム供給ロール214より剥離紙F−6を供給し、紫外線照射装置216による紫外線照射量を640mJ/cm
2とした以外は、実施例4−1と同様の方法で第2積層体B14を製造した。
第2積層体B14における強化繊維シートのFAW、樹脂含有率は、共に第2積層体B1と同じであった。また、プリプレグ前駆体の両耳端部外側に滲出した含浸用樹脂組成物4−11の幅も、実施例4−1と同様、15mm以内であった。得られた第2積層体B14につき、実施例4−1と同様に光透過性フィルムの引き剥し性を評価した。結果を表11に示す。
【0255】
[比較例4−3]
紫外線照射装置216による紫外線照射量を実施しない(照射量0mJ/cm
2)以外は、実施例4−1と同様の方法で第2積層体B15を製造した。
第2積層体B15における強化繊維シートのFAW、樹脂含有率は、共に第2積層体B1と同じであった。また、プリプレグ前駆体の両耳端部外側に滲出した含浸用樹脂組成物4−11の幅も、実施例4−1と同様、15mm以内であった。得られた第2積層体B15につき、実施例4−1と同様に光透過性フィルムの引き剥し性を評価した。結果を表11に示す。
【0256】
[比較例4−4]
含浸用樹脂組成物4−11の代わりに含浸用樹脂組成物4−2を用いた以外は、比較例4−3と同様の方法で第2積層体B16を製造した。
第2積層体B16における強化繊維シートのFAW、樹脂含有率は、共に第2積層体B1と同じであった。また、プリプレグ前駆体の両耳端部外側に滲出した含浸用樹脂組成物4−21の幅も、比較例4−3と同様、15mm以内であった。得られた第2積層体B16につき、比較例4−3と同様に光透過性フィルムの引き剥し性を評価した。結果を表11に示す。
【0257】
【表9】
【表10】
【表11】